特許第6906306号(P6906306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6906306再充電可能電池に使用される無秩序金属水素化物合金
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906306
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】再充電可能電池に使用される無秩序金属水素化物合金
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20210708BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20210708BHJP
   C22C 19/00 20060101ALI20210708BHJP
   C22F 1/10 20060101ALI20210708BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20210708BHJP
【FI】
   H01M4/38 A
   C01B3/00 B
   C22C19/00 F
   C22F1/10 A
   !C22F1/00 605
   !C22F1/00 621
   !C22F1/00 641A
   !C22F1/00 661C
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-523879(P2016-523879)
(86)(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公表番号】特表2016-529655(P2016-529655A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】US2014044042
(87)【国際公開番号】WO2014210120
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年6月23日
【審判番号】不服2019-5550(P2019-5550/J1)
【審判請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】13/926,093
(32)【優先日】2013年6月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599163621
【氏名又は名称】オヴォニック バッテリー カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、 クォ−ション
(72)【発明者】
【氏名】オウチ、 タイヘイ
【合議体】
【審判長】 平塚 政宏
【審判官】 市川 篤
【審判官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−323469(JP,A)
【文献】 特開2012−174639(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/060666(WO,A1)
【文献】 YOUNG K.,他2名,Effects of annealing and stoichiometry to (Nd,Mg)(Ni,Al)3.5 metal hydride alloys,Journal of Power Sources,オランダ王国,2012.10.01発行,Vol.215,Pages.152−159
【文献】 LI F.,他3名,Annealing effects on structural and electrochemical properties of (LaPrNdZr)0.83Mg0.17(NiCoAlMn)3.3 alloy、Journal of Alloys and Compounds,オランダ王国,2009.03.05発行,Vol.471 No.1−2、Pages.371−377
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00
C22C19/00
C22F 1/10
H01M 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属水素化物の電気化学的セルのアノードで電気化学的活物質として使用するための、構造的に無秩序なA+x(AB)合金であって、
xは、Aに対するABの比の平均であり、2超4未満で整数ではなく、1、2、3又は4つのAB層が各A平板間に存在し、
c軸に沿ったAとABの層の不規則な積層を有する合金であり、
前記合金には少なくとも一つの電気化学的活性二次相が分散され、
前記二次相は、電気化学的セルにおいて前記合金の電気化学的性能に貢献し、
前記電気化学的活性二次相は、前記合金中に2質量%〜8質量%で存在するAB相であり、
NdMg、及びZrの3つの金属成分からなる水素化物形成金属成分Aを含む合金。
【請求項2】
ab平面上の平均結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい請求項1の材料。
【請求項3】
5原子パーセント未満のMgが存在する請求項1の材料。
【請求項4】
金属水素化物の電気化学的セルのアノードで電気化学的活物質として使用するための、水素貯蔵材料を形成するプロセスであって、
水素化物形成金属及び非水素化物形成金属を含むインゴットを与えるステップと、
前記インゴットを、925℃〜940℃の温度で一定アニーリング時間にわたりアニーリングするステップと
を含み、
前記アニーリングするステップは、構造的に無秩序なA+x(AB)合金をもたらし、
xは、Aに対するABの比の平均であり、2超4未満で整数ではなく、1、2、3又は4つのAB層が各A平板間に存在し、c軸に沿ったAとABの層の不規則な積層を有する合金であり、
前記合金には少なくとも一つの電気化学的活性二次相が分散され、
前記二次相は、前記合金の電気化学的性能に貢献し、
前記合金が、NdMg、及びZrの3つの金属成分からなる水素化物形成金属成分Aを含むプロセス。
【請求項5】
前記アニーリング時間は4.5〜8時間である請求項のプロセス。
【請求項6】
前記アニーリング時間は5時間である請求項のプロセス。
【請求項7】
前記アニーリングするステップは、ab平面上の平均結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい合金材料をもたらす請求項いずれか一項のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金材料及びその製造方法に関する。本発明は詳しくは、水素の吸脱着能力を有する金属水素化物合金材料に関する。改善された高率放電能力を現す無秩序金属水素化物合金材料が与えられる。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2013年6月25日出願の米国特許出願第13/926,093号に従属しかつその優先権を主張する。その内容はすべてがここに参照として組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
一定の金属水素化物(MH)合金材料は、水素の吸脱着能力を有する。かかる材料は、水素貯蔵媒体として、並びに/又は、ニッケル/金属水素化物(Ni/MH)及び金属水素化物/空気電池システムを含む燃料電池及び金属水素化物電池のための電極材料として使用することができる。
【0004】
MHセルにおいてカソード及びMHアノード間に電位が適用されると、負極材料(M)は、金属水素化物(MH)を形成する水素の電気化学的吸着と水酸化物イオンの電気化学的放出とによって充電される。放電時には、貯蔵された水素が解放されて水分子を形成するとともに電子を放出する。ニッケルMHセルの正極において生じる反応もまた可逆的である。ほとんどのMHセルは、水酸化ニッケル正極を使用する。以下の充電及び放電反応が、水酸化ニッケル正極において生じる。
【化1】
【0005】
水酸化ニッケル正極及び水素貯蔵負極を有するMHセルにおいて、これらの電極は典型的に、不織布、フェルト、ナイロン又はポリプロピレンのセパレータによって分離される。電解質は通常、例えば20〜45重量パーセントの水酸化カリウムのようなアルカリ性電解液である。
【0006】
MH電池システムにおいて有用性があるMH材料の一つの特定的な群は、メンバー成分の元素が占有する結晶サイトを参照するとABクラスの材料として知られる。AB型材料は、例えば特許文献1及び2に開示されている。かかる材料は、改質されたLaNi型(AB)、及びラーベス相ベースの活物質(AB)を含み得るがこれらに限られない。これらの材料は、可逆的に水素化物を形成して水素を貯蔵する。かかる材料は、少なくともTi、Zr及びNiが、Cr、Mn、Co、V及びAlの少なくとも一以上とともに存在する一般Ti−Zr−Ni組成を利用する。この材料は多相材料であり、一以上のラーベス相結晶構造を含むがそれに限られない。
【0007】
これらの先行ABMH材料は、水素吸着能力が不十分であり、これはエネルギー密度が低いことと同等である。このことが、これらの材料を用いるシステムの容量の増加を極めて困難にしている。他方、AB合金は通常、コストが高くかつ高率性能が低い。
【0008】
希土類(RE)マグネシウムベースのAB型又はA型のMH合金は、高容量を一部の理由としてNi/MH電池における負極として現在使用されているABMH合金を置換するのに有望な候補である。RE−Mg−NiのMH合金はほとんどが、希土類金属としてLa限定ベースであったが、Nd限定A(AB)合金も最近は報告されている。かかる材料では、AB3.5の化学量論が、貯蔵容量、活性化、高率放電能力(HRD)、電荷保持及びサイクル安定性において最善の全体的なバランスを与えると考えられている。一つのNd限定A合金の圧力・濃度・温度(PCT)等温線は、低い充電状態条件の間に相対的に高い電圧を維持することができるα相において非常に急峻な離脱角度を示した[非特許文献1]。Nd限定Aは、市販のABMH合金と比べ、60℃貯蔵中の高い正極利用率及び低い抵抗増加を示すが、サイクル中の高い容量劣化も抱える[非特許文献2]。周知のA合金に関する他の問題は、先行AB合金システムよりも劣ったHRDを抱える点にある。
【0009】
以下に説明するが、本発明は無秩序MH合金材料に関し、これは、当該合金の電気化学的性能に貢献する多相を有する。与えられる合金は、先行REマグネシウムベースのAB型又はA型のMH合金よりもHRDを改善する、あつらえられた無秩序な結晶構造を有する。本発明のこれら又は他の利点が、以下の図面、議論及び説明から明らかとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,536,591号明細書
【特許文献2】米国特許第6,210,498号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】K.Young,et al.,Alloys Compd.2010;506:831
【非特許文献2】K.Young,A.Wu,Z.Qiu,J.Tan,W.Mays,Int.J.Hydrogen Energy,2012;37:9882
【非特許文献3】T.Ozaki,et al.,J.Alloys Compd.,2007;620:446−447
【発明の概要】
【0012】
本発明の以下の概要は、本発明に固有の革新的特徴のいくつかの理解を容易にするべく与えられるのであって、完全な記載を意図するわけではない。本発明の様々な側面の完全な理解は、明細書全体、特許請求の範囲、図面及び要約を全体的に参酌することによって得ることができる。
【0013】
開示されるのは、組成的にかつ構造的に無秩序なA+x(AB)合金である。ここで、xは1〜4の数であり、少なくとも一つの電気化学的に活性な二次相が当該合金に分散される。二次相は、当該合金の電気化学的性能に貢献することを特徴とする。無秩序な組成及び構造と電気化学的に活性な相との組み合わせにより、0.977以上、随意的に0.988以上という高率放電能力(HRD)を達成することができる。いくつかの実施形態は、c軸沿いよりも40%大きなab平面上の結晶サイズを含む。
【0014】
合金は、一次相と、少なくとも一つが電気化学的に水素を吸着及び脱着可能な一以上の二次相とを有する。二次相は随意的にAB相である。AB相は随意的に、当該材料中に2%〜8%存在する。
【0015】
合金は、前述のHRD及び二次相を随意的に備え、水素化物形成金属成分から形成される。水素化物形成金属成分は随意的に、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Y又はこれらの混合物である。随意的に、水素化物形成金属成分はこのリストのうちNdのみを含む。水素化物形成金属成分は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Y、これらの混合物、又はNdのみのいずれかの金属を含むが、随意的に一以上の添加剤、随意的にMgも含む。Mgは、存在する場合、随意的に10原子パーセント未満、随意的に5原子パーセント未満、随意的に3.3原子パーセント未満で存在する。
【0016】
水素貯蔵材料を形成するプロセスも与えられる。これは、水素化物形成金属成分及び非水素化物形成金属成分を含むインゴットを調製することを含む。水素化物形成金属は随意的に、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Y又はこれらの混合物を含む。随意的に、水素化物形成金属成分は、このリストからはNdのみを含む。水素化物形成金属成分は随意的に、Mgを10原子パーセント未満、随意的に5原子パーセント未満、随意的に3.3原子パーセント未満含む。インゴットはその後、一定のアニーリング時間、900℃を超える温度でアニーリングを受ける。これにより、アニーリングは、組成的かつ構造的に無秩序なA+x(AB)合金をもたらす。ここで、xは1〜4の数であり、少なくとも一つの電気化学的活性二次相が合金の中に分散され、当該二次相は、当該合金の電気化学的性能に貢献することを特徴とする。アニーリングは随意的に、4.5〜8時間、随意的には5時間のアニーリング時間である。アニーリング温度は随意的に、925〜940℃である。アニーリングは随意的に、925〜940℃のアニーリング温度で5時間行われる。
【0017】
プロセスは随意的に、0.977以上、随意的に0.988以上の高率放電能力を有する電気化学的活性合金材料をもたらす。
【0018】
多くの実施形態においてプロセスは、ab平面上の平均結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい無秩序合金構造をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明により調製された一群の材料のX線回折データパターンを示すグラフである。
図2A】本発明に係る一群の材料の走査型電子顕微鏡画像を例示する。
図2B】本発明に係る一群の材料の走査型電子顕微鏡画像をさらに例示する。
図2C】本発明に係る一群の材料の走査型電子顕微鏡画像をさらに例示する。
図2D】本発明に係る一群の材料の走査型電子顕微鏡画像をさらに例示する。
図2E】本発明に係る一群の材料の走査型電子顕微鏡画像をさらに例示する。
図2F】本発明に係る一群の材料の走査型電子顕微鏡画像をさらに例示する。
図3】950℃で16時間にわたりアニーリングされた本発明に係る材料によるXRDピークの半値全幅から推定された結晶サイズを例示する。
図4A】本発明に係る様々な合金材料の気相水素貯蔵特性を例示する。
図4B】本発明に係る様々な合金材料の気相水素貯蔵特性をさらに例示する。
図5A】浸水セル構成におけるアノードとして使用された場合の、本発明に係る様々な合金材料の容量を例示する。
図5B】浸水セル構成におけるアノードとして使用された場合の、本発明に係る様々な合金材料のHRDを例示する。
図6】Cサイズ円筒セルにおけるアノードとして使用された場合の、本発明に係る様々な材料のサイクル寿命を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
単数又は複数の特定実施形態の以下の説明は、本質的に単なる例示であって、本発明の範囲、その適用又は使用を制限する意図ではない。これらは当然変わり得る。本発明は、ここに含まれる非制限的な定義及び専門用語に関連して説明される。これらの定義及び専門用語は、本発明の範囲又は実施を制限するものとして機能する意図ではなく、例示及び説明のみを目的として提示される。プロセス又は組成が、一定順序の個々のステップとして又は特定の材料を使用して説明されるが、ステップ又は材料は、互換可能でよいことが認められる。その結果、本発明の説明は、当業者が容易に理解する多くの態様で配列された多数の部分又はステップを含み得る。
【0021】
xが1〜4のときにA+x(AB)となる結晶配列を有する組成的かつ構造的に無秩序な合金が与えられる。合金は、当該合金内に分散された少なくとも一つの電気化学的活性二次相を含む。これは、合金の電気化学的性能に貢献する。与えられる合金は、電気化学的セルのアノードにおける使用に適切な電気化学的材料としての有用性を有する。
【0022】
与えられる無秩序合金は、主A相と、随意的に(CeNi構造及びPuNi構造双方における)NdNi、NdNi、MgNdNi、NdNi及び(CeCo19構造及びPrCo19構造双方における)NdNi19としての、いくつかの二次相とを含む多相である。以前は秩序構造の存在が、改善された材料性能をもたらすと考えられていた。こうした先行材料とは対照的に、本発明者は、電気化学的活性二次相を備えた無秩序構造が、60℃の貯蔵中における正極利用率及び低い抵抗増加を維持する一方、有意に改善されたHRDも示すことを発見した。
【0023】
本明細書の文脈において、本発明の水素貯蔵合金材料は、一以上の相に存在する単一の化学的組成となり得るか、又は二以上の異なる化学的組成の複合となり得る。本発明の合金は、当該合金の全体的な電気化学的性能を改善する電気化学的に活性の一以上の二次相を含む。憶測に束縛されるのを望むわけではないが、本発明者は、無秩序格子構造と、2%〜8%の量の電気化学的活性二次相との組み合わせが、改善されたHRDに貢献すると考えている。特定例において、合金は、0.977以上の高率放電能力を有する。他の実施形態において、合金は、0.988以上の高率放電能力を有する。
【0024】
ここで使用されるように、用語「無秩序」とは、結晶構造において不均一分布の相を有する合金に関する。結晶構造における不均一分布の相の一例は、1、2、3又は4つのAB層が各A平板間に存在し得ることである。したがって、Aに対するABの比の平均は、整数とはならない。
【0025】
無秩序合金における無秩序レベルは、化学式A+x(AB)におけるxの値によって測定することができる。かかる構造の無秩序合金は、整数ではないx値を有する。化学式A+x(AB)を有する構造を備えた合金のxを計算する方法は、A:ABが1:xとなるような比を計算してxを解くことによる。Aの合計は2+xである。Bの合計は4+5xである。それゆえ、B/Aの比は以下の式によってモデル化される。
y=(4+5x)/(2+x) (I)
これにより、xが以下の式により定まる。
x=(2y−4)/(5−y) (II)
得られた合金構造におけるxについて解くと、当該合金が、分数又は非整数により示されるA相に対する不均一分布のABの存在によって、無秩序であるか否かが示される。秩序システムの一例として、1となるx値は、各A平板間にあるAB平板の数が1となる秩序ある配列を示す。(一つの可能な例としての)3.24となるx値は、xに対する分数値の存在によって当該システムにおける無秩序を示す。このようにして、結晶構造に不均一分布の相を有する合金が得られる。
【0026】
合金は、一次相と一以上の二次相とを含む。一次相は、合金全体において支配的に存在する材料相である。いくつかの実施形態において、一次相はA相によって代表される。一以上の二次相もまた合金に存在する。随意的に、二次相の数は1、2、3、4、5、6、7、又はそれ以上である。少なくとも一つの二次相が、合金の電気化学的性能に貢献する。いくつかの実施形態において、電気化学的活性二次相はAB相である。合金の電気化学的性能に貢献することにより二次相は、電気化学的性能の一以上の尺度を、活性レベルにある二次相が不在のシステムよりも改善するべく、電気化学的に活性となって一次相と相乗的に機能する。電気化学的性能の一つの例示的な尺度は、活性レベルにある当該二次相が不在の材料よりも改善したHRDである。思いがけなく発見されたことだが、無秩序合金システムにおいて、電気化学的活性二次相が特定レベルで存在することは、一次相と相乗的に機能して電気化学的性能の一以上の尺度を、実例としてはHRDを改善する。
【0027】
電気化学的活性二次相は随意的に、材料において2%〜8%又はその間の任意の値若しくは範囲の相存在比で存在する。随意的に、二次相は、2%〜6%のレベルで存在する。随意的に、二次相は、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9又は6の相存在比パーセントレベルで存在する。
【0028】
活性レベルで存在する電気化学的活性二次相は、合金全体に対して改善したHRDを促進する。HRDは、100mA/g及び8mA/gで測定された容量の比として測定される。A+x(AB)合金は随意的に、3回のサイクルで0.952〜0.987の範囲にあるHRDを有する。随意的に、HRDは、3回のサイクルで0.977以上である。随意的に、HRDは、6回のサイクルで0.977以上である。A+x(AB)合金は随意的に、6回のサイクルで0.988〜0.989の範囲にあるHRDを有する。随意的に、HRDは6回のサイクルで0.988以上である。
【0029】
与えられる合金は、随意的にc軸に沿った不規則な積層により、無秩序である。かかる配列は、ab平面に沿った平均結晶サイズによって代表される。これは、c軸に沿ったものよりも大きい。随意的に、ab平面に沿った平均結晶サイズは、c軸に沿ったものよりも少なくとも40%大きい。随意的に、ab平面に沿った平均結晶サイズは、c軸に沿ったものよりも少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%又は120%大きい。
【0030】
与えられる無秩序合金は、水素化物形成金属成分(A)を含む。水素化物形成金属成分は随意的に、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、イットリウム、又は、ミッシュメタルのようなこれらの組み合わせである。特定の実施形態では、水素化物形成金属成分はネオジムを含む。AB成分は、アルミニウム、ニッケル、コバルト及びマンガン、又はこれらの組み合わせの群から選択された金属を含む。特定の実施形態において、B成分はニッケルを含む。A成分、B成分又はその双方は、ケイ素、スズ、モリブデン、イットリウム、アンチモン、又はこれらの組み合わせを含み得る改質剤元素を随意的に伴うチタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、コバルト、アルミニウム、又はこれらの組み合わせであり得る一以上の元素によって一部が置換され得る。特定の実施形態において、A成分はネオジムを含み、B成分はニッケルを含む。
【0031】
水素化物形成金属成分は随意的に、一以上の添加材料を含む。添加材料は随意的に、A成分、B成分又はその双方の中に含まれる。随意的に、添加剤はマグネシウムである。例えば慎重に選択されたレベルにあるマグネシウムの存在は、合金の所望の無秩序結晶構造を促進する。随意的に、マグネシウムは、組成全体において1〜10原子パーセントのレベルで存在する。随意的に、マグネシウムは、3.3原子パーセント未満で存在する。マグネシウムは随意的に、10、9、8、7、6、5、4、3.2、3.1、3、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5又は1原子パーセント未満で存在する。3.2原子パーセント未満のマグネシウムのレベルが、電気化学的活性二次相の形成を許容する上で特に有利であることがわかった。好ましくは、1〜3原子パーセントのマグネシウムのレベルが特に有利である。いくつかの実施形態において、マグネシウムのレベルは、2.5〜2.8原子パーセントである。いくつかの実施形態は、組成全体に対して全体量が1〜3原子パーセント、随意的に2.5〜2.8原子パーセントのマグネシウムを、A成分における添加剤として含む。
【0032】
いくつかの実施形態は、Nd限定ベースのA+x(AB)合金を含む。ここで、水素化物形成成分は、Ndを唯一のRE金属として含み、xの平均は1〜4、随意的に2.44〜2.76である。Nd限定材料は随意的に、5原子パーセント未満、随意的に3.4原子パーセント未満、随意的に2.5〜2.8原子パーセントのMgを含む。随意的に、Nd限定ベースの材料は、サイクル6において0.977以上、随意的に0.988以上の高率放電能力を有する。Nd限定ベースのA+x(AB)合金もまた、ab平面上の結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい。電気化学的活性二次相は随意的に、2%〜8%又はその間の任意の値、随意的に2%〜6%のAB相が存在する。
【0033】
いくつかの実施形態は、La限定ベースのA+x(AB)合金を含む。ここで、水素化物形成成分は、Laを唯一のRE金属として含み、xの平均は1〜4、随意的に2.44〜2.76である。La限定材料は随意的に、5原子パーセント未満、随意的に3.4原子パーセント未満、随意的に2.5〜2.8原子パーセントのMgを含む。随意的に、La限定ベースの材料は、サイクル6において0.977以上、随意的に0.988以上の高率放電能力を有する。La限定ベースのA+x(AB)合金もまた、ab平面上の結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい。電気化学的活性二次相は随意的に、2%〜8%又はその間の任意の値、随意的に2%〜6%のAB相が存在する。
【0034】
いくつかの実施形態は、Sm限定ベースのA+x(AB)合金を含む。ここで、水素化物形成成分は、Smを唯一のRE金属として含み、xの平均は1〜4、随意的に2.44〜2.76である。Sm限定材料は随意的に、5原子パーセント未満、随意的に3.4原子パーセント未満、随意的に2.5〜2.8原子パーセントのMgを含む。随意的に、Sm限定ベースの材料は、サイクル6において0.977以上、随意的に0.988以上の高率放電能力を有する。Sm限定ベースのA+x(AB)合金もまた、ab平面上の結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい。電気化学的活性二次相は随意的に、2%〜8%又はその間の任意の値、随意的に2%〜6%のAB相が存在する。
【0035】
いくつかの実施形態は、(La,Pr,Nd)混合A+x(AB)合金を含む。ここで、水素化物形成成分は(La,Pr,Nd)混合材料をRE金属として含み、xの平均は1〜4、随意的に2.44〜2.76である。(La,Pr,Nd)混合材料は随意的に、5原子パーセント未満、随意的に3.4原子パーセント未満、随意的に2.5〜2.8原子パーセントのMgを含む。随意的に、(La,Pr,Nd)混合材料は、サイクル6において0.977以上、随意的に0.988以上の高率放電能力を有する。(La,Pr,Nd)混合A+x(AB)合金もまた、ab平面上の結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい。電気化学的活性二次相は随意的に、2%〜8%又はその間の任意の値、随意的に2%〜6%のAB相が存在する。
【0036】
いくつかの実施形態は、(La,Pr,Sm)混合A+x(AB)合金を含む。ここで、水素化物形成成分は(La,Pr,Sm)混合RE金属を含み、xの平均は1〜4、随意的に2.44〜2.76である。(La,Pr,Sm)混合材料は随意的に、5原子パーセント未満、随意的に3.4原子パーセント未満、随意的に2.5〜2.8原子パーセントのMgを含む。随意的に、(La,Pr,Sm)混合ベースの材料は、サイクル6において0.977以上、随意的に0.988以上の高率放電能力を有する。(La,Pr,Sm)混合A+x(AB)合金もまた、ab平面上の結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい。電気化学的活性二次相は随意的に、2%〜8%又はその間の任意の値、随意的に2%〜6%のAB相が存在する。
【0037】
いくつかの実施形態は、(La,Pr,Nd,Sm)混合A+x(AB)合金を含む。ここで、水素化物形成成分は(La,Pr,Nd,Sm)混合RE金属を含み、xの平均は1〜4、随意的に2.44〜2.76である。(La,Pr,Nd,Sm)混合材料は随意的に、5原子パーセント未満、随意的に3.4原子パーセント未満、随意的に2.5〜2.8原子パーセントのMgを含む。随意的に、(La,Pr,Nd,Sm)混合材料は、サイクル6において0.977以上、随意的に0.988以上の高率放電能力を有する。(La,Pr,Nd,Sm)混合A+x(AB)合金もまた、ab平面上の結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい。電気化学的活性二次相は随意的に、2%〜8%又はその間の任意の値、随意的に2%〜6%のAB相が存在する。
【0038】
いくつかの実施形態は、(La,Ce,Pr,Nd)混合A+x(AB)合金を含む。ここで、水素化物形成成分は(La,Ce,Pr,Nd)混合RE金属を含み、xの平均は1〜4、随意的に2.44〜2.76である。(La,Ce,Pr,Nd)混合材料は随意的に、5原子パーセント未満、随意的に3.4原子パーセント未満、随意的に2.5〜2.8原子パーセントのMgを含む。随意的に、(La,Ce,Pr,Nd)混合材料は、サイクル6において0.977以上、随意的に0.988以上の高率放電能力を有する。(La,Ce,Pr,Nd)混合A+x(AB)合金もまた、ab平面上の結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい。電気化学的活性二次相は随意的に、2%〜8%又はその間の任意の値、随意的に2%〜6%のAB相が存在する。
【0039】
いくつかの実施形態は、(La,Ce,Pr,Nd,Sm)混合A+x(AB)合金を含む。ここで、水素化物形成成分は(La,Ce,Pr,Nd,Sm)混合RE金属を含み、xの平均は1〜4、随意的に2.44〜2.76である。(La,Ce,Pr,Nd,Sm)混合材料は随意的に、5原子パーセント未満、随意的に3.4原子パーセント未満、随意的に2.5〜2.8原子パーセントのMgを含む。随意的に、(La,Ce,Pr,Nd,Sm)混合材料は、サイクル6において0.977以上、随意的に0.988以上の高率放電能力を有する。(La,Ce,Pr,Nd,Sm)混合A+x(AB)合金もまた、ab平面上の結晶サイズがc軸沿いのものよりも少なくとも40%大きい。電気化学的活性二次相は随意的に、2%〜8%又はその間の任意の値、随意的に2%〜6%のAB相が存在する。
【0040】
当業者にわかることだが、本発明は、ここに記載される多くの成分又はパラメータを含む多くの配列であって、それぞれが、xが1〜4の数のときの組成的かつ構造的に無秩序な、少なくとも一つの電気化学的活性二次相を含むA+x(AB)合金となる配列を含む。わかることだが、教示される又は等価の一次若しくは二次相若しくはこれらの数若しくは量、HRDのレベル、結晶積層パラメータ、水素化物形成金属成分、B成分、又は添加剤はいずれもそれぞれが、任意の構成及び任意の配列で組み合わせ可能であり、かつ、すべてが部分的又は全体的に、本発明の理解された実施形態である。
【0041】
組成的かつ構造的に無秩序なA+x(AB)合金は、インゴットを特定条件下でアニーリングすることによって形成される。アニーリングは、二次相に対する一次相の型及び量をあつらえるべく使用される。インゴットは、高周波誘導により溶融される原材料を組み合わせることのような業界において十分に認識された方法によって調製される。組成的かつ構造的に無秩序なA+x(AB)合金を形成するプロセスが与えられる。A成分、B成分、及び随意的に一以上の添加剤又は改質剤元素を含む水素化物形成金属のインゴットが、900℃以上のアニーリング温度で一定アニーリング時間にわたりアニーリングされて組成的かつ構造的に無秩序なA+x(AB)合金がもたらされる。
【0042】
一プロセスで使用されるアニーリング温度は900℃以上である。随意的に、アニーリング温度は925℃〜940℃である。925℃〜940℃のアニーリング温度が、最適な電気化学的特性を備えた合金をもたらすことがわかっている。随意的に、アニーリング温度は、925、930、935、940、945又は950℃である。アニーリング温度は、アニーリング時間にわたってインゴットに適用される。925℃〜940℃のアニーリング温度において、アニーリング時間は随意的に、3時間〜15時間又はその間の任意の値若しくは範囲である。随意的に、アニーリング時間は4時間〜10時間である。随意的に、アニーリング時間は4時間〜6時間である。随意的に、アニーリング時間は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15時間である。
【0043】
アニーリング温度及びアニーリング時間の組み合わせにより、所望の構造的無秩序、電気化学的活性二次相のレベル、及び最適な電気化学的特性を備えた合金がもたらされる。いくつかの実施形態において、HRDは、925℃〜940℃のアニーリング温度における、3〜15時間、随意的に4〜7時間のアニーリング時間にわたるアニーリングによって最適化される。
【0044】
あつらえられたアニーリングが、HRDが最適かつ予想外に高い組成的かつ構造的に無秩序のA+x(AB)合金をもたらす。
【0045】
本発明の様々な側面が、以下の非制限的例によって例示される。その例は、例示のみを目的とし、本発明の任意の実施を制限しない。理解されることだが、本発明の要旨及び範囲から逸脱せずに変形及び修正をなすことができる。
【0046】
実験
【0047】
一シリーズのMH合金が、様々なアニーリング条件によって調製され、本発明の原理を例示する実験シリーズに関連して評価された。合金は、基本型(Nd0.87Mg0.12Zr0.01)(Ni0.952Al0.046Co0.0023.74であった。3.74という化学量論の選択は、相対的に高い平衡プラトー圧力及びPCT線図のα相における急峻な立ち上がり角度を利用するべく包含された。材料が少量のZr及びCoを含んだのは、得られた合金のサイクル寿命及び活性化双方を改善する目的であった。材料は、業界周知の誘導溶融プロセスによって調製された。
【0048】
インゴットは、いくつかの2kgロットに分割された後、1気圧アルゴンにおいて行われるアニーリング条件の様々な選択の一つを受けた。試料が、900、925、940又は950℃のアニーリング温度で5時間又は16時間のアニーリング時間にわたりアニーリングされた。
【0049】
ICP分析
【0050】
調製された合金試料の化学的組成が、業界周知の原理によるVarian社のLiberty100誘導結合プラズマ(ICP)光放出分光計(OES)を使用して決定された。アニーリング前後のインゴットからのICP結果を、原子パーセントで表1に例示する。
【表1】
【0051】
鋳放し組成は、インゴット形成中における鋼鋳型から混入した少量のFe、及び予想Mg損失の過剰補償に起因する少量の付加的Mgという軽微な例外を伴う設計組成と優れた一致を示す。付加的Mg損失は、950℃で16時間にわたるアニーリングの後であっても観測されなかった。アニーリング後の最終的なB/A比は、鋳放しのものと、わずかに低い値(3.65)を示した最低温度でアニーリングされた試料という例外を除き、目標の3.74に極めて近い。このわずかな偏差は、本研究で用いられた従来型の溶融・鋳造法による組成の不均質性に起因すると考えら得る。
【0052】
XRD分析
【0053】
合金のミクロ構造が、Philips社のX’PertProX線回折計を利用して研究された。6つの試料(鋳放し、900、925、940若しくは950℃で5時間にわたる、又は950℃で16時間にわたるアニーリング済み)のXRDパターンが図1に示される。試料はすべて、NdNi構造が支配的であった。いくつかの二次相に、主二次相として機能するNdNiが観測された。NdNi相の存在比は、アニーリングの温度及び時間が増加するにつれて低下する。他の二次相には、NdNi(PuNi構造及びCeNi構造の双方)及びNdNi19(CeCo19構造及びPrCo19構造の双方)が含まれる。これらの相はすべて、A及びABが交互する積層シーケンスの相違を表す。同様の材料において主二次相の一つとして以前に報告されたMgNdNi相は[非特許文献2]、本材料において見出されていない。この相が不在なのは、3.4から2.8原子パーセントへのマグネシウム含有量の減少に起因するためと考えられる。
【0054】
各試料の主NdNi相からの格子定数a及びcが、c/a比及び単位セル体積とともに表2に列挙される。
【表2】
様々なアニーリング条件に伴う格子定数の変化は極めてわずかである。唯一の目立った変化は、任意条件でのアニーリングによる単位セル体積の減少である。
【0055】
またも表2に例示されるのは、Jade9ソフトウェアによって分析された相の存在比である。アニーリング温度の増加により、主NdNi相及びPrCo19相の増加がもたらされる。他の相すべての相対存在比は、アニーリング温度の増加とともに減少する。900℃で5時間にわたるアニーリングは、NdNi相の存在比を76.9%から89.3%まで増加させた。940℃までのアニーリング温度の増加は、NdNi相を97%を超えるまでに増加させた。アニーリング温度(950℃)のさらなる増加又はアニーリング時間の16時間までの延長は、NdNi相の存在比に有意なさらなる変化をもたらさなかった。最高のNi含有量を有するNdNi二次相は、鋳放し試料及びアニーリング済み試料の双方における主二次相である。この相の合金は、相対的に高い水素平衡圧力に基づき、水素との反応時に高い触媒能力を有することが予測される。NdNi二次相の存在比は、アニーリング温度が増加すると減少した。アニーリング時間を16時間までさらに増加させると、この相の存在比はさらに減少した。他のAB及びA19二次相はすべて、かなりの量の水素を貯蔵可能なMH合金である。これらの存在比は典型的に1重量%以下であり、そのNi含有量及び存在比の双方を考慮すると、NdNi相ほど重要ではなさそうである。
【0056】
相分布及び組成
【0057】
合金の相分布及び組成が、エネルギー分散分光法(EDS)能力を備えたJEOL社のJSM6320F走査型電子顕微鏡を使用して検査された。試料は、エポキシブロックに搭載及び研摩され、SEMチャンバに入れる前にリンス及び乾燥された。後方散乱電子画像が図2A〜Fに提示される。EDSによる研究のためのいくつかの領域が選択される。これらは、図2A〜Fにおいて数字で描かれる。EDS測定の結果は表3に例示される。
【表3】
【0058】
ZrO図2Aの4及び図2Bの4)及び金属Nd(図2Cの1)のわずかな含有物が観測されたが、これらは全体的な材料特性にとって重要ではないと考えられる。鋳放し試料において、約4.0のB/A比の暗いコントラストの粒子、及び約2.7のB/A比の明るいマトリクスはそれぞれ、NdNi相及びNdNi相に割り当てられる(図2A)。化学量論比(5.0及び3.5)からの大きな逸脱は、双方の相の広範な溶解度を示す。インゴットが900℃で5時間にわたりアニーリングされたとき、NdNi相は小さくなり、そのB/A比は約3.9のままであった。アニーリング後、主相におけるB/A比は2.7から3.1(3.2)まで増加した。アニーリング温度の増加に伴いNdNiの量は減少し、主相におけるB/A比は3.2〜3.3に近づいた。
【0059】
一つの特定の理論に制限されるわけではないが、中間化学量論に対する一つの可能な説明は、c軸沿いの積層シーケンスにあり得る。AB構造が、1のAブロックに挟まれた1のABブロックからなる一方、A構造は、2のABブロック及び1のAブロックからなる[非特許文献3]。3.3という化学量論は、各Aブロック間にあるランダムな秩序(例えば無秩序)の1又は2のABブロックに対応し得る。950℃で16時間にわたりアニーリングされた試料による、XRDピークの半値全幅から推定された結晶サイズが図3に示される。ab平面上の平均結晶サイズは、c軸沿いのものよりも長い。他の配向沿いの結晶サイズは、中間範囲に収まっている。この例では、c軸沿いの積層シーケンスは、他の配向ほど秩序があるわけではない。
【0060】
気相特性
【0061】
各試料の気相水素貯蔵特性が、鈴木商館の多チャンネル圧力濃度温度(PCT)システムを使用して測定された。PCT分析において、各試料は最初、25気圧のH2圧力における300℃〜室温の範囲で2時間の熱サイクルによって活性化された。その後、30℃及び60℃におけるPCT等温線が測定された。得られた吸着及び脱着等温線が図4に提示され、得られた情報が表4にまとめられる。
【表4】
【0062】
もたらされた主相存在比は、900℃及び925℃でのアニーリングの後、最大及び可逆水素貯蔵容量の双方において増加する。アニーリング温度を940℃及び950℃まで増加させると、双方の容量は、NdNi二次相存在比の減少ゆえに減少した。NdNi相は、大きなニッケル含有量の電気化学的活性相であり、弱い金属・水素結合に対応する。
【0063】
脱着等温線の中点として定義される平衡プラトー圧力は、アニーリングの後、実質的に減少した。高い温度及び/又は長い時間でのアニーリング条件が、中点圧力の落ち込みをもたらした。これは、平均金属・水素結合強度の増加を示す。
【0064】
秩序の程度は、0.01〜0.5MPaにおける可逆容量に対する貯蔵容量の比として定義される傾き係数(SF)によって表される。各合金のSFも表4に列挙される。アニーリングは、合金均一性を増加させる結果、大きなSF値を伴う平坦な等温線に貢献する。
【0065】
PCT等温線のヒステリシスはln(P/P)として定義される。ここで、P及びPはそれぞれ、脱着等温線の中点における吸着及び脱着の平衡圧力である。ヒステリシスは、サイクリング中の合金の粉砕率を予測するべく使用することができる[59]。ヒステリシスが大きな合金は、水素化/脱水素化サイクル中の高い粉砕率を有する。各合金のヒステリシスも表4に列挙される。ヒステリシスからは、アニーリングによるサイクル安定性の大きな増加が予測される。アニーリング温度の増加は、ヒステリシスのわずかな増加に相関する。
【0066】
電気化学的評価
【0067】
各合金の放電容量が、部分的に事前充電されたNi(OH)正極に対する浸水セル構成において測定された。半電池の電気化学的研究を目的として、各インゴットは最初に粉砕され、その後、200メッシュのふるいを通された。ふるいにかけられた粉末はその後、10トンのプレスによって拡張ニッケル金属基板へと固められ、バインダを使用することなく試験電極(面積約1cm及び厚さ0.2mm)に形成された。これにより、活性化挙動の改善された測定が可能となる。得られた小サイズ電極の放電容量が、部分的に事前充電されたNi(OH)ペースト電極を正極として、及び6MのKOH溶液を電解質として使用することにより、浸水セル構成において測定された。システムは、100mA/gの電流密度で5時間にわたり充電され、その後、0.9Vのカットオフ電圧に到達するまで100mA/gの電流密度で放電された。システムはその後、0.9Vのカットオフ電圧に到達するまで24mA/gの電流密度で放電され、最終的には、0.9Vのカットオフ電圧に到達するまで8mA/gの電流密度で放電された。
【0068】
最初の13サイクルから得られた全容量(8mA/g)及びHRD(100及び8mA/gで測定された容量の比として定義)がそれぞれ、図5A及び5Bにプロットされる。900℃及び925℃でアニーリングされた試料は、容量活性化が最速である。低い温度でのアニーリングが活性化に役立つ一方、940℃及び950℃でのアニーリングは活性化が困難であった。
【0069】
全容量及び高率容量が表5において比較される。
【表5】
【0070】
アニーリングは全容量及び高率容量の双方を増加させる。小さな相違が、925℃を超える温度でのアニーリングによって観測される。しかしながらHRDは、アニーリング温度が950℃まで増加すると低下した。一つの特定の理論に制限されるわけではないが、HRD劣化の一つの可能な説明は、触媒NdNi相の存在比の減少にある。その減少は、この二次相の量を、主相材料に関連付けられる場合の十分に相乗的な貢献未満へと動かす。
【0071】
従来より、バルク拡散係数(D)及び表面交換電流(I)の双方が、HRD変化の原因を研究するべく使用されている。双方のパラメータの値も表5に列挙される。すべてのD値は、Nd限定AB3.74合金のバルクにおいては水素輸送が容易であることを示す。NdNi二次相が最大量の鋳放し試料は、D値が最高であるがI値は最低であった。アニーリングは、水素拡散を困難にするという犠牲を払って表面触媒能力を改善した。Iは、表面を活性化することが難しい均一合金を示す最高のアニーリング温度(950℃)で減少した。HRDをD及びIと比較すると、これらのNdNi3.74試料においてHRD特性は、バルク(D)よりも表面特性(I)によって支配され得ることが示唆される。
【0072】
密封セル試験が、Cサイズ円筒電池において行われた。乾燥して固められた負極、ペーストNi(OH)対電極、6MのKOH電解質、及びグラフトPP/PEセパレータを備えたCサイズNi/MH電池が作られた。設計は、過充電リザーバ及び過放電リザーバ間の良好なバランスを維持するべく、負対正容量比が1.6の、正極制限とされた。この設計の公称容量は約4.6Ahである。電荷保持が、最初に0.1Cレートで完全充電し、その後室温で30日間貯蔵してから、0.2Cレートでの全放電容量をとることにより測定された。この0.2Cレートでの残留容量が、当該貯蔵前に0.2C放電レートで測定された当初容量によって正規化された。30日電荷保持実験の結果が表5にまとめられる。アニーリング温度の増加が電荷保持を有意に改善した。大きな電荷保持が大きなアニーリング温度に相関する。
【0073】
各電池のサイクル寿命が、2.0Ahの容量が達成されるまで室温で行われる充電/放電サイクルを繰り返すことによって試験された。充電は、−ΔV終了法によって0.5Cレートで完了した。充電プロセスは、充電の完了及び水素・酸素再結合の開始を示す最大セル電圧からの3mVの減少が検出されたときに終了とされた。放電は、カットオフ電圧設定が0.9Vとなる0.5Cレートで完了した。サイクル寿命の間に測定されたセル容量が図6において比較され、2.0Ah容量に到達したサイクル数が表5に列挙される。900℃でのアニーリングは、サイクル寿命に影響しなかったが、正極利用性を改善させた。アニーリング温度の増加はサイクル寿命を延ばした。これは、温度が950℃に到達したときにプラトーになるように見える。アニーリング時間の16時間までの増加は、若干ではあるがサイクル寿命をさらに改善した。
【0074】
全体的に、鋳放し試料と比較して、900℃及び925℃で5時間にわたりアニーリングしたものは、単位セル体積の減少、組成均一性の増加、NdNi主相の増加、NdNi二次相の減少、気相及び電気化学双方の容量の増加、ヒステリシス減少を伴うPCT等温線の平坦化、並びに、活性化、高率放電能力及び電荷保持の改善を示した。アニーリングの温度及び/又は時間のさらなる増加は、主相存在比及び電気化学的貯蔵容量の有意ではない変化、950℃での16時間にわたるアニーリングが相乗的なレベル未満にまで低減されるようなNdNi相存在比の連続的な減少、気相水素貯蔵容量及びプラトー圧力の減少、高率放電能力及び表面反応電流の減少、並びに、電荷保持及びサイクル寿命の連続的な改善をもたらした。最高の高率放電能力と、容量、電荷保持及びサイクル寿命間のバランスとが、940℃で5時間にわたりアニーリングされた試料において観測された。これは、十分な量のNdNi二次相(約2重量%)を備えた合金をもたらした。この二次相は、合金の電気化学的性能全体に相乗的に貢献する。
【0075】
本明細書において言及される特許、公報及び出願は、本発明に関与する当業者のレベルを示す。これらの特許、公報及び出願は、まるで個々の特許、公報又は出願が、特定的かつ個別的に参照としてここに組み入れられたのと同程度に、ここに参照として組み入れられる。
【0076】
上述に鑑み、本発明の他の修正例及び変形例を実装できることも理解すべきである。上述の図面、議論及び説明は、本発明のいくつかの特定実施形態の例示であるが、その実施における制限を意味するものではない。すべての均等物を含む以下の特許請求の範囲こそが、本発明の範囲を画定する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6