特許第6906474号(P6906474)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コバレントマテリアル株式会社の特許一覧 ▶ コバレントマテリアル徳山株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6906474-加熱成型冶具及び加熱成型装置 図000002
  • 特許6906474-加熱成型冶具及び加熱成型装置 図000003
  • 特許6906474-加熱成型冶具及び加熱成型装置 図000004
  • 特許6906474-加熱成型冶具及び加熱成型装置 図000005
  • 特許6906474-加熱成型冶具及び加熱成型装置 図000006
  • 特許6906474-加熱成型冶具及び加熱成型装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906474
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】加熱成型冶具及び加熱成型装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   C03B20/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-93493(P2018-93493)
(22)【出願日】2018年5月15日
(65)【公開番号】特開2019-199372(P2019-199372A)
(43)【公開日】2019年11月21日
【審査請求日】2020年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592104944
【氏名又は名称】クアーズテック徳山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】生野 浩人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広樹
(72)【発明者】
【氏名】足立 定弘
【審査官】 松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−189231(JP,A)
【文献】 特開2004−307267(JP,A)
【文献】 特開2007−022847(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0108557(US,A1)
【文献】 特開2004−307265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
8/00,11/00
19/00,23/00
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面及び側面を有し、石英ガラスインゴットから所定形状の石英ガラス成形体を形成する成型用受け皿と、
前記成型用受け皿の上部に配置されると共に石英ガラスインゴットを包囲する第一の支持体と、
前記第一の支持体の上部に配置されると共に、内部に石英ガラスインゴットを収納する、筒状の第二の支持体と、
前記第二の支持体の内周面に形成された、垂直方向に延設されたガイド溝と、
前記石英ガラスインゴットの上端部が挿入されることにより、石英ガラスインゴットの上端部の外周面と係合する保持開口部を有する、板状の第三の支持体と、
前記ガイド溝に挿入される、前記第三の支持体の外周縁に形成された突起と、
を備え、
前記第三の支持体の保持開口部が、石英ガラスインゴットの外周面と係合することにより、石英ガラスインゴットを保持し、
前記石英ガラスインゴットの高さ寸法の減少に伴い、第二の支持体に対して、前記第三の支持体が、石英ガラスインゴットを保持した状態で、かつ水平を維持した状態で垂直方向に移動することを特徴とする加熱成型冶具。
【請求項2】
第三の支持体の保持開口部は、平面視上円形であり、
前記第三の支持体の外周縁に形成された突起の数は、3つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の加熱成型冶具。
【請求項3】
前記石英ガラスインゴットが前記成型用受け皿の底面上に載置された際、
前記石英ガラスインゴットの軸芯、及び前記第三の支持体の保持開口部の中心が同一直線上に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された加熱成型冶具。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載された加熱成型冶具と、
前記加熱成型冶具を収納する加熱炉と、
前記加熱炉内に収納され、石英ガラスインゴットを加熱するヒータと、
を少なくとも備えたことを特徴とする加熱成型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱成型冶具及び加熱成型装置に関し、特に、石英ガラスのインゴットを加熱成型して、所定形状の石英ガラス成形体を形成するための加熱成型冶具及び加熱成型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学用途に好適な合成石英ガラス体を製造する方法の一つとして、合成石英ガラスのインゴットを製造し、その後、前記石英ガラスインゴットを所定温度で加熱して軟化させ、所定形状の型を用いて成形する製造方法が知られている。
尚、前記石英ガラスインゴットは、例えば、四塩化ケイ素等のシリカ原料を加水分解反応させて、ガラス微粒子をターゲット上に堆積させることにより製造される。
【0003】
この石英ガラスインゴットを加熱して、軟化させた石英ガラスを所定の形状に成形する方法に用いられる製造装置(加熱成形装置)が、特許文献1において提案されている。
この加熱成形装置には、柱形状のシリカガラスが収納されるカーボン容器と、該カーボン容器が設置される加熱炉と、柱形状のシリカガラスを保持する倒れ防止部材が設けられている。
【0004】
この倒れ防止部材は、前記カーボン容器の内周面に接する側板と、前記柱形状のシリカガラスの上端面に当接すると共に、前記柱形状のシリカガラスの上端面より大きい天板と、該天板の周縁部と前記側板の下端縁部とを接続する傾斜板とを備えている。
この倒れ防止部材は、いわゆる凹部形状に形成され、柱形状のシリカガラスの上端面を前記凹部で保持し、柱形状のシリカガラスの倒れを防止するものである。
【0005】
即ち、柱形状のシリカガラスを加熱することにより、軟化し、拡径すると共に、柱形状のシリカガラスの高さが減少する。この柱形状のシリカガラスの高さの減少に対応して、前記倒れ防止部材は、柱形状のシリカガラスの軸芯(中心線)が当初の位置からずれないように、柱形状のシリカガラスの上端面を保持しながら、シリカガラスのカーボン容器の内周面上を摺動する。
このような倒れ防止部材を用いた場合には、柱形状のシリカガラスの軸芯(中心線)が当初の位置からずれないため、柱形状のシリカガラスが軟化、拡径する際、柱形状のシリカガラスが倒れ、座屈するのを防止でき、高品質なシリカガラスを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−189231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、石英ガラスインゴットの上端部は平坦面ではなく、一般的には、半球状の曲面に形成される。一方、前記倒れ防止部材は、前記したように側板と天板と傾斜板とから構成された、いわゆる凹部形状に形成されている。そのため、石英ガラスインゴットの上端部を天板と傾斜板とで確実に保持できない虞があった。
例えば、成形に用いられる石英ガラスインゴットとして、直径寸法が異なる石英ガラスインゴットが用いられる場合がある。このような場合、石英ガラスインゴットの上端面が天板に当接ことなく、傾斜板のみに当接する場合があり、あるいはまた石英ガラスインゴットの上端面が天板に当接のみに当接し、傾斜板に当接しない場合もある。
一方、成形に用いられる石英ガラスインゴットに対応して、種々の寸法の倒れ防止部を用意することは、製造コストの面から好ましいものではない。
【0008】
また、加熱成形装置に石英ガラスインゴットを設置する際、石英ガラスインゴット上端部が倒れ防止部に隠れ、その位置を外部から認識することが困難であった。
その結果、石英ガラスインゴットの軸芯(中心線)を目視あるいは光学測定器等で把握することが困難となり、前記石英ガラスインゴットの軸芯と倒れ防止部の中心とを一致させる作業が困難であった。
【0009】
更に、前記シリカガラスが軟化し、拡径した際、拡径したシリカガラスが傾斜板に接し、シリカガラスが前記傾斜板上を摺動する虞があった。
この傾斜板上を摺動したシリカガラスの外周面には傷が生じ、この傷が石英ガラス成形体内に取り込まれると、その痕跡が石英ガラス成形体に残存し、石英ガラス成形体の均一性が失われるという課題があった。
更にまた、シリカガラスが傾斜板上を摺動した場合には、傾斜板からの塵、欠け等の異物が混入し、石英ガラス成形体内に取り込まれ、石英ガラス成形体の均一性が失われるという課題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決することを目的とするものであり、設置時の石英ガラスインゴットの軸芯位置を確認し易く、また加熱軟化時の石英ガラスインゴットの倒れを防止できると共に、石英ガラス成形体の均一性の向上を図ることができる加熱成型冶具及び加熱成型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた本発明にかかる加熱成型冶具は、底面及び側面を有し、石英ガラスインゴットから所定形状の石英ガラス成形体を形成する成型用受け皿と、 前記成型用受け皿の上部に配置されると共に石英ガラスインゴットを包囲する第一の支持体と、前記第一の支持体の上部に配置されると共に、内部に石英ガラスインゴットを収納する、筒状の第二の支持体と、前記第二の支持体の内周面に形成された、垂直方向に延設されたガイド溝と、前記石英ガラスインゴットの上端部が挿入されることにより、石英ガラスインゴットの上端部の外周面と係合する保持開口部を有する、板状の第三の支持体と、前記ガイド溝に挿入される、前記第三の支持体の外周縁に形成された突起と、を備え、前記第三の支持体の保持開口部が、石英ガラスインゴットの外周面と係合することにより、石英ガラスインゴットを保持し、前記石英ガラスインゴットの高さ寸法の減少に伴い、第二の支持体に対して、前記第三の支持体が、石英ガラスインゴットを保持した状態で、かつ水平を維持した状態で垂直方向に移動することを特徴としている。
【0012】
このように、本発明にかかる加熱成型冶具は、第三の支持体の保持開口部が、石英ガラスインゴットの外周面と係合することにより、石英ガラスインゴットを保持する。そして、前記石英ガラスインゴットの高さ寸法の減少に伴い、第二の支持体に対して、前記第三の支持体が、石英ガラスインゴットを保持した状態で、かつ水平を維持した状態で垂直方向下方に移動する。
即ち、保持開口部に石英ガラスインゴットの上端部が挿入され、石英ガラスインゴットの外周面と保持開口部が係合するため、第三の支持体によって石英ガラスインゴットは確実に保持され、倒れ、座屈を抑制することができる。
【0013】
加熱成形装置に石英ガラスインゴットを設置する際にも、石英ガラスインゴット上端部は保持開口部から突出しているため、石英ガラスインゴットの軸芯(中心線)の位置を外部から認識することができる。
その結果、石英ガラスインゴットの軸芯(中心線)を目視あるいは光学測定器等で把握することができ、前記石英ガラスインゴットの軸芯と倒れ防止部の中心とを一致させる作業を容易に行うことができる。
【0014】
また、第三の支持体は板状に形成され、第二の支持体に対して、前記第三の支持体が石英ガラスインゴットを保持した状態で、かつ水平を維持した状態で垂直方向に移動可能に構成されている。
即ち、石英ガラスインゴットが軟化し、拡径した際、拡径した石英ガラスが第三の支持体に接触し、第三の支持体上を摺動するのを抑制できるため、石英ガラスインゴット外周面の傷を抑制できる。また第三の支持体からの塵、欠け等の異物の混入も抑制でき、均一な石英ガラス成形体を得ることができる。
【0015】
ここで、第三の支持体の保持開口部は、平面視上円形であり、前記第三の支持体の外周縁に形成された突起の数は、3つ以上であることが望ましい。
このように、石英ガラスインゴットの上端部は、徐々に径が増す曲面形状に形成されているため、石英ガラスインゴットの胴部よりも直径が小さい直径の保持開口部によって、石英ガラスインゴットの保持することができる。
即ち、成形に用いられる石英ガラスインゴットの直径毎に、それに対応した、第三の支持体を用意する必要がなく、製造コストの面からも好ましい。
【0016】
また、前記石英ガラスインゴットが前記成型用受け皿の底面上に載置された際、前記石英ガラスインゴットの軸芯、及び前記第三の支持体の保持開口部の中心が同一直線上に位置することが望ましい。
このように、石英ガラスインゴットの軸芯、及び、前記第三の支持体の保持開口部の中心が一つの直線上に位置させることにより、石英ガラスインゴットの倒れ、座屈を抑制することができる。
【0017】
また、本発明にかかる加熱成型装置は、上記加熱成型冶具と、前記加熱成型冶具を収納する加熱炉と、前記加熱炉内に収納され、石英ガラスインゴットを加熱するヒータと、を少なくとも備えたことを特徴としている。
このような加熱成型装置を用いることにより、均一な石英ガラス成形体を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、設置時の石英ガラスインゴットの中心位置を確認し易く、また加熱軟化時の石英ガラスインゴットの倒れを防止できると共に、石英ガラス成形体の均一性の向上を図ることができる加熱成型冶具及び加熱成型装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る加熱成型装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明に係る加熱成型冶具の概略構成を示す断面図である。
図3図3は、図2に示した加熱成型冶具の概略構成を示す平面図である。
図4図4は、図3に示した第一の支持体を示す斜視図である。
図5図5は、第三の支持体を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図6図6は、第三の支持体の変形例を示す断面図であって、(a)は第一の変形例を示す図、(b)は第二の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる実施形態を図1乃至図5に基づいて説明する。尚、図1乃至図5は、説明のために形状を模式的に表したものであり、細部の形状、寸法等について正しく記載されていない。
【0021】
図1は、加熱成型装置1の概略構成を示す図であって、この加熱成型装置1は、加熱炉2と、加熱成型冶具3と、石英ガラスインゴットXを加熱するヒータ4と、を少なくとも備えている。
加熱炉2は、内部にヒータ4を収納しており、ヒータ4が発する熱によって石英ガラスインゴットXを加熱する。加熱成型冶具3は、後に詳述するように、石英ガラスインゴットXを加熱軟化させながら、所定形状の石英ガラス成形体を形成するための冶具である。
【0022】
前記石英ガラスインゴットXは、例えば、四塩化ケイ素等のシリカ原料を加水分解反応させて、ガラス微粒子をターゲット上に堆積させることにより製造され、図1図2に示すように、胴部X1は円柱状または角柱形状に形成され、その上端部X2は、徐々に径が増す曲面形状、または斜面形状に形成されている。また下端面X3は平坦面に形成されている。
即ち、石英ガラスインゴットXは、円柱形状または角柱形状で上端部が曲面状または斜面状の凸状形状で、下端部が水平面である。図1、2に示すように、受け皿底面P1に載置される下端面(底面)X3は、厳密に水平の面出しなされ、上端部X2は、第三の支持体3と接触して保持されるように、曲面形状を有する凸状形状を有している。
前記凸状形状とは、例えば半球状、あるいは適度な傾斜を持たせた円錐状、台形状が例示されるが、この形状についても特に制限はない。また、曲面形状以外の頂部については、平坦な面であっても良い。
尚、以下の説明では、石英ガラスインゴットXの胴部X1は円柱状に形成され、また上端部X2は、下方向に行くにしたがって徐々に径が増す曲面形状(凸形状)に形成されている場合を例にとって、説明する。
【0023】
(加熱成型冶具3の全体構成)
次に、この加熱成型装置1に収納される加熱成型冶具3の全体構成について、図2図3に基づいて説明する。尚、図2は断面図であり、図3は平面図である。
【0024】
この加熱成型冶具3は、図2に示すように、大きく分けると、成型用受け皿Pと、前記成型用受け皿Pの上縁部で載置される第一の支持体5と、第一の支持体5の上部に載置される第二の支持体6と、第二の支持体6の内部側面(内周面)の垂直方向に移動する第三の支持体7の4つで構成されている。
【0025】
この成型用受け皿Pは、石英ガラスインゴットXから所定形状の石英ガラスを成形するための型であり、この成型用受け皿Pは、底面P1及び側面P2を有し、平面視上、例えば図3に示すように矩形形状に形成されている。
【0026】
第一の支持体5は、成型用受け皿Pと第二の支持体6との間に配置され、第二の支持体6を支持するものであり、成型用受け皿Pの上縁部に載置されると共に石英ガラスインゴットXを包囲するものである。
例えば、第一の支持体5は、石英ガラスインゴットXの直径以上の間隔をもって配置された一対の第一の梁5Aと、石英ガラスインゴットXの直径以上の間隔をもって第一の梁5Aに直交して配置された一対の第二の梁5Bとを井桁状に組み上げて構成されている。
【0027】
また、第二の支持体6は、筒状に形成され、前記第一の支持体5の上部に載置されると共に、この第二の支持体6の内部には石英ガラスインゴットXが収納される。
前記第三の支持体7は、前記石英ガラスインゴットXの上端部X2を保持し、倒れ、座屈を防止するものであり、石英ガラスインゴットXの高さ寸法の減少に伴い、前記第二の支持体6の内部側面(内周面)を垂直方向、下方に移動するものである。
【0028】
以下に、各構成部材について更に説明する。
(成型用受け皿Pの構成)
成型用受け皿Pは、図2図3に示すように、受け皿底面P1と、受け皿側面P2と、受け皿上縁部P3で構成されている。この成型用受け皿Pは、成型後の石英ガラス形状を規定する型であり、受け皿底面P1と、受け皿側面P2によって型が形成される。
【0029】
具体的には、石英ガラスインゴットXを受け皿底面P1上に載置し、石英ガラスインゴットXを加熱軟化した際(拡径加工した際)、石英ガラスは受け皿底面P1と受け皿側面P2とによって成型される。
そのため、受け皿底面P1は平面に形成され、受け皿側面P2は受け皿底面P1の周縁部に略垂直に形成されている。尚、受け皿側面P2の上端面は受け皿上縁部P3であり、第一の支持体5が載置される領域である。
【0030】
また、図3において、受け皿底面P1が矩形形状の成型用受け皿Pを示したが、本発明は、特にこれに限定されるものではない。例えば、円板状の光学部材のとして用いられる石英ガラス成形体を成型するために、受け皿底面P1の形状を円形形状にしても良い。
また、成型用受け皿Pの材質は、石英ガラスと反応し難く、耐熱性がある材質であれば特に限定されるものではない。例えば、成型用受け皿Pの材質として、高純度のカーボン等の材料を好適に用いることがきる。
【0031】
(第一の支持体5の構成)
第一の支持体5は、成型用受け皿Pの上縁部P3に載置される。またこの第一の支持体5の上面には、第二の支持体6が載置される。
この第一の支持体5は、成型用受け皿Pの上縁部P3に単に載置され、成型用受け皿Pの上縁部に固定されていない。また、第一の支持体5は、第二の支持体6を載置し、第二の支持体6とは固定されてない。
更に、第一の支持体5を構成する第一の梁5Aと第二の梁5Bは、独立した別個のものとして形成され、第一の支持体5は、第一の梁5Aに第二の梁5Bを載置することによって構成される。
【0032】
具体的には、一対の第一の梁5Aは、石英ガラスインゴットXの直径以上の間隔をもって、成型用受け皿Pの上縁部P3に載置される。更に、一対の第二の梁5Bが、前記第一の梁5A上に、前記第一の梁5Aと直交する方向に、石英ガラスインゴットXの直径以上の間隔をもって、載置される。
このように、第一の梁5A上に、一対の第二の梁5Bを載置することによって、第一の支持体5が構成されるため、第一の梁の高さ寸法、第二の梁の高さ寸法を変えた梁を用意するのみで、第一の支持体5の高さ寸法を変えることができる。
言い換えれば、前記成型用受け皿Pの上縁部P3からの第二の支持体6の高さを変えることができ、高さ寸法の異なる石英ガラスインゴットに対応することができる。
【0033】
更に、更に、図3、4は、第一の梁5Aの上に第二の梁5Bを載置し、当該第二の梁5Bの上に第一の梁5Aを載置し、当該第一の梁5Aの上に第二の梁5Bを載置し、当該第二の梁5Bの上に第一の梁5Aを載置した構成を示している。
このように、前記第一の梁5Aと前記第二の梁5Bとの交互に繰り返し配置することにより、前記成型用受け皿Pの上縁部P3からの第二の支持体6の高さを、より大きく変えることができる。即ち、高さ寸法が大きく異なる石英ガラスインゴットXにも対応することができる。
【0034】
また、第一の梁5Aと第二の梁5Bは、独立別個のものとして形成されているため、一対となる第一の梁5Aの間隔および第二の梁5Bの間隔を、適宜調節することができる。
【0035】
ところで、加熱されると石英ガラスインゴットXは軟化し、自重により徐々に外方に径が拡がる。したがって、石英ガラスインゴットXの下端部の直径が最も大きくなる。
本来、第一の支持部5は石英ガラスインゴットXの下端部から離れているために、石英ガラスインゴットXの直径はあまり変化しないが、石英ガラスインゴットXとの万一の接触も避ける必要がある。
そのために、梁の間隔は下段の間隔が上段の間隔以上に大きくなるように配置されているのが好ましい。更に言えば、石英ガラスインゴットXの拡径の度合いが大きい最下部に位置する一対の第一の梁5Aの間隔が、石英ガラスインゴットXの直径の1.1倍〜1.3倍のであることが好ましい。
【0036】
このように構成することで、石英ガラスインゴットXが第一の梁5Aおよび第二の梁5Bに接触するのを抑制でき、石英ガラスインゴットXの外周面に傷を与えることもなく、また第一の支持体5からの異物の混入もし難い。
その結果、石英ガラス成形体に、石英ガラスインゴットの外周面に生じた傷が痕跡として残存することなく、また異物の混入も抑制される。
更に、第一の梁5Aおよび第二の梁5Bが井桁状に組み上げられた結果、第一の支持体5には、図1図2に示すように水平方向に開口する第一の開口部5aが形成され、また図3に示すように、垂直方向に開口する第2の開口部5bが形成される。尚、この水平方向の第一の開口部5a及び垂直方向に開口する第2の開口部5bは、一つでも良く、また複数設けられていても良い。
【0037】
この第一の支持体5が開口部5aおよび開口部5bを有することで、第一の開口部5aおよび第二開口部5bを通じて、加熱炉1内の雰囲気が流通するため、石英ガラスインゴットXに対して均一な加熱を行うことができる。
【0038】
また、第一の梁5Aと第二の梁5Bとが交互に組み上げられた、いわゆる井桁形状とされることで、加熱成型の過程を外部から目視または録画で観察できる。また第一の支持体5は、第一の梁5Aと第二の梁5Bとを組み上げた構造であるため、製造コストも安価である。
この第一の支持体5は、成型用受け皿Pの材質と同様に、例えば、高純度のカーボン等の材料を好適に用いることがきる。
【0039】
(第二の支持体の構成)
第二の支持体6は円形または多角形の筒状であり、成型用受け皿Pに載置された石英ガラスインゴットXを包囲するように形成されている。
また、第二の支持体6の内面部には、図2に示すように、第三の支持体7を保持するためのガイド溝6aが設けられている。このガイド溝6aは細長い溝からなり、第二の支持体6の内周面に垂直方向延設され、かつ周方向に3本形成されている。このガイド溝6aには、第三の支持体7の外周縁に設けられた突起7bが移動可能に挿入される。
【0040】
第二の支持体6はいわゆる筒状であれば、特にその形状に対して制限はない。また、第二の支持体2の垂直方向の長さも、製造上の制約を除き、特に限定されない。
第二の支持体6の内径は、石英ガラスインゴットXと接触しないようにするため、石英ガラスインゴットXの胴部X1の直径より大きい。好ましくは、第二の支持体6の内径は、石英ガラスインゴットXの直径の1.1倍〜1.3倍である。
また、第三の支持体6を回転させることなく水平を維持した状態にするには、ガイド溝6aの本数は少なくとも3本あればよい。このガイド溝6aの本数は特に限定されないが、摩耗や耐久性を考慮する場合は、4本もしくは5本以上とすると、より好ましい。
第二の支持体2の材質についても、第一の支持体1と同様に、例えば、高純度のカーボン等の材料を好適に用いることができる。
【0041】
(第三の支持体の構成)
第三の支持体7は、図3図5に示すように、平面視上、円形に開口した、石英ガラスインゴットXの上端部に係合する保持開口部7aを有する板状部材である。
前記保持開口部7aは、円形以外にも、一主面の中心から点対称に開口した開口部であっても良い。
【0042】
前記保持開口部7aには石英ガラスインゴットXの先端(上端部X2)が挿入され、保持開口部7aの周縁部が石英ガラスインゴットXの上端部X2の外周面と係合し、石英ガラスインゴットXが保持される。
具体的には、石英ガラスインゴットXの上端部X2は、徐々に径が増す凸形状に形成されている。そのため、図1図2に示すように、石英ガラスインゴットXの胴部X1の直径よりも小さな開口を有する保持開口部7aは、石英ガラスインゴットXの上端部X2の外周面と係合し、石英ガラスインゴットXを保持することができる。
このように、第三の支持体7の保持開口部7aは、石英ガラスインゴットXの胴部X1の直径よりも小さな開口であれば良く、成形に用いられる石英ガラスインゴットXの直径毎に、それに対応した第三の支持体7を用意する必要がなく、製造コストの面からも好ましい。
【0043】
しかも、第三の支持体7の保持開口部7aが、石英ガラスインゴットXの先端(上端部X2)を挿入することによって、保持開口部7の周縁部で石英ガラスインゴットXの上端部X2の外周面と係合するように構成されているため、保持開口部7aの中心と、石英ガラスインゴットXの軸芯とが一致しているか、容易に確認することができる。
具体的には、石英ガラスインゴットXの軸芯(中心線)の位置を外部から認識することができるため、石英ガラスインゴットXの軸芯(中心線)を目視あるいは光学測定器等で把握することができ、前記石英ガラスインゴットXの軸芯と保持開口部7aの中心とを一致させる作業を容易に行うことができる。
このように、石英ガラスインゴットXの軸芯、及び前記第三の支持体7の保持開口部7aの中心が一つの直線上(同一直線状)に位置させることにより、成形途中において、石英ガラスインゴットが倒れ、あるいは座屈を起こすのを抑制できる。
【0044】
また、第三の支持体7の外周縁には突起7bが形成されている。この突起7bは、第二の支持体6のガイド溝6aに挿入されるものである。
そして、この突起7bとガイド溝6aとによって、図2図3に示すように、第三の支持体7は、前記第二の支持体6の内部側面(内周面)に沿って水平を維持した状態で垂直方向,下方に移動可能になされる。即ち、石英ガラスインゴットXが加熱軟化するにしたがって、石英ガラスインゴットXの高さ寸法は減少し、これに伴い、第三の支持体7は、垂直方向、下方に移動する。
尚、この突起7bはガイド溝6aと対応するものであり、第三の支持体6を回転させることなく水平を維持した状態で、下方に移動させるには、突起7bの数を少なくとも、3個あればよい。突起7bの数が3個で、90度間隔で、等間隔で配置した場合には、第三の支持体6を回転する虞があるため、その場合には、等間隔で配置しないのが好ましい。また、摩耗や耐久性を考慮する場合は、4個もしくは5個以上とすると、より好ましい。
【0045】
また、前記したように、石英ガラスインゴットXを保持する第三の支持体7が、第二の支持体6内を移動する可能に構成されているため、石英ガラスインゴットXを設置した際、ガイド溝6aの範囲内で、第二の支持体6に対する第三の支持体7の位置(高さ)を変えることができる。
即ち、高さ寸法の異なる石英ガラスインゴットにも対応することができる。
【0046】
ここで、前記第三の支持体7の保持開口部7aは、図6(a)に示すように傾斜した内周面7a1を有するもの、図7(b)に示すように、湾曲した内周面7a2を有するもののいずれでも良いが、好ましくは、石英ガラスインゴットXの上端部の曲面形状(凸形状)と面接触する内周面を有していることが望ましい。
このように、第三の支持体7の保持開口部7aの内周面が、石英ガラスインゴットXの上端部の曲面形状(凸形状)と面接触する内周面である場合には、石英ガラスインゴットXの上端部を確実に保持することができる。
【0047】
このように、第三の支持体の保持開口部が平面視上円形に形成されている場合には、石英ガラスインゴットの上端部は、徐々に径が増す曲面形状に形成されているため、図1図2に示すように、石英ガラスインゴットの本体部(胴部)よりも直径が小さい直径の保持開口部によって、石英ガラスインゴットの保持することができる。
即ち、成形に用いられる石英ガラスインゴットの直径毎に、それに対応した、第三の支持体を用意する必要がなく、製造コストの面からも好ましい。
【0048】
次に、本発明にかかる加熱成型冶具、加熱成形装置の作用について説明する。
まず、石英ガラスインゴットXの中心が成型用受け皿P1の底面の中心に位置するように、石英ガラスインゴットXを成型用受け皿P1上に載置する。
続いて、成型用受け皿P1の上縁部P3に、一対の第一の梁5Aを石英ガラスインゴットXの直径以上の間隔をもって配置する。更に、第二の梁5Bを、石英ガラスインゴットXの直径以上の間隔をもって第一の梁5Aと直交して配置する。そして、石英ガラスインゴットXの高さを考慮して、第一の梁5Aと第二の梁5Bとを井桁状に組み上げ、第一の支持体を形成する。
【0049】
続いて、第二の支持体6の中心が石英ガラスインゴットXの中心と一致するように、石英ガラスインゴットXの上方から第二の支持体6を下げ、その内部に石英ガラスインゴットXを収容する。この第二の支持体6は第一の支持体5に載置される。
そして、第二の支持体6の中心と石英ガラスインゴットXの中心とが同一直線状にあるか、否か確認する。両者が同一直線状にない場合には、第二の支持体6の載置位置をずらし、第二の支持体6の中心と石英ガラスインゴットXの中心とを合わせる作業を行う。
【0050】
そして最後に、第三の支持体7の突起7bを第二の支持体6のガイド溝6aに挿入し、石英ガラスインゴットXの上端部X2を第三の支持体7の保持開口部7aに挿入する。これにより、石英ガラスインゴットXの上端部X2外周面が第三の支持体7の保持開口部7aに係合し、第三の支持体7によって、石英ガラスインゴットXの上端部X2が保持される。
このとき、保持開口部7aの中心と石英ガラスインゴットXの中心が同一直線状にあるか、否か確認する。両者が同一直線状にない場合には、第二の支持体6から第三の支持体7を取り外し、第二の支持体6の中心と石英ガラスインゴットXの中心とを合わせる作業を行う。
【0051】
石英ガラスインゴットXを加熱成形冶具に設置した後、図1に示すヒータ4により、石英ガラスインゴットXを加熱し、軟化させる。
この加熱により、石英ガラスインゴットXの下部から徐々に拡径し、石英ガラスは成形用受け皿Pに緩やかに拡がり進行する。それと共に石英ガラスインゴットの高さ寸法が減少する。
この石英ガラスインゴットの高さ寸法の減少により、前記第三の支持体7は、第二の支持体6のガイド溝6aに案内されながら、石英ガラスインゴットXを保持した状態で、かつ水平を維持した状態で垂直方向、下方に移動する。この工程中、石英ガラスインゴットXは第三の支持体7によって保持されるため、石英ガラスインゴットXが倒れ、座屈する虞は少ない。
尚、この第三の支持体7は、石英ガラスインゴットXの高さ寸法の減少と共に移動するため、第三の支持体7と石英ガラスインゴットXとの間の擦れも抑制される。
【0052】
そして、第三の支持体7が下方に移動し、第三の支持体7の突起7bが第二の支持体6のガイド溝6aの下端に位置すると、第三の支持体7の移動が阻止される。
その結果、第三の支持体7は、石英ガラスインゴットXの外周面との係合が解かれ、石英ガラスインゴットXは自立する。このとき石英ガラスインゴットXの高さ寸法は小さく、石英ガラスインゴットXが倒れ、座屈を起こす虞は少ない。
【0053】
前記石英ガラスインゴットX全体が、成形用受け皿内部に進行し収容された後、冷却することで石英ガラス成形体が製造される。
【0054】
以上説明したように、本発明にかかる加熱成型冶具、加熱成型装置にあっては、石英ガラスインゴットXの外周面と保持開口部7aが係合するため、第三の支持体7によって石英ガラスインゴットXは確実に保持され、倒れ、座屈を抑制することができる。
また、石英ガラスインゴットXの上端部X2は保持開口部7aから突出しているため、石英ガラスインゴットXの軸芯(中心線)の位置を外部から認識することができ、前記石英ガラスインゴットXの軸芯と第三の支持体7の中心とを一致させる作業を容易に行うことができる。
【0055】
更に、第三の支持体7の突起7bが第二の支持体6のガイド溝6aの下端に位置すると、第三の支持体7の移動が阻止され、石英ガラスインゴットの外周面との係合が解かれる。そのため、拡径した石英ガラスが第三の支持体7に接触することもなく、石英ガラスが第三の支持体7上を摺動することもない。
その結果、石英ガラスが前記第三の支持体7上を擦ることによって生じる傷を抑制でき、この傷が石英ガラス成形体内に取り込まれることによる、石英ガラス成形体の不均一性を抑制できる。また前記第三の支持体7から塵、欠け等の異物が混入し、石英ガラス成形体内に取り込まれることによる、石英ガラス成形体の不均一性を抑制できる。
【0056】
尚、上記実施形態では、第三の支持体として、平面視上、円形に開口した保持開口部を例にとって説明した。
しかしながら、これに限定されるものではなく、石英ガラスインゴットの上端部の形状が平面視上、矩形形状である場合には、石英ガラスインゴットの平面視上の形状に対応した矩形形状に形成されているのが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
P 成型用受け皿
P1 受け皿底面
P2 受け皿側面
P3 受け皿上縁部
1 加熱成型装置
2 加熱炉
3 加熱成型冶具
4 ヒータ
5 第一の支持体
5A 第一の梁
5B 第二の梁
5a 第一の開口部
5b 第二の開口部
6 第二の支持体
6a ガイド溝
7 第三の支持体
7a 開口部
7b 突起
X 石英ガラスインゴット
X1 胴部
X2 上端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6