特許第6906517号(P6906517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6906517光ファイバーケーブルバッファチューブのための高弾性率オレフィン化合物
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  • 特許6906517-光ファイバーケーブルバッファチューブのための高弾性率オレフィン化合物 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906517
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】光ファイバーケーブルバッファチューブのための高弾性率オレフィン化合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20210708BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20210708BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20210708BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20210708BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08L23/06
   C08L23/10
   C08L23/26
   C08L51/06
   G02B6/44 381
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-526230(P2018-526230)
(86)(22)【出願日】2016年12月6日
(65)【公表番号】特表2019-501246(P2019-501246A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】US2016065109
(87)【国際公開番号】WO2017100175
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2019年11月27日
(31)【優先権主張番号】62/265,735
(32)【優先日】2015年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】カール・エム・セブン
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・エセギエ
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−501259(JP,A)
【文献】 特表2006−502455(JP,A)
【文献】 特開2000−344968(JP,A)
【文献】 特開2008−286942(JP,A)
【文献】 特表2009−522408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の重量に基づく重量パーセント(重量%)で、
(A)22〜49%のポリプロピレン(PP)と、
(B)50〜65%の高密度ポリエチレン(HDPE)であって、二峰性HDPE(b−HDPE)である高密度ポリエチレン(HDPE)と、
(C)7〜12%の相溶化剤であって、前記相溶化剤の重量に基づく重量%で、
(1)30〜90%の、エチレン−プロピレン(EP)コポリマー、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、及びEP−iPPジブロックポリマーを含むオレフィンブロック複合体、ならびに
(2)10〜70%の無水マレイン酸グラフト化HDPE(MAH−g−HDPE)、を含む、相溶化剤と、
(D)0.05〜5.0%の核形成剤と、を含む、組成物であって、
充填剤を含まず、添加剤の含有量が0.46%以下である、組成物
【請求項2】
前記PPが、高結晶性ポリプロピレンであり、メルトフローレート(MFR)が、(≦)12g/10分(230℃/2.16kg)以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記核形成剤が、NA−11、HPN−20E、タルク、及び炭酸カルシウムのうちの少なくとも1つである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
記核形成剤が、前記組成物の総重量に基づいて1重量%未満の量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
チューブを作製する方法であって、
(I)混合物の重量に基づく重量パーセント(重量%)で、
(A)22〜49%のポリプロピレン(PP)と、
(B)50〜65%の高密度ポリエチレン(HDPE)であって、二峰性HDPE(b−HDPE)である高密度ポリエチレン(HDPE)と、
(C)7〜12%の相溶化剤であって、前記相溶化剤の重量に基づく重量%で、
(1)30〜90%の、エチレン−プロピレン(EP)コポリマー、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、及びEP−iPPジブロックポリマーを含むオレフィンブロック複合体、ならびに
(2)10〜70%の無水マレイン酸グラフト化HDPE(MAH−g−HDPE)、を含む、相溶化剤と、
(D)0.05〜5.0%の核形成剤と、を配合して混合物を調製するステップであって、前記混合物は充填剤を含まず、添加剤の含有量が0.46%以下である、ステップと、
(II)()の混合物をチューブの形状に押出すステップと、を含む、方法。
【請求項6】
前記配合が、溶融配合である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記PPが、(≦)12g/10分(230℃/2.16kg)のMFRを有する高結晶性PPである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記核形成剤が、NA−11、HPN−20E、タルク、及び炭酸カルシウムのうちの少なくとも1種である、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
湿式バッファチューブでは、光ファイバーケーブル中の光ファイバーが、機械的保護を提供し、かつ湿気侵入に対する障壁として機能するゲル充填化合物中に懸濁されている。しかしながら、ゲルまたはグリースは、経時的にポリマーバッファチューブ材料中に吸収され、それは、弾性率の損失を引き起こし、所望の機械的保護を提供するその能力を低下させる。バッファチューブゲルへの曝露後のポリマー弾性率の保持は、ファイバーに対する機械的応力を最小化するための重要なパラメーターである。
【発明の概要】
【0002】
一実施形態では、本発明は、組成物の重量に基づく重量パーセント(重量%)で、
(A)22〜49%のポリプロピレン(PP)と、
(B)50〜65%の高密度ポリエチレン(HDPE)と、
(C)7〜12%の相溶化剤であって、相溶化剤の重量に基づく重量%で、
(1)30〜90%の、エチレン−プロピレン(EP)コポリマー、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、及びEP−iPPジブロックポリマーを含むか、から本質的になるか、またはからなるオレフィンブロック複合体、ならびに
(2)10〜70%の無水マレイン酸グラフト化HDPE(MAH−g−HDPE)、を含む、相溶化剤と、
(D)0.05〜5.0%の核形成剤と、を含むか、から本質的になるか、またはからなる、組成物である。
【0003】
一実施形態では、HDPEは二峰性HDPE(b−HDPE)である。一実施形態では、組成物は充填剤及び添加剤のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0004】
一実施形態では、本発明は、チューブを作製する方法であって、その方法は、
(I)
(A)22〜49%のポリプロピレン(PP)と、
(B)50〜65%の高密度ポリエチレン(HDPE)と、
(C)7〜12%の相溶化剤であって、相溶化剤の重量に基づく重量%で、
(1)30〜90%の、エチレン−プロピレン(EP)コポリマー、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、及びEP−iPPジブロックポリマーを含むか、から本質的になるか、またはからなるオレフィンブロック複合体、ならびに
(2)10〜70%の無水マレイン酸グラフト化HDPE(MAH−g−HDPE)、を含む、相溶化剤と、
(D)0.05〜5.0%の核形成剤と、を配合して、
均一混合物を形成するステップと、
(II)(a)の混合物をチューブの形状に押出すステップと、を含む。
【0005】
一実施形態では、配合は溶融混合条件下で行う。一実施形態では、核形成剤及び充填剤のうちの少なくとも1つもまた配合されて均一な混合物を形成する。一実施形態では、HDPEは二峰性HDPE(b−HDPE)である。
【0006】
一実施形態では、本発明は、上記の方法実施形態のいずれかによって作製されるチューブである。一実施形態では、チューブは光ファイバーケーブルのためのバッファチューブである。一実施形態では、本発明はバッファチューブを含む光ファイバーケーブルである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】比較例CE3、9〜10、及び13、ならびに発明例IE2からの試料に関する190℃での溶融強度曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
米国特許実務の目的のために、特に、定義の開示(本開示において具体的に提供されるいかなる定義とも矛盾しない程度で)及び当技術分野における一般知識に関して、参照されるいずれの特許、特許出願、または特許公開の内容も、それらの全体が参照により組み込まれる(またはその同等なUSバージョンがそのように参照により組み込まれる)。
【0009】
本明細書で開示される数値範囲は、下限値及び上限値からのすべての値を含み、かつ下限値及び上限値を含む。明示的な値(例えば、1もしくは2、または3〜5、または6、または7)を含む範囲については、任意の2つの明示的な値の間のいかなる部分範囲も含まれる(例えば、1〜2、2〜6、2.5〜5.5、5〜7、3〜7、5〜6等)。
【0010】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」、及びそれらの派生語は、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を、同じものが具体的に開示されているかいないかにかかわらず、除外することを意図しない。一切の疑義を避けるため、用語「含む(comprising)」を用いて特許請求されるすべての組成物は、任意の追加の添加剤、助剤、または化合物を、ポリマー性であるかそうでないかにかかわらず、相反する言及がされない限り含み得る。対照的に、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、実施可能性に対して本質的でないものを除いて、次に続く任意の列挙の範囲から、一切の他の成分、ステップ、または手順を除外する。用語「からなる(consisting of)」は、具体的に描写または記載されていない成分、ステップまたは手順を除外する。別段の記載がない限り、用語「または」は、列挙されているメンバーを個別にならびに任意の組み合わせにおいて意味する。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も含まれる。
【0011】
「ポリマー」は、同じかまたは異なるタイプかどうかにかかわらず、モノマーを反応させる(すなわち、重合する)ことによって調製される化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、用語「ホモポリマー」を包含し、通常は、ただ1つのタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられ、用語「インターポリマー」は以下のように定義される。
【0012】
「インターポリマー」とは、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。その総称は、双方の古典的なコポリマー、すなわち、2つの異なるタイプのモノマーから調製されたポリマー、及び3つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマー等を含む。
【0013】
「Mer」、「mer単位」等の用語は、単一の反応物分子から誘導されるポリマーの部分、例えばエチレンから誘導されるmer単位は一般式−CHCH−を有する。
【0014】
「オレフィン」等の用語は、1つ以上の二重結合を有する不飽和の、脂肪族または脂環式の、置換または非置換の炭化水素を意味する。「置換オレフィン」は、オレフィンの任意の炭素に結合された1個以上の水素原子が、別の基、例えばハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、またはそのような置換基の2つ以上の組み合わせ等によって置き換えられるオレフィンを意味する。
【0015】
「エラストマー」等の用語は、(i)元の長さの少なくとも2倍に伸長することができ、延伸する力が解放されたときにほぼ元の長さに極めて迅速に収縮し、かつ(ii)0℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するゴム状ポリマーを意味する。
【0016】
「オレフィンエラストマー」及び同様な用語は、1つ以上のオレフィンから誘導される単位を少なくとも50モルパーセント(mol%)含むエラストマーポリマーを意味する。
【0017】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」等の用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは、混和性であってもなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していてもしていなくてもよい。そのようなブレンドは、透過型電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当技術分野で知られている他の任意の方法から測定されるように、1つまたは複数のドメイン構造を含有していてもしていなくてもよい。
【0018】
「組成物」、「配合物」等の用語は、2つ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。本発明の文脈において、組成物は、成分A〜Dと任意の添加剤、充填剤等を含む。
【0019】
別段断りがなく、文脈から黙示的でなく、または当技術分野で慣習的でない限り、すべての部及びパーセントは重量に基づくものであり、すべての試験方法は本開示の出願日現在のものである。
【0020】
ポリプロピレン(PP)
本発明の実施において使用されるポリプロピレン、すなわち組成物の成分(A)は、当業者に知られている任意の手段によって作製された任意のポリプロピレンポリマー、またはポリプロピレンポリマーブレンド、例えばホモポリマーポリプロピレン、ポリプロピレンのランダムのエチレンもしくはブテンコポリマー、またはホモポリマーポリプロピレンか、もしくはゴム状エチレン−プロピレンコポリマーと組み合わせた、エチレンとプロピレンとの結晶性ランダムコポリマーかのいずれかを含有する衝撃変性ポリプロピレンブレンドであり得る。
【0021】
一実施形態では、本発明の実施において使用されるポリプロピレンは、プロピレンから誘導されるそのmer単位の少なくとも半分を有するポリマーである。これらのものとしては、プロピレンのホモポリマー、ならびにプロピレンと、それ(すなわち、プロピレン)と共重合することができる1つ以上のモノマー、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1つ以上の共役または非共役ジエン、及びこれらのコモノマーのうちの2つ以上の組み合わせとのコポリマーが含まれる。
【0022】
一実施形態では、ポリプロピレンは、高結晶性ポリプロピレンであり、より典型的には、(≦)12g/10分(230℃/2.16kg)以下、さらにより典型的にはMFR≦4g/10分(230℃/2.16kg)のメルトフローレート(MFR)を有する高結晶性ポリプロピレンである。一実施形態では、高結晶化度ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマーまたはミニランダムコポリマー(すなわち、プロピレンモノマーから誘導されるmer単位を98%〜100%未満と、別のオレフィンモノマー、典型的にはエチレンから誘導される残りのmer単位とを含むプロピレンコポリマー)である。
【0023】
高い結晶化度とは、ポリプロピレンが、示差走査熱量測定(DSC)融解熱によって測定した場合に、40%以上、好ましくは55%以上の結晶化度を有することを意味する。DSCは、結晶性及び半結晶性ポリマーの融解及び結晶化を調べるために使用できる一般的な技術である。DSC測定の一般的な原理及び結晶ならびに半結晶ポリマーの研究への応用は、標準的なテキスト(例えばE.A.Turi,ed.,“Thermal Characterization of Polymeric Materials”,Academic Press,1981)に記載されている。
【0024】
用語「結晶化度」は結晶構造を形成する原子または分子の配列の規則性を指す。ポリマーの結晶化度はDSCを用いて調べることができる。Tmeは融解が終了する温度を意味し、Tmaxはピーク融解温度を意味しており、両方ともに、最終加熱ステップからのデータを用いてDSC分析から当業者によって決定される。DSC分析のための1つの好適な方法では、TA Instruments,Inc.からのモデルQ1000(商標)DSCを使用する。DSCの較正は以下の方法で行う。最初に、アルミDSCパンに試料を入れずに−90℃から290℃までセルを加熱することによってベースラインを得る。次いで、7mgの新鮮なインジウム試料を、180℃まで加熱し、その試料を140℃まで10℃/分の冷却速度で冷却し、続いて140℃で1分間、試料を等温保持し、続いて昇温速度10℃/分で140℃から180℃まで試料を加熱することによって、分析する。インジウム試料の融解熱及び溶融の開始を測定し、溶融開始については156.6℃から0.5℃以内、融解熱については28.71J/gから0.5J/g以内であることが確認される。次いで、DSCパン内の新鮮な試料の小滴を25℃から−30℃まで10℃/分の冷却速度で冷却することによって脱イオン水を分析する。その試料を−30℃で2分間等温に保ち、10℃/分の加熱速度で30℃まで加熱する。溶融の開始を決定し、0℃から0.5℃以内であることが確認される。
【0025】
ポリマーの試料を177℃の温度でプレスして薄膜にする。約5〜8mgの試料を秤量し、DSCパン中に置いた。蓋をパン上に圧着して閉鎖雰囲気を確保する。サンプルパンをDSCセル中に置き、次いで約100℃/分の高い速度で230℃の温度まで加熱する。試料をこの温度で約3分間保持する。次いで、試料を10℃/分の速度で−40℃まで冷却し、その温度において等温で3分間保持する。結果として、溶融が完了するまで、試料を10℃/分の速度で加熱する。得られたエンタルピー曲線を、ピーク溶融温度、開始、及びピーク結晶化温度、融解熱及び結晶化熱、Tme、Tmax、ならびにUSP6,960,635に記載されているような対応するサーモグラムからの対象となる任意の他の量について解析する。融解熱を公称重量パーセント結晶化度へと変換するのに使用される係数は165J/g=100重量%結晶化度である。この変換係数を用いて、プロピレン系ポリマーの総結晶化度(単位:重量パーセント結晶化度)は、165J/gで割り、そして100パーセントを掛けることによって、融解熱として算出される。インパクトコポリマーに関して、エラストマー衝撃改質剤は融解熱にごくわずかに寄与する。それゆえ、コポリマーが「高結晶化度」かどうかを決定する文脈においてインパクトコポリマーの結晶化度を計算するために、上記の計算の結果を、エラストマー衝撃改質剤の重量分を引いたものに等しい係数によってさらに除する。
【0026】
一実施形態では、本発明の実施において使用されるポリプロピレンは衝撃変性ポリプロピレンである。これらのプロピレンポリマーは、プロピレンポリマーからなる連続相、及びエラストマー相を有する。連続相のプロピレンポリマーは、典型的には、ホモポリマーのプロピレンポリマー、またはランダムもしくはミニランダムプロピレンコポリマーであり、より典型的にはホモポリマーのプロピレンポリマーである。プロピレンポリマーは、チーグラー−ナッタ触媒、拘束幾何触媒、メタロセン触媒、または任意の他の好適な触媒系を使用して作製することができる。連続相を構成するプロピレンポリマーがホモポリマーのプロピレンポリマーである場合、プロピレンポリマーの結晶化度は、DSCによって測定した場合、好ましくは少なくとも約50パーセント、より好ましくは少なくとも約55パーセント、最も好ましくは少なくとも約62パーセントである。
【0027】
エラストマー相は、拘束幾何触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒、または任意の他の好適な触媒を用いて作製することができる。エチレンプロピレンゴムは、典型的には、直列に連結させた2つの反応器のうちの第2の反応器で作製される。好ましいブレンドされたエラストマーとしては、エチレン−オクテン、エチレン−ブチレン、及びエチレン−ヘキセンが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、インパクトプロピレンコポリマーまたはそのブレンドのエラストマー含量は、コポリマーまたはブレンドの重量に基づいて、8〜40、より典型的には12〜25、及び最も典型的には15〜20重量%である。一実施形態において、本発明の組成物の衝撃変性ポリプロピレン成分の許容可能な代替物は、ポリマーエラストマーと組み合わせた、例えばエチレン−プロピレンコポリマーと組み合わせたポリプロピレンホモポリマーまたはミニランダムポリマーであり、各々は、組成物へ個別に、かつ、衝撃変性プロピレンポリマーのそれらのそれぞれの量と同程度の量で、例えば80〜90重量%のプロピレンホモポリマー及び/またはミニランダムポリマー、ならびに10〜20重量%のエラストマーが添加される。
【0028】
本発明の実施において使用できる特定のインパクトプロピレンコポリマーはUSP6,472,473及び6,841,620においてより完全に記載されている。
【0029】
高密度ポリエチレン(HDPE)
本発明の実施において使用されるHDPE、すなわち組成物の成分(B)は、当技術分野で知られている。本発明の一実施形態において、HDPEは、0.945〜0.970g/cc、または0.950〜0.970g/cc、または0.952〜0.970g/ccの密度を有する。本発明の一実施形態では、HDPEは、1〜4g/10分、または1.2〜3.5g/10分、または1.2〜3g/10分のメルトインデックス(MI,I2)を有する。本発明の一実施形態では、HDPEは上記の密度及びMIの両方を有する。
【0030】
一実施形態では、HDPEは二峰性HDPE(b−HDPE)である。「二峰性」とは、ポリマーが少なくとも2つの成分を含み、その一方が比較的低分子量で比較的密度が高く、もう一方が比較的高分子量で比較的密度が低いことを意味する。「少なくとも2つの成分を含む」とは、HDPEが、2つを超える成分を含むことができる、すなわち「二峰性」が「多峰性」を含むことを意味している。典型的には、単一モノマー混合物、単一重合触媒、及び単一セットの方法条件を用いる単一重合段階で製造されたポリマーの分子量分布(MWD)は、単一の最大値を示し、その幅は触媒選択、反応器選択、方法条件等によって決まる。そのようなポリマーは、単峰性であり、本発明組成物のこの実施形態では成分(B)として使用されない。
【0031】
二峰性HDPEは、二峰性ポリマー生成物を作り出す条件を用いる、例えば、2つ以上の異なる触媒部位を有する触媒系または混合物を用いる、異なる段階で異なる方法条件による2段以上の重合方法(例えば異なる温度、圧力、重合媒体、水素分圧等)を用いる、重合によって製造される。そのような二峰性HDPEは、例えば、より高い/最も高い分子量の成分(複数可)の製造に使用される反応器(複数可)のみにコモノマーを添加する一連の反応器を使用して、多段エチレン重合によって比較的簡便に製造することができる。二峰性PEの製造例はEP−A−778,289及びWO92/12182に記載されている。
【0032】
本発明の本実施形態の組成物の成分(B)として使用することができる二峰性HDPEは、USP6,809,154及び6,931,184により完全に記載されている。
【0033】
相溶化剤
本発明の実施において使用される相溶化剤、すなわち組成物の成分(C)は、(1)(a)エチレン−プロピレン(EP)コポリマー、(b)アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、及び(c)EP−iPPジブロックポリマーを含むか、から本質的になるか、またはからなるオレフィンブロック複合体と、(2)無水マレイン酸グラフト化高密度ポリエチレン(MAH−g−HDPE)と、の混合物を含むか、または好ましくはから本質的になるか、またはより好ましくはからなる。一実施形態では、オレフィンブロック複合体は、相溶化剤を30〜90重量%、または40〜80重量%、または50〜80重量%含む。一実施形態では、MAH−g−HDPEは、相溶化剤を10〜70重量%、または20〜60重量%、または20〜50重量%含む。
【0034】
オレフィンブロック複合体
用語「ブロック複合体」は3つの成分:すなわち、(1)軟質コポリマー、(2)硬質ポリマー、及び(3)軟質セグメントと硬質セグメントとを有するブロックコポリマー、を含むポリマー組成物を指す。ブロックコポリマーの硬質セグメントはブロック複合体中の硬質ポリマーと同じ組成であり、ブロックコポリマー中の軟質セグメントはブロック複合体の軟質コポリマーと同じ組成である。
【0035】
オレフィンブロック複合体中に存在するブロックコポリマーは、直鎖または分岐であってよい。より具体的には、連続方法で生成される場合、ブロック複合体は、1.7〜15、1.8〜3.5、1.8〜2.2、または1.8〜2.1の多分散指数(PDI)を有することができる。バッチまたはセミバッチ方法で生成される場合、ブロック複合体は、1.0〜2.9、1.3〜2.5、1.4〜2.0、または1.4〜1.8のPDIを有することができる。「オレフィンブロック複合体」という用語は、2つ以上のα−オレフィン系モノマーから単独でまたは実質的に単独で調製されるブロック複合体を指す。様々な実施形態において、オレフィンブロック複合体は、2つのα−オレフィン系モノマー単位のみからなることができる。オレフィンブロック複合体の例としては、プロピレンモノマー残基のみまたは実質的にそれのみを含む硬質セグメント及び硬質ポリマーと、エチレン及びプロピレンのコモノマー残基のみまたは実質的にそれのみを含む軟質セグメント及び軟質ポリマーとが挙げられる。
【0036】
オレフィンブロック複合体を説明する場合、「硬質」セグメントとは、単一のモノマーが95mol%超、または98mol%超の量で存在する重合単位の高結晶性ブロックを指す。換言すると、硬質セグメント中のコモノマー含有量は、5mol%未満、または2mol%未満である。いくつかの実施形態において、硬質セグメントは、すべてまたは実質的にすべてのプロピレン単位を含む。その一方で、「軟質」セグメントは、10mol%超のコモノマー含有量を有する重合した単位の非晶質、実質的に非晶質、またはエラストマーのブロックを指す。いくつかの実施形態において、軟質セグメントは、エチレン/プロピレンインターポリマーを含む。
【0037】
「結晶性」という用語は、オレフィンブロック複合体を説明するために使用されるとき、示差走査熱量測定(「DSC」)または同等の技術によって決定される一次転移または結晶融点(「Tm」)を有するポリマーまたはポリマーブロックを指す。用語「結晶性」は、用語「半結晶性」と同義に使用することができる。「非晶質」という用語は、結晶融点を有しないポリマーを指す。用語「アイソタクチック」は、13C−核磁気共鳴(「NMR」)分析によって測定した場合に少なくとも70パーセントのアイソタクチックペンダントを有するポリマー反復単位を意味する。「高度にアイソタクチック」とは、少なくとも90パーセントのアイソタクチックペンダントを有するポリマーを意味する。
【0038】
オレフィンブロック複合体に言及する場合、「ブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」という用語は、直線状に結合した2つ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマー、すなわち、ペンダントまたはグラフト化様式ではなく、重合したエチレン官能基に対して末端−末端で結合した化学的に区別される単位を含むポリマーを指す。実施形態において、ブロックは、その中に組み込まれるコモノマーの量もしくは種類、密度、結晶化度の量、そのような組成のポリマーに起因する微結晶のサイズ、立体規則性の種類もしくは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、レジオ規則性もしくはレジオ不規則性、長鎖分岐もしくは超分岐を含む分岐の量、均一性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性において異なる。本明細書において用いられるオレフィンブロック複合体は、好ましい実施形態において、ブロック複合体の調製に使用される触媒(複数可)と組み合わせたシャトリング剤(複数可)の影響に起因して、ポリマーPDIの特有の分布、ブロック長分布、及び/またはブロック数分布を特徴とする。
【0039】
一実施形態では、オレフィンジブロック複合体は、ジブロックコポリマーの重量に基づいて、43〜48重量%、または43.5〜47重量%、または44〜47重量%のエチレン含量を有するEP−iPPジブロックポリマーを含む。一実施形態では、EP−iPPジブロックポリマーは、EP−iPPジブロックポリマーの重量に基づいて、57〜52重量%、または56.5〜53重量%、または56〜53重量%のプロピレン含量を有する。
【0040】
本明細書において用いられるオレフィンブロック複合体は、付加重合可能なモノマーまたはモノマーの混合物を、付加重合条件下で、少なくとも1つの付加重合触媒、共触媒、及び鎖シャトリング剤(「CSA」)を含む組成物と接触させることを含む方法によって調製することができ、この方法は、定常状態重合条件下で動作する2つ以上の反応器内、またはプラグフロー重合条件下で動作する反応器の2つ以上のゾーン内で、異なる方法条件下で成長するポリマー鎖のうちの少なくともいくつかの形成を特徴とする。
【0041】
さらに、ブロック複合体のEP−iPPジブロックポリマーは、10〜90重量%の硬質セグメント及び90〜10重量%の軟質セグメントを含む。
【0042】
軟質セグメント内では、エチレンの重量パーセントは10〜75重量%、または30〜70重量%の範囲であってもよい。実施形態において、プロピレンは、軟質セグメントの残りの部分を構成する。
【0043】
硬質セグメント内では、プロピレンの重量パーセントは80〜100重量%の範囲であってもよい。硬質セグメントは、90重量%超、95重量%超、または98重量%超のプロピレンを含むことができる。
【0044】
本明細書に記載されるブロック複合体は、従来のランダムコポリマー、ポリマーの物理的ブレンド、及び逐次モノマー添加によって調製されるブロックコポリマーとは区別されてもよい。ブロック複合体は、後述するように、同じ量のコモノマーより高い溶融温度、ブロック複合体指数等の特徴によってランダムコポリマーから、より低い温度でのブロック複合体指数、より優れた引張強度、改善された破壊強度、より微細な形態、改善された光学特性、及びより大きな衝撃強度等の特徴によって物理的ブレンドから、分子量分布、レオロジー、ずり流動化、レオロジー比によって、かつブロック多分散性が存在することから、逐次モノマー添加によって調製されるブロックコポリマーと区別されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、ブロック複合体は、以下に定義されるような、すなわち、ゼロより大きく0.4未満、または0.1〜0.3のブロック複合体指数(「BCI」)を有する。他の実施形態において、BCIは、0.4より大きく、かつ最大1.0である。さらに、BCIは、0.4〜0.7、0.5〜0.7、または0.6〜0.9の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、BCIは、0.3〜0.9、0.3〜0.8、0.3〜0.7、0.3〜0.6、0.3〜0.5、または0.3〜0.4の範囲であってもよい。他の実施形態において、BCIは、0.4〜1.0、0.5〜1.0、0.6〜1.0、0.7〜1.0、0.8〜1.0、または0.9〜1.0の範囲であってもよい。BCIは、本明細書において、100%で除したジブロックコポリマーの重量パーセント(すなわち、重量分率)に等しいと定義される。ブロック複合体指数の値は、0〜1の範囲であってもよく、1は、100%ジブロックに等しく、ゼロは、従来のブレンドまたはランダムコポリマー等の材料である。BCIを決定するための方法は、例えば、米国公開特許出願第2011/0082258号の段落[0170]〜[0189]で見つけることができる。
【0046】
オレフィンブロック複合体は、100℃超、好ましくは120℃超、より好ましくは125℃超の結晶融点(Tm)を有することができる。ブロック複合体のメルトインデックス(「I」)は、0.1〜1000g/10分、0.1〜50g/10分、0.1〜30g/10分、または1〜10g/10分の範囲であってもよい。ブロック複合体は、10,000〜2,500,000、35,000〜1,000,000、50,000〜300,000、または50,000〜200,000g/molの重量平均分子量(「Mw」)を有することができる。
【0047】
本発明における使用に好適なオレフィンブロック複合体の生成に有用な方法は、例えば、2008年10月30日に公開された米国特許出願公開第2008/0269412号で見つけることができる。本発明における使用に好適な触媒または触媒前駆体物質は、国際公開第WO2005/090426号に、具体的には20ページの30行目から53ページの20行目に開示されるもの等の金属錯体を含む。好適な触媒はまた、U.S.2006/0199930、U.S.2007/0167578、U.S.2008/0311812、U.S.2011/0082258号、米国特許第7,355,089号、及びWO2009/012215にも開示されている。好適な共触媒は、WO2005/090426に開示されるもの、具体的には54ページの1行目〜60ページの12行目に開示されるものである。好適な鎖シャトリング剤は、WO2005/090426に開示されるもの、具体的には19ページの21行目から20ページの12行目に開示されるものである。特に好ましい鎖シャトリング剤はジアキル亜鉛化合物である。オレフィンブロック複合体自体は、米国特許第8,476,366号により完全に記載されている。
【0048】
一実施形態では、EP/iPPジブロックポリマーは、0.89〜0.93g/ccもしくは0.90〜0.93g/ccの密度及び/または230℃/2.16kgで測定した場合、6.5〜12g/10分もしくは7〜10g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する。
【0049】
MAH−g−HDPE
相溶化剤のMAH−g−HDPE成分のHDPE成分として使用することができるHDPE樹脂は、よく知られていて市販されており、限定するものではないが溶液、気相またはスラリー相、チーグラー−ナッタ、またはメタロセン触媒等を含む広範囲で様々な方法のうちのいずれか1つによって作製される。一実施形態では、これらの樹脂は、MAHでグラフト化する前に、0.95〜0.965g/cmの密度及び0.1〜4.0のメルトインデックス(I2)を有する。市販されているHDPE樹脂としては、The Dow Chemical Companyからすべて市販されているDOW高密度ポリエチレン樹脂及びCONTINUUM(商標)及びUNIVAL(商標)高密度ポリエチレン樹脂、Borealisから市販されているBS2581、Lyondell/Basellから市販されているHOSTALEN(商標)ACP 5831D、Ineosから市販されているHD5502S、Sabicから市販されているB5823及びB5421、及びTotalから市販されているHDPE 5802及びBM593が挙げられるが、それらに限定されない。HDPEは単峰性または二峰性であり得る。
【0050】
MAH−g−HDPEは、既知の化合物であって市販されており、例えば、The Dow Chemical Companyから市販されているAMPLIFY(商標)1053である。MAH−g−HDPEは、様々な方法によって作製することができ、その1つはUSP4,950,541に記載されている。一実施形態では、MAH−g−HDPEのMAH含量は、MAH−g−HDPEの重量に基づいて、0.9〜2重量%、または1〜1.7重量%、または1.1〜1.6重量%である。
【0051】
核形成剤
本発明の組成物のポリマー成分の結晶化を開始及び/または促進する任意の化合物を核形成剤として使用することができる。好適な核形成剤の例としては、Asahi Denim Kokaiから市販されているADK NA−11(CAS#85209−91−2)、Milliken Chemicalから市販されているHYPERFORM(商標)HPN−20E、タルク、及び炭酸カルシウムが挙げられるが、それらに限定されない。当業者であれば、他の有用な核形成剤を容易に特定することができる。核形成剤は、本発明の組成物では、組成物の総重量に基づいて0.05〜5.0重量%、0.09〜2.0重量%、または0.1〜1.0重量%の範囲の量で含むことができる。充填剤が存在しない場合、典型的には、組成物中に存在する核形成剤の量は1.0重量%未満である。
【0052】
充填剤
一実施形態では、本発明の組成物は、任意選択的に充填剤を含むことができる。当業者に知られている任意の充填剤を本発明の組成物に使用することができる。好適な充填剤の非限定的な例としては、砂、タルク、ドロマイト、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、雲母、珪灰石、長石、珪酸アルミニウム、アルミナ、水和アルミナ、ガラスビーズ、ガラス微小球、セラミック微小球、熱可塑性微小球、重晶石、木粉、及びこれらの材料のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。使用される場合、組成物中の充填剤の量は、組成物の重量の0〜60重量%、または1〜50重量%、または5〜40重量%であり得る。いくつかの実施形態では、核形成剤、例えばタルク、炭酸カルシウム等は、充填剤として作用することもでき、逆もまた同様である。
【0053】
添加剤
一実施形態では、本発明の組成物は、任意選択的に1つ以上の添加剤を含むことができる。開示の目的が損なわれない限り、既知の添加剤を樹脂組成物に組み込むことができる。そのような添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、酸掃去剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、分散剤、阻害剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、流動性向上剤、粘着防止剤、スリップ剤、及び溶接強度向上剤が挙げられる。酸化防止剤の例は、ヒンダードフェノール(例えば、IRGANOX(商標)1010)及びホスファイト(IRGAFOS(商標)168)であり、両方ともBASFから市販されている。
【0054】
添加剤は、単独でまたは任意の組み合わせで使用することができ、使用する場合は、既知の量と既知の方法で、すなわち当業者に知られている機能的に同等の量で使用される。例えば、用いられる酸化防止剤の量は、ポリマーブレンドがポリマーの貯蔵中及び最終的な使用中に用いられる温度及び環境で酸化を受けるのを防止する量である。そのような酸化防止剤の量は、通常は、組成物の重量に基づいて、0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜2重量%の範囲である。同様に、他の列挙した添加剤の任意の量も機能的に等価な量である。
【0055】
組成物
本発明の組成物の各成分の相対量を表1に記載する。
【0056】
【表1】
【0057】
一実施形態では、二峰性HDPEのPPに対する重量比は、>1、好ましくは>1.5、より好ましくは>2である。一実施形態では、HDPE対PPの重量比は0.8:1〜3:1、好ましくは0.9:1〜3:1、より好ましくは1:1〜2:1である。
【0058】
配合
本発明の組成物の配合は、当業者に既知の標準的な手段によって行うことができる。配合設備の例は、BANBURY(商標)またはBOLLING(商標)内部ミキサー等の内部バッチミキサーである。代替として、FARREL(商標)連続ミキサー、WERNER AND PFLEIDERER(商標)二軸ミキサー、またはBUSS(商標)混錬連続押出機等の単軸または二軸ミキサーを使用することもできる。用いられるミキサーの種類、及びミキサーの動作条件は、粘度、体積抵抗率、及び押出表面平滑性等の組成物の特性に影響を及ぼす。
【0059】
ポリプロピレン、HDPE、相溶化剤、及び核形成剤、ならびに任意の添加剤パッケージの配合温度は、組成によって変化するが、典型的には180℃を超える。ポリプロピレン対HDPEの重量比が3:1の場合、配合温度は典型的には245℃を超える。最終組成物の種々の成分は、任意の順序で、または同時に、互いに添加し配合することができるが、典型的には、ポリプロピレン、HDPE、及び相溶化剤は、互いに最初に配合し、次いで核形成剤を、次いで充填剤及び/または添加剤を配合する。いくつかの実施形態では、添加剤は予め混合されたマスターバッチとして添加する。そのようなマスターバッチは、添加剤を、別々にまたは一緒に、少量のポリプロピレン及びHDPEのうちの1つ以上の中に分散させることによって、一般的に形成する。マスターバッチは溶融配合法によって都合よく形成される。
【0060】
バッファチューブ
一実施形態では、本発明は、これらの用途に使用される典型的なPPコポリマー系材料と比較した、バッファチューブゲル中での老化後の弾性率の改善された保持率に関する。この改善は、HDPE、好ましくは二峰性HDPE樹脂を、2つの相溶化剤、例えばINTUNE(商標)D5545.00(EP−iPPジブロックコポリマー)及びAMPLIFY(商標)1053(MAH−g−HDPE)と一緒に、ASTM D−790Aに従って測定された1%割線曲げ弾性率が>1,500MPaであるホモポリマーPPとブレンドすることによって、達成される。一実施形態では、HDPE樹脂は、1.5g/10分MI(190℃/2.16kg)及び密度0.95g/ccを有する二峰性樹脂であり、PPは、3.6g/10分(230℃/2.16kg)のメルトフローレート(MFR)を有するホモポリマー、または高結晶化度PPもしくはヘテロ相コポリマーPPであり、例えばBRASKEM(商標)H521である。PPは、バッファチューブの製造に使用することが意図される組成物の重要な特性である改善された溶融強度のために、2つ以上のPPと、ASTM D−790Aに従って測定された1%割線曲げ弾性率が>1400MPa及びMFRが0.4〜4.0(230℃/2.16kg PPを有する、高溶融強度ホモポリマーPPまたはヘテロ相インパクトコポリマーPPのうちの少なくとも1つのPPとのブレンドであり得る。重要、本発明のバッファチューブは以下の特性のうちの1つ以上を示す:(1)より低いグリース吸収性、(2)老化後の割線弾性率のより高い保持率、(3)低温脆性によって測定される衝撃強度が、PPコポリマーから作製された従来のバッファチューブと比較してすべて優れている。方法の文脈では、組成物の結晶化半減時間もまた、相溶化剤としてEP−iPPジブロックコポリマーのみを有する同様なブレンドと比較して、すなわちMAH−g−HDPE成分を含まない相溶化剤組成物と比較して、改善される(より速い)。
【実施例】
【0061】
試験方法
脆化温度
ASTM D746に従って測定した。
【0062】
メルトインデックス
230℃及び2.16kgでASTM D1238に従って測定し、10分当たりに溶出されたグラム数を報告する。
【0063】
引張弾性率(割線2%)
ASTM D638に従って測定した。弾性率は、耐グリース性を決定するための以下に記載した仕方で、85℃で14日間、LT410ゲルに曝露した試料と同様に新鮮な試料について測定する。
【0064】
引張強度(破断応力)
ASTM D638に従って測定した。
【0065】
引張伸び(破断歪)
ASTM D638に従って測定した。
【0066】
重量増加(耐グリース性)
これらの研究に使用された炭化水素ゲルは、中華人民共和国(PRC)のHonghuiによって製造されたLT410である。ゲル吸収は、各試料の重量増加を経時的に測定することによって決定する。試料をLT410炭化水素ゲルに浸漬し、85℃のコンベクションオーブンに入れる。各試料は最初に秤量し、次いで、ゲル中14日間後に、試料表面からすべてのゲルを除去した後、再び秤量する。
【0067】
ゲル吸収
これらの研究に使用される炭化水素ゲルは、Stewart Groupによって製造されたLA444である。LA 444は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系バッファチューブに典型的に使用される低コストのゲルである。ゲル吸収は、各試料の重量増加を経時的に測定することによってモニターする。1x1x.075に圧縮成形された試料をLA444炭化水素ゲルに浸漬し、その試料を85℃のコンベクションオーブンに入れる。各試料は最初に秤量し、次いで、ゲル中14日間後に、試料表面からすべてのゲルを除去した後、再び秤量する。試料の重量パーセントの増加を表2及び3に示す。本発明の試料及び比較試料は、ESCORENE(商標)コポリマーPPと比較して、より低いゲル吸収をおおよそ維持し、本発明の試料はBRASKEM(商標)PPと同様の結果を示す。
【0068】
ゲル老化1%及び2%割線弾性率
非老化及びゲル老化の弾性率試験用のタイプIVのドッグボーン試料を、圧縮成形された75ミル厚のプラークからダイカットする。バッファチューブ材料の割線弾性率、伸び計を備えていない100ポンドロードセルを用いてINSTRON(商標)4201によって測定する。クランプジョー分離は1インチであり、ジョーは、試料の端部をより密接に把持するために、鋸歯状である。クロスヘッドは、0.10インチ(10%)の歪み点で移動を停止するように設定する。試験は、0.6%の歪みまで0.2インチ/分のクロスヘッド速度で実施し、残りの試験では2インチ/分に切り替えた。弾性率は、新鮮な試料、ならびに85℃で14日間LT410ゲルに曝露した試料について測定する。
【0069】
融点
融点は、DSCによって、最初に10℃/分で180℃まで加熱し、次いで1分間保持することにより測定する試料を10℃/分で−25℃まで冷却し、次いで10℃/分で200℃まで2度目の加熱をし、融点を測定する。
【0070】
結晶化半減期
非等温結晶化の半減時間は、試料を180℃まで加熱し、その温度で1分間保持することによって決定する。次いで、試料を10℃/分で冷却し、最大結晶化吸熱が半分なるまでの時間を、時間対熱流曲線のグラフから読み取った。
【0071】
Tc法ログ:
1:30.00℃での平衡化
2:180.00℃まで10.00℃/分の傾斜
3:1.00分間等温
4:−25.00℃まで10.00℃/分の傾斜
5:5.00分間等温
6:200.00℃まで10.00℃/分の傾斜
7:方法の終了
【0072】
溶融強度
振動剪断測定を、TA Instrumentsによって製造されたARES(商標)1000レオメーターを用いて行う。試料は、25mmのプレートを用いて210℃で0.1〜100rad/秒から0.25%の歪みで測定する。ゼロ剪断粘度は0.1rad/秒の周波数ポイントにおいて評価する。
【0073】
材料
表2は、以下の実施例で使用した材料及びそれらの特性のいくつかを報告している。
【0074】
【表2】
【0075】
手順
試料の調製
容量250グラムでロータータイプの混合ブレードを備えるBRABENDER(商標)混合ボウルにおいてブレンドすることにより、2つ以上の成分を有するすべての比較試料及び発明試料を調製する。BRABENDER(商標)混合ボウル条件を以下に示す:
【0076】
[表]
【0077】
表3、4、5A−1、5A2、5B−1、及び5B−2には、比較例及び発明例の組成物、及びそれらの様々な特性が記録してある。
【0078】
【表3-1】
【0079】
【表3-2】
【0080】
【表4-1】
【0081】
【表4-2】
【0082】
【表5A-1】
【0083】
【表5A-2】
【0084】
【表5B-1】
【0085】
【表5B-2】
【0086】
表6は、発明例に関する最低限の特性要件を示している。発明例は、表に列挙した要件のすべてを満たす。
【0087】
【表6】
【0088】
結果と考察
試料CE6及び7は、EP−iPP及びMAH−G−HDPE相溶化剤を含まない試料であり、不良な破断歪及び高い低温脆性(LTB)値によって示されるように、非常に脆い。
【0089】
試料CE9及びCE10は、異なるレベルのEP−iPPを有する比較試料であり、IE2と比較して、老化及び非老化の弾性率値がより低い。MAH−g−HDPEを有する試料(CE11及びCE12)は、EP−iPPのみを含有するCE9及びCE10と比較してより高い老化弾性率値をもたらすが、より脆い。CE9、10、11、12は、それらすべてが同じ量のPP(29.5重量%)を含有するため、互いに比較することができる。
【0090】
CE13は、発明試料IE2と同様の老化1%割線弾性率を達成するが、高弾性率PPのレベルの増加が必要とされる。しかしながら、試料IE2に関する2%老化割線弾性率は依然としてやや高い。IE2はまた、試料CE13と比較してより低いゲル吸収を示す。ゲル吸収は、CE11及びCE12と比較して、IE2ではほんのわずか高い。しかしながら、CE11及びCE12は不良な破断歪値を有し、高い脆性を示す。
【0091】
IE2は、バッファチューブのために使用される比較の商業用等級のPP(ESCORENE(商標))と比較してゲル吸収が全体的にはるかに低く、改善された低温脆性値及び溶融強度を達成すると同時に、ゲル老化後にはるかに高い弾性率を維持する。IE2は、EP−iPPとMAH−g−HDPEの両方を組み合わせると、同じ濃度のPPを有するすべての試料と比較して、全体的に最良の特性バランスをもたらすことを示している。相溶化剤としてEP−iPPまたはMAH−g−HDPEのみを有する試料と比較して、老化後の弾性率の保持、低いゲル吸収、より低いLTB値、及び改善された溶融強度等の特性の改善が達成される。
【0092】
CE14は、H521と同様なMFRのヘテロ相コポリマーPPを使用し、CE13及びIE2と比較してより低い老化弾性率を示す。
【0093】
IE2は、相溶化剤としてEP−iPPのみを有する試料と比較して、より速い結晶化半減時間を示す。
【0094】
図は、IE2試料の溶融強度が、相溶化剤としてEP−iPPのみを有する試料の溶融強度よりも高いことを示している。IE2溶融強度もまた、CE3(ESCORENE(商標)コポリマーPPを含有する試料)の溶融強度よりも高い。
【0095】
EP−IPP及びMAH−g−HDPEの両方を有する試料(CE18、CE17、CE20)のDSCグラフ(図示せず)は、EP−iPPのみを有する試料(CE10、CE9)と比較して、1つの特異なピークを示し、冷却曲線において2つの別個の結晶化ピークを一貫して示す。この結果は、EP−IPPブレンド及びMAH−g−HDPEブレンドにおける共結晶化の証拠を提供し、ブレンドの機械的特性に影響を及ぼす。
なお、本発明には、以下の実施形態が包含される。
[1]組成物の重量に基づく重量パーセント(重量%)で、
(A)22〜49%のポリプロピレン(PP)と、
(B)50〜65%の高密度ポリエチレン(HDPE)と、
(C)7〜12%の相溶化剤であって、前記相溶化剤の重量に基づく重量%で、
(1)30〜90%の、エチレン−プロピレン(EP)コポリマー、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、及びEP−iPPジブロックポリマーを含むオレフィンブロック複合体、ならびに
(2)10〜70%の無水マレイン酸グラフト化HDPE(MAH−g−HDPE)、を含む、相溶化剤と、
(D)0.05〜5.0%の核形成剤と、を含む、組成物。
[2]前記HDPEが、二峰性HDPE(b−HDPE)である、前記[1]に記載の組成物。
[3]前記PPが、高結晶性ポリプロピレンであり、メルトフローレート(MFR)が、(≦)12g/10分(230℃/2.16kg)以下である、前記[1]に記載の組成物。
[4]前記核形成剤が、NA−11、HPN−20E、タルク、及び炭酸カルシウムのうちの少なくとも1つである、前記[1]に記載の組成物。
[5]充填剤をさらに含む、前記[1]に記載の組成物。
[6]前記充填剤が、前記組成物の総重量に基づいて0超〜60重量%の量で存在する、前記[5]に記載の組成物。
[7]前記充填剤が、砂、タルク、ドロマイト、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、雲母、珪灰石、長石、珪酸アルミニウム、アルミナ、水和アルミナ、ガラスビーズ、ガラス微小球、セラミック微小球、熱可塑性微小球、重晶石、木粉のうちの少なくとも1つ、及びそれらの材料のうちの2つ以上の組み合わせである、前記[6]に記載の組成物。
[8]充填剤を含まず、前記核形成剤が、前記組成物の総重量に基づいて1重量%未満の量で存在する、前記[1]に記載の組成物。
[9]チューブを作製する方法であって、
(I)
(A)22〜49%のポリプロピレン(PP)と、
(B)50〜65%の高密度ポリエチレン(HDPE)と、
(C)7〜12%の相溶化剤であって、前記相溶化剤の重量に基づく重量%で、
(1)30〜90%の、エチレン−プロピレン(EP)コポリマー、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、及びEP−iPPジブロックポリマーを含むオレフィンブロック複合体、ならびに
(2)10〜70%の無水マレイン酸グラフト化HDPE(MAH−g−HDPE)、を含む、相溶化剤と、
(D)0.05〜5.0%の核形成剤と、を配合するステップと、
(II)(a)の混合物をチューブの形状に押出すステップと、を含む、方法。
[10]前記配合が、溶融配合である、前記[9]に記載の方法。
[11]前記[9]に記載の方法によって作製されるチューブ。
[12]前記[11]に記載のチューブを含むケーブル。
[13]前記HDPEが、二峰性である、前記[9]に記載の方法。
[14]前記PPが、(≦)12g/10分(230℃/2.16kg)のMFRを有する高結晶性PPである、前記[9]に記載の方法。
[15]前記核形成剤が、NA−11、HPN−20E、タルク、及び炭酸カルシウムのうちの少なくともである、前記[9]に記載の方法。
図1