特許第6906596号(P6906596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6906596
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ホットメルト組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20210708BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20210708BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08L53/02
   C09J153/00
   C09J11/06
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-238699(P2019-238699)
(22)【出願日】2019年12月27日
【審査請求日】2021年4月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヴァン タイ
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和洋
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−199810(JP,A)
【文献】 特開2006−143870(JP,A)
【文献】 特開2019−195928(JP,A)
【文献】 特開2018−065982(JP,A)
【文献】 特開2018−070858(JP,A)
【文献】 特開2013−194108(JP,A)
【文献】 特開2017−149938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/02
C09J 153/00
C09J 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系ブロック共重合体(A)と、粘着付与剤(B)と、を含有し、
スチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン含有割合が20重量%未満でありジブロック割合が22重量%未満であるスチレン系ブロック共重合体(a1)と、スチレン含有割合が20重量%以上でありジブロック割合が22重量%以上であるスチレン系ブロック共重合体(a2)と、を含むことを特徴とするホットメルト組成物。
【請求項2】
さらに、軟化剤(C)を含むことを特徴とする請求項1記載のホットメルト組成物。
【請求項3】
断熱材に用いられることを特徴とする請求項1又は2記載のホットメルト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホットメルト組成物は、無溶剤で環境に優しく、短時間で硬化可能で、非常に扱いやすい材料であることから、製造現場における作業環境を改善することが可能である。そのため、ホットメルト組成物は、自動車・電機などの精密分野のほか、建築分野など幅広く用いられている。
【0003】
過去に、出願人は、水添パラフィン系プロセスオイル、高分子量スチレン系ブロックコポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂、酸化防止剤並びに非晶性ポリアルファオレフィンが配合されていることを特徴とするホットメルト組成物を発明した(特許文献1)。このホットメルト組成物は、接着性、密着性が良好で、熱による劣化を抑制するとともに、解体性にも優れるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−097360号公報
【0005】
従来から、一般住宅等において、壁面の内部に断熱材の層を設けることにより、冷暖房効率を向上させる手法が知られている。近年では、断熱材を何層も重ねることにより、さらに性能を向上させる取り組みもなされている。また、公共事業等において、風水害や土砂崩れの予防のために盛土による工法が用いられているが、その際に使用する盛土の代替として、軽量で弾力性に富む断熱材が採用されることがある。具体的には、板状の断熱材を数枚貼合して部材を製造し、現場まで運搬して順次設置するものである。
【0006】
ここで、断熱材としては繊維系断熱材と発泡プラスチック系断熱材に大別され、発泡プラスチック系断熱材としてはスチレン系、ウレタン系、オレフィン系、フェノール系、メラミン系などが知られているところ、特許文献1に記載されているホットメルト組成物を用いた場合、硬化後の安定性に優れる半面、塗布性がやや十分ではなく、また接着力や耐熱性に改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、硬化後の安定性を維持したままで、塗布性が良好であることから塗布ムラや塊が発生せず、接着力や耐熱性に優れるホットメルト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スチレン系ブロック共重合体(A)と、粘着付与剤(B)と、を含有し、スチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン含有割合が20重量%未満でありジブロック割合が22重量%未満であるスチレン系ブロック共重合体(a1)と、スチレン含有割合が20重量%以上でありジブロック割合が22重量%以上であるスチレン系ブロック共重合体(a2)と、を含むことを特徴とするホットメルト組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるホットメルト組成物は、硬化後の安定性を維持したままで、塗布性が良好であることから塗布ムラや塊が発生せず、接着力や耐熱性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<スチレン系ブロック共重合体>
本発明では、スチレン系ブロック共重合体(A)を用いる。当該(A)成分は、本発明にかかるホットメルト組成物のベースポリマーとして用いられる。
【0011】
当該(A)成分の種類としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)などの未水添のブロック共重合体や、スチレン−ブタジエン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)などの水添のブロック共重合体などが挙げられる。これらの中でも、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)を用いることが好ましい。
【0012】
当該(A)成分としては、スチレン含有割合が20重量%未満でありジブロック割合が22重量%未満であるスチレン系ブロック共重合体(a1)と、スチレン含有割合が20重量%以上でありジブロック割合が22重量%以上であるスチレン系ブロック共重合体(a2)と、を含むことを必要とする。
【0013】
当該(a1)成分のスチレン含有割合としては、20重量%未満である必要があり、1〜19重量%であることが好ましく、5〜18重量%であることが特に好ましい。また、ジブロック割合としては、22重量%未満である必要があり、1〜21重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることが特に好ましい。この範囲内において配合することにより、接着力や耐熱性を向上させることができる傾向がある。
【0014】
当該(a1)成分の具体例としては、VECTOR 4113N(製品名、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン含有割合:15重量%、ジブロック割合:18重量%、メルトフローレート:11g/min(200℃、5kg、ASTM D1238)、TSRC社製)、JSR SIS5229(製品名、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン含有割合:15重量%、ジブロック割合:20重量%、メルトフローレート:9.5g/10min(200℃、49.0N、JIS K 7210)、JSR社製)などが挙げられる。
【0015】
また、当該(a2)成分のスチレン含有割合としては、20重量%以上である必要があり、21〜45重量%であることが好ましく、22〜35重量%であることが特に好ましい。また、ジブロック割合としては、22重量%以上である必要があり、23〜45重量%であることが好ましく、24〜35重量%であることが特に好ましい。この範囲内において配合することにより、塗布性が向上することから、塗布ムラや塊の発生を抑制することができる傾向がある。
【0016】
当該(a2)成分の具体例としては、VECTOR 4213N(製品名、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン含有割合:25重量%、ジブロック割合:25重量%、メルトフローレート:12g/min(200℃、5kg、ASTM D1238)、TSRC社製)、VECTOR 4293A(製品名、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン含有割合:30重量%、ジブロック割合:25重量%、メルトフローレート:11g/min(200℃、5kg、ASTM D1238)、TSRC社製)などが挙げられる。
【0017】
ここで、当該(a1)成分のみ用いた場合は、高温領域における粘性がやや高いことから、塗布する際の作業性が悪化する傾向がある。また、当該(a2)成分のみ用いた場合は、高温領域における凝集力がやや低いことから、接着力や耐熱性に欠ける傾向がある。
【0018】
当該(A)成分における、(a1)成分と(a2)成分との配合割合(重量部)としては、1:0.1〜5であることが好ましく、1:0.3〜3であることがさらに好ましく、1:0.5〜2であることが特に好ましい。この範囲内において配合することにより、本発明にかかるホットメルト組成物の諸物性を向上させることができる傾向がある。
【0019】
<粘着付与剤>
本発明では、粘着付与剤(B)を用いる。当該(B)成分を用いることにより、被着体表面の濡れ性が高くなることから、層間の密着性を向上させることができる。
【0020】
当該(B)成分の軟化点としては、60〜250℃であることが好ましく、70℃〜200℃であることがさらに好ましく、80℃〜180℃であることが特に好ましい。
【0021】
当該(B)成分の配合割合としては、上記(A)成分100重量部に対して、10〜800重量部配合することが好ましく、30〜500重量部配合することがより好ましく、50〜300重量部配合することが特に好ましい。
【0022】
当該(B)成分の種類としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、ロジン系樹脂、及びその水添物又は変性物などが挙げられる。
【0023】
当該(B)成分の具体例としては、YSレジン PX1250(製品名、ヤスハラケミカル社製、テルペン樹脂、軟化点:120℃〜130℃)、タマノル 803L(製品名、荒川化学工業社製、テルペンフェノール樹脂、軟化点:145〜160℃)、タマノル 901(製品名、荒川化学工業社製、テルペンフェノール樹脂、軟化点:125〜135℃)、パインクリスタル KR−85(製品名、荒川化学工業社製、ロジン系樹脂、軟化点:80〜87℃)、T−REZ HA125(製品名、JXTGエネルギー社製、脂環族系炭化水素、軟化点:120℃〜130℃)、Eastotac C100R(製品名、イーストマン社製、脂肪族系石油樹脂、軟化点:100℃)、Endex 155(製品名、イーストマン社製、芳香族系石油樹脂、軟化点:152℃)などが挙げられる。
【0024】
本発明では、その他の成分として、軟化剤(C)を用いることができる。当該(C)成分を用いることにより、可塑性を付与することができる。当該(C)成分の種類としては、パラフィン系やナフテン系のオイル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。
【0025】
当該(C)成分の配合割合としては、上記(A)成分100重量部に対して、1〜500重量部配合することが好ましく、10〜300重量部配合することがより好ましく、20〜200重量部配合することが特に好ましい。
【0026】
当該(C)成分としてオイルを用いる場合、動粘度(40℃)としては、10〜800mm/sであることが好ましく、30〜500mm/sであることがさらに好ましく、50〜300mm/sであることが特に好ましい。
【0027】
オイルの具体例としては、ダイアナプロセスオイル PW−90(製品名、パラフィン系オイル、出光興産社製、動粘度(40℃):91mm/s)、ダイアナプロセスオイル NP−250(製品名、パラフィン系・ナフテン系混合オイル、出光興産社製、動粘度(40℃):275mm/s)、FOMI 550(製品名、パラフィン系オイル、PT Sari Sarana Kimiatama社製、動粘度(40℃):110mm/s)などが挙げられる。
【0028】
当該(C)成分としてポリブテンを用いる場合、数平均分子量(Mn)としては、100〜5000であることが好ましく、200〜4000であることがさらに好ましく、300〜3000であることが特に好ましい。
【0029】
ポリブテンの具体例としては、日石ポリブテン HV−50(製品名、JXTG社製、Mn:800)、日石ポリブテン HV−100(製品名、JXTG社製、Mn:980)、日石ポリブテン HV−300(製品名、JXTG社製、Mn:1,400)、日油ポリブテン 10N(製品名、日油社製、Mn:1,000)、日油ポリブテン 30N(製品名、日油社製、Mn:1,350)、Indopol H−100(製品名、INEOS社製、Mn:910)、Indopol H−300(製品名、INEOS社製、Mn:1,300)などが挙げられる。
【0030】
さらに、本発明では、添加剤として老化防止剤を用いることができる。当該成分の種類としては、例えば、亜リン酸塩系、ナフチルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン系、ビス・トリス・ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系などが挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。当該成分の具体例としては、Sumilizer GP(製品名、住友化学社製)、Songnox 1010(製品名、Songwon社製)などが挙げられる。
【0031】
当該成分の配合割合としては、上記(A)成分100重量部に対して、0.01〜30重量部配合することが好ましく、0.1〜20重量部配合することがより好ましく、0.3〜15重量部配合することが特に好ましい。当該成分の種類及びその配合割合が、上記の範囲内であることにより、熱による劣化を効率的に抑制することができる傾向がある。
【0032】
なお、本発明においては、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの充填材や、酸化防止剤、防腐剤、水分吸収剤などの各種添加剤が含まれていても良い。
【実施例】
【0033】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合において、190℃に設定したニーダーにより十分に混練し、実施例及び比較例のホットメルト組成物を得た。ここで、表1における数値は、重量部を表すものとする。以下に、使用した原材料を示す。
スチレン系ブロック共重合体1:VECTOR 4113N(製品名、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン含有割合:15重量%、ジブロック割合:18重量%、メルトフローレート:11g/min(200℃、5kg、ASTM D1238)、TSRC社製)
スチレン系ブロック共重合体2:VECTOR 4213N(製品名、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン含有割合:25重量%、ジブロック割合:25重量%、メルトフローレート:12g/min(200℃、5kg、ASTM D1238)、TSRC社製)
粘着付与剤1:Eastotac C100R(製品名、イーストマン社製、脂肪族系石油樹脂、軟化点:100℃)
粘着付与剤2:Endex 155(製品名、イーストマン社製、芳香族系石油樹脂、軟化点:152℃)
軟化剤1:FOMI 550(製品名、パラフィン系オイル、PT Sari Sarana Kimiatama社製、動粘度(40℃):110mm/s)
軟化剤2:Indopol H−300(製品名、ポリブテン、INEOS社製、Mn:1,300)
老化防止剤:Songnox 1010(製品名、Songwon社製)
【0034】
【表1】
【0035】
上記の実施例等にて得られたホットメルト組成物について、以下の物性評価を行なった。この結果を表2に示す。
【0036】
<低温物性>
180℃に設定したホットメルトガンを用いて、ポリエチレンフィルムに対して、塗布量100g/mにてホットメルト組成物をスパイラル塗布し、試験片を作製した。試験片を0℃に調温した恒温機内に1時間静置した後、試験片の塗布部の表面タックを指触にて確認した。表面タックが確認できたものを○、確認できなかったものを×と評価した。
【0037】
<塗布性>
180℃に設定したホットメルトガンを用いて、ホットメルト組成物をスパイラル塗布し、そのスパイラルパターンを観察した。パターンの最大塗布幅が2cm以上であるものを○、2cm未満であるものを×と評価した。
塗布条件としては、以下の通り。
ホットメルトガンのノズル直径:1.5mm、接着剤量調整エアー圧力:2.5bar、スプレーエアー圧力:1bar、ノズル先端と塗布面との距離:10cm
【0038】
<耐熱クリープ>
180℃に設定したホットメルトガンを用いて、押出法ポリスチレンフォーム(10cm×5cm×3cmt)において5cm四方に対して、塗布量100g/mにてホットメルト組成物をスパイラル塗布し、フォーム同士を貼合することにより試験片を作製した。試験片を23℃にて24時間養生し、70℃に調温した恒温機内に30分間静置した後、片面に50gの重りを取り付け、重りが落下するまでの時間を測定した。落下するまでの時間が1分以上であったものを○、1分未満であったものを×と評価した。
【0039】
【表2】


【要約】
【課題】 本発明が解決しようとする課題は、硬化後の安定性を維持したままで、塗布性が良好であることから塗布ムラや塊が発生せず、接着力や耐熱性に優れるホットメルト組成物を提供する。
【解決手段】 スチレン系ブロック共重合体(A)と、粘着付与剤(B)と、を含有し、スチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン含有割合が20重量%未満でありジブロック割合が22重量%未満であるスチレン系ブロック共重合体(a1)と、スチレン含有割合が20重量%以上でありジブロック割合が22重量%以上であるスチレン系ブロック共重合体(a2)と、を含むことを特徴とするホットメルト組成物。
【選択図】なし