特許第6906403号(P6906403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906403
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20210708BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   F24C3/12 P
   F23N5/24 101B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-172529(P2017-172529)
(22)【出願日】2017年9月7日
(65)【公開番号】特開2019-49367(P2019-49367A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 駿介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真澄
(72)【発明者】
【氏名】塩野 岳
【審査官】 比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−028428(JP,A)
【文献】 特開2004−108694(JP,A)
【文献】 特開2012−202651(JP,A)
【文献】 特開平2−133708(JP,A)
【文献】 特開2008−190833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炎口を有するバーナ本体と、該バーナ本体から延設された混合管とを備えたコンロバーナを搭載しており、ガス通路を通じて供給される燃料ガスをノズルから前記混合管の開口端に噴射すると、該燃料ガスと一次空気との混合ガスが前記混合管を通って前記炎口から噴出し、該混合ガスに点火して燃焼させるガスコンロにおいて、
前記炎口に測温接点が近接した状態で設置された熱電対と、
前記熱電対に生じる熱起電力を取得し、該熱起電力の値が所定の下限値から上限値までの正常範囲内にあるか否かを判断する判断部と、
前記熱起電力の値が前記下限値よりも小さい、または前記熱起電力の値が前記上限値よりも大きいと前記判断部によって判断されたことに基づいて、前記燃料ガスの異常な燃焼を検知する検知部と
を備えることを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスコンロにおいて、
前記コンロバーナに供給される前記燃料ガスの流量を変更することで該コンロバーナの火力を調節可能な調節部と、
前記調節部によって調節された前記コンロバーナの火力に応じて、前記正常範囲の前記下限値および前記上限値を設定する設定部と
を備えることを特徴とするガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロバーナに供給される燃料ガスの異常な燃焼を検知する機能を備えたガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスをコンロバーナで燃焼させて、鍋などの調理容器を加熱するガスコンロが広く普及している。コンロバーナは、複数の炎口を有するバーナ本体と、バーナ本体から延設された混合管とを備えている。ガス通路を通じて供給される燃料ガスは、ノズルから混合管の上流側の開口端に噴射され、燃焼用の一次空気を吸い込みながら混合管に流入する。そして、混合管を通過した燃料ガスと一次空気との混合ガスは炎口から噴出し、点火プラグで点火すると燃焼が開始されて炎口に接して炎が形成される。また、炎口に測温接点を近接させて熱電対が設置されており、熱電対が炎で加熱されると熱起電力が発生することから、熱起電力の消失に基づいて立ち消えを検知して、燃料ガスの供給を遮断するようになっている。
【0003】
こうしたコンロバーナでは、供給される燃料ガスの異常な燃焼が発生することがある。例えば、コンロバーナの火力を調節する(弱める)際に混合ガスの噴出速度よりも燃焼速度が速くなると、炎が炎口からコンロバーナの内部に潜り込み、ノズルから噴射される燃料ガスが混合管内で燃焼する現象(以下、逆火という)が生じることがある。また、調理容器からの煮こぼれなどによって炎口が塞がれると、混合管の開口端側から燃料ガスが漏れ出し、その漏れた燃料ガスに引火して開口端から炎が噴き出す現象(以下、逆噴という)が生じることがある。尚、逆火や逆噴が発生しても、複数の炎口のうち一部の炎口では炎が出たまま維持されることがあり、その炎で立ち消え検知用の熱電対が加熱されていると、燃料ガスの供給が継続される。
【0004】
そこで、逆火や逆噴を検知するために、混合管の開口端付近に熱電対などの温度検出器を設置しておくことが提案されている(特許文献1)。逆火や逆噴が発生すると、混合管の開口端付近の温度が上昇するので、温度検出器における温度上昇に基づいて燃料ガスの供給を遮断することにより、異常な燃焼を停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−28428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ガスコンロでは、混合管の開口端付近に温度検出器を設置するスペースを確保するのが困難な場合があり、また、逆火や逆噴を検知するために専用の温度検出器を新たに追加することによって、ガスコンロの製造コストが増加してしまうという問題があった。
【0007】
この発明は従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、新たに専用の温度検出器を追加することなく、逆火や逆噴などの異常な燃焼を検知することが可能なガスコンロの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のガスコンロは次の構成を採用した。すなわち、
複数の炎口を有するバーナ本体と、該バーナ本体から延設された混合管とを備えたコンロバーナを搭載しており、ガス通路を通じて供給される燃料ガスをノズルから前記混合管の開口端に噴射すると、該燃料ガスと一次空気との混合ガスが前記混合管を通って前記炎口から噴出し、該混合ガスに点火して燃焼させるガスコンロにおいて、
前記炎口に測温接点が近接した状態で設置された熱電対と、
前記熱電対に生じる熱起電力を取得し、該熱起電力の値が所定の下限値から上限値までの正常範囲内にあるか否かを判断する判断部と、
前記熱起電力の値が前記下限値よりも小さい、または前記熱起電力の値が前記上限値よりも大きいと前記判断部によって判断されたことに基づいて、前記燃料ガスの異常な燃焼を検知する検知部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
コンロバーナは、立ち消えを検知するために炎口に測温接点が近接した状態で熱電対を備えているのが一般的であり、熱電対が炎で加熱されなくなって熱起電力が消失したことに基づいて立ち消えを検知することが可能である。本発明のガスコンロでは、この熱電対の熱起電力の値が正常範囲内にあるか否かを判断しており、熱起電力の値が正常範囲から外れたことに基づいて、逆火や逆噴などの異常な燃焼を検知することが可能となっている。そして、このように本来は立ち消えを検知するための既存の熱電対を流用して異常な燃焼を検知することにより、逆火や逆噴を検知するための新たな温度検出器の追加が不要となるため、逆火や逆噴の発生によって温度が上昇する混合管の開口端付近に温度検出器を設置するスペースを確保する必要がなくなると共に、ガスコンロの製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0010】
上述した本発明のガスコンロでは、コンロバーナに供給される燃料ガスの流量を変更することでコンロバーナの火力を調節可能として、そのコンロバーナの火力に応じて、正常範囲の下限値および上限値を設定してもよい。
【0011】
このようにすれば、コンロバーナの火力に応じて熱電対に生じる熱起電力の違いによって正常範囲から外れてしまう誤検知を抑制しつつ、正常範囲を絞ることができるので、逆火や逆噴の検知精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例のガスコンロ1の外観を示す斜視図である。
図2】コンロバーナ5の構造を示した縦断面図である。
図3】コンロバーナ5における燃焼を制御するためのブロック図である。
図4】本実施例のコントローラ40が燃料ガスの異常な燃焼を検知するために実行する異常燃焼検知処理のフローチャートである。
図5】異常燃焼検知処理の中で実行される正常範囲設定処理のフローチャートである。
図6】逆火や逆噴などの異常な燃焼によって熱電対30の熱起電力の値が正常範囲から外れる例を示した説明図である。
図7】異常燃焼検知処理に従ってコンロバーナ5における異常な燃焼を検知する例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施例のガスコンロ1の外観を示した斜視図である。本実施例のガスコンロ1は、上面側が開口した箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2の上面を覆って設置される天板3とを備えている。コンロ本体2には、燃料ガスを燃焼させるコンロバーナ5が2つ左右に設置されており、天板3に形成された挿通孔からコンロバーナ5の上部が突出している。また、天板3上には、コンロバーナ5の上方に鍋などの調理容器を置くための五徳6がコンロバーナ5を囲んで設置されている。
【0014】
ガスコンロ1の前面には、グリル扉7が設けられており、コンロ本体2に内蔵されたグリルの前方を開閉可能になっている。グリル扉7の右方には、2つのコンロバーナ5の各々に対応して、使用者が点火時や消火時、あるいは火力調節時などに操作するコンロ操作ボタン8が設けられている。また、グリル扉7の左方には、使用者がグリルの点火時や消火時、あるいは火力調節時などに操作するグリル操作ボタン9が設けられている。
【0015】
図2は、コンロバーナ5の構造を示した縦断面図である。前述したようにコンロバーナ5の上部は、天板3に形成された挿通孔4から突出している。コンロバーナ5は、円環形状の混合室10aが内部に形成されたバーナボディ10と、混合室10aと連通してバーナボディ10から延設された混合管11と、混合室10aの上面開口部を覆うようにバーナボディ10に載置された円環形状のバーナヘッド12と、図示しない取付金具でバーナヘッド12の上方に取り付けられた円環形状のバーナカバー14などを備えている。
【0016】
バーナボディ10から延設された混合管11の開口端11aには、燃料ガスを供給するガス通路20に接続されたノズル21が設置されている。ガス通路20には、ガス通路20を開閉するガス遮断弁22や、ガス通路20を通過する燃料ガスの流量を調節する流量調節弁23が設けられている。ガス遮断弁22および流量調節弁23を開くと、ガス通路20を通って燃料ガスがノズル21に供給され、ノズル21から噴射された燃料ガスは、燃焼用の一次空気を吸い込みながら混合管11に流入する。そして、混合管11を通過する燃料ガスと一次空気とが混合されて、混合室10aに混合ガスが供給される。
【0017】
バーナヘッド12は、円環形状の外縁部分から下方に向けて円筒形状の外周壁12aが延設されると共に、内縁部分から外周壁12aよりも長い円筒形状の内周壁12bが下方に向けて延設されている。そして、外周壁12aの下面(バーナボディ10に載置される面)には、複数の溝12dがバーナヘッド12の中央に対して放射状に形成されている。バーナヘッド12をバーナボディ10に載置すると、混合室10aの上面開口部が覆われると共に、外周壁12aの複数の溝12dとバーナボディ10の上面とによって、混合室10aに連通する複数の炎口13が形成される。尚、本実施例のバーナボディ10およびバーナヘッド12は、本発明の「バーナ本体」に相当している。
【0018】
混合室10aに供給される混合ガスは、複数の炎口13から噴出し、図示しない点火プラグで火花を飛ばすと、混合ガスの燃焼が開始されてバーナヘッド12の径方向における炎口13の外側(外周壁12aの周囲)に炎が形成されることにより、五徳6上に置かれた調理容器を加熱する。コンロバーナ5の火力(熱量)は、流量調節弁23の開度(燃料ガスの供給量)を制御することで、変更することが可能である。また、コンロバーナ5は、熱電対30を備えており、熱電対30の先端の測温接点が何れかの炎口13に近接してバーナヘッド12の径方向の外側に位置している。コンロバーナ5の炎で熱電対30の先端が加熱されると、熱起電力が発生することから、熱起電力の消失に基づいて、コンロバーナ5での立ち消え(燃焼していないこと)を検知することが可能である。
【0019】
バーナヘッド12の上方はバーナカバー14によって覆われており、五徳6上の調理容器から煮こぼれた場合でも、煮こぼれ汁がバーナヘッド12にかかるのを抑制することができる。また、バーナヘッド12の内周壁12bの内側には、温度センサー32が挿通されており、バーナカバー14の貫通孔14aから温度センサー32の上部が突出している。温度センサー32は、図示しない付勢バネで上方に付勢されており、五徳6上に置かれた調理容器の下面に温度センサー32の上端が当接して、調理容器の温度を検知する。
【0020】
図3は、コンロバーナ5における燃焼を制御するためのブロック図である。本実施例のガスコンロ1は、コンロバーナ5における燃焼を制御するコントローラ40を搭載している。コントローラ40には、前述したコンロ操作ボタン8や、ガス遮断弁22や、流量調節弁23や、熱電対30や、温度センサー32が電気的に接続されている。
【0021】
コントローラ40は、火力調節のために使用者によってコンロ操作ボタン8が操作されると、流量調節弁23に内蔵のステッピングモータ(図示省略)を駆動して流量調節弁23の開度を制御し、コンロバーナ5に供給される燃料ガスの流量を変えることでコンロバーナ5の火力を変更する。尚、本実施例の流量調節弁23は、本発明の「調節部」に相当している。また、コントローラ40は、温度センサー32で調理容器の過熱を検知すると、ガス遮断弁22を閉弁して燃料ガスの供給を遮断することによって強制的に燃焼を停止する。
【0022】
さらに、本実施例のコントローラ40は、熱電対30の熱起電力に基づいて、コンロバーナ5での点火不良や立ち消えを検知するだけでなく、燃料ガスの異常な燃焼を検知することが可能である。異常な燃焼としては、例えば、コンロバーナ5の火力調節の際に混合ガスの噴出速度が燃焼速度を下回ったり、バーナボディ10に対してバーナヘッド12が傾いていたりすると、炎が炎口13からコンロバーナ5の内部に潜り込み、ノズル21から噴射される燃料ガスが混合管11内で燃焼する現象(以下、逆火という)が生じることがある。また、五徳6上の調理容器からの煮こぼれなどによって炎口13が塞がれると、ノズル21から噴射された燃料ガスが混合管11の開口端11aから漏れ出し、その漏れ出た燃料ガスに引火して開口端11aから炎が噴き出す現象(以下、逆噴という)が生じることがある。そして、逆火や逆噴が発生しても、複数の炎口13のうち何れかの炎口13では炎が出たまま維持されることがあり、その炎で熱電対30の先端が加熱されていると、熱電対30に熱起電力が生じる。
【0023】
本実施例のコントローラ40には、熱電対30で生じる熱起電力を取得し、熱起電力の値(電圧値)が正常範囲内にあるか否かを判断する判断部41や、熱起電力の値が正常範囲内にないと判断部41によって判断されたことに基づいて、燃料ガスの異常な燃焼を検知する検知部42が内蔵されている。そして、異常な燃焼が検知されると、コントローラ40はガス遮断弁22を閉弁することで燃焼を停止する。また、コンロバーナ5の火力が変わると、熱電対30に生じる熱起電力が変化することから、コントローラ40には、コンロバーナ5の火力に応じて熱起電力の正常範囲を設定する設定部43が内蔵されている。
【0024】
図4は、本実施例のコントローラ40が燃料ガスの異常な燃焼を検知するために実行する異常燃焼検知処理のフローチャートである。この処理は、使用者がコンロ操作ボタン8に対して点火操作を行うことで開始される。異常燃焼検知処理では、まず、所定のサンプリング時間(本実施例では20秒)が経過したか否かを判断する(STEP100)。本実施例のガスコンロ1では、サンプリング時間の経過毎に熱電対30の熱起電力を取得するようになっており、未だサンプリング時間が経過していない場合は(STEP100:no)、サンプリング時間が経過するまで待機状態となる。
【0025】
その後、サンプリング時間が経過した場合は(STEP100:yes)、熱電対30の熱起電力を取得し(STEP102)、取得した熱起電力の値が所定の閾値E0以下であるか否かを判断する(STEP104)。そして、熱起電力の値が閾値E0以下であった場合は(STEP104:yes)、熱電対30の先端が炎で加熱されておらず点火不良または立ち消えと判断して、ガス遮断弁22を閉弁した後(STEP106)、図4の異常燃焼検知処理を終了する。
【0026】
一方、熱起電力の値が閾値E0よりも大きい場合は(STEP104:no)、熱電対30の先端が炎で加熱されているものとして、熱起電力の正常範囲を設定する処理(以下、正常範囲設定処理)を実行する(STEP108)。
【0027】
図5は、異常燃焼検知処理の中で実行される正常範囲設定処理のフローチャートである。正常範囲設定処理では、まず、コンロバーナ5の設定火力を取得する(STEP120)。前述したようにコンロバーナ5の火力は、使用者によるコンロ操作ボタン8の操作に応じて流量調節弁23の開度を制御することで、変更することが可能であり、本実施例のコンロバーナ5では大・中・小の3段階の火力の中から設定される。
【0028】
コンロバーナ5の設定火力を取得したら、その取得した設定火力が「小」であるか否かを判断する(STEP122)。そして、コンロバーナ5の設定火力が「小」であった場合は(STEP122:yes)、正常範囲をE1からE2までに設定する(STEP124)。本実施例のE1は、前述した閾値E0よりも大きな値になっている。
【0029】
一方、コンロバーナ5の設定火力が「小」ではなかった場合は(STEP122:no)、続いて、コンロバーナ5の設定火力が「中」であるか否かを判断する(STEP126)。そして、コンロバーナ5の設定火力が「中」であった場合は(STEP126:yes)、正常範囲をE3からE4までに設定する(STEP128)。本実施例のE3は上述のE2よりも大きな値であり、E3からE4までの幅はE1からE2までの幅よりも広くなっている。
【0030】
これに対して、コンロバーナ5の設定火力が「中」ではなかった場合は(STEP126:no)、コンロバーナ5の設定火力は「大」であるので、正常範囲をE5からE6までに設定する(STEP130)。本実施例のE5は上述のE4よりも大きな値であり、E5からE6までの幅はE3からE4までの幅よりも広くなっている。こうしてコンロバーナ5の設定火力に応じて熱起電力の正常範囲を設定したら、図5の正常範囲設定処理を終了して、図4の異常燃焼検知処理に復帰する。
【0031】
異常燃焼検知処理では、正常範囲設定処理(STEP108)から復帰すると、STEP102で取得した熱電対30の熱起電力の値が、STEP108で設定された正常範囲内にあるか否かを判断する(STEP110)。そして、熱起電力の値が正常範囲内にある場合は(STEP110:yes)、コンロバーナ5における燃焼は正常であると判断し、続いて、使用者がコンロ操作ボタン8に対して消火操作を行うことでコンロバーナ5における燃焼を停止したか否かを判断する(STEP112)。
【0032】
未だ燃焼を継続している場合は(STEP112:no)、STEP100の処理に戻り、サンプリング時間が経過したら、熱電対30の熱起電力を再び取得して、以降の上述した処理を繰り返す。これに対して、コンロ操作ボタン8に対する消火操作によってコンロバーナ5における燃焼を停止した場合は(STEP112:yes)、図4の異常燃焼検知処理を終了する。
【0033】
一方、STEP110の判断において、熱起電力の値が正常範囲の下限値よりも小さい、または熱起電力の値が正常範囲の上限値よりも大きい場合は(STEP110:no)、前述した逆火や逆噴などの異常な燃焼と判断し、ガス遮断弁22を閉弁することで強制的に燃焼を停止させた後(STEP106)、図4の異常燃焼検知処理を終了する。尚、異常な燃焼を検知した場合の対処は、ガス遮断弁22の閉弁に限られず、例えば、所定の警報を発することで使用者に異常な燃焼を報知してもよい。
【0034】
図6は、逆火や逆噴などの異常な燃焼によって熱電対30の熱起電力の値が正常範囲から外れる例を示した説明図である。図では、複数の炎口13のうち熱電対30の先端が近接している炎口(以下、TC炎口)13aの断面を拡大して表している。まず、図6(a)には、正常に燃焼している状態が示されており、図示した例では、TC炎口13aに接してバーナヘッド12の径方向の外側に形成された炎の内炎部分に熱電対30の先端が位置している。そのため、熱電対30には、内炎の温度に応じた熱起電力が生じる。そして、このときの熱起電力の値が包含されるように正常範囲が定められている。
【0035】
一方、逆火や逆噴などの異常な燃焼が発生すると、前述したように混合管11内で燃料ガスが燃焼したり、開口端11aから漏れ出した燃料ガスが燃焼したりすることで、TC炎口13aから出る炎の形状が変化する。例えば、図6(b)に示されるように、図6(a)の正常な燃焼状態に比べて、TC炎口13aから出る炎が小さくなる場合があり、図6(b)に示した例では、炎の外炎部分に熱電対30の先端が位置している。一般的に炎は内炎に比べて外炎の温度が高い傾向にあり、熱電対30に外炎の温度に応じた熱起電力が生じることにより、熱起電力の値が正常範囲の上限値よりも高くなることがある。
【0036】
また、図6(c)に示されるように、TC炎口13aから出る炎が更に小さくなることで、外炎の外側に熱電対30の先端が位置する場合がある。この場合でも、熱電対30の先端は炎から熱を受けることから、熱電対30に熱起電力が生じるものの、外炎の外側は内炎に比べて温度が低い傾向にあり、熱起電力の値が正常範囲の下限値よりも低くなることがある。
【0037】
さらに、逆火や逆噴などの異常な燃焼が発生してTC炎口13aに炎が形成されなくなると、熱電対30の先端が加熱されないので、当然ながら熱電対30の熱起電力の値は正常範囲の下限値よりも低くなる。しかも、熱起電力の値が閾値E0以下になることで、点火不良や立ち消えの場合と同様にガス遮断弁22を閉弁することから、異常な燃焼を停止させることができる。
【0038】
尚、図6に示したのは一例であり、異常な燃焼が発生しても、炎が小さくなるとは限らず、例えば、複数の炎口13のうちTC炎口13a以外の幾つかの炎口13が煮こぼれなどで塞がれることによって、塞がれていないTC炎口13aから出る炎が大きくなることがある。また、正常な燃焼状態でTC炎口13aに接して形成される炎と熱電対30の先端との位置関係を基準にして正常範囲が定められていることから、例えば、正常な燃焼状態で図6(b)に示されるように炎の外炎部分に熱電対30の先端が位置していたとすると、異常な燃焼状態で図6(a)に示されるように炎が大きくなって炎の内炎部分に熱電対30の先端が位置するようになることで、熱起電力の値が正常範囲の下限値よりも低くなることがある。
【0039】
図7は、異常燃焼検知処理に従ってコンロバーナ5における異常な燃焼を検知する例を示した説明図である。図7のグラフでは、横軸に点火からの経過時間、縦軸に熱電対30の熱起電力を取って、正常な燃焼状態における熱起電力の変化が実線で示されており、逆火や逆噴などの異常な燃焼状態における熱起電力の変化が破線で示されている。また、本実施例のコンロバーナ5では火力を大・中・小の3段階の中から設定可能であることと対応して、各火力での熱起電力の変化が示されている。
【0040】
コンロバーナ5に点火すると、バーナヘッド12の径方向における炎口13の外側に炎が形成され、その炎で熱電対30の先端が加熱されることにより、熱起電力が急激に上昇する。一般的に熱電対30は、先端(測温接点)の温度変化に対する応答が早く、正常な燃焼状態で安定すると、熱起電力の値はほぼ一定になる。そして、前述したように点火から所定のサンプリング時間Δt(本実施例では20秒)が経過する毎に熱起電力を取得するようになっており、このサンプリング時間Δtは、熱電対30の応答時間(例えば10秒)よりも長めに設定されている。尚、点火不良や立ち消えの場合は、熱電対30の先端が炎で加熱されないので、熱起電力の値が閾値E0以下であることに基づいて、検知することができる。
【0041】
また、正常な燃焼状態における熱電対30の熱起電力は、TC炎口13aに接して形成される炎と熱電対30の先端との位置関係に依存し、コンロバーナ5の火力に応じて、炎の形状(大きさ)が変わることから、熱起電力の値も異なっている。このことと対応して、熱起電力の正常範囲はコンロバーナ5の火力毎に定められており、火力が「小」の正常範囲はE1からE2までに設定され、火力が「中」の正常範囲はE3からE4までに設定され、火力が「大」の正常範囲はE5からE6までに設定される。そして、正常な燃焼状態が維持されていれば、熱起電力の値はほぼ一定のままであり、正常範囲から外れることはない。
【0042】
一方、逆火や逆噴などの異常な燃焼が発生すると、TC炎口13aに炎が形成されなくなったり、TC炎口13aから炎が出ていても正常な燃焼状態とは炎の形状が変わったりすることで、熱起電力の値に変化が現れる。そのため、サンプリング時間Δtの経過毎に取得した熱起電力の値が正常範囲の下限値よりも小さい、または正常範囲の上限値よりも大きいことに基づいて、燃料ガスの異常な燃焼を検知することができる。
【0043】
以上に説明したように本実施例のガスコンロ1では、熱電対30の熱起電力に基づいて、コンロバーナ5での点火不良や立ち消えを検知するだけでなく、異常な燃焼を検知するようになっている。コンロバーナ5は、点火不良や立ち消えを検知するために熱電対30を備えることが一般的になっており、従来のガスコンロ1では、熱電対30が炎で加熱されることで生じる熱起電力を利用して電磁コイルでガス遮断弁22を開弁状態に維持しておき、点火不良や立ち消えの場合は、熱電対30が加熱されず熱起電力が生じないことでガス遮断弁22が閉弁するようになっている。このため、逆火や逆噴などが発生しても、TC炎口13aから炎が出たまま維持されていると、検知されずに異常な燃焼が継続される。これに対して、本実施例のガスコンロ1では、熱電対30の熱起電力の値が正常範囲内にあるか否かを判断しており、熱起電力の値が正常範囲から外れたことに基づいて、逆火や逆噴などの異常な燃焼を検知することが可能である。
【0044】
そして、このように本来は点火不良や立ち消えを検知するための既存の熱電対30を流用して逆火や逆噴などの異常な燃焼を検知することにより、逆火や逆噴を検知するための新たな温度検出器の追加が不要となるので、逆火や逆噴の発生によって温度が上昇する混合管11の開口端11a付近に温度検出器を設置するスペースを確保する必要がなくなると共に、ガスコンロ1の製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0045】
また、本実施例のガスコンロ1では、コンロバーナ5の火力に応じて熱起電力の正常範囲の下限値および上限値を設定するようになっている。こうすれば、火力毎の熱起電力の違いによって正常範囲から外れてしまう誤検知を抑制しつつ、正常範囲を絞ることができるので、逆火や逆噴の検知精度を向上させることが可能となる。
【0046】
以上、本実施例のガスコンロ1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0047】
例えば、上述した実施例では、コンロバーナ5の火力が大きいほど、正常な燃焼状態における熱電対30の熱起電力の値が大きくなっており(図7参照)、このことと対応して、火力「大」の正常範囲(E5からE6まで)は、火力「中」の正常範囲(E3からE4まで)よりも熱起電力が大きい側に設定され、火力「中」の正常範囲(E3からE4まで)は、火力「小」の正常範囲(E1からE2まで)よりも熱起電力が大きい側に設定されていた。しかし、前述したように、正常な燃焼状態における熱電対30の熱起電力は、TC炎口13aに接して形成される炎と熱電対30の先端との位置関係に依存し、コンロバーナ5の火力が大きくなっても、必ずしも熱電対30の熱起電力の値が大きくなるとは限らないため、正常範囲の序列が入れ替わることがある。
【0048】
また、上述した実施例では、コンロバーナ5の火力を大・中・小の3段階の中から設定することが可能となっていたが、火力を変更可能であれば、3段階に限られない。また、熱起電力の正常範囲は、コンロバーナ5の火力毎に、正常な燃焼状態における熱電対30の熱起電力の値が包含されるように設定すればよく、異なる火力で正常範囲の一部が重複してもよい。
【0049】
また、上述した実施例のコンロバーナ5は、円環形状のバーナ本体(バーナヘッド12およびバーナボディ10)の外周面に炎口13が開口し、炎口13からバーナ本体の径方向の外側に向けて炎が形成される外炎式バーナであるものとして説明した。しかし、円環形状のバーナ本体の内周面に炎口13が開口し、炎口13からバーナ本体の径方向の内側に向けて炎が形成される内炎式バーナであっても、本発明を好適に適用することができる。内炎式バーナの場合は、熱電対30を、先端の測温接点が炎口13に近接してバーナ本体の径方向の内側に位置するように設置しておけばよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ガスコンロ、 2…コンロ本体、 3…天板、
4…挿通孔、 5…コンロバーナ、 6…五徳、
8…コンロ操作ボタン、 10…バーナボディ、 10a…混合室、
11…混合管、 11a…開口端、 12…バーナヘッド、
12a…外周壁、 12b…内周壁、 12d…溝、
13…炎口、 13a…TC炎口、 14…バーナカバー、
14a…貫通孔、 20…ガス通路、 21…ノズル、
22…ガス遮断弁、 23…流量調節弁、 30…熱電対、
32…温度センサー、 40…コントローラ、 41…判断部、
42…検知部、 43…設定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7