【文献】
A novel fully integrated molecular diagnostics platform with broad sample prep capabilities,The Second Annual Sample Prep and Target Enrichment in Molecular Diagnostics conference [online],2013年,[2020年6月30日検索],URL,https://media.biocartis.com/biocartis/documents/Biocartis_Poster_Sample_Prep_2013_Claes_et_al.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブと異なる標識がされている少なくとも第2の分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブが使用され、前記第2の分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブが第1の標的ホモポリマーヌクレオチド反復配列と異なる第2の標的ホモポリマーヌクレオチド反復配列にハイブリダイズ可能な配列を含み、及び
第2の標的ホモポリマーヌクレオチド反復配列にハイブリダイズ可能な配列が野生型ホモポリマー反復配列と比較される変異配列と同一又は相補的な配列を含み、前記変異配列が前記第2の標的ホモポリマー反復配列中の少なくとも1つのホモヌクレオチドの欠失を含む、請求項1に記載の方法。
少なくとも1つのシグナル生成標識オリゴヌクレオチドプローブが前記ポリメラーゼの3'―5'エキソヌクレアーゼ活性から前記プローブを保護する構造的特徴又は修飾を含み、前記構造的特徴又は修飾が、
− プローブの3'末端の逆位dT;
− プローブの3'末端の最後の3つのヌクレオチドのいずれかの前に位置する少なくとも1つのホスホロチオエート結合、
から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
少なくとも1つの融解曲線から標的ホモポリマー反復配列中に存在するヌクレオチドの数を推測することが前記融解曲線の一次導関数の少なくとも一つのピークの位置又は相対位置を評価することによって自動化を含む態様で行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
がんと診断された患者又はがんに罹患していると予期される患者から得られた試料に使用されることを含む、マイクロサテライト不安定性(MSI)の検出のための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法及び/又は請求項9又は10に記載のキットの使用。
【背景技術】
【0002】
DNAミスマッチ修復(MMR)はゲノム中への塩基の欠陥のある挿入又は欠損("indels")を認識及び修復するための多因子からなる進化的に保存されたシステムである。上記文脈において、不完全なMMRはゲノム不安定性に関連し、がんの進行とも結び付けられるという証拠がある。
【0003】
実際、MMR欠損は、白血病、卵巣がん、膵臓がん、又は胃がんを含むいくつかのがん種で記載されており、すべての子宮内膜(EM)腫瘍又は結腸直腸(CRC)腫瘍の2〜5%を占めるリンチ(Lynch)がん感受性症候群の原因であることが確立されている(Jiricny, 2006:非特許文献1)。 重要なことに、MMR欠損腫瘍は標準的ながん治療後と異なる予後および治療結果を示す(Ng and Schrag, 2010:非特許文献2)。例えば、CRC患者由来のMMR欠損腫瘍はCRC患者にとって第一に選択される5-フルオロウラシルに基づく化学療法に反応しないと思われる(Fischer et al., 2007:非特許文献3)。また、MMR欠損腫瘍はEM患者のがん治療にしばしば用いられるシスプラチン(cisplatin)やカルボプラチン(carboplatin)に耐性である傾向もある(Hewish et al., 2010:非特許文献4)。そして、これらの腫瘍は比較的早く標的治療に耐性を獲得することも観察されており、これは増大した変異性のためである可能性があり、他の抗がん防御に潜在的に影響を及ぼす可能性のある二次的変異の獲得も容易である可能性がある。
【0004】
MMR欠損はがん治療に対する患者の反応に影響を与えることが示された事実により、その効果的な検出は潜在的に患者の効果的な対応及び生存に重大な影響を与える可能性がある。MMR経路に影響を及ぼす突然変異の複雑さのために、臨床診療では、例えば、MLH1、MSH2、MSH6、又はPMS2のようなMMR遺伝子における選択された突然変異の詳細なスクリーニングを行うというよりはむしろ、DNA複製のエラーである直接的結果をスクリーニングすることによりMMR欠損を試験することがより一般的である(Peltomaki, 1997:非特許文献5)。これらのDNA複製におけるエラーは、マイクロサテライト不安定性又はMSIと呼ばれる現象、マイクロサテライトと呼ばれる短い縦列反復配列の長さのバリエーションの変化に最もよく現れる。
【0005】
マイクロサテライトは、1〜5ヌクレオチドの隣接する(すなわち、縦列で反復した)DNAモチーフが典型的には5~50回反復した領域である。これらは、哺乳動物ゲノム全体に広く分布しており、非コード部分に最も頻繁に位置している。この理由のために、多くのマイクロサテライトは生物学的にサイレントであり、世代にわたって無害な突然変異を蓄積することができ、DNAフィンガープリンティング又は他の識別目的に使用することができる。しかしながら、単一の個体の組織(その周囲の組織ではない)における複数のマイクロサテライトにおける1つ又は複数のマイクロサテライト反復単位のクローン欠損(欠失)または獲得(挿入)は、不完全な複製の特徴であり、MMRの障害及びがんを発症する傾向を強く示唆する(Pinol et al., 2005:非特許文献6)。
【0006】
現在、MSI解析の標準は、長さが25及び26ヌクレオチドの2つの単量体又はホモポリマー(BAT25、BAT26)、並びに3つのジヌクレオチド(D2S123、D5S346、D17S250)を含む、少なくとも5つのマイクロサテライトマーカーの長さに対するがん患者のDNAのPCRベースの試験に関する(Boland et al, 1998:非特許文献7)。これらの5つのMSIマーカーのパネルは、メリーランド州ベセスダの国立がん研究所リサーチワークショップによって最初に提案されたものであり、現在はベセスダ(Bethesda)パネルとして広く知られている。ベセスダ(Bethesda)パネルで試験したサンプルは、マーカーの30%以上(5マーカーパネル中の少なくとも2つ)が不安定であると試験された場合、高頻度MSI又は「MSI-H」表現型を有すると認定される。5つのマーカーのうち1つ(又は腫瘍マーカーの<30%)がMSI陽性と評価された場合、サンプルは低頻度MSI又は「MSI-L」と認定される。そして、マーカーに変化がないと判明した場合、サンプルは安定MSIまたは「MSS」とみなされる(Boland et al, 1998:非特許文献7)。
【0007】
現在のMSI検査基準であるにもかかわらず、ベセスダ(Bethesda)パネルは、特に最初に開発された結腸直腸がん以外のがんについては感度が低い傾向がある(Boland et al, 1998:非特許文献7)。したがって、例えば、Murphy et al, 2006(非特許文献8)、Garcia-Alfonso 2012(非特許文献9)、及びWO2013153130(特許文献1)に記載されているものを含めて代替マーカーが広く試験されている。
【0008】
現在知られているアプローチのもう一つの欠点は、それらの複雑な関係(complication)のレベル、標準的な研究室のサーマルサイクラーを超える特殊化された機器の必要性、及び自動化のためのそれらの限られた実現可能性である。現在あるMSI用検出技術は次の原理のうちの1つを適用する:(i)ベセスダ(Bethesda)パネルマーカーの検出のための蛍光標識されたプライマーの使用、それに続くキャピラリー電気泳動;(ii)dsDNAインターカレーティング色素を用いた5 つのベセスダ(Bethesda)パネルマーカーの高分解能融解曲線解析;(iii)異なる長さの対立遺伝子の質量分析検出;及び(iv)大きなDNA領域(例えば、エクソーム(exome))の次世代配列決定、それに続く突然変異数のカウント。
【0009】
例えば、(i)最初のPCRベースのベセスダ(Bethesda)スクリーニング戦略は、効果的かつ直接的な自動化を妨げる専門家である観察者の解釈を必要とする。そして、(ii)標準的なPCRサーマルサイクラーに原則適合可能であるが、長いベセスダ(Bethesda)パネルマーカーを用いたdsDNAインターカレーティング色素による高分解能融解曲線分析は、それぞれのマーカーアンプリコン用の融解温度が重複シグナルを生成しないように十分異なるようにする必要があるため、一回の操作でいくつかの異なるMSIマーカーをスクリーニングするような多重化能力が非常に限定されていることが欠点である 。さらに、この戦略は、正常と変異体の長さ対立遺伝子間のヘテロ二重鎖の形成に依存するので、他の選択肢と比較して感度が低い。次に、(iii)質量分析に基づく方法(Zhao et al、2014:非特許文献10)は、原理的には自動化に適しているが、データ解釈のための特殊な計測手段及び高度に熟練した人員が必要である。最後に、(iv)次世代シークエンシング(NGS)によるMSI状態の検出と観察された突然変異数のカウントは、MSIにとって高感度の選択マーカーだけでなく、ゲノム又はエクソーム内の非常に多数の位置を見る利点が間違いなくある。しかしながら、この方法は原理的には少なくとも部分的に自動化可能であるものの、現在非常に高価であり、特殊なNGS装置を必要とし、依然として専門家による分析が必要な大量のデータを生成するために時間がかかり複雑である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、短い、すなわち、ベセスダ(Bethesda)パネルマーカーBAT25ホモポリマーヌクレオチド反復配列よりも短い少なくとも10ヌクレオチドに存在するヌクレオチドの数(例えば、+/−1塩基)の非常に小さな変化さえも検出するための、新規の方法、キット、及びカートリッジ、並びにそれらの使用に関する。これに沿って、本発明は、短い(<15bp、好ましくは<12bp)例えば、WO2013153130(特許文献1)に記載されているものであるホモポリマーマイクロサテライトマーカーの不安定性の検出のための方法、キット及びカートリッジ、並びにそれらの使用を提供する。
【0019】
特に、本発明は、15bp以下、好ましくは12bp長のホモポリマーヌクレオチド反復配列中に存在するヌクレオチドの数の変化を検出する方法に関し、
該方法は以下の工程:
− 標的ホモポリマー反復配列を含む核酸配列を増幅することによりアンプリコンを産生すること;
− 標的ホモポリマー反復配列にハイブリダイズ可能な配列を含む少なくとも1つのシグナル生成オリゴヌクレオチドプローブの存在下で産生されたアンプリコンを加熱すること、及び少なくとも1つの融解曲線を得るための温度関数での前記プローブにより生成されたシグナルの強度変化を検出すること;及び
− 少なくとも1つの融解曲線から標的ホモポリマー反復配列中に存在するヌクレオチドの数を推測すること;
を含む。
【0020】
ここで提供される本発明の方法は、完全に自動化可能であり、かつ専門的な訓練を必要とせずに通常の実験技術者によって行われることを可能にし、任意の標準的定量PCRサーマルサイクリング装置に適用可能であるという利点を有する。さらに、本発明の方法は、高感度で、多重化適性があり、検出されたホモポリマーヌクレオチド反復配列及びその変異体の相対量の推定値を提供することができる。
【0021】
MSI検出のための従来の方法は、以下の欠点を有する :
(a)反復の長さを決定するためには、PCR後の分析を行うための特別な装置を必要とし、及び/又はこの分析は通常、高度に訓練された専門家によって解釈される必要がある;又は
(b) dsDNAインターカレーティング色素を用いた高分解能融解曲線の場合、欠点となるのは、異なるアンプリコンからの重複する融解シグナルを避けるため、多重化能力が非常に限定されることであり、さらに、安定な(野生型)配列に対する不安定な(変異体)配列の相対量を定量する能力を提供しないことである。
【0022】
本願では、それぞれのマーカーが異なる蛍光チャネルにおいて検出され得る、蛍光標識された突然変異体に対する高感度プローブを使用して、融解曲線分析を実施することにより、これらの欠点を克服する。特に好ましいその感度の態様において、標的ホモポリマー反復配列にハイブリダイズすることができるプローブ中の配列は、標的ホモポリマー反復配列の突然変異配列と同一又は相補的な配列を含み、前記突然変異は野生型(すなわち、予想される)形態と比較して、前記標的ホモポリマー反復配列中の少なくとも1つのホモヌクレオチドの欠失を含む。
【0023】
これらの文脈に沿って、好ましい態様において、15bp以下のホモポリマーヌクレオチド反復配列中に存在するヌクレオチドの数の変化を検出する方法が提供され、該方法は以下の工程を含み:
− 標的ホモポリマー反復配列及びその特異的隣接配列を含む核酸配列を増幅することによりアンプリコンを産生すること;
− 該ホモポリマー反復配列及びその隣接配列に特異的にハイブリダイズすることにより産生されるシグナルの検出;及び
− 標的ホモポリマー反復配列中に存在するヌクレオチドの数を推測すること;
前記方法は、前記プローブが、前記標的ホモポリマー反復配列の突然変異配列と同一又は相補的な配列を含むことを特徴とするものであって、前記突然変異配列は、標的ホモポリマー反復配列の予想される野生型形態と比較して、前記標的ホモポリマー反復配列中の少なくとも1つのホモヌクレオチドの欠失を含む。
【0024】
本明細書において、用語「核酸」及びその同等物「ポリヌクレオチド」、はヌクレオチドサブユニット間のホスホジエステル結合を含むリボヌクレオシド又はデオキシリボヌクレオシドのポリマーとしても使用される。核酸は、例えば、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA若しくはmeDNA、cDNA、mRNA、rRNA、tRNA、hnRNA、microRNA、lncRNA 、及び様々なこれらの修飾物を含むDNA及びRNAを含むがこれに限定されるものではない。核酸は、最も一般的には、異なる種類の生物から得られた生物学的試料のような天然源から得ることができる。一方、既知のヒト考案の方法(例えば、PCR)等で核酸を合成、組換え、又は他の方法で作製することもできる。
【0025】
当然、好ましい態様において、増幅は好ましくはサーマルサイクラー等のPCRを行う手段を用いたポリメラーゼ連鎖反応やPCRにより行われる。有利には、より良好な自動化目的のために、好ましくは、PCRは、シグナル発生試薬から生成されたシグナルの容易なモニタリングを提供するqPCRを実施するための手段を用いて実施される。
【0026】
本明細書において用語「定量PCR」又は単に「qPCR」はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく実験技術の定義が与えられるものであり、qPCR は標的DNA分子を増幅し、同時に検出又は定量するために使用される。反応産物がその最後に、すなわち熱サイクリングが終了した後に、検出される標準的PCRとは対照的に、qPCRの重要な特徴は、反応が「リアルタイム」で進行する熱サイクル中にDNA産物が検出されることであり;したがって、別名「リアルタイムPCR」とも呼ばれる。現在、多くの異なるタイプのqPCRが存在する。例えば、逆転写(RT)ステップで開始する場合、qPCRを用いてメッセンジャーRNA数を定量化することができ、そのことから逆転写酵素qPCR又はRT-qPCRと呼ばれる。本明細書で使用される「定量PCR」又は単に「qPCR」という用語は、しばしば「RT-PCR」と略される逆転写PCRとの混乱を避けるために「リアルタイムPCR」という用語より優先して使用される。ほとんどのqPCRは、リアルタイムで増幅産物を検出するための最も一般的な2つの方法:(a)任意の二本鎖DNAとの非特異的蛍光色素のインターカレーション、又は (2)プローブとその相補的標的配列とのハイブリダイゼーション後にのみ検出を可能にする蛍光レポーターで標識されたオリゴヌクレオチドからなる配列特異的DNAプローブ、のうちの1つを使用する。サーマルサイクリングの間に生成された蛍光シグナルは、適切な光学検出システムによって検出され、反応がプラトーに達するまでバックグラウンド閾値を通過する瞬間から追跡される。標的配列のコピー数は、典型的には、得られた増幅曲線の形状を分析すること(標準曲線法)によるか、又はシグナルがいつ何らかの閾値(しばしばCt値と呼ばれるが、Cp値又はCq値とも呼ばれる)を超えて上昇するかを決定することによる、相対的又は絶対的定量化戦略のいずれかを用いて推定することができる。相対定量において、Ct又は標準曲線分析を使用して所与の試料において推定された標的核酸レベルは、別の参照試料、例えば、未処理対照試料中の同じ標的について得られた値と相対的に表される。反対に、絶対定量化では、qPCRシグナルは、標準曲線を用いて入力コピー数に関するものであるか、又はより最近のデジタルPCR法に従って計算されるものとすることもできる。現時点では、第1の戦略は依然としてより一般的なものであり、得られた値と予め作成された標準曲線とを比較することによる標的DNA量の推定に基づく。これら及び他のqPCR定量化戦略は、当技術分野で広く知られており、それらの計算は、所与のアプリケーション及びqPCRシステムによって、より小さく又はより大きく異なっていてもよい。
【0027】
本明細書において、「定量的PCRを実施するための手段」という用語は、qPCRを実施するための試薬及び要素の必要最小限のものとして理解されるべきである。それらは、通常、核酸の供給源から得られる核酸テンプレートのリアルタイムPCRサーマルサイクリングで検出可能な任意の試薬を含む。そのような試薬には、qPCRのタイプに依存するが、PCRグレードのポリメラーゼに限定されず、少なくとも1つのプライマーセット、検出可能な色素又はプローブ、dNTP、PCRバッファーが含まれる。さらに、「定量的PCRを実施するための手段」は、通常、当技術分野で知られている部分の最小限の集合体を含み、これには通常以下のものが含まれるが、これらに限定されない:(1)リアルタイムで検出可能なサーマルサイクリングが起こり得る適切な区画(さらに、「サーマルサイクリングqPCR区画」とも呼ばれる)を含む。そのような区画は、例えば、 適切な材料から作製され、十分な内部温度調節を提供する、核酸増幅に適切なチャンバによって形成され得るものであり、このような増幅中に生成されるシグナルのリアルタイム検出を可能にする少なくとも1つの壁、例えば、光を透過する壁、を含む。さらに、(2)様々な既存のサーマルサイクリング機器から広く知られている、このチャンバ又は他の区画内の温度を変化させる手段。それから、(3)コンピュータ等に繋げた光検出器のような、qPCRサーマルサイクリング中に生成されたシグナルを検出するための手段。要するに、このような最小限の集合体は、サーマルサイクリングqPCR区画における熱サイクリング反応を開始及び維持し、その中で安定なサーマルサイクリング条件を確実にするための温度調節及び温度調節することができるシステム又は当業者に公知のシステムを通常含む。さらに、任意の適切な検出装置(単数又は複数)、データ処理手段(例えば、データベースに接続されたコンピュータ)を含み、そして、リアルタイムでqPCR反応の熱サイクルを読み取ってモニターすることを可能にする出力システム(通常、適切なグラフィックユーザーインターフェースで反応進行を表示するコンピュータスクリーン);機器を操作するのに適したソフトウェアパッケージ及び/又は得られた結果を表示し及び場合によっては表示を補助するものを含む。
【0028】
原理的には、可能な実施形態において、融解曲線分析を実施するのに適した任意の標的特異的オリゴヌクレオチドプローブが、本発明の方法において使用され得る。好ましい既知のプローブは、フルオロフォア及びクエンチャーからなる対を含んでもよく、ループ又はヘアピンのような二次構造を有利に形成してもよい。
【0029】
好ましい実施態様において、少なくとも1つの標識オリゴヌクレオチドプローブは分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブである。分子ビーコンプローブ又は分子ビーコンは、標的核酸配列に結合すると蛍光が回復する、内部消光フルオロフォアを有するヘアピン型分子である。この理由から、分子ビーコンはポリメラーゼの作用によって分解されず、融解曲線呼び出し(calling)を介して標的へのハイブリダイゼーション速度論を研究するのに用いることができる。典型的な分子ビーコンプローブは、約25ヌクレオチド長であるが、より長くてもよい。通常、少なくとも中央の15ヌクレオチドはその核酸標的に相補的であって、各末端の5ヌクレオチドは互いに相補的であり、ビーコンをループ又はヘアピン構造に組み立てることを可能にする。その標的にハイブリダイズしない分子ビーコンは、4つの構造部分に分けることができる:(1)標的配列に相補的であり、かつ標的配列にハイブリダイズする18〜30bpの領域である、ループ; (2)互いに相補的に結合したループの両端の5〜7個のヌクレオチドの末端によって形成される、ステム; (3)分子ビーコンの5 '末端に共有結合したフルオロフォア;及び(4)分子ビーコンの3 '末端に共有結合したクエンチャー。このような構造は、ビーコンがその標的にハイブリダイズせず、ヘアピン構造で閉じられたとき、クエンチャーがシグナル生成されないように色素の蛍光発光を消滅させることを確実にする。しかし、ハイブリダイゼーションが起こると、核酸標的と分子ビーコンのループとの間に二重鎖が形成され、ヘアピン構造を破壊し、色素からクエンチャーを除去し、最終的に蛍光シグナルを生じる。
【0030】
上記態様の好ましい実施態様において、分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブは、標的ホモポリマー反復配列中の少なくとも1つのホモヌクレオチドの欠失を含むホモポリマー反復配列突然変異体と同一又は相補的な配列を含む。このような分子ビーコン設計は、ポリメラーゼスリップエラーが生じるのと同時に、少なくとも1つのより長いホモヌクレオチド反復を有する野生型(すなわち予期される)マーカー形態に対して十分に感受性を維持した高感度選択MSIマーカーを特異的に検出することを可能にする。用語「標的ホモポリマーヌクレオチド反復配列」は、MSIが存在しない条件下で予想される野生型又は参照ホモポリマー反復配列を意味することに留意すべきである。逆に、「突然変異ホモポリマーヌクレオチド反復配列」とは、ホモポリマー反復配列中の少なくとも1つのホモヌクレオチドの挿入又は欠失を含むホモポリマーヌクレオチド反復配列を意味する。
【0031】
1つのホモポリマー反復マーカー及びその不安定な(突然変異)変異体に対する所与の分子ビーコンプローブの特異性のために、少なくとも2つの分子ビーコンプローブが1つの反応チューブ又は区画において使用される多重化アッセイを設計することも可能である。
【0032】
したがって、特に有利な態様において、第1の分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブとは異なる標識を付けた少なくとも第2の分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブを使用する方法が提供され、前記第2の分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブは、第1の標的ホモポリマーヌクレオチド反復配列とは異なる第2の標的ホモポリマーヌクレオチド反復配列にハイブリダイズすることができる配列を含むものである。
【0033】
好ましくは、特に特異的な分子ビーコンプローブが使用される。したがって、有利な実施態様において、第2の標的ホモポリマーヌクレオチド反復配列が、第2の標的ホモポリマー反復配列中の少なくとも1つのホモヌクレオチドの欠失を含む突然変異配列と同一又は相補的な配列を含む方法が提供される。
【0034】
ホモポリマー反復領域の増幅中、ポリメラーゼスリップが起こることが知られている。これは、増幅されたPCR産物中に人工的欠失又は挿入の蓄積の原因となり、反復ヌクレオチドの元の数をコピーする際に間違いを引き起こす。したがって、本発明の方法の別の好ましい実施態様において、アンプリコンを産生する工程は、プルーフリーディングポリメラーゼ、すなわち3'-5 'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを含むPCRで行われる。多くのそのようなPCRグレードのポリメラーゼが知られており、市販されている。たとえばこれに限定されるものではないが、Q5、Pfx、 Pfu、Ex Taq等が含まれる。
【0035】
上記の実施態様のさらなる発展において、プルーフリーディングポリメラーゼの3'-5 'エキソヌクレアーゼ活性がオリゴヌクレオチドプローブを引き起こされる可能性のある脅威から保護するために、ビーコンが分解されることがないようにビーコンを構造的に改変することが有利である。したがって、本発明の方法の特に有利な実施態様において、特にアッセイ安定性の観点から、少なくとも1つのシグナル生成標識オリゴヌクレオチドプローブは、ポリメラーゼの3'-5 'エキソヌクレアーゼ活性から前記プローブを保護する構造的特徴又は修飾を含み、前記構造的特徴又は修飾は、好ましくは、
− プローブの3 '末端の逆位dT、
− プローブの3 '末端の最後の3つのヌクレオチドのいずれかの前に位置する少なくとも1つのホスホロチオエート結合、
から選択される。
【0036】
プルーフリーディングポリメラーゼに依存して、いくつかのプルーフリーディングポリメラーゼは、ある配列によって作られた特定の分子ビーコンのステムを消化しないことが観察されている。この予想外の観察は、それらの配列に依存する分子ビーコンのステムが異なる3D構造を有するという事実に起因するようである。従って、ある種のプルーフリーディングポリメラーゼは、ステム構造がプルーフリーディングポリメラーゼの触媒中心と適合しない分子ビーコンを攻撃することができないという仮説を立てることができる。このメカニズムにかかわらず、いくつかのタイプの分子ビーコンのステムの提供は、それらをある種のプルーフリーディングポリメラーゼの3'-5 'エキソヌクレアーゼ活性に対して完全に免疫化することができるとみなされ得ることを我々は観察した。上記に沿って、別の実施態様において、配列特異的プローブが分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブであり、保護構造の特徴または修飾が3'-5エキソヌクレアーゼ活性耐性ステムである方法が提供される。そのようなステムは、当該分野で公知の任意のクローニングまたは核酸組換え技術によって、目的の分子ビーコンに容易に移植することができる。
【0037】
本発明の方法の主な利点の1つは、特に既知の標準qPCRシステムに対するその直接的な自動化及び適合である。したがって、特に好ましい態様において、本発明の方法は以下の工程が自動化システムで行われることが供給される:
− 標的ホモポリマー反復配列を含む核酸配列を増幅することによりアンプリコンを産生すること;
− シグナル生成オリゴヌクレオチドプローブの存在下で産生されたアンプリコンを加熱すること、及び少なくとも1つの融解曲線を得るための温度関数での前記シグナルの強度変化を検出すること;及び
− 少なくとも1つの融解曲線から標的ホモポリマー反復配列中に存在するヌクレオチドの数を推測すること。
そのような自動化に特に適したシステムは、バイオカーティス社(Biocartis)のイディラ(Idylla)プラットフォームであり、試料処理の自動化をさらに提供する。
【0038】
有利には、本発明の上記の実施態様による方法は、以下の工程のいずれかが先立って行われることにより提供され得るものである:
− 標的ホモポリマー反復配列を潜在的に含む核酸の供給源を提供する工程であり、好ましくは前記供給源が生物学的試料である工程、
− 核酸の供給源から標的ホモポリマー反復配列を潜在的に含む核酸を遊離及び/又は単離する工程、
− アンプリコンを産生する工程に前記遊離及び/又は単離された標的ホモポリマー反復配列を潜在的に含む核酸を提供する工程、
少なくとも以下の工程:
− 核酸の供給源から標的ホモポリマー反復配列を潜在的に含む核酸を遊離及び/又は単離する工程、
− アンプリコンを産生する工程へ前記遊離及び/又は単離された標的ホモポリマー反復配列を潜在的に含む核酸を提供する工程、
が自動化システムで実行されるものである。
【0039】
さらに、上記の実施態様の特に有用かつ必要とされる最小の取扱い及び技術的準備の実施態様において、以下の工程が供給される:
− 核酸の供給源から標的ホモポリマー反復配列を潜在的に含む核酸を遊離及び/又は単離する工程、
− アンプリコンを産生する工程へ前記遊離及び/又は単離された標的ホモポリマー反復配列を潜在的に含む核酸を提供する工程、
− 標的ホモポリマー反復配列を含む核酸配列を増幅することによりアンプリコンを産生する工程、及び
− シグナル生成オリゴヌクレオチドプローブの存在下で産生されたアンプリコンを加熱すること、及び少なくとも1つの融解曲線を得るための温度関数でのシグナルの強度変化を検出すること、
が前記自動化システムと係合可能なカートリッジ内で行われる。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「カートリッジ」は、チャンバ及び/又はチャネルの自己完結型集合体として理解されるべきであり、カートリッジを受け入れるか又は接続するのに適したより大きな機器の内部又は外部に1つの付属品として導入又は移動することができる。カートリッジに含まれる一部の部品はしっかりと接続されているが、他の部品はカートリッジの他の部品に対して柔軟に接続され、移動可能である。同様に、本明細書で使用する「流体カートリッジ」という用語は、流体、好ましくは液体を処理、加工、排出、又は分析するのに適した少なくとも1つのチャンバ又はチャネルを含むカートリッジとして理解されるべきである。そのようなカートリッジの一例がWO2007004103に示されている。好都合なことに、流体カートリッジは、マイクロ流体カートリッジとすることができる。流体カートリッジの文脈において、「下流」及び「上流」という用語は、そのようなカートリッジ内で流体が流れる方向に関するものとして定義することができる。すなわち、同じカートリッジにおいて第2のセクションに向かって流体が流れるカートリッジ内の流体経路の部分は、第2のセクションの上流に位置すると解釈されるべきである。同様に、流体が後に到着するセクションは、流体が先に通過したセクションに対して下流に位置する。
【0041】
一般に、本明細書で使用される場合、用語「流体」又は時には「マイクロ流体」は、少なくとも1つ又は2つの次元(例えば、幅及び高さ又はチャネル)において、典型的にはサブミリメートルスケール(sub-millimeter-scale)の小さなものに幾何学的に拘束された流体の挙動、制御、及び操作を扱うシステム及び配置をいう。そのような少量の流体は、小型で低エネルギー消費を必要とするマイクロスケールで移動、混合、分離又は処理される。マイクロ流体システムには、マイクロ空気圧システム(圧力源、液体ポンプ、マイクロバルブ等)及びマイクロ、ナノ及びピコリットル容積(マイクロ流体チャネル等)を取り扱うためのマイクロ流体構造等の構造が含まれる。例示的な流体システムは、EP1896180、EP1904234、及びEP2419705に記載されており、従って、これらは本発明の一つの実施態様として適用することができる。
【0042】
上述の実施態様における特に望ましい実施態様において、本発明による方法の結果を合理化し解釈を容易にするために、融解曲線の分析はコンピュータ実装ソフトウェアによる自動化態様においても実行される。このようなソフトウェアは、特定の標的に対する特定のプローブのハイブリダイゼーションを特徴づける、規定された融解ピーク(又は変曲点)の特徴的な位置を認識するように指示されることができ、特徴づけは前記プローブ及び標的ペアについて得られた融解曲線の負の一次導関数をプロットすることにより得ることができる。従って、別の好ましい態様において、本発明の方法は、標的ホモポリマー反復配列中に存在するヌクレオチドの数を少なくとも1つの融解曲線から推測する工程は、前記融解曲線の一次導関数の少なくとも1つのピークの位置又は相対位置を評価することによって実施され、最も好ましくは、 完全に自動化された方法で実施されるものとして提供される。
【0043】
さらなる態様において、本発明はまた、本発明による方法を実施するためのキットを提供する。特に、本発明は塩基長15bp以下の標的ホモポリマーヌクレオチド反復配列のヌクレオチド数の変化を検出するためのキットを提供し、前記キットは少なくとも1つの分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブ、好ましくは複数の分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブを含み、それぞれの分子ビーコンは塩基長15bp以下の異なる標的ホモポリマー反復配列を含む配列にハイブリダイズ可能な配列を含み、好ましくは前記キットはプルーフリーディングポリメラーゼも含む。好ましくは、前記複数の分子ビーコンプローブの各々は、特定の標的ホモポリマーヌクレオチド反復配列(好ましくは他の分子ビーコンによって標的とされるホモポリマーヌクレオチド反復配列とは異なる)にハイブリダイズすることができる配列を含み、及び前記標的ホモポリマー反復配列において、野生型と比較して、突然変異した形態が少なくとも1つのホモヌクレオチドを欠いており(すなわち、欠失)、前記特定の標的反復配列の突然変異した形態と同一であるか相補的である。
【0044】
好ましい実施形態では、カートリッジの形態でキットが提供される。従って、好適には、本発明は、前記少なくとも1つの、好ましくは複数の分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブ、好ましくはプルーフリーディングポリメラーゼも含め、自動化システムと係合可能なカートリッジ内に提供される、キットを提供する。上述したように、カートリッジ及びそれと係合可能な自動システムの適切な例は、バイオカーティス社(Biocartis)のイディラ(Idylla)プラットフォームである。これに関するさらなる詳細及び本発明のシステムに同様に適用可能なものは、WO2007004103、EP1896180、EP1904234及びEP2419705を参照することができる。本明細書で引用した文献から理解できるように、有利なカートリッジは、PCRを実施するための手段を含むだけでなく、核酸又は試料の供給源を直接受け入れ、核酸源から核酸を遊離させ、 このようにして遊離した核酸を続けて行われるPCRに基づくアッセイのために(例えば、ポンプにより)提供する。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「核酸の供給源」は、核酸を含むか又は含むと予想される、液体又は固体の任意の物質として理解されるべきである。核酸の供給源は、例えば、 ライゲーション産物、電気泳動マーカー(いわゆる「はしご(ladder)」)、プライマーストック等を含む多くの他の溶液のような合成又は組換え核酸を含む人工的に作製された溶液であってもよい。しかし、最も一般的には、核酸の供給源は、生物又はそれを形成する若しくは誘導された細胞から得られた生物学的試料、好ましくは患者から得られた臨床試料である。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「生物学的試料」又は単に「試料」は、核酸及び/又は細胞材料を含む様々な生物学的供給源を含むものであることを意図するものであり、生物(すなわち新鮮な組織試料 )又は当技術分野で公知の任意の方法によって保存されたもの(例えば、FFPE試料)から得られるかどうかは関係ない。生物学的試料の例としては以下が含まれる:哺乳動物細胞のような細胞の培養物だけでなく真核微生物の培養物、体液、体液沈殿物、 洗浄試料、穿刺吸引、生検試料、組織試料、がん細胞、患者から得られた他のタイプの細胞、疾患又は感染のため試験されている及び/又は治療されている個体由来の組織又はインビトロ培養細胞に由来する細胞、又は法医学的試料。体液試料の非限定的な例としては、全血、骨髄、脳脊髄液(CSF)、腹水、胸水、リンパ液、血清、血漿、尿、乳糜、便、射精液、喀痰、乳頭吸引液、唾液、拭き取り検体、洗浄液又は洗浄液及び/又はブラシ検体が含まれる。
【0047】
生物学的試料が系に供給されるか又は本発明の方法を実施する際に、通常、核酸が放出される溶解物を提供するための組成物と接触させられる。本明細書中で使用される場合、「接触させる」とは、試料と組成物を一緒にし、曝露し、インキュベートし、又は混合することを意味する。「放出する(Releasing)」とは、架橋結合の遊離、獲得及び/又は逆転をいう。試料から核酸を遊離させるために、組成物からプロテアーゼ活性及びpHバッファーが必要とされることがある。放出には、調査される試料中に存在する核酸以外の成分の潜在的な沈降活性及び固定剤の除去/溶解が必要となる可能性がある。放出には、加熱又は高強度集束超音波(High-Intensity Focused Ultrasound :HIFU)等の条件が必要となる可能性がある。本発明の精神に則った一つの実施態様において、生物学的試料は、診断分析装置等の自動化システムに適合するカートリッジに導入され、該試料の処理工程は様々な溶液との接触と核酸の放出が起こることを包含する。
【0048】
「生物学的試料から核酸を遊離又は精製するための手段」という用語は、生物学的試料中の細胞又は他の構造物から核酸を遊離させるのに使用される当技術分野で公知のあらゆる複数の又は化学的試薬及び/又は物理的要素として理解されるべきものであり、精製の場合、通常、水溶液中で望ましくない試料の断片由来の前記核酸を許容される純粋な形態(用語「許容される」はこのような精製された核酸のさらなる目的に依存するものである)に十分に分離する。このような目的に適した化学試薬には、例えば、 組織又は細胞を破壊及び/又は液化するのに使用され、溶液中に核酸が放出されることになる、洗浄剤、カオトロピック剤、ヌクレアーゼ阻害剤等を含む当技術分野で公知のあらゆる洗剤及び/又はバッファーが含まれる。同様に、核酸の遊離/精製の目的のための試料処理の様々な方法に使用される当技術分野で公知の物理的要素には、例えばスピンカラム、シリカ膜、ビーズ等の樹脂のシリカ固体支持体、さらに超音波発生器等の破壊的なエネルギーを発生する機械的な破壊装置又は機械が含まれる。
【0049】
上記文脈において、有利には、本発明は塩基長15bp以下のホモポリマーヌクレオチド反復配列に存在するヌクレオチド数の変化を自動化して検出するためのカートリッジも提供し、該カートリッジは、
− 生物学的試料を収容するための試料区画、
− 試料区画に収容された生体試料から核酸を遊離又は精製するための手段であって、前記手段は前記試料区画と流体連通することができ、
− 試料区画の下流に配置されており、核酸を遊離又は精製するための手段のPCR区画であって、前記PCR区画は遊離又は精製された核酸の少なくとも一部、又はライブラリ区画において調製された核酸ライブラリの少なくとも一部を収容するように構成されており、熱サイクリングを行う前記PCR区画はさらに核酸を増幅するために適しており、そのような増幅中又は増幅後に生成されたシグナルの検出を可能にするものである、
ことを含み、
該カートリッジは、上記に記載の少なくとも1つ、好ましくは複数の分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブと、好ましくはPCR区画内において、プルーフリーディングポリメラーゼをさらに含むことを特徴とする。
【0050】
好ましい態様において、分子ビーコンオリゴヌクレオチドプローブ、及び/又はプルーフリーディングポリメラーゼは、本発明に係るカートリッジでの貯蔵寿命の増加に寄与する点在した形式で前記カートリッジに提供することができる。
【0051】
最後に、本発明は、好ましくは、がんに罹患していると診断されている、又は癌に罹患していると予想される患者から得られた試料における、マイクロサテライト不安定性(MSI)の検出のための、本発明の方法、キット、及びカートリッジの使用を提供することも目的とする。
【実施例】
【0052】
(実施例1)TMEM65におけるMSI用分子ビーコン融解曲線
【0053】
ホモポリマーヌクレオチド反復配列中の1塩基長の非常に小さな変化さえも検出する本発明の方法の好ましい実施形態の能力は、染色体8:125325217に位置し、11アデニン(A)のホモポリマー反復を含む、ヒトTMEM65マーカーを使用して説明される。TMEM65の野生型(WT)のホモポリマー反復配列(太字及び下線)及びその特異的周辺配列は下記のとおりである:
【0054】
TMEM65の反復配列のヌクレオチド変化を検出するため、蛍光標識分子FAMで標識され、ダブシル(dabcyl)がクエンチャーとして使用された
の配列を有する分子ビーコン検出プローブを設計した(分子ビーコンプローブのステム領域は斜体で示され、プローブハイブリダイズ領域は太字で示され、11に代わる10アデニン反復を含む変異TMEM65と同一の反復配列は太字かつ下線で示される)。
【0055】
TMEM65特異的プローブがWT TMEM65マーカー配列及びその1つのホモヌクレオチドの欠失又は挿入のいずれかの2つの異なる突然変異体の両者に結合して認識する能力を試験するために、TMEM65ホモポリマー反復の3つの異なるバリエーションを代表するTMEM65の3つの合成標的を調製した。3つの前記変異体の配列は、前記変異体鎖にハイブリダイズするTMEM65特異的分子ビーコンプローブ(ポリA反復を含む)に相補的なDNA鎖として下記に示す。 相補的TMEM65変異体鎖(ポリT反復を含む)は下記の通りである:
TMEM65_T10 (1塩基対欠失):
TMEM65_T11 (参照):
TMEM65_T12 (1塩基対挿入):
【0056】
TMEM65特異的分子ビーコンプローブを3つの別々のPCRチューブに200nMの濃度で加えた。各々のチューブは標準PCR反応バッファー中で2500nMの濃度で上記の3つの変異体のうちの1つを含有する。次に、この混合物をBio-Rad CFX96装置で95℃で2分間変性させ、それから分子ビーコンプローブがその標的にハイブリダイズするのに十分な時間を与えるために45℃で15分間冷却した。次に、混合物を(1サイクル当たり5秒)0.3℃の工程とし75℃まで加熱し、0.3℃の増加ごとに蛍光を測定することによって融解曲線分析を行った。
【0057】
融解曲線の結果を
図1に示す。上のパネルAは3つの標的に対するTMEM65特異的プローブの(時間の経過に伴う蛍光としての)融解曲線を示す。下のパネルBは、パネルAにおける融解曲線の融解ピーク又は負の一次導関数を示す。3つの融解ピークのTm値は、TMEM65_T10が54.9℃、TMEM65_T11が51.3℃、TMEM65_T12が47.7℃であった。融解ピークのデルタTm値は以下の通りだった:
TMEM65_T10 - TMEM65_T11 = 3.6℃
TMEM65_T11 - TMEM65_T12 = 3.6℃
TMEM65_T10 - TMEM65_T12 = 7.2℃
【0058】
これらの結果に基づけば、参照配列(すなわち、T11参照反復に対するT10又はT12反復)と比較した単一ヌクレオチドの欠失又は挿入は、参照配列の融解ピークのTmと比較して融解ピークのTmにおいて数℃(セ氏温度) 異なると結論づけることができる。したがって、TMEM65遺伝子におけるこの反復配列の長さは、上記分子ビーコンプローブのその標的領域へのハイブリダイゼーションによって産生された融解ピークの分析によって決定することができる。
【0059】
(実施例2)がん患者サンプルにおけるTMEM65 MSIマーカー状態の評価
【0060】
結腸直腸がん患者からのFFPE試料をバイオカーティス社(Biocartis)のイディラ(Idylla)流体カートリッジに供給した。カートリッジを閉じ、自動化されたPCRベース遺伝子解析のためのバイオカーティス社(Biocartis)のイディラ(Idylla)にロードした後、自動試料処理を開始した。まず、患者のDNAをFFPE試料から遊離し、次いでカートリッジのPCR区画にポンプで注入した。次に、TMEM65ホモポリマー反復配列を囲む領域の非対称PCR増幅を、以下のプライマーFWD: 5'-CAGACTTATTCCATTCAGATGAGA-3' 及び REV: 5'-GAAGTGATGTTTGAAAGATTAATGAGA-3' を用いて各カートリッジで行った。PCR増幅は、上記TMEM65特異的分子ビーコンプローブの存在下で行った。
【0061】
PCR後、PCR産物を95℃で2分間カートリッジ中で変性させ、次いでTMEM65特異的分子ビーコンプローブのその標的へのハイブリダイゼーションに十分な時間を与えるために45℃で15分間冷却した。次に、0.3℃(1サイクルあたり5秒)の工程で40℃から60℃まで混合物を加熱し、同時に0.3℃増加するごとに蛍光シグナルをモニターすることにより、イディラ(Idylla)システム上で融解曲線分析を行った。融解ピークは、得られた融解曲線の一次導関数の負の値として計算した。
【0062】
図2は、マイクロサテライト安定(MSS)であると考えられる10種の野生型試料(黒色曲線、TMEM65反復長さ11)とマイクロサテライト不安定(MSI-High [MSI-H])であると考えられる10種の変異体試料(灰色曲線、TMEM65反復長10)から得られた結果を示す。MSS試料では野生型A11ピーク(±49℃)の一貫したピーク高さであるのに対し、MSI-H試料では、野生型A11ピークと変異型A10ピーク(±53℃)の両方で可変高さであることに留意する。これは、各試料中に存在する野生型及び突然変異対立遺伝子の可変比率を反映する。
【0063】
図3及び
図4は、それぞれMSS及びMSI-H FFPE試料の代表例を示す。
図4では、3つの異なるMSI-H試料を示すパネルA〜Cのそれぞれにおいて、MSS1は野生型参照として示されている。変異体A10のピーク高さ(±53℃)が野生型A11ピーク高さ(±49℃)よりも低いため、試料MSI-H 1は野生型対立遺伝子よりも少ない量の突然変異体を含む。突然変異体A10のピーク高さ(±53℃)が野生型A11ピーク高さ(±49℃)と類似しているので、試料MSI-H 2は同程度の量の突然変異体及び野生型対立遺伝子を含む。突然変異体A10のピーク高さ(±53℃)が野生型A11ピーク高さ(±49℃)よりも高いため、試料MSI-H 3は野生型対立遺伝子よりも多くの量の突然変異体を含む。
【0064】
本明細書中に提示された結果は、本明細書に記載される分子ビーコンプローブを使用する手順が、結腸直腸がんFFPE組織生検由来のDNA中のTMEM65ホモポリマー反復配列中に存在するヌクレオチドの数の決定が可能であることを実証する。さらに、本発明の方法は、腫瘍生検由来のDNA中に存在する野生型及び突然変異TMEM65反復対立遺伝子の相対量の推定を可能にする。
【0065】
(実施例3)プルーフリーディングポリメラーゼの存在下での異なる分子ビーコンプローブの性能
【0066】
本明細書に記載の方法においてより高い感度を達成するために、PCR増幅混合物中に3'-5 'エキソヌクレアーゼ活性を有するプルーフリーディング(すなわちエラーの修正)ポリメラーゼを使用することが有利である。しかしながら、混合物中の多くの分子ビーコンでは、異なる試験されたプルーフリーディングポリメラーゼが異なるビーコンを分解し得ることが観察され、その結果として部分的又は完全なシグナルの損失を生じ、したがって信頼できるデータ解釈に干渉し又はデータ解釈を妨げる。
【0067】
上記の一例を
図5に示す。上のパネルAは、プルーフリーディングポリメラーゼQ5とMSIマーカーABATで潜在的ホモヌクレオチド欠失を検出するように設計された配列CGCAGGAAGCTAAAAAAAAAACCCTTCTGCG(標識としてテキサスレッド、及びクエンチャーとしてアイオワブラック(Iowa Black)(商標)FQを有する)を有する分子ビーコンプローブを用いた、2つの臨床FFPE試料由来のDNAで得られた融解ピークを示す。連続したより濃いピークは、ABATが野生型かつ11のアデニン反復を含むMSS(安定)試料に対応する。丸印を含む線は、曲線の右側により高い欠失ピークを含み、かつ左側でより小さいWTピークを含むMSI-H試料由来のDNAで得られた二重曲線を示す。WTピークは、腫瘍周囲の間質由来のWT DNAでの腫瘍組織のコンタミネーションがほぼ常にあるため、MSI-H腫瘍試料で通常観察される。
【0068】
さらなる化学修飾でABAT特異的分子ビーコンをさらに保護する必要なく、Q5プルーフリーディングポリメラーゼと上記ABAT特異的分子ビーコンを使用する場合に、そのような安定した結果が、それぞれ他の試料を用いて繰り返し得ることができる。これはQ5ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性中心に結合することができず、Q5ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性中心によって消化されない前記ビーコンのステムの3D構造から生じる可能性があると仮定されている。
【0069】
図5の下のパネルBの左側に示される全く異なる融解プロファイルが、CCGTCCGAAGCTAAAAAAAAAACCCTTGGACGG(同じ標識及びクエンチャー)の配列を有し、ABATに特異的な別の分子ビーコンについてのQ5ポリメラーゼで得られた。 このプローブは、PCR中にQ5ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によって効率的かつ繰り返し分解可能であった。前記ビーコンはPCRの過程で分解されていたので、PCR後の融解曲線分析中にシグナルは得られなかった(グラフは平坦)。パネルBの右側は、ビーコンが機能的であり、PCR中にシグナルを生成することを説明する同じプローブのqPCRプロファイルを示す。このことは、PCR後の融解でシグナルはもはや存在しないことから、PCR中に生成されたシグナルがビーコンの分解によって引き起こされたことを証明する。
【0070】
Q5ポリメラーゼを使用するが、異なるMSIマーカーに特異的な他の分子ビーコンプローブを用いて実施されたPCRでは、2つのABAT特異的プローブについて上記のようなステムのうちのいずれかが所与のビーコンに存在するかによって同じ傾向が観察された。
【0071】
図面の用語の訳
Melt curve: 融解曲線、Melt peak: 融解ピーク、Temperature, Celsius: 温度、セ氏