特許第6906514号(P6906514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906514
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】アイソレーティング・デカップラ
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/36 20060101AFI20210708BHJP
   F16D 41/20 20060101ALI20210708BHJP
   F16F 15/12 20060101ALI20210708BHJP
   F16F 15/126 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   F16H55/36 H
   F16D41/20 A
   F16F15/12 S
   F16F15/126 B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-522573(P2018-522573)
(86)(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公表番号】特表2018-533705(P2018-533705A)
(43)【公表日】2018年11月15日
(86)【国際出願番号】US2016058758
(87)【国際公開番号】WO2017078994
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年5月11日
(31)【優先権主張番号】14/930,278
(32)【優先日】2015年11月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ディーン
(72)【発明者】
【氏名】サーク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ランゴースト,ベンジャミン アール.
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−516705(JP,A)
【文献】 特表2001−523325(JP,A)
【文献】 特表2005−522645(JP,A)
【文献】 特開2001−159430(JP,A)
【文献】 特開昭60−227026(JP,A)
【文献】 特開2003−301860(JP,A)
【文献】 実開昭59−101018(JP,U)
【文献】 特開平5−180287(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0015768(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/36
F16D 41/20
F16F 15/12
F16F 15/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに連結するためのハブ(11)と、
前記ハブに軸支されるプーリ(16)とを備え、前記プーリはベルト係合面を有し、
前記プーリの表面に設けられた環状プーリ部材(13)と、
クラッチ部(22)と変化部(23)と可変直径部分(24)とを有するコンポジットスプリング(12)とを備え、
負荷軽減状態における前記変化部は、前記クラッチ部から前記コンポジットスプリングの一端(25)へ直径が増加する螺旋形状を有し、
前記コンポジットスプリングは前記ハブと前記プーリの間に係合し、前記クラッチ部の直径は、前記環状プーリ部材を介する、前記プーリとの負荷方向への摩擦係合により負荷方向に縮小可能であり、
前記クラッチ部の前記摩擦係合は負荷軽減方向へ前記プーリから徐々に解放可能であり、
前記環状プーリ部材は、前記環状プーリ部材と前記クラッチ部の間の摩擦接触が緩まるときにスリップが始まるときのトルク限界が10〜20N・mである耐摩擦材料で成形され、
前記可変直径部分はトルク負荷に従って変化する直径を有し、
前記可変直径部分の内側には、前記環状プーリ部材が存在せず、
ダンピング部材(75)を介して前記ハブに係合する慣性部材(74)を備える
アイソレーティング・デカップラ。
【請求項2】
前記ダンピング部材がエラストマ材料を備える請求項1に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項3】
前記プーリがブッシュにおいて前記ハブに軸支される請求項1に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項4】
前記クラッチ部が巻取り方向に負荷をかけられる請求項1に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項5】
前記コンポジットスプリングが捻りスプリングである請求項1に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項6】
前記プーリがマルチリブドベルト係合面を備える請求項1に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項7】
駆動シャフトに連結するためのハブと、
前記ハブに軸支されるプーリとを備え、前記プーリはベルト係合面を有し、
前記プーリの表面に設けられた環状プーリ部材(13)と、
クラッチ部と変化部と可変直径部分とを有するコンポジットスプリングとを備え、
負荷軽減状態における前記変化部は、前記クラッチ部から前記コンポジットスプリングの一端(25)へ直径が増加する螺旋形状を有し、
前記コンポジットスプリングは前記ハブと前記プーリの間に係合し、前記クラッチ部は、前記環状プーリ部材を介する、前記プーリとの負荷方向への摩擦係合により負荷方向に縮径可能であり、
前記クラッチ部の前記摩擦係合は負荷軽減方向へ前記プーリから徐々に解放可能であり、
前記環状プーリ部材は、前記環状プーリ部材と前記クラッチ部の間の摩擦接触が緩まるときにスリップが始まるときのトルク限界が10〜20N・mである耐摩擦材料で成形され、
前記可変直径部分はトルク負荷に従って変化する直径を有し、
前記可変直径部分の内側には、前記環状プーリ部材が存在せず、
エラストマのダンピング部材を介して前記ハブに係合する慣性部材を備える
アイソレーティング・デカップラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイソレーティング・デカップラに関し、特にクラッチ部と変化部と可変直径部分とを有するコンポジットスプリングを有するアイソレーティング・デカップラに関する。
【背景技術】
【0002】
旅客用車両のアプリケーションに用いられるディーゼルエンジンは、燃費が良いという利点のため、増加している。さらに、ガソリンエンジンは燃費を改善するために圧縮比を増加させている。この結果、ディーゼルおよびガソリンエンジンのアクセサリ駆動システムは、エンジンにおける上述した変化による、クランクシャフトからのより大きな振動に打ち勝たなければならない。
【0003】
増加したクランクシャフト振動に加えて、高い加減速比および高いオルタネータの慣性のため、エンジンアクセサリ駆動システムはしばしば、ベルトスリップによるベルトの軋み音を経験する。これは、ベルトの作動寿命も短縮させる。
【0004】
クランクシャフトのアイソレータ・デカップラおよびオルタネータのデカップラ・アイソレータは、エンジン作動回転範囲における振動を除去するため、およびベルトの軋みを制御するため、高い角振動を伴うエンジンに広く用いられてきた。
【0005】
この技術の代表は米国特許第7,591,357号明細書であり、これはエンジン駆動シャフトとサーペインベルトの間で回転動作を伝達するために設けられたデカップラを開示する。デカップラは、相対回転移動のために、駆動部材に対して同軸的に取付けられた回転駆動部材と回転被駆動部材を有する。デカップリングのアセンブリは、駆動部材と被駆動部材の間に延びる。デカップリングのアセンブリは、第1の結合モードで、駆動部材が被駆動部材に対して相対的に回転するとき、駆動および被駆動部材に選択的に連結する。デカップリング・アセンブリは、第1のモードとは逆の第2のモードで、駆動部材が被駆動部材に対して相対的に回転するとき、被駆動部材から駆動部材を解放する。捻り振動ダンパーが駆動および被駆動部材とともに回転して、エンジンにより生じる振動の一部を相殺するために取付けられる。
【0006】
この技術の代表は2013年7月29日に出願された米国特許出願第13/952,886号であり、これは、スプリングキャリアに係合するとともに、捻りスプリングとは反対方向の負荷方向においてプーリに摩擦係合可能な捻りスプリングの径方向内側に配置されたラップスプリングを備え、ラップスプリングがハブに係合可能であり、これによりプーリとの摩擦係合が解放されるアイソレーティング・デカップラを開示する。
【0007】
必要なものはクラッチ部と変化部と可変直径部分とを有するコンポジットスプリングを有するアイソレーティング・デカップラである。本発明はこの必要性に合致する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の主な特徴は、クラッチ部と変化部と可変直径部分とを有するコンポジットスプリングを有するアイソレーティング・デカップラである。
【0009】
本発明の他の特徴は、本発明の次の記載と添付した図面により示され、明らかになる。
【0010】
本発明は、シャフトに連結するためのハブと、ハブに軸支されるプーリとを備え、プーリがベルト係合面を有し、クラッチ部と変化部と可変直径部分とを有するコンポジットスプリングを備え、コンポジットスプリングがハブとプーリの間に係合し、クラッチ部の直径がプーリとの負荷方向への摩擦係合により負荷方向に縮小可能であり、クラッチ部の摩擦係合が負荷軽減方向へプーリから徐々に解放可能であり、可変直径部分がトルク負荷に従って変化する直径を有し、ダンピング部材を介してハブに係合する慣性部材を備えるアイソレーティング・デカップラである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】正面斜視図である。
図2】断面図である。
図3】分解図である。
図4】分解図である。
図5】コンポジットスプリングの側面図である。
図6】コンポジットスプリングの斜視図である。
図7】エンドキャップの詳細図である。
図8図2の詳細図である。
図9】プーリとクランクシャフトの間の角変位のプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はテンショナの正面斜視図である。本発明装置100は、バンパーストッパのない無限オーバーラン機能とともに、アイソレーション・減衰デカップリングの特性を有する。これは、スプリングキャリアによって結合されるラップスプリングと捻りスプリングの組合せの代りに、1つの多目的コンポジットスプリングを用いることによって達成される。
【0013】
図2は断面図である。アイソレーティング・デカップラ100は、クランクシャフト・ハブエンドキャップ110と、単一のコンポジットスプリング12と、プーリ部材13と、Oリング保持ワッシャ14と、Oリング15と、プーリ16と、ブッシュ/ベアリング17、18と、ハブ11とを備える。エンドキャップ110はネジ付き固定具111によってハブ11に固定される。
【0014】
本発明装置はさらに、ゴム製クランクシャフト振動ダンパー75と慣性質量ダンパー74を備える。ダンパー75と質量74はエンドキャップ110にプレスフィットされる。質量ダンパー74は捻りスプリング12の遮断部分と協働して作用し、クランクシャフトCSからプーリ16に伝達されるクランクシャフトの角振動の振幅を減衰させる。本発明装置の遮断効果は、プーリ16が例えばシリンダの点火によってクランクシャフト・ハブ11よりも小さい角振動を経験するように、クランクシャフトの角振動の振幅を減少させる。これは延いてはパワーステアリング、エアコンディショナ、オルタネータのようなベルト駆動アクセサリにおける角振動を減少させ、これにより構成要素(図示せず)の寿命を延長させる。
【0015】
図5はコンポジットスプリングの側面図である。コンポジットスプリング12は、よりコンパクトな収容のために平面210であってもよい一端21を備える。コンポジットスプリング12はまた、プーリ部材13の周りにラップスプリングクラッチ機能をもたらすクラッチ部22を備える。コンポジットスプリングの変化部23は、コイルの直径を変えることになるかもしれない。変化部23は、負荷軽減状態においてクラッチ部22からタブ25へ直径が増加する螺旋形状を有する。変化部23は単一のコイル、多重コイル、あるいはコイルの一部であってもよい。コンポジットスプリングの可変直径部分24は、トルクの変化に応じて、スプリング(21,25)の2つの端部の角変位を通してその直径を変化させる遮断機能をもたらす。直径はトルク負荷に応じて増減するかもしれない。コンポジットスプリング12の一端におけるタブ25は、エンドキャップ110のスロット41に係合するために用いられる。部分24は負荷軽減状態において螺旋形状を有する。
【0016】
図3図4はそれぞれ分解図である。コンポジットスプリング12はエンドキャップ110内のポケット112に位置する。コンポジットスプリング12はタブ25によってスロット41に係合する。タブ25はエンドキャップにおいてスロット41に係合し、ハブ11の時計方向の回転がタブ25を把持して、これによりコンポジットスプリング12がよりきつく巻きつき、これによりクラッチ部22の直径を減少させる。タブ25は、両方向において(すなわち時計方向CWと反時計方向CCW)コンポジットスプリング12からエンドキャップ110へのトルクの伝達を許容する形状である限り、他の係合形状に置き換えることができる。
【0017】
一方、コンポジットスプリング12はOリング保持ワッシャ14に係合する平面210を有する。コンポジットスプリング12のクラッチ部22は、コンポジットスプリングの内面120の、プーリ16の環状プーリ部13に対する摩擦係合を介してプーリ16に連結される。部材13は、顕著に腐食することなく、あるいは表面摩擦特性が変化することなく、繰り返されるスリップに耐えるために、硬く、丈夫で耐摩耗性の材料を有する。部材13は工具鋼であってもよいが、通常の合金鋼、複合的なベアリングスリーブ、ブッシュ材料、工学的な耐摩耗性ポリマーのような他の材料もまた適切である。プーリ16は同じ材料から成形されてもよいが、これに替えて、耐摩耗性材料の部材13を成形し、プレスフィット等によってプーリ16に強固に組み付けることも、より安価である。プーリ16は合成樹脂のような耐久性の比較的小さい材料から成形されてもよい。
【0018】
コンポジットスプリング12のクラッチ部22の1以上のコイルが部材13の周りに巻きつき、スプリング12が周りにきつく巻き付けられるとき(長手方向におけるクランクシャフトの時計方向回転の通常の作用の場合のように)、コンポジットスプリングは部材13を摩擦的に密に把持し、クランクシャフトのトルクの全てを部材13に伝達し、プーリ16に伝達し、エンジン(図示せず)におけるベルト駆動アクセサリに伝達する。
【0019】
最小トルクでは、コンポジットスプリングの部分24は自由状態位置51にある。図8参照。クランクシャフトが回転して、コンポジットスプリングとプーリに増加レベルのトルクを付与するとき、コンポジットスプリング12の可変直径部分24はトルクを受けて捻れる。これは、可変直径部分のコイル径を僅かに縮小させる。負荷位置52への変形を参照。最大トルクでは、可変直径部分24の内径は、プーリの摩擦面すなわちプーリ部材13の外径53に干渉しない。クラッチ部22は部材13に摩擦係合した状態で示される。これにより、ハブ11からエンドキャップ110とスプリング12とプーリ16へトルクが伝達する。
【0020】
代替的な実施形態において、クラッチ部22とプーリ部材13の境界部分は、数百万回転に対して、比較的安定したオーバーラントルクリミット特性で耐えるために、滑りやすくされる。潤滑を必要とする実施形態では、コンポジットスプリングのポケット112の全体は潤滑油で満たされ、潤滑剤が時間とともに摩擦面から遠心力によって引き離されることが防止される。コンポジットスプリングのポケット112の全体が潤滑油によって満たされる実施形態は、潤滑油を保持するためにプーリ16とエンドキャップ110の間にOリングシール15を備える。工業的な接着シールが、コンポジットスプリングのエンドタブ25に係合するスロット41を覆うためにエンドキャップ110の外面に用いられる。ワッシャ14はOリングポケットの一部を構成し、また、コンポジットスプリングとプーリの相対回転が生じる、スプリングの平面210とプーリの間の低摩擦境界面となる。
【0021】
図7はエンドキャップの詳細図である。コンポジットスプリング端部25はエンドキャップ110のスロット41内に挿入される。スプリングコイルの回転方向においてコイルの周りに約90°、1以上のタブ機構63、64がコンポジットスプリング12の端部21の動きをさらに規制する。エンドキャップピースとコンポジットスプリング端部21の間の複数個所の接触は、クランクシャフトの中心軸、延いてはハブ11の回転軸の周りにコンポジットスプリングにトルクを付与する。複数個所の接触は、十分な力でコンポジットスプリングの端部を把持し、ポケット112内でコンポジットスプリングを変位させる横方向の負荷を伝達することなく、適切にトルクを伝達する。
【0022】
エンドキャップ110は通常のスタンピング方法を用いて比較的簡単に製造する。エンドキャップ110の内側リム62はOリングシールの一部を構成する。Oリング15参照。一方、他の実施形態はOリングシール15の必要性がないかもしれない。
【0023】
角振動の遮断に加えて、本発明はクランクシャフトからプーリへの迅速な減速作用の伝達を制限するデカップリング作用を特徴とする。クランクシャフト・ハブの迅速な減速の場合(例えば変速機シフトのとき)、プーリとベルト駆動システムの慣性は時計回りの慣性トルクをスリーブ13とコンポジットスプリング12に与える。このトルクは時計方向に伝達され、これにより、コンポジットスプリング12は巻き戻され、クラッチ部22は直径を僅かに拡大させる。これは、部材13とコンポジットスプリングのクラッチ部22の間の摩擦接触を緩める。
【0024】
プーリのトルクが発達し、境界面が緩み続けると、オーバーラントルクの制限レベルは、部材13がコンポジットスプリング12の内側でスリップするよりも上の値に達する。図9はプーリとクランクシャフトの間の角変位をプロットしたもので、オーバーランの事象は強調されている。この特殊な例では、オーバーランの事象はエンジンの始動の工程の間の高いクランクシャフトの減速の結果である。プロットはエンジンの始動動作(時間軸で2.75秒付近)と、約9秒間のアイドリングと、12秒付近におけるエンジン停止を示している。オーバーランの事象が起きなかったら、アイドリングにおける角変位は約+22°であったであろう。3.25秒付近でのオーバーランの事象は、スプリング12を介してクランクシャフトにラッチバックする前に、プーリを約50°だけクランクシャフトの前方へ回転させた。4−12秒からの期間では、プーリとクランクシャフトはコンポジットスプリング12を介して連結され、スプリングを介して伝達されるトルクは、約+22°の偏角を引き起こしている。50°のオーバーラン(負の変位)とコンポジットスプリングの22°の偏角(正の変位)の組合せは、約−28°の偏角となる。エンジンの停止(時間軸において12秒付近)において、トルクがコンポジットスプリングを介してクランクシャフトからプーリへ伝達されないので、コンポジットスプリングの22°の偏角が除かれる。最終的な変位の値は、始動時に発生したオーバーランの50°だけである。
【0025】
コンポジットスプリングが負荷をかけられ、負荷を除去されると、約10N*mのダンピングが観察される。このダンピングの値は、スプリングが負荷をかけられていようとなかろうと、特定のコンポジットスプリングの変形での動的トルクの差として計算される。約15N*mのオーバーラントルクは、反時計方向のトルクが作用し、除去される、ヒステリシスループを伴って観察される。反時計方向のトルクの後、特定のオーバーラントルクにおいて、時計方向のトルクが再び作用し、変位が生じる。100°の相対回転において、トルクの値は、反時計方向のトルクが作用しているときは約−40N*mであり、反時計方向のトルクが除去されているときは約−30N*mである。これがダンピングの10N*mの計算の根拠である。10N*mのダンピングは、旅客用車両のアプリケーションでは利点であるが、異なるエンジンの大きさやアクセサリベルト設計を含む他の輸送機器のアプリケーションでは他のダンピングの値が望ましいかもしれない。
【0026】
スリップが始まるオーバーラントルク限界は比較的小さく、10−20N*mであり、少量のオーバーラン慣性がデカップリング作用を引き起こす。部材13がコンポジットスプリングクラッチ部22内でスリップするので、オーバーラントルク限界は、プーリ16に抵抗として作用する部材13へコンポジットスプリングから摩擦によって伝達され続ける。プーリがクランクシャフトとは独立に回転するときに作用する抵抗トルクは、「減衰デカップリング」と呼ばれる。抵抗トルクはシステムの減衰をもたらし、早い反応から低レベルのトルク変化(例えば10N*mより小さい)までシステムを保護する。オーバーラントルク限界は計算され、コンポジットスプリングと部材が、種々のエンジンの適切なダンピングをもたらすためのオーバーラントルク限界を調節するために、特定のエンジントルク特性とプーリ形状のために設計される。
【0027】
一例として、外径が78.1mmの部材13と内径が77.2mmのコンポジットスプリングのクラッチ部22の場合、部材13の周囲にコンポジットスプリングを配置するために解消しなければならない0.9mmの直径の干渉がある。部材13にグリース潤滑油を用いて組み付けるとき、そのアセンブリは次のトルク特性を有する。すなわち、ハブ11が固定状態に保持され、プーリ16が時計方向に回転されるとき、これは、ハブ11に対してデカップルし、回転するために約15N*mのオーバーラントルクを必要とする。いったんデカップルすると、プーリ16は角変位に対して制限なく時計方向に回転し、15N*mのオーバーラントルクが相対回転のために継続的に要求される。このトルクの値は「オーバーラントルク限界」と呼ばれる。作用するトルクレベルがオーバーラントルク限界よりも低いとき、クラッチ部22のトルクは、コンポジットスプリング12を巻き戻して直径を大きくさせるのに十分なほど大きくはない。したがって、クラッチ部22は部材13の表面120の摩擦グリップによりロック状態に維持される。プーリ16が固定状態に保持され、ハブ11が時計方向に回転されるとき、クラッチ部22がスリップしたり解放することなく、150N*mよりも大きいトルクがコンポジットスプリングを介してハブからプーリへ伝達される。このトルクの値は「グリッピングトルク」と呼ばれる。
【0028】
これらのオーバーラントルク限界とグリッピングトルクの値は車両のアクセサリベルト駆動のアプリケーションにとって適当である。例えば、クランクシャフトがアクセサリベルトシステム(ABDS)を駆動する場合、100N*m以上がクランクシャフトによってプーリに時計方向に伝達される。クランクシャフトがすばやく減速し、アクセサリベルト駆動システムの慣性がプーリをクランクシャフトよりも前方にオーバーランさせるとき、エンジンの始動、停止、および変速機シフトのような著しいクランクシャフトの減速のときにオーバーラン事象が発生することを保証するためには、10−20N*mくらいのオーバーラントルク限界値が適当である。
【0029】
相対的に低い値のオーバーラントルク限界は、オーバーランがより頻繁に、また僅かな減速時に発生する結果となる。相対的に高い値のオーバーラントルク限界は、オーバーランが頻繁ではなく、また著しい減速時では発生しない結果となる。最適な値のオーバーラントルク限界は、ベルト駆動アクセサリの特定のエンジンおよび設計に依る。あるアプリケーションは10N*mよりも低いレベルの最適オーバーラントルク限界を示すかもしれず、他のアプリケーションは20N*mを越えた最適オーバーラントルク限界を示すかもしれない。
【0030】
アイソレーティング・デカップラは、シャフトに連結するためのハブ11と、ハブに軸支されるプーリ16とを備え、プーリがベルト係合面を有し、クラッチ部22と変化部23と可変直径部分24とを有するコンポジットスプリング12を備え、コンポジットスプリングがハブとプーリの間に係合し、クラッチ部の直径がプーリとの負荷方向への摩擦係合により負荷方向に縮小可能であり、クラッチ部の摩擦係合が負荷軽減方向へプーリから徐々に解放可能であり、可変直径部分がトルク負荷に従って変化する直径を有し、ダンピング部材75を介してハブに係合する慣性部材74を備える。
【0031】
本発明の1つの形態が説明されたが、当業者がここに記載された発明の精神と範囲から逸脱することなく、構成と部分の関係と方法において変形を施すことは自明である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9