特許第6906650号(P6906650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6906650
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】コンテナ流出防止装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/20 20060101AFI20210708BHJP
   B63B 21/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   E02B3/20 A
   B63B21/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-38299(P2020-38299)
(22)【出願日】2020年3月6日
【審査請求日】2020年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2019-72374(P2019-72374)
(32)【優先日】2019年4月5日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2020-31136(P2020-31136)
(32)【優先日】2020年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519124316
【氏名又は名称】内田 惠介
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】内田 惠介
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−028253(JP,A)
【文献】 特開2015−206231(JP,A)
【文献】 特開2017−043356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/20
B63B 21/00
B63B 21/20
B63B 22/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ふ頭のコンテナヤードにおいて船体に積み込み可能に載置された積込コンテナ群の津波などの海面上昇に伴う流出を防止するコンテナ流出防止装置であって、
前記積込コンテナ群の周囲を囲むように長手方向の端部同士を環状に並べて配置され、海面上昇に伴い浮上する複数の空コンテナと、
前記各空コンテナのうちの互いに相隣なる空コンテナの長手方向の端部同士を横方向に連結する横連結索と、
前記各空コンテナの下面にその長手方向略等間隔置きの設置間隔でそれぞれ一端が連結され、当該各空コンテナを前記コンテナヤードに対し縦方向に連結する複数の縦連結索と、
前記コンテナヤードに前記各縦連結索の一端の設置間隔とほぼ同じ間隔で設置され、前記縦連結索の他端を連結する複数の支持具と、
を備え、
前記各縦連結索の一端及び前記各支持具の設置間隔は、前記積込コンテナ群の各積込コンテナの端部の縦方向及び横方向の寸法よりも小さくなるように設定されていることを特徴とするコンテナ流出防止装置。
【請求項2】
前記コンテナヤードに配置された前記各空コンテナのうちの少なくとも互いに相隣なる2つの空コンテナ同士の間には、前記コンテナヤードに対する前記各積込コンテナの出入りを可能とする出入口が設けられている請求項1に記載のコンテナ流出防止装置。
【請求項3】
前記横連結索は、前記各空コンテナのうちの互いに相隣なる空コンテナの長手方向の端部の上下両端同士の間をそれぞれ連結している請求項1又は請求項2に記載のコンテナ流出防止装置。
【請求項4】
前記各支持具は、土壌表面より土中深くに埋設されて抜け出し不能なアンカー状部材が適用され、津波等による海面の上昇に伴い空コンテナ自身が浮上する際及び流出する前記各積込コンテナが前記各空コンテナに捕捉される際の引張力が各縦連結索の引っ張りに伴う土壌表面及び土中での移動とアンカー状部材の引き上げとによって緩和されるようにしている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のコンテナ流出防止装置。
【請求項5】
前記各縦連結索の一端と他端との間の長さは、前記積込コンテナ群の各積込コンテナの端部の縦方向及び横方向の寸法よりも小さくなるように設定されている請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のコンテナ流出防止装置。
【請求項6】
前記各縦連結索は、前記空コンテナの下面における4隅又は対角線上の2隅においてのみそれぞれ一端が連結されている請求項5に記載のコンテナ流出防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ふ頭のコンテナヤードにおいて船体に積み込み可能に載置された実入りコンテナや空コンテナなどの積込コンテナ群の津波などの海面上昇に伴う流出を防止するためのコンテナ流出防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のコンテナ流出防止装置としては、岸壁のコンテナヤードに載置された積込コンテナ群をそれぞれ個々に固定して、津波などの海面上昇に伴う積込コンテナ群の流出を防止するようにしたものは知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、津波などの海面上昇に伴い漂流するおそれがある漂流物の流出を防止する流出防止装置としては、漂流物の背後に、その漂流物を捕捉し得る防止柵などの構造物を設置して、漂流物の流出防止を図るようにしたものもある(特許文献2〜特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−217180号公報
【特許文献2】特開2008−202339号公報
【特許文献3】特開2012−225139号公報
【特許文献4】特開2015−206231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来のコンテナ流出防止装置では、ふ頭のコンテナヤードに載置された積込コンテナ群を個々にロープやチェーン等の索状物でそれぞれ個々に固定する作業が非常に煩わしい上、コンテナヤードの積込コンテナ群が積層されていると、積層された積込コンテナ群を個々に索状物で固定する作業に困難性が伴うことになる。
【0006】
しかも、積込コンテナ群の索状物による固定は、コンテナヤードに載置されて船体に積み込まれるまでの間のみ行われるため、船体に積み込む際に固定を解除しなければならず、その作業も非常に煩わしい上、困難性が伴うことになる。
【0007】
一方、前記従来の防止柵などの構造物を設置するようにした流出防止装置では、その防止柵などの柵高によって流出する漂流物の捕捉限界があるため、海面上昇に伴い浮き上がった積込コンテナ群を捕捉する上でかなり嵩高いものが必要となって実現化が難しい。その上、防止柵などの構造物が積込コンテナ群を捕捉し得る嵩高いものであったとしても、その構造物が設置されている方向へ流出する積込コンテナ群のみしか捕捉することができず、押し引きされる積込コンテナ群の流出を防止し得る構造であるとはいえない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、岸壁のコンテナヤードに載置された積込コンテナ群を個々に索状物などにより固定することなく、当該積込コンテナ群の津波などによる海面上昇に伴う流出を、その水位や流出方向にかかわらず簡単かつ効果的に防止することができるコンテナ流出防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明が講じた解決手段は、ふ頭のコンテナヤードにおいて船体に積み込み可能に載置された積込コンテナ群の津波などによる海面上昇に伴う流出を防止するコンテナ流出防止装置を前提とする。そして、前記積込コンテナ群の周囲を囲むように長手方向の端部同士を環状に並べて配置され、海面上昇に伴い浮上する複数の空コンテナと、前記各空コンテナのうちの互いに相隣なる空コンテナの長手方向の端部同士を横方向に連結する横連結索と、前記各空コンテナの下面にその長手方向略等間隔置きの設置間隔でそれぞれ一端が連結され、当該各空コンテナを前記コンテナヤードに対し縦方向に連結する複数の縦連結索と、前記コンテナヤードに前記各縦連結索の一端の設置間隔とほぼ同じ間隔で設置され、前記縦連結索の他端を連結する複数の支持具と、を備える。更に、前記各縦連結索の一端及び前記各支持具の設置間隔を、前記積込コンテナ群の各積込コンテナの端部の縦方向及び横方向の寸法よりも小さくなるように設定することを特徴としている。
【0010】
前記コンテナヤードに配置された前記各空コンテナのうちの少なくとも互いに相隣なる2つの空コンテナ同士の間に、前記コンテナヤードに対する前記各積込コンテナの出入りを可能とする出入口を設けることがこのましい。
【0011】
また、前記横連結索は、前記各空コンテナのうちの互いに相隣なる空コンテナの長手方向の端部の上下両端同士の間をそれぞれ連結することがこのましい。
【0012】
更に、前記各支持具は、土壌表面より土中深くに埋設されて抜け出し不能なアンカー状部材を適用し、津波等による海面の上昇に伴い空コンテナ自身が浮上する際及び流出する前記各積込コンテナが前記各空コンテナに捕捉される際の引張力が各縦連結索の引っ張りに伴う土壌表面及び土中での移動とアンカー状部材の引き上げとによって緩和されるようにしていてもよい。
【0013】
また、前記各縦連結索の一端と他端との間の長さを、前記積込コンテナ群の各積込コンテナの端部の縦方向及び横方向の寸法よりも小さくなるように設定していてもよい。
【0014】
そして、前記各縦連結索を、前記空コンテナの下面における4隅又は対角線上の2隅においてのみそれぞれ一端を連結していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上、要するに、積込コンテナ群の周囲を囲むように環状に並べて配置した複数の空コンテナの互いに相隣なる長手方向の端部同士を横連結索により横方向に連結するとともに、各空コンテナの下面の長手方向略等間隔置きの複数箇所にそれぞれ一端を連結した縦連結索の他端を、当該縦連結索の一端の設置間隔とほぼ同じ間隔でコンテナヤードに設置した支持具に連結し、縦連結索の一端及び各支持具の設置間隔を積込コンテナ群の各積込コンテナの端部の縦方向及び横方向の寸法よりも小さくなるように設定している。
【0016】
このため、積込コンテナ群は、その周囲を環状に並べた複数の空コンテナが横連結索により連結されて囲まれているとともに、各空コンテナの下面の長手方向略等間隔置きの複数箇所にそれぞれ一端を連結しかつ他端をコンテナヤードの各支持具に連結した縦連結索により高さ方向からも抜け出し不能に囲まれている。これにより、ふ頭のコンテナヤードにおいて船体に積み込み可能に載置された積込コンテナ群を索状物などによって個々に固定する必要がなく、その周囲の空コンテナにのみ連結索を連結すればよい。この結果、積込コンテナ群の津波などによる海面上昇に伴う流出を、その水位や流出方向にかかわらず簡単かつ効果的に防止することができる。
【0017】
また、コンテナヤードに配置された各空コンテナのうちの少なくとも互いに相隣なる2つの空コンテナ同士の間に、コンテナヤードに対する各積込コンテナの出入りを可能とする出入口を設けることで、各積込コンテナをフォークリフトなどにより各空コンテナ同士の間の出入口を通って出入りさせることが可能となり、船体への各積込コンテナの積込効率はもちろんのこと、コンテナヤードへの各積込コンテナの移送効率を効果的に向上させることができる。
【0018】
各空コンテナのうちの互いに相隣なる空コンテナの長手方向の端部の上下両端同士の間をそれぞれ横連結索により連結することで、積込コンテナ群の周囲が環状に並べた複数の空コンテナの上下両端同士の間を連結する上下の横連結索により効率よく囲まれて、互いに相隣なる空コンテナ同士の間を通って各積込コンテナが流出することが回避され、積込コンテナ群の津波などによる海面上昇に伴う流出をより効果的に防止することができる。
【0019】
更に、土壌表面より土中深くに埋設されて抜け出し不能なアンカー状部材を適用した各支持具によって、津波等による海面の上昇に伴い空コンテナ自身が浮上する際及び流出する各積込コンテナが各空コンテナに捕捉される際の引張力は、各縦連結索の引っ張りに伴う土壌表面及び土中での移動とアンカー状部材(支持具)の引き上げとによって緩和されるようにしている。これにより、各縦連結索に作用する引張力がアンカー状部材を引き上げながら空コンテナの流出方向へ土壌表面及び土中を移動する各縦連結索によって効果的に抑制されることになり、支持具を固定するための基礎を各支持具毎に設置しなくても済み、基礎のコンパクト化及びコストダウンを図ることができる。
【0020】
また、各縦連結索の一端と他端との間の長さを、積込コンテナ群の各積込コンテナの端部の縦方向及び横方向の寸法よりも小さくすることで、高潮などによる海面の上昇に伴い各空コンテナが浮上しても、当該各空コンテナの浮遊は各積込コンテナの端部の縦方向及び横方向の寸法よりも小さな浮遊量となる。そのため、ふ頭のコンテナヤードにおいて頻繁に起こり得る高潮などによって海面が上昇しても、各積込コンテナの流出が各空コンテナによって捕捉される。その結果、岸壁のコンテナヤードに載置された積込コンテナ群を個々に索状物などにより固定することなく、当該積込コンテナ群の高潮などによる海面の上昇に伴う流出を、その水位や流出方向にかかわらず簡単かつ効果的に防止することができる。
【0021】
そして、各縦連結索の一端を、空コンテナの下面における4隅又は対角線上の2隅においてのみ連結することで、4本の縦連結索はもちろんのこと、2本の縦連結索による空コンテナの連結であっても、当該各縦連結索によって空コンテナが円滑に保持される。これは、海面が上昇する高潮の流れ方向に対し空コンテナの下面において下流側となる同一の長手方向辺上の2隅においてのみ2本の縦連結索が連結されていると、高潮の流れに押された空コンテナが各縦連結索との連結辺(空コンテナ下面の下流側の長手方向辺)を支点に回転して転倒するおそれがあるからである。これにより、海面が上昇する際や海面が復帰する際などのあらゆる方向の高潮の流れに対して、空コンテナの下面における4隅又は対角線上の2隅に連結した2本の縦連結索が互いに引き寄せ合って空コンテナの転倒を抑制し、積込コンテナ群の高潮などによる海面の上昇に伴う流出をより効果的に防止することができる。
【0022】
しかも、各縦連結索による空コンテナの連結が当該空コンテナの下面における対角線上の2隅の場合は、コンテナ流出防止装置の簡素化及びコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るコンテナ流出防止装置を上方から見た平面図である。
図2図1のコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向と直交する方向から見た側面図である。
図3図1のコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向から見た断面図である。
図4図1のコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向と直交する方向から見た出入口付近の側面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向から見た支持具を含む断面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態のその他の変形例に係るコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向から見た支持具を含む断面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係るコンテナ流出防止装置を上方から見た平面図である。
図8】本発明の第3の実施の形態に係るコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向と直交する方向から見た側面図である。
図9図8のコンテナ流出防止装置の互いに相隣なる空コンテナが浮上した状態での斜視図である。
図10】第3の実施の形態の変形例に係るコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向と直交する方向から見た側面図である。
図11】第3の実施の形態のその他の変形例に係るコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向と直交する方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0025】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るコンテナ流出防止装置を上方から見た平面図を示している。この図1において、ふ頭に設置されたコンテナヤードXには、図示しない船体に積み込み可能に積込コンテナ群1が載置されている。この積込コンテナ群1の各積込コンテナ10は、実入りコンテナや空コンテナなどである。
【0026】
これらの積込コンテナ10,10,…は、コンテナヤードXにおいて、図示しないトップリフターなどのフォークリフトにより、縦方向(図1では上下方向)に7個ずつ並べて載置されているとともに、横方向(図1では左右方向)に5個ずつ並べて載置され、さらに2、3段の高さに積み上げられている。この場合、各積込コンテナ10は、コンテナヤードXにおいて6、7段の高さまで積み上げられることもあり、段数については状況に応じて適宜変更可能である。
【0027】
図2図1のコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向と直交する方向から見た側面図、図3図1のコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向から見た断面図をそれぞれ示している。また、図4図1のコンテナ流出防止装置を津波の海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向と直交する方向から見た出入口付近の側面図を示している。
【0028】
図2図4に示すように、コンテナヤードXには、津波などによる海面Lの上昇に伴う積込コンテナ群1の流出を防止するコンテナ流出防止装置2が設けられている。コンテナ流出防止装置2は、積込コンテナ群1の周囲を囲むように長手方向の端部同士を環状に並べて配置された18個の空コンテナ20,20,…を備えている。各積込コンテナ10及び各空コンテナ20としては、40フィートのものがそれぞれ適用され、各積込コンテナ10の端部の縦方向の寸法としての高さAが2591mmに、横方向の寸法としての幅Bが2438mmに、長さCが12192mmにそれぞれ設定されている。
【0029】
各空コンテナ20は、積込コンテナ群1の縦方向外方で互いに対面するように5個ずつ横方向に並べて配置された横列空コンテナ群21,21と、積込コンテナ群1の横方向外方で互いに対面するように4個ずつ縦方向に並べて配置された縦列空コンテナ群22,22とに分けられている。この場合、各空コンテナ20は、3740kgの重量があるものの、海面Lの上昇に伴いコンテナ内の空気により海面Lよりも上に9割程度露出した状態で十分に浮くような浮力を保有している。なお、図3に示す白抜き矢印は、津波等による海面Lの上昇に伴う各空コンテナ20の流出方向である。
【0030】
また、コンテナ流出防止装置2は、各空コンテナ20の互いに相隣なる端部同士を横方向(図2では左右方向)に連結する上下の横連結索23,24を備えている。この上下の横連結索23,24は、ステンレス製などのチェーンよりなる。各横連結索23,24の両端は、各空コンテナの長手方向の端部の四隅に設けられたコンテナハンドリング用の穴(図示せず)のうちの内側の穴にそれぞれ固定されている。また、各横列空コンテナ群21及び各縦列空コンテナ群22の互いに相隣なる空コンテナ20,20同士の間の各横連結索23、24は、長さM(例えば2200mm)に設定されている。
【0031】
コンテナヤードXに配置された各空コンテナ20のうちの少なくとも互いに相隣なる2つの空コンテナ20,20同士の間、つまり各横列空コンテナ群21及び各縦列空コンテナ群22のうちの互いに相隣なる一方のコンテナ群21又は22の列方向両端の空コンテナ20と他方の空コンテナ群22又は21の列方向両端の空コンテナ20との間には、コンテナヤードXに対する各積込コンテナ10の出入りを可能とする4つの出入口25,25,…が設けられている。この場合、各出入口25は、積込コンテナ10を横向きに載せたフォークリフトが通行可能となるような幅N(例えば15000mm程度)に設定されている。
【0032】
各出入口25にそれぞれ対応する、各横列空コンテナ群21及び各縦列空コンテナ群22のうちの互いに相隣なる一方のコンテナ群21又は22の列方向両端の空コンテナ20と他方の空コンテナ群22又は21の列方向両端の空コンテナ20との間も、上下の横連結索23,24により連結されている。この各出入口25にそれぞれ対応する上下の横連結索23,24は、長さR(例えば20000mm程度)に設定されている。この場合、各出入口25にそれぞれ対応する上下の横連結索23,24は、当該各出入口25を横切る方向へ延びる凹状溝(図示せず)内に収容され、各出入口25を通るフォークリフトの邪魔にならないように配慮されている。
【0033】
また、コンテナ流出防止装置2は、各空コンテナ20の下面の6箇所にそれぞれ一端が連結され、かつ当該各空コンテナ20をコンテナヤードXに対し縦方向に連結する縦連結索26,26,…を備えている。各縦連結索26の一端は、各空コンテナ20の下面の幅方向略中央位置において長手方向両端に若干の寸法O(例えば96mm)を存して長手方向略等間隔置き(例えば2400mm置き)の設置間隔Pで連結されている。また、各縦連結索26の一端は、各出入口25にそれぞれ対応する上側の横連結索23にもその長手方向の設置間隔P毎にそれぞれ連結されている。
【0034】
更に、コンテナ流出防止装置2は、各縦連結索26の他端をそれぞれ個別に連結する複数の支持具27,27,…を備えている。各支持具27は、各空コンテナ20の下方に対応するコンテナヤードXの対応位置に設けられたRC基礎にそれぞれ突設された略半円弧状の金具により構成されている。このRC基礎としては、津波等による海面Lの上昇に伴い空コンテナ20自身が浮上する際及び流出する各積込コンテナ10が各空コンテナ20に捕捉される際の引張力(例えば160〜200KN)が各縦連結索26に作用することを考慮して、幅が10000mm以上に、奥行きが7500mm以上に、厚さが500mm以上にそれぞれ設定されたものが必要とされる。
【0035】
そして、各支持具27は、各縦連結索26の一端の設置間隔Pと同じ間隔でRC基礎に設けられている。また、各出入口25にそれぞれ対応する対応部位における各支持具27は、凹状溝の底部において各縦連結索26の一端の設置間隔P毎に突設されている。
【0036】
各縦連結索26は、各空コンテナ20の下面と各支持具27との間で長さQ(例えば7000mm程度)に設定されている。そして、各縦連結索26の一端及び各支持具27の設置間隔Pが、積込コンテナ群1の各積込コンテナ10の端部の高さA(2591mm)及び幅B(2438mm)よりも小さい2400mmの寸法に設定されている。なお、上側の横連結索23に一端が連結された各縦連結索26の長さは、各空コンテナ20の下面に一端が連結された各縦連結索26の長さQよりも各空コンテナ20の高さA分だけ長く設定されている。
【0037】
したがって、本実施の形態では、積込コンテナ群1の周囲を囲むように環状に並べて配置した18個の空コンテナ20の互いに相隣なる長手方向の端部同士が上下の横連結索23,24により横方向に連結されているとともに、各空コンテナ20の下面の長手方向略等間隔P置きの6箇所にそれぞれ一端を連結した各縦連結索26の他端が、各空コンテナ20下面の長手方向略等間隔P置きとほぼ同じ間隔PでコンテナヤードXに設置した各支持具27に連結されている。また、各縦連結索26の一端及び各支持具27の設置間隔Pが、積込コンテナ群1の各積込コンテナ10の端部の高さA(2591mm)及び幅B(2438mm)の寸法よりも小さい2400mmに設定されている。
【0038】
このため、積込コンテナ群1は、その周囲を環状に並べた18個の空コンテナ20が上下の横連結索23,24により連結されて囲まれているとともに、各空コンテナ20の下面の長手方向略等間隔P置きの6箇所にそれぞれ一端を連結しかつ他端をコンテナヤードXの各支持具27に連結した縦連結索26により高さ方向からも抜け出し不能に囲まれている。これにより、ふ頭のコンテナヤードXにおいて船体に積み込み可能に載置された積込コンテナ群1を索状物などによって個々に固定する必要がなく、その周囲の空コンテナ20にのみ連結索23,24,26を連結すればよい。この結果、積込コンテナ群1の津波などによる海面Lの上昇に伴う流出を、その水位や流出方向にかかわらず簡単かつ効果的に防止することができる。
【0039】
また、コンテナヤードXの各横列空コンテナ群21及び各縦列空コンテナ群22のうちの互いに相隣なる一方のコンテナ群21又は22の列方向両端の空コンテナ20と他方の空コンテナ群22又は21の列方向両端の空コンテナ20との間に、コンテナヤードXに対する各積込コンテナ10の出入りを可能とする4つの出入口25,25,…が設けられているので、各積込コンテナ10をフォークリフトなどにより各空コンテナ20,20同士の間の出入口25を通って出入りさせることが可能となり、船体への各積込コンテナ10の積込効率はもちろんのこと、コンテナヤードXへの各積込コンテナ10の移送効率を効果的に向上させることができる。
【0040】
更に、各空コンテナ20のうちの互いに相隣なる空コンテナ20,20の長手方向の端部の上下両端同士の間がそれぞれ上下の横連結索23,24により連結されていることにより、積込コンテナ群1の周囲が環状に並べた18個の空コンテナ20,20,…の上下両端同士の間を連結する上下の横連結索23,24により効率よく囲まれて、互いに相隣なる空コンテナ20,20同士の間を通って各積込コンテナ10が流出することが回避され、積込コンテナ群1の津波などによる海面Lの上昇に伴う流出をより効果的に防止することができる。
【0041】
なお、前記第1の実施の形態では、コンテナヤードXの対応位置のRC基礎にそれぞれ突設した略半円弧状の金具により各支持具27を構成したが、厚さが4mm以上に、杭径300mm以上に、杭長が8500mm以上にそれぞれ設定された鋼管杭基礎であってもよい。また、法面の安定のために一般的に使用されている土中アンカー工法を使用してもよい。
【0042】
また、前記第1の実施の形態では、各空コンテナ20の下方に対応するコンテナヤードXの対応位置のコンクリート床よりそれぞれ突設した半円弧状の金具よりなる各支持具27に縦連結索26の他端を連結したが、図5に示すように、各支持具31(図5では1つのみ示す)が、土壌表面30より土中深くに埋設されて抜け出し不能な重量のあるアンカー状部材により構成されていてもよく、この各支持具31に、土中深くまで延ばしたステンレス製などのチェーンよりなる縦連結索32の他端が連結されている。
【0043】
加えて、図6に示すように、各支持具33(図6では1つのみ示す)が、土壌表面30より土中深くに埋設されて抜け出し不能な平板状で表面積が大きいアンカー状部材により構成されていてもよく、この各支持具33に、土中深くまで延ばした縦連結索32の他端が連結されている。
【0044】
このとき、津波等による海面Lの上昇に伴い空コンテナ20自身が浮上する際及び流出する各積込コンテナ10が各空コンテナ20に捕捉される際の引張力は、各縦連結索32の引っ張りに伴う土壌表面30及び土中での移動とアンカー状部材(支持具31,33)の引き上げとによって緩和されるようにしている。これにより、各縦連結索32に作用する引張力がアンカー状部材を引き上げながら空コンテナ20の流出方向へ土壌表面30及び土中を移動する各縦連結索32によって効果的に抑制されることになり、RC基礎や鋼管杭基礎を各支持具毎に設置しなくても済み、基礎のコンパクト化及びコストダウンを図ることが可能となる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施の形態を図7に基づいて説明する。
【0046】
この実施の形態では、コンテナ流出防止装置2の各空コンテナ20及び積込コンテナ群1の各積込コンテナ10の配置を変更している。なお、各空コンテナ20及び各積込コンテナの配置を除くその他の構成は前記第1の実施の形態を同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。図7は本発明の第2の実施の形態に係るコンテナ流出防止装置を上方から見た平面図を示している。
【0047】
すなわち、本実施の形態では、図7に示すように、積込コンテナ群4の各積込コンテナ10は、コンテナヤードXにおいて、縦方向(図7では上下方向)に7個ずつ並べて載置されているとともに、横方向(図7では左右方向)に3個ずつ並べて載置され、さらに6、7段の高さに積み上げられている。この場合においても、各積込コンテナ10の段数については状況に応じて適宜変更可能である。
【0048】
コンテナ流出防止装置5は、積込コンテナ群1の周囲を囲むように長手方向の端部同士を環状に並べて配置された23個の空コンテナ20,20,…を備えている。各空コンテナ20は、積込コンテナ群4の横方向一側(図7では左側)に底部が位置しかつ縦方向両側(図7では上下両側)から積込コンテナ群4の一側を外方から囲む略コの字状の一側コの字列空コンテナ群51と、積込コンテナ群4の横方向他側(図7では右側)に底部が位置しかつ縦方向両側から積込コンテナ群4の他側を外方から囲む略コの字状の他側コの字列空コンテナ群52とに分けられている。
【0049】
一側コの字列空コンテナ群51は、底部に4個の空コンテナ20,20,…を一列に並べているとともに、その底部の両端の空コンテナ20,20の長手方向両端より3個の空コンテナ20,20,20を縦方向両側にそれぞれ一列に並べて、10個の空コンテナ20,20,…で構成されている。一方、他側コの字列空コンテナ群52は、底部に7個の空コンテナ20,20,…を一列に並べているとともに、その底部の両端の空コンテナ20,20の長手方向両端より3個の空コンテナ20,20,20を縦方向両側にそれぞれ一列に並べて、13個の空コンテナ20,20,…で構成されている。
【0050】
他側コの字列空コンテナ群52は、その端部が一側コの字列空コンテナ群51の端部を外方から一部オーバーラップした状態で覆うように配置されている。一側コの字列空コンテナ群51及び他側コの字列空コンテナ群52の互いに相隣なる端部同士の間は、上下の横連結索23,24によりそれぞれ連結されている。
【0051】
一側コの字列空コンテナ群51の列方向両端の空コンテナ20と他側コの字列空コンテナ群52の列方向両端の空コンテナ20との間には、コンテナヤードXに対する各積込コンテナ10の出入りを可能とする2つの出入口25,25,…が設けられている。この場合、各出入口25は、積込コンテナ10を横向きに載せたフォークリフトが通行可能となるような幅S(例えば17000mm程度)に設定されている。
【0052】
各出入口25にそれぞれ対応する、各横列空コンテナ群21及び各縦列空コンテナ群22のうちの互いに相隣なる一方のコンテナ群21又は22の列方向両端の空コンテナ20と他方の空コンテナ群22又は21の列方向両端の空コンテナ20との間も、上下の横連結索23,24により連結されている。各出入口25にそれぞれ対応する上下の横連結索23,24は、各出入口25を横切る方向へ延びる凹状溝内に収容されるように、例えば22000mm程度の長さに設定されている。
【0053】
したがって、本実施の形態では、積込コンテナ群4の周囲を一側コの字列空コンテナ群51及び他側コの字列空コンテナ群52により覆うように配置した23個の空コンテナ20の互いに相隣なる長手方向の端部同士が上下の横連結索23,24により横方向に連結されているとともに、各空コンテナ20の下面の長手方向略等間隔P置きの6箇所にそれぞれ一端を連結した各縦連結索26(又は32)の他端が、各空コンテナ20下面の長手方向略等間隔P置きとほぼ同じ間隔PでコンテナヤードXに設置した各支持具27(又は31及び33の一方)に連結されている。
【0054】
このため、積込コンテナ群4は、その周囲を覆う23個の空コンテナ20が上下の横連結索23,24により連結されて囲まれているとともに、各空コンテナ20の下面の長手方向略等間隔P置きの6箇所にそれぞれ一端を連結しかつ他端をコンテナヤードXの各支持具27(又は31及び33の一方)に連結した縦連結索26(又は32)により高さ方向からも抜け出し不能に囲まれている。これにより、ふ頭のコンテナヤードXにおいて船体に積み込み可能に載置された積込コンテナ群4を索状物などによって個々に固定する必要がなく、その周囲の空コンテナ20にのみ連結索23,24,26(又は32)を連結すればよい。この結果、積込コンテナ群4の津波などによる海面Lの上昇に伴う流出を、その水位や流出方向にかかわらず簡単かつ効果的に防止することができる。
【0055】
なお、前記各実施の形態では、積込コンテナ群1,4の周囲を覆う空コンテナ20,20,…に出入口25を設けたが、クレーンを用いて積込コンテナをコンテナヤードに積み降ろす場合には出入口を設ける必要がなく、互いに相隣なる空コンテナの端部同士を2200mmの横連結索により連結しておけばよい。
【0056】
また、前記第2の実施の形態では、各出入口25にそれぞれ対応する、各横列空コンテナ群21及び各縦列空コンテナ群22のうちの互いに相隣なる一方のコンテナ群21又は22の列方向両端の空コンテナ20と他方の空コンテナ群22又は21の列方向両端の空コンテナ20との間を、上下の横連結索23,24により連結したが、一方のコンテナ群の端部と他方のコンテナ群の端部とが十分にオーバーラップしていれば、各出入口にそれぞれ対応する、各横列空コンテナ群及び各縦列空コンテナ群のうちの互いに相隣なる一方のコンテナ群の列方向両端の空コンテナと他方の空コンテナ群の列方向両端の空コンテナとの間を、上下の横連結索によって連結する必要がなく、各出入口にそれぞれ対応する縦連結索や凹状溝も不要である。
【0057】
更に、前記各実施の形態では、40フィートの積込コンテナ10及び空コンテナ20を用いたが、断面寸法つまり高さ及び幅が40フィートの積込コンテナ10及び空コンテナ20と等しいものの、長さが半分の20フィートの積込コンテナ及び空コンテナが単独又は混同して用いられていてもよい。
【0058】
次に、本発明の第3の実施の形態を図8及び図9に基づいて説明する。
【0059】
この実施の形態では、コンテナ流出防止装置2の縦連結索及び横連結索の長さを変更している。なお、縦連結索及び横連結索を除くその他の構成は前記第1の実施の形態を同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。図8は本発明の第3の実施の形態に係るコンテナ流出防止装置を海面上昇により各空コンテナが浮上した状態で当該各空コンテナの列方向と直交する方向から見た側面図、図9図8のコンテナ流出防止装置の互いに相隣なる空コンテナが浮上した状態での斜視図をそれぞれ示している。
【0060】
すなわち、本実施の形態では、図8及び図9に示すように、各空コンテナ20は、2本の縦連結索61,61により連結されている。この各縦連結索61は、各空コンテナ20の長手方向両端部の四隅のコンテナハンドリング用の穴(図示せず)のうちの各空コンテナ20の下面における1本の対角線f上の2隅においてのみ対応するコンテナハンドリング用の穴にそれぞれ一端(上端)が固定されている。一方、各縦連結索61の他端(下端)は、各空コンテナ20の下面における1本の対角線f上の2隅の下方に対応するコンテナヤードXの対応位置のRC基礎より突設する各支持具27,27にそれぞれ固定されている。
【0061】
各縦連結索61の一端と他端との間の長さDは、積込コンテナ群1の各積込コンテナ10の端部の高さA及び幅Bの寸法よりも小さくなるように2400mmに設定されている。また、上下の横連結索62,63の長さEも、積込コンテナ群1の各積込コンテナ10の端部の高さA及び幅Bの寸法よりも小さくなるように2400mmに設定されている。
【0062】
上下の横連結索62,63は、各空コンテナ20の四隅のコンテナハンドリング用の穴のうちの内側の上下の穴にそれぞれ固定されている。この上下の横連結索62,63間の長さHは、略2400mmに設定されている。そして、各縦連結索61及び横連結索62,63は、鋼製又はステンレス製などのチェーンよりなる。
【0063】
したがって、本実施の形態では、各縦連結索61の一端と他端との間の長さDが、積込コンテナ群1の各積込コンテナ10の端部の高さA及び幅Bの寸法よりも小さく設定されているので、高潮などによる海面Lの上昇に伴い各空コンテナ20が浮上しても、当該各空コンテナ20の浮遊は各積込コンテナ10の端部の高さA及び幅Bの寸法よりも小さな浮遊量となる。そのため、ふ頭のコンテナヤードXにおいて頻繁に起こり得る高潮などによって海面Lが上昇しても、各積込コンテナ10の流出が各空コンテナ20によって捕捉される。その結果、岸壁のコンテナヤードXに載置された積込コンテナ群1を個々に索状物などにより固定することなく、当該積込コンテナ群1の高潮などによる海面L上昇に伴う流出を、その水位や流出方向にかかわらず簡単かつ効果的に防止することができる。
【0064】
そして、各縦連結索61の一端が、空コンテナ20の下面における対角線f上の2隅においてのみ対応するコンテナハンドリング用の穴にそれぞれ固定されているので、2本の縦連結索61,61による空コンテナ20の連結であっても、当該2本の縦連結索61,61によって空コンテナ20が円滑に保持される。これは、海面L上昇する高潮の流れ方向に対し空コンテナの下面において下流側となる同一の長手方向辺上の2隅においてのみ2本の縦連結索が連結されていると、高潮の流れに押された空コンテナが各縦連結索との連結辺(空コンテナ下面の下流側の長手方向辺)を支点に回転して転倒するおそれがあるからである。これにより、海面Lが上昇する際や海面Lが復帰する際などのあらゆる方向の高潮の流れ方向に対して、空コンテナ20の下面における対角線f上の2隅に連結した2本の縦連結索61,61が互いに引き寄せ合って空コンテナ20の転倒を抑制し、積込コンテナ1群の高潮などによる海面L上昇に伴う流出をより効果的に防止することができる。
【0065】
ここで、風力や流体力が大きければ各縦連結索61が緊張して当該各縦連結索61の2つの固定点(対角線f)を支点にして起こり得る回転について検討する。このとき、風力が50mであれば、空コンテナ20回転後の最大喫水深が1500mmとなる。このことから、この最大喫水深よりも空コンテナ20の浸水深さが浅ければ、風力などによって空コンテナ20がその下面において2隅を繋ぐ1本の対角線f回りに回転し、この回転に抵抗する水面は空コンテナ20下面の半分となる。すると、空コンテナ20の下面における1本の対角線f上の2隅を除く2隅のうちの1隅がコンテナヤードXのRC基礎に接地するものの、その後は空コンテナ20の下面における下流側の長手方向辺が段階的に接地する。
【0066】
なお、空コンテナの下面における4隅にそれぞれ縦連結索が連結されていてもよく、その場合においても、高潮などによる海面の上昇や海面の復帰に伴う積込コンテナ群の流出を4本の縦連結索でもって同様に効果的に防止することができる。この場合は、風力などによって空コンテナがその下面における上流側の長手方向辺回りに回転し、この回転に抵抗する水面は空コンテナ20下面全域となる。このとき、空コンテナの下面全域が回転抵抗となれば、2本の縦連結索で連結している場合に比して回転抵抗となる水面面積が2倍となって回転し難くなり、回転速度も小さくなる。その後、空コンテナ20の下面における下流側の長手方向辺がコンテナヤードXのRC基礎に緩接地することになる。
【0067】
そして、各縦連結索61による空コンテナ20の固定が当該空コンテナ20の下面における対角線f上の2隅においてのみ対応する場合には、コンテナハンドリング用の穴への固定は2隅のみで済み、コンテナ流出防止装置2の簡素化及びコストダウンを図ることができる。
【0068】
更に、上下の横連結索62,63の長さEも、積込コンテナ群1の各積込コンテナ10の端部の高さA及び幅Bの寸法よりも小さく設定されていることにより、互いに相隣なる空コンテナ20,20同士の間を通って各積込コンテナ10が流出することが回避され、積込コンテナ群1の高潮などによる海面Lの上昇に伴う流出をより効果的に防止することができる。
【0069】
なお、前記第3の実施の形態では、上下の横連結索62,63の長さRを積込コンテナ群1の各積込コンテナ10の端部の高さA及び幅Bの寸法よりも小さく設定したが、図10に示すように、上下の横連結索64,65の長さGが各積込コンテナ10の端部の高さA及び幅Bの寸法よりも長くかつ各積込コンテナ10の長さC(12192mm)よりも短い寸法(例えば9600mm)に設定されていてもよい。この場合には、上下の横連結索64,65同士の間を3本の縦区画索66,66,66によって当該上下の横連結索62,63の長さGが空コンテナ20の長手方向に各積込コンテナ10の端部の高さA及び幅Bの寸法よりも小さい長さEの間隔(2400mm間隔)毎に仕切られるように連結すればよい。
【0070】
この変形例によれば、上下の横連結索64,65の長さGが例えば9600mmに設定されているので、コンテナ流出防止装置2に必要な空コンテナ20の個数を節約してコンテナ流出防止装置2の低廉化を図ることが可能となる。なお、上下の横連結索64,65の長さGは一例であり、9600mmに限定されるものではない。
【0071】
また、図11に示すように、上下の横連結索67,68の長さJが各積込コンテナ10の長さC(12192mm)よりも長い寸法(例えば24000mm)に設定されていてもよい。この場合には、上下の横連結索67,68同士の間を9本の縦区画索66によって当該上下の横連結索62,63の長さGが空コンテナ20の長手方向に各積込コンテナ10の端部の高さA及び幅Bの寸法よりも小さい長さEの間隔(2400mm間隔)毎に仕切られるように連結すればよい。但し、縦連結索61の強度を確保する上で、横連結索67,68の長さが12000mmを超える場合には横連結索67,68の長さのうちの少なくとも12000mmを超える箇所毎にコンテナヤードXのRC基礎の支持具27に他端が固定された縦連結索61による連結が必要となる。
【0072】
この変形例によれば、上下の横連結索67,68の長さGが例えば24000mmに設定されているので、コンテナ流出防止装置2に必要な空コンテナ20の個数をさらに節約してコンテナ流出防止装置2の低廉化をより一層図ることが可能となる。なお、上下の横連結索67,68の長さJは一例であり、24000mmに限定されるものではない。
【0073】
なお、前記各実施の形態では、各空コンテナ20としては、3740kgの重量があるものの十分に浮くような浮力を保有するものを適用したが、その収容機能を活用して、ふ頭において使用する各種の道具、例えばパレット、ロープ、小型荷役機械、オイルフェンス、漁網等の漁具といった道具を流されずに収容する倉庫として利用してもよい。このとき、具体的に収容可能な各種道具の収容最大重量Wは、下記の式で算出される。
40フィートの空コンテナの場合、
式) 収容最大重量W=空コンテナ全体積×海水単位体積重量−空コンテナ重量
ここで、空コンテナ全体積は、
高さA(2591mm)×幅B(2438mm)×長さC(12192mm)=77.02m3となり、
海水単位体積重量が1023kg/m3、空コンテナ重量が3740kgであることから、
収容最大重量Wは、
W=77.02m3×1023kg/m3−3740kg=75,046kg
よって、約75トンの各種道具が収容可能である。
この場合、空コンテナの収容最大重量Wは、積込コンテナの流出を捕捉する上で、空コンテナの浮遊時の海面からの高さを確保できるように制限する必要がある。
【0074】
このとき、各縦連結索61は、空コンテナ20が倉庫としての目的のみに利用されるのであれば、空コンテナ20が浮上した際の伸び切った瞬間に作用する外力による設計で済むため、積込コンテナ10が空コンテナ20に衝突する瞬間に作用する外力による設計つまり積込コンテナ10の流出対策の場合に比して、その索径やコンテナヤードXのRC基礎の小型化を図ることが可能となる。また、空コンテナを倉庫としての目的のみに利用する場合には、各縦連結索の長さを任意に設定することが可能となってより衝撃吸収力を高めることができるとともに、各縦連結索及び各横連結索の材質についても衝撃力を吸収できる繊維系のものが使用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 積込コンテナ群
10 積込コンテナ
2 コンテナ流出防止装置
20 空コンテナ
23 上側の横連結索
24 下側の横連結索
25 出入口
26 縦連結索
27 支持具
30 土壌表面
31 支持具(アンカー状部材)
32 縦連結索
33 支持具(アンカー状部材)
61 縦連結索
62 上側の横連結索
63 下側の横連結索
64 上側の横連結索
65 下側の横連結索
67 上側の横連結索
68 下側の横連結索
A 積込コンテナの端部の高さ(縦方向の寸法)
B 積込コンテナの端部の幅(横方向の寸法)
L 海面
P 設置間隔(縦連結索の一端の設置間隔及び支持具の設置間隔)
X コンテナヤード
【要約】
【課題】積込コンテナ群を個々に索状物などにより固定することなく、津波などによる海面上昇に伴う流出を、その水位や流出方向にかかわらず簡単かつ効果的に防止することができるコンテナ流出防止装置を提供する。
【解決手段】積込コンテナ群1の周囲を囲むように長手方向の端部同士を環状に並べて配置した海面上昇に伴い浮上する複数の空コンテナ20のうちの互いに相隣なる空コンテナ20の長手方向の端部同士を横連結索23,24により横方向に連結するとともに、各空コンテナ20の下面の長手方向略等間隔置きの設置間隔で複数箇所にそれぞれ一端を連結した縦連結索の他端を、当該縦連結索の一端の設置間隔とほぼ同じ間隔で設置した複数の支持具に連結する。更に、各縦連結索の一端及び各支持具の設置間隔を、積込コンテナ群1の各積込コンテナ10の端部の高さ及び幅の寸法よりも小さくなるように設定している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11