特許第6906538号(P6906538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6906538ガラスエレメントの端面加工のための方法、およびその方法により加工されたガラスエレメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906538
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ガラスエレメントの端面加工のための方法、およびその方法により加工されたガラスエレメント
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/09 20060101AFI20210708BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20210708BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20210708BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20210708BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20210708BHJP
   B24B 7/24 20060101ALI20210708BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C03B33/09
   C03C19/00 Z
   B23K26/00 N
   B23K26/53
   B23K26/38 Z
   B24B7/24 A
   B24B9/00 601B
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-543344(P2018-543344)
(86)(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公表番号】特表2019-511989(P2019-511989A)
(43)【公表日】2019年5月9日
(86)【国際出願番号】EP2016079411
(87)【国際公開番号】WO2017140394
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2019年9月9日
(31)【優先権主張番号】102016102768.5
(32)【優先日】2016年2月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー プラッパー
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス オアトナー
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト ザイドル
(72)【発明者】
【氏名】フランク−トーマス レンテス
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0166393(US,A1)
【文献】 特開2008−266046(JP,A)
【文献】 特開2015−030040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00−33/14
C03C 15/00−23/00
B23K 26/00−26/70
B24B 5/00− 7/30
B24B 1/00− 1/04
B24B 9/00−19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い精度と、減少した研削体積とを伴う、平坦なガラス部材またはガラスセラミック部材(2)からガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント(3)を製造する方法であって、
− 1本の分離線(4)に沿って並んでいるフィラメント形状の損傷部(6)が、前記ガラス部材またはガラスセラミック部材(2)の内部に作製され、
− 前記損傷部は、超短パルスレーザー(10)のレーザーパルス(8)により作製され、ここで、前記ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント(2)の材料は、前記レーザーパルス(8)に対して少なくとも部分的に透過性であるので、レーザー光線はそのガラスまたはガラスセラミック中に入り込み、内部に前記損傷部を作製することができ、かつ
− パルス化された前記レーザー光線および前記ガラス部材またはガラスセラミック部材(2)の表面は互いに相対的に移動され、こうして前記レーザーパルス(8)の前記ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント(2)の表面(20)への衝突点(80)は、前記分離線(4)に沿って並んで繋がり、かつ
− 前記分離線(4)に沿って並んで配置された前記フィラメント形状の損傷部(6)の導入後に、前記分離線(4)での分離により、前記ガラスエレメントもしくはガラスセラミックエレメント(3)が取り出され、かつ
− 前記分離に際して形成される前記ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント(3)の端面表面(24)は、部分的に研削により加工され、こうして前記端面表面(24)は、前記フィラメント形状の損傷部の導入および分離により作製された少なくとも1つの帯状の領域(240)と、研削によりさらに加工された少なくとも1つの、相接している帯状の領域(242)とを有し、前記帯状の領域(240)は、平行に並んで延在している細長いフィラメント形状の損傷部を有し、前記損傷部の長手方向は、側面(25,26)に対して横断して延びている、製造方法。
【請求項2】
前記側面(25,26)に相接している帯状の領域(242,244)を研削により加工することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記端面表面(24)から相接している前記側面(25,26)までの移行部をなすファセット面が前記研削により作製されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記分離線(4)での分離は、前記分離線に沿ったガラス部材またはガラスセラミック部材(2)の局所加熱により、好ましくはレーザー光線を用いて行われるか、または促進されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記超短パルスレーザー(10)の繰り返し率ならびに前記パルス化されたレーザー光線および前記ガラス部材もしくはガラスセラミック部材(2)の表面の互いに相対的な移動における進行速度を、前記並んで配置されたフィラメント形状の損傷部が1マイクロメートル〜15マイクロメートルの範囲の、好ましくは2マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲の中心間距離を有するように調整することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記研削に際しての進行速度は、研削装置(13)と前記ガラス部材またはガラスセラミック部材(2)の表面との間の相対移動において、毎分5メートルから毎分40メートルまでの範囲で、特に有利には毎分20メートルまでの範囲で調整されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記超短パルスレーザー(10)は、レーザーパルス(8)がパルス群の形で放出されるバーストモードであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記レーザーパルス(8)の反復率は、前記超短パルスレーザー(10)とガラス部材またはガラスセラミック部材(2)との間の相対速度に依存して適合されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ガラス部材またはガラスセラミック部材(2)において、前記レーザーパルス(8)につき300μJ超、有利には400μJ超、さらに特に有利には500μJ超が与えられることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
2つの相対する側面(25,26)と、前記側面(25,26)の両方を結ぶ端面表面(24)とを有し、前記端面表面(24)は、長く延びた帯状の、少なくとも1つの第1の端面領域(240)と、研削により形成されている細長い帯状の、少なくとも1つの第2の端面領域(242,244)とを含む平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント(3)であって、これらの端面領域は、長手方向で前記端面表面(24)に沿って、かつ前記側面(25,26)に沿って延在しており、前記第1の端面領域(240)は、特に等間隔で平行に並んでいる細長いフィラメント形状の損傷部(6)を有し、前記損傷部の長手方向は、前記側面(25,26)に対して横断して、かつ前記第1の端面領域(240)の表面に沿って延びている、平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント(3)。
【請求項11】
前記端面表面(24)は、2つの第2の端面領域(242,244)を有し、前記第2の端面領域の各々は、前記側面(25,26)の一方と相接しており、かつ前記第2の端面領域の間に前記第1の端面領域(240)が延在していることを特徴とする、請求項10記載の平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント(3)。
【請求項12】
厚さが、1ミリメートル〜20ミリメートルの範囲、特に有利には2ミリメートル〜15ミリメートルの範囲、さらに特に有利には3mm〜10mmの範囲であることを特徴とする、請求項10または11記載の平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント(3)。
【請求項13】
前記端面表面(24)は、少なくとも部分的に、2つの湾曲して延在している第2の端面領域(242,244)の間に第1の端面領域(240)が延在しているC字型輪郭を有していることを特徴とする、請求項10から12までのいずれか1項記載の平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント(3)。
【請求項14】
前記第2の端面領域(242,244)は、それぞれ1つのファセット面(20,21)を形成し、前記ファセット面の垂線方向は、第1の端面領域(240)の垂線と、前記ファセット面に相接している側面(25,26)の垂線との間にあることを特徴とする、請求項10から13までのいずれか1項記載の平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、板ガラスの端面の加工に関する。特に本発明は、種々の方法による端面の加工に関する。
【0002】
平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントを製造するためには、一般的に、より大きな平面状のエレメントが1つ以上の分離工程により分割され、こうして所望の大きさにされる。引き続き、一般的には端面の加工が必要となる。切り離しにおいては、機械的なスクライブおよび破断が定着しているが、貫通溶融またはウォータージェット分離等の研磨的方法も知られている。
【0003】
これらのいずれの方法も、例えば低い機械的強度または低い形状精度といった特定の欠点を有する。このように、例えばスクライブおよび破断に際しては、厚さが大きくなるにつれ、破断が斜めに生じることにより形状欠陥が増大する。ウォータージェット切断に際しては、その方法に応じて斜めに延びた分離面が生ずる。それというのも、ウォータージェット切断に際しては、くさび形に延びる切り込みが生ずるからである。
【0004】
しかしながら、種々の分離法に際して、その端面には貝殻状断口および微小亀裂が生ずることがあるため、得られる強度は大幅に低減されるか、または工作物の予定輪郭が変更される。
【0005】
亀裂長さが大きくなると、端面の強度は減少する。それには以下の式:
【数1】
が当てはまる。
【0006】
この場合に、K1cは材料の臨界応力拡大係数であり、aは亀裂長さであり、そしてσresは微小亀裂が拡大する前の亀裂の最大応力負荷である。
【0007】
後続加工では、一般的には特別な成形工具を用いて特別な形状(C字状研削面、平面研削面、小ファセット面)が作製される。この加工工程は当初の品質に応じて多段階となる場合もあり、その後に様々な粒度の異なる工具を用いて端面が削り取られる。
【0008】
分離の際には、常に正確な端面形態を厳密に保持できるわけではないので、一般的には前もって加工代(しろ)が取られる。この加工代はその後、端面の後続加工で取り除かれる。
【0009】
最後に、多段階の方法では、最初の研削プロセスによる表面下損傷(subsurface damages)も後続工程により除去しなくてはならない。その粗研削が、端面のひずみ取り、または(大まかな)輪郭作製のための第1の付形的な研削工程として想定される。このことは、とりわけ高い形状精度を生じない分離法の場合に重要である。その後に第2の工程(細研削)により、その過程に応じた表面品質とそれによる強度とを備えた最終輪郭が得られる。研削プロセスが細かいほど、材料も一層ゆっくりと除去されるため、第2の工程は長引くが、それにもかかわらず表面下損傷の除去のためにはより厚い層を削り取らねばならない。この状況においては表面品質はしばしば、例えば透明性または粗さに関する光学的要求に添うものではない。実現された端面品質では十分でない場合に、任意選択で、輪郭を変えずに表面品質だけを改善する研磨工程(例えば、低下された粗さ、より高い透明性、より高い強度等)が端面仕上げのために行われる。すべての記載された方法工程は、詳しくは複数の個別の方法工程からなり得る。
【0010】
米国特許出願公開第2015/165548号明細書(US2015/165548A1)は、ガラスのフィラメント化と、それに引き続いての生成端面の研磨とを記載している。さらなる過程において、傾いた角度での端面縁部領域の2回のフィラメント化により輪郭が生成される。このプロセスでは、強化されていないガラスの場合には特に、穿孔された小さな端面領域(三角形の断面を有する)が確実にバルク材料から分割されるが、破片を残らず取り出さねばならないという問題がある。同様の方法は、米国特許出願公開第2014/239552号明細書(US2014/239552A1)にも記載されている。
【0011】
したがって、本発明の基礎となる課題は、ガラスおよびガラスセラミックにおける端面加工を、労力、精度、および生産費用に関して改善することである。その場合に、端面の品質は、貝殻状断口および微小亀裂、強度および視覚的印象に関して、少なくとも上記の製造方法に匹敵するべきである。
【0012】
前記課題は、独立形式請求項の主題によって解決される。有利な実施形態および発展形態は、それぞれの従属形式請求項に示されている。
【0013】
超短パルスレーザーを使用することで、ガラスを引き続き分離することができるように構造化(フィラメント化)することができる。その分離は、場合により機械的もしくは熱機械的または同等の手段で促進される。その場合に生ずる端面は、強度に関して研削された端面に匹敵する値を有する。
【0014】
驚くべきことに、その際に得ることができる端面の精度に基づいて、端面研削のような後続の方法工程をより一層正確に使用できることが判明した。つまり1つの方法工程しか必要とされず、この方法工程をプロセス工学的に必要とされる許容差なく使用することができ、それにより明らかにより迅速なプロセス速度で実施することができる。特に、高い精度に基づき、分離に際して粗研削は省くことができる。さらに、分離過程で既に達成された高い形状精度に基づいて、従来の多段階の研削後処理の場合の細研削と比較して、後続の研削において取り除く必要がある材料は明らかにより少ないことも判明した。それにより、プロセス速度を2倍高めることができ、それどころか一般的に2.5倍または3倍高めることもできる。
【0015】
特に端面品質は、強度に関して従来のように研削された端面に匹敵するものである。さらに驚くべきことに、視覚的な外見に関して、超短パルスレーザーを用いた事前分離により得られた端面は、研削された端面と目立った違いは無いことが確認された。したがって、両方の方法を端面の最終生成のために組み合わせることができる。それにより、形状的に単純な工具を使用することもできるため(例えばファセット面で)、一連のプロセスを同じ品質でより好ましいものにすることができる。その場合に研削体積をさらに一層減らすことができ、それにより加工速度を相応して高めることができ、そして工具の消耗を明らかに低減することができる。さらに、それにより、レーザー法により与えられる現在の精度を明らかに上回る精度を有するガラス物品を作製することができる。
【0016】
したがって、本発明は一般的に、2つの方法、すなわち一方のフィラメント化および割断または分離と、もう一方の端面研削とからなる組み合わせにより端面が加工されている平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントを規定している。つまり、これらの方法は、第1の方法としては、1本の線に沿って並んで存在するフィラメント形状の損傷部を導入した後に、その線に沿って分離することで端面を形成することであり、第2の方法としては、前記端面を研削により加工することである。端面の研削は、本発明の特に有利な実施形態によれば、全面では行われず、ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントの側面に相接している端面表面の一方または特に両方の帯状の縁部領域に限定して行われる。
【0017】
特に、本発明は、平坦なガラス部材またはガラスセラミック部材からガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントを製造する方法であって、
− 1本の分離線に沿って並んでいるフィラメント形状の損傷部が、前記ガラス部材またはガラスセラミック部材の内部に作製され、かつ
− 前記損傷部は、超短パルスレーザーのレーザーパルスにより作製され、ここで、前記ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントの材料は、前記レーザーパルスに対して少なくとも部分的に透過性であるので、前記レーザー光線はそのガラスまたはガラスセラミック中に入り込み、内部に前記損傷部を作製することができ、かつ
− 前記のパルス化されたレーザー光線および前記ガラス部材またはガラスセラミック部材の表面は互いに相対的に移動され、こうして該レーザーパルスの前記ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントの表面への衝突点は、前記分離線に沿って並んで繋がり、かつ
− 該分離線に沿って並んで配置された前記フィラメント形状の損傷部の導入後に、前記分離線での分離により、前記ガラスエレメントもしくはガラスセラミックエレメントが取り外されるか、または前記ガラス部材もしくはガラスセラミック部材から取り出され、かつ
− 前記分離に際して形成される前記ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントの端面表面は、部分的に研削により加工され、こうして該端面表面は、前記フィラメント形状の損傷部の導入および分離により作製された少なくとも1つの帯状の領域と、相接している研削によりさらに加工された少なくとも1つの帯状の領域とを有する、前記方法を規定している。
【0018】
こうして作製されたこれらの両方の帯状の領域は、とりわけその表面状態に関して異なっているが、この差異は一般的に裸眼では知覚できない。その前に導入されたフィラメント形状の損傷部は、ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントを取り出した後に得られる端面表面において、その端面表面の長手方向に対して横断して延びる互いに平行に存在する構造物として確認することができる。それに対してこれらの構造物は、研削によりさらに加工された領域では、少なくとも部分的に材料の除去により取り除かれている。
【0019】
そのため、上記の方法により製造可能な平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントは、2つの相対する側面と、それらの両方の側面を結ぶ端面表面とを有し、該端面表面が、少なくとも1つの第1の長く延びた帯状の端面領域と、少なくとも1つの第2の長く延びた、研削面により形成されている帯状の端面領域とを含む。これらの端面領域は、長手方向で端面表面に沿って、かつ側面に沿って、したがってつまりは端面の長手方向に対して平行に延在している。前記第1の端面領域は、間隔を空けて平行に並んでいる細長いフィラメント形状の損傷部を有し、該損傷部の長手方向は、側面に対して横断して、かつ第1の端面領域の表面に沿って延びている。一般的には、レーザー加工においてレーザーの進行速度もパルス繰り返し率もほぼ一定である。それに伴って、前記フィラメント形状の損傷部も等間隔で配置され、したがって一定の中心間距離で互いに配置される。
【0020】
本発明は、より厚い基材のために特に適している。この点については、レーザーが体積内に入り込み、そこで損傷部の導入により予定された分離面を正確に定めることができるという格別な利点がある。それに対して、機械的な方法は一般的に外部からしか作用することができず、それにより促されて分離面が進行し、それにより寸法上の不正確さがもたらされる。本発明は一般的に、1ミリメートル〜20ミリメートルの範囲の、有利には2ミリメートル〜15ミリメートルの範囲の、特に有利には3ミリメートル〜10ミリメートルの範囲の厚さを有するガラス部材またはガラスセラミック部材のために適しており、相応して前記範囲の厚さを有するガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントの製造のためにも適している。
【0021】
本発明を、以下で図面に関連付けてより詳細に説明する。それらの図面では、同じ符号は、それぞれ同じまたは対応する要素を指示している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】フィラメント形状の損傷部を導入するためのレーザー加工装置を示す。
図2】フィラメント化のためのベッセルビームを発生させるための光学的装置を示す。
図3】ガラス部材またはガラスセラミック部材からエレメントを取り外すためのレーザー加工装置を示す。
図4】ガラス部材またはガラスセラミック部材から取り出されたエレメントを示す。
図5】帯状の端面領域の研削によるガラス部材またはガラスセラミック部材のさらなる加工を示す。
図6】加工が終わったガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメントを示す。
図7】ファセット面を有する端面の断面を示す。
図8】C字状研削面を有する端面の断面を示す。
図9】フィラメント化された後に研削された端面の顕微鏡写真を示す。
【0023】
本発明による方法に関しては、平坦なガラス部材またはガラスセラミック部材2から、定められた寸法を有するガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3が取り出される。図1は、この方法工程を実施するためのレーザー加工装置1の実施例を示す。予定される分離線4に沿って、細長いまたはフィラメント形状の損傷部の導入により事前分離が行われる。想定される分離線4も、それとともに導入された損傷部6の経路も、取り外されたガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3の外側輪郭を辿っている。
【0024】
図1に示される実施例では、それに応じて想定される分離線の経路に相応して、ガラス部材またはガラスセラミック部材2から長方形のエレメントが切り取られるべきである。分離線4は、必ずしも外側輪郭全体に沿って通じている必要はない。例えば、ガラス部材またはガラスセラミック部材2の外側輪郭と、取り外されるべきガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3の外側輪郭とが部分的に一致しており、かつこの領域に沿って事前分離が実施される必要はないと考えることもできる。
【0025】
分離線4に沿って並んだフィラメント形状の損傷部6をガラス部材またはガラスセラミック部材2の内部に作製するために、超短パルスレーザー10が装置1の構成要素として備えられている。超短パルスレーザー10はレーザーパルス8を放出し、そのレーザーパルスは、ガラス部材またはガラスセラミック部材2の側面25上のそれぞれの衝突点80において衝突し、該部材の体積内に入り込む。レーザーパルス8は、衝突点80が分離線4上にあるように側面25に向けられる。進行装置によって、その場合にパルス化されたレーザー光線およびガラス部材またはガラスセラミック部材2の表面は、互いに相対的に移動され、こうしてレーザーパルス8の衝突点80は、ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント2の表面20上で分離線に沿って並んで繋がる。図1に示される実施例では、ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント2は、衝突点80の隣に示される矢印の方向で分離線4に沿って移動される。この実施例では、進行装置としてXYテーブル17が備えられ、それを用いてガラス部材またはガラスセラミック部材2は側面25の平面内で移動することができる。
【0026】
材料中での細長いフィラメント形状の損傷部の形成は、特に高エネルギーレーザーパルスの自己集束によって生じることができる。また材料中で細長い焦点を生ずる光学系を設けることもできる。そのような光学系のための一例は、Axikonである。線焦点は、好ましくは10mm以下の長さ、および10μm以下の直径を有する。集束の機構とは無関係に、ガラス材料またはガラスセラミック材料の損傷部は、特に高エネルギーレーザー光によるプラズマの発生により引き起こされる。
【0027】
細長いフィラメント形状の損傷部6は、多光子吸収により生成され、その多光子吸収の活性範囲は、適切な光学系により調整および形成することができる。これは、レンズの焦点範囲における非線形カー効果によるレーザー光線の自己集束によるフィラメント化であってもよく、その機構は、例えば国際公開第2012/006736号パンフレット(WO2012/006736A2)に記載されている。しかしながら、その代わりに、またはそれに加えて、例えばAxikonまたは球面収差を有するレンズのような特別な光学系によっても線状の焦点領域を生成することができ、それに沿って多光子吸収プロセスを狙い通りに引き起こすことができる。そのような光学系は、例えば仏国特許出願公開第2989294号明細書(FR2989294A1)、韓国特許出願公開第20140072448号明細書(KR20140072448A)、または米国特許出願公開第2012/0234807号明細書(US2012/0234807A1)に記載されている。線焦点の生成のための光学系の使用は、カー集束およびプラズマ発散の間の脆弱な釣り合いを顧慮する必要がないため、実際により均一な材料の損傷部を作製することができるという利点を有する。また1つの光学系により材料中の強度分布とともに、線状の損傷部の長さも狙い通りに調整することができる。
【0028】
一般的に、進行の様式および方式とは無関係に、前記の並んで配置されるフィラメント形状の損傷部が1マイクロメートル〜15マイクロメートルの範囲の、好ましくは2マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲の中心間距離を有するように、超短パルスレーザー10の繰り返し率ならびに前記パルス化されたレーザー光線および前記ガラス部材もしくはガラスセラミック部材2の表面の互いに相対的な移動における進行速度を調整することが有利である。この距離は、迅速なプロセス速度において、ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3を、さらに簡単かつ確実に取り出すことができることを保証する。
【0029】
長いフィラメント形状の損傷部の作製のために特に有利であるのは、一般に、超短パルスレーザー10のバーストモードでの動作である。この動作モードでは、レーザーパルス8は、シングルパルスとして放出されずに、パルス群の形で放出される。これらのパルス群はバーストと呼ばれる。したがって、本発明の発展形態では、バーストまたはパルス群の形の時間的に連続して続くレーザーパルスの放出の形でレーザー10の動作が規定されており、その際、好ましくはこのバーストの各々が、フィラメント形状の損傷部6のそれぞれ1つを生成する。
【0030】
そのようなパルス群は、一般的に、通常の単発の動作でのシングルパルスよりも幾らかより大きなエネルギーを有する。しかしながら、バーストのパルス自身は、シングルパルスよりも明らかに低いエネルギーを有する。さらに典型的には、バースト内のパルスのパルスエネルギーは減少する。特定のレーザーにおいて、バースト内のパルスのエネルギー分布を調整することができる。したがって、バーストモードは、1つのパルス群内のパルスの時間間隔が2つのパルス群の間の時間間隔よりも小さく、かつ1つのパルス群内のパルスのパルスエネルギーがパルス毎に減少するパルス群を、レーザーが放出するというように特徴付けることができる。
【0031】
本発明による適切なレーザー源は、好ましくは1064±5ナノメートルの波長を有するネオジムドープされたイットリウム−アルミニウム−ガーネットレーザーであるが、その波長は532±5ナノメートルまたは355±5ナノメートルであってもよい。レーザー源は、好ましくは、5kHzから200kHzの間の、有利には10kHzから150kHzの間の、さらに特に有利には30kHzから110kHzの間の反復率で動作する。走査速度は、反復率に依存して、好ましくは隣り合ったフィラメント形状の損傷部の距離が、2マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲にあるように選択することができる。
【0032】
本発明の実施形態によれば、特に異なる速度の場合にもできる限り変わらない距離を達成するために、シングルパルスまたはバーストの形態におけるレーザーパルスの反復率が、レーザーとガラス部材またはガラスセラミック部材との間の相対速度に依存して適合される動作モードも特に有利である。したがってその適合は、特にまたより高い進行速度の場合により高い反復率が調整されるように行われる。
【0033】
この場合に、この実施形態の発展形態によれば、真っ直ぐな区間は、例えば湾曲した区間域よりも高い反復率(および速度)で削り取られることが規定される。それにより、複雑な形状も高い精度で、しかしながら特に高い平均速度でも実現することができる。
【0034】
その場合に、レーザーインパルスの適切なパルス時間は、100ピコ秒未満の範囲であり、有利には20ピコ秒未満である。前記パルス時間は、1ピコ秒未満であってもよい。その場合に、レーザー源の一般的な出力は、特に好ましくは40ワット〜200ワットの範囲である。フィラメント形状の損傷部を達成するためには、本発明の有利な発展形態によれば、200マイクロジュールを上回るバーストにおけるパルスエネルギー、さらに有利には500マイクロジュールを上回る全バーストエネルギーが使用される。
【0035】
有利には、約10ワット〜200ワットの範囲の出力を有するレーザー10が使用される。
【0036】
ガラスまたはガラスセラミック2に与えられるレーザーエネルギーは、特にバーストの形態のレーザーパルスの場合に、レーザーパルスにつき>300μJ、有利には>400μJ、さらに特に有利には>500μJである。
【0037】
バーストモードでのレーザー10の動作の場合に、反復率は、バーストの放出の繰り返し率である。前記パルス時間は、レーザーがシングルパルス動作またはバーストモードで動作するかどうかとは実質的に無関係である。バースト内のパルスは、一般的にシングルパルス動作におけるパルスに類似したパルス長さを有する。
【0038】
フィラメント形状の損傷部6は、光伝播に従って表面から材料中にまで、つまり相対する側面に向かう方向で延びている。前記損傷部6の導入が終わり、それらの損傷部がいわば予定された分離線4の下に延びている並んで配置されたフィラメントからなるカーテンを形成するか、またはそれらの損傷部が体積内にある面上に存在する場合に、引き続いて、その製造されるべきガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3を取り出すことができる。
【0039】
図2は、ベッセルビームの生成のための光学要素9によるレーザーパルス8の光路を図示している。ベッセルビームにより、長さdの線焦点が達成され、それに沿ってほぼ変わらない光強度が光軸の範囲内に存在する。光路は、図2の描写においては左から右へと進行する。符号82により、光学要素に衝突する前のレーザーパルス8の空間的強度プロフィールが示されている。レーザーパルス8は、一般的にガウス形状の強度プロフィールを有する。光学要素を通過した後に、空間強度プロフィール84が、極めて強く高められた強度を伴うベッセルビームの形態で光軸上に形成される。この強度プロフィールは、区間dに沿って実質的に保持される。それに応じて、光学要素9は、線焦点への集束をもたらす。そのような集束を得るために、特に光学要素9としてAxikonが適している。
【0040】
一般的に、記載された実施例に限定されるものではないが、ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3の取り出しのための分離線4での分離は、該分離線に沿ったガラス部材またはガラスセラミック部材2の局所加熱により行うことができるか、または少なくとも促進することができる。そのためには、レーザー光線による加熱が特に適している。レーザーによるこの分離工程が、図3に示されている。局所加熱は、CO2レーザーのレーザー光線110を、ガラス部材またはガラスセラミック部材2の側面25上の分離線4に沿って再び案内することにより実施される。フィラメント形状の損傷部の導入の工程の場合と同じ移動機構を使用することが考えられる。したがって、図3に示される実施例では、図1からの装置に相応して同様にレーザーは定位置で保持され、ガラス部材またはガラスセラミック部材2がXYテーブル17により移動される。この移動機構はもちろん例示的なものに過ぎない。レーザー光線の衝突点とガラス部材またはガラスセラミック部材2との間の相対移動は不可欠である。局所加熱によって、フィラメント形状の損傷部6がある面に沿った裂け目111の形成と、取り出されるべきガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3の周囲の材料からの分離とをもたらす機械的応力が発生される。
【0041】
図4は、取り出された平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3を示す。該ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3は、2つの相対する側面25、26、ならびに周囲を取り巻く端面表面24を有する。該エレメント3の厚さは、好ましくは1ミリメートル〜20ミリメートルの範囲にあり、特に有利には5ミリメートル〜15ミリメートルの範囲にある。前記端面表面においては、依然としてレーザー構造が、例えばフィラメント形状の損傷部6の形で認識可能である。該フィラメント形状の損傷部は、それらの長手方向で、一方の側面25から相対する側面26への方向に延びている。レーザーパルス8の入射が側面25に対して垂直である場合に、フィラメント形状の損傷部の長手方向は、相応して側面25の表面垂線の方向にある。
【0042】
従来の分離法に対して、この方法は高精度の利点を有する。ここで4mmのガラス部材またはガラスセラミック部材の厚さの場合には従来のスクライブ破断により、例えば0.6mmの許容差が保たれる。予定された正確な寸法は、その後に適切な程度まで研削することにより得られる。その場合、削り落とすためには1面あたり1mm〜2mm、例えば1.3mmの送りが必要となる。ガラス部材またはガラスセラミック部材の厚さが大きくなるにつれ、切断時の不正確さがさらに増大する。相応してより大きな許容差が考慮されるべきである。
【0043】
それに対して本発明による方法では、せいぜい、製造されるべきエレメントの輪郭が、超短パルスレーザーによる加工工程の経過において削り取りが不可能である場合には、ガラス部材またはガラスセラミック部材の取り付けの際に不正確さが生じ得るにすぎない。そのような不正確さは、一般的に0.2mm未満、有利には0.1mm未満、特に有利には0.05mm未満の範囲で変動する。
【0044】
しかしながら、本発明によれば、端面加工は、ガラス部材またはガラスセラミック部材3の取り出しではまだ完結しない。さらに機械的な微細加工が行われる。しかしながら、この微細加工は、好ましくは外側の寸法がもはや小さくならないように行われる。いずれにせよ、分離の際に形成されるガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3の端面表面24は部分的に研削によって、該端面表面24が、フィラメント形状の損傷部の導入および分離により生成される少なくとも1つの帯状の領域と、相接している研削によりさらに加工された帯状の領域とを有するように加工される。
【0045】
図5は、先に説明されたさらなる端面加工に際してのガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3を示す。端面表面24から側面25、26の間の移行部のエッジ27、28は、依然として鋭角であり、相応して傷つきやすい。ここで、これらをより衝撃に強くするために、端面表面のプロフィールをエッジ研削により変化させる。そのためには、側面25、26に相接している帯状の領域242、244を研削により加工することで、エッジ27、28は面取りされる。図5に示される実施例の場合に、端面表面24の帯状の領域242、244の研削は、2つの回転する研削ヘッド14、15を備える研削装置13により実施される。該研削装置13は、書き込まれた矢印に沿って端面表面24に接して寸動され、エッジ27、28を含めて領域242、244は、斜めに削られる。
【0046】
一般的に、その研削により、端面表面24から相接している側面25、26までの移行部をなすファセット面を生成することができる。有利には、図5に示される実施例がその場合であるように、少なくとも1つのファセット面20、21が側面25、26の各々のエッジで削り出される。
【0047】
図6は、両側のファセット面242、244を有する、加工が終わったガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3を示している。ガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3の端面表面24は、今や上記の製造に基づいて、研削面により形成されている、少なくとも1つの第1の長く延びた帯状の端面領域240と、少なくとも1つの第2の長く延びた帯状の端面領域、ここでは2つの端面領域242、244を有している。これらの端面領域240、242、244は、長手方向で端面表面24の長手方向に沿って延在している。その場合に、第1の端面領域240は、レーザー加工により導入された、等間隔で平行に並んだ細長いフィラメント形状の損傷部6を有する。損傷部の長手方向は、側面25、26に対して横断して、好ましくはそれに対して垂直に、かつ第1の端面領域240の表面に沿って延びている。前記ガラス部材またはガラスセラミック部材3は、フィラメント形状の損傷部6のところで分離されたので、これらの損傷部は、第1の端面領域240の表面に、特に溝状の細長い窪みとして存在していてよい。
【0048】
図7は、先に記載された実施形態を明確に示すために、上記のように加工されたファセット面を有するガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3の断面形状を示している。端面表面24は、第1の端面領域240により形成され、その際、側面25、26との移行部は、それぞれ幅の狭いファセット面20、21として形成された第2の端面領域242、244によって形成される。第2の端面領域242、244の傾きは、それぞれ第1の端面領域240の傾きと、相接している側面25または26の傾きとの間にある。そのうえ、垂線の方向に関しても同じことが当てはまる。したがって、ここで第2の端面領域242、244は、それぞれ1つのファセット面20、21を形成し、それらの垂線方向は、第1の端面領域240の垂線と、それらのファセット面に相接している側面25、26の垂線との間にある。
【0049】
図8は、本発明のさらなる実施形態を示している。この実施形態では、第1の端面領域240および第2の端面領域242、244によりC字形状の端面表面が得られる。本発明のこの実施形態による平坦なガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント3の場合には、端面表面24は、特に少なくとも部分的に、2つの湾曲して延在している第2の端面領域242、244の間に第1の端面領域240が延在しているC字型輪郭を有している。
【0050】
図8に示される実施例の場合のように、ここでも第2の端面領域242、244は、第1の端面領域240を取り囲み、第1の端面領域240から側面25または26への移行部を形成している。直線の光伝播により、本発明のもう1つの実施形態の場合のように第1の端面領域240は、その断面において直線に延在している。第2の端面領域242、244の表面の湾曲により、該表面の傾きは、第1の端面領域の方向でも側面の方向でも、これらの相接している表面領域の傾きに近づいていく。しかしながら、その場合に、前記移行部に依然としてエッジが存在していることは排除されない。C字状研削面は、エッジの破損に対して特に抵抗性がある。図7および図8による実施例を互いに組み合わせることができることは当業者には自明である。一方では、周囲を取り巻く端面が、C字状研削面を有する区分と、ファセット面を有する区分とを有していてもよい。また、一方の側面側に図7のようなファセット面が設けられ、相対する側にC字状研削面の面取りされた端面領域が設けられてもよい。最後に、両方の側面側で、面取りされた端面領域に加えてファセット面が存在してもよい。
【0051】
以下で、本発明による方法と、従来の方法とを、ガラス部材またはガラスセラミック部材2の切断について比較する。基材としては、両方の実施例において、8mmの厚さを有するソーダ石灰板ガラスを用いた。従来の加工においては、ダイアモンドスクライブホイールでスクライブし、次いで破断によりガラスエレメントを取り出した。C字状研削面の導入は、2工程において、粒度D121および8m/分の進行で、次いで粒度D76および5m/分の進行で行った。
【0052】
本発明によれば、板ガラスを、1064nmの波長、100kHzの繰り返し率、および4つのバーストからなるレーザーパルスを有するピコ秒レーザーによって穿孔した。穿孔間隔、つまり隣り合ったフィラメント形状の損傷部の間の中心間距離は5μmであった。分離は、分離線をCO2レーザーのレーザー光線でたどり直すことで行った。レーザースポットは8mmの直径を有しており、レーザー出力は260Wであった。C字状研削面の湾曲した端面領域は、粒度D76および12.5m/分の進行による1回の研削により導入された。端面の経路は、スクライブ破断の場合よりも正確に与えられており、端面から側面に向かう湾曲した移行領域を得なければならないだけなので、従来の加工方法に対して単独の研削工程で十分である。さらに、その研削はより高い進行速度で行うことができる。一般的に、図面に示されるような特定の実施例に制限されることなく、つまり本発明による方法に関しては、研削に際しての進行速度は、研削装置13と前記ガラス部材またはガラスセラミック部材2の表面との間の相対移動において、毎分5メートルから毎分40メートルまでの、特に有利には毎分20メートルまでの範囲が好ましい。
【0053】
図9は、本発明により製造された、つまりフィラメント化により事前分離され、引き続き研削された端面の顕微鏡写真を示す。この写真においては、領域242において斜めに延びる研削筋を確認することができるが、それらの研削筋はフィラメント化により製造された帯状の端面領域240では見られない。しかしながら、該顕微鏡写真は、両方の領域の粗さは同様であることを示している。したがって、視覚的にも触覚的にも、異なる加工がなされた端面領域はほぼ区別することはできない。フィラメント形状の損傷部は、図9に示される写真を拡大しても認識することはできない。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザー加工装置、 2 ガラス部材またはガラスセラミック部材、 3 ガラス部材またはガラスセラミック部材2から取り出されたガラスエレメントまたはガラスセラミックエレメント、 4 分離線、 6 フィラメント形状の損傷部、 8 レーザーパルス、 9 光学要素、 10 超短パルスレーザー、 11 CO2レーザー、 13 研削装置、 14、15 研削ヘッド、 17 XYテーブル、 20、21 ファセット面、 24 端面表面、 25,26 側面、 27、28 エッジ、 80 表面20上のレーザーパルス8の衝突点、 82 集束前のレーザーパルス8の空間強度プロフィール、 84 集束後のレーザーパルスの空間強度プロフィール、 110 10のレーザー光線、 111 裂け目、 240 フィラメント化により加工された帯状の領域、 242、244 研削により後加工された帯状の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9