(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906243
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】伸縮カバー装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/08 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
B23Q11/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-15047(P2019-15047)
(22)【出願日】2019年1月31日
(65)【公開番号】特開2020-121380(P2020-121380A)
(43)【公開日】2020年8月13日
【審査請求日】2020年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】301046961
【氏名又は名称】大阪テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】安田 勝法
(72)【発明者】
【氏名】池田 博行
(72)【発明者】
【氏名】阪本 和博
(72)【発明者】
【氏名】谷川 包明
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕之
【審査官】
中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−144534(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/175232(WO,A1)
【文献】
独国特許発明第102006043938(DE,B3)
【文献】
独国特許出願公開第102014110571(DE,A1)
【文献】
独国実用新案第20208599(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカバー部材が連結部材を介して連結されて伸縮可能に構成された伸縮カバー装置であって、
複数の前記カバー部材は、隣接するもの同士が互いに摺動可能に重なり合う被覆部と、前記被覆部から起立して互いに対向する取付部とを備え、
前記連結部材は、弾性変形可能な一対の帯状部と、一対の前記帯状部同士を一端側において連接する折り返し部とを備え、一対の前記帯状部の他端側が、互いに隣接する前記取付部にそれぞれ取り付けられており、
前記帯状部は、長手方向に延びる一対の側縁の一方が他方よりも長さが短い短辺部とされており、前記短辺部が前記被覆部と対向するように配置されている伸縮カバー装置。
【請求項2】
前記連結部材は、隣接する前記取付部間において、前記折り返し部同士が互いに対向するように複数配置されている請求項1に記載の伸縮カバー装置。
【請求項3】
前記取付部は、起立方向先端側に切欠部が形成されており、
前記切欠部は、水平に延びるガイドレールに係合する請求項1または2に記載の伸縮カバー装置。
【請求項4】
一対の前記帯状部は、前記折り返し部を介して一体的に成形されており、
前記折り返し部は、前記短辺部に対して直線状に傾斜する請求項1から3のいずれかに記載の伸縮カバー装置。
【請求項5】
隣接する前記取付部の間に、折線で折り畳み可能なシート状の制限部材が設けられ、
前記制限部材は、前記折線が前記被覆部と対向するように配置され、折り畳み状態から展開されることにより、隣接する前記取付部の間隔の拡がりを制限し、前記被覆部同士の重なりを維持する請求項1から4のいずれかに記載の伸縮カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の駆動機構等を保護するためのカバーとして、特許文献1に開示されたカバー部材装置が知られている。このカバー部材装置は、複数のカバー部材が弾性材により連結されており、両端が工作機械の可動部および固定部にそれぞれ固定されて、可動部の移動により伸縮する。弾性材は、2つの連結部材を一端側で接続することにより構成されており、2つの連結部材は、一端側から他端側に向けて互いの間隔が徐々に離間し、他端側がカバー部材に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−144534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のカバー部材装置は、伸長時に各カバー部材同士の重なりが少なくなると、各カバー部材の間に隙間が生じるおそれがあり、この隙間から切粉や切削液等の異物が侵入し易いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、異物の侵入を確実に防止することができる伸縮カバー装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、複数のカバー部材が連結部材を介して連結されて伸縮可能に構成された伸縮カバー装置であって、複数の前記カバー部材は、隣接するもの同士が互いに摺動可能に重なり合う被覆部と、前記被覆部から起立して互いに対向する取付部とを備え、前記連結部材は、弾性変形可能な一対の帯状部と、一対の前記帯状部同士を一端側において連接する折り返し部とを備え、一対の前記帯状部の他端側が、互いに隣接する前記取付部にそれぞれ取り付けられており、前記帯状部は、長手方向に延びる一対の側縁の一方が他方よりも長さが短い短辺部とされており、前記短辺部が前記被覆部と対向するように配置されている伸縮カバー装置により達成される。
【0007】
この伸縮カバー装置において、前記連結部材は、隣接する前記取付部間において、前記折り返し部同士が互いに対向するように複数配置されていることが好ましい。
【0008】
また、前記取付部の起立方向先端側に切欠部を形成して、前記切欠部が水平に延びるガイドレールに係合する構成にすることができる。
【0009】
一対の前記帯状部は、前記折り返し部を介して一体的に成形されていることが好ましく、前記折り返し部は、前記短辺部に対して直線状に傾斜することが好ましい。
【0010】
また、隣接する前記取付部の間に、折線で折り畳み可能なシート状の制限部材が設けられることが好ましい。前記制限部材は、前記折線が前記被覆部と対向するように配置されることが好ましく、折り畳み状態から展開されることにより、隣接する前記取付部の間隔の拡がりを制限し、前記被覆部同士の重なりを維持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異物の侵入を確実に防止することができる伸縮カバー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る伸縮カバー装置の正面図である。
【
図2】
図1に示す伸縮カバー装置の要部を示す背面図である。
【
図3】
図1に示す伸縮カバー装置の要部を示す平面図である。
【
図5】
図1に示す伸縮カバー装置が備える連結部材の斜視図である。
【
図6】
図1に示す伸縮カバー装置の作動を説明するための部分平面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る伸縮カバー装置の背面図である。
【
図9】
図7に示す伸縮カバー装置の作動を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る伸縮カバー装置の正面図である。
図1に示すように、伸縮カバー装置1は、矩形状のフレーム10内において左右方向に往復動する移動体13と、移動体13の左右両側をそれぞれ覆うように複数連結されたカバー部材20とを備えている。移動体13は、例えば工作機械の加工ヘッド等に固定され、移動体13が加工ヘッド等と共に移動することで、複数のカバー部材20が伸縮する。
【0014】
図2および
図3は、それぞれ
図1に示す伸縮カバー装置1の要部を示す背面図および平面図である。また、
図4は、
図3のA−A断面図である。
図2から
図4に示すように、移動体13の左右両側には、設置面から鉛直方向に延びるように固定された固定体11,12が設けられており、固定体11と移動体13との間、および、移動体13と固定体12との間に、それぞれ複数のカバー部材20が設けられている。左右の固定体11,12の間には、水平に延びるガイドレール14が支持されている。
【0015】
カバー部材20は、ステンレス等の金属板を折り曲げた形状を有しており、被覆部21と、被覆部21から水平方向に起立する取付部22とを備えている。複数のカバー部材20は、隣接する被覆部21同士が互いに摺動可能に重なり合い、且つ、取付部22同士が互いに対向するように配置されており、取付部22,22の間に介在された連結部材30により連結されている。取付部22の起立方向先端側には、ガイドレール14に係合する切欠部22aが形成されており、カバー部材20が伸縮時にガイドレール14に沿って案内される。
【0016】
図5は、連結部材30の斜視図である。連結部材30は、ゴム等の弾性材料からなる一対の帯状部31,31と、一対の帯状部31,31同士を一端側において連接する折り返し部32と、一対の帯状部31,31の他端側にそれぞれ設けられた固定部33,33とを備えており、固定部33,33の間隔を拡げることにより、一対の帯状部31,31が弾性変形する。固定部33には、貫通孔33aが形成されており、
図3および
図4に示すように、ネジ等の連結具34を貫通孔に挿通してカバー部材20の取付部22に取り付けることにより、連結部材30がカバー部材20に固定される。
【0017】
図4に示すように、連結部材30は、隣接する取付部22,22の間において上下に2つ設けられており、長手方向が上下方向となるように配置されて、折り返し部32,32同士が互いに対向する。各連結部材30の帯状部31は、長手方向に延びる一対の側縁35,36の長さが互いに相違しており、長辺部35が取付部22の起立方向先端側となり、長辺部35よりも長さが短い短辺部36が被覆部21と対向するように配置されている。
【0018】
連結部材30は、複数のカバー部材20を連結すると共に、カバー部材20と固定体11,12および移動体13との連結にも使用されており、固定体11と移動体13との間、および、移動体13と固定体12との間において、複数のカバー部材20が伸縮可能となるように構成されている。
【0019】
上記の構成を備える伸縮カバー装置1は、
図3に示す移動体13が右方向に移動すると、固定体11と移動体13との間に配置された各カバー部材20は、
図6(a)に示す状態から矢示B方向へと移動し、
図6(b)に示すように、それぞれの取付部22の間隔が拡がる。これに伴い、各連結部材30は、一対の帯状部31,31が弾性変形して拡がるが、被覆部21に対向する短辺部36が長辺部35よりも短く形成されているため、長辺部35側と比較して短辺部36側の帯状部31,31の伸びが抑制される。この結果、各カバー部材20の取付部22には矢示C方向に回動する力が作用し、被覆部21の先端部21aが、固定体12または他の被覆部21の表面を矢示D方向に押圧する。したがって、複数のカバー部材20の伸長時に、各カバー部材20を確実に摺動させることができるので、被覆部21同士の重なりが少なくなった場合でも、隣接するカバー部材20,20の間に隙間が生じるおそれがなく、切粉等の異物の侵入を確実に防止することができる。
【0020】
また、隣接する取付部22,22の間で上下に複数配置された連結部材30,30は、それぞれの折り返し部32,32が互いに対向するため、連結部材30,30の拡がりに伴いカバー部材20にねじれ方向の力が作用した場合でも、この力を上下で相殺して緩和することができる。したがって、被覆部21同士を上下全体で確実に摺動させることができるので、異物の侵入をより確実に防止することができる。但し、隣接する取付部22,22間の連結部材30の配置は、必ずしも本実施形態のものに限定されず、例えば、上下に配置された連結部材30,30の間に、弾性変形可能な他の連結部材を配置してもよい。また、カバー部材20の上下方向の高さが低い等の場合には、連結部材30が単一であってもよい。
【0021】
複数のカバー部材20の伸縮を案内するガイドレール14は、取付部22の起立方向先端側に形成された切欠部22aに係合するため、各カバー部材20を確実に摺動させながら案内することができる。本実施形態のガイドレール14は、カバー部材20の上部のみに配置されているが、カバー部材20の上下にそれぞれ配置してもよく、あるいは、ガイドレール14を備えない構成にすることも可能である。
【0022】
また、本実施形態の連結部材30は、一対の帯状部31,31が折り返し部32を介して一体的に成形されており、折り返し部32が長辺部35および短辺部36に対して直線状に傾斜する構成にすることで、上述したカバー部材20同士の摺動が確実に行われるように構成している。
図4に示す折り返し部32と短辺部36とがなす角度θは、90度以上になると本発明の効果が得られなくなる一方、小さすぎるとカバー部材20同士の摺動が困難になることから、例えば、70〜89度の範囲に設定することが好ましく、75〜85度の範囲がより好ましい。
【0023】
連結部材30は、必ずしも一対の帯状部31,31を一体的に成形する必要はなく、別部材からなる一対の帯状体を一端側において連結具や接着剤等により固着したものであってもよい。折り返し部32は、必ずしも直線状である必要はなく、円弧状等の湾曲状であってもよい。
【0024】
図7は、本発明の他の実施形態に係る伸縮カバー装置の背面図であり、
図8は、
図7のE−E断面図である。
図7および
図8に示す伸縮カバー装置1’は、
図2に示す伸縮カバー装置において、隣接する取付部21,21の間で上下に配置される2つの連結部材30,30の間に2つの制限部材40,40を配置したものであり、その他の構成については
図2等に示す伸縮カバー装置の構成と同様である。したがって、
図7および
図8において、
図1から
図6に示す構成と同様の構成部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0025】
図7および
図8に示す制限部材40は、可撓性を有する一方で伸縮性に乏しいシート状の部材であり、例えば、硬質樹脂等により形成することができる。制限部材40は、折り畳み可能な折線41が中央に形成されており、折線41の両側に設けられた固定部42,42が、隣接する取付部22,22にそれぞれ固定されている。折線41は、連結部材30の長手方向に沿って上下に延びており、被覆部21と対向する。
【0026】
図9は、
図7および
図8に示す伸縮カバー装置1’の作動を説明するための図であり、
図7のF−F断面に相当する。
図9(a)に示すように、カバー部材20,20の取付部22,22同士が接近した状態では、折線41が被覆部21に接近するように制限部材40が折り畳まれる。複数のカバー部材20が矢示G方向に伸長すると、
図9(b)に示すように、隣接する取付部22,22の間が拡がることにより制限部材40が折り畳み状態から展開され、取付部22,22間の拡がりが制限される。これにより、隣接する被覆部21,21同士の重なりが維持されるので、被覆部21,21の間からの異物の侵入が防止される。
【0027】
制限部材40の配置や個数は特に限定されないが、本実施形態のように取付部21,21の間に連結部材30が複数配置される場合には、各連結部材30に個別に対応するように、制限部材40を複数設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0028】
1 伸縮カバー装置
11,12 固定体
13 移動体
14 ガイドレール
20 カバー部材
21 被覆部
22 取付部
22a 切欠部
30 連結部材
31 帯状部
32 折り返し部
36 短辺部
40 制限部材
41 折線