(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、具体的な実施形態について、AlNウィスカーを有する焼結体とその製造方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。なお、図面中の各層の厚みの比率は、必ずしも実際の比率を反映したものではない。
【0024】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。
【0025】
1.ZrO
2 センサー(焼結体)
図1は、第1の実施形態のZrO
2 センサーA10の構造を示す概略構成図である。
図1に示すように、ZrO
2 センサーA10は、AlNウィスカー100と、ZrO
2 粒子200と、を有する焼結体である。ZrO
2 粒子200は、AlNウィスカー100を覆う絶縁粒子である。また、ZrO
2 センサーA10は、後述するようにY
2 O
3 を含有する。そのため、Y
2 O
3 は、ZrO
2 粒子200同士の隙間と、AlNウィスカー100同士の隙間と、ZrO
2 粒子200とAlNウィスカー100との間の隙間と、に位置している。
【0026】
ZrO
2 粒子200の平均粒子径は、1μm以上100μm以下である。
【0027】
2.AlNウィスカー
2−1.AlNウィスカーの構造
図2は、本実施形態のAlNウィスカー100の構造を示す部分断面図である。
図2に示すように、AlNウィスカー100は、繊維状の材料である。AlNウィスカー100は、AlN単結晶110と酸素原子含有層120とを有する。AlN単結晶110は、繊維状である。AlNウィスカー100の長さは、1μm以上5cm以下である。AlNウィスカー100の直径は、0.1μm以上50μm以下である。これらの数値範囲は目安であり、必ずしも上記の数値範囲に限るものではない。
【0028】
2−2.酸素原子含有層
酸素原子含有層120は、AlN単結晶110が少なくとも酸素原子を取り込むことにより生成された第1の層である。酸素原子含有層120はAlN単結晶110の表面を筒状に覆っている。酸素原子含有層120の形状は筒形状である。酸素原子含有層120の膜厚は7nm以上500nm以下である。前述のように、酸素原子含有層120は、AlN単結晶110に由来する。そのため、AlN単結晶110が十分に緻密な結晶性を備えていれば、酸素原子含有層120の膜厚は7nm以上10nm以下である。上記の数値範囲は目安であり、必ずしも上記の数値範囲に限るものではない。
【0029】
酸素原子含有層120は、AlN単結晶110の表面が大気中の酸素分子もしくは水分と反応したものである。つまり、酸素原子含有層120は、製造過程においてAlN単結晶110であったものである。AlNが酸素分子もしくは水分子と反応すると、Al
2 O
3 と、AlONと、Al(OH)
3 とのうちの少なくとも一つが発生する可能性がある。したがって、酸素原子含有層120は、Al
2 O
3 とAlONとAl(OH)
3 とのうちの少なくとも一種類を含有する。また、これらの材料の複合材料である可能性がある。Al
2 O
3 と、AlONと、Al(OH)
3 とは、いずれもAl原子と酸素原子とを含む。酸素原子含有層120は絶縁性である。そして、酸素原子含有層120の熱伝導率はAlN単結晶110の熱伝導率よりも低い。
【0030】
2−3.本実施形態のAlNウィスカーの性質
AlNウィスカー100は、高い熱伝導性と高い絶縁性とを備えている。また、十分な脆性破壊強度を備えている。
【0031】
酸素原子含有層120は、前述のように、製造過程においてAlN単結晶110であったものである。そのため、酸素原子含有層120は、緻密な結晶構造を備えている。酸素原子含有層120が一旦生成された後には、酸素原子含有層120が酸素分子および水分子の侵入を防止する。そのため、酸素原子含有層120の膜厚は、例えば、7nm以上10nm以下と十分に薄いままである。したがって、AlNウィスカー100におけるAlN単結晶110の体積比は十分に大きい。つまり、AlNウィスカー100の熱伝導性は非常に高い。
【0032】
従来のAlN材料においては、このような緻密な酸素原子含有層を形成することが困難である。そのため、従来のAlN材料は、比較的厚い酸化層もしくは水酸化物層を有している。本実施形態では熱伝導性の低い酸素原子含有層120が薄いため、本実施形態のAlNウィスカー100は、従来のAlN材料より熱伝導性に優れている。
【0033】
3.AlNウィスカーの製造装置
3−1.AlNウィスカーの製造装置の構造
図3は、本実施形態のAlNウィスカー100を製造するための製造装置1000を示す概略構成図である。製造装置1000は、炉本体1100と、ヒーター1400と、窒素ガス供給部1500と、アルゴンガス供給部1600と、を有する。炉本体1100は、材料収容部1200と、反応室1300と、を内部に収容している。炉本体1100の材質は、例えば、カーボンまたは石英である。
【0034】
材料収容部1200は、Al材料を収容するとともにAlを気化させることによりAlガスを発生させるための第1室である。材料収容部1200の材質は、例えば、カーボンまたは石英である。材料収容部1200は、容器1210と、1以上の連通部1220と、ガス導入口1230と、を有する。容器1210は、Al材料を収容するためのものである。容器1210の材質は、例えば、アルミナである。ガス導入口1230は、アルゴンガス等の希ガスを材料収容部1200に導入するための希ガス導入口である。
【0035】
連通部1220は、材料収容部1200と反応室1300とを連通する。連通部1220は、材料収容部1200と反応室1300との間に配置されている。連通部1220は、材料収容部1200側に開口している開口部1220aと、反応室1300側に開口している開口部1220bと、を有する。連通部1220の開口部1220bは、材料収容部1200で発生させたAlガスを反応室1300に供給するための第1の導入口である。
【0036】
反応室1300は、Alガスと窒素ガスとを反応させてAlNウィスカー100を成長させるための第2室である。反応室1300は、Al
2 O
3 基板1310と、ガス導入口1320、1330と、排気口1340と、を有する。Al
2 O
3 基板1310は、アルミナ基板である。ここでAl
2 O
3 基板1310は、絶縁性基材の一種である。反応室1300の内部には、多数のAl
2 O
3 基板1310が並んで配列されている。Al
2 O
3 基板1310は、その表面にAlNウィスカー100を成長させるためのものである。Al
2 O
3 基板1310は、基板の板面が水平面に交差するように並んで配置されている。ガス導入口1320は、窒素ガスを反応室1300の内部に導入するための第2の導入口である。ガス導入口1330は、アルゴンガスを反応室1300の内部に導入するためのものである。排気口1340は、反応室1300の内部のガスを製造装置1000の外部に排出するためのものである。
【0037】
ヒーター1400は、炉本体1100の内部を加熱するためのものである。ヒーター1400は、材料収容部1200を加熱する第1の加熱部である。そのため、ヒーター1400は、材料収容部1200のAl材料を加熱するとともに蒸発させる。また、ヒーター1400は、反応室1300をも加熱する。ヒーター1400は、反応室1300の内部の炉内温度を上昇させる。
【0038】
窒素ガス供給部1500は、ガス導入口1320から反応室1300の内部に窒素ガスを供給するためのものである。アルゴンガス供給部1600は、ガス導入口1330から反応室1300の内部にアルゴンガスを供給するためのものである。
【0039】
3−2.AlNウィスカーの製造装置の効果および製造条件
反応室1300は、材料収容部1200の上部に配置されている。つまり、材料収容部1200は、反応室1300からみて鉛直下方側の位置に配置されている。そのため、材料収容部1200の内部で発生したAlガスは、材料収容部1200から上部の反応室1300に向かって流入しやすい。
【0040】
また、ヒーター1400は、材料収容部1200と反応室1300とを同時に加熱するため、材料収容部1200と反応室1300とで温度差はほとんどない。AlNウィスカー100を成長させる成長温度は、1500℃以上1800℃以下である。また、基板温度は、炉内の雰囲気温度とほぼ同じである。また、材料収容部1200と反応室1300との内圧は、ほぼ大気圧である。ただし、材料収容部1200の内圧は、反応室1300の内圧よりわずかに高いとよい。その場合、反応室1300の窒素ガスが材料収容部1200に入るおそれはほとんどない。つまり、溶融状態のAl材料の表面が窒化されることはほとんどない。
【0041】
4.AlNウィスカーの製造方法
4−1.材料準備工程
まず、製造装置1000の容器1210の内部にAl材料を収容する。このAl材料は、工業的に製錬されたアルミニウムである。この段階ではAl材料は固体の金属である。
【0042】
4−2.気化工程(Alガス発生工程)
次に、材料収容部1200の内部でAl材料を加熱してAlガスを発生させる。そのために、ヒーター1400により炉本体1100を加熱する。これにより、材料収容部1200および反応室1300の内部の温度が上昇する。この材料収容部1200を加熱する際に、アルゴンガス供給部1600が材料収容部1200の内部にアルゴンガスを供給する。そして、Alの融点に達したときにAlが溶融し始める。そして、その後、Alの沸点には達しないもののAlの一部が蒸発し始める。つまり、Al材料を気化させてAlガスとする。これにより、材料収容部1200の内部にはアルゴンガスとAlガスとの混合ガスが充満する。
【0043】
4−3.AlN単結晶形成工程(ガス供給工程)
続いて、材料収容部1200の内部に発生したアルゴンガスとAlガスとの混合ガスを、連通部1220の開口部1220bから反応室1300の内部に流入させる。この際に、Alガスとアルゴンガスとの混合ガスは、Al
2 O
3 基板1310の板面にほぼ平行な向きに反応室1300の内部に供給される。一方、アルゴンガス供給部1600は、ガス導入口1330から反応室1300の内部にアルゴンガスを供給する。ここで、Al
2 O
3 基板1310の周囲をArガスで満たした後にAlガスをAl
2 O
3 基板に供給するとよい。また、窒素ガス供給部1500は、ガス導入口1320から反応室1300の内部に窒素ガスを供給する。そして、反応室1300の内部では、アルゴンガスとAlガスと窒素ガスとが混合する。そして、Al
2 O
3 基板1310の表面では、Alガスと窒素ガスとが反応して繊維状のAlN単結晶110が成長する。
【0044】
AlN単結晶110の成長温度は、1500℃以上1800℃以下である。そのため、AlN単結晶110を成長させる際の反応室1300の内部の雰囲気温度を1500℃以上1800℃以下とする。また、AlN単結晶110の製造時間は十分に長いため、基板温度は雰囲気温度とほとんど等しいと考えられる。つまり、Al
2 O
3 基板1310の温度も1500℃以上1800℃以下である。反応室1300の内圧はほぼ1気圧である。つまり、0.9atm以上1.1atm以下である。
【0045】
4−4.酸素原子含有層形成工程
この後、製造装置1000の炉内温度を室温に降下する。そして、AlN単結晶110を製造装置1000から取り出す。このAlN単結晶110の取り出し時にAlN単結晶110の表面が酸素分子もしくは水分子と反応して酸素原子含有層120が形成されると考えられる。このように、製造装置1000から取り出したAlN単結晶110の表面には薄い酸素原子含有層120が形成されている。
【0046】
5.ZrO
2 センサーの製造方法(焼結体の製造方法)
5−1.AlNウィスカー製造工程
前述したように、AlNウィスカー100を製造する。
【0047】
5−2.混合物準備工程
ZrO
2 粒子200とY
2 O
3 粒子との混合物を準備する。具体的には、95wt%以上98wt%以下のZrO
2 粒子200と2wt%以上5wt%以下のY
2 O
3 粒子とをボールミル等を用いて混合する。ZrO
2 粒子200の純度は95%以上である。ZrO
2 粒子200の平均粒子径は1μm以上100μm以下である。Y
2 O
3 粒子の純度は95%以上である。Y
2 O
3 粒子の平均粒子径は1μm以上100μm以下である。
【0048】
5−3.AlNウィスカー混合工程
ZrO
2 粒子200とY
2 O
3 粒子との混合物を100wt%に対して、0.5wt%以上40wt%以下のAlNウィスカー100を混合させる。その際に、混合擂潰機や乳鉢等の一般的な混合攪拌器で混合させる。これにより、AlNウィスカー100を含む混合物が得られる。
【0049】
5−4.混練工程
100wt%のAlNウィスカー100を含む混合物に0.5wt%以上50wt%以下のエチルアルコールを混合する。そして、攪拌機でスラリー状にする。これにより、スラリー状の混合物が得られる。また、エチルアルコールの他に、水またはその他のアルコールを用いてもよい。
【0050】
5−5.成形工程
次に、スラリー状の混合物を型に流し込む。これにより、第1の成形体が得られる。
【0051】
5−6.乾燥工程
次に、第1の成形体を乾燥する。乾燥温度は60℃以上350℃以下である。乾燥時間は1時間以上3時間以下である。これらの数値範囲は一例である。そのため、これら以外の数値を用いてもよい。これにより、第1の成形体からエチルアルコールまたは水分を蒸発させる。また、1時間あたり1〜10℃の割合で第1の成形体の雰囲気温度を上昇させてもよい。また、この工程において、電子レンジを用いてもよい。
【0052】
5−7.焼成工程
次に、第1の成形体を焼成する。そのために真空引き可能な焼成装置を用いる。まずは、第1の成形体を焼成装置の内部に配置する。そして、焼成装置を真空引きする。その後、窒素ガスを供給する。焼成装置の雰囲気は窒素雰囲気である。そして焼成装置の内部の雰囲気を加熱する。例えば、1時間ほどで350℃から1100℃程度まで雰囲気温度を上昇させる。そして、雰囲気温度の上昇にともなって、Y
2 O
3 粒子は液相になる。炉内の雰囲気温度が1100℃に達したら第1の成形体をそのまま焼成する。焼成温度は1100℃以上1600℃以下である。焼成時間は10分以上10時間以下である。そして焼成時間が経過した後に、焼成装置を冷却する。例えば、1時間あたり100℃の割合で焼成装置を冷却するとよい。そして、炉内温度が十分に下がった後、第1の成形体を取り出す。
【0053】
5−8.溶射工程
次に、第1の成形体の表面にγ−Al
2 O
3 を溶射する。γ−Al
2 O
3 の比表面積は300m
2 以上であるとよい。好ましくは、γ−Al
2 O
3 の比表面積は1000m
2 以上である。これにより、第1の成形体の表面にγ−Al
2 O
3 の溶射層が形成された第2の成形体が得られる。
【0054】
5−9.触媒金属付着工程
次に、第2の成形体を触媒金属を含む水溶液または有機溶液中に浸漬する。触媒金属として例えば、Pt、Pd、Rd、Rh等が挙げられる。そして、第2の成形体を300℃程度の温度で乾燥させる。以上により、ZrO
2 センサーA10が得られる。
【0055】
6.本実施形態の効果
6−1.熱伝導性
本実施形態におけるZrO
2 センサーA10は、AlNウィスカー100と、ZrO
2 粒子200と、を有する。AlNウィスカー100を有するため、ZrO
2 センサーA10の熱伝導性は、従来のセンサーの熱伝導性よりも高い。したがって、本実施形態のZrO
2 センサーA10は高速動作性を備えている。また、ZrO
2 センサーA10の内部の温度分布はより均一である。そして、ZrO
2 センサーA10を加熱する際に、内部の温度が上昇するまでの時間が従来より短い。これらの特徴があるため、酸素を高精度で測定することができる。
【0056】
6−2.機械的強度
本実施形態のZrO
2 センサーA10は、繊維状のAlNウィスカー100を含有している。繊維状のAlNウィスカー100は、複合材料の機械的強度を向上させる。そのため、本実施形態のZrO
2 センサーA10の機械的強度は、従来のZrO
2 センサーの機械的強度に比べて高い。
【0057】
AlNウィスカー100は、表面に酸素原子を含む酸素原子含有層120を有する。
一方、焼結時にはY
2 O
3 は液相となっている。この液相のY
2 O
3 は、AlNウィスカー100の酸素原子含有層120の酸素原子またはZrO
2 粒子200の酸素原子と結合しやすい。そのため、ZrO
2 センサーA10の機械的強度は高い。
【0058】
6−3.緻密性
AlNウィスカー100とZrO
2 粒子200とY
2 O
3 とは、ZrO
2 センサーA10の内部でそれぞれ独立して存在する。そして、これらの材料は互いに強固に結合している。そのため、これらの材料の界面にガスがほとんど流入できない。
【0059】
7.実験A(AlNウィスカー)
7−1.AlNウィスカーの形状
図4は、AlNウィスカー100の外観を示す走査型顕微鏡写真である。
図5は、AlNウィスカー100を拡大した走査型顕微鏡写真である。
図5に示すように、六方晶の単結晶が成長していることが分かる。
【0060】
7−2.AlN単結晶
図6は、AlNウィスカー100の透過型顕微鏡写真である。
図6から、AlN単結晶110が、確かに単結晶であることが分かる。
【0061】
7−3.酸素原子含有層
図7は、AlNウィスカー100の酸素原子マッピング像である。白い点は、酸素原子を示している。
図7から、AlN単結晶110の表面に7nm以上10nm以下の酸素原子含有層が存在していることが分かる。
【0062】
8.実験B(ZrO
2 センサー)
8−1.サンプル
AlNウィスカー100を有するZrO
2 センサー(サンプルA1:実施形態のセンサー)と、AlNウィスカー100を有さないZrO
2 センサー(サンプルA2:従来のセンサー)と、を作製した。サンプルA1におけるAlNウィスカー100の混合量は1wt%であった。
【0063】
8−2.水中試験
2種類のサンプルを加熱した後に水中に入れた。そして、クラックの有無を調べた。サンプルA1では450℃から500℃程度に加熱したサンプルにクラックが発生した。サンプルA2では400℃に加熱したサンプルにクラックが発生した。つまり、本実施形態のサンプルA1の耐熱性は、従来のサンプルA2の耐熱性よりも高い。
【0064】
8−3.加熱時間
2種類のサンプルを600℃まで加熱した。そして、その内部が600℃に到達するまでの経過時間を測定した。サンプルA1の経過時間は約10分であった。サンプルA2の経過時間は20分であった。つまり、本実施形態のサンプルA1の熱伝導性は、従来のサンプルA2の熱伝導性よりも十分に高い。
【0065】
8−4.空燃比
2種類のサンプルを用いて自動車のエンジンの空燃比を測定した。サンプルA1の空燃比とサンプルA2の空燃比とで同様の特性が得られた。
【0066】
9.変形例
9−1.絶縁粒子
ZrO
2 センサーA10は、ZrO
2 粒子200以外の絶縁粒子を含んでもよい。つまり、ZrO
2 センサーA10は、1種類以上の絶縁粒子を有する。例えば、ZrO
2 センサーA10は、AlN多結晶粒子を含んでもよい。ZrO
2 センサーA10がAlNウィスカー100に加えてAlN多結晶粒子を含有することにより、ZrO
2 センサーA10の熱伝導性は向上する。
【0067】
9−2.焼結助剤
ZrO
2 センサーA10は、絶縁粒子としてその他の焼結助剤を有していてもよい。例えば、焼結助剤としてY
2 O
3 に加えてCaOとLaB
6 とを用いてもよい。また、焼結助剤としてY
2 O
3 に加えてCaOとB
2 Oとを用いてもよい。これらの焼結助剤を用いた場合であっても、焼結体を製造することができる。
【0068】
9−3.焼成装置の雰囲気
ZrO
2 センサーA10を焼成する際の雰囲気は窒素雰囲気である。しかし、窒素ガスに少量の酸素ガスを混合してもよい場合がある。そのため、焼成装置の雰囲気は、窒素を含む雰囲気である。
【0069】
9−4.Al含有材料
本実施形態では、工業的に製錬されたアルミニウムであるAl材料を用いる。しかし、このような純度の高いAl材料の代わりにAl合金を用いてもよい。このようにAl原子を含むAl含有材料を用いてもAlNウィスカー100を製造することができる。ただし、工業的に製錬されたアルミニウムを用いたほうが、製造されるAlNウィスカー100に不純物が混じりにくい。
【0070】
9−5.酸素原子含有層
酸素原子含有層120は、Al
2 O
3 とAlONとAl(OH)
3 とのうちの少なくとも一種類を含有する。しかし、酸素原子含有層120は、上記以外のAl化合物であって酸素原子を含むものであってもよい。すなわち、酸素原子含有層120は、Al原子と酸素原子とを含む層である。
【0071】
9−6.ホットプレス工程
本実施形態の乾燥工程および焼成工程の代わりに、ホットプレス工程を用いてもよい。ホットプレス工程における雰囲気は窒素雰囲気であるとよい。
【0072】
9−7.絶縁性基材
本実施形態のAl
2 O
3 基板1310はアルミナ基板である。Al
2 O
3 基板1310は、サファイア基板であってもよい。そのため、Al
2 O
3 基板はアルミナ基板とサファイア基板とを含む。また、絶縁性基材は、AlN粒子やAlN多結晶基板であってもよい。
【0073】
9−8.開口部のシャッター
連通部1220は、材料収容部1200と反応室1300との間に位置している。連通部1220の開口部1220aまたは開口部1220bに開閉可能なシャッターを設けてもよい。シャッターは、開口部1220aまたは開口部1220bを開いた状態と閉じた状態とのいずれかの状態にする開閉部である。これにより、Alガスが反応室1300の内部に流入する時期を調整することができる。
【0074】
9−9.加熱部
材料収容部1200は、炉本体1100の内部に配置されている。しかし、材料収容部1200と反応室1300とを別体としてもよい。この場合には、製造装置1000は、材料収容部1200を加熱する第1の加熱部と、反応室1300を加熱する第2の加熱部と、を有する。これにより、材料収容部1200と反応室1300とを別々に加熱することができる。つまり、Alガスの蒸発させる温度と、反応室1300の炉内温度と、を別々に設定することができる。
【0075】
9−10.組み合わせ
上記の変形例について、自由に組み合わせてもよい。
【0076】
10.本実施形態のまとめ
本実施形態におけるZrO
2 センサーA10は、AlNウィスカー100と、ZrO
2 粒子200と、を有する。AlNウィスカー100を有するため、ZrO
2 センサーA10の熱伝導性は、従来のセンサーの熱伝導性よりも高い。したがって、本実施形態のZrO
2 センサーA10は高速動作性を備えている。
【0077】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
【0078】
1.触媒コンバーター(焼結体)
図8は、第2の実施形態における触媒コンバーターA20の外観を示す斜視図である。触媒コンバーターA20は、自動車用触媒コンバーターである。触媒コンバーターA20は、後述するように、AlNウィスカー100と、コージェライトと、を含む焼結体である。触媒コンバーターA20は、エンジンの排気ガスからHC、CO、NOxを除去するための装置である。触媒コンバーターA20は、表面A21を有している。
【0079】
図9は、触媒コンバーターA20の表面A21を示す拡大図である。
図9に示すように、触媒コンバーターA20の表面A21は、多数の貫通孔A21bを有している。多数の貫通孔A21bの断面形状は四角形である。貫通孔A21bは壁A21aにより仕切られている。なお、貫通孔A21bの断面形状は六角形であってもよい。
【0080】
図10は、触媒コンバーターA20の壁A21aを拡大した拡大図である。触媒コンバーターA20は、AlNウィスカー100と、コージェライト300と、を有する。AlNウィスカー100は、コージェライト300に覆われている。コージェライト300は、2MgO・2Al
2 O
3 ・5SiO
2 の組成を有する。
【0081】
2.触媒コンバーターの製造方法(焼結体の製造方法)
2−1.AlNウィスカー製造工程
第1の実施形態で説明したようにAlNウィスカー100を製造する。
【0082】
2−2.混合物準備工程
コージェライト300の組成となるような原材料の混合物を準備する。例えば、タルク(3MgO・4SiO
2 ・H
2 O)、カオリン(Al
2 O
3 ・2SiO
2 ・2H
2 O)、アルミナ(Al
2 O
3 )を準備する。そしてこれらの材料をコージェライト300の組成となるような比で混合して混合物とする。
【0083】
2−3.AlNウィスカー混合工程
100wt%の上記の混合物(コージェライト300の組成となる混合物)に対して、0.5wt%以上40wt%以下のAlNウィスカー100を混合させる。その際に、混合擂潰機や乳鉢等の一般的な混合攪拌器で混合させる。これにより、AlNウィスカー100を含む混合物が得られる。
【0084】
2−4.混練工程
100wt%の上記の混合物(AlNウィスカー100を含む混合物)に0.5wt%以上50wt%以下の水を混合する。そして、攪拌機でスラリー状にする。これにより、スラリー状の混合物が得られる。
【0085】
2−5.成形工程
次に、スラリー状の混合物を真空押し出し機にセットする。この真空押し出し機は、スラリー状の混合物をハニカム形状、四角形状、三角形状などに成形することができる。この真空押し出し機を用いた成形により、第1の成形体が得られる。
【0086】
2−6.乾燥工程
次に、第1の成形体を乾燥する。乾燥温度は15℃以上100℃以下である。乾燥時間は1時間以上3時間以下である。これらの数値範囲は一例である。そのため、これら以外の数値を用いてもよい。これにより、第1の成形体から水分を蒸発させる。また、この工程において、電子レンジを用いてもよい。
【0087】
2−7.焼成工程
次に、第1の成形体を焼成する。そのために真空引き可能な焼成装置を用いる。まずは、第1の成形体を焼成装置の内部に配置する。そして、焼成装置を真空引きする。その後、窒素ガスを供給する。また、窒素ガスに少量の酸素ガスを混合してもよい場合がある。そして焼成装置の内部の雰囲気を加熱する。例えば、24時間ほどかけて20℃から1100℃程度まで雰囲気温度を上昇させる。炉内の雰囲気温度が1100℃に達したら第1の成形体をそのまま焼成する。焼成温度は1100℃以上1500℃以下である。焼成時間は24時間以上72時間以下である。そして焼成時間が経過した後に、焼成装置を冷却する。例えば、1時間あたり50℃〜300℃の割合で焼成装置を冷却するとよい。そして、炉内温度が十分に下がった後、第1の成形体を取り出す。
【0088】
2−8.浸漬工程
次に、第1の成形体をγ−Al
2 O
3 水溶液に浸漬する。γ−Al
2 O
3 の比表面積は300m
2 以上であるとよい。好ましくは、γ−Al
2 O
3 の比表面積は1000m
2 以上である。そして、第1の成形体の表面にγ−Al
2 O
3 を付着させる。γ−Al
2 O
3 を乾燥させることにより、第2の成形体が得られる。次に、第2の成形体を500℃以上700℃以下の温度で乾燥させる。
【0089】
2−9.触媒金属付着工程
次に、第2の成形体を触媒金属を含む水溶液または有機溶液中に浸漬する。触媒金属として例えば、Pt、Pd、Rd、Rh等が挙げられる。そして、第2の成形体を300℃程度の温度で乾燥させる。以上により、触媒コンバーターA20が得られる。
【0090】
3.本実施形態の効果
3−1.熱伝導性
本実施形態における触媒コンバーターA20は、AlNウィスカー100と、コージェライト300と、を有する。AlNウィスカー100を有するため、触媒コンバーターA20の熱伝導性は従来の触媒コンバーターの熱伝導性よりも高い。そして、触媒コンバーターA20の内部の温度分布はより均一である。
【0091】
3−2.機械的強度
本実施形態の触媒コンバーターA20は、繊維状のAlNウィスカー100を含有している。繊維状のAlNウィスカー100は、靱性を有する。そのため、繊維状のAlNウィスカー100は、複合材料の機械的強度を向上させる。したがって、本実施形態の触媒コンバーターA20の機械的強度は、従来の触媒コンバーターの機械的強度に比べて高い。
【0092】
このため、触媒コンバーターA20の壁A21aを薄く設計することができる。したがって、排気ガスの圧力損失を従来より低下させることができる。
【0093】
4.実験C(触媒コンバーター)
4−1.サンプル
AlNウィスカー100を有する触媒コンバーター(サンプルB1:実施形態の触媒コンバーター)と、AlNウィスカー100を有さない触媒コンバーター(サンプルB2:従来の触媒コンバーター)と、を作製した。サンプルB1におけるAlNウィスカー100の混合量は5wt%であった。
【0094】
4−2.水中試験
2種類のサンプルを加熱した後に水中に入れた。そして、クラックの有無を調べた。サンプルB1では700℃程度に加熱したサンプルにクラックが発生した。サンプルB2では600℃に加熱したサンプルにクラックが発生した。つまり、本実施形態のサンプルB1の耐熱性は、従来のサンプルB2の耐熱性よりも高い。また、本実施形態のサンプルB1の機械的強度は、従来のサンプルB2の機械的強度よりも高い。
【0095】
4−3.加熱時間
2種類のサンプルを600℃まで加熱した。そして、その内部が600℃に到達するまでの経過時間を測定した。サンプルB1の経過時間は約10分であった。サンプルB2の経過時間は20分であった。つまり、本実施形態のサンプルB1の熱伝導性は、従来のサンプルB2の熱伝導性よりも十分に高い。
【0096】
5.触媒コンバーターの設計
AlNウィスカー100を有する触媒コンバーターの機械的強度は高い。そのため、本実施形態の触媒コンバーターのメッシュ数を1000cells/inch
2 以上3000cells/inch
2 以下とすることができる。また、壁A21aの厚みを100μm以上200μm以下とすることができる。なお、従来の触媒コンバーターのメッシュ数は600cells/inch
2 以上1000cells/inch
2 以下である。また、壁の厚みは200μm以上500μm以下である。
【0097】
6.変形例
第1の実施形態で説明した各変形例を第2の実施形態に適用することができる。
【0098】
7.本実施形態のまとめ
本実施形態における触媒コンバーターA20は、AlNウィスカー100と、コージェライト300と、を有する。AlNウィスカー100を有するため、触媒コンバーターA20の熱伝導性は、従来の触媒コンバーターの熱伝導性よりも高い。また、触媒コンバーターA20の機械的強度は、従来の触媒コンバーターの機械的強度よりも高い。
【0099】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。
【0100】
1.自動車用窓ガラス(焼結体)
図11は、第3の実施形態における自動車用窓ガラスA30の外観を示す斜視図である。自動車用窓ガラスA30は、後述するように、AlNウィスカー100と、ガラスと、を含む焼結体である。
【0101】
図12は、自動車用窓ガラスA30の内部構造を示す図である。自動車用窓ガラスA30は、AlNウィスカー100と、ガラス400と、を有する。AlNウィスカー100は、ガラス400に覆われている。
【0102】
2.自動車用窓ガラスの製造方法(焼結体の製造方法)
2−1.AlNウィスカー製造工程
第1の実施形態で説明したようにAlNウィスカー100を製造する。
【0103】
2−2.ガラス粒子準備工程
まず、ガラス粒子を作製する。例えば、珪砂と、ソーダ灰と、芒硝と、長石と、石灰石と、苦灰石と、を約1600℃の酸素雰囲気中で焼成する。そして、その焼成品を約100μmの粒子に粉砕する。
【0104】
2−3.AlNウィスカー混合工程
95wt%の粉砕粒子に、5wt%のAlNウィスカー100を混合させる。これにより、AlNウィスカー100を含む混合物が得られる。AlNウィスカー100の混合量は、これ以外の数値であってもよい。
【0105】
2−4.成形工程
次に、AlNウィスカー100を含む混合物を成形する。この成形により、第1の成形体が得られる。
【0106】
2−5.焼成工程
次に、第1の成形体を焼成する。そのために真空引き可能な焼成装置を用いる。まずは、第1の成形体を焼成装置の内部に配置する。そして、焼成装置を真空引きする。その後、窒素ガスを供給する。また、窒素ガスに少量の酸素ガスを混合してもよい場合がある。そして焼成装置の内部の雰囲気を加熱する。例えば、24時間ほどかけて15℃から1100℃程度まで雰囲気温度を上昇させる。炉内の雰囲気温度が1000℃に達したら第1の成形体をそのまま焼成する。焼成温度は1000℃以上1600℃以下である。焼成時間は1時間以上72時間以下である。そして焼成時間が経過した後に、焼成装置を冷却する。そして、炉内温度が十分に下がった後、第1の成形体を取り出す。以上により、自動車用窓ガラスA30が得られる。
【0107】
3.本実施形態の効果
3−1.熱伝導性
本実施形態における自動車用窓ガラスA30は、AlNウィスカー100と、ガラス400と、を有する。AlNウィスカー100を有するため、自動車用窓ガラスA30の熱伝導性は従来の自動車用窓ガラスの熱伝導性よりも高い。そして、自動車用窓ガラスA30の内部の温度分布はより均一である。
【0108】
3−2.機械的強度
本実施形態の自動車用窓ガラスA30は、繊維状のAlNウィスカー100を含有している。繊維状のAlNウィスカー100は、靱性を有する。そのため、繊維状のAlNウィスカー100は、複合材料の機械的強度を向上させる。したがって、本実施形態の自動車用窓ガラスA30の機械的強度は、従来の自動車用窓ガラスの機械的強度に比べて高い。
【0109】
4.変形例
4−1.ガラス粒子の原材料
ガラス粒子を作製する原材料は、上記以外の材料および組み合わせであってもよい。
【0110】
4−2.組み合わせ
第1の実施形態で説明した各変形例を第3の実施形態およびその変形例に適用することができる。
【0111】
5.本実施形態のまとめ
本実施形態における自動車用窓ガラスA30は、AlNウィスカー100と、ガラス400と、を有する。AlNウィスカー100を有するため、自動車用窓ガラスA30の熱伝導性は、従来の自動車用窓ガラスの熱伝導性よりも高い。また、自動車用窓ガラスA30の機械的強度は、従来の自動車用窓ガラスの機械的強度よりも高い。