特許第6906589号(P6906589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906589
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】卵焼成加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20210708BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20210708BHJP
【FI】
   A23L15/00 Z
   A23L5/00 G
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-210479(P2019-210479)
(22)【出願日】2019年11月21日
(65)【公開番号】特開2021-78455(P2021-78455A)
(43)【公開日】2021年5月27日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】598045863
【氏名又は名称】ケンコーマヨネーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】謡田 能孝
(72)【発明者】
【氏名】本田 慶太
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−285253(JP,A)
【文献】 特開平10−225267(JP,A)
【文献】 特開昭59−098664(JP,A)
【文献】 特開2012−044985(JP,A)
【文献】 特開平11−299456(JP,A)
【文献】 特開2019−122302(JP,A)
【文献】 特開2009−118750(JP,A)
【文献】 特開2011−229520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
だし液と所定の比率で混合した卵を焼成してなる卵加工品を包材内に密閉した卵焼成加工品の製造方法であって、
前記卵を加熱して前記卵加工品の元となるブロック形状の前記卵を焼成することにより焼成ブロックを作成する焼成工程と、
前記焼成工程の後に、前記焼成ブロックの粗熱を取ることなく、前記焼成ブロックを断裁して1つまたは複数の前記卵加工品を切り出す断裁工程と、
前記卵加工品の温度が下がらないように続けて、1つまたは複数の前記卵加工品と不活性ガスを前記包材内に密閉収容する包装工程と、
前記ガス置換包装工程の後に、前記卵加工品の中心温度が40℃を下回る前に、前記包材を加熱して、前記卵加工品の中心温度が60℃以上となる状態を3.5分以上維持する殺菌工程と、
を含み、
前記卵加工品は、卵が凝固した部分である卵凝固片と、当該卵凝固片から分離しただし液である分離液と、で構成され、
前記包材は、一方向に向かって開口する開口部と当該開口部に対向する底部とを有する凹形状を呈した、前記卵加工品を収容する収容部を備え、
前記収容部は、前記卵加工品における前記卵凝固片の少なくとも一部が深さ方向に嵌入された際に当該卵凝固片を保持する保持部と、当該保持部の側面から深さ方向に延設して形成された、前記開口部に向けて拡開するテーパー部と、を有し、
前記包装工程において前記卵加工品と前記不活性ガスとを前記包材内に密閉収容した後、前記収容部を前記開口部が鉛直下方に向かう方向に位置した際、前記テーパー部に前記分離液が貯留される
ことを特徴とする卵焼成加工品の製造方法。
【請求項2】
前記所定の比率は、卵の重量比が50%以上75%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の卵焼成加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵を焼成してなる卵加工品を包材内に密閉した卵焼成加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場において卵を加熱調理して得られる卵焼き等の卵加工品は、例えば特許第6280197号公報に記載されているように、包材内に密閉された形態で市場に出荷される。
【0003】
市場で流通させるための包装形態としては、焼成後の卵加工品を圧迫して包装する真空包装(真空パック)の他、卵加工品の型崩れを発生させてしまうことなく、緊縮を伴わない包装ができるガス置換包装が知られている。
【0004】
一方、卵加工品の賞味期限を長くするために、包装後の卵加工品に対しては、再度熱による殺菌処理が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6280197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
包装後の卵加工品に殺菌処理を施すには、卵加工品の全体の温度を、所定の時間、所定の温度以上に維持しなければならない。しかしながら、卵加工品に加えられる熱量は、加えれば加えるほど卵加工品の風味の劣化の原因となる。
【0007】
そのため、熱量を抑えるために熱効率の良い真空包装がよく使われるが、真空包装の場合、包装した卵加工品からの離水を防ぐためでんぷん等の増粘剤を添加する必要があり、卵加工品の型崩れを発生させてしまうだけではなく、卵加工品にでんぷん特有の臭いを生じさせてしまう課題があった。
【0008】
本発明は、前述した問題を解決するものであり、賞味期限が長く、かつ風味の劣化を抑制し、形が潰れることなくジューシー感のある卵焼成加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による卵焼成加工品の製造方法は、だし液と所定の比率で混合した卵を焼成してなる卵加工品を包材内に密閉した卵焼成加工品の製造方法であって、前記卵を加熱して前記卵加工品の元となるブロック形状の前記卵を焼成することにより焼成ブロックを作成する焼成工程と、前記焼成工程の後に、前記焼成ブロックの粗熱を取ることなく、前記焼成ブロックを断裁して1つまたは複数の前記卵加工品を切り出す断裁工程と、前記卵加工品の温度が下がらないように続けて、1つまたは複数の前記卵加工品と不活性ガスを前記包材内に密閉収容する包装工程と、前記ガス置換包装工程の後に、前記卵加工品の中心温度が40℃を下回る前に、前記包材を加熱して、前記卵加工品の中心温度が60℃以上となる状態を3.5分以上維持する殺菌工程と、を含み、前記卵加工品は、卵が凝固した部分である卵凝固片と、当該卵凝固片から分離しただし液である分離液と、で構成され、前記包材は、一方向に向かって開口する開口部と当該開口部に対向する底部とを有する凹形状を呈した、前記卵加工品を収容する収容部を備え、前記収容部は、前記卵加工品における前記卵凝固片の少なくとも一部が深さ方向に嵌入された際に当該卵凝固片を保持する保持部と、当該保持部の側面から深さ方向に延設して形成された、前記開口部に向けて拡開するテーパー部と、を有し、前記包装工程において前記卵加工品と前記不活性ガスとを前記包材内に密閉収容した後、前記収容部を前記開口部が鉛直下方に向かう方向に位置した際、前記テーパー部に前記分離液が貯留される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の卵焼成加工品の製造方法によれば、賞味期限が長く、かつ風味の劣化を抑制しただし感のあるジューシーな卵焼成加工品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】卵焼成加工品の底面側を示す斜視図である。
図2】卵焼成加工品の上面側を示す斜視図である。
図3】焼成後の卵加工品からの離水率の試験結果を示す表である。
図4】卵とだし液の混合比が食感に及ぼす影響を評価する試験結果を示す表である。
図5】卵焼成加工品の製造方法のフローチャートである。
図6】断裁装置の概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0013】
本実施形態の卵焼成加工品の製造方法は、図1および図2に示す卵焼成加工品1を製造する方法である。
【0014】
まず、卵焼成加工品1の構成について説明する。卵焼成加工品1は、卵加工品2と包材10とを含む。卵焼成加工品1は、密閉された容器状の包材10内に、食品である卵加工品2を収容したものである。卵焼成加工品1は、包材10内に卵加工品2が収容された状態で商品として流通することを意図している。
【0015】
以下の説明では、卵とは、鶏卵の中身、すなわち鶏卵の卵黄および卵白のことである。卵における卵黄および卵白の比率は、味付け等により変化するため、特に限定されない。
【0016】
卵加工品2は、だし液と所定の比率で混合した卵を焼成して得られる形態のものであれば特に限定されない。卵加工品2は、薄く焼いた卵を何層も重ねて厚く焼き上げた厚焼き卵であってもよいし、卵を薄く焼きながら巻いていくだし巻き卵であってもよい。
【0017】
本実施形態では一例として、卵加工品2がだし巻き卵の例で説明する。前記だし巻き卵は、卵と、だし液とを所定の比率で混合したものを加熱し、卵を凝固させることにより得られる。だし液の構成は、味付けに応じて変化するものであり特に限定されないが、だし液は、水の他に、例えば鰹や昆布等のだし汁と、醤油等の調味料を含む。本実施形態では一例として、だし汁は、沸騰した水に鰹節を加えて煮出したものである。また、調味料は、醤油、砂糖、塩および酢を含む。
【0018】
だし巻き卵は、焼成後の温度低下に伴い、含有するだし液の一部の分離が生じる。包材10内に収容した後に分離しただし液は、包材10内に貯まる。したがって、図1に示すように、包材10内に収容されている卵加工品2は、卵が凝固した部分である卵凝固片2aと、卵凝固片2aから分離しただし液である分離液2bと、からなる。なお、卵凝固片2aは、複数の小片に切断されていてもよい。また、卵凝固片2aは、切断箇所を案内するハーフカットやミシン目等が形成されていてもよい。
【0019】
卵加工品2の大きさは特に限定されない。本実施形態では一例として、卵焼成加工品1を人1人の1食分(一人前)として消費者に提供することを想定し、卵加工品2の重量をおよそ100gとしている。
【0020】
卵加工品2の焼成時における、卵とだし液との混合比率は特に限定されないが、だし液の比率が高過ぎると、卵加工品2は、箸で掴めないほどの柔らかなものとなり、茶碗蒸しや卵豆腐と称される形態のものとなってしまう。また、だし液の比率が低過ぎると、卵加工品2は、消費者が卵凝固片内のだし液の含有を感知できない、ジューシー感のないパサパサしたものとなってしまう。
【0021】
出願人による試験では、加熱前の卵とだし液との混合液における、卵の重量比がおよそ50%以上75%以下とした場合に、卵加工品2がだし巻き卵と称する形態に好ましいものとなる、との結果を得た。
【0022】
したがって、本実施形態の卵加工品2は、卵の重量比を50%以上75%以下とした卵とだし液との混合液を加熱することにより得られたものとする。なお、この加熱前の卵とだし液との混合比の範囲は、包材10内に収容されている卵加工品2の成分比率を限定するものではない。
【0023】
上記試験の詳細を示す。図3の表に示すように、試験では、卵とだし液との混合液における卵の重量比を40%から100%まで変化させたものを焼成して得られた6つの卵加工品を試料として用いた。各試料に占める卵の重量比は、試料1が40%、試料2が50%、試料3が60%、試料4が70%、試料5が75%、試料6が100%である。各試料は、混合液を、油をひき130℃に加熱したフライパンに流し込み、ヘラでロール状に成型しつつ凝固させることにより焼成した。
【0024】
図3の表は、焼成した各試料からの離水率を示している。離水率の測定では、まず試料を含気包装し、続けて、前記試料の中心温度が60℃以上の状態を3.5分以上維持する低温殺菌を行い、さらに冷蔵庫(1〜10℃)で48時間保管した後の分離液の重量を測定した。離水率は、この分離液の重量の、焼成直後の試料の重量に対する割合を示す値である。すなわち、図3の表に示す離水率は、以下の式により求められる。
離水率[wt%]=(分離液の重量)/(焼成直後の試料の重量)×100
【0025】
また、6つの試料の食感について、官能評価を行った結果を図4に示す。官能評価は、4名の専門パネラーが6つの試料を喫食した結果である。図4の表における記号の評価基準は以下の通りである。
記号△:「水分量が多く、成形が困難。卵焼成品としては好ましくない。」
記号○:「だしが滲み出て見た目の手作り感が感じられる。程良い食感と卵の風味もあり好ましい。」
記号◎:「だしが滲み出て見た目の手作り感が感じられる。柔らかい食感で非常に好ましい。」
記号▽:「だしが滲み出ていない。卵の風味はあるがだしは感じられない。」
【0026】
卵加工品2の離水率が高ければ、包材内や盛り付け時において、卵凝固片2aが十分な量のだし液(分離液2b)に浸かった様子を消費者に見せることができるため、だし巻き卵の外観としてより好ましいものとなる。図3に示すように、卵加工品2の離水率を高くするには、混合液に占める卵の重量比を下げればよい。一方、図4に示す試料2および3の官能評価の結果を比較すればわかるように、だし巻き卵としての食感は、混合液に占める卵の重量比を下げ過ぎれば悪化する。以上の試験の結果に基づき、本実施形態では一例として、加熱前の卵とだし液との混合液における、卵の重量比を60%とした。
【0027】
包材10は、樹脂製のいわゆる深絞り包装である。包材10は、容器部11と蓋部12とからなる。容器部11は、ハット形状であり、一方向に向かって開口し有底の凹形状である収容部11aと、収容部11aの開口の周囲全体に配置された鍔部11bと、を含む。鍔部11bは、略同一の平面に沿って設けられている。容器部11は、樹脂フィルムを熱成型することにより形成される。樹脂フィルムを透明または半透明のものとすると、だし液(分離液2b)に浸かった様子を消費者に見せることができるためより好ましい。
【0028】
蓋部12は、収容部11aの開口を密閉する。蓋部12は、樹脂製のフィルムである。蓋部12は、容器部11の鍔部11bに、鍔部11bの全周にわたって溶着されている。蓋部12は、人の手指により刃物等を用いずに容器部11から剥がすことができる。
【0029】
以下の説明では、蓋部12が露出する面を卵焼成加工品1の上面1aと称し、容器部11の底面を卵焼成加工品1の底面1bと称する。すなわち、図1は、卵焼成加工品1の底面1bを図中の上側に向けた状態を示しており、図2は、卵焼成加工品1の上面1aを図中の上側に向けた状態を示している。
【0030】
また、収容部11aの深さ方向に沿って底面1bから上面1aに向かう方向を卵焼成加工品1の上方向とし、上方向の反対方向を下方向とする。すなわち、収容部11aは、上方向に向かって開口している。また、卵焼成加工品1の上方向を鉛直上方と一致させた状態では、底面1bと鍔部11bは水平面と概ね平行となる。なお、底面1bおよび鍔部11bの詳細な形状は平坦面に限られず、凹凸が形成されていてもよい。
【0031】
なお、卵焼成加工品1の「上面」、「底面」、「上方向」および「下方向」との語句は、ある要素と他の要素との位置関係の説明を容易にするために用いるものであり、ある要素と実空間における重力の方向との関係を示すものではない。例えば、卵焼成加工品1の底面1bを実空間において鉛直上方に向けた場合には、卵焼成加工品1の上方向は、鉛直下方と略一致する。
【0032】
卵凝固片2aの上下方向の厚さは、収容部11aの深さよりも小さい。また、卵凝固片2aは、下方向および上方向から見た場合に、略矩形状の外形を有する。
【0033】
凹形状である収容部11aの側面は、上下方向(深さ方向)に、保持部11cおよびテーパ部11dの2つの領域が設けられている。保持部11cは、テーパ部11dよりも下方向に設けられている。保持部11cの下方向の端は、底面1bに接続している。
【0034】
保持部11cは、側面が底面1bと略直交する筒型であり、下方向および上方向から見た場合に矩形状となる外形を有する。保持部11cの内寸は、略矩形状である卵凝固片2aが所定の隙間を有して嵌まり込む値とされる。
【0035】
保持部11cの上方向の端は、テーパ部11dに接続している。テーパ部11dは、側面が上方向に向かうにつれて拡開する形状を有する。テーパ部11dの上方向の端は、鍔部11bに接続している。
【0036】
テーパ部11dの上下方向の高さは、卵凝固片2aの厚さよりも小さい。したがって、収容部11aにおいて、卵凝固片2aが上方向に偏った位置にある状態であっても、卵凝固片2aの一部は保持部11c内に嵌まり込んだ状態が保たれる。
【0037】
例えば、図1に示すように、卵焼成加工品1の底面1bを鉛直上方に向けた場合、卵凝固片2aは重力により底面1bから離隔し、蓋部12に接する。このような状態であっても、卵凝固片2aの一部が保持部11cに嵌まり込んでいるため、収容部11a内における卵凝固片2aの水平方向の位置決めがなされた状態となる。より具体的には、この状態において、卵凝固片2aは、鉛直下方に向かうほど拡開するテーパ部11dの略中央に位置決めされる。また、この状態において、分離液2bは、収容部11aの鉛直下方の端に位置するテーパ部11dの部分に貯留される。また、前述のように、容器部11は透明または半透明であると、より好ましい。
【0038】
したがって、図1に示すように、卵焼成加工品1の底面1bを鉛直上方に向けた場合、卵焼成加工品1の外部からは、テーパ部11dに広がるように貯まっている分離液2b(だし液)の中央部に、卵凝固片2aが浸かっているように見える。このように、卵焼成加工品1は、収容部11aに保持部11cおよびテーパ部11dを設けることにより、卵加工品2を包材10から取り出して皿に盛り付けたかのような様子を消費者に見せることができる。
【0039】
また、卵焼成加工品1の上面1aを鉛直上方に向けて、蓋部12の一部を剥がして包材10の内部空間を外部に開放した状態とすれば、この状態のまま電子レンジを用いて卵加工品2を加熱することができる。このため、消費者は、容器部11から卵加工品2から取り出さずに加熱を行い、卵加工品2を食することができる。
【0040】
また、卵焼成加工品1は、卵加工品2を、いわゆるガス置換包装したものである。すなわち、卵焼成加工品1の包材10内の空間には、窒素や二酸化炭素等の不活性ガスが充填されている。卵焼成加工品1は、前述のように包材10内の卵加工品2の周囲に空間が存在するが、当該空間を不活性ガスで満たすことにより、卵加工品2の酸化を防止している。
【0041】
また、卵焼成加工品1は、ガス置換包装を採用することにより、真空包装のように卵凝固片2aを圧迫することを防止している。卵焼成加工品1は、卵凝固片2aを圧迫しないことにより、卵凝固片2a内に形成されている空間を保持することができる。このことにより、卵焼成加工品1は、卵凝固片2aの焼成時の柔らかな食感を維持することができる。また、卵焼成加工品1は、卵凝固片2aにだし液が染み込んだ状態を維持することができる。
【0042】
次に、卵焼成加工品1の製造方法について説明する。図5は、卵焼成加工品1の製造方法のフローチャートである。
【0043】
図5に示すように、卵焼成加工品1の製造方法では、まず卵加工品2または卵加工品2の元となる焼成ブロック3を焼成する焼成工程を実施する(ステップS10)。
【0044】
焼成ブロック3は、卵を焼成して得られるものであり、卵加工品2よりも大きい。焼成ブロック3を断裁し複数に分割して得られるものが、卵加工品2である。例えば、焼成工程において、焼成ブロック3を焼成する場合には、焼成工程の後に、焼成ブロック3から卵加工品2を切り出す断裁工程を実施する。
【0045】
焼成工程において、直接的に卵加工品2を焼成するか、焼成ブロック3を焼成することにより間接的に卵加工品2を焼成するか、については特に限定されない。本実施形態では一例として、焼成工程では、焼成ブロック3を焼成する。焼成ブロック3の重量はおよそ500gである。
【0046】
前述のように、本実施形態では、卵加工品2は、だし巻き卵である。したがって、焼成工程では、卵とだし液との混合液を加熱し、だし巻き卵である焼成ブロックを焼成する。
【0047】
焼成工程により焼成された直後の卵加工品2(焼成ブロック3)の温度は、およそ80℃である。なお、卵加工品2の温度とは、卵凝固片2aの中心部の温度のこととする。
【0048】
次に、焼成ブロック3を断裁し、焼成ブロック3から1つまたは複数の卵加工品2を切り出す断裁工程を実施する(ステップS20)。断裁工程は、卵加工品2をさらに複数の小片に分割する工程を含んでいてもよい。なお、本実施形態とは異なり、焼成工程において直接的に卵加工品2を焼成する場合には、断裁工程はスキップする。
【0049】
断裁工程では、図6に示すように、断裁装置20を用いて焼成ブロック3を断裁する。断裁装置20は、搬送装置21および切断装置22を含む。
【0050】
搬送装置21は、焼成ブロック3を所定の第1方向Aに向かって搬送する。本実施形態では一例として、第1方向は略水平であり、搬送装置21は、焼成ブロック3が載置される1つ又は複数のベルトコンベアを含んで構成されている。具体的には、搬送装置21は、第1方向Aに沿って直列に配置された第1ベルトコンベア21aおよび第2ベルトコンベア21bを含む。
【0051】
切断装置22は、1つまたは複数の刃22aを含む。刃22aは、搬送装置21により第1方向Aに向かって移動する焼成ブロック3に干渉し、焼成ブロック3を切断する。刃22aは、略直線状であり、長手方向が、第1方向Aに対して所定の角度を成す第2軸Bに沿うように配置されている。本実施形態では一例として、第2軸Bは、鉛直方向に概ね平行である。
【0052】
刃22aには、鋭利な稜線部であるナイフエッジ部が、第1方向Aに概ね対向する方向に向かって設けられている。なお、刃22aは、連続した1つのナイフエッジ部を備える形態のものであってもよいし、鋸のように複数のナイフエッジ部が長手方向に直列に配列された形態のものであってもよい。
【0053】
刃22aは、第1ベルトコンベア21aと第2ベルトコンベア21bとの間の隙間に配置されている。刃22aは、焼成ブロック3が第1ベルトコンベア21aから第2ベルトコンベア21bに乗り移る際に、焼成ブロック3に干渉する。
【0054】
また、切断装置22は、刃22aを第2軸Bに沿って揺動させる駆動装置22bを備える。一般に、焼成直後の温度が比較的高い状態であるだし巻き卵は柔らかいため、刃を用いた切断時に型崩れを起こしやすい。例えば、型崩れを防止するためにだし巻き卵を押さえつけると、だし巻き卵からのだし液の分離量が増加してしまう。また例えば、型崩れを防止するために、だし巻き卵を冷却して硬さを増した後に切断を行う場合にも、だし巻き卵からのだし液の分離量が増加してしまう。
【0055】
本実施形態の断裁装置20は、刃22aを第2軸Bに沿って揺動させることにより、焼成直後で比較的高温であり柔らかい状態の焼成ブロック3を、冷却せずに型崩れを起こすことなく切断することができるため、断裁工程における焼成ブロック3からのだし液の分離量を抑制することができる。
【0056】
次に、卵加工品2と不活性ガスを包材10内に密閉収容する包装工程を実施する(ステップS30)。前述のように、卵焼成加工品1は、卵加工品2をガス置換包装したものである。卵焼成加工品1の深絞り包装およびガス置換包装は、公知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0057】
次に、卵加工品2を収容した包材10を加熱し、卵加工品2の中心温度が60℃以上の状態を3.5分以上維持する殺菌工程を実施する(ステップS40)。殺菌工程では、例えば、加熱した蒸気中に包材10を置くことにより、包材10および卵加工品2を加熱する。本実施形態では、殺菌工程を、卵加工品2の温度が40℃を下回る前に開始する。
【0058】
そして、殺菌工程において加熱された卵加工品2を、冷蔵保存の温度である10℃以下まで冷却する冷却工程を実施する(ステップS50)。冷却工程の実施により、卵焼成加工品1が完成する。
【0059】
以上に説明した、本実施形態の卵焼成加工品の製造方法は、卵加工品2の温度が40℃を下回る前に、殺菌工程における卵加工品2の加熱を開始する。このため、本実施形態の卵焼成加工品の製造方法は、殺菌工程において、卵加工品2に加える熱量を低くすることができるとともに、卵加工品2を加熱し続ける時間を短くすることができる。したがって、本実施形態の卵焼成加工品の製造方法によれば、殺菌工程における加熱による卵加工品2の風味の劣化を抑制しつつ、卵加工品の賞味期限を長くすることができる。
【0060】
また、一般に、だし巻き卵である卵加工品2は、焼成後の温度低下に伴い、卵凝固片2aからのだし液2bの流出量が増加する。本実施形態の卵焼成加工品の製造方法では、断裁工程および包装工程を卵加工品2の温度が少なくとも40℃を下回る前に完了させるため、包装前の卵凝固片2aからのだし液2bの流出量を抑制することができる。
【0061】
このため、本実施形態の卵焼成加工品の製造方法は、卵焼成加工品1に含まれるだし液2bを、焼成時に卵凝固片2a内に含まれていただし液のみで構成することができる。すなわち、本実施形態の卵焼成加工品の製造方法によれば、異なる工程で作られただし液を包材10に注ぎ足すことなく、卵凝固片2aが十分な量のだし液2bに浸かった状態とすることができる。卵凝固片2aから流出しただし液2bのみを用いることは、卵加工品2の風味を向上させる点で好ましい。
【0062】
また、一般に、だし巻き卵からのだし液の流出量を抑制する方法として、でんぷん等の増粘剤をだし液に添加する方法が知られているが、本実施形態では、増粘剤を添加せずに卵凝固片2aからのだし液2bの流出量を抑制することができる。でんぷん等の増粘剤は、卵加工品2の風味に影響を及ぼすため、本実施形態のように増粘剤を使用しないことは、卵加工品2の風味を向上させる点で好ましい。
【0063】
本発明は、前述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う卵焼成加工品の製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 卵焼成加工品、
1a 上面、
1b 底面、
2 卵加工品、
2a 卵凝固片、
2b だし液、
10 包材、
11 容器部、
11a 収容部、
11b 鍔部、
11c 保持部、
11d テーパ部、
12 蓋部、
20 断裁装置、
21 搬送装置、
21a 第1ベルトコンベア、
21b 第2ベルトコンベア、
22 切断装置、
22a 刃、
22b 駆動装置22b。
図1
図2
図3
図4
図5
図6