特許第6906609号(P6906609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北京北方▲微▼▲電▼子基地▲設▼▲備▼工▲芸▼研究中心有限▲責▼任公司の特許一覧

特許6906609気相エッチング装置および気相エッチング設備
<>
  • 特許6906609-気相エッチング装置および気相エッチング設備 図000003
  • 特許6906609-気相エッチング装置および気相エッチング設備 図000004
  • 特許6906609-気相エッチング装置および気相エッチング設備 図000005
  • 特許6906609-気相エッチング装置および気相エッチング設備 図000006
  • 特許6906609-気相エッチング装置および気相エッチング設備 図000007
  • 特許6906609-気相エッチング装置および気相エッチング設備 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906609
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】気相エッチング装置および気相エッチング設備
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   H01L21/302 201A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-518992(P2019-518992)
(86)(22)【出願日】2017年10月9日
(65)【公表番号】特表2019-533902(P2019-533902A)
(43)【公表日】2019年11月21日
(86)【国際出願番号】CN2017105368
(87)【国際公開番号】WO2018064983
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2019年5月31日
(31)【優先権主張番号】201610879076.5
(32)【優先日】2016年10月8日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509047535
【氏名又は名称】北京北方華創微電子装備有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing NAURA Microelectronics Equipment Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 振国
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】文 莉▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 云▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 鶴南
(72)【発明者】
【氏名】▲儲▼ ▲フ▼坪
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−545460(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0058422(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102376604(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応チャンバを形成するための空間を画定する反応チャンバ本体と、
反応チャンバ内部に配置され、被処理加工物を支持するように構成される基部と、
反応チャンバ本体に接続され、エッチング剤を反応チャンバの内部に導入するように構成されるガス吸入要素と、
反応チャンバ本体に接続され、反応チャンバ内の圧力を制御するように構成される圧力制御構成要素と、を含み、
反応チャンバ本体に接続され、反応チャンバ内の温度を第1の温度に制御するように構成される第1の温度制御装置であって、第1の温度は、反応チャンバがエッチング剤によって腐食されない温度である、第1の温度制御装置と、
基部に接続され、基部の温度を第2の温度に制御するように構成され、第2の温度は基部によって支持された被処理加工物が後続の工程を直接行うための温度要件を満たす温度である、第2の温度制御装置と、をさらに含み、
ガス吸入要素が、脱水フッ化水素ガスおよび脱水アルコールガスを反応チャンバに導入し、
脱水フッ化水素ガスと脱水アルコールガスとが混合されて、被処理加工物上の二酸化ケイ素を除去する、
気相エッチング装置であって、
気相エッチング装置は、
反応チャンバ本体の内部空間に配置され、反応チャンバ本体の側壁を覆うように構成されるライニング構成要素をさらに含み、
ライニング構成要素が、第1のライナと第2のライナとを含み、反応副生成物が、基部と第1のライナとの間の間隙および第1のライナと第2のライナとの間の間隙を少なくとも介して圧力制御構成要素に入り、
基部と第1のライナとの間の間隙が、第1のライナと第2のライナとの間の間隙よりも小さい、気相エッチング装置
【請求項2】
第1の温度制御装置が、気体、液体または固体媒体を制御することによって、熱伝導、熱放射および/または熱対流を通じて反応チャンバ内の温度を第1の温度に制御し、かつ/または、
第2の温度制御装置が、気体、液体または固体媒体を制御することによって、熱伝導、熱放射および/または熱対流を通じて基部の温度を第2の温度に制御する、
請求項1に記載の気相エッチング装置。
【請求項3】
第1の温度が、50℃〜90℃の範囲内にある、請求項2に記載の気相エッチング装置。
【請求項4】
第2の温度が、20℃〜60℃の範囲内にある、請求項2に記載の気相エッチング装置。
【請求項5】
圧力制御構成要素が、エッチング選択比を改善するために反応チャンバ内の圧力を30トル〜300トルの範囲内になるように調節するように構成される圧力制御装置を含む、請求項1に記載の気相エッチング装置。
【請求項6】
反応チャンバの上部領域に配置され、ガス吸入要素に接続されたシャワーヘッドをさらに含み、
シャワーヘッドは上部均一フロープレートおよび下部均一フロープレートを含み、エッチング剤はシャワーヘッドの上部均一フロープレートおよび下部均一フロープレートを介して反応チャンバに入り、
上部均一フロープレートの孔の寸法は下部均一フロープレートの孔の寸法よりも大きい、請求項1に記載の気相エッチング装置。
【請求項7】
移送装置と、請求項1からの何れか一項に記載の気相エッチング装置とを含み、
移送装置が、被処理加工物が移送装置と気相エッチング装置との間で移送されるように気相エッチング装置に接続されている、
気相エッチング設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集積回路の製造工程の分野に関し、特に、二酸化ケイ素を除去するための気相エッチング装置、および集積回路の製造工程において適用される二酸化ケイ素を除去するための気相エッチング設備に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路の製造工程の分野において、現在、集積回路は通常シリコン系材料を用いて製造される。シリコン(または多結晶シリコン)が空気中に置かれるとき、その表面は自然に酸化されるので、図1に示すように、二酸化ケイ素(SiO)の緻密層が生成される。ある工程では、金属膜は、シリコン系材料で作られた基板と直接接触することが必要とされる。基板の表面上にSiOの層があると、抵抗率が増加し、それによって部品の性能が悪影響を受ける。そのため、金属膜を形成する工程の前にSiO層を除去する必要がある。
【0003】
従来技術では、SiOは通常プラズマエッチングによって除去され、その工程において、SiOをエッチングするためのプラズマを生成するためにNFおよびNHが使用される。エッチング工程中、NFおよびNHはSiOと反応して(NHSiFを生成する。(NHSiFは常温で固体状態であるため、それをチャンバ外に排出するためには、(NHSiFがチャンバから排出されるSiF、HOおよびNHに昇華するように、シリコン系材料で作られた基板を120℃に加熱する必要がある。したがって、プラズマエッチングを用いてSiOを除去するための工程は、一般に、エッチング工程およびアニーリング工程を含む。アニーリング工程後、シリコン系材料で作られた基板の表面は高温であり、冷却する必要があり、より複雑な工程をもたらす。一般的に、エッチング工程およびアニーリング工程は、同じチャンバ内で行われてよく、別々に異なるチャンバ内で行われてもよい。したがって、プラズマエッチングによるSiO除去工程のための現在の設備は主に2つのタイプを含む。1つのタイプは、プラズマエッチング工程およびインサイチュアニーリング工程を行うためのプロセスチャンバ構造を有し、すなわちエッチング工程とアニーリング工程とが同じチャンバ内で行われ、次いでシリコン系材料が別の冷却チャンバ内で冷却され、設備のチャンバはエッチング/アニーリングチャンバに冷却チャンバを加えたものとして対応して構成される。他方のタイプは、エッチング工程とアニーリング工程とが別々に行われるフローを有し、すなわち、エッチング工程とアニーリング工程とが異なるチャンバで行われ、設備のチャンバは、エッチングチャンバとアニーリングチャンバと冷却チャンバとして対応して構成される。
【0004】
本発明者らは、従来技術における二酸化ケイ素を除去するための装置は、複数のチャンバを必要とし、工程設計が複雑で、コストが高く、生産能力が低く、工程中の生成物が固体状態であり、小さな穴の底部においてエッチングの均一性および除去効率に悪影響を及ぼすことを見出した。したがって、二酸化ケイ素を簡単かつ効率的に除去するエッチング装置を開発する必要がある。
【0005】
本明細書の背景に開示された情報は、本開示の一般的な背景の理解を深めることのみを意図しており、その情報が当業者に知られている先行技術を構成することを認めるまたは暗示すると見なされるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術の問題の1つを解決するために、本発明は二酸化ケイ素を除去するために集積回路の製造工程に適用される気相エッチング装置および設備を開示する。この気相エッチング装置および設備は、反応チャンバの温度および被処理加工物を支持する基部の温度をそれぞれ制御することができるので、二酸化ケイ素が除去された被処理加工物に、冷却工程を必要とせずに、直接次の工程を施すことができる。これにより、アニーリング機能をエッチングチャンバ内に統合する必要性または独立したアニーリングチャンバを設ける必要性がなくなり、したがって別個の冷却チャンバを設ける必要性がなくなり、その結果装置および設備は工程設計が簡単であり、コストが低く、生産能力が高い。
【0007】
本開示の一態様によれば、気相エッチング装置が提供され、該装置は、反応チャンバを形成するための空間を画定する反応チャンバ本体と、反応チャンバ内部に配置され、被処理加工物を支持するように構成される基部と、反応チャンバ本体に接続され、エッチング剤を反応チャンバの内部に導入するように構成されるガス吸入要素と、反応チャンバ本体に接続され、反応チャンバ内の圧力を制御するように構成される圧力制御構成要素と、反応チャンバ本体に接続され、反応チャンバ内の温度を第1の温度に制御するように構成される第1の温度制御装置であって、第1の温度は、反応チャンバがエッチング剤によって腐食され得ない温度である、第1の温度制御装置と、基部に接続され、基部の温度を第2の温度に制御するように構成され、第2の温度は基部によって支持された被処理加工物が後続の工程を直接行うための温度要件を満たすことができる温度である、第2の温度制御装置と、を含む。
【0008】
任意選択で、第1の温度制御装置は、気体、液体または固体媒体を制御することによって、熱伝導、熱放射および/または熱対流を通じて反応チャンバ内の温度を第1の温度に制御し、かつ/または、第2の温度制御装置は、気体、液体または固体媒体を制御することによって、熱伝導、熱放射および/または熱対流を通じて基部の温度を第2の温度に制御する。
【0009】
任意選択で、第1の温度は50℃〜90℃の範囲内にある。
【0010】
任意選択で、第2の温度は20℃〜60℃の範囲内にある。
【0011】
任意選択で、圧力制御構成要素は、エッチング選択比を改善するために反応チャンバ内の圧力を30トル(Torr)〜300トルの範囲内になるように調節するように構成される圧力制御装置を含む。
【0012】
任意選択で、気相エッチング装置はさらに、反応チャンバの上部領域に配置され、ガス吸入要素に接続されたシャワーヘッドを含む。シャワーヘッドは上部均一フロープレートおよび下部均一フロープレートを含み、エッチング剤はシャワーヘッドの上部均一フロープレートおよび下部均一フロープレートを介して反応チャンバに入り、上部均一フロープレートの孔の寸法は下部均一フロープレートの孔の寸法よりも大きい。
【0013】
任意選択で、気相エッチング装置は、反応チャンバ本体の内部空間に配置され、反応チャンバ本体の側壁を覆うライニング構成要素をさらに含む。ライニング構成要素が、第1のライナと第2のライナとを含み、反応副生成物が、基部と第1のライナとの間の間隙および第1のライナと第2のライナとの間の間隙を少なくとも介して圧力制御構成要素に入る。
【0014】
任意選択で、基部と第1のライナとの間の間隙は、第1のライナと第2のライナとの間の間隙よりも小さい。
【0015】
任意選択で、ガス吸入要素は、脱水フッ化水素ガスおよび脱水アルコールガスを反応チャンバに導入する。脱水フッ化水素ガスと脱水アルコールガスとが混合されて、被処理加工物上の二酸化ケイ素を除去する。
【0016】
別の態様として、本開示はまた、移送装置と、本開示の上記解決方法のいずれかの気相エッチング装置とを含む気相エッチング設備を提供する。移送装置は、被処理加工物が移送装置と気相エッチング装置との間で移送されるように気相エッチング装置に接続されている。
【0017】
本開示による被処理加工物上の二酸化ケイ素を除去するための装置は、以下の利点を有する。
【0018】
(1)本発明が提供する気相エッチング装置および設備において、第1の温度制御装置が反応チャンバに設けられ、第2の温度制御装置が基部に設けられているので、反応チャンバおよび基部の温度は別個に制御され、これにより反応チャンバ内の温度を反応チャンバの内壁がエッチングされない第1の温度に維持することができ、基部の温度は第1の温度よりも低い第2の温度に制御される。このようにして、基部によって支持された被処理加工物にSiO等の表面酸化物を除去するためのエッチング工程を施した後、被処理加工物の温度が後続の工程を直接行うための温度要件を満たすことができるので、被処理加工物を冷却する必要性を排除することができる。このようにして、アニーリング機能またはアニーリングチャンバをエッチングチャンバ内に統合する必要性がなくなり、したがって、別個の冷却チャンバを設ける必要性がなくなる。その結果、気相エッチング装置および設備にはエッチングチャンバのみを設けることが必要とされ、これは構造が簡単で、プロセスルートが短く、安価で、生産能力が高い。さらに、このような単一チャンバ構造(エッチングチャンバのみが必要であり、アニーリングチャンバおよび冷却チャンバは必要でない)は、後続の工程との統合を容易にする。すなわち、使用時の柔軟性がより良好になるように、単一チャンバ構造を同じプラットフォーム上で後続の工程によって必要とされる装置と一体化することがより容易である。
【0019】
(2)本開示によって提供される気相エッチング装置および設備が気相エッチング工程で使用されるので、すなわち、被処理加工物の表面上のSiOの酸化物層は、従来技術で使用されているプラズマエッチング工程の代わりに、気相エッチング工程を使用して除去されるので、被処理加工物の表面上のSiOの酸化物層が本開示によって提供される気相エッチング装置および設備を使用して除去されるとき、固体状態の反応生成物は生成されない。このようにして、反応生成物をポンプによってチャンバから容易に抽出することができるので、従来技術における固体状態の反応生成物が小さな穴を塞いでしまうという問題を回避することができ、これは小さい穴の底部においてSiOの層を除去することに役立つだけではなく、SiOの酸化物層の全体的な除去効率も改善する。
【0020】
(3)さらに、本発明が提供する気相エッチング装置および設備を用いて被処理加工物表面上のSiOの酸化物層を除去するとき、高圧下で処理を行う必要がある(例えば、反応チャンバ内の圧力は30トル〜300トルの範囲内である)。このようにして、エッチング剤は、被処理加工物(シリコンウェハなど)の表面においてより容易に吸収され、それにより反応速度を速め、エッチング選択比を改善することができる。
【0021】
本開示による装置は、図面および本明細書に組み込まれる実施形態の詳細な説明から明らかであるかまたは詳細に説明される他の特徴および利点を有する。図面および実施形態の詳細な説明はすべて、本開示の特定の原理を説明するために使用されている。
【0022】
本開示の上記および他の目的、特徴および利点は、添付の図面とともに以下に本開示の例示的な実施形態を詳細に説明することによってより明らかになり、本開示の例示的な実施形態において、同様の参照番号は概して同様の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】自然酸化物層を有する集積回路装置の概略図を示す。
図2】本開示の実施形態による気相エッチング装置の構造概略図を示す。
図3】本開示の実施形態による気相エッチング装置のシャワーヘッドの構造概略図を示す。
図4a】本開示の一実施形態による気相エッチング装置のライニング構成要素の構造概略図を示す。
図4b】本開示の一実施形態による気相エッチング装置のライニング構成要素の構造概略図を示す。
図5】本開示による方法を使用して自然酸化物層を除去した後のデバイスの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、添付の図面を参照して以下にさらに詳細に説明される。添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を示しているが、本発明は様々な形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態によって限定されるべきではないことを理解されたい。むしろ、これらの実施は、本発明をより徹底的かつ完全にし、かつ本発明の範囲を全体として当業者に提供するために提供される。
【0025】
〔実施例1〕
図2は、本開示の実施形態による気相エッチング装置の構造概略図を示す。
【0026】
この実施形態において、気相エッチング装置は、反応チャンバ203を形成するための空間を画定する反応チャンバ本体201と、反応チャンバ203内部の底部領域に配置され、ウェハなどの被処理加工物を支持するように構成されている基部209と、反応チャンバ本体201に接続されており、それを通してガス状エッチング剤が反応チャンバ203の内部に導入されるガス吸入要素202と、反応チャンバ本体201に接続され、反応チャンバ203内の圧力を制御するように構成される圧力制御構成要素とを含む。また、気相エッチング装置は、反応チャンバ本体201に接続され、反応チャンバ203内の温度を、反応チャンバ203の内壁がエッチング剤によって腐食されない第1の温度、すなわち、反応チャンバ203がエッチング剤によって腐食されない温度である第1の温度に制御するように構成される第1の温度制御装置208と、基部209に接続され、基部209の温度を、基部209によって支持された被処理加工物が後続の工程を直接実行するための温度要件を満たす第2の温度、すなわち、基部209によって支持された被処理加工物が後続の工程を直接実行するための温度要件を満たす温度である第2の温度に制御するように構成される第2の温度制御装置207とをさらに含む。第1の温度制御装置208は、気体、液体または固体媒体を制御することによって、熱伝導、熱放射および/または熱対流を通じて反応チャンバ203内の温度を第1の温度に制御し、かつ/または第2の温度制御装置207は、気体、液体または固体媒体を制御することによって、熱伝導、熱放射および/または熱対流を通じて基部209の温度を第2の温度に制御する。
【0027】
この実施形態において、反応チャンバの温度と被処理加工物を支持する基部の温度とをそれぞれ制御することによって、二酸化ケイ素を除去した後、次の処理を行う前に、被処理加工物を冷却する必要がないので、気相エッチング装置にはエッチングチャンバのみを設ける必要があり、エッチングチャンバ内にアニール機能を統合させたり、アニールチャンバを追加で設ける必要がなく、したがって別の冷却チャンバを設ける必要がない。これにより、二酸化ケイ素を除去するための装置が2つ以上のチャンバを必要とし、そして装置および設備が、工程設計において複雑であり、コストが高く、そして生産能力が低いという従来技術の問題が解決される。
【0028】
次に、本開示の一実施形態による気相エッチング装置の具体的な構成について詳細に説明する。
【0029】
図2に示すように、一例において、本開示の一実施形態による気相エッチング装置では、反応チャンバ本体201によって画定された空間が反応チャンバ203を形成し、被処理加工物を配置するように構成される基部209が反応チャンバ203内部の底部領域において配置される。ガス吸入要素202は、反応チャンバ本体201に接続されてよく、複数のガス吸入導管を含み、空気圧弁213が各ガス吸入導管に設けられる。空気圧弁213が開いている場合、ガス状エッチング剤は、ガス吸入要素202内で混合され、ガス吸入要素202を通って反応チャンバ203内に入ってよい。
【0030】
さらに、気相エッチング装置は、第1の温度制御装置208と第2の温度制御装置207とをさらに含んでよく、第1の温度制御装置208は反応チャンバ本体201に接続され、反応チャンバ203内の温度を第1の温度に制御するように構成され、該第1の温度において反応チャンバ203の内壁はエッチング液によって腐食されない。第2の温度制御装置207は、基部209に接続され、基部209によって支持された被処理加工物が後続の工程を直接行うための温度要件を満たすことができる第2温度に基部209の温度を制御するように構成される。任意選択で、第1の温度制御装置208内の温度調整機構は熱交換器とすることができ、第2の温度制御装置207内の温度調整機構はウォーターチラーとすることができる。しかしながら、当業者は、本開示がそれに限定されず、温度制御および調節のための、反応チャンバ203の温度および基部209の温度を制御することができる任意の要素が使用され得ることを理解すべきである。
【0031】
一例では、第1の温度は50℃から90℃であってよく、第2の温度は20℃から60℃であってよい。任意選択で、第1の温度は70℃であり、第2の温度は40℃である。このように、反応チャンバ203内の温度はより高く、これは反応チャンバの内壁がエッチング剤によって腐食されるのを防ぐのに有益である。基部209内の温度がより低く、それにより基部209によって支持された被処理加工物上の二酸化シリコンとエッチング剤とがより低い温度で反応するので、アニーリングチャンバと冷却チャンバを設ける必要がなくなる。これにより、コストが節約され、プロセスルートが短縮され、生産能力が向上する。
【0032】
一例では、本開示の一実施形態による気相エッチング装置において、反応チャンバ203内の圧力を制御するために反応チャンバ本体201に圧力制御構成要素が接続されていてもよい。
【0033】
一例では、図2に示すように、圧力制御構成要素は、反応チャンバ203内の圧力を30トル〜300トルの範囲内に調整し、気相エッチング工程のためのエッチング選択比を改善するための圧力制御装置206を含むことができる。任意選択で、反応チャンバ203内の圧力は200トルであってよい。このように、反応チャンバ203内の圧力を調節することによって、エッチング剤を高圧で反応させ、それによってエッチング選択比および工程効率を改善する。
【0034】
一例では、圧力制御構成要素はまた、ドライポンプ205および分子ポンプ204を含み得る。ドライポンプ205は、反応チャンバ203内の湿度を調節するように構成される。分子ポンプ204は、工程が終了した後に反応チャンバ203から反応副生成物を抽出するように構成される。圧力制御装置206、ドライポンプ205および分子ポンプ204は真空システムを形成することができる。工程中、反応チャンバ203内の圧力の調整は、圧力制御装置206によって実現され、反応チャンバ203内の湿度はドライポンプ205によって制御される。工程が終了した後、分子ポンプ204は真空化し(例えば、反応副生成物を抽出する)、被処理加工物の次の移送の準備をする。
【0035】
図3は、本開示の実施形態による気相エッチング装置のシャワーヘッドの構造概略図を示す。
【0036】
一例では、図2および図3に示すように、本開示の一実施形態による気相エッチング装置は、シャワーヘッド210をさらに含む。シャワーヘッド210は、反応チャンバ203の上部領域に配置され、ガス吸入要素202に接続される。シャワーヘッド210は、上部均一フロープレート211と下部均一フロープレート212とを含む二層構造とすることができる。ガス吸入要素202から反応チャンバ203に入るエッチング剤は、シャワーヘッド210の上部均一フロープレート211および下部均一フロープレート212を介して反応チャンバ203に入る。上部均一フロープレート211の孔の寸法は下部均一フロープレート212の孔の寸法よりも大きい。
【0037】
例えば、ガス状エッチング剤は、最初に上部均一フロープレート211の上部に入り、下方に流れるときに、上部均一フロープレート211によって遮断され、それによって流れの方向を変える。すなわち、ガス状エッチング剤は、鉛直方向に沿った下方への流れから水平方向に沿って流れるように変わる。したがって、ガス状エッチング剤の予備的な均一ガス流は、上部均一フロープレート211によって実現される。すなわち、上部均一フロープレート211の縁部領域におけるガス状エッチング剤および上部均一フロープレート211の中央領域のガス状エッチング剤が、水平方向に拡散し流れることで予備的な均一ガス流に達する。その後、ガス状エッチング剤は、上部均一フロープレート211を通過した後、下部均一フロープレート212の上部に入る。下部均一フロープレート212によって遮断された後、ガス状エッチング剤は、さらなるガス流均一性のために、下部均一フロープレート212の上方を水平方向に拡散して流れ続ける。上部均一フロープレート211の孔の寸法が下部均一フロープレート212の孔の寸法よりも大きいため、ガス状エッチング剤はシャワーヘッド210に急速に入ることができ、シャワーヘッド210からゆっくりと排出されるが、これはシャワーヘッド210内のガス状エッチング剤の完全拡散および均一な流れに有益であり、ガス状エッチング剤がより高い圧力で下部均一フロープレート212を通過することが保証され、それによって反応チャンバ203内の高圧工程の要件が満たされる。下部均一フロープレート212の孔の寸法は1mm未満であってよく、例えば、下部均一フロープレート212の孔の寸法は0.5mmであってよい。
【0038】
図4aおよび図4bは、本開示の一実施形態による気相エッチング装置のライニング構成要素の構造概略図をそれぞれ示す。
【0039】
一例では、図4a及び図4bに示すように、本開示の一実施形態による気相エッチング装置は、反応チャンバ本体201(すなわち、反応チャンバ203内)の内部空間に配置され、反応チャンバ本体201の側壁を覆うライニング構成要素をさらに含んでよい。ライニング構成要素は、第1のライナ401と第2のライナ402とを含むことができる。反応副生成物は、基部209と第1のライナ401との間の間隙A、第1のライナ401と第2のライナ402との間の間隙B、および第2のライナ402と反応チャンバ本体201との間の小さな間隙を連続的に通過し、その後圧力制御構成要素の分子ポンプ204に入る。
【0040】
反応チャンバ203内のライニング構成要素は、反応チャンバ203が反応ガスによって腐食されて粒子を生成するのを防ぐことができる。図4aおよび図4bに示されるように、ガスはシャワーヘッド210の上部均一フロープレート211および下部均一フロープレート212を通過し、基部209と第1のライナ401との間の間隙A、第1のライナ401および第2のライナ402との間の間隙B、および第2のライナ402と反応チャンバ本体201の側壁との間の小さな間隙を通過し、その後、真空系(圧力制御構成要素)に入り、反応チャンバ本体201の側壁に接続されている分子ポンプ204によって排出される。高圧工程を満足させるために、基部209と第1のライナ401との間の間隙Aは2mm未満に設計される必要があり、第1のライナ401と第2のライナ402との間の間隙Bは2mm未満に設計される必要があり、AはB未満であり、例えば、A=1.5mm、B=2mmであり、これにより、基部209の下の領域に入るガス状エッチング剤が少なくなり、ガス状エッチング剤の利用効率を確実にする。
【0041】
一例では、ガス吸入要素202は、脱水フッ化水素ガスと脱水アルコールガスとを反応チャンバ203に導入することができる。脱水フッ化水素ガスと脱水アルコールガスとを混合して、被処理加工物上の二酸化ケイ素を除去するためのエッチング剤を生成させる。
【0042】
一例では、エッチング剤は、例えば、脱水HFガスを脱水メチルアルコール(CHOH)ガスと混合することによって生成されてよい。具体的には、メチルアルコール(CHOH)を用いると、本開示の一実施形態による気相エッチング装置の反応式は、次のように表すことができる。
【0043】
【化1】
【0044】
ガス状エッチング剤HFおよびCHOHは、脱水HFガスと脱水CHOHガスとを混合することによって生成され、次いで混合され、SiOと反応してSiF、CHOHおよびHOを生成する。
【0045】
例えば、この工程において、被処理加工物を移送チャンバから反応チャンバ203に移送し、第2の温度制御装置207が、被処理加工物の温度を20℃〜60℃に制御するために基部209の温度を制御し、第1の温度制御装置208が、反応チャンバ203などの構成要素の温度を50℃〜90℃に制御するために用いられる。反応チャンバ203および被処理加工物の温度が安定した後、基部209を処理の準備ができている位置に上昇させ、処理のためのCHOHガスおよびHFガス(脱水されたHFガスと脱水されたCHOHガスとの混合によって生成されたガス状エッチング剤HFおよびCHOH)を導入して処理を実施する。処理の間、圧力制御装置206は反応チャンバ203内の圧力を30トル〜300トルに制御してよい。任意選択で、反応チャンバ203内の圧力は200トルであり、反応チャンバ203内の温度は70℃であり、基部209の温度は40℃である。
【0046】
一例では、フッ化水素ガスの流量は100sccm〜500sccmであり、アルコールガスの流量は100sccm〜1000sccmである。任意選択で、さらに、フッ化水素ガスの流量は150sccm〜225sccmであり、アルコールガスの流量は200sccm〜450sccmである。
【0047】
一例では、フッ化水素ガスの流量とアルコールガスの流量との比は、0.8:1から1.2:1であってよい。任意選択で、さらに、フッ化水素ガスの流量とアルコールガスの流量との比は、1:1であってもよい。
【0048】
一例では、アルコールガスは、C〜C一価アルコールガスのうちの少なくとも1つであってよい。任意選択で、さらに、アルコールガスは、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールのうちの少なくとも1つである。
【0049】
図5は、本開示による気相エッチング装置を使用して二酸化ケイ素の自然酸化物層を除去した後のデバイスの概略図を示す。従来技術と比較して、本開示の一実施形態による気相エッチング装置がSiOの自然酸化物層を除去するために使用されるとき、反応生成物は固体状態ではなく、したがってポンプによって排出され得る。このように、この工程はアニーリングプロセスを実行する必要性を排除するので、そのようなアニーリング工程は省略される。さらに、反応生成物が固体状態ではないので、固体状態の反応生成物が小さな穴を塞いでしまうという従来技術における問題を回避することができ、これは小さな穴の底部においてSiOの層を除去するのに有益であり、それによってSiOの自然酸化物層の除去効率を改善する。反応温度が低い(一般に40℃以下)ので、SiOが除去された後に被処理加工物を冷却する必要がなくなり、その後の工程が直接実行され得、気相エッチング装置内にアニーリング機能またはアニーリングチャンバを統合する必要がなくなり、別個の冷却チャンバを設ける必要がなくなり、気相エッチング装置の構造が簡単になり、プロセスルートが短くなり、コストが安くなり、生産能力が高くなる。そのような単一チャンバ構造(アニーリングチャンバおよび冷却チャンバをさらに設けることなくエッチングチャンバを設けることのみが必要とされる)は、後続の工程と統合するためにより有利である。すなわち、使用時の融通性がより良好になるように、同じプラットフォーム上で単一チャンバ構造を後続の工程に必要とされる装置と一体化することがより容易である。
【0050】
CHOHは吸湿性を有し、これは被処理加工物上の残留HOをさらに減少させる。より高い処理圧力により、反応性ガスを被処理加工物の表面上に吸収させ、SiOと反応させることがより容易となり、これは被処理加工物の表面上のSiOの除去速度および除去均一性を非常に高める。
【0051】
別の態様によれば、本開示はまた、反応装置と移送装置とを含む気相エッチング装置を提供し、反応装置は、本開示の上記実施形態の気相エッチング装置であってよく、移送装置は、被処理加工物(ウェハなど)が移送装置と反応装置との間で移送されるように、反応装置に接続されている。
【0052】
本開示による気相エッチング装置および設備は、以下の利点を有する:
【0053】
(1)本開示が提供する気相エッチング装置および設備においては、第1の温度制御装置が反応チャンバに設けられ、第2の温度制御装置が基部に設けられているので、反応チャンバおよび基部の温度は別個に制御され、それにより、反応チャンバ内の温度は、反応チャンバ内壁がエッチングされない第1の温度に維持されてよく、基部の温度は、第1の温度より低い第2の温度に制御される。このように、基部によって支持された被処理加工物上でSiO等の表面酸化物を除去するためのエッチング処理を施した後は、被処理加工物の温度が後工程を直接行うための温度要件を満たすことができる。これは、被処理加工物を冷却する必要性を排除する。このように、アニーリング機能またはアニーリングチャンバをエッチングチャンバ内に統合する必要性がなくなり、したがって、別個の冷却チャンバを設ける必要性がなくなる。それ故に、気相エッチング装置および設備にはエッチングチャンバのみを設けることが必要とされ、これは構造が簡単で、プロセスルートが短く、安価で、生産能力が高い。そのような単一チャンバ構造(エッチングチャンバのみが必要とされ、アニーリングチャンバおよび冷却チャンバは必要とされない)は、後続工程と統合するためにより有利である。すなわち、使用時の融通性がより良好になるように、単一チャンバ構造を同じプラットフォーム上で後続の工程によって必要とされる装置と一体化することがより容易である。
【0054】
(2)本開示によって提供される気相エッチング装置および設備は気相エッチング工程において使用されるため、すなわち、被処理加工物の表面上のSiOの酸化物層が、従来技術で使用されているプラズマエッチング工程の代わりに、気相エッチング工程を使用して除去され、被処理加工物の表面上のSiOの酸化物層が本開示によって提供される気相エッチング装置および設備を使用して除去されるとき、固体状態の反応生成物は生成されない。このようにして、反応生成物はポンプによってチャンバから容易に抽出され、その結果、固体状態の反応生成物が小さな穴を塞ぐという従来技術の問題を回避することができ、これは小さな穴の底部においてSiOの層を除去するのに有益であるというだけではなく、SiOの酸化物層の全体的な除去効率も向上する。
【0055】
(3)さらに、本開示によって提供される気相エッチング装置および設備を用いて被処理加工物表面上のSiOの酸化物層が除去されるとき、高圧下で処理を行う必要がある(例えば、反応チャンバ内の圧力は30トル〜300トルの範囲内である)。このように、エッチング剤は、被処理加工物(シリコンウェハなど)の表面においてより容易に吸収され、それは反応の速度を速めることができ、エッチング選択比を改善する。
【0056】
本開示の実施形態の上記説明の目的は、本開示の実施形態の有利な効果を例示的に説明することのみを目的としており、本開示の実施形態を任意の所定の実施例に限定することを意図していないことは当業者によって理解されるべきである。
【0057】
以上、本開示の実施形態について説明したが、上記説明は例示であって網羅的なものではなく、開示された実施形態に限定されるものではない。本開示に対する様々な修正および変形は、開示された実施形態の範囲および精神から逸脱することなく、当業者にとって明らかである。本明細書で使用される用語の選択は、実施形態の原理、実際の用途または商業的使用における技術の改善の最良の説明を意図し、または当業者が本明細書に開示の実施形態を理解できるようにすることを意図する。
【符号の説明】
【0058】
201 反応チャンバ本体
202 ガス吸入要素
203 反応チャンバ
204 分子ポンプ
205 ドライポンプ
206 圧力制御装置
207 第2の温度制御装置
208 第1の温度制御装置
209 基部
210 シャワーヘッド
211 上部均一フロープレート
212 下部均一フロープレート
213 空気圧弁
401 第1のライナ
402 第2のライナ
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5