特許第6906508号(P6906508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6906508センサ装置、および、当該センサ装置を備えたロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906508
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】センサ装置、および、当該センサ装置を備えたロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20210708BHJP
   B25J 17/02 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   G01B7/00 103M
   B25J17/02 Z
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-517711(P2018-517711)
(86)(22)【出願日】2016年8月11日
(65)【公表番号】特表2018-533006(P2018-533006A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】EP2016069141
(87)【国際公開番号】WO2017059992
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2018年4月6日
【審判番号】不服2020-5288(P2020-5288/J1)
【審判請求日】2020年4月20日
(31)【優先権主張番号】102015219332.2
(32)【優先日】2015年10月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス リュープ
【合議体】
【審判長】 福島 浩司
【審判官】 伊藤 幸仙
【審判官】 渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−157001(JP,A)
【文献】 特開平7−71913(JP,A)
【文献】 特開平4−253(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010034482(DE,A1)
【文献】 米国特許第10480923(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00 - 7/34
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ装置(7)であって、
基体ボディ(8)と、
前記基体ボディ(8)に対して相対的に可動に配置された対向ボディ(9)と、
センサ信号を出力するための複数のセンサデバイス(10)と
を備えており、
前記センサデバイス(10)は、それぞれ少なくとも1つのセンサ(13)と少なくとも1つのターゲット領域(14)とを備えており、
前記センサ(13)は、前記両ボディのうち一方に配置されており、かつ、前記ターゲット領域(14)は、他方のボディに配置されており、
前記センサ(13)はそれぞれ、前記ターゲット領域(14)を検出するように構成されており、
前記センサ装置(7)はさらに、
前記センサ信号から、前記対向ボディ(9)と前記基体ボディ(8)との相対位置を求めるように構成された処理装置(11)
を備えている、センサ装置(7)において、
前記処理装置(11)は、前記相対位置を3つの並進自由度(X,Y,Z)と3つの回転自由度(R1,R2,R3)とにおいて求めるように構成されており、
前記対向ボディ(9)は、触覚ボディとして構成されており、
前記ターゲット領域(14)はそれぞれ、独立した一平面をそれぞれ定義するプレーナ形の参照領域として、前記触覚ボディに設けられており、
2つずつの前記参照領域が、1つの柱面屋根に設けられている、
ことを特徴とするセンサ装置(7)。
【請求項2】
各前記柱面屋根は、それぞれ1つの屋根線を有し、
各前記屋根線は、前記基体ボディ(8)と前記対向ボディ(9)との積層方向まわりの円上において、互いに等間隔であり、および/または、120°の中間角をとる、
請求項1記載のセンサ装置(7)。
【請求項3】
各前記柱面屋根は、それぞれ1つの屋根線を有し、
各前記屋根線は、共通の平面内にある、
請求項1または2記載のセンサ装置(7)。
【請求項4】
前記センサ(13)はそれぞれ、前記ターゲット領域(14)を非接触で検出するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のセンサ装置(7)。
【請求項5】
前記基体ボディ(8)は、ロボット(2)に結合可能であり、
前記対向ボディ(9)は、触覚ボディとして構成されており、ツール(3)に結合可能である、
請求項1から4までのいずれか1項記載のセンサ装置(7)。
【請求項6】
前記対向ボディ(9)および前記基体ボディ(8)は、それぞれ平板部分を有し、
前記平板部分は、相互に傾動可能、回転可能および変位可能に配置されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のセンサ装置(7)。
【請求項7】
前記対向ボディ(9)が自動的に前記基体ボディ(8)に対して相対的に初期位置に配置されるように、前記対向ボディ(9)は、前記基体ボディ(8)に対して相対的に付勢されて配置されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のセンサ装置(7)。
【請求項8】
前記ターゲット領域(14)はそれぞれ、独立した一平面をそれぞれ定義するプレーナ形の参照領域として構成されており、
全ての前記平面について、前記各平面は前記平面の他の一平面と1直線でしか交差しないことが適用され、
前記各参照領域にそれぞれ前記センサ(13)が割り当てられており、
前記センサ(13)は、距離センサとして構成されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載のセンサ装置(7)。
【請求項9】
前記基体ボディ(8)と前記対向ボディ(9)との間の基準位置において、前記センサ(13)の各測定方向はそれぞれ、各割り当てられた前記参照領域に対して垂直である、
請求項8記載のセンサ装置(7)。
【請求項10】
前記センサ装置(7)は、ロボットシステム(1)用に構成されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載のセンサ装置(7)。
【請求項11】
ロボット(2)と、当該ロボット(2)によって操作されるツール(3)とを備えたロボットシステム(1)において、
請求項1から10までのいずれか1項記載のセンサ装置(7)を備えており、
前記センサ装置(7)は、前記ロボット(2)と前記ツール(3)との間に配置されている
ことを特徴とするロボットシステム(1)。
【請求項12】
前記ツールは、プローブ先端部として構成されている、
請求項11記載のロボットシステム。
【請求項13】
前記ツールは、把持部として構成されている、
請求項11記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体ボディと、当該基体ボディに対して相対的に可動に配置された対向ボディと、それぞれ少なくとも1つのセンサおよび少なくとも1つのターゲット領域を有する、センサ信号を出力するための複数のセンサデバイスとを備えたセンサ装置に関し、センサは両ボディのうち一方のボディに配置され、かつ、ターゲット領域は他方のボディに配置されており、センサはそれぞれ、ターゲット領域を検出するように構成されており、センサ装置はさらに処理装置を備えており、当該処理装置は、センサ信号から対向ボディと基体ボディとの相対位置を求めるように構成されている。本発明はさらに、上述の触覚センサ装置を備えたロボットシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
自動ハンドリング装置においては、測定量を検出して記録するか、または、開ループもしくは閉ループ制御回路においてハンドリング装置を制御するか選択的に行うため、センサが多岐にわたって使用される。測定量を物理的接触によって取得するセンサは、「触覚センサ」とも称される。かかる触覚センサは、たとえば座標測定機において使用される。また、部品を検出し、または部品幾何形態を検出するために触覚センサを用いることも知られている。かかる触覚センサは、最も簡単な実施形態においては、当該触覚センサが被測定体と接触したときにスイッチング状態が変化するスイッチを備えており、これにより被測定体を検出する。他に、たとえば触覚エレメントの変位を検出することができる触覚センサもある。
【0003】
たとえば、おそらく最も近い従来技術である独国特許出願公開第102006056252号明細書(DE102006056252A1)には、エネルギービームを導くための装置、特にレーザビームを導くための装置が開示されている。この装置においては、触覚センサを用いて、はんだ付けすべきすみ肉溶接部の位置を検出する。制御装置が、触覚エレメントに対するすみ肉溶接部の検出された相対姿勢に依存して、レーザビームの作用点がすみ肉溶接部の所望の位置に来るように、レーザビームに対するアクチュエータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006056252号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
本発明においては、請求項1記載の構成を備えたセンサ装置と、請求項13に記載の構成を備えたロボットシステムとを開示する。従属請求項、以下の説明および添付図面から、本発明の有利または好適な実施形態が明らかである。
【0006】
本発明のセンサ装置は、基体ボディおよび対向ボディを備えている。対向ボディは基体ボディに対して相対的に可動に配置されている。有利には、対向ボディは基体ボディに直接結合されている。これに代えて、中間構造体を介して対向ボディと基体ボディとを結合することもできる。たとえば、対向ボディに力が作用している場合、対向ボディが、基体ボディに対して相対的に変位するように設けられている。かかる力は、たとえば、触覚ロボット用途においては、測定対象との接触によって、対向ボディに伝達されることができる。
【0007】
センサ装置は、センサ信号を出力するように構成された複数のセンサデバイスを備えている。センサ信号は、アナログまたはデジタル信号として実現することができる。各センサデバイスは、それぞれ少なくとも1つのセンサと、それぞれ少なくとも1つのターゲット領域とを有する。センサはそれぞれ、自己に割り当てられたターゲット領域を、特に非接触で検出するように構成されている。基体ボディおよび対向ボディは、それぞれ「ボディ」と称される。センサは、一方のボディに配置され、かつ、ターゲット領域は、他方のボディに配置されている。センサを対向ボディに配置し、かつ、ターゲット領域を基体ボディに配置することが可能である。しかし、ケーブルの設置等の理由により、または一般的に、センサ、特にいずれか複数のセンサ、特に全てのセンサを基体ボディに配置し、ターゲット領域、特にいずれか複数のターゲット領域、特に全てのターゲット領域を対向ボディに配置することが有利である。有利には、ターゲット領域、特にいずれか複数のターゲット領域、特に全てのターゲット領域は、パッシブのターゲット領域として構成されている。
【0008】
さらに、センサ装置は、処理装置も備えており、この処理装置は、有利には、デジタルデータ処理装置として構成されている。処理装置は、特に、対向ボディと基体ボディとの相対位置を求めるように、プログラム技術的および/または回路技術的に構成されている。
【0009】
本発明においては、処理装置が、相対位置を3つの並進自由度と3つの回転自由度とにおいて求めるように構成されている。有利には、並進自由度は、互いに直交に配置されている。特に、センサ装置は、6D(6次元)センサ装置として構成されている。特に、処理装置は、6つの自由度について座標を特定および/または出力するように構成されている。
【0010】
本発明の利点は、公知のセンサとは対照的に、本発明のセンサ装置が、基体ボディに対する対向ボディの相対位置を完全に把握するために必要な対向ボディの全ての次元を、基体ボディに対して相対的に求められることである。
【0011】
センサ装置は、特に有利には、触覚センサ装置として構成されており、ロボットシステムに適したもの、および/または、ロボットシステム用に構成されたものである。「触覚センサ装置」とは、有利には、測定対象または上記測定対象を検出するために当該測定対象と物理的に接触するセンサ装置をいう。ロボットシステムは、特に、ロボットとツールとを備えている。「ロボット」とは、有利には、ツールの操作を行うことができる全てのハンドリング装置をいう。たとえば、ロボットを直角座標ロボットとして、関節アームロボットとして、ピック・アンド・プレイス・ロボット等として構成することができる。最も簡単な実施形態においては、ロボットを直線軸または旋回軸として構成することもできる。
【0012】
触覚センサ装置は、基体ボディを備えており、基体ボディは、ロボットに結合可能であり、または、結合されている。特に、基体ボディは、ロボットに結合されるためのインタフェースを備えている。特に有利には、基体ボディは、ロボットに、特にロボットのロボットハンドに、固定的に結合されている。
【0013】
さらに、触覚センサ装置の対向ボディは、触覚ボディとして構成されており、触覚ボディは、ツールに結合可能である。特に、触覚ボディは、ツールに結合されるためのインタフェースを備えている。特に有利には、触覚ボディは、ツールに固定的に結合されている。
【0014】
本発明においてあり得る構造上の一構成においては、対向ボディおよび基体ボディは、それぞれ平板部分を有する。平板部分は、有利には、互いに向き合っている。平板部分は、相互に傾動可能、回転可能および変位可能に配置されている。かかる構成により、対向ボディと基体ボディとは、3つの並進自由度と3つの回転自由度とにおいて相互に相対的に移動することができる。
【0015】
特に有利であるのは、対向ボディが自動的に基体ボディに対して相対的に初期位置に配置されるように、対向ボディが、基体ボディに対して相対的に付勢されて配置されていることである。たとえば、センサ装置は、対向ボディを初期位置に復帰させるためのばね装置を備えている。特に、たとえば、測定対象によって対向ボディに力がかからないときには、対向ボディが自然に初期位置に復帰するように構成されている。かかる発展形態によって、対向ボディが未だ測定対象と接触していない限りにおいては、特に、ロボットシステムの制御装置において基体ボディに対する対向ボディの相対位置が分かることが保証される。
【0016】
処理装置は、較正を介して自由度を求めるように構成することができる。たとえば、多数の標本点を介して対向ボディをセンサ装置学習させることが可能である。これに代えて、標本点を有する表または他のデータ収集を記憶することも可能である。いずれの場合においても、たとえば、補間を介して自由度を、特に自由度の座標を、存在するデータに基づく補間によって求めることができる。
【0017】
本発明の代替的な一実施形態においては、3つの並進自由度および3つの回転自由度は、解析および/または数値計算を介して求められる。解析計算の場合には、センサ信号に依存して並進自由度および回転自由度を計算することができるように、センサ装置をモデリングする。
【0018】
本発明の有利な一実施形態においては、ターゲット領域は、それぞれプレーナ形の参照領域として、特に触覚ボディに設けられている。参照領域は、その面広がりによって、それぞれ一平面を定義する。これらの平面は、互いに独立した向きとなっており、特に全ての平面について、1つの平面は他の平面と1直線でしか交わらないということが適用される。有利には、可能なこの直線の全てが互いに独立している。
【0019】
各参照領域に対してセンサが割り当てられており、各センサは、距離センサとして構成されている。本発明の当該有利な実施形態においては、センサ装置が本構成において基体ボディに対する対向ボディの相対位置を完全に特定することができるように、6つの独立したセンサを用いて6つの自由度が求められる。
【0020】
有利には、センサは、誘導センサとして構成されている。有利には、触覚ボディの少なくとも一部または全部が金属により構成されている。参照領域を、この金属により構成された触覚ボディの領域として実現することができる。また、本発明の代替的な実施形態においては、センサを光学センサ、容量センサ等として構成することも可能である。
【0021】
特に有利には、測定原理は、非接触で実現される。
【0022】
特に有利なのは、基体ボディと対向ボディとの間の基準位置において、各センサの測定方向がそれぞれ、各割り当てられた参照領域に対して垂直であることである。本構成により、自由度の解析および/または数値計算が簡単になる。構造上、有利なのは、基準位置が上述の初期位置と一致することである。
【0023】
本発明においてあり得る一発展形態においては、2つずつの参照領域が1つの柱面屋根にまとめられている。各柱面屋根は、それぞれ1つの屋根線を有し、これらの屋根線は、基体ボディと対向ボディとの積層方向まわりの円上において、有利には互いに等間隔であり、および/または、120°の中間角をとる。これは、有利および/または例示的な構成に相当する。有利には、屋根線は1つの共通の平面内にある。特に、屋根線は、互いに共通の1点で交わる。本構成によっても、自由度の解析および/または数値計算が簡単になる。
【0024】
本発明の代替的な一実施形態においては、ターゲット領域は、磁性領域として構成されている。磁性領域は、有利には、それぞれ磁石として構成されており、特にネオジム磁石として構成されている。センサは、それぞれ磁界センサとして実現されている。特に有利には、磁界センサはホールセンサとして実現されている。本発明の有利な一発展形態においては、磁界センサはそれぞれ、磁界を3つ全ての空間方向において測定することができる3次元磁界センサとして構成されている。磁界センサは特に、磁界の強度および方向の双方を特定するように構成されている。
【0025】
本発明の有利な構造上の実現においては、第1のセンサデバイスが、3つの磁界センサを、特に3つの3次元磁界センサを備えている。さらに、第1のセンサデバイスは、第1の磁石、特にネオジム磁石を、上記3つの磁界センサによって検出される磁性領域として有する。たとえば、磁界センサは、互いに3角形の形状に、特に2等辺三角形の形状に配置されている。有利には、センサ装置が初期状況および/または基準位置にあるとき、この3角形によって定まる平面は、屋根線によって定まる平面に対して平行である。有利なのは、初期状況および/または基準位置において、磁性領域が積層方向に投影されたときに、3つの磁界センサの間、特に3つの磁界センサの中心、および/または、3角形の重心に来ることである。
【0026】
さらに、上述の有利な構造上の実現においては、センサ装置は、第2のセンサデバイスを備えており、第2のセンサデバイスは、少なくとも1つの磁界センサ、特に少なくとも1つの3次元磁界センサと、第2の磁性領域、特に第2の磁石、特に第2のネオジム磁石を、磁性領域として備えている。第1の磁石と第2の磁石とは、互いに離隔している。
【0027】
第1のセンサデバイスによって、たとえばクロス測位法を用いて、第1の磁石の位置を検出することができ、ひいては触覚ボディの位置を検出することができる。しかし、第1のセンサデバイスでは、6つ全ての自由度を特定することができない。特に、検出時には、上述の3角形に対して垂直かつ第1のセンサデバイスを貫いて延在する直線まわりの回転自由度は不明のままである。この最後の自由度を求めるためには、第2のセンサデバイスは、第1のセンサデバイスから離隔して配置されることによって、この回転自由度を検出するように構成されている。
【0028】
任意選択肢として、第2のセンサデバイスは、2つまたは3つの磁界センサを備えることができる。この構成においては、基体ボディと対向ボディとの相対位置の精度を向上することができる、冗長的な測定が達成される。
【0029】
本発明の他の1つの対象は、ロボットと、当該ロボットによって操作されるツールとを備えたロボットシステムに関するものである。ロボットシステムは、上記にて記載されたないしは先行の請求項のうちいずれか1項に記載の、特に触覚式のセンサ装置を備えており、当該触覚センサ装置は、ロボットとツールとの間に、特に直列に配置されている。特に、基体ボディおよび対向ボディ、特に触覚ボディは、ロボットとツールとの間に、特に直列に配置されている。
【0030】
本発明の可能な一実施形態においては、ツールは、プローブ先端部として構成されている。本発明の他の一実施形態においては、ツールは把持部として構成されている。測定対象を把持することによって基体ボディに対する把持部の相対姿勢が変化したときに、その偏差が触覚センサ装置によって検出され、ロボットシステムの制御装置または上記制御装置によってさらに処理することができるように、把持部は、触覚ボディに固定的に結合されている。
【0031】
以下の本発明の有利な実施例の記載と添付図面とから、本発明の他の特徴、利点および作用効果を導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施例としての触覚センサ装置を備えたロボットシステムの概略的なブロック図である。
図2】第1の実施例の触覚センサ装置の概略的な3次元図、側面図および平面図である。
図3】本発明の他の一実施例としての触覚センサ装置の概略的な平面図および概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の一実施例としてのロボットシステム1を示す概略図である。ロボットシステム1は、ロボット2を備えており、これは図示の実施例においては直角座標ロボットとして構成されている。直角座標ロボットに代えて、ロボット2を関節アームロボットまたは他のハンドリング装置として構成することも可能である。
【0034】
ロボット2は、ツール3を操作する。このツール3は、図示の実施例においては、2つの把持パッド5a,5bの間に測定対象6を保持する把持部4として構成されている。たとえば、ロボットシステム1は、ツール3を用いて、特に把持部4を用いて、大量の同種の物の中から測定対象6を取り出すように構成することができる。ロボット2とツール3との間には、特に触覚式であるセンサ装置7が配置されている。よって、ツール3は、触覚センサ装置7を介してロボット2によって支持される。特に、ロボット2と触覚センサ装置7とツール3とは、直列リンク系を構成する。
【0035】
触覚センサ装置7は、基体ボディ8と、対向ボディとしての触覚ボディ9とを備えている。基体ボディ8は、ロボット2に、特にロボット2の最後の軸に、固定的に結合されている。それに対して、触覚ボディ9は、ツール3に、特に把持部4に、固定的に結合されている。
【0036】
基体ボディ8と触覚ボディ9とは、互いに自己保持するように配置されているが、触覚ボディ9を基体ボディ8に対して傾動、回転および移動させることができる。たとえば、触覚ボディ9が自動的に基体ボディ8に対して初期位置に配置されるように、触覚ボディ9は基体ボディ8に対して付勢されて配置されている。ツール3、特に把持部4が測定対象6を正確に取り上げることができず、特に力無しで取り上げることができないため、たとえば測定対象6を把持しているときにツール3に力が加わると、この力は、ツール3から触覚ボディ9へ伝達され、触覚ボディ9は、ツール3と共に、基体ボディ8およびロボット2に対する相対姿勢を変えてしまう。
【0037】
触覚センサ装置7は、複数のセンサデバイス10を備えており、これについては、以下の図面に詳細に記載されている。図2a,図2b,図2cおよび図3a,図3bの実施例においては、全ての各センサデバイス10がそれぞれ少なくとも1つのセンサ13と少なくとも1つのターゲット領域14とを備えており、これらの図に示されている実施例においては、センサ13は、それぞれ基体ボディ8に配置されており、かつ、ターゲット領域14は、触覚ボディ9に配置されている。センサ13はそれぞれ、割り当てられたターゲット領域14を検出するように構成されている。特に、ターゲット領域14は、パッシブ領域である。センサ13および/またはセンサデバイス10は、センサ信号を生成し、このセンサ信号は、処理装置11へ伝送される。処理装置11はたとえば、マイクロプロセッサとして、または、他のデジタルもしくはアナログデータ処理装置として実現されている。処理装置11は、センサデバイス10のセンサ信号から、触覚ボディ9と基体ボディ8との相対位置を求めるように構成されている。その際には、処理装置11は、3つの並進自由度X,Y,Zと3つの回転自由度R1,R2,R3とにおいて上述の相対位置を求める。回転自由度R1,R2,R3は、特に、並進自由度X,Y,Zまわりの回転角とされる。並進自由度X,Y,Zは、特に直交座標系を成す。したがって、処理装置11により、X軸上の座標と、X軸まわりの回転R1と、Y軸上の座標と、Y軸まわりの回転R2と、Z軸上の座標と、Z軸まわりの回転R3とが求められる。
【0038】
3つの並進自由度X,Y,Zと3つの回転自由度R1,R2,R3とを求めることにより、触覚ボディ9と基体ボディ8との相対位置が完全に取得される。任意選択肢として、この相対位置をロボットシステム1の制御装置12へ伝送し、制御装置12が、この相対位置を実際量として制御回路において、特に、開ループ制御回路または閉ループ制御回路において使用するように構成することができる。これに代えて、またはこれと共に、相対位置を記録することもできる。
【0039】
図2a,図2b,図2cは、第1の実施形態の触覚センサ装置7を示しており、図2aは、概略的な3次元図であり、図2bは、側面図であり、図2cは、基体ボディ8と触覚ボディ9との積層方向において上から見た平面図である。特に図2aを見ると、基体ボディ8も触覚ボディ9もそれぞれ、平板部分として形成されており、これらの平板部分は、初期位置または上記初期位置において互いに平行に配置されているのが分かる。
【0040】
触覚センサ装置7は、6つのセンサデバイス10を備えており、各センサデバイス10はいずれも、センサ13と、当該センサ13に割り当てられたターゲット領域14とを備えている。各センサ13はそれぞれ、誘導距離センサとして構成されている。ターゲット領域8はそれぞれ、触覚ボディ9上のプレーナ形および/または平坦な参照領域として構成されている。触覚ボディ9は特に、誘導センサ13によってターゲット領域14までの距離を検出することができるように、金属部品として構成されている。センサデバイス10および/またはターゲット領域14は、それぞれ相互に対を成して配置されており、ターゲット領域14は、対ごとに柱面15を成す。柱面15は、屋根線16を決定し、3対の屋根線16は1つの共通の中心点で交差する。柱面15は、積層方向まわりの回転方向において、たとえば120°ずれて配置されている。上記にて説明したようなターゲット領域14の構造的選択により、ターゲット領域14によって、互いに独立した6つの平面が定義される。特にいずれの平面についても、当該平面がいずれの任意の他の平面とも1直線でしか交わらないということが適用される。このことによって、6つのセンサ13により、6つの互いに独立した方向に測定が行われる。
【0041】
図2bは、触覚センサ装置7の側面図であり、同図でも、ターゲット領域14が柱面15の屋根面として配置されているのが分かる。柱面15は、120°の屋根角をとる。これに代えて、120°の屋根角を選択することも可能である。センサ13は、それぞれ測定方向17を有し、この測定方向17は、触覚センサ装置の初期位置においては、ターゲット領域13に対して垂直の向きである。
【0042】
図2cは、触覚センサ装置の概略的な平面図であり、同図は、上記の態様の幾何学的関係を再度示している。
【0043】
処理装置11は、たとえば較正情報を当該処理装置11に記憶しておくことにより、プログラム技術および/または回路技術によってセンサ13のセンサ信号を6つの自由度の相対位置に変換することができる。また、センサ13のセンサ信号に基づいて6つの自由度の相対位置を解析計算または数値計算することができるように、構造上の構成を数学的モデルで表すことも可能である。
【0044】
図3a,図3bは、本発明の第2の実施例としての触覚センサ装置7の平面図ないしは側面図である。本発明の第2の実施例においては、触覚センサ装置7は2つのセンサデバイスを備えており、第1のセンサデバイス20は3つのセンサ13と1つのターゲット領域14とを有し、第2のセンサデバイス21は1つのセンサ13と1つのターゲット領域14とを有する。第1のセンサデバイス20と第2のセンサデバイス21とは、互いに離隔して配置されている。かかる配置によって測定精度が向上し、かつ、ターゲット領域14が相互に妨害しないことが保証される。
【0045】
センサ13は、第1のセンサデバイス20および第2のセンサデバイス21においてそれぞれ、3次元の磁界センサとして、特に3次元ホールセンサとして構成されている。ターゲット領域14は、磁石として、本実施例においてはネオジム磁石として、構成されている。第1のセンサデバイス20の3つのセンサ13は、3角形に配置されている。同図の上方からの平面図においては、ターゲット領域14は、触覚センサ装置7の初期位置では、センサ13間に位置している。センサ13は、基体ボディ8に固定的に結合されており、ターゲット領域14は触覚ボディ9に固定的に結合されている。かかる3つのセンサ13の配置により、ネオジム磁石として構成されたターゲット領域14の位置を検出することができる。しかし、図示の配置においては、積層方向に対して平行な向きであってターゲット領域14を貫いて延在する直線まわりの、基体ボディ8に対する触覚ボディ9の相対的な旋回または回転を検出することはできない。それゆえ、第2のセンサデバイス21が、この‐「ロール運動」とも称される相対運動‐を検出する役割を果たす。図示の実施例においては、第1のセンサデバイス20の1つのセンサ13と第2のセンサデバイス21のセンサ13とは、1つの共通の線上に位置し、かつ、第1のセンサデバイス20の他の2つのセンサ13は、当該線の両側に分布している。図3bは、概略的な側面図であり、ターゲット領域14の磁界18を示している。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b