(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0023】
(1)水硬性組成物用添加剤:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、所定のA成分と、ナフタレン環を有する単量体由来の構造を含む高分子化合物であるB成分と、を含有するものである。このような水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物に配合することで、当該水硬性組成物は、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能となる。特に、通常は高温(例えば、30℃以上)の環境下では、経時による流動性の変化が大きく、高温下である程、早くに流動性が低下する。しかし、本発明の水硬性組成物用添加剤を添加することで、高温環境下であっても経時による流動性の変化が少なくなる。このようなことから、使用温度が高くなる、気温が30℃以上となるような気温の高い国や地域でも良好に使用することができる。
【0024】
また、一方で、水硬性組成物は、コテ等による仕上げや、型枠の脱型等の関係から、適度な時間で凝結することが求められる(即ち、凝結時間が長過ぎず適当であることが望まれる)。この点、本発明の水硬性組成物用添加剤は、使用温度に関わらず、水硬性組成物の凝結時間を過度に遅延させないという利点がある。ここで、凝結時間を過度に遅延させないとは、添加剤を配合することで、水硬性組成物の流動性が練り混ぜから数時間程度(例えば、1〜2時間程度)保持されて、凝結開始を遅延させることができるが、一方で、練り混ぜから数時間程度で、流動性が低下し凝結が開始することである。
【0025】
具体的には、生コンクリート(水硬性組成物)の製造後、直ぐに生コンクリートの打ち込みを行うことができればよいが、通常は、生コンクリートの製造から作業現場での打ち込みまでには、生コンクリート工場から作業現場までの運搬時間や、作業現場での待機時間などの時間を要する。この生コンクリート工場から作業現場までの時間は、数時間程度であることがある。そのため、練り混ぜから数時間程度(例えば、1〜2時間程度)保持されることが望まれる。一方で、生コンクリートの打ち込み後には、凝結が開始されることが望まれる。このように、運搬等の時間を考慮して所定時間は流動性が確保され、所定時間の経過後、適切に凝結が開始することが望まれる。
【0026】
なお、既存の遅延剤(例えば、糖類、オキシカルボン酸塩等)を多量に用いることによって、流動性をある程度保持することは可能である。しかし、その場合は、凝結が過度に遅延し硬化不良を生じるという問題がある。このような問題に対して、本発明の水硬性組成物用添加剤を用いることで、流動性を保持することができるとともに、多量に遅延剤を用いた場合のように過度な凝結遅延が生じることを防止することができる。
【0027】
(1−1)A成分:
A成分は、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンイミンのアルキレンオキシド付加物、ジアリルアミン重合体、ジアリルアミン塩重合体、ジアリルアミン・二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、及びポリビニルピロリドン
の中でも、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、ジアリルアミン重合体、ジアリルアミン塩重合体、ジアリルアミン・二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1つである。このA成分をB成分ともに配合することで、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間を過度に遅延させないという効果が発揮される。
【0028】
A成分としては、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1つであることが好ましい。A成分としての、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1つは、その質量平均分子量が1,000以上で1,200,000以下であることが好ましく、1,000以上で900,000以下であることがより好ましく、1,000以上で300,000以下であることが更に好ましい。
【0029】
(1−2)B成分:
B成分は、ナフタレン環を有する単量体由来の構造を含む高分子化合物である。このB成分をA成分ともに配合することで、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間を過度に遅延させないという効果が発揮される。
但し、本発明では、B成分としては、A成分でカプセル化されたものを除く。
【0030】
ナフタレン環を有する単量体としては、特に制限はないが、例えば、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸塩などを挙げることができ、B成分である高分子化合物は、このような単量体に由来する構造(単量体単位)を含むものである。
【0031】
ナフタレン環を有する単量体由来の構造を含む高分子化合物としては、具体的には、ナフタレンスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1つとホルムアルデヒドとの縮合物であることが好ましい。
【0032】
ナフタレン環を有する単量体由来の構造を含む高分子化合物は、その質量平均分子量を200,000以下とすることができ、100,000以下とすることが好ましく、80,000以下とすることが更に好ましく、50,000以下とすることが特に好ましく、30,000以下とすることが最も好ましい。また、上記高分子化合物の質量平均分子量は、1,000以上であることが好ましく、3,000以上であることが更に好ましく、4,000以上であることが特に好ましく、5,000以上であることが最も好ましい。
【0033】
ナフタレン環を有する単量体由来の構造を含む高分子化合物の質量平均分子量は、下記の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
[GPC条件]
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー社製)
溶離液:50mM CH
3COONa/CH
3CN=6/4
流量:0.7mL/分
検出:UV280nm
サンプル濃度:0.2mg/mL
標準物質:PEG/PEO(アジレント・テクノロジー社製)
【0034】
なお、B成分のうちのナフタレンスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1つとホルムアルデヒドとの縮合物は、性能を損なわない範囲内で、フェノール、クレゾール、及びこれらの誘導体等の、共縮合可能な芳香環構造を有する化合物と共縮合していても良い。
【0035】
B成分としては、より具体的には、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド縮合物(即ち、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドとの縮合物)などを挙げることができる。
【0036】
更に、B成分のうちのナフタレンスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1つとホルムアルデヒドとの縮合物は、市販品を使用することもできる。このようなナフタレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸塩の少なくとも一方とホルムアルデヒドとの縮合物の市販品としては、例えば、ポールファイン510−AN(竹本油脂社製)、マイテイ150(花王社製)、セルフロー110P(第一工業製薬社製)等が挙げられる。
【0037】
(1−3)C成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、更に、下記一般式(1)で示される化合物であるC成分を含有することが好ましい。このC成分を更に配合することで、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間を過度に遅延させないという効果が発揮される。
【0038】
【化2】
(一般式(1)において、R
1はロジンのアシル残基である。R
2は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。mは、1〜200の整数である。)
【0039】
一般式(1)におけるR
1は、ロジンのアシル残基である。ここで、ロジンとは、樹脂酸(ロジン酸)と称されるジテルペン系化合物をいう。このようなロジンとして、例えば、天然ロジン、変性ロジン、重合ロジンなどが挙げられる。
【0040】
天然ロジンは、マツ科植物から得られる樹脂油から、精油等の揮発性物質を留去した残留物中に存在する樹脂酸の混合物であり、製造方法により、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンに分類される。
【0041】
ガムロジンは、松の木に切り傷をつけ、そこから流出する生松脂をろ過精製し、水蒸気蒸留によりテレビン油を除去して得られる。ウッドロジンは、松の切株のチップを溶剤抽出して得られる。トール油ロジンは、松材からクラフトパルプ法でパルプを製造する工程で副生する粗トール油を蒸留精製して得られる。
【0042】
ロジンは、主成分の樹脂酸として、アビエチン酸を含み、その他の成分の樹脂酸として、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、レボピマール酸等を含む。
【0043】
変性ロジンとは、天然ロジンを変性したものをいい、例えば、天然ロジンを高圧化でニッケル触媒、白金触媒、パラジウム触媒等の貴金属触媒等を使用して水素添加して、分子内の二重結合を消失若しくは減少させた水添ロジン、天然ロジンを貴金属触媒又はハロゲン触媒の存在下に高温加熱することにより分子内の不安定な共役二重結合を消失させた不均化ロジンが挙げられる。
【0044】
重合ロジンとは、天然ロジン又は変性ロジン同士を反応させたものであり、これらの2量化物、3量化物をいう。
【0045】
なお、このようなロジンとして、入手の容易さの観点から、天然ロジンが好ましい。このような天然ロジンとしては、より好ましくは、ガムロジンである。ロジンは、様々な化合物の混合物として扱うことが一般的であり、カルボン酸量については、酸価を測定することで定量化される。酸価は、日本工業規格JIS K 0070(1992)により測定することで求められる。
【0046】
一般式(1)におけるR
2は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。この炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。炭素数2〜20のアルケニル基としては、エテニル基、n−プロペニル基、n−ブテニル基、n−ペンテニル基、n−ヘキセニル基、n−ヘプテニル基、n−オクテニル基、n−ノネル基、n−デセニル基、n−ウンデセニル基、n−ドデセニル基、n−トリデセニル基、n−テトラデセニル基、n−ペンタデセニル基、n−ヘキサデセニル基、n−ヘプタデセニル基、n−オクタデセニル基、n−ノナデセニル基、n−イコセニル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基、エテニル基、n−プロペニル基、n−ブテニル基、n−ペンテニル基等の炭素数2〜5のアルケニル基が好ましい。
【0047】
一般式(1)におけるAOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。
【0048】
AOが2種類以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であってもよい。
【0049】
一般式(1)におけるmは、1〜200の整数であり、1〜150の整数であることが好ましく、5〜100の整数であることが更に好ましい。
【0050】
C成分は、一般式(1)における−(AO)
m−が、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の構成割合の合計を100モル%とするとき、炭素数2のオキシアルキレン基を90モル%以上の割合で有するものであることが好ましい。
【0051】
一般式(1)で表される化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、レボピマール酸等の樹脂酸の混合物であるロジンに、触媒等を用いることで常法によりアルキレンオキサイドを付加させて、一般式(1)で表されるロジンポリオキシアルキレン付加物を製造する方法や、R
2に相当するアルコールに、予め、触媒等を用いることで常法によりアルキレンオキシドを付加し、その後ロジンとエステル化させることにより、一般式(1)で表される化合物を製造する方法等が挙げられる。
【0052】
(1−4)各成分の配合割合:
本発明では、A成分、及びB成分を含み(但し、C成分は含まない場合)、A成分及びB成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を1〜50質量部、及びB成分を50〜99質量部の割合で含有す
る。このような範囲とすると、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が更に少なくなる。
【0053】
A成分、B成分、及びC成分を含み、A成分、B成分、及びC成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を1〜50質量部、B成分を49〜98質量部、及びC成分を0.01〜10質量部の割合で含有することが好ましい。このような範囲とすると、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が更に少なくなる。
【0054】
(1−5)その他の成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、A成分〜C成分以外に、効果が損なわれない範囲内で、その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類や、オキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延成分、リグニンスルホン酸ナトリウム等からなる分散作用を有する成分、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤などを挙げることができる。
【0055】
その他の成分の含有割合としては、例えば、本発明の水硬性組成物用添加剤全体の0〜20質量%とすることができる。
【0056】
更に、本発明の水硬性組成物用添加剤は、水や溶剤で希釈された形態で使用してもよい。
【0057】
(2)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有するものである。このような水硬性組成物は、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間が過度に遅延しないものである。
【0058】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合は特に制限はなく適宜設定することができるが、例えば、結合材に対し、固形分換算で0.001〜4.0質量%が好適であり、さらには0.01〜4.0質量%がより好適である。
【0059】
本発明の水硬性組成物は、従来公知の水硬性組成物と同様に、結合材、水、細骨材、及び粗骨材を含むものとすることができる。
【0060】
結合材としては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメントなどの各種のセメントを挙げることができる。
【0061】
更に、結合材は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、石粉、シリカフューム、膨張材などの各種混和材を上述した各種セメントと併用してもよい。
【0062】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材などが挙げられる。
【0063】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材などが挙げられる。
【0064】
本発明の水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類や、オキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延成分、リグニンスルホン酸ナトリウム等からなる分散作用を有する成分、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤などを挙げることができる。
【0065】
その他の成分の含有割合としては、例えば、結合材に対して、固形分換算で0〜5質量%とすることができる。
【0066】
本発明の水硬性組成物は、その水と結合材の比率(水/結合材比)としては従来公知の割合を適宜採用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
まず、使用したA成分〜C成分について、以下の表1〜表3に示す。
【0069】
(A成分)
下記表1には、使用したA成分(A−1〜A−11)を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
(合成例1)A−8の製造方法:
表1中のA−8は、以下のようにして製造した。まず、5Lのステンレス製の耐圧容器に、A−7のテトラエチレンペンタミン2000gを仕込んだ。そして、窒素置換後、75±5℃でエチレンオキサイド930gを0.3MPa以下の条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。冷却後、回収し、A−8(A成分)を得た。
【0072】
(B成分)
下記表2には、使用したB成分(B−1〜B−2)を示す。
【0073】
【表2】
【0074】
(C成分)
下記表3には、使用したC成分(C−1〜C−5)、CR−1を示す。
【0075】
【表3】
【0076】
なお、表3中、「CR−1」としては、中華人民共和国産(以降、単に「中国産」と記す)の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を用いた。
【0077】
また、表3中、「EO」はオキシエチレン基、「PO」はオキシプロピレン基を表す。
【0078】
以下に、C成分(C−1〜C−5)の合成方法を説明する。
【0079】
(合成例2)C−1の合成:
2Lのステンレス製の耐圧容器に、中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を542.2gと、水酸化カリウム2.0gを仕込み、120℃まで加熱し、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。窒素にて常圧に戻し、その後、150〜160℃でエチレンオキサイド1455.8gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、90%酢酸を3.5g添加し、120℃にて減圧脱水の後、加圧濾過を行い、化合物(C−1)を得た。
【0080】
(合成例3)C−2の合成:
1Lのガラス製の反応容器にα−ブトキシ−ω−ヒドロキシ−ポリ−(45モル)オキシエチレン500.0gと中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を79.8g、メタンスルホン酸7.2gを仕込み、窒素置換後、150℃、0.5kPaで減圧脱水を行い、エステル化反応を行った。エステル化率が99%以上となったところで反応を終了し、精製し、化合物C−2を得た。
【0081】
(合成例4)C−3の合成:
2Lのステンレス製の耐圧容器に、中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を192.2gと、水酸化カリウム2.0gを仕込み、120℃まで加熱し、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。窒素にて常圧に戻し、その後、150〜160℃でエチレンオキサイド1805.8gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製:キョーワード600)を20.0g添加し、120℃にて減圧脱水の後、加圧濾過を行い、化合物(C−3)を得た。
【0082】
(合成例5)C−4の合成:
2Lのステンレス製の耐圧容器に、中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を626.2gと、水酸化カリウム2.0gを仕込み、120℃まで加熱し、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。窒素にて常圧に戻し、その後、150〜160℃でエチレンオキサイド1260.9gを0.4MPaの条件で圧入し、続いてプロピレンオキサイド110.9gを同条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製:キョーワード600)を20.0g添加し、120℃にて減圧脱水の後、加圧濾過を行い、化合物(C−4)を得た。
【0083】
(合成例6)C−5の合成:
2Lのステンレス製の耐圧容器に、中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を966.1gと、水酸化カリウム2.0gを仕込み、120℃まで加熱し、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。窒素にて常圧に戻し、その後、150〜160℃でエチレンオキサイド518.8gを0.4MPaの条件で圧入し、続いてプロピレンオキサイド513.2gを同条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、90%酢酸を3.5g添加し、120℃にて減圧脱水の後、加圧濾過を行い、化合物(C−5)を得た。
【0084】
(実施例1〜
6、10〜15、比較例1,2
、参考例7〜9,16)
次に、表4に示すように、各成分を混合して水硬性組成物用添加剤を作製した。なお、表4中、「水」の質量部は、水硬性組成物用添加剤100質量部に対する質量部を示す。
【0085】
【表4】
【0086】
(実施例17〜
22、26〜31、比較例3〜6
、参考例23〜25,32)
次に、作製した水硬性組成物用添加剤を用い、表6に示す配合1を採用して、表5に示す各水硬性組成物を作製した。
【0087】
具体的には、以下のようにして水硬性組成物(コンクリート組成物)を調製した。まず、55Lの強制二軸ミキサーに、セメントとしての普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度=3.16g/cm
3)と、フライアッシュとしての中部フライアッシュ(テクノ中部社製、密度=2.33g/cm
3、JIS A 6201フライアッシュII種)と、高炉スラグ微粉末としてのエスメント4000(日鉄高炉セメント社製、密度=2.89g/cm
3、JIS A 6206高炉スラグ微粉末4000)と、骨材としての細骨材(大井川水系産陸砂、密度=2.58g/cm
3)及び粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm
3)と、をそれぞれ表6に示す配合(配合1)処方で配合した。そして、これに各水硬性組成物用添加剤(F−1〜16、FR−1,2)を配合して、実施例17〜
22、26〜31、比較例3〜6
、参考例23〜25,32の水硬性組成物を調製した(表4参照)。
【0088】
なお、実施例17〜
22、26〜31、比較例3〜6
、参考例23〜25,32の各水硬性組成物は、水硬性組成物用添加剤水溶液の添加量を調整して練り混ぜ直後のスランプが21.0±1.5cmの範囲内となるようにし、市販のAE剤であるAE−300(竹本油脂社製)を適宜用い、及び、消泡剤であるAFK−2(竹本油脂社製)を結合材に対して0.001質量%用いて、空気量が1.5±1.0%の範囲内となるように調整を行った。
【0089】
また、各水硬性組成物の調製は、20℃及び30℃環境下でそれぞれ行い、各水硬性組成物の練り上がり温度が、各環境温度の±2℃の範囲内になるように、調製前に各材料を温調した。
【0090】
なお、実施例17〜
22、26〜31、比較例3〜6
、参考例23〜25,32で採用した配合1は、水硬性粉体としてセメントを用いた配合である。
【0091】
次に、作製した各水硬性組成物(コンクリート組成物)について、スランプ(cm)、空気量(容積%)、及び、コンクリート温度(℃)の測定を行った。結果を下記表5に示す。20℃環境下と30℃の環境下における各測定値を示す。表5中、「スランプ(cm)」は、練り混ぜ直後のスランプ(cm)を意味し、「空気量(%)」は、練り混ぜ直後の空気量(%)を意味し、「コンクリート温度(℃)」は、練り混ぜ直後のコンクリートの温度(℃)を意味する。
【0092】
・スランプ(cm):
コンクリート組成物について、JIS−A1101(2020)に準拠して測定した。
【0093】
・空気量(容積%):
コンクリート組成物について、JIS−A1128(2020)に準拠して測定した。
【0094】
・コンクリート温度(℃):
コンクリート組成物について、JIS−A1156(2014)に準拠して測定した。
【0095】
【表5】
【0096】
なお、比較例5は、AE剤を使用せず、消泡剤であるAFK−2を結合材に対して0.005質量%用いても空気量が規定量以上となった。また、遅延剤水溶液は、グルコン酸ナトリウム(試薬:キシダ化学社製)400g、スクロース(試薬:キシダ化学社製)100g、及び、イオン交換水500gを混合して調製した。
【0097】
【表6】
【0098】
(評価結果)
作製した各水硬性組成物について、流動保持性の評価及び凝結時間の評価を行った。
【0099】
(流動保持性)
練混ぜ直後(0分後)、及び、練混ぜ直後から90分後のスランプ(cm)をそれぞれ、上記測定方法により測定し、その後、得られた測定値に基づき、「0分後と90分後のスランプ差」を算出した。そして、これらの「スランプ差」について以下の評価基準で評価を行い、これを流動保持性の評価とした。表7には、20℃環境下における流動保持性の評価結果を示し、表8には、30℃環境下における流動保持性の評価結果を示す。
【0100】
・0分後と90分後のスランプ差
S:差が4.0cm以下
A:差が4.0cm超、7.0cm以下
B:差が7.0cm超、10.0cm以下
C:差が10.0cm超、13.0cm以下
D:差が13.0cm超、16.0cm以下
E:差が16.0cm超
【0101】
(凝結時間)
作製した各水硬性組成物(コンクリート組成物)について、以下のようにして凝結始発時間を測定し、その後、凝結時間の評価を行った。表7には、20℃の環境下における凝結始発時間の評価結果を示し、表8には、30℃の環境下における凝結始発時間の評価結果を示す。
【0102】
・凝結始発時間:
練り混ぜ直後のコンクリート組成物を用いて、JIS−A1147(2019)に準拠して凝結始発時間を測定した。
【0103】
20℃環境下と30℃環境下における凝結始発時間の評価の評価基準を以下に示す。
【0104】
・凝結時間(20℃環境下)
A:凝結の始発時間が6時間半以内
B:凝結の始発時間が6時間半超、7時間半以内
C:凝結の始発時間が7時間半超
【0105】
・凝結時間(30℃環境下)
A:凝結の始発時間が6時間以内
B:凝結の始発時間が6時間超、7時間以内
C:凝結の始発時間が7時間超
【0106】
なお、比較例4に示すように、A成分を含まないような水硬性組成物用添加剤である場合、20℃環境下と30℃環境下を比較すると、高温である30℃環境下の方が、スランプ差が大きくなり、高温環境下において流動性が大きく低下することが分かる。また、比較例5は、上述の通り、AE剤を使用せず、消泡剤であるAFK−2を結合材に対して0.005質量%用いても空気量が規定量以上となり、空気量が過多のために調整が不可であったことから、表7及び表8中、「−」を記載している。
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
(実施例33、比較例7,8)
次に、作製した水硬性組成物用添加剤を用い、表10に示す配合2を採用して、上述した配合1と同様の水硬性組成物の調製方法と、同様のスランプ、及び、空気量の調整方法を用いて、表9に示す各水硬性組成物を作製した。なお、実施例33、比較例7,8で採用した配合2は、水硬性粉体としてセメント、フライアッシュ、及び、高炉スラグ微粉末を用いた配合である。
【0110】
次に、作製した各水硬性組成物(コンクリート組成物)について、上述した配合1と同様の測定方法を採用して、スランプ(cm)、空気量(容積%)、及び、コンクリート温度(℃)の測定を行った。結果を下記表9に示す。20℃環境下と30℃の環境下における各測定値を示す。表9中、「スランプ(cm)」は、練り混ぜ直後のスランプ(cm)を意味し、「空気量(%)」は、練り混ぜ直後の空気量(%)を意味し、「コンクリート温度(℃)」は、練り混ぜ直後のコンクリートの温度(℃)を意味する。
【0111】
【表9】
【0112】
表9中、遅延剤水溶液は、グルコン酸ナトリウム(試薬:キシダ化学社製)400gとスクロース(試薬:キシダ化学社製)100gとイオン交換水500gを混合して調製した。
【0113】
【表10】
【0114】
(評価結果)
作製した各水硬性組成物について、流動保持性の評価及び凝結時間の評価を行った。
【0115】
(流動保持性)
練混ぜ直後(0分後)、及び、練混ぜ直後から90分後のスランプ(cm)をそれぞれ、上記測定方法により測定し、その後、得られた測定値に基づき、「0分後と90分後のスランプ差」を算出した。そして、これらの「スランプ差」について以下の評価基準で評価を行い、これを流動保持性の評価とした。表11には、20℃環境下における流動保持性の評価結果を示し、表12には、30℃環境下における流動保持性の評価結果を示す。
【0116】
・0分後と90分後のスランプ差
S:差が3.0cm以下
A:差が3.0cm超、6.0cm以下
B:差が6.0cm超、9.0cm以下
C:差が9.0cm超、12.0cm以下
D:差が12.0cm超
【0117】
(凝結時間)
作製した各水硬性組成物(コンクリート組成物)について、以下のようにして凝結始発時間を測定し、その後、凝結時間の評価を行った。表11には、20℃の環境下における凝結始発時間の評価結果を示し、表12には、30℃の環境下における凝結始発時間の評価結果を示す。
【0118】
・凝結始発時間:
練り混ぜ直後のコンクリート組成物を用いて、上述した配合1と同様の測定方法を採用して、凝結始発時間を測定した。
【0119】
20℃環境下と30℃環境下における凝結始発時間の評価の評価基準を以下に示す。
【0120】
・凝結時間(20℃環境下)
A:凝結の始発時間が7時間半以内
B:凝結の始発時間が7時間半超、8時間半以内
C:凝結の始発時間が8時間半超
【0121】
・凝結時間(30℃環境下)
A:凝結の始発時間が7時間以内
B:凝結の始発時間が7時間超、8時間以内
C:凝結の始発時間が8時間超
【0122】
【表11】
【0123】
【表12】
【0124】
(結果)
表7,表8、表11,表12に示されるように、本発明の水硬性組成物用添加剤を水硬性組成物に配合することで、使用時の環境温度に関わらず、水硬性組成物における経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、水硬性組成物の凝結時間を過度に遅延させない水硬性組成物が得られることが確認された。また、本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を配合することで、使用時の環境温度に関わらず、水硬性組成物における経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、その凝結時間が過度に遅延しないことが確認された。
【課題】水硬性組成物に添加することで、使用温度に関わらず、水硬性組成物における経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、水硬性組成物の凝結時間を過度に遅延させない水硬性組成物用添加剤を提供する。