特許第6906427号(P6906427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906427
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/12 20060101AFI20210708BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20210708BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20210708BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01L29/78 652T
   H01L21/265 601A
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 652A
   H01L29/78 658E
   H01L29/78 658G
   H01L29/78 658Z
   H01L29/78 652L
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-216511(P2017-216511)
(22)【出願日】2017年11月9日
(65)【公開番号】特開2019-87689(P2019-87689A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 博之
(72)【発明者】
【氏名】森 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】長里 喜隆
【審査官】 西出 隆二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−174831(JP,A)
【文献】 特開2015−019070(JP,A)
【文献】 特開2015−115430(JP,A)
【文献】 特開2014−150211(JP,A)
【文献】 特開2011−243670(JP,A)
【文献】 特開2006−156658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/12
H01L 21/265
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に窒化物半導体層を形成する窒化物半導体層形成工程と、
前記基板の裏面から溝を形成する溝形成工程と、
前記溝形成工程の後に、前記窒化物半導体層をアニール処理するアニール工程と、を備えており、
前記窒化物半導体層は、
ドリフト層と、前記ドリフト層の表面から突出して設けられているJFET領域と、を有するn型のドリフト領域と、
前記JFET領域に隣接しており、前記窒化物半導体層内に埋め込まれているp型の埋め込み領域と、を有しており、
前記溝は、前記窒化物半導体層の表面に直交する方向から観測したときに、前記埋め込み領域の存在範囲内において、前記基板及び前記ドリフト層を貫通して前記埋め込み領域に達する、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記溝は、前記基板の裏面に向けて先細りのテーパ状である、請求項1に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板と、
前記基板上に設けられている窒化物半導体層と、を備えており、
前記窒化物半導体層は、
ドリフト層と、前記ドリフト層の表面から突出して設けられているJFET領域と、を有するn型のドリフト領域と、
前記JFET領域に隣接しており、前記窒化物半導体層内に埋め込まれているp型の埋め込み領域と、を有しており、
前記窒化物半導体層の表面に直交する方向から観測したときに、前記埋め込み領域の存在範囲内において、前記基板及び前記ドリフト層を貫通して前記埋め込み領域に達する溝が形成されている、窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記溝は、前記基板の裏面に向けて先細りのテーパ状である、請求項3に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記窒化物半導体層の前記表面の一部に設けられている絶縁ゲート部と、
前記窒化物半導体層の前記表面の他の一部に設けられているソース電極と、
前記基板の裏面に設けられているドレイン電極と、をさらに備えており、
前記窒化物半導体層は、
前記埋め込み領域上に設けられており、前記窒化物半導体層の前記表面に露出しており、前記埋め込み領域よりも不純物濃度が薄いp型のチャネル領域と、
前記チャネル領域によって前記JFET領域から隔てられており、前記窒化物半導体層の前記表面に露出するn型のソース領域と、をさらに有しており、
前記絶縁ゲート部は、前記JFET領域と前記ソース領域を隔てている前記チャネル領域に対向しており、
前記ソース電極は、前記ソース領域に接している、請求項3又は4に記載の窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、窒化物半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型の窒化物半導体装置の開発が進められている。一例として、n型のJFET領域に隣接してp型の埋め込み領域が埋め込まれている縦型の窒化物半導体装置が知られている。p型の埋め込み領域が電流障壁層として機能し、電流はn型のJFET領域を縦方向に流れる。また、このような埋め込み領域は、アバランシェ時に発生した正孔を排出するための経路としても機能することができる。
【0003】
このような埋め込み領域では、p型不純物としてマグネシウムが導入されている。p型不純物として導入されているマグネシウムの一部は、水素と結合して水素化マグネシウムの複合体となることがある。このため、このような埋め込み領域では、水素の残留によって活性化率が低下するという問題がある。
【0004】
特許文献1は、窒化物半導体層の表面から埋め込み領域に達する溝を形成し、その溝の底面に埋め込み領域が露出した状態でアニール処理を実施し、埋込み領域から水素を除去する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−19070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
埋込み領域から水素を良好に除去するためには、溝内に露出する埋め込み領域の面積を増やす必要がある。特許文献1の技術では、窒化物半導体層の表面から埋め込み領域に達する複数の溝を形成し、溝内に露出する埋め込み領域の面積を増やしている。しかしながら、特許文献1の技術では、このような複数の溝を形成するためのスペースを必要とし、窒化物半導体装置のチップ面積を増加させてしまう。本明細書は、チップ面積の増加を抑えながら、p型の埋め込み領域から水素を除去する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する窒化物半導体装置の製造方法は、窒化物半導体層形成工程、溝形成工程及びアニール工程を備えることができる。窒化物半導体層形成工程は、基板上に窒化物半導体層を形成する。溝形成工程は、基板の裏面から溝を形成する。アニール工程は、溝形成工程の後に、窒化物半導体層をアニール処理する。窒化物半導体層は、n型のドリフト領域及びp型の埋め込み領域を有することができる。ドリフト領域は、ドリフト層と、ドリフト層の表面から突出して設けられているJFET領域と、を有する。埋め込み領域は、JFET領域に隣接しており、窒化物半導体層内に埋め込まれている。溝は、窒化物半導体層の表面に直交する方向から観測したときに、埋め込み領域の存在範囲内において、基板及びドリフト層を貫通して埋め込み領域に達する。この窒化物半導体装置の製造方法では、埋め込み領域の下方に溝が形成されており、その溝を介して埋め込み領域から水素が除去される。埋め込み領域の下方の領域は、実質的に電流が流れる領域ではないことから、このような領域に溝が形成されていても、窒化物半導体装置の電気的特性に大きな影響は与えない。一方、埋め込み領域の下方に溝を形成することで、溝を形成するためのスペースをわざわざ確保する必要がなく、チップ面積の増加が抑えられる。上記窒化物半導体装置の製造方法は、チップ面積の増加を抑えながら、p型の埋め込み領域から水素を除去することができる。
【0008】
上記窒化物半導体装置の製造方法では、溝は、基板の裏面に向けて先細りのテーパ状であってもよい。このような形態の溝を形成することで、埋め込み領域が溝内に広く露出することができる。このため、埋め込み領域から水素を良好に除去することができる。一方、基板の面積を大きく減らすことなく残存させることができるので、窒化物半導体装置の動作中に発生した熱は、その基板を介して外部に良好に放熱される。このような形態の溝を形成することで、埋め込み領域からの良好な水素除去と高い放熱特性を両立させることができる。
【0009】
本明細書が開示する窒化物半導体装置は、基板と、基板上に設けられている窒化物半導体層と、を備えることができる。窒化物半導体層は、n型のドリフト領域及びp型の埋め込み領域を有する。ドリフト領域は、ドリフト層と、ドリフト層の表面から突出して設けられているJFET領域と、を有する。埋め込み領域は、JFET領域に隣接しており、窒化物半導体層内に埋め込まれている。窒化物半導体層の表面に直交する方向から観測したときに、埋め込み領域の存在範囲内において、基板及びドリフト層を貫通して埋め込み領域に達する溝が形成されている。
【0010】
上記窒化物半導体装置では、溝が、基板の裏面に向けて先細りのテーパ状であってもよい。
【0011】
上記窒化物半導体装置はさらに、窒化物半導体層の表面の一部に設けられている絶縁ゲート部、窒化物半導体層の表面の他の一部に設けられているソース電極、及び、基板の裏面に設けられているドレイン電極を備えていてもよい。この場合、窒化物半導体層は、p型のチャネル領域とn型のソース領域をさらに有していてもよい。チャネル領域は、埋め込み領域上に設けられており、窒化物半導体層の表面に露出しており、埋め込み領域よりも不純物濃度が薄い。ソース領域は、チャネル領域によってJFET領域から隔てられており、窒化物半導体層の表面に露出する。絶縁ゲート部は、JFET領域とソース領域を隔てているチャネル領域に対向している。ソース電極は、ソース領域に接している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】窒化物半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図2A】窒化物半導体装置の一製造過程における窒化物半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図2B】窒化物半導体装置の一製造過程における窒化物半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図2C】窒化物半導体装置の一製造過程における窒化物半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図2D】窒化物半導体装置の一製造過程における窒化物半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図2E】窒化物半導体装置の一製造過程における窒化物半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図2F】窒化物半導体装置の一製造過程における窒化物半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図3】変形例の窒化物半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示されるように、窒化物半導体装置1は、n+型の窒化ガリウム(GaN)の窒化物半導体基板10、窒化物半導体基板10の表面上に積層した窒化ガリウム(GaN)の窒化物半導体層20、窒化物半導体基板10の裏面の一部を被覆するドレイン電極32、窒化物半導体層20の表面上の一部を被覆するソース電極34、窒化物半導体層20の表面上の一部に設けられている絶縁ゲート部36、及び、ボディ電極38を備えている。窒化物半導体層20は、n-型のドリフト領域22、p型のボディ領域24、及び、n+型のソース領域26を有している。
【0014】
窒化物半導体基板10は、n型不純物を高濃度に含む窒化ガリウム(GaN)を材料とする。ドレイン電極32が窒化物半導体基板10の裏面の一部を被覆しており、ドレイン電極32と窒化物半導体基板10がオーミック接触している。窒化物半導体基板10は、窒化物半導体層20がエピタキシャル成長するための下地基板である。
【0015】
ドリフト領域22は、窒化物半導体基板10の表面上に設けられており、ドリフト層22aとJFET領域22bを有している。ドリフト層22aは、窒化物半導体基板10の表面上に設けられている。JFET領域22bは、ドリフト層22aの表面から縦方向に突出した凸状の形態を有するように、ドリフト層22aの表面上に設けられており、窒化物半導体層20の表面の一部に露出する。JFET領域22bは、窒化物半導体層20の表面に直交する方向から見たときに、直線状に伸びている。
【0016】
ボディ領域24は、ドリフト層22aの表面上に設けられており、JFET領域22bの両側に隣接して配置されており、p+型の埋め込み領域24aとp-型のチャネル領域24bを有している。
【0017】
埋め込み領域24aは、JFET領域22bの両側に隣接して配置されており、ドリフト層22aとチャネル領域24bの間に設けられている。埋め込み領域24aは、チャネル領域24bよりもp型不純物(マグネシウム)を高濃度に含んでおり、電流遮蔽領域として機能するとともに、アバランシェ時に発生した正孔を排出するための経路としても機能することができる。また、埋め込み領域24aは、オフのときにチャネル領域24bがパンチスルーするのを抑える機能も有する。
【0018】
チャネル領域24bは、埋め込み領域24aの表面上に配置されており、JFET領域22bの両側に隣接して配置されているとともに、窒化物半導体層20の表面に露出する。チャネル領域24bのp型不純物(マグネシウム)の濃度は、窒化物半導体装置1のゲート閾値電圧及びチャネル移動度が所望の値となるように、低く設定されている。
【0019】
ソース領域26は、チャネル領域24bの表層部に配置されており、チャネル領域24bによってJFET領域22bから隔てられているとともに、窒化物半導体層20の表面に露出する。ソース領域26は、n型不純物を高濃度に含んでおり、ソース電極34にオーミック接触している。ソース領域26は、イオン注入技術を利用して、窒化物半導体層20の表面に向けてシリコンを照射することで形成されている。
【0020】
絶縁ゲート部36は、窒化物半導体層20の表面上の一部に設けられており、酸化シリコンのゲート絶縁膜36a及びポリシリコンのゲート電極36bを有する。ゲート電極36bは、JFET領域22bとソース領域26を隔てる部分のチャネル領域24bの表面にゲート絶縁膜36aを介して対向している。
【0021】
ボディ電極38は、窒化物半導体層20の表面上に設けられているボディ表面電極38a及び窒化物半導体層20の表面から深部に向けて伸びる溝38T内に充填されているボディ充填電極38bを有している。ボディ充填電極38bは、チャネル領域24bを貫通して伸びており、一端がボディ表面電極38aに接しており、他端が埋め込み領域24aに接している。ボディ充填電極38bは、埋め込み領域24aにオーミック接触している。ボディ表面電極38aの材料は例えばアルミニウムであり、ボディ充填電極38bの材料は例えばニッケルと金の積層である。
【0022】
窒化物半導体装置1では、窒化物半導体基板10の裏面から窒化物半導体基板10及びドリフト層22aを貫通して埋め込み領域24aに達する溝42が形成されている。溝42は、窒化物半導体層20の表面に直交する方向から観測したときに、埋め込み領域24aの存在範囲内に位置している。換言すると、溝42は、窒化物半導体層20の表面に直交する方向から観測したときに、JFET領域22bに重複していない。また、溝42は、窒化物半導体基板10の裏面に向けて先細りのテーパ状に形成されている。溝42の内壁面には、絶縁膜44が被膜している。
【0023】
次に、窒化物半導体装置1の動作を説明する。使用時には、ドレイン電極32に正電圧が印加され、ソース電極34及びボディ電極38が接地される。ゲート電極36bにゲート閾値よりも高い正電圧が印加されると、JFET領域22bとソース領域26を隔てる部分のチャネル領域24bに反転層が形成され、窒化物半導体装置1がターンオンする。このとき、反転層を経由してソース領域26からJFET領域22bに電子が流入する。JFET領域22bに流入した電子は、そのJFET領域22bを縦方向に流れてドレイン電極32に向かう。これにより、ドレイン電極32とソース電極34が導通する。
【0024】
ゲート電極36bが接地されると、反転層が消失し、窒化物半導体装置1がターンオフする。このとき、埋め込み領域24a及びチャネル領域24bからJFET領域22b内に空乏層が伸びてくる。JFET領域22bは、両側から伸びてくる空乏層が繋がってピンチオフの状態となる。JFET領域22bがピンチオフすることで、絶縁ゲート部36のゲート絶縁膜36aに加わる電界が緩和され、ゲート絶縁膜36aの絶縁破壊が抑えられ、窒化物半導体装置1が高い耐圧を有することができる。
【0025】
また、窒化物半導体装置1のドレイン電極32とソース電極34の間に過電圧が印加されると、窒化物半導体層20内でアバランシェ降伏が発生する。このアバランシェ時に発生した正孔は、埋め込み領域24a及びボディ充填電極38bを介してボディ表面電極38aに排出される。窒化物半導体装置1は、高いアバランシェ耐量を有することができる。
【0026】
次に、窒化物半導体装置1の製造方法を説明する。まず、図2Aに示されるように、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を利用して、窒化物半導体基板10の表面からドリフト層22a、埋め込み領域24a及びチャネル領域24bを順に積層して窒化物半導体層20を形成する。
【0027】
次に、図2Bに示されるように、ドライエッチング技術を利用して、チャネル領域24bと埋め込み領域24aを貫通してドリフト層22aに達するトレンチ22Tを形成する。このトレンチ22Tによって分断された埋め込み領域24aとチャネル領域24bがボディ領域24となる。
【0028】
次に、図2Cに示されるように、有機金属気相成長法を利用して、トレンチ22T内にn-型の窒化ガリウム(GaN)を再成長させてJFET領域22bを形成する。図2A図2Cの工程を特に、窒化物半導体層形成工程という。なお、図2B及び図2CのJFET領域22bを形成する工程は、後述するアニール工程の後に実施してもよい。
【0029】
次に、図2Dに示されるように、ドライエッチング技術を利用して、窒化物半導体基板10の裏面から窒化物半導体基板10及びドリフト層22aを貫通して埋め込み領域24aに達する溝42を形成する(溝形成工程)。なお、逆テーパの溝42を形成する製造方法は特に限定されないが、例えば、ドライエッチングの自己バイアスを低く調整し、側壁デポ物ができない条件でエッチングすることで、逆テーパの溝42が形成され得る。
【0030】
次に、図2Eに示されるように、窒化物半導体基板10及び窒化物半導体層20を850°以上に加熱するアニール処理を実施する(アニール工程)。これにより、埋め込み領域24a内のマグネシウムに結合していた水素は、溝42を介して外部に排出される。埋め込み領域24aから水素が除去されるので、埋め込み領域24aは高い活性化率を有することができる。これにより、埋め込み領域24aは、電流遮蔽層及び正孔排出経路としての機能を良好に発揮することができる。
【0031】
次に、図2Fに示されるように、窒化物半導体基板10の裏面及び溝42の内壁面に絶縁膜44を成膜し、JFET領域22bの下方の窒化物半導体基板10の裏面を被膜する絶縁膜44を選択的に除去する。
【0032】
最後に、イオン注入技術を利用してソース領域26を形成した後に、既知の製造技術を利用して、ドレイン電極32、ソース電極34、絶縁ゲート部36及びボディ電極38を形成する。これにより、図1に示す窒化物半導体装置1が完成する。
【0033】
上記の窒化物半導体装置1の製造方法では、埋め込み領域24aの下方に溝42が形成されており、その溝42を介して埋め込み領域24aから水素が除去される。埋め込み領域24aの下方の領域は、実質的に電流が流れる領域ではないことから、このような領域に溝42が形成されていても、窒化物半導体装置1の電気的特性に大きな影響は与えない。一方、埋め込み領域24aの下方に溝42を形成することで、水素除去用の溝42を形成するためのスペースをわざわざ確保する必要がなく、チップ面積の増加が抑えられる。上記の窒化物半導体装置1の製造方法は、チップ面積の増加を抑えながら、p型の埋め込み領域24aから水素を除去することができる。
【0034】
また、上記の窒化物半導体装置1の製造方法では、溝42が逆テーパの形態となるように形成されている。これにより、埋め込み領域24aは、溝42内に広く露出することができる。このため、埋め込み領域24aから水素が良好に除去される。一方、窒化物半導体基板10の面積を大きく減らすことなく残存させることができるので、窒化物半導体装置1の動作中に発生した熱は、その窒化物半導体基板10を介して外部に良好に放熱される。このように、逆テーパ状の溝42を形成することで、埋め込み領域24aからの良好な水素除去と高い放熱特性を両立させることができる。
【0035】
また、上記の窒化物半導体装置1では、溝42が逆テーパの形態となるように形成されていることで、JFET領域22bの下方のドリフト層22a及び窒化物半導体基板10が、窒化物半導体基板10の裏面に向けて広がるテーパ状に形成されている。JFET領域22bの下方の領域は電流が流れる経路であり、この電流経路の断面積が大きくなることで、窒化物半導体装置1のオン抵抗が低下することができる。
【0036】
図3に示されるように、溝142の内壁面のうちの側面が曲面で形成されていてもよい。このような窒化物半導体装置2では、溝142の側面側に位置するドリフト層22aの端部の電界が緩和される。これは、べベル構造と同様に、ドリフト層22aの端部の等電位面が溝142の側面側で曲がることにより、ドリフト層22aの端部の電界が緩和される。なお、側面が曲面となる溝142を形成する製造方法は特に限定されないが、例えば、ドライエッチングで加工した後に、アンモニア雰囲気中の加熱処理によるマストランスポート現象を利用することで、その側面が曲面となる溝142が形成され得る。
【0037】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
1:窒化物半導体装置
20:窒化物半導体層
22:ドリフト領域
22a:ドリフト層
22b:JFET領域
24:ボディ領域
24a:埋め込み領域
24b:チャネル領域
26:ソース領域
32:ドレイン電極
34:ソース電極
36:絶縁ゲート部
36a:ゲート絶縁膜
36b:ゲート電極
38:ボディ電極
38T:溝
38a:ボディ表面電極
38b:ボディ充填電極
42:溝
44:絶縁膜
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3