(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、車両用ブレーキ液圧制御装置の前後上下を言うときは、
図1に示す方向、左右を言うときは
図2に示す方向を基準とする。また、電気部品であるコイル組立体の前後左右上下を言うときは、
図6(a)に示す方向を基準とするが、車両用ブレーキ液圧制御装置に対するコイル組立体の組み付け方向を限定する趣旨ではない。
【0017】
本実施形態では、本発明の電気部品組立体を1つのブレーキ系統を備えた二輪車用の車両用ブレーキ液圧制御装置に適用した場合を例として説明する。もちろん、2つのブレーキ系統を備えた二輪車用の車両用ブレーキ液圧制御装置、四輪車用の車両用ブレーキ液圧制御装置に適用しても差し支えない。
【0018】
(車両用ブレーキ液圧制御装置の構成)
車両用ブレーキ液圧制御装置U1は、図示しないマスタシリンダと車輪ブレーキとの間に接続され、車輪ブレーキに作用するブレーキ液圧を制御するものである。
車両用ブレーキ液圧制御装置U1は、
図1,
図2に示すように、1つのブレーキ系統に対応した電磁弁V1,V2、モータM、往復動ポンプPなどが組み付けられる基体100を備えている。車両用ブレーキ液圧制御装置U1は、車体の挙動を検出して、電磁弁V1,V2の開閉やモータMの作動を制御する電気部品としての制御基板201を備えた電気部品組立体としての電子制御ユニット200を備えている。基体100には、電磁弁V1,V2の他に圧力センサ等の各種センサを組み付けることができる。
基体100内には、図示しないブレーキ液路(油路)が形成されている。車両用ブレーキ液圧制御装置U1は、車体の挙動に基づいて、制御基板201が電磁弁V1,V2やモータMを作動させることで、ブレーキ液路内のブレーキ液圧を変動させるように構成されている。
【0019】
本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置U1は、
図1、
図2に示すように、電磁弁V1,V2とモータMが、電気部品組立体である電子制御ユニット200のハウジング202内に収容される構造を備えている。
【0020】
(基体の構成)
基体100は、略直方体に形成された金属部品(
図2,
図3参照)であり、その内部には図示しないブレーキ液路(油路)が形成されている。
基体100の各面のうち、一面側となる前面101には、電磁弁V1,V2が装着される有底の取付穴110等が複数形成されている。なお、用いられる電磁弁V1,V2の数は、例えば、対象となる車両が四輪車である場合や車両用ブレーキ液圧制御装置U1が有する機能の差で異なる。本実施形態の電磁弁V1,V2には、電気部品としてのコイル組立体1がそれぞれ装着されている。電磁弁V1は、例えば、常開型電磁弁である。電磁弁V2は、例えば、常閉型電磁弁である。各コイル組立体1は、後記するように、プレスフィット端子10を用いて制御基板201に電気的に接続されている。
【0021】
基体100の上面103には、車輪ブレーキ(図示せず)に至る配管が接続される出口ポート(不図示)や入口ポート等(不図示)が形成されている。
また、基体100の下面には、リザーバを構成するリザーバ構成部品が組み付けられるリザーバ穴111等が形成されている。
また、基体100の側面104には、往復動ポンプPが装着されるポンプ孔113等が形成されている。
なお、基体100に設けられた穴は、直接に、あるいは基体100の内部に形成された図示せぬブレーキ液路を介して互いに連通している。
【0022】
(モータの構成)
モータMは、往復動ポンプPの動力源となる電動部品である。モータMは、基体100の前面101にボルト120(
図3参照)で一体的に固着されている。モータバスバーM11(
図3,
図13参照)モータバスバー(不図示)は、モータMのカバーの底部に一対設けられており、
図2に示すように、ハウジング202の内壁(第一収容室215)に設けられたバスバー端子部250にそれぞれ接続されている。バスバー端子部250には、制御基板201に接続するためのプレスフィット端子251が立設されている。
【0023】
(電子制御ユニットの構成)
電子制御ユニット200は、コイル組立体1と、制御基板201と、ハウジング202と、蓋体203と、を備えている。コイル組立体1は、後記するようにハウジング202に対して圧入により固定されている。ハウジング202は、コイル組立体1および制御基板201を収容するとともに、基体100から突出した電磁弁V1,V2やモータMを収容している。ハウジング202に対するコイル組立体1の取付構造の詳細は後記する。
【0024】
制御基板201は、電気回路がプリントされた略長方形の基板本体に、半導体チップなどの電子部品を取り付けたものである。制御基板201には、コイル組立体1に備わるプレスフィット端子10が圧接されるスルーホール201aが複数形成されている(
図1参照)。制御基板201は、車両に備わる図示しないセンサ等から得られた情報や、予め記憶させておいたプログラムに基づいて制御を行う。具体的には、コイル組立体1(
図2参照)やモータMへの通電を制御して、電磁弁V1,V2の開閉作動やモータMの駆動を制御する。センサとしては、他に角速度センサや加速度センサ等の種々のものが挙げられる。
【0025】
(ハウジングの構成)
ハウジング202は、
図1に示すように、基体100の前面101から突出する電磁弁V1,V2やモータMを覆った状態で、基体100の前面101に一体的に固着される箱体である。ハウジング202は、樹脂材料によって一体成形されている。ハウジング202には、制御基板201およびコイル組立体1が組み付けられている。
ハウジング202は、基体100側とは反対側の前面および基体100側の後面がそれぞれ開口している。
【0026】
ハウジング202は、
図2に示すように、板状の底部210と、底部210の前面側に設けられる第一周壁部211と、底部210の後面側に設けられる第二周壁部212とを備えている。
底部210は、略長方形の外形を備えている。第一周壁部211は、底部210の周縁部から前方へ延在しており、外周形状が略四角形状を呈している。第一周壁部211は、その内側に略四角形状の制御基板201を収容する第一収容室215(
図1参照)を形成している。
【0027】
第二周壁部212は、底部210の後面から後方へ延在しており、外周形状が略七角形状(
図5参照)を呈している。第二周壁部212は、その内側にコイル組立体1およびモータMを収容する第二収容室216(
図1参照)を形成している。第二周壁部212は、コイル組立体1よりも軸方向(前後方向)に大きいモータM(モータカバー)を収容可能とする大きさを備えている。
第一収容室215および第二収容室216は、
図1、
図2に示すように、底部210の開口部256を通じて相互に連通している。つまり、第一収容室215と第二収容室216との間には、仕切壁が存在しない構造となっている。ハウジング202は、このように仕切壁が存在しない構造とすることで、
図1に示すように、第二収容室216から第一収容室215に亘ってコイル組立体1およびモータMが配置されるようにしてある。つまり、コイル組立体1よりも軸方向(前後方向)に大きいモータM(モータカバー)を収容可能としながら、前後方向のスペースを有効に利用して小型化を図っている。
【0028】
第二周壁部212の後部側内面には、
図5に示すように、凹凸形状の保持壁220が形成されている。保持壁220は、第二収容室216の上下内側に突出するボス部221、左内側に突出する保持部223を備えている。保持壁220の内側には、隣接するボス部221と保持部223との間に、コイル組立体1を装着可能な装着スペース225が計二つ形成されている。各装着スペース225における保持壁220の内面形状は、コイル組立体1の外面形状に沿う形状に形成されている。各装着スペース225の開口縁部には、コイル組立体1を装着スペース225内に位置決めするとともに固定するための一対の溝部226が凹設されている。各装着スペース225において溝部226は、対向配置される保持壁220の対向する部位に形成されている。各溝部226の内面には、
図10(a)に示すように、組付時に圧入効果をもたらす突起226aが形成されている。突起226aは、溝部226内に向けて突出しており、後記するように、溝部226に挿入されるリブ25(
図10(b)参照)に当接する。なお、保持壁220の内面には、
図4に示すように、補強用リブ227が形成されている。
【0029】
図5に示すように、各装着スペース225には、板状の端子保持部240が設けられている。端子保持部240は、各装着スペース225に配置されるように左側の上下の保持壁220間に亘って設けられている。
【0030】
端子保持部240には、略直方体状の外形を備えるガイド部241が突設されている。ガイド部241には、スリット状の挿通孔242(
図11参照)が形成されている。挿通孔242は、装着スペース225に装着されるコイル組立体1の各プレスフィット端子10に対応する位置に設けられている。これにより、各挿通孔242には、プレスフィット端子10を挿通可能である。
なお、端子保持部240の上下の隅部には、コイル組立体1以外のプレスフィット端子252がハウジング202にインサート成形されるとともに、プレスフィット端子252を支持するガイド部243が備わる(
図11参照)。
【0031】
第二周壁部212の後端部には、周溝228が形成されている。周溝228には、基体100の前面101に固定するための接着剤が介在される。ハウジング202は、接着剤を介して基体100の前面101に気密にシールされる。
図13において基体100の前面101に示す環状のハッチングラインS11で示した領域や、電磁弁V1,V2を挟みリブ25に対応する位置にある線状のハッチングラインS21で示した領域に、接着剤が介在した状態で周溝228やリブ25が当接する。なお、環状のハッチングラインS11および線状のハッチングラインS21への接着剤の塗布は、同じ工程で行われる。
なお、ハウジング202は、第二収容室216の保持壁220のボス部221に挿通した固定ねじ(不図示)を基体100のねじ穴116(
図3,
図13参照)に螺合することで、基体100に取り付けられる。
【0032】
蓋体203は、ハウジング202の基体100側とは反対側となる前面の開口部に固着される。
【0033】
コイル組立体1は、
図6(a)、
図7各図に示すように、ボビン2と、コイル50と、ヨーク3と、接続端子としてのプレスフィット端子10と、を備えている。コイル組立体1は、
図1に示すように、電磁弁V1,V2を取り囲んだ状態で、ハウジング202内に収容される電気部品である。コイル組立体1は、制御基板201からプレスフィット端子10を介してコイル50に通電されることで、電磁弁V1,V2の周囲に磁場をそれぞれ発生させる電磁コイルである。コイル組立体1は、後記するように接着剤を介して基体100の前面101に固着される。
【0034】
(ボビンの構成)
ボビン2は、
図7(d)に示すように、円筒部21の上下両端部に、鍔部22,23が形成された樹脂部品(絶縁部品)である。円筒部21には、ボビン側挿通孔としての円形の挿通孔21aが中心部を貫通している。挿通孔21aは、上側の鍔部22に形成された上側ヨーク収容部22cおよび鍔部22の孔部22aに連通している。また、挿通孔21aは、下側の鍔部23に形成された下側ヨーク収容部23aに連通している。挿通孔21aは、内径D1を備えている。鍔部22,23は、
図7(a)(e)に示すように、前部がコイル50の巻形状に対応して平面視で半円形状に形成され、後部がヨークの形状に対応して平面視で略矩形状に形成されている。なお、鍔部22の孔部22aの内径は、挿通孔21aの内径D1よりも大きくなっている。
【0035】
上側の鍔部22は、
図7(d)に示すように、下側の鍔部23よりも上下方向に分厚く形成されている。上側の鍔部22の内側には、ヨーク3の上部31を収容可能な上側ヨーク収容部22cが形成されている。上側ヨーク収容部22cは、上側の鍔部22の後面および前面に開口している。ヨーク3の上部31は、上側の鍔部22の後面側から上側ヨーク収容部22cに収容される。
【0036】
上側ヨーク収容部22cは、ボビン2の軸方向に直交する方向(水平方向)において、収容されたヨーク3の上部31との間に、所定のクリアランスを備えている。これにより、上側ヨーク収容部22c内においてヨーク3の上部31は、前記クリアランスを備える分だけ水平方向に移動可能となっている。
なお、鍔部22は、ヨーク3の上部31の略全体を覆っているので、絶縁性に優れている。
【0037】
上側の鍔部22の後端縁部には、
図7(c)に示すように、二つの突起部22e,22e(片側のみ図示)が左右方向に所定間隔を置いて形成されている。この突起部22eは、上側の鍔部22の後端縁部から後方に突出した板状の部位であり、平面視で矩形に形成されている。
【0038】
また、上側の鍔部22の左右後部には、
図6(a)(b)に示すように、二つのプレスフィット端子10,10の基部11,11を支持する端子支持部22b,22bが形成されている。この端子支持部22b,22bには、プレスフィット端子10,10の一部がインサート成形によって埋設されている。つまり、端子支持部22b,22b(上側の鍔部22)がプレスフィット端子10,10の絶縁体として機能している。
端子支持部22b,22bの下方には、上側ヨーク収容部22cに収容されたヨーク3の上部31が配置されている。つまり、二つのプレスフィット端子10,10は、端子支持部22b,22bを介してヨーク3の上部31に支持されている。一方、端子支持部22b,22bは、ヨーク3の上部31における、プレスフィット端子10,10を支持している部分を覆っている。これによって、プレスフィット端子10,10とヨーク3との絶縁が図られている。
【0039】
下側の鍔部23の内側には、
図7(d)に示すように、ヨーク3の下部32を収容可能な下側ヨーク収容部23aが形成されている。下側ヨーク収容部23aは、下側の鍔部23の後面および下面に開口している。つまり、ヨーク3の下部32は、コイル組立体1の下面に露出している(
図7(e)参照)。ヨーク3の下部32は、下側の鍔部23の後面側から下側ヨーク収容部23aに収容される。
【0040】
下側ヨーク収容部23aの内面の左右対向部位には、
図7(e)に示すように、内側に向けて突出する湾曲状の凸部23b,23bが形成されている。下側ヨーク収容部23aは、前記した上側ヨーク収容部22cと同様に、収容されたヨーク3の下部32との間に、ボビン2の軸方向に直交する方向(水平方向)に所定のクリアランスを備えている。これにより、下側ヨーク収容部23a内においてヨーク3の下部32は、前記クリアランス分だけ水平方向に移動可能となっている。
【0041】
下側の鍔部23の後部側の左右側面(組付方向に交差するコイル組立体1の外面)には、四角柱状のリブ25,25が形成されている。リブ25,25は、コイル組立体1をハウジング202の第二収容室216に組み付ける際の嵌合部(位置決め部)として機能する(
図4参照)。具体的に、リブ25,25は、
図4、
図5に示すように、第二収容室216の装着スペース225に設けられた溝部226,226に圧入される。この圧入によって、コイル組立体1は、ハウジング202に対する組付方向(
図10(a)の矢印方向、コイル組立体1の軸方向)に交差する方向への移動、および組付方向に平行な軸まわりの回動が規制されている。
【0042】
一方、リブ25は、基体100の前面101にコイル組立体1を接着剤で固定するための電気部品接着代S2(
図12参照)としても機能する。具体的に、リブ25の下面25aは、
図10(b)に示すように、リブ25が溝部226に圧入された状態で、保持壁220の後面220aと面一に配置される。これにより、リブ25の下面25aは、基体100の前面101に対して当接可能であり、コイル組立体1を接着剤で固定するための電気部品接着代S2として機能する。
なお、リブ25,25は、例えば、ハウジング202の内側に図示しない中間壁部を設けて、これに設けられた溝部に対して圧入されるものであってもよい。
ここで、接着剤は、リブ25の下面25aにのみ介在されるものに限られることはなく、リブ25からヨーク3の下部32の下面に亘って介在されるように構成してもよい。また、リブ25の下面25aに部分的に介在されていてもよい。いずれにしても、接着剤によってコイル組立体1が基体100の前面101に固着されるように介在されていればよい。
【0043】
以上のようなボビン2は、例えば、射出成形等によって作成される。ボビン2が射出成形される際に同時に、鍔部22にプレスフィット端子10,10が一体的に接合される状態にインサート成形される。
【0044】
(ヨークの構成)
ヨーク3は、ボビン2に取り付けられる部材であり、磁性を有する金属材料で形成されている。ヨーク3は、
図6(a)、
図7(d)に示すように、上部31と、下部32と、これら上部31と下部32とを繋ぐ側部33と、から構成されている。ヨーク3は、縦断面略凹状に形成されている(
図7(d)参照)。
上部31は、ボビン2の上側の鍔部22の上側ヨーク収容部22cに収容される部位である。上部31は、ボビン2の上側の鍔部22と外形状が同様であり、前部が半円形状に形成され、後部が略矩形状に形成されている。上部31は、上側ヨーク収容部22cに前記したクリアランスを備えて収容されるようになっており、上側ヨーク収容部22cに対して水平方向に移動可能である。
なお、上部31は、下部32よりも外形状が一回り小さい大きさに形成されており、組み付け作業時に上下を区別し易くなっている。
【0045】
上部31は、上側ヨーク収容部22cに収容されることで、上側の鍔部22を介してプレスフィット端子10の下方に配置される。つまり、上部31は、端子部12の軸方向の延長上でプレスフィット端子10(端子部12、基部11)を支持している。
【0046】
下部32は、ボビン2の下側の鍔部23の下側ヨーク収容部23aに収容される部位である(
図7(d)参照)。下部32は、上部31の外形状と同様に、前部が半円形状に形成され、後部が略矩形状に形成されている。
下部32には、
図7(e)に示すように、下側ヨーク収容部23aの凸部23b,23bに対向する部位に、凹部32b,32bが形成されている。下側ヨーク収容部23aに下部32を収容した状態で、下部32の凹部32b,32bに下側ヨーク収容部23aの凸部23b,23bが緩く嵌合する(隙間を有して嵌合する)ようになっている。下部32は、下側ヨーク収容部23aにクリアランスを備えて収容されるようになっており、前記のように凹部32b,32bに凸部23b,23bが緩く嵌合した状態で、下側ヨーク収容部23aに対して水平方向に移動可能である。つまり、前記した水平方向の移動を許容するように凹部32bに凸部23bが嵌合している。
【0047】
ヨーク3には、
図7(d)に示すように、ヨーク側挿着孔として、上部31に円形の挿通孔31aが形成され、下部32に円形の装着孔32aが形成されている。これらの挿通孔31a,32aは、同一の内径D2を備えている。内径D2は、電磁弁V1(V2)に外嵌可能な大きさに設定されている。ここで、前記したボビン2の挿通孔21aの内径D1とヨーク3の挿通孔31a,32aの内径D2との関係は、ボビン2側の内径D1が大きく、ヨーク3側の内径D2が小さくなるように、内径D1>内径D2に設定されている。
【0048】
(プレスフィット端子の構成)
二つのプレスフィット端子10,10は、
図6(b)に示すように、端子支持部22b,22b(ボビン2)に一部がインサート成形された金属部品である。二つのプレスフィット端子10,10は、
図6(a)に示すように、左右方向に所定間隔を離して配設されている。二つのプレスフィット端子10,10には、巻線51の端部がそれぞれ電気的に接続されている。
【0049】
プレスフィット端子10は、
図8各図に示すように、板状の基部11と、基部11の一端上部から上方へ突出する端子部12と、基部11の他端下部から下方へ突出する接続部13と、を備えている。
基部11の大部分は、
図6(b)に示すように、端子支持部22bに埋設されている。基部11の上部は、端子支持部22bから露出している。基部11には、
図8(a)に示すように、成形時に樹脂の入り込みを許容する挿通孔11aが形成されている。基部11は、
図6(b)に示すように、端子支持部22bに設けられた補強リブ22dで補強支持されている。
【0050】
端子部12は、基部11の一端上部から上方へ(ボビン2の軸方向外側へ)垂直に突出している。つまり、端子部12は、上側の鍔部22の上方に向けて延出している。端子部12は、先端部が環状に膨らんでおり、制御基板201(
図1参照)のスルーホール201a(
図1参照)に圧接される。
端子部12の全長は、ハウジング202の第二収容室216の前後方向の寸法に合わせて設定されている。つまり、本実施形態では、第二収容室216内にモータMが収容される構成であるため、第二周壁部212を前後方向に大きく延在させている分、端子部12の全長を大きく設定している。
【0051】
端子部12の中間部分には、他の部分よりも幅広に形成された幅広部18が形成されている。幅広部18は、ハウジング202の装着スペース225にコイル組立体1を組み付けた状態(
図10(b)参照)で、
図11に示すように、端子保持部240のガイド部241に備わる挿通孔242の内面に保持される。つまり、全長の大きい端子部12の中間部分が、端子保持部240を介してハウジング202に保持されている。
【0052】
接続部13は、コイル50の巻線51を接続する部位である。接続部13において、巻線51が接触する部分となる接触部14の板厚は、接続部13の他の部分の板厚に比べて薄肉に形成されている。つまり、圧接により板厚の制限を受けやすいプレスフィット端子10において、巻線51が接続される接続部13を薄肉にして、巻線51の被覆が接触によって削られるように構成している。
接触部14には、
図9に示すように、断面が略V字形状の溝15が形成されている。溝15の上縁部はアール状に拡がっている。溝15の内面の対向する部位には、溝15内(内側)に向けて突出する一対の段部16,16が形成されている。段部16,16の部分で溝15bは、幅狭に形成されている。溝15の段部16,16の部分の溝15bの幅L1(左右方向の幅)は、巻線51の線径D3(皮膜が備わる状態の線径)よりも小さく形成されている。溝15は、最深部15cに向けて幅狭に形成されている。
【0053】
接続部13の下部側方には、
図8(a)(c)に示すように、溝15との間で巻線51を巻き回すための突起部17が形成されている。また、接続部13の下端部には、端子支持部22b(
図6(b)参照)に向けて鈎状に突出する鈎状部13bが形成されている。鈎状部13bは、端子支持部22b(
図6(b)参照)に埋設されている(不図示)。
【0054】
プレスフィット端子10は、例えば、プレス加工(プレス打ち抜き加工)によって得られる。薄肉の接触部14は、プレス打ち抜き加工後に、さらにプレス加工されることで薄肉に形成される。その後、溝15を打ち抜いて形成する。なお、プレス打ち抜き加工時に同時にプレス加工を行うことで、接触部14を形成してもよいし、先に接触部14をプレス加工により形成しておいてから打ち抜き加工を行ってもよい。
【0055】
(コイルの構成)
コイル50は、
図6(a)に示すように、ボビン2の円筒部21に巻線51が巻着されてなる。両端部の巻線51,51は、プレスフィット端子10,10の接続部13,13に巻着されており、コイル50と各プレスフィット端子10,10とが電気的に接続されている。
【0056】
(ハウジングへのコイル組立体の組み付け)
ハウジング202へのコイル組立体1の組み付けは、
図10(a)に示すように、第二収容室216の後面側から行う。この場合、装着スペース225にプレスフィット端子10を向け、かつ、ヨーク3の側部33を装着スペース225の補強用リブ227側に向けてコイル組立体1を装着スペース225に挿入する。なお、
図10(a)では、プレスフィット端子10Aの形状を簡略化している。
【0057】
コイル組立体1を装着スペース225に挿入してゆくと、挿入の過程で端子保持部240の挿通孔242にプレスフィット端子10の端子部12が挿入される。この場合、プレスフィット端子10の幅広部18の端子部12A側の端部18Aが円弧状の面取り形状となっているので、挿通孔242に対する端子部12の挿入をスムーズに行うことができる。その後、組付方向にコイル組立体1をさらに押し込み、リブ25,25を各溝部226内に進入させて圧入する。
【0058】
この圧入により、ハウジング202の第二収容室216の所定位置にコイル組立体1が位置決めされるとともに固定される。
【0059】
(基体へのハウジングの組み付け)
ハウジング202に各コイル組立体1を組み付けたら、基体100の前面101のハウジング202の周溝228のハウジング接着代S1、および各コイル組立体1のリブ25の下面25aの電気部品接着代S2に対応する環状のハッチングラインS11および線状のハッチングラインS21に接着剤を塗布する。その後、ハウジング202を基体100の前面101に近づけ、前面101に突出する電磁弁V1,V2に各コイル組立体1を装着しつつ、ハウジング202の後端を基体100の前面101に当接する。これにより、基体100とハウジング接着代S1および電気部品接着代S2との間に介在された接着剤で、ハウジング202および各コイル組立体1が基体100の前面101に接着される。その後、第二収容室216の保持壁220のボス部221に挿通した固定ねじ120(
図3参照)を基体100のねじ穴116(
図3参照)に螺合する。これにより、ハウジング202および各コイル組立体1が基体100の前面101に固定される。
【0060】
なお、電磁弁V1,V2に各コイル組立体1を装着する際に、ハウジング202に固定されたボビン2に対してヨーク3を移動(軸方向に直交する方向に移動)させることが可能である。したがって、電磁弁V1,V2と各コイル組立体1との間に相対的に僅かな位置ずれが生じていたとしても、これを吸収して各コイル組立体1を電磁弁V1,V2に装着することができる。つまり、各プレスフィット端子10が所定位置に位置決めされた状態を維持したまま、電磁弁V1,V2との位置ずれを吸収して各コイル組立体1を装着することが可能である。
【0061】
(ハウジングへの制御基板の組み付け)
基体100へハウジング202を組み付けた後、ハウジング202の前面側に開口する第一収容室215の開口を通じて制御基板201を組み付ける。組み付け時には、制御基板201の各スルーホール201aを対応するプレスフィット端子10の先端部に位置合わせし、制御基板201をコイル組立体1に向けて押し込む。そうすると、プレスフィット端子10の端子部12がスルーホール201a内に圧接される。なお、この間、プレスフィット端子10は、コイル組立体1の端子支持部22bに保持され、端子支持部22b上において直立する姿勢を保持する。また、プレスフィット端子10の中間部分を端子保持部240でハウジング202に保持することができる。
なお、制御基板201の組付時に、
図2に示すように、ハウジング202のバスバー端子部250のプレスフィット端子251やコネクタ部229のプレスフィット端子253の接続も同時に行うことができる。
【0062】
その後、第一収容室215の前端部の溝275(
図2参照)に接着剤を塗布し蓋体203を液密に固着する。なお、前端部には係合部255が設けられており、この係合部255に蓋体203側の図示しないフック部を係合することにより、組付時の位置合わせを容易に行うことができる。このようにして、組み付けが終了する。
【0063】
以上説明した本実施形態では、プレスフィット端子10の中間部分をハウジング202の端子保持部240に挿通して保持することができる。これにより、プレスフィット端子10の全長が大きい場合でも、その中間部分をハウジング202側で確実に保持できるので、プレスフィット端子10の折れ曲がりや倒れ込みを防止して制御基板201へのコイル組立体1の接続を確実に行うことができる。
また、制御基板201とコイル組立体1との距離がある程度離間していても制御基板201へのコイル組立体1の接続を確実に行うことができるので、ハウジング202内のコイル組立体1のレイアウトの自由度が高まる。
さらに、プレスフィット端子10の中間部分には、他の部分よりも幅広とされた幅広部18が形成されている。したがって、幅広部18を介してプレスフィット端子10の中間部分を挿通孔242の内面に確実に保持することができる。これにより、プレスフィット端子10の折れ曲がりや倒れ込みをより一層効果的に防止することができる。
【0064】
接続端子が、プレスフィット端子10であるので、端子と制御基板201との接続を容易に行うことができ、組付性が向上する。
【0065】
本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置U1では、制御基板201へのコイル組立体1の接続を確実に行うことができるので、製品品質の向上、装置によるブレーキ液圧制御の信頼性の向上を図ることができる。全体の小型化やコストダウンを実現することができる。また、装置全体の小型化を実現できるので、車両に対する組付作業性の向上を図ることができる。
【0066】
また、モータMが、電磁弁V1,V2とともに基体100の一面に取り付けられてハウジング202で覆われているので、制御基板201とコイル組立体1とが離間配置される構造となっても、全長の大きいプレスフィット端子10の折れ曲がりや倒れ込みを防止してコイル組立体1を制御基板に確実に接続することができる。
【0067】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。また、前記実施形態の構成の一部について、追加、削除、置換をすることができる。
【0068】
例えば、リブ25は、直方体形状のものを示したが、これに限られることはなく、種々の形状のものを採用することができる。また設置個数は、単数でもよいし、三つ以上であってもよい。
【0069】
また、コイル組立体1側にリブ25を設け、ハウジング202側に溝部226を設けたが、これとは逆に、コイル組立体1側に溝部を設け、ハウジング202側にリブを設けてもよい。
【0070】
また、接続端子としてプレスフィット端子10(10A)を用いたが、その他のスナップフィット端子等、圧接可能な端子を接続端子として採用することができる。
【0071】
また、プレスフィット端子10は端子部12がボビン2から上方に突出しているものであればよく、プレスフィット端子10の接続部13等がボビン2の側方等に配置されていてもよい。
【0072】
また、プレスフィット端子10は、ボビン2にインサート成形されたものを示したが、これに限られることはなく、ボビン2に後から取り付けられるものであってもよい。
【0073】
また、本発明は、電気部品としてコイル組立体1を示したが、ハウジング202に組み付けられる他の電気部品に対しても好適に実施することができる。
【0074】
また、プレスフィット端子10の幅広部18の形状は、楕円形状や円形状等、種々の形状とすることができる。
【0075】
また、接着剤は、基体100の前面101に塗布したが、ハウジング202およびコイル組立体1(電気部品)側に先に塗布してもよい。