(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
渓床に間隔を隔てて立設した複数の支柱と、前記複数の支柱の間に掛け渡した水通し部ネットと、最外端の支柱と渓岸との間に掛け渡した間隙部ネットとを具備する透過型捕捉構造物であって、
渓谷に跨って、渓谷を横断可能な全長を有する複数の補強横ロープを水通し部ネットのネット本体から離隔して配置し、
前記複数の補強横ロープを少なくとも1本以上の支柱の渓谷谷側の側面に配置すると共に、前記複数の補強横ロープを間隙部ネットの渓谷谷側に配置し、
前記複数の補強横ロープの両端部を渓岸に設けたアンカーに連結し、
前記支柱および間隙部ネットに作用する荷重を補強横ロープに支持させたことを特徴とする、
透過型捕捉構造物。
前記水通し部ネットが複数の縦索と横索を交差させて格子状に組み立てた帯状のネット本体と、ネット本体を複数の支柱に跨って取り付ける背面ロープとを具備したループ構造体であり、ネット本体状を支柱の渓谷山側に配設し、背面ロープを支柱の渓谷谷側に配設して複数の支柱間に巻き掛けてあることを特徴とする、請求項1に記載の透過型捕捉構造物。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはワイヤロープ等の鋼製ロープを縦横方向に交錯させて格子状に形成した捕捉ネットを用いた透過型捕捉構造物が知られている。
又、特許文献2には、隣り合う支柱の間に矩形の水通し部ネットを設置すると共に、水通し部ネットの左右両側に別途の間隙部ネットを追加配置した透過型捕捉構造物が開示されている。
この透過型捕捉構造物は、渓谷の沢空間を封鎖し得るように、渓谷の横断方向に沿って配設した水通し部ネットと左右一対の間隙部ネットとを横一列に配置している。
【0003】
さらに特許文献3には、間隙部ネットの網目を水通し部ネットの網目より小さい寸法関係にした透過型捕捉構造物が開示されている。
図7を参照して説明すると、水通し部ネット20と間隙部ネット30の網目の寸法差を利用することで、洪水時において、間隙部ネット30の上流側に流下物を堆積し得るように、間隙部ネット30は不透過構造物として機能し、水通し部ネット20は透過構造物として機能する。
【0004】
特許文献3に開示された間隙部ネット30の取付け構造について説明すると、間隙部ネット30は略三角形を呈する枠ロープ31と、枠ロープ31の内側で枠ロープ31に一体に設けたメッシュ状の内接ネット32とにより構成する水通し部ネット20から分離独立したネット体である。
各間隙部ネット30は、支柱10と渓岸G
1に沿わせて配置した枠ロープ31の二辺を支柱10の支柱本体と渓岸G
1に設けたアンカー51に連結して取り付けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の透過型捕捉構造物にはつぎのような問題点がある。
<1>特許文献3に記載の透過型捕捉構造物で実証実験を行ったところ、間隙部ネット30にも巨大や荷重が作用することから、間隙部ネット30を構成する内接ネット32の強度を高める必要がある。
内接ネット32のロープ径を太くして強度を高めると、間隙部ネット30の撓み性が損なわれて、間隙部ネット30による流下物の捕捉性が悪くなる。
流下物の捕捉性はネットの撓み性に大きな影響を受けることから、間隙部ネット30の強度確保と撓み性確保の両立が技術的に難しい。
<2>間隙部ネット30と支柱10と間隙部ネット30間の連結強度を高めるには、支柱10と枠ロープ31との連結箇所数を増やして間隙部ネット30に作用する外力を分散して支柱10に支持させる方法が考えられるが、支柱本体と枠ロープ31との連結箇所数が増えると作業工数が増えて施工性が悪くなる。
<3>支柱10には高い曲げ耐力(曲げ強度)が求められるが、支柱10本体を大径化して高強度に設計すると、支柱10のコストが高くつくだけでなく、重量が重たくなって現場への搬入性が悪くなる。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところはつぎの透過型捕捉構造物を提供することにある。
<1>間隙部ネットの強度確保と撓み性確保の両立が図れること。
<2>支柱との連結箇所数を減らして施工性を改善すること。
<3>支柱を大径化せずに支柱の傾倒を抑制すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、渓床に間隔を隔てて立設した複数の支柱と、前記複数の支柱の間に掛け渡した水通し部ネットと、最外端の支柱と渓岸との間に掛け渡した間隙部ネットとを具備する透過型捕捉構造物であって、渓谷に跨って、渓谷を横断可能な全長を有する複数の補強横ロープを配置し、前記複数の補強横ロープを間隙部ネットの渓谷谷側に配置した。
本発明の他の形態において、前記複数の補強横ロープの両端部を渓岸に設けたアンカーに連結してあればよい。
本発明の他の形態において、前記複数の補強横ロープを少なくとも1本以上の支柱の渓谷谷側の側面に配置してあればよい。
本発明の他の形態において、間隙部ネットの撓み変形を一定範囲に規制し得るように、前記補強横ロープに予めゆとりを持たせておくとよい。
本発明の他の形態において、前記複数の補強横ロープが支柱に対して多段的に配設してある。
本発明の他の形態において、前記水通し部ネットが複数の縦索と横索を交差させて格子状に組み立てた帯状のネット本体と、ネット本体を複数の支柱に跨って取り付ける背面ロープとを具備したループ構造体であり、ネット本体状を支柱の渓谷山側に配設し、背面ロープを支柱の渓谷谷側に配設して複数の支柱間に巻き掛けてある。
本発明の他の形態において、前記間隙部ネットが枠ロープと、該枠ロープに固定して設けられた内接ネットとにより構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明はつぎの何れかひとつの効果が得られる。
<1>補強横ロープの補強作用によって間隙部ネットの捕捉耐力を増大でき、さらに補強横ロープに予めゆとりを持たせておくことで間隙部ネットの撓み性を確保できるので間隙部ネットによる流下物の捕捉性が向上する。
<2>本発明では補強横ロープは支柱に対して連結せずに渓谷谷側に配置して係留するだけである。
したがって、補強横ロープと支柱との連結作業が不要となって、施工性を改善することができる。
<3>補強横ロープの補強作用によって、支柱を大径化せずに複数の支柱の渓谷谷側へ向けた傾倒を抑制することができる。
<4>間隙部ネットの弾性変形と、補強横ロープの伸長により、間隙部ネットに作用する衝撃力を効果的に減衰することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1>透過型捕捉構造物の概要
図1〜6を参照しながら本実施例に係る透過型捕捉構造物について説明する。
透過型捕捉構造物は渓床G
2に間隔を隔てて立設した複数の支柱10と、複数の支柱10の間に掛け渡した水通し部ネット20と、各支柱10と渓岸G
1との間に掛け渡した間隙部ネット30,30と、複数の支柱10の渓谷谷側の外周面側に跨って多段的に掛け渡し、その両端部を渓岸G
1に設けたアンカー50に連結した複数の補強横ロープ40とを具備する。
【0012】
<2>支柱
支柱10は水通し部ネット20と間隙部ネット30を支持する高剛性の柱状構造物である。
支柱10は例えば鋼管、コンクリート充填鋼管、コンクリート柱等の高剛性の柱体であり、渓床G
2に所定の間隔を隔てて立設する。
【0013】
<2.1>支柱の係留部と連結部
支柱10の前後の外周面には、水通し部ネット20を取り付けるための係留部11と、間隙部ネット30を取り付けるための連結部12を有する。
【0014】
<2.1.1>係留部
水通し部ネット20を取り付けるための係留部11は、支柱10の前後の外周面に対をなして形成する。
図3に例示した係留部11は、支柱10の外周面に突設した上下一対のブラケット11a,11aと、一対のブラケット11a,11a間に縦向きに貫挿した係留ピン11bを具備する。
図3(B)では平板状のブラケット11aを示しているが、同図(C)のように平板をコ字形に屈曲したブラケット11aを使用してもよい。
これらの各係留部11を介して複数の支柱10間にループ状の水通し部ネット20を巻き掛けて取り付け可能である。
【0015】
<2.1.2>連結部
間隙部ネット30を取り付けるための連結部11は、最外端の支柱(端末支柱)10の上下部に形成する。
図4に例示した連結部12について説明すると、連結部12は最外端の支柱(端末支柱)10の上下部に突設した一対のブラケット12a,12aと、一対のブラケット12a,12a間に縦向きに貫挿した止めピン12bとを具備する。
これらの各連結部12を介して最外端の支柱(端末支柱)10と渓岸G
1に設けたアンカー51(
図6参照)との間に間隙部ネット30が取り付け可能である。
【0016】
<3>水通し部ネット
水通し部ネット20は金属製、繊維製、又は樹脂製のシングルロープ、シングルチェーン、帯状鋼板の何れか一種、又はこれら複数種を組み合わせて、方形、円形、又は楕円形の網目に編成した公知のネット状物であり、そのネット本体の左右両辺が支柱10に固定してある。
【0017】
図2〜3に例示した水通し部ネット20について説明する。
水通し部ネット20は高強度の鋼製ロープ材からなり、複数の縦索21と横索22を交差させて格子状に組み立てた帯状のネット本体23と、ネット本体23を複数の支柱10に跨って取り付ける背面ロープ24とを具備する。
支柱10の渓谷山側に配設したネット本体23と、支柱10の渓谷谷側に配設した背面ロープ24とが連続したループ状の形態で複数の支柱10間に巻き掛けてある。
ネット本体23の各索21,22の交点は摺動不能である。
【0018】
背面ロープ24はネット本体23の横索22を延長して形成してもよいし、横索22と別体のロープ材を連結して使用してもよい。
支柱10の渓谷谷側に位置する背面ロープ24は、その重合部を固定具25で摺動不能に固定する。
【0019】
本例では水通し部ネット20がループ構造を呈している場合について説明するが、水通し部ネット20は非ループ構造(例えばシングルネット)でも適用可能である。
【0020】
<4>間隙部ネット
間隙部ネット30は水通し部ネット20の目合い寸法以下の網目を有するネット状物である。
本例では間隙部ネット30が略三角形、又は略台形に囲繞した枠ロープ31と、枠ロープ31内で複数のロープ材を縦横方向に交差させ、その交差部を固定して格子状に形成した内接ネット32とにより構成する。内接ネット32の周縁は枠ロープ31に一体に固定してある。
内接ネット32は縦横方向に向けて弛みを有していて、弛みを有した状態で取り付ける。
【0021】
<5>水通し部ネットと間隙部ネットの天端高さ
間隙部ネット30の天端高さは水通し部ネット20の天端より高く形成してしてもよいし、同じ高さに形成してもよい。
間隙部ネット30の天端高さを水通し部ネット20の天端より高く形成すると、ネットの高低差により流下物が水通し部ネット20へ向けて誘導し易くなる。
【0022】
<6>補強横ロープ
補強横ロープ40は間隙部ネット30の補強機能と支柱10の補強機能を併有したロープ材である。
透過型捕捉構造物に対して間隔を隔てて多段的に配設した補強横ロープ40の左右両端部は、渓岸G
1に設けたアンカー50に連結して支持する。
【0023】
なお、補強横ロープ40を支持するアンカー50と、間隙部ネット30の斜辺を支持するアンカーは個別に設けてもよいし兼用してもよい。
【0024】
<6.1>補強横ロープの全長
補強横ロープ40の全長は透過型捕捉構造物を横断可能な寸法より長い寸法を有する。
換言すれば、両渓岸G
1に設けたアンカー50間にゆとりを持たせて取り付けるため、補強横ロープ40は水通し部ネット20を含む左右両側の間隙部ネット30,30に亘って掛け渡しが可能な長さに、ゆとり分の長さを加えた全長を有する。
【0025】
<6.2>補強横ロープに一本ものロープを用いた理由
例えば、間隙部ネット30の補強方法として、最外端の支柱(端末支柱)10と渓岸G1の間に複数の補強横ロープ40を多段的に取り付ける方法が考えられる。
この方法は複数の補強横ロープ40の一端を最外端の支柱(端末支柱)10に連結しなければならず、連結作業工数が増える。
本発明では支柱10に対する補強横ロープ40の連結作業工数を削減して施工性を改善するために補強横ロープ40に一本ものロープを使用する。
【0026】
<6.3>補強横ロープの配設位置
補強横ロープ40は複数の支柱10の渓谷谷側に位置する。
補強横ロープ40の左右両端部は、左右一対の間隙部ネット30,30の渓谷谷側に位置する。
支柱10および間隙部ネット30に対して補強横ロープ40を渓谷谷側に位置させたのは支柱10および間隙部ネット30に作用する荷重を、補強横ロープ40に支持させて、支柱10の傾倒を抑制するためと、間隙部ネット30を補強するためである。
【0027】
<6.4>支柱に対する補強横ロープの配設形態
補強横ロープ40を複数の支柱10の渓谷谷側に位置するにあたり、
図5,6を参照して支柱10に対する補強横ロープ40の配設形態について説明する。
説明にあたり、
図5,6においては、理解がし易いように複数の支柱10に対する補強横ロープ40の配置形態(A)と、両ネット20,30の配置形態(B)を分けて図解するが、実際には(A)と(B)の配置形態は合体する。
【0028】
図5(A)は補強横ロープ40の中間部40aを、最外端の支柱(端末支柱)10を除いた支柱(中間支柱)10の渓谷谷側に配設し、補強横ロープ40の両端部40,40baを最外端のひとつ内側の支柱(中間支柱)10とアンカー50の間に配設した形態を示している。
【0029】
図6(A)は補強横ロープ40の中間部40aを、最外端の支柱(端末支柱)10を含むすべての支柱10の渓谷谷側に配設し、最外端の支柱(端末支柱)10とアンカー50の間に補強横ロープ40の両端部40,40baを配設した形態を示している。
補強横ロープ40はその中間部40aを少なくとも1本以上の支柱10の渓谷谷側の側面に配置してあればよい。
【0030】
何れの形態にあっても、
図5(B)および
図6(B)に示すように、最外端の支柱(端末支柱)10を含むすべての支柱10の間にループ状の水通し部ネット20が設置してあると共に、最外端の支柱(端末支柱)10とアンカー50の間に間隙部ネット30が配設してある。
【0031】
<6.5>補強横ロープの本数
補強横ロープ40の配設本数は、透過型捕捉構造物における想定衝撃エネルギーや構造物の高さ寸法等を考慮して適宜選択する。
【0032】
<6.6>補強横ロープの事前たるみの付与
補強横ロープ40に高張力を付与して取り付けると、間隙部ネット30の撓み量が小さくなって、間隙部ネット30による流下物の捕捉性が悪くなる。
そこで、補強横ロープ40に予め多少の弛みを有するように、長さに余裕を持たせて取り付けることで、補強効果を保有したまま、間隙部ネット30の一定範囲の孕み変形を許容することが可能となる。
補強横ロープ40に導入する初期の弛みは、透過型捕捉構造物の想定衝撃エネルギーや間隙部ネット30の可撓性等を考慮して適宜選択する。
【0033】
[透過型捕捉構造物の施工方法]
つぎに透過型捕捉構造物の施工方法について説明する。
【0034】
<1>支柱の立設
図1,2に示すように、所定の間隔を隔てて渓床G
2等に支柱10を立設する。
【0035】
<2>補強横ロープの取付け
渓谷を横断して配置した補強横ロープ40の両端部を左右の渓岸G
1のアンカー50に固定する。
この際、補強横ロープ40を複数の支柱10の渓谷谷側の側面に位置させると共に、補強横ロープ40に弛みを持たせておく。
【0036】
<3>水通し部ネットの取付け
補強横ロープ40の取り付け後、又は補強横ロープ40の取り付けと並行して、又は補強横ロープ40の取り付けに先行して、複数の支柱10間にループ構造の水通し部ネット20を取り付ける。
最終的に、複数の支柱10の渓谷谷側の側面に、水通し部ネット20を構成する背面ロープ24と補強横ロープ40の二種類のロープを位置させる。
【0037】
<4>間隙部ネットの取付け
水通し部ネット20の取付け作業と並行して、又は単独で支柱10と渓岸G
1との間に間隙部ネット30を多少の弛みを持たせた状態で取り付けて透過型捕捉構造物を完成する。間隙部ネット30は補強横ロープ40の渓谷山側に配置する。
【0038】
図4に例示した取付け構造について説明すると、最外端の支柱(端末支柱)10の上下部に設けた連結部12に間隙部ネット30の内方辺の枠ロープ31を連結し、間隙部ネット30の斜辺を渓岸G
1に設けたアンカー51(
図6参照)に固定する。
間隙部ネット30の斜辺を固定するアンカーは、補強横ロープ40を取り付けるアンカー50に兼用することも可能である。
【0039】
<5>補強横ロープとネットの関係
水通し部ネット20及び間隙部ネット30は補強横ロープ40に対して分離独立している。補強横ロープ40は間隙部ネット30および支柱10の渓谷谷側に位置するだけであり、その当接部は一体に連結されていない。
【0040】
[過型捕捉構造物の砂防機能]
つぎに透過型捕捉構造物の砂防機能について説明する。
【0041】
<1>中小規模の洪水時
中小規模の洪水の場合は、水通し部ネット20及び間隙部ネット30の下段の網目を通じて、災害を及ぼさない程度の大きさの礫や泥水等が流下する。
中小規模の洪水時においては、水通し部ネット20、間隙部ネット30および支柱10による荷重負担が小さくて済む。
【0042】
<2>大規模の洪水時
大規模の洪水時は、流下物に土石流や流木等を含み、これらの流下物の一部が水通し部ネット20及び間隙部ネット30に捕捉される。
間隙部ネット30に流下物が堆積することで、補強横ロープ40の弛みがなくなり、さらにその後は補強横ロープ40の張力が増していく。
【0043】
<2.1>間隙部ネットによる流下物の捕捉性
受撃前における補強横ロープ40は弛みを有し、間隙部ネット30は内接ネット32が弛みを有している。
そのため、大規模洪水時に渓谷谷側へ向けた間隙部ネット30の撓み変形が生じ易くなる。
補強横ロープ40が伸長限界に達することで、間隙部ネット30の撓み変形が阻止される。
間隙部ネット30が渓谷谷側へ向けて適度に撓み変形を生じることで、予め弛みを持たせずに間隙部ネット30を緊張して取付けた場合と比べて、間隙部ネット30による流下物の捕捉性がよくなる。
【0044】
<2.2>補強横ロープによる間隙部ネットの補強作用
間隙部ネット30の渓谷谷側に配設した複数の補強横ロープ40が間隙部ネット30を渓谷谷側から補強している。
そのため、間隙部ネット30が有する引張強度に対して補強横ロープ40の引張強度が加わるため、間隙部ネット30による捕捉耐力が高くなる。
このように、間隙部ネット30を構成するロープ径を大きくせずに、補強横ロープ40を追加配置することで間隙部ネット30の捕捉耐力を経済的に高めることができる。
透過型捕捉構造物では、間隙部ネット30による弾性変形、及び補強横ロープ40の伸長により衝撃力を効果的に緩衝できる。
【0045】
<2.3>補強横ロープによる荷重分散
流下物による衝撃力は水通し部20に作用するだけでなく、左右の間隙部ネット30,30に対しても個別的に作用する。
左右の間隙部ネット30,30に作用する衝撃力は均等ではない。
左右の間隙部ネット30,30に作用する衝撃力に差が生じたときでも、複数の補強横ロープ40が荷重を伝達して左右の渓岸G
1に設けたアンカー50に分散して支持できる。
【0046】
<2.4>補強横ロープの弾性変形による緩衝作用
透過型捕捉構造物では、間隙部ネット30による弾性変形により衝撃力を吸収するが、間隙部ネット30による弾性変形にくわえて補強横ロープ40の弾性変形が加わるので、間隙部ネット30に作用する衝撃力を効果的に緩衝できる。
特に、間隙部ネット30の長さに比例して、補強横ロープ40の弾性変形量が大きくなるので、間隙部ネット30と補強横ロープ40による衝撃力の吸収性能が高くなる。
そのため、補強横ロープ40の補強作用によって間隙部ネット30の捕捉耐力を増大でき、さらに補強横ロープ40に予めゆとりを持たせておくことで間隙部ネット30の撓み性を確保できる。
【0047】
<2.5>補強横ロープによる支柱の支持作用
流下物の捕捉に伴い、水通し部ネット20の荷重負担が増すと同時に、水通し部ネット20の負担過重が支柱10に対して渓谷谷側へ向けた傾倒力として作用する。
複数の支柱10の渓谷谷側に配設した補強横ロープ40の張力が増しているので、支柱10の渓谷谷側へ向けた傾倒を抑制する
換言すれば、複数の支柱10の渓谷谷側へ向けた傾倒は、補強横ロープ40および左右の渓岸G
1に設けたアンカー50に支持される。
このように支柱を大径化せずに複数の支柱10の傾倒を抑制することができる。
【解決手段】渓谷に跨って複数の補強横ロープ40を配置し、複数の補強横ロープ40の両端部を渓岸に設けたアンカー50に連結すると共に、複数の補強横ロープ40を間隙部ネット30の渓谷谷側に配置し、複数の補強横ロープの中間部を複数の支柱10の渓谷谷側の側面に配置した。