特許第6906601号(P6906601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906601
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ロケットエンジンのインジェクタ要素
(51)【国際特許分類】
   F02K 9/52 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   F02K9/52
【請求項の数】15
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-502010(P2019-502010)
(86)(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公表番号】特表2019-525057(P2019-525057A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】US2017039938
(87)【国際公開番号】WO2018075102
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2020年2月20日
(31)【優先権主張番号】62/364,257
(32)【優先日】2016年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594203852
【氏名又は名称】エアロジェット ロケットダイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】パーカー,ダグラス エス.
(72)【発明者】
【氏名】キャップ,ダニエル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ドッド,フレデリック イー.
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03426534(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02757243(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0219743(US,A1)
【文献】 特開2008−274937(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0257839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/00 − 9/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体推進薬ロケットエンジンのインジェクタ要素であって、
酸化剤導管と、
前記酸化剤導管の下流で該酸化剤導管と流体的に連結された中央キャビティと、
前記酸化剤導管を少なくとも部分的に取り囲む第1の環状部であって、点火流体供給部の下流で該点火流体供給部と流体的に連結された第1の環状部と、
前記酸化剤導管を少なくとも部分的に取り囲む第2の環状部であって、燃料供給部の下流で該燃料供給部と流体的に連結されるとともに、前記第1の環状部と前記中央キャビティとの間に流体的に連結された第2の環状部と、
を備えた、インジェクタ要素。
【請求項2】
前記第1の環状部および前記第2の環状部が、前記酸化剤導管と同軸であることを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ要素。
【請求項3】
前記第2の環状部が、複数の入口ポートを含むことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ要素。
【請求項4】
前記入口ポートのうちの一つまたは複数が、前記酸化剤導管の中心軸に関して傾斜していることを特徴とする請求項3に記載のインジェクタ要素。
【請求項5】
前記第1の環状部と前記第2の環状部とが、供給ポートによって流体的に接続されることを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ要素。
【請求項6】
前記酸化剤導管、前記第1の環状部、および前記第2の環状部が、単一のモノリシックな部品であることを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ要素。
【請求項7】
液体推進薬ロケットエンジンのインジェクタ要素であって、
中央キャビティと、
一次流体を前記中央キャビティへと供給するように前記中央キャビティに開口する導管と、
前記導管に隣接した第1の供給チャンバであって、第1の流路と、第1の流体を前記第1の流路へと供給するための第1の入口ポートと、を含んだ、第1の供給チャンバと、
前記導管に隣接した第2の供給チャンバであって、第2の流路と、第2の流体を前記第2の流路へと供給するための一つまたは複数の第2の入口ポートと、を含んだ、第2の供給チャンバと、
前記第1の流体を前記第1の流路から前記第2の流路へと供給するように、前記第1の流路と前記第2の流路とを流体的に接続する供給ポートと、
を備え、
前記第2の流路が、前記第1の流体または前記第2の流体を前記中央キャビティへと供給して前記一次流体と混合させるように、前記中央キャビティに開口し
前記一つまたは複数の第2の入口ポートが、複数の第2の入口ポートを含む、インジェクタ要素。
【請求項8】
前記第1の供給チャンバおよび前記第2の供給チャンバは、前記導管と同軸であることを特徴とする請求項7に記載のインジェクタ要素。
【請求項9】
前記第2の入口ポートが、前記導管の中心軸に関して傾斜していることを特徴とする請求項に記載のインジェクタ要素。
【請求項10】
前記第1の入口ポートを介して前記第1の流路と流体的に接続された第1の流体源と、前記一つまたは複数の第2の入口ポートを介して前記第2の流路と流体的に接続された第2の、異なる流体源と、をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載のインジェクタ要素。
【請求項11】
前記第2の供給チャンバが、軸方向に前記第1の供給チャンバと前記中央キャビティとの間にあることを特徴とする請求項7に記載のインジェクタ要素。
【請求項12】
前記第1の供給チャンバおよび前記第2の供給チャンバが、それぞれ、環状であることを特徴とする請求項7に記載のインジェクタ要素。
【請求項13】
スロート部を含んだ燃焼室と、
前記スロート部の後方のノズルと、
前記燃焼室へと開口するインジェクタ要素と、
を備えた液体推進薬ロケットエンジンであって、前記インジェクタ要素が、
中央導管と、
前記中央導管を少なくとも部分的に取り囲む第1の環状部と、
前記中央導管を少なくとも部分的に取り囲む第2の環状部と、
前記第1の環状部と流体連通するとともに、前記第1の環状部へと開口する流体導管を含んだマニホルドと、
を含み、
前記第1の環状部および前記第2の環状部が、前記中央導管と同軸であり、
前記流体導管が、前記第1の環状部への唯一の供給ラインであり、
前記第2の環状部が、複数の入口ポートを含む、液体推進薬ロケットエンジン。
【請求項14】
前記第1の環状部と前記第2の環状部とが、供給ポートによって流体的に接続されることを特徴とする請求項13に記載の液体推進薬ロケットエンジン。
【請求項15】
前記入口ポートのうちの一つまたは複数が、前記中央導管の中心軸に関して傾斜していることを特徴とする請求項13に記載の液体推進薬ロケットエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は2016年7月19日に出願された米国特許仮出願第662,364,257号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
液体推進薬ロケットエンジンは燃料推進薬および酸化剤推進薬によって推進される。一例の燃料推進薬はRP−1(ロケット推進薬−1)などの炭化水素燃料である。一例の酸化剤推進薬は酸素である。一般に、液体推進薬ロケットエンジンは、RP−1の燃焼を酸素によって点火させる点火装置を使用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一例による液体推進薬ロケットエンジンのインジェクタ要素が、酸化剤導管と、酸化剤導管の下流でその酸化剤導管と流体的に連結された中央キャビティと、酸化剤導管を少なくとも部分的に取り囲む第1の環状部と、を含む。第1の環状部は、点火流体供給部の下流でその点火流体供給部と流体的に連結され、第2の環状部が、酸化剤導管を少なくとも部分的に取り囲む。第2の環状部は、燃料供給部の下流でその燃料供給部と流体的に連結されるとともに、第1の環状部と中央キャビティとの間に流体的に連結される。
【0004】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、第1の環状部および第2の環状部は、酸化剤導管と同軸である。
【0005】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、第2の環状部が、複数の入口ポートを含む。
【0006】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、入口ポートのうちの一つまたは複数が、酸化剤導管の中心軸に関して傾斜している。
【0007】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、第1の環状部と前記第2の環状部とが、供給ポートによって流体的に接続される。
【0008】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、酸化剤導管、第1の環状部、および第2の環状部が、単一のモノリシックな部品である。
【0009】
本発明の一例による液体推進薬ロケットエンジンのインジェクタ要素が、中央キャビティと、一次流体を中央キャビティへと供給するように中央キャビティに開口する導管と、導管に隣接した第1の供給チャンバと、を含む。第1の供給チャンバは、第1の流路と、第1の流体を第1の流路へと供給するための第1の入口ポートと、を有する。第2の供給チャンバが導管に隣接する。第2の供給チャンバは、第2の流路と、第2の流体を第2の流路へと供給するための一つまたは複数の第2の入口ポートと、を有する。供給ポートが、第1の流体を第1の流路から第2の流路へと供給するように、第1の流路と第2の流路とを流体的に接続する。第2の流路が、第1の流体または第2の流体を中央キャビティへと供給して一次流体と混合させるように、中央キャビティに開口する。
【0010】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、第1の供給チャンバおよび第2の供給チャンバは、導管と同軸である。
【0011】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、一つまたは複数の第2の入口ポートが、複数の第2の入口ポートを含む。
【0012】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、第2の入口ポートが、導管の中心軸に関して傾斜している。
【0013】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例が、第1の入口ポートを介して第1の流路と流体的に接続された第1の流体源と、一つまたは複数の第2の入口ポートを介して第2の流路と流体的に接続された第2の、異なる流体源と、を含む。
【0014】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、第2の供給チャンバが、軸方向に第1の供給チャンバと中央キャビティとの間にある。
【0015】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、第1の供給チャンバおよび第2の供給チャンバが、それぞれ、環状である。
【0016】
本発明の一例による液体推進薬ロケットエンジンが、スロート部を含んだ燃焼室と、スロート部の後方のノズルと、燃焼室へと開口するインジェクタ要素と、を含む。インジェクタ要素は、中央導管と、中央導管を少なくとも部分的に取り囲む第1の環状部と、中央導管を少なくとも部分的に取り囲む第2の環状部と、第1の環状部と流体連通するマニホルドと、有する。マニホルドは、第1の環状部へと開口する流体導管を含む。
【0017】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、第1の環状部および第2の環状部は、中央導管と同軸である。
【0018】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、流体導管は、第1の環状部への唯一の供給ラインである。
【0019】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、第2の環状部が、複数の入口ポートを含む。
【0020】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、第1の環状部と第2の環状部とが、供給ポートによって流体的に接続される。
【0021】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、入口ポートのうちの一つまたは複数が、中央導管の中心軸に関して傾斜している。
【0022】
以下の詳細な説明から本発明の様々な特徴や利点が当業者にとって明らかとなるであろう。詳細な説明に添付の図面を以下のように簡単に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】液体推進薬ロケットエンジンの一例を示す図である。
図2】ロケットエンジンの一例のインジェクタ要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は液体推進薬ロケットエンジン20を概略的に示す。エンジン20は、燃焼室24内での燃焼を開始させるように、点火流体供給部22からの点火流体(例えば、トリエチルアルミニウム−トリエチルボラン)を利用する自燃性エンジンである。点火流体が、酸化剤供給部28からの酸化剤(例えば、液体酸素)とともにインジェクタシステム26に供給される。一度燃焼が開始すると、燃料供給部30からの燃料がインジェクタシステム26へと供給されて、酸化剤とともに燃焼する。燃焼ガスはスロート部32を通して加速され、次いで推進力を発生させるようにノズル34を通して放出される。
【0025】
インジェクタシステム26は一つまたは複数のインジェクタ要素36を含む。インジェクタ要素36の代表的な一つを図2の断面図に示す。以下に記載するように、インジェクタ要素36は3つの異なる推進薬流体、ここでは酸化剤、点火流体、および燃料を噴射するように構成される。理解されるように、ロケットエンジン20を示すが、インジェクタ要素36はまた他種のエンジンにも利益を供与しうる。
【0026】
図示のように、インジェクタ要素36には燃焼室24に隣接する面板38が取り付けられている。インジェクタ要素36は燃焼室24へと開口する噴射中央キャビティ40を含む。中央導管42、ここでは酸化剤源28と流体的に接続された酸化剤導管が、一次流体(酸化剤)を中央キャビティ40に供給するように、その中央キャビティ40へと開口する。中央導管42は中心軸Aを画定する。この例では、中央導管42は細長い管である。
【0027】
第1および第2の供給チャンバ44/46が中央導管42に隣接して存在する。第2の供給チャンバ46は軸方向に第1の供給チャンバ44と中央キャビティ40の間にある。この例では、供給チャンバ44/46は環状であり、第1の供給チャンバ44は第1の環状部を有し、第2の供給チャンバは第2の環状部を有する。例えば、それらの環状部は中央導管42に完全に外接するすなわちこれを完全に取り囲む。代替的な例では、供給チャンバ44/46は中央導管42を部分的にだけ取り囲みうる。
【0028】
第1の供給チャンバ44は、第1の流路44aと、点火流体などの第1の流体を第1の流路44aへと供給する第1の入口ポート44bと、を含む。この例では、入口ポート44bは、マニホルド48の流体導管48aに連結される。一例として、流体導管48aは第1の供給チャンバ44への唯一の供給ラインである。図示しないが、マニホルド48は点火流体を複数のインジェクタ要素36へと供給する複数の流体導管を有する。
【0029】
第2の供給チャンバ46は、第2の流路46aと、燃料などの第2の流体を第2の流路46aへと供給する一つまたは複数の第2の入口ポート46bと、を有する。第1の入口ポート44bとは異なり、第2の入口ポート46bは供給ラインには直接接続しない。寧ろ、第2の入口ポート46bはインジェクタ要素36を取り囲むプレナム50に開口する。プレナム50は燃料を複数のインジェクタ要素36に供給する。
【0030】
第1および第2の流路44a/46aは供給ポート52を介して互いに流体的に接続される。従って第1の流路44aに供給される流体は供給ポート52を通して第2の流路46aへと供給される。第2の流路46bは、中央キャビティ40へと開口し、第1の流体または第2の流体を噴射キャビティ40へと供給して、中央導管42からの一次流体と混合させる。
【0031】
作動中、インジェクタ要素36は、3つの推進薬 − 酸化剤、点火流体、および燃料を導く役割を果たす。初めに、エンジン20を起動するように、酸化剤が、酸化剤供給源28から中央導管42を通して供給される。点火流体が、点火流体供給部22からマニホルド48および流体導管48aを通して第1の供給チャンバ44の第1の流路44aへと供給される。次いで点火流体が供給ポート52を通して第2の供給チャンバ46の第2の流路46aへと通流する。点火流体は、第2の流路46aから中央キャビティ40へと放出される。中央キャビティ40では、点火流体が、燃焼室24内で自己点火してエンジン20を起動させるように、中央導管42からの酸化剤と混合される。
【0032】
燃焼の開始後、点火流体の流れが停止され、燃料供給部30からの燃料がプレナム50を通してインジェクタ要素36へと供給される。燃料が、第2の入口ポート46bを通して第2の流路46aへと通流する。この例では、第2の入口ポート46bは、ポート中心軸線「S」で示されるように、中心軸Aに関して傾斜している。一例では、中心軸線Sはまた、燃料が第2の流路46aに流入するに従い燃料の旋回流を生じさせてその混合を促進するように、中心軸Aと交差しない。次いで燃料が第2の流路46aから中央キャビティ40へと放出され、そこで燃料が中央導管42からの酸化剤と混合されて、燃焼室24で燃焼される。
【0033】
インジェクタ要素36は、付加製造法を用いて製造されうる。付加製造は、コンピュータモデル(例えば、コンピュータ支援設計(CAD)ファイル)に従った、インジェクタ要素36などのコンポーネントの一層ごとの構築を伴う。一例の付加製造法は、これに限定しないが、選択的レーザ溶融法、および電子ビーム溶解法を含む。インジェクタ要素36は、付加製造によって形成される場合、複数の従属部品の間に機械式継手や溶接継手の存在しない、単一のモノリシックな部品である。例えば、中央導管42、第1の供給チャンバ(環状部)44、第2の供給チャンバ(環状部)46、および流体導管48aが、単一の一体構造となるように、中央導管42、第1の供給チャンバ(環状部)44、第2の供給チャンバ(環状部)46、および流体導管48aが、付加製造によって製造される。
【0034】
特徴部の組合せを図示の例に示したが、本開示の様々な実施例の利点を実現するようにそれらの全てを必ずしも組み合わせる必要はない。換言すれば、本開示の実施例によって設計された装置は、図面の一つに示された特徴部の全て、または図面に概略的に示された部分の全てを必ずしも含む必要はない。さらに、一実施例の選択された特徴部を別の実施例の選択された特徴部と組み合わせてもよい。
【0035】
上記の記載は本質的に限定的ではなく例示的なものである。開示の例に対する変更、修正が本開示から必ずしも逸脱することなく当業者にとって明らかとなるであろう。本開示に所与の法的保護の範囲は以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定することができる。
図1
図2