(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0037】
前述の一般的な記載及び以下の記載はどちらも、具体例であって例示だけを目的としており、本明細書に記載の方法及びデバイスを限定するものではないことを理解すべきである。本出願においては、特に他の記載がない限り、単数形の使用は複数形を含む。また、「又は」の使用は、他の記載がない限り、「及び/又は」を意味する。同様に、「備える(comprise、comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(include、includes)」及び「含んでいる(including)」は、限定的であることを意図していない。
(デバイス)
図1は、一実施形態による、自動的に装填された試料の2次元分離及びESIのためのデバイスの概略図である。マイクロ流体ネットワーク100は、基板102によって画定される。基板は、実施される富化ステップと適合する材料から製造される。例えば、材料の選択に関連して、化学的適合性、pH安定性、温度、光の様々な波長における透明性、機械的強度等が考慮される。
【0038】
基板102は、ガラス、石英、溶融シリカ、プラスチック、ポリカーボネート、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
ポリジメチルシロキサン(PDMS
)、シリコン、ポリフッ素化ポリエチレン、ポリメタクリレート、環状オレフィンコポリマー、環状オレフィンポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、及び/又は任意の他の好適な材料から製造することができる。平面基板及び/又は任意の他の好適な材料の、異なる層において異なる特性が所望される場合、材料の混合物を利用することができる。平面基板の異なる層において異なる特性が所望される場合、材料の混合物を利用することができる。
【0039】
チャネル106、110、114、116、118、124 122、126、132、136及び140は、マイクロ流体ネットワーク100を形成し、基板102の中に作製される。同様に述べると、基板102は、チャネル106、110、114、116、118、124 122、126、132、136及び/又は140を画定する。
【0040】
チャネルは、例えばフォトリソグラフィーエッチング、モールディング、機械加工、付加(3D)印刷等の任意のチャネル作製方法によって基板内に作製することができる。
【0041】
検体混合物及び外部試薬は、管/導管112を通して装填することができ、過剰な試薬/廃棄物は管/導管130を通して除去することができる。
【0042】
管112及び130は、例えば、溶融シリカ、溶融シリカ毛細管、シリコーン管及び/又はPTFE管を含む、実施されるアッセイに適合する任意の材料から製造することができる。
【0043】
チャネル116及び124は、検体及び/又は検体の一部(例えば、画分)を分離及び/又は富化するために使用することができる。チャネル116及び/又は124は、クロマトグラフィ分離(例えば、逆相、免疫沈降、イオン交換、サイズ排除、リガンド親和性、染色性、疎水性相互作用クロマトグラフィ、親水性相互作用クロマトグラフィ、pH勾配イオン交換、親和性、キャピラリ界面動電クロマトグラフィ、ミセル界面動電クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、アミノ酸分析HPLC、超高速液体クロマトグラフィ、ペプチドマッピングHPLC、フィールドフロー分別−マルチアングル光散乱)、又は電気泳動分離(例えば、等電点電気泳動、キャピラリゲル電気泳動、キャピラリゾーン電気泳動、等速電気泳動、キャピラリ界面動電クロマトグラフィ、ミセル界面動電クロマトグラフィ、フローカウンタバランスキャピラリ電気泳動、電界勾配集束、動的場勾配集束)を実施するために使用することができる。例えば、チャネル116は、誘導体化又は材料で充填して、第1の富化ステップを実施することができる。
【0044】
チャネル116及び/又は124の中に配置される材料は、例えば、疎水性(逆相)、免疫親和性(免疫沈降)、親和性(有効性)、サイズ(サイズ排除クロマトグラフィ)、電荷(イオン交換)、又は他の形態の液体クロマトグラフィに基づいて検体を採取するように選択することができる。
【0045】
富化材料をチャネル116及び/又は124内部に配置するために、多くの異なる方法を使用することができる。壁は、例えば、共有結合分子又は吸着分子で直接誘導体化することができ、又はビーズ、ガラス粒子、ゾルゲルなどを誘導体化してこれらのチャネルの中に充填することができる。
【0046】
試料がチャネル116の中に充填された後、洗浄液、次いで溶出試薬を管112及びチャネル114を通して導入することができる。
【0047】
溶出プロセスは、チャネル116で実施される富化方法に依存する。好適な溶出液を選択して、結合した検体の画分を溶出させることができる。幾つかの富化オプションは、溶出ステップ(例えば、サイズ排除クロマトグラフィ、電気泳動分離など)を必要としない場合がある。
【0048】
溶出液又は貫流(flow-through)は、チャネル118を通ってチャネル124の中に流れる。
チャネル124は、クロマトグラフィ富化ステップ又は電気泳動富化ステップのいずれかを行うために使用することができる。
【0049】
電源を使用してリザーバ108とリザーバ120との間に電界を印加することによって、電気泳動分離をチャネル124内で行うことができる。同様に述べると、デバイス100は、リザーバ108及び/又はリザーバ120と電気的に接触する電極を含むことができる。電源の電気的接地は、質量分析計の電気的接地に接続され、チャネル124から質量分析計への電界の連続性を提供することができる。
【0050】
IEF、
等速電気泳動(ITP
)、
キャピラリゲル電気泳動(CGE
)、
キャピラリゾーン電気泳動(CZE
)等の任意の
キャピラリ電気泳動(CE
)電気泳動法を、チャネル124で実施することができる。あるいは、チャネル124内で非電気泳動富化法を実施することができる。
【0051】
IEF又はITPの場合、濃縮された精製試料バンドは、例えば合流部126への圧力手段又は電気的手段によって移動されるであろう。リザーバ108及び134からのシース溶液は、シース及び陰極液として機能することができる。
【0052】
シース/陰極液は、電気泳動分離及び質量分析(例えば、MeOH/N
4OH/H
2O)と適合する任意の塩基性溶液であり得る。陽極液は、任意の酸性溶液(例えば、l0mMリン酸)であり得る。
【0053】
あるいは、電界を逆転させて陰極液(NaOH)をリザーバ120に充填することができ、陽極液をリザーバ108及び134内のシース溶液として使用することができる。
【0054】
合流部126は、富化された検体画分がシース溶液と混合する場所である。チャネル124内の検体画分が移動すると、溶液は合流部126を通してオリフィス128に押し出される。
【0055】
オリフィス128は、基板102の表面127によって画定される凹部内部に配置することができる。例えば、表面127は、皿穴のESI表面とすることができる。例えば、
図1に示すように、ウェル108を介して電気的に接地された富化された検体溶液は、表面127によって画定された凹部内部に完全に配置されたオリフィス128から発するテイラーコーンを形成することができる。オリフィス128及び/又は表面127は、ウェル108に対して電位差を有することができる質量分析計の入口に向けることができる。噴霧は、円錐構造から質量分析計に向かって分離するときに、基板102を出る前に、チャネル106及び140を通って供給される噴霧ガスにより隣接され得る。噴霧ガスは、任意の不活性又は非反応性ガス(例えば、アルゴン、窒素等)であり得る。
【0056】
更に、シース液体及び/又は噴霧ガスを使用することにより、最後の「オンデバイス」工程としてイオン欠乏工程の使用を可能にすることができる。シース液は、ESIの前にIEF帯電アッセイ濃縮工程の間に失われたイオンポテンシャルを補充することを可能にし、噴霧は、オフライン分析のために微細な霧でサンプルを提供する。
【0057】
表面127上にテイラーコーンを生成することによって、コーンは安定したポケット又は凹部内に形成され、撹乱する気流から保護される。加えて、皿穴を取り囲む円錐形状は、広範囲のテイラーコーン径方向断面に適応して自然に広がる接触面を有し、質量分析計の中に入る流量がより広範囲となることを可能にする。
【0058】
オリフィス128は、質量分析計の入口ポートに近接させて配置することができる。場合によっては、表面127は、質量分析計の入口ポートが、表面127によって画定される凹部内部に配置され得るように構成することができる。
【0059】
図2は、一実施形態による、3つの層を有するデバイス212の概略分解図である。
図2Aは、一実施形態による、デバイス212の上部層202を示す。
図2Bは、一実施形態による、デバイス212の中間層206を示す。
図2Cは、一実施形態による、デバイス212の底部層210を示す。
図2Dは、一実施形態による、組み立てたデバイス212を示す。3つの層202、206、210の各々は、デバイス212が実施しようとするアッセイと適合する任意の材料でできていてもよい。
【0060】
幾つかの実施形態では、層202は、光の特定の波長又は波長範囲に対して透明な材料から作製される。本明細書で使用する場合、「透明」とは、材料の一方の側の特定の波長又は波長範囲を有する光の量が、他方の側の検出器によって定量化され得るのに十分な透過率を有することを意味すると理解されたい。場合によっては、透過率が30%、50%、80%、95%、又は100%の材料は透明である。幾つかの実施形態では、関心のある波長範囲は、中間紫外線範囲(例えば、200nm〜300nm)を含み、例えば、ガラス、石英、溶融シリカ、ならびにポリカーボネート、ポリフッ素化ポリエチレン、ポリメタクリレート、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー及び他の紫外線透過材料など、の材料を透明材料として使用することができる。幾つかの実施形態では、関心のある光スペクトルは、可視スペクトル(例えば、200〜900nm)を超えて拡張される。
【0061】
貫通孔204が層202内に作製され、デバイスの外部から下層(例えば、層208)内のチャネルネットワークへの圧力及び電気的インタフェースを可能にする。
【0062】
図2Bは、チャネルネットワーク208を含有するデバイス212の内部中間層206を示す。チャネルネットワークは、上部層202に作製された貫通孔とインタフェースするように設計されている。チャネルネットワーク208は、入口及び出口管/導管209と、富化された検体画分を排出するためのオリフィス205と、視認可能な富化ゾーン207とを含む。富化ゾーン207は、その深さが層206の全体の厚みであるように作製される。他の実施形態では、ゾーン207は、層206の全体の厚み未満であり得る。
【0063】
幾つかの実施形態では、層206は、光の特定の波長又は波長範囲に対して不透明及び/又は透明でない材料から作製される。本明細書で使用する場合、「不透明」とは、一方の側の光の量が、他方の側の検出器によって定量化されることを可能にするには不十分な透過率を有し、チャネルネットワーク内のゾーンが層206の全体の厚みと同程度に深い領域以外において、この光を効果的に阻止する材料を意味すると理解されたい。
【0064】
図2Cは、デバイス212の底部層210を示す。底部層210は、例えば、固体基板とすることができる。幾つかの実施形態では、底部層210は、層202と同じ透過率を有する材料から作製することができる。
【0065】
図2Dは、一実施形態による、組み立てられた上部層202、中間層206、及び底部層210を含むデバイス212を示す。入口管及び出口管209、リザーバ204及びオリフィス205は、デバイス210が組み立てられた後でも依然として接近可能である。幾つかの実施形態では、上部層202全体及び/又は底部層210全体を透明にすることができる。他の実施形態では、上部層202の一部及び/又は底部層210の一部は不透明であり、上部層202及び/又は底部層210の別の部分が透明であり得る。例えば、上部層210及び/又は底部層210は、デバイス212が組み立てられたときに富化ゾーン207の少なくとも一部と整列する光学ウィンドウを画定することができる。
【0066】
図3は、一実施形態による、マイクロ流体デバイス302を通る光路の概略図である。
図3Aは、マイクロ流体デバイス302の上面図を示す。
図3Bは、光源306と検出器308との間に配置されたマイクロ流体デバイス302を示す。検出器308は、デバイス302を通過する光を測定するように配置される。
図3には示されていないが、マイクロ流体デバイス302は、
図1及び
図2で説明したのと同様のチャネル構造を有することができるが、参照しやすいようにチャネル構造は示されていない。幾つかの実施形態では、マイクロ流体デバイス302の上面の一部は不透明であり、光源306から投影された光を完全に又は実質的に覆い隠し、検出器308に到達しないようにする。上面の不透明な部分は、試料の特性の検出が望ましくない部分においてデバイスを通る光の透過を実質的に防止する。例えば、チャネル304が非透明層の厚み全体を横断するので、幾つかの実施形態では、マイクロ流体デバイス302は、1つ以上のチャネル領域304にわたって不透明ではない(例えば、一部の光は通過させる)。
【0067】
幾つかの実施形態では、この透明な(1つ又は複数の)チャネル領域304は富化ゾーンであってもよく、ここにおいて光学検出を使用して検体を検出し、富化の進行をモニタし、及び/又はデバイスから排出させる、富化された(1つ又は複数の)検体画分をモニタすることができる。幾つかの実施形態では、透明チャネル304を通過する光の量の変化を用いて、検体画分がこのチャネル内にある間に吸光度を測定する。従って、幾つかの実施形態では、(1つ又は複数の)チャネル領域304が光学スリットを画定し、それによりマイクロ流体デバイス302の一方の側に配置された光源306が透明な(1つ又は複数の)チャネル領域304のみを通って検出器308を効果的に照射する。このようにして、迷光(例えば、透明な(1つ又は複数の)チャネル領域及び/又は試料を完全に通過しない光)を検出器308から効果的に遮断することができ、それによりノイズを低減させ、検出器308が透明な(1つ又は複数の)チャネル領域304内部のサンプルを観察する能力を向上させることができる。幾つかの実施形態では、透明な(1つ又は複数の)チャネル領域304は、2つの富化ゾーンの間にあり、上流の富化ゾーンから溶出したときに検体画分を検出するために使用することができる。
【0068】
(方法)
図6は、一実施形態による、検体混合物富化の方法を示す。この方法は、20において、検体混合物をマイクロ流体デバイスに装填及び/又は導入することを含む。マイクロ流体デバイスは、
図1〜
図3を参照して上述したマイクロ流体デバイスと同様であり得る。幾つかの実施形態において、検体混合物は、例えば、グリカン、炭水化物、DNA、RNA、インタクトタンパク質、消化されたタンパク質、ペプチド、代謝産物、ワクチン、ウイルス及び小分子であり得る。幾つかの実施形態では、検体混合物は、培養細胞の溶解物、体細胞由来の治療剤、又は腫瘍もしくは他の組織由来の細胞などのタンパク質の混合物、バイオ医薬品を含む組み換えタンパク質、血液由来細胞、灌流又は任意の他のソースからのタンパク質混合物であり得る検体混合物は、デバイスに直接装填することができ、又は複数の混合物の連続分析のためにオートサンプラに装填することができる。
【0069】
マイクロ流体デバイスは、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンを含むことができる。幾つかの実施形態では、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンは、クロマトグラフィ分離のために構成することができる。例えば、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンは、検体混合物からの検体を結合するように構成された媒体を含有することができ、及び/又はそれ以外の場合にはクロマトグラフィ分離を遂行する。21において、第1の富化を実施することができ、例えば、クロマトグラフィ分離を第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンで行うことができる。検体混合物がタンパク質混合物である実施形態などの幾つかの実施形態では、21における第1の富化はタンパク質混合物を単純化することができる。21における第1の富化は、検体の任意の識別可能な性質に基づくことができる。
【0070】
この富化された検体画分は次いで、22において溶出される。例えば、溶出液をマイクロ流体デバイスの中に注入して、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーン内部に配置された媒体から富化された検体画分を移動させることができる。幾つかの実施形態では、富化された検体画分の富化及び/又はモビライゼーションを画像化することができる。例えば、上述のように、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンは、光学スリットを画定することができる。光をマイクロ流体デバイスに投影することができ、検出器が第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンを通過する光を検出することができる。試料又はその一部は、吸光度及び/又は蛍光画像化技術を介して検出することができる。
【0071】
マイクロ流体デバイスは、第2の分離チャネル及び/又は富化ゾーンを含むことができる。幾つかの実施形態では、第2の分離チャネル及び/又は富化ゾーンは、電気泳動分離のために構成することができる。23において、例えば溶出液に対して第2の富化を実施することができる。例えば、電界及び/又は電位を第2の分離チャネル及び/又は富化ゾーンを横切って印加することができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、第2の富化は、23において、検体混合物の画分が第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンと第2の分離チャネル及び/又は富化ゾーンとの交差点に配置されたときに開始することができる。例えば、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンをモニタ(例えば、画像化)することができ、関心のある画分が交差点に到達したときに電位及び/又は電界を印加することができる。
【0073】
幾つかの実施形態では、23における第2の富化は、電荷特性(電荷アイソフォーム)に基づいて富化された画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、ゲル等電点電気泳動、モビライゼーションを用いた等電点電気泳動、全カラムイメージングを用いた等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィ、pH勾配交換クロマトグラフィ、等速電気泳動、キャピラリゾーン電気泳動、キャピラリゲル電気泳動又は他の、例えば電荷に基づいた富化技術、を含むことができる。
【0074】
21における第1の富化はクロマトグラフィ富化として記載され、23における第2の富化は電気泳動として記載されたが、任意の好適な富化を任意の好適な順序で実施できることを理解されたい。例えば、21における第1の富化及び23における第2の富化は、両方ともクロマトグラフィ又は両方とも電気泳動であり得る。別の例として、21における第1の富化は電気泳動とすることができ、23における第2の富化はクロマトグラフィとすることができる。
【0075】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、酸化などの疎水性変化に基づいて富化された画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、逆相クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、親水性相互作用クロマトグラフィ、又は例えば疎水性に基づく他の富化技術を含むことができる。
【0076】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、翻訳後修飾、ガラクトシル化、フコシル化、シアリル化、マンノース誘導体及び他のグリコシル化、ならびに糖化、酸化、還元、リン酸エステル化、スルファン化(sulphanation)、ジスルフィド結合形成、アミド分解、アシル化、ペギル化、開裂を含むグリコフォーム、抗体−薬物複合体(ADC)、タンパク質−薬物複合体、C末端リジン処理、他の天然及び非天然起因の翻訳後修飾、及びタンパク質の修飾後に導入された他の化学的及び構造的修飾等、に基づいて富化された画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、結合アッセイ等を含むことができる。
【0077】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、酸化などの疎水性変化に基づいて富化された画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、逆相クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、親水性相互作用クロマトグラフィ、又は疎水性に基づく他の富化技術を含むことができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、突然変異、製造中のアミノ酸置換などによって引き起こされるような、一次アミノ酸配列に基づいて富化された画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、電荷アイソフォーム、疎水性変化、又は一次アミノ酸配列の差異を区別することができる他の富化技術による分離を含むことができる。
【0079】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、有効性に基づいて富化された画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、バイオアッセイ、酵素阻害アッセイ、酵素活性化アッセイ、競合アッセイ、蛍光偏光アッセイ、シンチレーション近接アッセイ、又は有効性に基づく他の富化技術等を含むことができる。
【0080】
幾つかの実施形態において、1以上の富化は、親和性に基づいて富化された画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、溶液相の標的結合、ビーズベースの標的結合、表面結合標的、免疫沈降、プロテインA結合、プロテインG結合等を含むことができる。
【0081】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、質量又はサイズに基づいて富化された画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、キャピラリゲル電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィ、ゲル浸透クロマトグラフィ、又は質量ベースの他の富化技術を含むことができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、検体混合物は、デバイスから排出される前に3回以上の富化
及び/又は富化チャネルを経る。
【0083】
24において、富化された検体画分をデバイスから排出すことができる。幾つかの実施形態では、富化された検体画分は、IEFを介して排出することができる。24において富化された検体画分を排出することで、排出前に検体画分を濃縮することができる。
【0084】
幾つかの実施形態では、24において、エレクトロスプレーイオン化、大気圧化学イオン化等のイオン化技術を使用して検体画分が排出される。
【0085】
幾つかの実施形態では、24において、動電学的力又は流体力学的力を用いて、検体画分が排出される。
【0086】
幾つかの実施形態では、富化されたタンパク質画分は、24において、質量分析計に結合された形態でデバイスから排出される。
【0087】
マイクロ流体デバイスから排出された検体(例えば生物学的又はバイオシミラ)の質量は、例えば、飛行時間型質量分析、四重極型質量分析、イオントラップ又はオービトラップ質量分析、飛行距離型質量分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴、共鳴質量測定、ナノメカニカル質量分析によって測定することができる。
【0088】
幾つかの実施形態では、視覚化されたIEFチャネル(例えば、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーン及び/又は第2の分離チャネル及び/又は富化ゾーン)内のpi範囲をマッピングするためにpiマーカが使用される。幾つかの実施形態では、piマーカ又は両性電解質を使用して、下流の質量分析データにおけるpiマーカ又は両性電解質の存在によって、検体のpiを決定することができる。
【0089】
幾つかの実施形態では、モビライゼーション及びESI中にIEFをモニタすることができる。このようにして、質量分析データをIEFのピークと相関させることができ、ピーク分解能を維持及び/又は向上させることができる。
【0090】
幾つかの実施形態において、検体混合物及び/又はその一部は、圧力源を使用してマイクロ流体デバイス内部で移動させることができる。幾つかの実施形態では、モビライゼーションは静水圧で行われる。幾つかの実施形態では、モビライゼーションは化学的固定化である。幾つかの実施形態では、モビライゼーションは動電学的モビライゼーションである。
【0091】
図7は、一実施形態による、マイクロ流体デバイスの概略図である。マイクロ流体ネットワーク800は、基板802内に配置され、及び/又は基板802によって画定される。基板は、実施される富化ステップと適合する材料から製造される。例えば、材料の選択に関連して、化学的適合性、pH安定性、温度、光の様々な波長における透明性、機械的強度等は、材料を選択する際に重要であり得る。
【0092】
基板802は、ガラス、石英、溶融シリカ、プラスチック、ポリカーボネート、
PTFE、PDMS、シリコン、ポリフッ素化ポリエチレン、ポリメタクリレート、環状オレフィンコポリマー、環状オレフィンポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、及び/又は、任意の他の好適な材料から製造することができる。平面基板の異なる層において異なる特性が所望される場合、材料の混合物を利用することができる。
【0093】
チャネル806、808、810、811、817、814、812は、チャネルネットワークを形成し、基板802の中に作製される(例えば、基板により画定される)。
【0094】
チャネルは、フォトリソグラフィーエッチング、モールディング、機械加工、付加(3D)印刷などの任意のチャネル作製方法によって基板内に作製することができる。
【0095】
検体混合物及び外部試薬は、管804を通して装填することができ、過剰な試薬/廃棄物は管810及び818を通して除去することができる。
【0096】
管804、810、及び/又は818は、溶融シリカ、溶融シリカ毛細管、シリコーン管、PTFE管等を含む、実施されるアッセイに適合する任意の材料から製造することができる。
【0097】
チャネル806及び814は、分離/富化ゾーンとして指定することができる。チャネル806及び/又は814のいずれかを使用して、クロマトグラフィ分離(逆相、免疫沈降、イオン交換、サイズ排除、リガンド親和性、染色性、疎水性相互作用、親和性、キャピラリ界面動電クロマトグラフィ、ミセル界面動電クロマトグラフィ及び/又は同種のもの)、又は電気泳動分離(等電点電気泳動、キャピラリゲル電気泳動、キャピラリゾーン電気泳動、等速電気泳動、キャピラリ界面動電クロマトグラフィ、ミセル界面動電クロマトグラフィ、フローカウンタバランスキャピラリ電気泳動、電界勾配集束、動的場勾配集束)を実施することができる。例えば、チャネル806は、チャネル806内の暗い円によって表される第1の富化ステップを実施するために、誘導体化又は材料で充填することができる。
【0098】
チャネル806の中に配置された材料は、疎水性(逆相)、親和性(有効性)、サイズ(サイズ排除クロマトグラフィ)、電荷(イオン交換)、免疫親和性(免疫沈降)、タンパク質−タンパク質相互作用、DNA−タンパク質相互作用、アプタマ−塩基捕捉、小分子−塩基捕捉、又は他の形態の液体クロマトグラフィ等に基づいて検体を採取するように選択することができる。
【0099】
富化材料をチャネル806及び/又は814内部に配置するために、多くの異なる方法を使用することができる。壁は、共有結合で結合した分子又は吸着した分子で直接誘導体化することができ、又はビーズ、ガラス粒子、ゾルゲル等を誘導体化してこれらのチャネルの中に充填することができ、又はチャネルを、線状ポリアクリルアミド(LPA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、デキストランなどの線状ポリマー溶液、ポリアクリルアミドなどの架橋ポリマー溶液、液体クロマトグラフィ用マトリックス、又は他の材料、などのふるい材料で満たすことができる。
【0100】
実施される特定のアッセイに依存して、化学的反応性を有する溶液を添加することができる。場合によっては、材料の誘導体化は、充填された材料に吸着又は共有結合するであろう分子又は材料に化学的に架橋することができる分子を添加することによって、材料がチャネル806(又はチャネル814)の中に充填された後に起こり得る。例えば、プロテインA、プロテインG、エポキシなどの抗体結合分子で被覆された材料をチャネル806の中に配置することができる。その後の抗体溶液によるリンスにより、抗体で被覆された材料は残り、免疫親和性捕捉に関与することができる。場合によっては、抗体は標的検体又は溶解物と混合することができ、それにより材料上に被覆される前に、抗体が自由溶液中でその標的に結合することができる。
【0101】
富化材料がデバイスに装填された後、試料は管804を介してチャネル806の中に充填される。その後、洗浄液及び溶出試薬を管804を通してチャネル806に導入することができる。
【0102】
場合によっては、捕捉された材料に結合させるために、検出試薬が添加される。蛍光団、発色団(chromophores)又は他の検出分子などの検出部分をポリペプチドの末端において標的タンパク質へ共有結合的に結合することができる、及びリジン、システイン及び他のアミノ酸部分などのアミノ酸側鎖への結合による、多数の標識試薬が利用可能である。共有結合した検出部分によって、蛍光励起、発色団アッセイ(chromophoric assay)、又は他の間接的手段を通じてタンパク質を検出することが可能になる。場合によっては、標的タンパク質は標識化されないまま残り、220nm、280nm又はタンパク質が光を吸収する任意の他の波長による自然吸光度、又は自然蛍光を通じて検出することができる。場合によっては、タンパク質は、SYPRO(登録商標)ruby,Coomassie blueなどの、非共有結合的に結合した発蛍光性、発色性、蛍光性又は発色団の標識を用いて検出される。
【0103】
場合によっては、検出を促進するために、検出試薬が直接チャネル814に加えられる
【0104】
溶出プロセスは、チャネル806で実施される富化方法に依存する。溶出プロセスは、結合した検体の少なくとも1つの画分を溶出するように選択される。場合によっては、溶出プロセスは、熱及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、又は他の界面活性剤、グリシン、尿素、又は捕捉された検体の放出を誘導する任意の他の方法の組み合わせによって達成することができる。幾つかの富化オプションでは、直接溶出ステップ(例えば、サイズ排除クロマトグラフィ)を必要としない場合がある。場合によっては、溶出の後に変性が続く。
【0105】
次いで、溶出液は、チャネル808を通って、次の分離/富化ゾーンであるチャネル814の中に流入する。チャネル814は、クロマトグラフィ富化ステップ又は電気泳動富化ステップのいずれかを行うために使用することができる。
【0106】
電源を使用してリザーバ812とリザーバ816との間に電界を印加することによって、電気泳動分離をチャネル814内で行うことができる。チャネル806からの溶出液がチャネル808と814との交差点を通過するとき、電界を有効にし、検体をチャネル814の中に充填することができる。場合によっては、タンパク質検体がSDSのような負に帯電した界面活性剤で飽和されている標準的なゲル電気泳動モードにおけるように、検体は負に帯電している。しかし、チャネル814の極性は、例えば、タンパク質検体がセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)などの正に荷電した界面活性剤で飽和しているシステムに対応するために、容易に逆転することができる。他の場合では、タンパク質検体は、天然ゲル電気泳動におけるように、中性界面活性剤で被覆するか、又は界面活性剤なしとすることができる。この場合、選択された緩衝系におけるタンパク質標的の予想される電荷に基づいて極性が選択され、タンパク質検体がチャネル814の中に移動する。
【0107】
IEF、ITP、CGE、CZE等の任意のCE電気泳動法を、チャネル814内で実施することができる。あるいは、チャネル内で非電気泳動富化方法を実施することができる。
【0108】
チャネル814内の検体は、全カラム画像化、部分カラム画像化、及び/又は単一点検出によって見ることができる。
【0109】
場合によっては、チャネル806、814又はその両方の富化材料を除去して新しい物質で補充することができ、それによりデバイスを別の分析対象サンプルに使用することができる。
【0110】
場合によっては、
図7のようなチャネル設計をデバイス上で複数回繰り返すことができるので、2つ以上の検体試料を並行して分析することができる。
【0111】
(例)
実施形態の態様は、以下の実施例に照らして更に理解することができるが、これらは決して限定するものと解釈すべきではない。
【0112】
(実施例1)−質量分析(MS)の前にチップ上のタンパク質電荷を特性評価する
この例では、
図4に示すチャネルネットワークは、標準フォトリソグラフィーエッチング技術を用いて、ソーダ石灰ガラスのプレートから作製され、280nmの光に対する非常に低い透過率を有する。富化チャネル418の深さは、ガラス層402の厚みと同じであり、すなわち富化チャネル418は、このガラス板402の上部から底部まで全体を通過している。デバイス400は、デバイス400の一方の側に配置された光源によって照射され、デバイス400の反対側に配置された検出器によって画像化することができる。基板402は不透明であるが、富化チャネル418が光学スリットを画定するので、基板402は、富化チャネル418を通過しない光を遮断し、迷光を遮断し、画像化プロセスの分解能を向上させることができる。
【0113】
ガラス層402は、280nmの光に対して透過性(例えば透明)である2つの溶融シリカ板の間に挟まれている。
図2におけるように、上部板は、機器及び利用者がチャネルネットワークとインタフェースするための貫通孔を含有し、底部板は固体である。3枚のプレートを520℃で30分間接合する。入口管及び出口管は、切断されたキャピラリ(100μm ID、polymicro)から製造され、チャネルネットワークに結合される。
【0114】
このデバイスは、窒素ガス供給源、ヒータ、陽圧ポンプ(例えば、Parker、T5−1IC−03−1EEP)、2つの白金−イリジウム電極(例えば、Sigma−Aldrich,357383)で終端する電気泳動電源(Gamm High Voltage、MC30)、UV光源(例えば、LED、qphotonics、UVTOP280)、CCDカメラ(例えば、ThorLabs、340UV−GE)、及び試料をデバイスに装填するためのオートサンプラ、を含有する機器に搭載される。電源は、質量分析計と共通接地を共有する。機器はソフトウェア(例えば、lab View)を介して制御される。
【0115】
タンパク質試料は、バイアル瓶の中に配置されオートサンプラに装填される前に、両性電解質pH勾配及びpiマーカとあらかじめ混合される。それらは、オートサンプラから入口412を介してマイクロ流体デバイス400に装填され、富化チャネル418を通り、出口434を通りデバイスから出て廃棄物430となる。
【0116】
シース/陰極液(50%MeOH、N
4OH/H
2O)が2つの陰極液ウェル404、436に、陽極液(10mM H
3PO
4)が陽極液ウェル426に充填され、加熱窒素ガス供給源が2つのガスウェル408、440に取り付けられる。
【0117】
全ての試薬が充填された後、陽極液ウェル426及び陰極液ウェル404、436に電極を接続することで、+600V/cmの電界が陽極液ウェル426から陰極液ウェル404、436に印加され、等電点電気泳動が開始される。UV光源が富化チャネル418の下に整列され、カメラが富化チャネル418の上方に配置されて富化チャネル418を通過する光を測定し、それによって集束しているタンパク質を吸光度によって検出する。ガラス板402は、ソーダ石灰ガラスで作られ、カメラからのあらゆる迷光を遮断するように作用し、富化チャネル418を通過しない光がカメラに到達することを阻止し、測定感度を高めている。
【0118】
集束しているタンパク質の画像は、IEFの間に連続的及び/又は周期的に捕捉することができる。集束が完了すると、低圧が入口412から与えられ、pH勾配をオリフィス424の方向に移動させる。高分解能IEF分離を維持するために、電界をこの時点で維持することができる。ESIプロセス中に富化チャネル418を画像化し続けていることを活用して、タンパク質がオリフィス424から排出されている間に、各タンパク質のpiを決定することができる。
【0119】
富化されたタンパク質画分は、富化チャネル418から合流部420の中に移動すると、陰極液ウェル404、436からシース/陰極液チャネル406、438を介して合流部420に流れることができるシース液と混合される。富化されたタンパク質画分をシース液と混合することで、タンパク質画分を質量分析と互換性のある溶液に入れることができるようになり、集束されたタンパク質に電荷を復元させることができる(IEFはタンパク質を非荷電状態にする)。
【0120】
富化されたタンパク質画分は次いで、ガラス板402の皿穴表面422によって画定され得るオリフィス424に続く。富化されたタンパク質画分は、シース液ウェルと質量分析計陰極との間の電界にいったん捕捉されると、テイラーコーンを生成することができる。
【0121】
溶液が富化チャネル418からテイラーコーンを押し続けると、流体の小さな液滴がテイラーコーンから排出され、質量分析計入口に向かって飛行する。窒素ガス(例えば、150℃)は、ガスウェル408、440から流れてガスチャネル410、432を通り窒素ガスジェットを形成することができ、これがテイラーコーンに隣接し、それによりテイラーコーンから放出される液滴をマイクロ流体デバイスから出る前に細かい霧に変換することができ、それにより質量分析計での検出を補助することができる。入口412からの圧力を調整することにより、テイラーコーンのサイズを必要に応じて適合させ、質量分析計における検出を改善することができる。
【0122】
(実施例2)−逆相→IEF→MS
実施例2は実施例1と同様であり得るが、
図1を参照して説明する。チャネル116は、C18で誘導体化されたゾルゲルが充填された第1の富化ゾーンであり得る。タンパク質を装填した後、一定量の溶出液(IEF両性電解質及び標準を有するMeCN/H
2O)がチャネル116の中に充填されて、ゾルゲルに捕捉された最も疎水性の低いタンパク質を溶出することができる。溶出液は、実施例1に記載したように、IEF、UV吸光度モニタリング及び最後にESIが行われる第2の富化ゾーンであり得るチャネル124に向けられる。第1の溶出液のESIがいったん完了すると、次に一定量のより高い濃度のMeCNが使用され、2番目に低い疎水性を有するタンパク質画分が溶出される。
【0123】
(実施例3)−有効性→IEF→MS
実施例3は実施例2に類似であり得るが、生物学的薬物標的誘導体化ビーズをチャネル116の中に充填し、タンパク質を捕捉するために使用することができる。反応の親和性は、溶液相標的(競合的)、塩、pH等による溶出を通して特性評価される。
【0124】
(実施例4)−逆相→キャピラリゾーン電気泳動→MS
実施例4は実施例2と同様であり得るが、
図5を参照して説明する。タンパク質混合物は、入口521を通って充填され移動し富化ゾーン510に至ることができ、タンパク質混合物は、逆相クロマトグラフィのためにC18で誘導体化されたビーズを含有することができる。装填の間、流体はゾーン510を通過し、視認領域511を通って出口522から出て廃棄物となる。視認領域510は、280nmのUV光に対して不透明なソーダ石灰ガラスでできている内部層を横断し、上部層及び底部層は280nmの光に対して透明な溶融シリカからできている。
【0125】
280nmの光源が視認領域511の下方に配置され、CCD検出器が視認領域511の上方に配置される。
【0126】
20%のMeCN/H
2O溶液が入口521を通して充填され富化ゾーン510を通る。この溶液は、混合物中の最も疎水性が低いタンパク質に対して富化された画分を溶出する。富化されたタンパク質画分が富化ゾーン510から出口522に移動する際に、視認領域511において、富化されたタンパク質画分の280nmでの吸光度がモニタされる。画分が富化ゾーン510と富化ゾーン515との交差点に位置したとき、電源がオンにされて、リザーバ514の正電極とリザーバ504の接地との間に電界が生成される。この極性は、電源の極性を切り替えることによって容易に逆にすることができる。いったん電界が存在すると、富化されたタンパク質画分は富化ゾーン515を移動し、キャピラリゾーン電気泳動によってタンパク質が分離される。分離されたタンパク質は、合流部516でシース、電解質溶液と混合し、表面518上にテイラーコーンを形成する。
噴霧窒素ガスラインは、ポート508及び528でデバイスに接続され、チャネル512及び530を通って移動し、エレクトロスプレーからの材料がオリフィス520を介してデバイスから出る際に、その材料に隣接(flank)する。
【0127】
或いはまた、流体力学的圧力を使用して、富化されたタンパク質画分を富化ゾーン515の中に充填することができる。
【0128】
(実施例5)−免疫沈降→タンパク質溶解物のキャピラリゲル電気泳動
この例では、
図7のレイアウトによって表されるマイクロ流体チャネル層は、環状オレフィンコポリマーから作製される。同様に述べると、マイクロ流体デバイス800の基板802はチャネルネットワークを画定する。多くの用途、例えば、蛍光検出が使用される用途では、この材料が検体を検出するために必要な波長範囲の光を透過するならば、単一の材料を用いてマイクロ流体デバイス800を製造することができる。
【0129】
プロテインA被覆ビーズがチャネル806の中に充填される。これらのビーズは、プロテインAビーズに結合する関心のある標的に対する抗体の溶液でリンスされる。検体検出を妨害する抗体シェディングを減少させるために、抗体は次いで、ジメチルピメリミデート(DMP)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)などの市販の架橋試薬を用いてビーズに対する抗体に共有結合的に架橋される。免疫沈降ビーズが調製され、チャネル806に充填された後、溶解物検体試料を管804を介して充填することができる。検体が固定化抗体によって捕捉されるのに十分な時間が与えられた後、未結合タンパク質は洗浄され、管822を介して廃棄物として除去される。
【0130】
次に、タンパク質を抗体ビーズから溶出させて分析することができる。溶出は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の溶液を装填し、10分間50Cに加熱することによって達成される。いったん放出されると、溶出された検体は、チャネル808を通ってチャネル808と814との交差点に向かって流れる。検体プラグがチャネル808と814の交差点に到達したとき、リザーバ812の負極とリザーバ816の正極との間で電界をオンにすると、負に荷電したタンパク質は、発蛍光性タンパク質色素SYPRO(登録商標)rubyが充填されているチャネル814内のデキストラン線状ポリマー溶液を介して移動する。
【0131】
蛍光標識された標的タンパク質は、チャネル814内でのCGEの間に、全カラム画像化を使用して視覚化することができる。同様に述べると、SYPRO(登録商標)ruby色素が280nmの光で励起され、618nmで放射された光が検出器によって測定される間、チャネル814の全体を画像化することができる。
【0132】
(実施例6)−質量分析計インタフェースのないマイクロ流体設計の変形
場合によっては、質量分析計インタフェースの有無によって異なるマイクロ流体層の2つの設計を有することが有利である。いったん検体の特性評価がなされると、確認の特性評価は質量分析データなしで行うことができる。確認の特性評価を、ほとんど同じ設計のマイクロ流体で行うことにより、異常が認識されたとき、質量同定のために質量分析計インタフェースを用いてアッセイをチップに戻すことが簡単になる。これにより、さもなければ、確認データの異常が質量分析データで分析されていることを示すために必要な作業を省略することができる。
【0133】
一例として、
図8は、
図4に示すマイクロ流体デバイス400と同様であって、オリフィス424及び皿穴表面422のないマイクロ流体設計を示す。検体は、依然としての入口904及びチャネル906を介して富化チャネル908へとチップに導入されるが、分析後、オリフィスでエレクトロスプレーイオン化を実施するのではなく、出口チャネル910を通して流れ出る。この設計は通常操作のために実行することができ、その後、質量同定が必要なときには、
図4に示すマイクロ流体デバイス400で同じ富化を行うことができ、
図8のマイクロ流体デバイス900で見られた検体の変種の同定が確保される。
【0134】
本発明の特定の実施形態の前述の説明は、例示及び説明のために提示されたものである。それらは、網羅的であることを意図しておらず、又は本発明を開示された厳密な形態に限定することを意図しておらず、上述の教示を考慮照すれば多くの修正形態及び変形形態が可能であることは明らかである。様々な実施形態が、特定の特徴及び/又は構成要素の組み合わせを有するものとして説明してきたが、必要に応じて、任意の実施形態からの任意の特徴及び/又は構成要素の組み合わせを有する他の実施形態も可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実用的応用を最もよく説明し、それによって当業者が本発明及び様々な実施形態を、企図される特定の用途に適した様々な変更と共に最もよく活用することを可能にするために、選択され記載されている。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されることが意図される。
【0135】
上述の方法及び/又は概略図が、特定の順序で生じる特定のイベント及び/又はフローパターンを示す場合、特定のイベント及び/又はフローパターンの順序を変更することができる。加えて、特定のイベントは、可能な場合には並行プロセスで同時に実行することもでき、順次実行することもできる。実施形態を詳細に示し説明してきたが、形式及び詳細において様々な変更を行うことができると理解されよう。
【0136】
本明細書中に引用された全ての特許、特許出願、刊行物及び参考文献は、個々の刊行物又は特許出願が参照として組み込まれることを具体的かつ個別に指示したことと同程度に、参照として明示的に組み込まれる。