特許第6906499号(P6906499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906499
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】常磁性物質及び反磁性物質用フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/032 20060101AFI20210708BHJP
   B03C 1/033 20060101ALI20210708BHJP
   B03C 1/034 20060101ALI20210708BHJP
   B03C 1/28 20060101ALI20210708BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   B03C1/032
   B03C1/033 101
   B03C1/034
   B03C1/28 105
   B03C1/00 A
   B03C1/00 C
   B03C1/00 F
【請求項の数】27
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-508150(P2018-508150)
(86)(22)【出願日】2016年9月11日
(65)【公表番号】特表2018-534121(P2018-534121A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】US2016051198
(87)【国際公開番号】WO2017053103
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2018年3月23日
(31)【優先権主張番号】14/866,936
(32)【優先日】2015年9月26日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521089465
【氏名又は名称】シン チュアン テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】リー モウ−シャン
(72)【発明者】
【氏名】リー フー−ミン
(72)【発明者】
【氏名】シェン チー−ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】リー ショウ−ミン
(72)【発明者】
【氏名】リン レイ−リュン
(72)【発明者】
【氏名】ウー チュン−リュン
(72)【発明者】
【氏名】フン ウェイ−チー
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−028718(JP,U)
【文献】 特開昭60−241914(JP,A)
【文献】 特開昭57−094317(JP,A)
【文献】 特開平04−135609(JP,A)
【文献】 特開昭63−054908(JP,A)
【文献】 実開昭58−053210(JP,U)
【文献】 特開2007−098297(JP,A)
【文献】 特開2002−153770(JP,A)
【文献】 特開2005−131535(JP,A)
【文献】 米国特許第05837144(US,A)
【文献】 特開2002−119888(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104209185(CN,A)
【文献】 米国特許第04946589(US,A)
【文献】 特開昭61−271010(JP,A)
【文献】 特開昭61−271009(JP,A)
【文献】 滝野 和彦 ほか,水処理用高勾配磁気分離機「日立マグネフィルタ」,日立評論,1979年 3月,VOL.61,No.3,P.23−28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/00−1/32
B01D 35/06
C02F 1/48
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア流体とケイ素、炭化ケイ素(SiC)、γ−アルミナ(γAl)、シリカ(SiO)、シリカ/アルミナ(SiOAl)、非磁性ブタジエン、磁性ブタジエン、酸化チタン(TiO)、セラミック、活性炭(C)、ポリエチレン、元素状硫黄、及びそれらの混合物からなる群から選択され、大きさが0.1nm〜1.0mmの範囲内にある粒子を含む反磁性物質とからなるキャリア流から、反磁性物質を除去する方法であって、
(a)(i)流入口、(ii)流出口、(iii)Ni、FeO、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択したパッキング材を含む内部領域、および(iv)前記内部領域の内に配置された磁石を備えるハウジングを含む磁気フィルタを提供するステップ、
(b)キャリア流を流入口に導き、キャリア流が内部領域のパッキング材と接触するようにするステップ、そして、
(c)前記磁石を用いて前記内部領域内に磁場を確立することにより、前記内部領域に流入する反磁性物質を十分に磁化して磁石に吸着させ、流出口から流出する、前記反磁性物質のレベルが減少した清浄化されたキャリア流を生じるステップであり、ここで、
前記反磁性物質は、前記パッキング材の不存在下では、前記磁石に吸着されず、そして、
前記反磁性物質は、磁場の下で、前記反磁性物質と前記パッキング材との協調的な相互作用によって、磁化されるステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記キャリア流は常磁性体を含み、ステップ(c)において、キャリア流からの該常磁性体は前記磁石及び前記パッキング材に吸着する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャリア流体は天然ガスであり、前記反磁性物質は、砂、炭素残留物、及び反磁性金属酸化物を含み、前記キャリア流の中の前記常磁性体は、硫化鉄及び酸化鉄を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記内部領域から前記磁場を除去した上で、前記反磁性物質を前記磁石から解放するステップ(d)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記キャリア流体は空気であり、前記反磁性物質は汚濁因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリア流体は発電所又は製鋼所からの煙道ガスを含み、前記反磁性物質は、炭素、金属酸化物及び/又は金属硫化物を含む浮遊粒子状物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記キャリア流体は自動車排気ガスを含み、前記反磁性物質は浮遊炭素粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリア流は、精製所又は化学工場における液体流を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリア流体は水であり、前記反磁性物質は汚濁因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記領域は、磁束強度が2,000〜20,000GSである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)において、磁石を用いて前記磁場を生成し、前記パッキング材は前記磁石と物理的に接触していない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記磁気フィルタが相互に離間した複数の長尺状の非磁性スリーブであって、その内部に配置した1つ又は複数の磁石を収容するようにそれぞれ構成した非磁性スリーブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記スリーブはそれぞれ外面を有し、隣接する外面間の距離は0.1cm〜5cmである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スリーブはそれぞれ重心軸を有し、複数の磁石を収容し、前記磁石はそれぞれN極、S極、及び前記重心軸に垂直な縦軸を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の磁石を、隣接する磁石の対極を並置した状態で千鳥状に配置した、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記スリーブはそれぞれ重心軸を有し、複数の磁石のアレイを収容し、前記アレイはそれぞれ2つ以上の磁石を備え、前記磁石はそれぞれN極、S極、及び重心軸に垂直な縦軸を有し、前記アレイそれぞれの中の前記磁石は同極が並置される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
キャリア流からの反磁性汚染物質を分離するための磁気フィルタであって、
(i)反磁性汚染物質を含むキャリア流が導かれる流入口、(ii)清浄化されたキャリア流体が出る流出口と(iii)該流入口と該流出口との間に内部領域とを有するハウジング、
前記内部領域内に分散させたパッキング材であって、該パッキング材は、Ni、FeO、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択した物質であり、そして、該パッキング材は、前記反磁性汚染物質と物理的に接触するように構成した、パッキング材であり、該反磁性汚染物質は、ケイ素、炭化ケイ素(SiC)、γ−アルミナ(γAl)、シリカ(SiO)、シリカ/アルミナ(SiOAl)、非磁性ブタジエン、磁性ブタジエン、酸化チタン(TiO)、セラミック、活性炭(C)、ポリエチレン、元素状硫黄、及びそれらの混合物からなる群から選択される反磁性物質を含み、該反磁性物質は、大きさが0.1nm〜1.0mmの範囲内にある粒子を含み、
及び
前記内部領域内に配置した前記パッキング材を磁化させるのに十分な磁場を生成する磁石であって、ここで、前記反磁性物質は、前記パッキング材の不存在下では、前記磁石に吸着されず、そして、前記反磁性物質は、磁場の下で、前記反磁性物質と常磁性体を含む前記パッキング材との協調的な相互作用によって、磁化された反磁性材料が磁石に引き付けられるようになる、
磁気フィルタ。
【請求項18】
前記内部領域は、磁束強度が2,000〜20,000GSである、請求項17に記載の磁気フィルタ。
【請求項19】
前記パッキング材は前記磁石と物理的に接触していない、請求項17の磁気フィルタ。
【請求項20】
相互に離間した複数の長尺状の非磁性スリーブであって、内部に配置した1つ以上の磁石を収容するように構成した非磁性スリーブを備える、請求項17の磁気フィルタ。
【請求項21】
前記スリーブはそれぞれ外面を有し、隣接するスリーブの隣接する外面間の距離は0.1cm〜5cmである、請求項20に記載の磁気フィルタ。
【請求項22】
前記スリーブはそれぞれ重心軸を有し、複数の磁石を収容し、前記磁石はそれぞれN極、S極、及び前記重心軸に垂直な縦軸を有する、請求項20に記載の磁気フィルタ。
【請求項23】
前記複数の磁石を、隣接する磁石の対極を並置した状態で千鳥状に配置した、請求項22に記載の磁気フィルタ。
【請求項24】
前記スリーブはそれぞれ重心軸を有し、複数の磁石のアレイを収容し、前記アレイはそれぞれ2つ以上の磁石を備え、前記磁石はそれぞれN極、S極、前記重心軸に垂直な縦軸を有し、前記アレイそれぞれの中の磁石の同極を並置した、請求項20に記載の磁気フィルタ。
【請求項25】
前記長尺状の非磁性スリーブそれぞれの中の1つ以上の磁石は、一端を封止した非磁性の管状の封体中に入れて、該管状の封体は前記長尺状のスリーブ内に摺動可能に収容される、請求項20に記載の磁気フィルタ。
【請求項26】
前記キャリア流は、前記内部領域内を、前記複数の長尺状の非磁性スリーブに対して平行な略軸方向に流動する、請求項20に記載の磁気フィルタ。
【請求項27】
前記キャリア流は、前記内部領域内を、前記複数の長尺状の非磁性スリーブに対して垂直な略軸方向に流動する、請求項20に記載の磁気フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体流及び液体流から常磁性物質及び/又は反磁性物質を除去するロバストな高性能磁気フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
常磁性物質は外部磁場下で磁化することができる。常磁性体の例としては、例えば、マンガン、クロム、セリウム、鉄、コバルト、カリウム、バナジウム、及びそれらの酸化物または硫化物が挙げられる。外部磁場の影響がないときには、常磁性分子中の磁気双極子はランダムな方向に向き、したがってその磁性はゼロになる。適切な外部磁場を印加すると、常磁性物質が磁化される。磁場の方向に向かって平行に配列された磁気双極子の数が磁場から離れて配列されたものよりも多くなるためである。
【0003】
従来の磁気フィルタは、永久磁気源又は電磁源により生成した外部磁場の効果で、気体流体又は液体流体から常磁性物質又は粒子を除去する。例えば、特許文献1(Yenらによる米国特許第8,506,820号明細書)、特許文献2(Linらによる米国特許第8,636,907号明細書)、特許文献3、4(いずれもYenらによる米国特許第8,900,449号明細書及び米国特許第9,080,112号明細書)に開示の磁気フィルタにより、精製所(リファイナリー)及び化学工場等において液体流体から常磁性粒子を除去することができる。プラント建設における一般的な材料である炭素鋼がプロセス流中の酸性汚染物質の存在下で腐食して第一鉄イオン(ferrous ions)を生じ、当該鉄イオンが硫黄、酸素、水と反応すると、FeS、FeO、Fe(OH)、Fe(CN)等を含む常磁性粒子が形成される。これらの常磁性汚染物質は磁石に付着する傾向がある。
【0004】
反磁性物質は、内部的に磁気を打ち消す傾向のある磁気双極子対を含有する。反磁性体の例としては、例えば、炭素(ダイアモンド)、炭素(グラファイト)、シリカ、アルミナ、ビスマス、リン、水銀、亜鉛、鉛、スズ、銅、銀、金、水、エチルアルコール等が挙げられる。外部磁場の存在下で、反磁性物質の磁気双極子は磁場と平行に又は反対方向に配列するため、磁性を発現しない。従来技術の磁気フィルタは反磁性物質を除去することができない。
【0005】
メッシュスクリーン等を用いる濾過は、気体流体又は液体流体から反磁性粒子を分離するのに標準的に用いられるが、この手法は、小粒子に対しては非効率的である。例えば、電力施設、製鋼所、自動車及びオートバイ等の移動源から射出された粒子物質PM2.5等のナノカーボン粒子を効率的に低減することはできない。同様に、精油所および化学プラントに見られる触媒微粉、鋼鉄錆、炭素残渣または重合スラリーの形態のナノ粒子を効果的に濾過することができない。様々なサイズのFeS、FeO、砂、炭素残渣等を含む固体粒子も、天然ガスプロセスに存在する。常磁性体及び反磁性体は、自然及び工業汚染物質及びコンタミナント両方の主要な構成要素である。
【0006】
気体流体及び液体流体からのすべての大きさの常磁性粒子及び反磁性粒子の両方を、又は少なくとも反磁性粒子を除去するシステムを開発することが非常に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8,506,820号明細書
【特許文献2】米国特許第8,636,907号明細書
【特許文献3】米国特許第8,900,449号明細書
【特許文献4】米国特許第9,080,112号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一般的な反磁性固体物質を誘導又は誘起常磁性体(inducing or inducement paramagnetic materials(IPM))と協調的に相互作用させることにより、外部磁場下で磁気化可能であるという実証に部分的に基づくものである。IPMは固体であり、好ましくは、外部磁場を生成する磁石と直接接触すべきでない。一方、反磁性固体物質は、好ましくは、IPMと直接接触するか、又はIPMと均一混合される。反磁性体とIPMとの固体混合物に対する、磁石バー又は電磁石等の磁気源の位置及び距離を調整及び維持して、反磁性において十分に強力な磁気を誘導することにより、反磁性固体も同様に磁場に吸着する。このようにして、固体混合物が混入又は流動化した液体流又は気体流から、反磁性物質及び常磁性物質の両方を除去することができる。すべての常磁性物質が、本発明の磁気フィルタにおける外部磁場の存在下で、反磁性固体物質において磁性を誘起できるとは限らない。よって、「誘起常磁性体」又は「IPM」とは、反磁性固体材料に十分な磁性を発現させて磁場に吸着させ、本発明の磁気フィルタで回収又は捕捉できるようにすることが可能な固体常磁性体をいう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、一態様において、本発明は、キャリア流から反磁性体を除去する方法に関し、該方法は、
(a)領域内において、分散媒及び反磁性体を含有するキャリア流を誘起常磁性体に接触させるステップ、及び
(b)前記領域内に磁場を確立することにより、反磁性物質を十分に磁化して磁石に吸着させ、反磁性体のレベルを減少させた清浄化した分散媒を生じるステップを含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、反磁性汚染物質をキャリア流から分離する磁気フィルタに関し、該磁気フィルタは、
(i)流入口と、(ii)流出口と、及び該流入口と該流出口との間に(iii)内部領域とを有するハウジング、
内部領域内に分散させた誘起常磁性体(IPM)であって、該誘起常磁性パッキング材は、反磁性汚染物質と物理的に接触するように構成した、誘起常磁性体、及び
内部領域内に配置した磁石であって、IPMを磁化するのに十分な磁場を生成する磁石、を備える。
【0011】
磁気フィルタは、IPM及び非磁性仕切りによりIPMから遮蔽された磁石の存在下で作成された生成されたロバストな分離ゾーンとして機能する。好ましくは、長尺状の磁石アセンブリを用いて分離ゾーンに均一磁場を生成する。長尺状の磁石アセンブリは、フィルタ内の流体流に対して平行又はトラバースに配置することができる。磁石間のボイド容量又は空間内のIPMにより表面積が大きくなり、当該表面積上に流体流中の反磁性体及び常磁性体を接触させ吸着させることができる。以下に記載する本発明では、永久磁石を用いて磁場を確立するが、電磁石を用いることができることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1A及び図1Bは、それぞれ、磁気フィルタの実施形態の横断立面図及び上面図であり、磁気フィルタは、誘起常磁性パッキング、及び着脱可能な垂直配向の永久磁石バーアセンブリを有する。ここで、図1Bには、カバープレートを外した磁気フィルタを示し、限られた数のスリーブホルダ及びパッキング材を例示する。図1Cは、永久磁石バーアセンブリの断面図である。図1Dは、別の永久磁石バーアセンブリの断面図である。図1Eは永久磁石バーアセンブリの断面図である。
図2図2A及び図2Bは、それぞれ、磁気フィルタの立面図及び側断面図であり、磁気フィルタは、誘起常磁性パッキング、及び着脱可能な水平配向の永久磁石バーアセンブリを有する。ここで、図2Bには、限られた数のスリーブホルダ及びパッキング材を例示する。図2Cは、永久磁石バーアセンブリの断面図である。
図3図3A及び図3Bは、永久磁石バーアセンブリにおける磁極位置の写真画像である。
図4図4A及び図4Bは、永久磁石バーアセンブリに付随するスリーブの外面に吸着した常磁性粉体の写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、吸気管6及び出口管10を有するハウジング4を備える垂直フィルタ2の概略構成を示す。吸気管6は制御弁8を介して汚染プロセス流に連結可能であり、処理済のプロセス流は制御弁12を介して出口管10から放出される。ハウジング4は、内部領域14を画定する。ハウジング4の底部に溶接されたドレン管49を通る流れは制御弁48により調節するが、制御弁4は、濾過プロセス中は通常閉じており、清浄作業中は開放してハウジング4からのフラッシュ流体を排出する。ドレン管49における開口の大きさは、濾過プロセス中に蓄積する大粒子に対応(accommodate)するのに十分なものとする。
【0014】
カバープレート20は、ハウジング4における上部開口に沿った外周に溶接した環状フランジ24にボルト22で固定される。カバープレート20と環状フランジ24との間には、ポリマーガスケット又は他の好適な封止手段を挿入して、動作サイクル中に密封状態を確実に維持してもよい。上部支持プレート26を外周部に沿ったワイヤーケージ28の上縁部にボルト30で固定することにより、浄化サイクル(clean-up cycle)中にコアアセンブリ全体をフィルタハウジング4から取り出しやすくなる。上部支持プレート26及びワイヤーケージ28の上縁部は、いずれも、フィルタハウジング4に永久接続した支持リング42上に載置する。コアアセンブリの重みにより、上部支持プレート26及びワイヤーケージ28の上縁部が支持リング42に強く押し付けられて、各ホルダスリーブ32の開放端、ひいては磁石バーアセンブリ34が、濾過プロセス中にプロセス流と接触するのを防ぐ。
【0015】
コアアセンブリは、垂直配向した着脱可能な永久磁石バーアセンブリ34を複数備え、永久磁石バーアセンブリ34は、それぞれ、長尺状の反磁性スリーブホルダ32に嵌入され、また、プロセス流中の固体反磁性物質に対する磁気誘導媒体として、各スリーブホルダ32間の空間を充填するIPMパッキング素子又は物質36を備える。IPMパッキング36のホルダとしてのワイヤーケージ28は、好ましくは、ステンレススチール等の反磁性物質の粗ワイヤで作成し、メッシュサイズはIPMパッキング物質36の大きさよりもわずかに小さくして、IPMパッキング物質36がプロセス流中へ流出するのを防ぐ。
【0016】
IPMパッキング素子36は、最大のものを最上部に、最小のものを最底部に配した積層配置とすることが好ましい。パッキングをこのように勾配マトリックス構造としたことにより、有意な圧力低下及びスループットの減少を引き起こすことなく、大きさの異なる反磁性物質及び常磁性物質を磁気フィルタにより捕捉することが可能になる。
【0017】
IPMは、正の質量磁化率が高い材料で形成することが好ましい。好適なIPMとしては、例えば、Ce、CeO、CsO、Co、CoO、Ni、CuO、NiO、NiS、Fe、FeO、Fe、FeS、Mn、Ni/γAl、Cr、Dy、Gd、Ti、V、V、Pd、Pt、Rh、Rh、KO、及びそれらの混合物が挙げられ、Co、CoO、Ni、Fe、FeO、Fe2O3、FeS、Ni/γAl、Cr、Dy、及びGdが特に好ましい。IPMパッキング要素の好ましい構成としては、限定はしないが、例えば、リング、サドル、チップ、及びワイヤ、構造パッキング等の従来のランダムパッキング、及び固定床反応器において用いるガード床材料等のミクロ細孔触媒支持体等が挙げられる。
【0018】
隣接する垂直配向磁石バーアセンブリ34間の距離を十分近く保ち、フィルタに充填したIPM物質により十分な磁気を誘導して、プロセス流からの反磁性物質を吸着できるようにすることが不可欠である。その距離は、隣接するスリーブホルダ32の外面から測ったとき、0.1cm〜5cmとすべきであり、好ましくは0.1cm〜2cmである。磁気フィルタ2中の内部領域14内の磁束強度は、2000GS〜20,000GSとすべきであり、好ましくは2,000GS〜10,000GSであり、もっとも好ましくは、6,000GS〜10,000GSである。
【0019】
各スリーブホルダ32は、磁場に対する透過性が非常に高く、封止底部及び開放上部を有する。上部支持プレート26において、開放上部の外周を嵌入孔に溶接することが好ましい。これにより、各ホルダスリーブ32の開放端及び付随する磁石バーアセンブリ34が、濾過中にプロセス流と接触することを防ぐ。上部支持プレート26は、複数の永久磁石バーアセンブリ34とそれらに付随するホルダスリーブ32、IPMパッキング物質36、及びワイヤーケージ28の重量を支える。
【0020】
図1Bは、上部支持プレート26を、スリーブホルダ32用の嵌入孔及び各スリーブホルダ32間の空間に充填したIPMパッキング物質36とともに示す上面図である。スリーブホルダ32のうちの1つには、磁石ブロック40を封入した筐体38を有する永久磁石バーアセンブリが挿入されている。筐体38は磁場に対して透過性である。
【0021】
図1Cに、長尺状の筐体38を備える永久磁石バーアセンブリ34の鉛直断面図を示す。長尺状の筐体38は、好ましくは、ステンレス鋼等の反磁性金属からなり、封入した磁気ブロック40を1つ以上収容するチャンバを画定する。各磁石バーアセンブリ34は、それぞれ、スリーブホルダ32から引き抜くためのプルリング44を有する。複数の短磁石ブロック又はシリンダ40は、相互に積み重ねて、1つの磁石ブロックの2つの極を、それぞれ、隣接する磁石ブロックの対極に並置して配置する。このような千鳥状の配置とすることで、各長尺状の磁石ブロック40の軸線は、アセンブリ34の長さに沿った重心軸に対して垂直になる。
【0022】
図1Dに示す永久磁石バーアセンブリ110では、同一の第1の方向に向く同極を有する2つの隣接するブロック102、104の対で構成した磁石ブロック単位又は配列を、第1の方向とは反対の第2の方向に向く同極を有するブロック106、108からなる別の磁石ブロック単位上に積み重ねている。永久磁石バーアセンブリアセンブリ110は、このような対向極構成を有して連続するブロック単位を有する。明らかなように、各磁石ブロック単位は、それぞれ、磁石ブロック又はシリンダを2つ以上有する。
【0023】
使用の際は、永久磁石バーアセンブリ34又は110は、それぞれ、スリーブホルダ32内に担持される。スリーブホルダ内に入れた永久磁石の磁束密度をテスラメーターにより測定したところ、304SSLスリーブの有無にかかわらず、実質的に同じであったことが観察されている。すなわち、反磁性障壁(スリーブホルダ)が存在しても、磁束密度の大幅な減衰につながることはなかった。対照的に、図1Eに示すように縦一列に配置した複数の磁石単位からなる複数の磁石ブロックからなる永久磁石バーアセンブリでは、304SSLスリーブを用いたときに磁束密度が大幅に減少した。
【0024】
図1Eに示すような磁石バーアセンブリでは、反磁性粒子及び常磁性粒子が表面全体に吸着せず、むしろ、そのような粒子が外面周囲において帯状になることも観察されている。磁石バーアセンブリにおける磁石ブロックの配置を明らかにするため、図1C及び1Eに示す両磁石バーアセンブリの前方に磁気ビューアカード(Magnetic Viewer Cards)を設置した。磁気ビューアカードは、液状の磁性粉を含有する可撓性フィルムである。図3A及び3Bに、各磁石の磁場による極誘導により作成された画像を示す。当該カードを介して可視化された各アセンブリにおける磁極の画像において、明るい領域はN極とS極が合流する合流点を表し、各位置を定量的に測定する。
【0025】
図1Cに示す好ましい磁石バーアセンブリの性能を、図1Eの磁石バーアセンブリの性能と比較するため、同質量のFe粉末を別紙片(5.5cm×10cm)上に載置した。実質的に全ての粉末が吸着して持ち上げられるまで、各アセンブリを、それに付随するスリーブとともに、粉末上で0.5cm〜1cmの距離をおいて非接触にゆっくりと回転させた。図4Aに示すように、好ましい磁石バーアセンブリ(図1C及び図3A)では、スリーブ表面の略全体が酸化鉄粉により覆われた。対照的に、図4Bに示すように、図1E及び図3Bの磁石バーアセンブリにおいては、スリーブ表面で同極が合流する限られた領域上にしか鉄粉を吸着させることができなかった。明らかなように、各磁石バーの縦軸が磁石バーアセンブリの重心軸又は長さに対して垂直な好ましい磁石バーアセンブリの方が、吸着有効領域が大きい。
【0026】
図1Aに示すように、ライン6を通ってフィルタハウジング4に流入するプロセス流は、最初にワイヤーケージ28を通過し、永久磁石バーアセンブリ34により生成された好適な磁場の影響下でIPMパッキング物質に接触する。プロセス流6中の固体常磁性粒子は、スリーブホルダ32及びIPMパッキング物質36に吸着されることになる。プロセス流6中の反磁性固体であって、IPMパッキング物質36に磁性を誘起されたものもスリーブホルダ32及びIPMパッキング物質36に吸着される。処理済みのプロセス流は、ワイヤーケージ28を通過し、制御弁12及びライン10を経由してフィルタハウジング4から出る。
【0027】
浄化サイクルにおいて、制御弁8及び12を順番に閉じる。カバープレート20を開けて、永久磁石バーアセンブリ34、スリーブホルダ32の付いた上部支持プレート26、IPMパッキング物質32を含有するワイヤーケージ28、を含むコアアセンブリ全体をフィルタハウジング4から引き抜く。その後、永久磁石バーアセンブリ34をスリーブホルダ32から引き抜いて、内部14から磁場を除去することにより、吸着した常磁性物質及び反磁性物質の固体をスリーブホルダ32の外面及びIPMパッキングの表面から解放する。コアアセンブリを水又は他の好適な流体で洗浄した後、磁石バーアセンブリ34をスリーブホルダ32内に再度挿入する。そして、洗浄したコアアセンブリをフィルタハウジング4内に戻し、上部開口を閉じてカバープレート20及び嵌挿したガスケットで封止する。動作サイクルを開始する前に、制御弁46及び48を開放して、水、ライン47からのプロセス流又は空気等の高圧流体を一時的に導入し、フィルタハウジング4内の残留固体を洗い流し、洗い流した固体を制御弁48及びドレン管路49経由で除去する。最後に、制御弁46及び48を閉じて、制御弁8及び12を開放して動作サイクルを再開する。
【0028】
図2Aに、水平フィルタ50を示す。水平フィルタ50は、制御弁56を介して汚染プロセス流に連結可能な吸込管54、制御弁60を介して処理済みプロセス流を放出する引出し管58を有するハウジング52を備える。ハウジング52は、内部領域62を画定する。ハウジング52の底部に溶接したドレン管64内の流れを制御弁66で調節する。制御弁66は、濾過動作中は通常閉じているが、浄化サイクル中は開放してフラッシュ流体をハウジング52から放出する。
【0029】
左カバープレート68は、ハウジング52の左側開口に沿った外周に溶接した環状フランジ72にボルト70で固定する。一方、右カバープレート74は、ハウジング52の右側開口に沿った外周に溶接した環状フランジ78にボルト76で固定する。カバープレートとフランジとの間にポリマーガスケットを挿入してもよい。
【0030】
フィルタセンブリは、フィルタハウジング52から取り外し可能な複数の水平な永久磁石バーアセンブリ80を備える。各バーアセンブリ80を、ステンレス鋼304SSL等の反磁性金属で構成した長尺状の反磁性スリーブホルダ82内に嵌入する。各スリーブホルダ82は、それぞれ、一端を封止し、開放端をカバープレート68における嵌入孔に溶接して、当該カバープレート68とともに一体型ユニットを構成することが好ましい。スリーブホルダ82及び磁石バーアセンブリ80の位置を固定し、それらの重量を支えるため、各スリーブホルダは仕切りプレート88の孔に嵌入する。ここで、仕切りプレート88は、ハウジング52に溶接されており、フィルタ内部を2等分したチャンバとしている。プロセス流中の固体反磁性物質に磁性を誘起するため、フィルタ開口の両側から各スリーブホルダ82間の空間に挿入したIPMパッキング物質92をワイヤーケージ90に充填する。好ましくは、IPMパッキング物質92のホルダとしてのワイヤーケージ90は、反磁性物質の粗ワイヤで作成し、メッシュサイズをIPMパッキング物質92の大きさよりもわずかに小さくして、IPMパッキング物質92がプロセス流中へ流出するのを防ぐ。
【0031】
好ましいIPMパッキング物質及び構成は、図1Aに示す垂直配向磁気フィルタ2において使用したものと同様である。水平配向磁石バーアセンブリ80を保持する、隣接するスリーブ82の外面間の間隔は、0.1cm〜5cmとすべきであり、好ましくは、0.1cm〜2cmである。フィルタ内の磁束強度は、2,000GS〜20,000GSとすべきであり、好ましくは2,000GS〜10,000GSであり、より好ましくは6,000GS〜10,000GSである。
【0032】
図2B及び図2Cに示すように、各永久磁石バーアセンブリ80の筐体100は、ステンレス鋼304SSL等の反磁性金属であり、磁気ブロックを1つ以上収容するチャンバを画定して、永久磁石バーアセンブリ80を構成する。各永久磁石バーアセンブリ80は、その上部に、浄化サイクル中にスリーブホルダ82から引き抜くためのプルリング96を有する。複数の短磁石ブロック94は、相互に積み重ねて、1つの磁石ブロックの2つの極が、それぞれ、隣接する磁石ブロックの対極に並置されるように配置する。
【0033】
図2Bに、スリーブホルダ82用の嵌入孔及びスリーブホルダ間の空間に充填したIPMパッキング物質の側断面図を示す。
【0034】
磁気フィルタ50の構成により、ライン54を経由してフィルタハウジング52に流入するプロセス流を、左チャンバにおいて下方に向けて流して、仕切りプレート88とフィルタハウジング52との間の下方開口に向かわせる。そして、プロセス流は、右チャンバにおいて上方に向かって流れ、出口へと向かい、処理済みプロセス流は、制御弁60及びライン58を通ってフィルタハウジング52を出る。フィルタの両チャンバにおいて、プロセス流は各スリーブホルダ82の外面、及び永久磁石バーアセンブリ80により生成された強磁場の影響下でIPMパッキング物質92に接触するワイヤーケージ90を通って移動する。プロセス流54中の固体常磁性物質は、スリーブホルダ82の外面及びIPMパッキング物質92の表面に吸着することになる。プロセス流54中の反磁性固体はIPMパッキング物質により磁性が誘起され、スリーブホルダ82の外面及びIPMパッキング物質92の表面に吸着することになる。
【0035】
浄化サイクルにおいて、永久磁石バーアセンブリ80をスリーブホルダ82から引き抜いてフィルタから引き抜き、フィルタの内部空間62からの磁場を除去し、吸着した常磁性物質及び反磁性物質の各固体をスリーブホルダ82の外面及びIPMパッキング92の表面から解放する。制御弁56及び60を閉じた後、制御弁66及び120を開放して、水、プロセス流、又は空気等の高圧流体をライン122経由で導入し、解放された固体を制御弁66及びドレン管路64経由で洗い流す。動作サイクルを再開するには、磁石バーアセンブリ80をスリーブホルダ82内に戻し、制御弁66及び120を閉じ、制御弁60及び56を順に開放する。
【0036】
本発明の磁気フィルタは、空中の汚染物質、特に、粒子状物質であるPM2.5等、大きさが0.1nm〜1.0mmの粒子を除去する低減プログラムに特に好適である。反磁性粒子及び常磁性粒子の両方を流から除去することが可能である。例えば、クリーンルーム操作又は航空機に設置して再循環空気を清浄し、発電所又は製鋼所に設置して煙道ガスを清浄し、又は、自動車等の移動発生源に設置して大気汚染を減少することができる。また、プロセス流中の粒子が蓄積して装置を損傷することがある連続運転において磁気フィルタを使用することにより、精製装置、化学工場、その他の施設における液体流中の反磁性粒子を除去することもできる。例えば、本発明の磁気フィルタを用いて、触媒層から自由に流動するか又は分離する無機触媒を流から効果的に除去することができる。さらに、本フィルタを超純水製造工場に設置して、超微細反磁性粒子及び常磁性粒子を製品流から除去することができる。同様に、フィルタを天然ガス処理工場の上流に配置して、砂、残留炭素、及び反磁性金属酸化物等の超微細反磁性粒子を製品流から除去することができ、また、ガス田にて硫化鉄、酸化鉄等の超微細常磁性粒子を天然ガス流から除去して、工場設備を保護し、プラント効率を向上することができる。
【実施例】
【0037】
以下の各実施例を用いて本発明の種々の態様及び実施形態についてさらに説明するが、本発明の範囲を限定するものと解すべきではない。永久磁石により生成された外部磁場の影響下における常磁性物質と反磁性物質との間の相互作用を説明するため、様々な実験用に常磁性粉体及び反磁性粉体を選択した。物質は、その質量磁化率(MS)に基づいて常磁性と反磁性とに分類した。
【0038】
質量磁化率とは、1グラム当たりの物質の磁化率であり、磁化率とは、単位印加磁場あたりの材料の磁化である。それは、印加された磁場に対する物質の磁気応答を記述する。すべての物質は、質量磁化率(MS)値によって特徴づけられる。常磁性物質は、より高い正のMS値を有するが、反磁性物質は、より低い負のMS値を有する。表1に選択した物質のMS値を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例1)
磁場中で高いMS値を有する選択した固体物質が発現する磁性の程度及び強度を測定した。磁気強度6,000GSの永久磁石バーアセンブリを用いた。固体粉末として、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO及びFe)、硫酸鉄(FeSO)、塩化鉄(FeCl)、γ−アルミナ触媒上に担持されたニッケル(Ni/γAl)、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化ガドリニウム(Gd)、及び酸化クロム(Cr)を選択した。
【0041】
各試験について、約0.5グラムの粉末を精密天秤(10−4グラムまで)で量り、(精密計量した)ガラス容器の中に入れた。次いで、永久磁石バーアセンブリを粉末の近傍に配置した。粉末が吸着した後、磁石バーを取り出して、もし残留粉末があれば容器とあわせて重量を量った。磁石バーに吸着した粉末の重量パーセント(%)を計算した。
【0042】
表2におけるデータに示すように、MS値が約600〜700×10−6c.g.s.単位の金属及びその酸化物は、NiO(吸着なし)及びCr(82%のみ)を除いて、永久磁石バーアセンブリに容易に吸着した。所期したように、磁化率が非常に高いDy及びGdは完全に吸着した。しかしながら、驚くべきことに、非常に高いMS値(+10,000×10−6超)を有していても、硫酸鉄(FeSO)及び塩化鉄(FeCl)は全く磁化を発現せず、MBに吸着しなかった。この実験は、質量磁化率が好適な誘起常磁性体を選択する際の基準(ガイドライン)となるにすぎないことを示唆している。金属又は酸化金属は、好適な誘起常磁性物質の候補となりうるが、FeSO又はFeCl等の金属塩は、MS値が高いにもかかわらず、考慮の対象から除外される。
【0043】
【表2】
【0044】
(実施例2)
本実験により、反磁性物質は、それ自体では、磁石バーに吸着しないことを確認した。試験対象の反磁性物資は、ケイ素、炭化ケイ素(SiC)、γ−アルミナ(γAl)、非磁性ブタジエン、酸化チタン(TiO)、セラミック、活性炭、ポリエチレン、及び元素状硫黄であった。磁性ブタジエンについても試験した。磁気強度6,000GSの永久磁石バーアセンブリを粉末サンプルの隣に配置した。(常磁性物質を含有する)磁性ブタジエンを除き、いずれの粉末も磁石バー上に吸着しなかった。磁場の存在は、反磁性体において磁気を誘起しなかった。
【0045】
(実施例3)
永久磁石バーアセンブリに常磁性物質を塗布するだけでは、当該アセンブリに反磁性体は吸着しない。本実施例においては、酸化鉄(FeO)粉末でコーティングした永久磁石バーアセンブリを、Si、SiC、SiO、Al、非磁性ブタジエン、磁性ブタジエン、TiO、セラミック、活性炭、及びポリエチレンを含んだ種々の反磁性粉体のそれぞれに配置した。常磁性物質を含有した磁性ブタジエンを除き、いずれの反磁性粉体も永久磁石バーアセンブリに吸着しなかった。
【0046】
(実施例4)
反磁性物質を好適なIPM物質と混合する際、常磁性物質は磁気誘起剤として作用する。混合物中の反磁性物質は、永久磁石バー又は電磁により生成された磁場に当該混合物を曝すると、磁性を発現する。混合物中の常磁性物質及び反磁性物質はいずれも磁石に吸着する。
【0047】
実験は、周囲条件にて空気(気相)中で行った。各試験について、約1.0グラムの反磁性粉体及び0.1グラムの常磁性粉体を精密天秤(10−4グラムまで)で量り、精密計量したガラス容器の中に当該混合物を入れた。磁気強度6,000GSの永久磁石バーアセンブリを混合物に隣接配置して、容器から粉末を吸着させた。磁石を取り出し、残留混合粉末の入った容器の重さを量った。磁石に吸着した混合粉末を重量%として、表3及び表4にデータの概要を示す。
【0048】
【表3】
【0049】
表3に示すように、Ni/γAlを誘起剤として用いた場合、γAl、SiC、残渣油流動接触分解(resid fluid cracking catalyst)(RFCC−Al/SiO:70/30)、元素状硫黄(S)、及び活性炭に対して、磁石バーは軽度の吸着力しか示さなかったが、ケイ素については著しく高い吸着力を呈した。
【0050】
【表4】
【0051】
表4に示すように、磁石バーに吸着した常磁性物質と反磁性物質の混合物の割合が非常に高いため、FeOはNi/γAlよりも優れた誘起剤である。
【0052】
(実施例5)
本実験は、鉄粉の代わりに、細い炭素鋼線(CSW)状のIPMを用いた以外は、実施例4のものと同様である。表5に示すように、元素状硫黄の場合を除いて、反磁性物質の70%〜100%近くが磁石に吸着した。
【0053】
【表5】
【0054】
(実施例6)
周囲条件で液相試験を行った。すなわち、各試験について、精密計量容器中で約50グラムの水を1.0グラムの反磁性粉体と混合した。その後、混合物に常磁性粉体を添加した。磁力6,000GSの永久磁石バーアセンブリを液体混合物中に挿入し、懸濁固体粉末を磁石に吸着させた。磁石を取り出し、固体粉末を掻き落としてきれいにした磁石を溶媒中に再度挿入しさらに粉末を吸着させた。磁石を再度取り出した後、残留粉末を含有する溶媒の入った容器の重量を量った。磁石に吸着した混合粉末の重量百分率(%)を計算した。
【0055】
表6に、水を溶媒として用い、RFCC粉末(equilibrium resid fluid cracking catalyst(SiO/Al:7/3))を反磁性体(DM)として用い、またFeをIPMとして用いて行った試験の結果を示す。それぞれの場合において、約0.1グラム、0.3グラム、0.5グラム、及び0.7グラムのFeを添加し、その結果から、添加したFeの量及び(磁気強度に関連した)磁石の位置に応じて、混合粉末の60%〜100%近くが磁石に吸着したことがわかった。吸着した粉末の量は、混合物に添加したFeの量に比例した。
【0056】
【表6】
【0057】
(実施例7)
本実験は、溶媒をディーゼル油とした以外は、実施例と同様であった。図7に示す結果から、混合固体粉末の約39%〜92%が磁石に吸着し、ディーゼル油中で磁石に吸着した粉末の量は、1つの例外を除き、混合物に添加したFeの量に比例していたことがわかる。
【0058】
【表7】
【0059】
(実施例8)
この実験から、上記の各実施例において用いた永久磁石の磁気強度が、磁石から離れるにつれて6000GSから指数関数的に(10の指数で)減衰したことがわかる。永久磁石の磁場強度を0cm〜5.00cmまでの距離の増分で測定した。表8に示す結果は、その磁気強度の実質的な減衰を示している。電磁バーも同様の減衰を示すことになることが予想される。本発明によれば、磁石により生成された磁場強度は、反磁性物質と誘起常磁性物質の相互作用により常磁性物質を誘導して反磁性物質を磁化するのに十分なものでなければならない。磁気強度が劇的に距離減衰するとすれば、先に述べたように、スリーブホルダ間の距離を比較的小さな間隔にする必要がある。
【0060】
【表8】
【0061】
(実施例9)
本発明によれば、反磁性体を除去する効率的な磁気フィルタとして機能するため、磁石を使用しなければならないが、この磁石は永久磁石又は電磁石とすればよく、この磁石により、十分な磁場を生成して、反磁性体に必要な磁性を付与又は誘起して磁場に吸着させることができる。
反磁性体に誘起される磁性の強度は、磁場に吸着させるのに十分なものでなければならない。磁場強度の重要性を実証するため、2,000GS及び6,000GS永久磁石バーを、実施例6における試験と同様の試験、すなわち、室温で水溶液中のRFCC粉末を磁石により除去する試験において比較した。
【0062】
図9に示す結果から、2,000GSの磁石では、約40%の混合粉末しか吸着されなかったことがわかる。溶液中に存在する常磁性粉体の量は吸着のレベルに影響しなかった。対照的に、6,000GSの磁石では、90%及び92%の混合粉末が、それぞれ、0.1、0.3のPM/DM比で除去された。したがって、磁気強度の高い磁石を使用して、常磁性物質により誘導された磁気を介して反磁性物質を吸着することが好ましい。溶液中に存在する反磁性物質の量による影響は、吸着される反磁性体に対する重要性が比較的低い。
【0063】
【表9】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B