(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されたシール構造では、ライナーリング本体55に形成された切欠部55aに対して、ライナーリングカバー57の折曲部57aを半径方向および周方向に遊びを持たせて挿入しているため、この遊びを確保するための隙間S(
図25参照)を介して流体が矢印X(
図24参照)に沿った経路で、ライナーリング本体55の下面(低圧側)に回り込み、ライナーリング本体55の下面とライナーリングケース56との間を通って低圧側へ漏れてしまい、ポンプ効率が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するために創案されたものであり、インペラの吸込口の外周と隔壁との隙間を介して高圧側から低圧側へ流れようとする流体をシールするために、ライナーリング本体、ライナーリングケースおよびライナーリングカバーを備え、ライナーリング本体が半径方向に移動可能とされ且つインペラと供回りしないように係止された、遠心ポンプのシール構造において、従来のものよりも確実に漏れを防止することのできる遠心ポンプのシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる遠心ポンプのシール構造(第1の発明)は、遠心ポンプにおける隔壁の開口部と、インペラの吸込口の外周面との隙間をシールするためのものであって、ライナーリング本体と、ライナーリングケースと、前記ライナーリング本体を、当該ライナーリング本体の半径方向内側を除いて、軸方向他方から覆い、前記ライナーリングケースのフランジ部に固定されたライナーリングカバーと、を備える。前記ライナーリングケースは、前記ライナーリング本体を、当該ライナーリング本体の半径方向内側を除いて、軸方向一方から覆う側壁部と、この側壁部の外周部から連続して軸方方向他方へ形成された、前記隔壁の開口部に圧入される円筒部と、この円筒部の軸方向他方の端部から連続して半径方向外方へ延出したフランジ部と、を有する。そして、前記ライナーリング本体の外周部には、第1の係合部が形成され、前記ライナーリングケースには、当該ライナーリングケースを貫通する流路が生じないように第2の係合部が形成され、前記第1の係合部と前記第2の係合部とが、前記ライナーリング本体が回転規制されるように、互いに周方向に係合されている。
【0010】
かかる構成を備える遠心ポンプのシール構造によれば、ライナーリングカバーに何も設けることなく、ライナーリング本体を半径方向および周方向に遊びを持たせた状態で回転係止させることができるため、ライナーリングカバーを貫通する流路が形成されることがない。その結果、高圧側から低圧側への流体の漏れが阻止される。
【0011】
第1の発明において、例えば、前記第1の係合部は、前記ライナーリング本体の半径方向外周縁部に形成された複数の切欠部であり、前記第2の係合部は、前記切欠部に挿入されるように前記ライナーリングケースに形成された突起部である(第2の発明)。
【0012】
かかる構成を備える遠心ポンプのシール構造によれば、突起部をライナーリングカバーに設けることなく、ライナーリングケースのみに設けていることから、高圧側には、突起部も切欠部も露出しておらず、これらは、ライナーリングカバーで覆われている。このため、ライナーリング本体に形成された切欠部に対して、突起部を半径方向および周方向に遊びを持たせた状態で挿入していても、高圧側では、当該遊びを確保するための隙間がライナーリングカバーで覆われているため、当該隙間を介した高圧側から低圧側への流体の漏れが阻止される。
【0013】
第1の発明において、例えば、前記第1の係合部は、前記ライナーリング本体の半径方向外周縁部に2個1組で複数組形成された凸部であり、前記ライナーリングケースには、前記隔壁の開口部で覆われる孔が複数形成され、前記第2の係合部として、前記各孔の軸方向一方の縁部から延出した舌片状の突起部が形成されており、当該舌片状の突起部が、各組を成す2個の凸部の間に挿入されているものとしてもよい(第3の発明)。
【0014】
第1の発明において、例えば、前記第1の係合部は、前記ライナーリング本体の半径方向外周縁部に2個1組で複数組形成された凸部であり、前記ライナーリングケースには、前記隔壁の開口部で覆われる孔が複数形成され、前記第2の係合部として、前記各孔の軸方向他方の縁部から延出した舌片状の突起部が形成されており、当該舌片状の突起部が、各組を成す2個の凸部の間に挿入されているものとしてもよい(第4の発明)。
【0015】
第2の発明において、前記ライナーリングケースには、前記隔壁の開口部で覆われる孔が複数形成されており、前記突起部は、前記各孔の軸方向一方の縁部から延出して前記切欠部に挿入された舌片状のもの、としてもよい(第5の発明)。
【0016】
第2の発明において、前記ライナーリングケースには、前記隔壁の開口部で覆われる孔が複数形成されており、前記突起部は、前記各孔の軸方向他方の縁部から延出して前記切欠部に挿入された舌片状のもの、としてもよい(第6の発明)。
【0017】
第2の発明において、前記ライナーリングケースには、前記隔壁の開口部で覆われる孔が複数形成されており、前記突起部は、前記各孔の側縁部から延出して前記切欠部に挿入された舌片状のもの、としてもよい(第7の発明)。
【0018】
第2の発明において、前記突起部は、前記円筒部の各部が前記切欠部側へ膨出して形成されたもの、としてもよい(第8の発明)。
【0019】
第2の発明において、前記突起部は、前記円筒部から前記側壁部に至る各部分が前記切欠部側へ膨出して形成されたもの、としてもよい(第9の発明)。
【0020】
第1の発明において、前記第1の係合部は、前記ライナーリング本体の半径方向外周縁部に形成された複数の凸部であり、前記第2の係合部は、前記凸部が挿入され、前記隔壁の開口部で覆われる前記ライナーリングケースに形成された孔である、ものとしてもよい(第10の発明)。
【0021】
本発明にかかる遠心ポンプのシール構造(第11の発明)は、遠心ポンプにおける隔壁の開口部と、インペラの吸込口の外周面との隙間をシールするためのものであって、ライナーリング本体と、ライナーリングケースと、前記ライナーリング本体を、当該ライナーリング本体の半径方向内側を除いて、軸方向他方から覆い、前記ライナーリングケースのフランジ部に固定されたライナーリングカバーと、を備える。前記ライナーリングケースは、前記ライナーリング本体を、当該ライナーリング本体の半径方向内側を除いて、軸方向一方から覆う側壁部と、この側壁部の外周部から連続して軸方方向他方へ形成された、前記隔壁の開口部に圧入される円筒部と、この円筒部の軸方向他方の端部から連続して半径方向外方へ延出したフランジ部と、を有する。そして、前記ライナーリング本体の外周部には、第1の係合部が形成され、前記ライナーリングカバーには、当該ライナーリングカバーを貫通する流路が生じないように第2の係合部が形成され、前記第1の係合部と前記第2の係合部とが、前記ライナーリング本体が回転規制されるように、互いに周方向に係合されている。
【0022】
かかる構成を備える遠心ポンプのシール構造によれば、前記ライナーリング本体を回転規制するためにライナーリングカバーに設けられる第2の係合部は、当該ライナーリングカバーを貫通する流路が生じないように設けられるものであるので、高圧側から低圧側への流体の漏れが阻止される。
【0023】
第11の発明において、前記第1の係合部は、前記ライナーリング本体の半径方向外周縁部に形成された複数の切欠部であり、前記第2の係合部は、前記ライナーリングカバーの各部が前記切欠部に挿入されるように前記切欠部側へ膨出して形成された突起部である、ものとしてもよい。
【0024】
かかる構成を備える遠心ポンプのシール構造によれば、ライナーリング本体に形成された切欠部に対して、ライナーリングカバーに形成された突起部を半径方向および周方向に遊びを持たせた状態で挿入していても、高圧側では、当該遊びを確保するための隙間がライナーリングカバーで覆われているため、当該隙間を介した高圧側から低圧側への流体の漏れが阻止される。
【0025】
本発明にかかる遠心ポンプは、前記何れかのシール構造を備えるものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる遠心ポンプのシール構造によれば、従来のものよりも確実に漏れを防止でき、遠心ポンプのポンプ効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施の形態にかかる遠心ポンプの概略構成を示した図である。
【
図3】ライナーリング本体、ライナーリングケースおよびライナーリングカバーの部分断面図である。(a)は切欠部および突起部が形成されていない箇所の断面を示す。(b)は切欠部および突起部が形成されている箇所の断面を示す。
【
図4】(a)はライナーリング本体を示す図である。(b)はライナーリングケースを示す図である。(c)はライナーリングカバーを示す図である。
【
図5】(a)はライナーリングケースにライナーリング本体を組み込んだ状態を示す図である。(b)はライナーリング本体、ライナーリングケースおよびライナーリングカバーが組み上がった状態を低圧側から視た図である。(c)は(b)の部分拡大図である。
【
図6】ライナーリングケースの部分断面図である。(a)は突起部形成前の状態を示す。(b)は突起部形成後の状態を示す。
【
図7】第2の実施形態に係るライナーリングケースの部分断面図である。(a)は突起部形成前の状態を示す。(b)は突起部形成後の状態を示す。
【
図8】第3の実施形態に係るライナーリングケースの部分断面図である。(a)は突起部形成前の状態を示す。(b)は突起部形成後の状態を示す。
【
図9】第4の実施形態に係るライナーリング本体、ライナーリングケースおよびライナーリングカバーの部分断面図である。(a)は突起部が形成されていない箇所の断面を示す。(b)は突起部が形成されている箇所の断面を示す。
【
図10】第4の実施形態に係るライナーリングケースを示す斜視図である。(a)は斜め下から視た斜視図、(b)は斜め上から視た斜視図である。
【
図11】第5の実施形態に係るライナーリング本体、ライナーリングケースおよびライナーリングカバーの部分断面図である。(a)は凸部および突起部が形成されていない箇所の断面を示す。(b)は1組を成す2つの凸部の間且つ突起部が形成されている箇所の断面を示す。
【
図12】第5の実施形態に係るライナーリング本体を示す平面図である。
【
図13】第5の実施形態に係るライナーリングケースを示す斜視図である。(a)は斜め下から視た斜視図、(b)は斜め上から視た斜視図である。
【
図14】第6の実施形態に係るライナーリング本体、ライナーリングケースおよびライナーリングカバーの部分断面図である。(a)は凸部および突起部が形成されていない箇所の断面を示す。(b)は1組を成す2つの凸部の間且つ突起部が形成されている箇所の断面を示す。
【
図15】第6の実施形態に係るライナーリングケースを示す斜視図である。(a)は斜め下から視た斜視図、(b)は斜め上から視た斜視図である。
【
図16】第7の実施形態に係るライナーリング本体、ライナーリングケースおよびライナーリングカバーの部分断面図である。(a)は凸部および孔が形成されていない箇所の断面を示す。(b)は1組を成す2つの凸部および孔の間の箇所の断面を示す。
【
図17】第7の実施形態に係るライナーリングケースを示す斜視図である。(a)は斜め下から視た斜視図、(b)は斜め上から視た斜視図である。
【
図18】第8の実施形態に係るライナーリング本体、ライナーリングケースおよびライナーリングカバーの部分断面図である。(a)は突起部および切欠部が形成されていない箇所の断面を示す。(b)は突起部および切欠部が形成されている箇所の断面を示す。
【
図19】第8の実施形態に係るライナーリングケースを示す斜視図である。(a)は斜め下から視た斜視図、(b)は斜め上から視た斜視図である。
【
図20】第9の実施形態に係るライナーリング本体、ライナーリングケースおよびライナーリングカバーの部分断面図である。(a)は切欠部および突起部が形成されていない箇所の断面を示す。(b)は切欠部および突起部が形成されている箇所の断面を示す。
【
図21】第9の実施形態に係るライナーリング本体を示す平面図である。
【
図22】第9の実施形態に係るライナーリングケースを示す斜視図である。(a)は斜め下から視た斜視図、(b)は斜め上から視た斜視図である。
【
図23】第9の実施形態に係るライナーリングケースの部分断面図である。(a)は突起部形成前の状態を示す。(b)は突起部形成後の状態を示す。
【
図24】従来例に係る遠心ポンプのシール構造を示す部分断面図である。
【
図25】従来例に係る遠心ポンプのシール構造を低圧側から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施の形態に係る遠心ポンプのシール構造について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、遠心ポンプとして、深井戸対応の多段遠心ポンプを例に挙げて説明する。
【0029】
図1および
図2に深井戸対応の多段遠心ポンプ1(以下単に「遠心ポンプ1」という。)を示す。同図に示すように、遠心ポンプ1は、そのケーシング2内に図外のモータと連結される主軸3と、主軸3に回転一体に設けられた複数のインペラ4と、各インペラ4の軸方向下流側にケーシング2内に固定された案内羽根部5とを備えている。インペラ4が回転駆動すると、インペラ4および案内羽根部5の作用により、流体が吸引口7から吸引され吐出口8から吐出される。なお、吐出口8の直近上流側には逆止弁9が設けられている。以下では、説明の便宜上、吐出口8を上にして主軸3を鉛直方向に向けた状態での各部の説明について「上」「下」の語を用いる。
【0030】
ケーシング2内には、
図2に示すように、インペラ4および案内羽根部5ごとに隔壁11が設けられており、隔壁11の開口部12にインペラ4の円筒状の吸込口13が挿入されている。そして、隔壁11の開口部12と、インペラ4の吸込口13の外周面との間に、これらの隙間をシールするためのシール構造100が設けられている。なお、隔壁11は円筒状のケーシング2と一体物となっている。
【0031】
以下、上記シール構造100について詳細に説明する。
図2に示すように、本発明の実施形態に係るシール構造100は、遠心ポンプ1における隔壁11の開口部12と、インペラ4の吸込口13の外周面との隙間をシールするためのものであり、ライナーリング本体13、ライナーリングケース14、ライナーリングカバー15等で構成されている。
【0032】
ライナーリング本体13は、例えば、断面矩形の円環板からなり、
図3(b)および
図4(a)に示すように、その半径方向外周縁部に周方向に一定間隔をおいて複数(
図4に示す例では3つ)の切欠部13a(第1の係合部)を有する。本実施形態では、金属製の円環板13Aをゴム材13Bで被覆して全体として断面矩形の円環板に形成したライナーリング本体13が使用されている。なお、ライナーリング本体13は、これに限定されず、単一材料(例えばゴム材のみ)からなるものを使用してもよい。
【0033】
ライナーリングケース14は、例えば、
図3(a)および
図4(b)に示すような断面形状を有する円環状のものであって、側壁部14a、円筒部14bおよびフランジ部14cからなる。このライナーリングケース14は、隔壁11の開口部12に対して圧入されることにより固定される。側壁部14aは、ライナーリング本体13を、半径方向内側を除いて、軸方向下方から覆うように形成されている。円筒部14bは、側壁部14aの外周端部から連続して軸方方向上方へ形成されている。フランジ部14cは、円筒部14bの軸方向上方の端部から連続して半径方向外方へ延出している。なお、ライナーリングケース14の円筒部14bの内周面の半径R1は、ライナーリング本体13の半径R2より大きく設定されている。
【0034】
また、
図3(b)および
図4(b)に示すように、ライナーリングケース14の円筒部14bには、ライナーリング本体13の切欠部13a(第1の係合部)に挿入される突起部17(第2の係合部)が形成されている。切欠部13aと突起部17とは互いに周方向に係合し、これによりライナーリング本体13は、インペラ4と供回りしないように回転規制される。突起部17の周方向幅は切欠部13aの周方向幅より若干小さく設定されており、
図5に示すように、ライナーリングケース14にライナーリング本体13が嵌め込まれたときに、周方向および半径方向に一定の遊びが確保される。
【0035】
上記ライナーリングケース14を製作するには、例えば薄板材に絞り加工を施し、その内径側および外径側を切除して、
図3(a)に示すような断面形状を形成した上で、円筒部14bにコ字状(上方に開口した「コ」の字状)の切込みを入れる。そして、円筒部14bに設けられたコ字状の切込み19に囲まれた部分を円筒部14bの外側から内側に向けて(矢印Pの方向に向けて)押し込むことにより、
図6(b)に示すように、舌片状の突起部17を形成する。このようにして突起部17が設けられた場合、円筒部14bに矩形の孔21が残存し、孔21の軸方向上方の縁部22から舌片状の突起部17が延出したものとなる。
【0036】
ライナーリングカバー15は、例えば薄板材に絞り加工を施し、その内径側および外径側を切除して形成されたものであり、
図3および
図4(c)に示すように、半径方向中間位置に段差15bが形成されたものからなる。段差15bより半径方向外側の外周部15aは、ライナーリングケース14のフランジ部14cに溶接にて固定されている。段差15bより半径方向内側の内周部15cは、ライナーリング本体13を、当該ライナーリング本体13の半径方向内側を除いて、軸方向上方から覆う。なお、本実施形態では、
図3(a)に示すように、上記段差15bは、ライナーリングケース14の円筒部14bの内周面よりも主軸3側に形成されている。
【0037】
以上のように構成されたシール構造100においては、突起部17をライナーリングカバー15に設けることなく、ライナーリングケース14のみに設けている。このことから、
図5(b)に示すように、高圧側(シール構造100の上側)には、突起部17も切欠部13aも露出しておらず、これらは、ライナーリングカバー15で覆われている。このため、
図5(c)に示すように、ライナーリング本体13に形成された切欠部13aに対して、突起部17を半径方向および周方向に遊びを持たせた状態で挿入していても、高圧側では、当該遊びを確保するための隙間18がライナーリングカバー15で覆われているため、当該隙間18を介した高圧側から低圧側への流体の漏れが阻止される。その結果、遠心ポンプ1のポンプ効率が向上する。なお、ライナーリングケース14の円筒部14bには、孔21が形成されているが、円筒部14bが、隔壁11の開口部12(円筒状の開口部)に圧入されて当該開口部12によって完全に覆われていることから、当該孔21がライナーリングケース14を貫通する流路を形成し、これが高圧側から低圧側への流路となることはない。
【0038】
<第2の実施形態>
上記ライナーリングケース14に設けられた突起部17は、
図6(b)に示したように、孔21の軸方向上方の縁部22から舌片状に延出したものであったが、この突起部17に代えて
図7(b)に示すように、孔21の軸方向下方の縁部23から舌片状に延出した突起部17Aを採用してもよい。
【0039】
このようなライナーリングケース14Aを製作するには、例えば薄板材に絞り加工を施し、その内径側および外径側を切除して、
図3(a)に示すような断面形状を形成した上で、円筒部14bにコ字状(下方に開口した「コ」の字状)の切込みを入れる。そして、円筒部14bに設けられたコ字状の切込み24に囲まれた部分を円筒部14bの外側から内側に向けて(矢印Pの方向に向けて)押し込むことにより、
図7(b)に示すように、舌片状の突起部17Aを形成する。
【0040】
なお、第2の実施形態に係るシール構造は、第1の実施形態に係るシール構造と比較して、上記突起部17Aの点のみが相違し、その他の構成については、第1の実施の形態と同様である。また、第2の実施形態に係るシール構造においても、ライナーリング本体はライナーリングケースおよびライナーリングカバーに対して、周方向および半径方向に一定の遊びを確保した状態で嵌め付けられる。また、第2の実施形態に係るシール構造おいても、孔21は、隔壁11の開口部12に覆われており、当該孔21がライナーリングケース14を貫通する流路を形成し、これが高圧側から低圧側への流路となることはない。
【0041】
<第3の実施形態>
上記ライナーリングケース14に設けられた突起部17は、
図6(b)に示したように、孔21の軸方向上方の縁部22から舌片状に延出したものであったが、この突起部17に代えて
図8(b)に示すように、円筒部14bを、外側から内側に向かって局部的に押し込み膨出させることによって形成される突起部17Bを採用してもよい。
【0042】
このようなライナーリングケース14Bを製作するには、例えば薄板材に絞り加工を施し、その内径側および外径側を切除して、
図8(a)に示すように、側壁部14a、円筒部14bおよびフランジ部14cを形成する。そして、円筒部14bを、外側から内側に向けて(矢印Pの方向に向けて)押圧金具26を用いて局部的に押し込むことにより、
図8(b)に示すように、押し込み部分の裏面側が隆起して突起部17Bが形成される。
【0043】
なお、第3の実施形態に係るシール構造は、第1の実施形態に係るシール構造と比較して、上記突起部17Bの点および孔21が無い点で相違し、その他の構成については、第1の実施の形態と同様である。また、第3の実施形態に係るシール構造おいても、ライナーリング本体はライナーリングケースおよびライナーリングカバーに対して、周方向および半径方向に一定の遊びを確保した状態で嵌め付けられる。
【0044】
第3の実施形態に係るシール構造では、ライナーリングケース14Bに貫通孔が存在しないため、隔壁11の開口部12への圧入状態にかかわらず、ライナーリングケースを貫通する流路が生じることはなく、高圧側から低圧側へ流体が漏れることをより確実に防止できる。
【0045】
<第4の実施形態>
上記ライナーリングケース14に設けられた突起部17は、
図6(b)に示したように、孔21の軸方向上方の縁部22から舌片状に延出したものであったが、この突起部17に代えて
図9(b)および
図10に示すように、円筒部14bから側壁部14aに至る各部分を、ライナーリング本体13の切欠部13a側に向かって押し込み、膨出させることによって形成される突起部17Cとしてもよい。
【0046】
なお、第4の実施形態に係るシール構造は、第1の実施形態に係るシール構造と比較して、上記突起部17Cの点および孔21が無い点で相違し、その他の構成については、第1の実施の形態と同様である。また、第4の実施形態に係るシール構造おいても、ライナーリング本体はライナーリングケースおよびライナーリングカバーに対して、周方向および半径方向に一定の遊びを確保した状態で嵌め付けられる。
【0047】
第4の実施形態に係るシール構造でも、ライナーリングケースに貫通孔が存在しないため、隔壁11の開口部12への圧入状態にかかわらず、ライナーリングケースを貫通する流路が生じることはなく、高圧側から低圧側へ流体が漏れることをより確実に防止できる。
【0048】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施の形態に係る遠心ポンプのシール構造について、
図11〜
図13を参照しつつ説明する。以下でも第1の実施形態に係るシール構造との相違点についてのみ説明する。
【0049】
本発明の実施形態に係るシール構造のライナーリング本体13Xは、例えば、断面矩形の円環板からなり、
図12に示すように、その半径方向外周縁部に周方向に一定間隔をおいて2個1組で形成された凸部28(第1の係合部)を複数組(
図12では3組)有する。本実施形態では、半径方向に突出した突起を有する金属製の円環板13Cをゴム材13Dで被覆して全体として断面矩形の円環板(凸部付円環板)に形成したライナーリング本体13Xが使用されている。なお、ライナーリング本体13Xは、これに限定されず、単一材料(例えばゴム材のみ)からなるものを使用してもよい。
【0050】
本発明の実施形態に係るシール構造のライナーリングケース14Xは、例えば、
図13に示すように、薄板材に対して絞り加工を施し、その内径側および外径側を切除することにより形成された側壁部14a、円筒部14bおよびフランジ部14cからなり、隔壁11の開口部12に対して圧入される。側壁部14aは、ライナーリング本体13Xを、半径方向内側を除いて、軸方向下方から覆うように形成されている。円筒部14bは、側壁部14aの外周端部から連続して軸方方向上方へ形成されている。フランジ部14cは、円筒部14bの軸方向上方の端部から連続して半径方向外方へ延出している。なお、ライナーリングケース14Xの円筒部14bの内周面の半径R1は、ライナーリング本体13Xの半径R2より大きく設定されている。
【0051】
また、
図11(b)および
図13に示すように、ライナーリングケース14Xの円筒部14bには、ライナーリング本体13Xの各組を成す2個の凸部28(第1の係合部)の間に挿入される舌片状の突起部17D(第2の係合部)が形成されている。凸部28と突起部17Dとは互いに周方向に係合し、これによりライナーリング本体13Xは、インペラ4と供回りしないように回転規制される。突起部17Dの周方向幅は1組を成す2個の凸部28間の寸法より若干小さく設定されており、ライナーリングケース14Xにライナーリング本体13Xが嵌め込まれたときに、周方向および半径方向に一定の遊びが確保される。
【0052】
上記ライナーリングケース14Xは、第2の実施形態と同様の方法で製作することができる。但し、コ字状の切込みは、本実施形態の方が第2の実施形態よりも大きく設けられ、舌片状の突起部17Dの向きは
図7および
図11に示すように第2の実施形態と比べて若干相違している。
【0053】
本実施形態では、ライナーリング本体13Xを回転規制するために、ライナーリング本体13Xの各2個の凸部28の間に、ライナーリングケース14Xの舌片状の突起部17Dを挿入しているので、第1および第2の実施形態と比較して突起部17Dの長さが小さくて済む。これにより、ライナーリングケース14Xの製作時にコ字状の切込みを大きくすることができ、切込み加工が行い易くなる。
【0054】
なお、第5の実施形態に係るシール構造では、ライナーリングケース14Xに孔21が存在するが、孔21は、隔壁11の開口部12に覆われており、当該孔21がライナーリングケース14Xを貫通する流路を形成し、これが既述した高圧側から低圧側への流路となることはない。
【0055】
<第6の実施形態>
上記第5の実施形態におけるライナーリングケース14Xに設けられた突起部17Dは、
図11(b)に示したように、孔21の軸方向下方の縁部23から舌片状に延出したものであったが、この突起部17Dに代えて
図14(b)、
図15に示すように、孔21の軸方向上方の縁部22から舌片状に延出した突起部17Eを採用してもよい。なお、本実施形態に係るシール構造は、上記以外の点では、第5の実施形態と同様である。
【0056】
上記ライナーリングケース14Yは、第1の実施形態と同様の方法で製作することができる。但し、コ字状の切込みは、本実施形態の方が第1の実施形態よりも大きく設けられており、舌片状の突起部17Eの先端部の向きは
図3および
図14に示すように第1の実施形態と比べて若干相違している。
【0057】
本実施形態でも、ライナーリング本体13Xを回転規制するために、ライナーリング本体13Xの各2個の凸部28の間に、ライナーリングケース14Yの舌片状の突起部17Eを挿入しているので、第1および第2の実施形態と比較して突起部17Dの長さが小さくて済む。これにより、ライナーリングケース14Yの製作時にコ字状の切込みを大きくすることができ、切込み加工が行い易くなる。
【0058】
なお、第6の実施形態に係るシール構造においても、ライナーリングケース14Yに孔21が存在するが、孔21は、隔壁11の開口部12に覆われており、当該孔21がライナーリングケース14Yを貫通する流路を形成し、これが既述した高圧側から低圧側への流路となることはない。
【0059】
<第7の実施形態>
上記第5および第6の実施形態におけるライナーリングケースにおいては、舌片状の突起部17D,17Eを設けていたが、この突起部17D,17Eを設けることなく、
図16(b)および
図17に示すように、ライナーリングケース14Zの円筒部14bからフランジ部14cにかけて矩形の孔29のみを設けるようにしてもよい。この場合、
図16(b)に示すように、ライナーリングケース14Zの円筒部14bには、ライナーリング本体13Xの凸部28(第1の係合部)が孔29に挿入され、凸部28と孔29とは互いに周方向に係合する。これによりライナーリング本体13Xは、インペラ4と供回りしないように回転規制される。
【0060】
ライナーリングケース14Zに形成された孔29は、円筒部14bの軸方向中間位置からフランジ部14cの内径近傍に亘って形成されているため、その孔29に対してライナーリング本体13Xの凸部28を軸方向に挿入することができる。なお、本実施形態に係るシール構造は、上記以外の点では、第5の実施形態と同様である。
【0061】
上記ライナーリングケース14Zは、絞り加工および孔加工のみで簡単に製作することができる。
【0062】
なお、第7の実施形態に係るシール構造においても、ライナーリングケース14Zに孔29が存在するが、孔29は、隔壁11の開口部12に覆われており、当該孔29がライナーリングケース14Zを貫通する流路を形成し、これが既述した高圧側から低圧側への流路となることはない。
【0063】
<第8の実施形態>
次に、本発明の第8の実施の形態に係る遠心ポンプのシール構造について、
図18および
図19を参照しつつ説明する。但し、第1の実施形態に係るシール構造との相違点についてのみ説明する。
【0064】
本発明の実施形態におけるライナーリングケース14Wは、既述した他の実施形態におけるライナーリングケースと同様に、側壁部14a、円筒部14bおよびフランジ部14cで構成されるが、
図18に示すように、第2の係合部となる突起部や孔は一切設けられていない。その代わりに、
図19に示すように、ライナーリングカバー15Aに、ライナーリング本体13に形成された切欠部13a(第1の係合部)に挿入されて周方向に係合する突起部30(第2の係合部)が形成されている。この突起部30は、切欠部13a側に膨出した形状とされ、ライナーリングカバー15Aを貫通する孔は一切形成されていない。よって、ライナーリングカバー15Aを貫通する流路が形成されることもない。
【0065】
なお、ライナーリング本体13の切欠部13aは、高圧側から視てライナーリングカバー15Aによって十分に覆われるように、ライナーリングカバー15Aの内径寸法、ライナーリング本体13の外径寸法、切欠部13aの深さ寸法等が設定されることが望ましい。
【0066】
<第9の実施形態>
次に、本発明の第9の実施の形態に係る遠心ポンプのシール構造について、
図20〜
図23を参照しつつ説明する。但し、本実施形態では、第1の実施形態に係るシール構造との相違点についてのみ説明し、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0067】
第1の実施形態に係るシール構造では、ライナーリングケース14に設けられた突起部17が、
図3(b)に示したように、孔21の軸方向上方の縁部22から舌片状に延出したものであったが、本実施形態におけるライナーリングケース14Vの突起部17Fは、
図20(b)および
図22に示すように、孔21の両側縁部31から舌片状に延出したものとなっている。
【0068】
また、本実施形態におけるライナーリング本体13Yは、
図21に示すように、その半径方向外周縁部に周方向に一定間隔をおいて2個1組で形成された切欠部13a(第1の係合部)を複数組(
図21では3組)有する。本実施形態では、周方向に一定間隔をおいて2個1組で切欠部が形成された金属製の円環板13Eをゴム材13Fで被覆して全体として断面矩形の円環板に形成したライナーリング本体13Yが使用されている。なお、ライナーリング本体13Yの各組を成す2個の切欠部13aの間においては、金属製の円環板13Eの外周縁部がライナーリング本体13Yの外周縁まで張り出している。
【0069】
上記ライナーリングケース14Vを製作するには、例えば薄板材に絞り加工を施し、その内径側および外径側を切除して、
図23(a)に示すような断面形状を形成した上で、円筒部14bにエ字状の切込みを入れる。そして、円筒部14bに設けられたエ字状の切込みの縦線部の両側近傍を円筒部14bの外側から内側に向けて(矢印Pの方向に向けて)押し込むことにより、
図23(b)に示すように、舌片状の突起部17Fを形成する。この点から明らかなように、本実施形態によれば、ライナーリングケース14Vの円筒部14bの軸方向寸法が小さくても突起部17Fの長さを十分に確保することが可能である。
【0070】
第9の実施形態に係るシール構造においても、ライナーリング本体13Yはライナーリングケース14Vおよびライナーリングカバー15に対して、周方向および半径方向に一定の遊びを確保した状態で嵌め付けられる。また、第9の実施形態に係るシール構造においても、孔21は、隔壁11の開口部12に覆われており、当該孔21がライナーリングケース14Vを貫通する流路を形成し、これが高圧側から低圧側への流路となることはない。
【0071】
なお、第9の実施形態に係るシール構造では、ライナーリング本体13Yの切欠部13aは、周方向に一定間隔をおいて2個1組で形成され、これに対応する突起部17Fは孔21の両側縁部31から延出したものであったが、ライナーリング本体13Yの切欠部13aを周方向に一定間隔をおいて1個ずつ形成し、この切欠部13aに挿入される突起部17Fを孔21の片側縁部31からのみ延出したものとしてもよい。