(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。例えば、本実施の形態に係る無線通信システムはLTEに準拠した方式のシステムを想定しており、下りにOFDMA、上りにSC−FDMAを使用することを想定しているが、本発明はこれに限られるわけではなく、例えば、上り下りともにOFDMAであってもよいし、他の通信方式であってもよい。また、本発明はLTE以外の方式にも適用できる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「LTE」は、3GPPのリリース8、又は9に対応する通信方式のみならず、3GPPのリリース10、11、12、13、又はリリース14以降に対応する通信方式も含む広い意味で使用する。
【0017】
<概要>
(無線通信システム全体構成)
図1は、実施の形態に係る無線通信システムの全体構成図を示す図である。本実施の形態に係る無線通信システムは、マクロセルを形成するマクロ基地局10、マクロセルのカバレッジエリア内にあるスモール基地局11、12を含む。また、
図1には、マクロ基地局10、スモール基地局11、12等と通信を行うユーザ装置20が示されている。
【0018】
当該無線通信システムでは、低周波数帯でマクロ基地局10によりマクロカバレッジを確保し、高周波数帯でスモール基地局11、12によりスモールエリア(例:ホットスポット)のトラフィックを吸収する構成としているが、このような周波数帯の割り当ては一例に過ぎず、これに限られるわけではない。
【0019】
マクロ基地局10及びスモール基地局11、12は、無線を通じてユーザ装置20との間で通信を行う。マクロ基地局10及びスモール基地局11、12は、プロセッサなどのCPU、ROM、RAM又はフラッシュメモリなどのメモリ装置、ユーザ装置20等と通信するためのアンテナ、隣接する基地局及びコアネットワーク等と通信するための通信インターフェース装置などのハードウェアリソースにより構成される。マクロ基地局10及びスモール基地局11、12の各機能及び処理は、メモリ装置に格納されているデータやプログラムをプロセッサが処理又は実行することによって実現されてもよい。しかしながら、マクロ基地局10及びスモール基地局11、12は、上述したハードウェア構成に限定されず、他の何れか適切なハードウェア構成を有してもよい。
【0020】
ユーザ装置20は、無線を通じてマクロ基地局10、スモール基地局11、12及びコアネットワーク等と通信を行う機能を有する。ユーザ装置20は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、モバイルルータ、ウェアラブル端末などである。また、電車といった公共的な乗り物に搭載される通信装置、基地局間通信のバックホールでの中継装置の役割を持つユーザ装置20であってもよい。ユーザ装置20は、通信機能を有する機器であれば、どのようなユーザ装置20であってもよい。ユーザ装置20は、プロセッサなどのCPU、ROM、RAM又はフラッシュメモリなどのメモリ装置、マクロ基地局10及びスモール基地局11、12と通信するためのアンテナ、RF(Radio Frequency)装置などのハードウェアリソースにより構成される。ユーザ装置20の各機能及び処理は、メモリ装置に格納されているデータやプログラムをプロセッサが処理又は実行することによって実現されてもよい。しかしながら、ユーザ装置20は、上述したハードウェア構成に限定されず、他の何れか適切なハードウェア構成を有してもよい。
【0021】
本実施の形態におけるスモール基地局11、12は、massive MIMOの機能を備えており、広いビームから狭いビームまで種々の複数のビームを形成することができる。本実施の形態では、スモール基地局11、12から、複数のプリコードされた信号がそれぞれのビーム(複数のアンテナポート)で送信されている。信号がプリコードされているとは、送信の例でいえば、信号がある幅のビームで送信されるように、アンテナポート毎に送信信号にウェイトが乗算されていることである。例えば、
図1の例では、スモール基地局11から、ビーム#1−1、ビーム#1−2、ビーム#1−3のそれぞれで信号が送信されている。また、スモール基地局12から、ビーム#2−1、ビーム#2−2、ビーム#2−3のそれぞれで信号が送信されている。
【0022】
本実施の形態におけるマクロ基地局10は、スモール基地局11、12と、例えば光ファイバを用いた回線で接続され、スモール基地局11、12が形成するそれぞれのスモールセル間の無線リソース制御を集中管理している。なお、
図1にはマクロ基地局10が存在する構成が示されているが、マクロ基地局10が存在しない構成をとることもできる。この場合、スモール基地局11、12のいずれか一方が、スモール基地局11、12が形成するそれぞれのスモールセル間の無線リソース制御を集中管理することになる。
【0023】
本実施の形態に係るユーザ装置20は、複数のアンテナを備え、上りリンクのMIMO送信を行う機能を備えている。すなわち、ユーザ装置20は、上りのビームフォーミングや、上りの複数ランク送信を行うことが可能である。本実施の形態では、ユーザ装置20から、複数のプリコードされた信号がそれぞれのビーム(複数のアンテナポート)で送信されている。例えば、
図1の例では、ユーザ装置20から、ビーム#1、ビーム#2、ビーム#3、ビーム#4のそれぞれで信号が送信されている。なお、一般にユーザ装置20については、将来においても用途によって1つのアンテナを備えるユーザ装置も多く使用されることが考えられる。例えばlow−cost MTC端末等である。それとともに、4アンテナ程度のMIMO送信機能を備えたユーザ装置が主流になっていくことが考えられる。更に、用途によっては、16アンテナ、あるいはそれ以上のアンテナによるMassive MIMOの機能を備えたユーザ装置も使用されることが考えられる。
【0024】
(通信方法の概要)
本実施の形態に係る無線通信システムにおいて、ユーザ装置20は、スモール基地局11、12から送信される複数のビーム(#1−1、#1−2、#1−3、#2−1、#2−2、#2−3)のうち、通信品質が良好な2つのビームを用いて通信を行う。更に、当該2つのビームの各々は、異なるスモール基地局から送信されるビームであることを想定している。また、スモール基地局11、12の各々は、ユーザ装置20から送信される複数のビーム(#1、#2、#3、#4)のうち、いずれか1つのビームを用いて通信を行うことを想定している。具体例を用いて説明すると、例えば、ユーザ装置20は、ビーム#1−2で送信されるスモール基地局11からの信号を受信すると共にビーム#1を用いてスモール基地局11に信号を送信し、更に、ビーム#2−2で送信されるスモール基地局12からの信号を受信すると共にビーム#2を用いてスモール基地局12に信号を送信するようにしてもよい。
【0025】
このような動作を実現するために、例えば、スモール基地局11、12は、複数のプリコードされた参照信号(以下、「発見信号」という)をそれぞれのビームで送信するようにする。発見信号には、スモール基地局11、12から送信される各ビームを一意に識別する識別子(以下、「下りビーム識別子」という)が含まれている。当該識別子は、発見信号の系列等により特定されるようにしてもよいし、無線リソース(周波数位置又は時間位置、若しくは周波数位置及び時間位置)の割当て方法により特定されるようにしてもよい。続いて、ユーザ装置20は、受信する可能性のある発見信号を監視し、発見された複数の発見信号の受信品質(受信電力等)を測定する。このとき、ユーザ装置20は、受信電力を測定した発見信号がどのビーム(#1〜#4)で受信されたものなのかを把握しておく。なお、ユーザ装置20は、アンテナポート毎に受信信号にウェイトを乗算することで、どのビームで発見信号を受信したのかを把握することができる。
【0026】
続いて、ユーザ装置20は、上りリンクでビームフォーミングを行い、各ビームを用いて、スモール基地局11、12に上り参照信号の送信を行う。なお、上りリンクでビームフォーミングを行うとは、ユーザ装置20が備える複数のアンテナポート毎に送信信号にウェイトを乗算することをいう。当該上り参照信号には、各ビーム(#1〜#4)を一意に識別する識別子(以下、「上りビーム識別子」という)が割り当てられている。当該識別子は、参照信号の系列等により特定されるようにしてもよいし、無線リソース(周波数位置又は時間位置、若しくは周波数位置及び時間位置)の割当て方法により特定されるようにしてもよい。上り参照信号は、例えばサウンディング参照信号であってもよい。
【0027】
なお、ユーザ装置20から送信される上り参照信号には、例えば、ユーザ装置20により受信された複数の発見信号ごとに、測定された受信品質(受信電力等)と、当該発見信号の下りビーム識別子と、当該発見信号が受信されたビーム(ユーザ装置が形成するビーム)に対応する上りビーム識別子とが対応づけられた情報が含まれているようにしてもよい。
【0028】
続いて、スモール基地局11、12で受信された上り参照信号に基づいて、ユーザ装置20に下りリンク信号を送信するための下りビームの選択と、ユーザ装置20からの上りリンク信号の送信に用いられる上りビームの選択とが行われる。ここで、当該下りビーム及び上りビームの選択は、スモール基地局11、12が形成するそれぞれのスモールセル間の無線リソース制御を集中管理している基地局が行うようにしてもよい。例えば、スモール基地局11、12からマクロ基地局10に、受信した上り参照信号(又は上り参照信号の受信品質等)を送信させるようにして、マクロ基地局10が下りビーム及び上りビームの選択を行ってもよい。また、スモール基地局12で受信された上り参照信号(又は上り参照信号の受信品質等)をスモール基地局11に送信させるようにして、スモール基地局11が下りビーム及び上りビームの選択を行ってもよい。
【0029】
以下、スモール基地局11が、本実施の形態に係る無線通信システムの無線リソース制御の集中管理を行い、下りビーム及び上りビームの選択を行う前提で説明を続ける。
【0030】
スモール基地局11は、ユーザ装置20から報告される各発見信号の受信品質、及びスモール基地局11、12で受信される上り参照信号の受信品質に基づいて、下りビーム及び上りビームの選択を行う。
【0031】
選択方法には様々な方法が考えられる。例えば、下りビームの選択方法として、スモール基地局11は、スモール基地局11が送信している複数の下りビームのうち、ユーザ装置20から報告された受信品質が最も良好(受信電力が最も大きい等)な下りビームを一つ選択し、更に、スモール基地局12が送信している下りビームのうち、ユーザ装置20から報告された受信品質が最も良好(受信電力が最も大きい等)な下りビームを一つ選択するようにしてもよい。このように下りビームが選択されることで、ユーザ装置20との間の通信に用いられる複数の下りビームを空間的に分離させることができる。
【0032】
また、上りビームの選択方法として、スモール基地局11は、スモール基地局11で受信された上り参照信号のうち、受信品質が最も良好(受信電力が最も大きい等)な上りビームを一つ選択し、更に、スモール基地局12で受信された上り参照信号のうち、受信品質が最も良好(受信電力が最も大きい等)な上りビームを一つ選択するようにしてもよい。このように上りビームが選択されることで、ユーザ装置20との間の通信に用いられる複数の上りビームを、別々のスモール基地局に到達させることが可能になると共に、複数の上りビームを空間的に分離させることができる。
【0033】
上述の下りビームの選択方法及び上りビームの選択方法はあくまで一例であり、他の選択方法を用いるようにしてもよい。例えば、本実施の形態の無線通信システムがTDDであることを想定し、スモール基地局11は、下りビームの選択時に、当該下りビームがユーザ装置20で受信された際の受信方向(上りビームの方向)を、上りリンクの通信に用いられる上りビームとするようにしてもよい。これは、TDDでは上り下りの周波数が同一であることから、TDDの上下対称性(下りリンクの伝搬特性と上りリンクの伝搬特性は同一である)を利用して上りビームの選択を行うものである。
【0034】
以上、本実施の形態の概要を説明したが、複数のスモール基地局(11、12)とユーザ装置20との間で、複数の異なるビームを用いて上りリンク及び下りリンクの通信が行われる場合、本実施の形態における無線通信システムは、効率的に通信を行うためにさまざまな制御方式をとり得る。
【0035】
例えば、本実施の形態における無線通信システムは、ユーザ装置20から複数のスモール基地局の各々に向けて送信される上りビームごとに、異なる送信タイミング制御を行うようにする。これにより、本実施の形態における無線通信システムは、上りリンクの通信において、通信容量の増大又はダイバーシチ効果によるスループット向上等を実現することが可能になる。
【0036】
また、例えば、本実施の形態における無線通信システムは、複数の上りビームに含まれる共用チャネル(PUSCH等)の無線リソース割当を、特定の下りビームを用いてまとめて行うようにする。これにより、本実施の形態における無線通信システムは、効率的に制御信号を送信することが可能になる。
【0037】
また、例えば、本実施の形態における無線通信システムは、別々のスモール基地局から送信される複数の下りビームの各々で下りリンク信号(PDSCH等)の送信が行われる場合、ユーザ装置20が、各ビームの受信タイミングを独立して制御することを可能にする。これにより、本実施の形態における無線通信システムは、下りリンクの通信において、通信容量の増大及びダイバーシチ効果によるスループット向上等を実現することが可能になる。
【0038】
また、例えば、本実施の形態における無線通信システムは、複数の下りビームに含まれる下りリンク信号(PDSCH、CSI−RS、同期チャネル等)の無線リソース割当を、特定の下りビームを用いてまとめて行うようにする。これにより、本実施の形態における無線通信システムは、効率的に制御信号を送信することが可能になる。
【0039】
<機能構成>
(スモール基地局)
図2は、実施の形態に係るスモール基地局の機能構成の一例を示す図である。
図2に示すように、スモール基地局11、12は、信号受信部101と、信号送信部102と、基地局間通信部103と、上り送信タイミング指示部104と、上りリソース割当部105と、下りリソース割当部106とを有する。
図2は、スモール基地局11、12において本発明の実施の形態に特に関連する機能部のみを示すものであり、少なくともLTEに準拠した動作を行うための図示しない機能も有するものである。また、
図2に示す機能構成は一例に過ぎない。本実施の形態に係る動作を実行できるのであれば、機能区分や機能部の名称はどのようなものでもよい。また、実施の形態に係るスモール基地局11、12は、本実施の形態に係る動作を実行できるのであれば、
図2に示す機能部の一部を有しないようにしてもよい。
【0040】
信号受信部101は、無線で受信する下位レイヤの信号から上位レイヤの情報を取得する。
【0041】
信号送信部102は、上位レイヤの情報から下位レイヤの信号を生成し、無線で送信する。また、信号送信部102は、各アンテナポートに所定のウェイトを乗算することで実現されるビームフォーミングにより、ビームが形成されるように無線信号を送信する。
【0042】
基地局間通信部103は、例えば光ファイバ等のバックホール回線と接続され、マクロ基地局10又は他のスモール基地局(11又は12)と通信を行う機能を有する。基地局間通信部103は、無線リソース制御を集中管理する基地局と他の基地局との間で、必要に応じて各種信号を送受信する場合に用いられる。
【0043】
上り送信タイミング指示部104は、ユーザ装置20に対して、上りビームごとの送信タイミングを指示する。上り送信タイミング指示部104は、例えば、上り制御信号又は上りデータ信号が格納されるサブフレームごと(すなわち、1TTIごと)に、上りビームの送信タイミングをユーザ装置20に指示するようにしてもよい。また、上り送信タイミング指示部104は、必要に応じて、サブフレーム(1TTI)より長い間隔で、各上りビームの各々の送信タイミングをユーザ装置20に指示するようにしてもよい。また、上り送信タイミング指示部104は、複数の上りビームの送信タイミングを纏めてユーザ装置20に指示するようにしてもよい。また、上り送信タイミング指示部104は、基地局間通信部103を介して他の基地局から受け付けた指示に基づいて、上りビームの送信タイミングをユーザ装置20に指示するようにしてもよい。
【0044】
上りリソース割当部105は、上りリンク通信の無線リソースをユーザ装置20に割り当てる。例えば、上りリソース割当部105は、ユーザ装置20がスモール基地局11との間の通信に用いる上りビーム、及び、ユーザ装置20がスモール基地局12との間の通信に用いる上りビームの各々に対して、上りリンク通信の無線リソースを割当てるようにしてもよい。また、上りリソース割当部105は、基地局間通信部103を介して他の基地局から受け付けた指示に基づいて、上りリンク通信の無線リソースを特定の上りビームに割り当てるようにしてもよいし、逆に、他のスモール基地局に対して、当該他のスモール基地局で受信される上りビームに割り当てる無線リソースを通知するようにしてもよい。割当てられた上りリンク通信の無線リソースは、信号送信部102を介してユーザ装置20に伝えられる。
【0045】
下りリソース割当部106は、下りリンク通信の無線リソースをユーザ装置20に割り当てる。例えば、下りリソース割当部106は、スモール基地局11がユーザ装置20との間の通信に用いる下りビーム、及び、スモール基地局12がユーザ装置20との間の通信に用いる下りビームの各々に対して異なる下りリンク通信の無線リソースを割当てるようにしてもよいし、同一の無線リソースを割当てるようにしてもよい。また、下りリソース割当部106は、基地局間通信部103を介して他の基地局から受け付けた指示に基づいて、下りリンク通信の無線リソースを特定の下りビームに割り当てるようにしてもよいし、逆に、他のスモール基地局に対して、当該他のスモール基地局から送信される下りビームに割り当てる無線リソースを通知するようにしてもよい。割当てられた下りリンク通信の無線リソースは、信号送信部102を介してユーザ装置20に伝えられる。
【0046】
(ユーザ装置)
図3は、実施の形態に係るユーザ装置の機能構成の一例を示す図である。
図3に示すように、ユーザ装置20は、信号受信部201と、信号送信部202と、送信タイミング指示部203とを有する。また、信号受信部201は、受信タイミング同期部211を含む。また、信号送信部202は、送信タイミング制御部212を含む。
図3は、ユーザ装置20において本発明の実施の形態に特に関連する機能部のみを示すものであり、少なくともLTEに準拠した動作を行うための図示しない機能も有するものである。また、
図2に示す機能構成は一例に過ぎない。本実施の形態に係る動作を実行できるのであれば、機能区分や機能部の名称はどのようなものでもよい。また、実施の形態に係るユーザ装置20は、本実施の形態に係る動作を実行できるのであれば、
図3に示す機能部の一部を有しないようにしてもよい。
【0047】
信号受信部201は、無線で受信する下位レイヤの信号から上位レイヤの情報を取得する。
【0048】
信号送信部202は、上位レイヤの情報から下位レイヤの信号を生成し、無線で送信する。また、信号送信部202は、各アンテナポートに所定のウェイトを乗算することで実現されるビームフォーミングにより、ビームが形成されるように無線信号を送信する。
【0049】
受信タイミング同期部211は、スモール基地局11、12から送信される別々の下りビームに対して、異なる受信タイミングで同期させるように信号受信部201を制御する。送信タイミング制御部212は、スモール基地局11、12から送信される制御信号による指示に基づいて、上りビームごとに送信タイミングが変更されるように、信号送信部202を制御する。なお、上りビームごとに送信タイミングが変更されるとは、上りリンク信号のサブフレームの開始タイミングが、上りビームごとに変更されることをいう。
【0050】
送信タイミング指示部203は、複数のスモール基地局から送信される下り信号を測定することで、複数のスモール基地局から送信される下り信号の各々の受信タイミングのずれ(サブフレームの開始タイミングのずれ)を検出し、複数のスモール基地局からの下り信号の各々の受信タイミングのずれが無くなるように、いずれかのスモール基地局に下り信号の送信タイミングを変更するように指示する。
【0051】
以上説明したスモール基地局11、12及びユーザ装置20の機能構成は、全体をハードウェア回路(例えば、1つ又は複数のICチップ)で実現してもよいし、一部をハードウェア回路で構成し、その他の部分をCPUとプログラムとで実現してもよい。
【0052】
(スモール基地局)
図4は、実施の形態に係るスモール基地局のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4は、
図2よりも実装例に近い構成を示している。
図4に示すように、スモール基地局11、12は、無線信号に関する処理を行うRF(Radio Frequency)モジュール301と、ベースバンド信号処理を行うBB(Base Band)処理モジュール302と、上位レイヤ等の処理を行う装置制御モジュール303と、ネットワークと接続するためのインターフェースである通信IF304とを有する。
【0053】
RFモジュール301は、BB処理モジュール302から受信したデジタルベースバンド信号に対して、D/A(Digital-to-Analog)変換、変調、周波数変換、及び電力増幅等を行うことでアンテナから送信すべき無線信号を生成する。また、受信した無線信号に対して、周波数変換、A/D(Analog to Digital)変換、復調等を行うことでデジタルベースバンド信号を生成し、BB処理モジュール302に渡す。RFモジュール301は、例えば、
図2に示す信号受信部101の一部、信号送信部102の一部を含む。
【0054】
BB処理モジュール302は、IPパケットとデジタルベースバンド信号とを相互に変換する処理を行う。DSP(Digital Signal Processor)312は、BB処理モジュール302における信号処理を行うプロセッサである。メモリ322は、DSP312のワークエリアとして使用される。BB処理モジュール302は、例えば、
図2に示す信号受信部101の一部、信号送信部102の一部、上り送信タイミング指示部104、上りリソース割当部105、下りリソース割当部106を含む。
【0055】
装置制御モジュール303は、IPレイヤのプロトコル処理、OAM(Operation and Maintenance)処理等を行う。プロセッサ313は、装置制御モジュール303が行う処理を行うプロセッサである。メモリ323は、プロセッサ313のワークエリアとして使用される。補助記憶装置333は、例えばHDD等であり、スモール基地局11、12自身が動作するための各種設定情報等が格納される。装置制御モジュール303は、例えば、
図2に示す基地局間通信部103の一部を含む。通信IF304は、例えば、
図2に示す基地局間通信部103の一部を含む。
【0056】
(ユーザ装置)
図5は、実施の形態に係るユーザ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図5は、
図3よりも実装例に近い構成を示している。
図5に示すように、ユーザ装置UEは、無線信号に関する処理を行うRFモジュール401と、ベースバンド信号処理を行うBB処理モジュール402と、上位レイヤ等の処理を行うUE制御モジュール403とを有する。
【0057】
RFモジュール401は、BB処理モジュール402から受信したデジタルベースバンド信号に対して、D/A変換、変調、周波数変換、及び電力増幅等を行うことでアンテナから送信すべき無線信号を生成する。また、受信した無線信号に対して、周波数変換、A/D変換、復調等を行うことでデジタルベースバンド信号を生成し、BB処理モジュール402に渡す。RFモジュール401は、例えば、
図3に示す信号受信部201の一部、信号送信部202の一部を含む。
【0058】
BB処理モジュール402は、IPパケットとデジタルベースバンド信号とを相互に変換する処理を行う。DSP412は、BB処理モジュール402における信号処理を行うプロセッサである。メモリ422は、DSP412のワークエリアとして使用される。BB処理モジュール402は、例えば、
図3に示す信号受信部201の一部、信号送信部202の一部、送信タイミング指示部203を含む。
【0059】
UE制御モジュール403は、IPレイヤのプロトコル処理、各種アプリケーションの処理等を行う。プロセッサ413は、UE制御モジュール403が行う処理を行うプロセッサである。メモリ423は、プロセッサ413のワークエリアとして使用される。
【0060】
<処理手順>
(上りリンク信号送信手順)
続いて、実施の形態に係る無線通信システムにおいて、ユーザ装置20からスモール基地局11、12に送信される上りリンクの信号を制御する場合の処理手順を説明する。上りリンクの信号を制御する処理手順には、複数の処理手順が考えられる。
図6〜
図8を用いて、上りリンク信号の送信手順(その1)について説明し、
図9〜
図11を用いて、上りリンク信号の送信手順(その2)について説明し、
図12〜
図14を用いて、上りリンク信号の送信手順(その3)について説明する。
【0061】
[送信手順(その1)]
図6は、上りリンク信号の送信手順(その1)の概要を示す図である。
図6に示すように、スモール基地局11は、下りビーム#1−2を用いて、ユーザ装置20に下りリンクの信号を送信している。また、スモール基地局12は、下りビーム#2−2を用いて、ユーザ装置20に下りリンクの信号を送信している。更に、ユーザ装置20は、上りビーム#1を用いて、スモール基地局11に上りリンクの信号を送信しており、上りビーム#2を用いて、スモール基地局12に上りリンクの信号を送信している。
【0062】
上りリンク信号の送信手順(その1)において、ユーザ装置20は、スモール基地局11からの指示に従い、上りビーム#1でスモール基地局11に送信する上りリンクの信号の送信タイミングと、上りビーム#2でスモール基地局12に送信する上りリンクの信号の送信タイミングとを別々に制御するようにする。
【0063】
例えば、ユーザ装置20とスモール基地局11との距離と、ユーザ装置20とスモール基地局12との距離が異なる場合、ユーザ装置20から送信される上りリンクの信号がスモール基地局11に到達するタイミングと、ユーザ装置20から送信される上りリンクの信号がスモール基地局12に到達するタイミングとが異なることになる。従って、本処理手順を適用することで、スモール基地局11で受信される上りリンク信号と、スモール基地局12で受信される上りリンク信号とが同期されることになる。
【0064】
また、ユーザ装置20は、スモール基地局11から、上りビーム#1でスモール基地局11に送信する上りリンクの信号と、上りビーム#2でスモール基地局12に送信する上りリンクの信号との両方の無線リソースの割当てに関する指示を受け付ける。
【0065】
図7は、上りリンク信号の送信手順(その1)におけるシーケンス図の一例である。
図7を用いて、上りリンク信号の送信手順(その1)における具体的な処理手順を説明する。なお、
図7の例では、スモール基地局11が、スモール基地局11及び12により形成されるスモールセルの無線リソース制御を集中管理していると仮定する。
【0066】
ステップS301で、スモール基地局11、12とユーザ装置20との間で、下りリンク信号の送信に用いられる下りビームと、上りリンク信号の送信に用いられる上りビームとが決定される。前述のように、スモール基地局11は、ユーザ装置20から報告される各下りビームごとの発見信号の受信品質、及びスモール基地局11、12で受信される上り参照信号(例えば、サウンディング参照信号)の受信品質に基づいて、下りビーム及び上りビームの選択を行うようにしてもよい。
【0067】
なお、ステップS301の処理手順により、スモール基地局11は、下りビーム#1−2を用いてユーザ装置20に下りリンクの信号を送信し、スモール基地局12は、下りビーム#2−2を用いてユーザ装置20に下りリンクの信号を送信するように決定されたと仮定する。同様に、ユーザ装置20は、上りビーム#1を用いてスモール基地局11に上りリンクの信号を送信し、上りビーム#2を用いてスモール基地局12に上りリンクの信号を送信することが決定されたと仮定する。
【0068】
なお、ステップS301の処理手順は適宜行われるようにしてもよい。すなわち、スモール基地局11、12及びユーザ装置20がどのビームを用いて信号を送信するのかについて、通信品質の変化やユーザ装置20の移動等に応じた最適なビームに適宜切り替えられるようにしてもよい。
【0069】
ステップS302で、スモール基地局11の信号送信部102は、ユーザ装置20に制御信号を送信する。当該制御信号は、例えば、物理レイヤの制御チャネル(PDCCH等)により送信されるUL grantであってもよい。
【0070】
図8は、上りリンク信号の送信手順(その1)で用いられる制御信号のフォーマットの一例である。
図8に示すように、上りリンク信号の送信手順(その1)で用いられる制御信号には、「上りビーム識別子」と「送信タイミング情報」と「リソース割当情報」とから構成される一括りの情報が繰り返し格納されている。「送信タイミング情報」は、「上りビーム識別子」で識別される上りビームにより送信される上りリンク信号の送信タイミングを指示する情報であり、例えば、現状の送信タイミングと比較して、どの程度送信タイミングを早める(又は遅くする)のかを示すコマンド等であってもよい。「リソース割当情報」は、ユーザ装置20が送信する上りリンク信号に対する無線リソースの割当情報であり、例えば、従来のLTEと同様の構成であってもよい。なお、当該制御信号は、例えば、物理レイヤの制御チャネル(PDCCH)に含まれるDCI(Downlink Control Information)にマッピングされるようにしてもよい。
【0071】
なお、
図8に示すフォーマットにおいて、「リソース割当情報」を上りビームごとに対応づけるのではなく、まとめて一つの「リソース割当情報」が含まれるようにしてもよい。例えば、ユーザ装置20は、スモール基地局11、12に対して複数の上りビームで同一の内容の上りリンク信号を送信する場合もあり得るためである。
【0072】
本送信手順(その1)では、
図6に示すように、ユーザ装置20は、上りビーム#1を用いてスモール基地局11に上りリンクの信号を送信し、上りビーム#2を用いてスモール基地局12に上りリンクの信号を送信する。従って、
図8に示す制御信号には、上りビーム#1に関する「上りビーム識別子」、「送信タイミング情報」及び「リソース割当情報」と、上りビーム#2に関する「上りビーム識別子」、「送信タイミング情報」及び「リソース割当情報」とが含まれることになる。
【0073】
なお、リソース割当情報は、例えば、スモール基地局11の上りリソース割当部105により生成され、送信タイミング情報は、スモール基地局11の上り送信タイミング指示部104により生成されるようにしてもよい。
図7に戻り説明を続ける。
【0074】
ステップS303で、ユーザ装置20の信号送信部102及び送信タイミング制御部212は、制御信号で指示された送信タイミング及び割当てられた無線リソースで、上りビーム#1を用いて、スモール基地局11に上りリンク信号を送信する。上りリンク信号に特に制約はないが、例えば、PUSCH信号であってもよい。
【0075】
ステップS304で、ユーザ装置20の信号送信部102及び送信タイミング制御部212は、制御信号で指示された送信タイミング及び割当てられた無線リソースで、上りビーム#2を用いて、スモール基地局12に上りリンク信号を送信する。上りリンク信号に特に制約はないが、例えば、PUSCH信号であってもよい。
【0076】
なお、スモール基地局11、12及びユーザ装置20は、ステップS302〜ステップS304の処理手順を、サブフレームごとに行うようにしてもよい。
【0077】
なお、ユーザ装置20は、上りビーム#1がスモール基地局11に到達し、上りビーム#2がスモール基地局12に到達することを意識しなくてもよい。すなわち、ユーザ装置20は、単純にスモール基地局11の指示に従って複数の上りビームで上りリンク信号を送信するようにすればよく、各上りビームがどのスモール基地局に到達するのかを意識していなくてもよい。
【0078】
以上、上りリンク信号送信手順(その1)を説明したが、本送信手順がPUSCHの送信に適用される場合、例えば、他のユーザ装置20との間における直交性の確保、ユーザ装置20からの複数の上りビームによるMIMO空間多重によるユーザデータの通信容量の増大等を図ることができる。また、従来のLTEにおけるタイミングアドバンス制御(TA制御)では、MAC(Medium Access Control)レイヤでタイミング制御コマンドを送信するようにしていたが、本手順によれば、ステップS302の処理手順で物理レイヤの制御チャネルを用いて制御信号を送信することが可能になるため、サブフレームごとにきめ細かな送信タイミング制御を行うことが可能になる。
【0079】
[送信手順(その2)]
次に、上りリンク信号の送信手順(その2)について説明する。なお、特に言及しない点については上りリンク信号の送信手順(その1)と同一でよい。
【0080】
図9は、上りリンク信号の送信手順(その2)の概要を示す図である。
図9に示すように、スモール基地局11は、下りビーム#1−2を用いて、ユーザ装置20に下りリンクの信号を送信している。また、スモール基地局12は、下りビーム#2−2を用いて、ユーザ装置20に下りリンクの信号を送信している。更に、ユーザ装置20は、上りビーム#1を用いて、スモール基地局11に上りリンクの信号を送信しており、上りビーム#2を用いて、スモール基地局12に上りリンクの信号を送信している。
【0081】
上りリンク信号の送信手順(その2)において、ユーザ装置20は、スモール基地局11からの指示に従い、上りビーム#1でスモール基地局11に送信する上りリンクの信号の送信タイミングを制御する。また、ユーザ装置20は、スモール基地局からの指示に従い、上りビーム#2でスモール基地局12に送信する上りリンクの信号の送信タイミングを制御するようにする。
【0082】
また、ユーザ装置20は、スモール基地局11から、上りビーム#1でスモール基地局11に送信する上りリンクの信号の無線リソースの割当てに関する指示を受け、スモール基地局12から、上りビーム#2でスモール基地局12に送信する上りリンクの信号の無線リソースの割当てに関する指示を受けるようにする。
【0083】
すなわち、上りリンク信号の送信手順(その2)は、上りリンク信号の送信手順(その1)と異なり、スモール基地局11、12の各々から、上りリンク信号に関する制御信号がユーザ装置20に送信されるようにする。
【0084】
図10は、上りリンク信号の送信手順(その2)におけるシーケンス図の一例である。
図10を用いて、上りリンク信号の送信手順(その2)における具体的な処理手順を説明する。
【0085】
ステップS401で、スモール基地局11、12とユーザ装置20との間で、下りリンク信号の送信に用いられる下りビームと、上りリンク信号の送信に用いられる上りビームとが決定される。ステップS401の処理手順は、ステップS301の処理手順と同一であるため、説明は省略する。
【0086】
ステップS402で、スモール基地局11の信号送信部102は、ユーザ装置20に制御信号を送信する。当該制御信号は、例えば、物理レイヤの制御チャネル(PDCCH、EPDCCH等)により送信されるUL grantであってもよい。
【0087】
図11は、上りリンク信号の送信手順(その2)で用いられる制御信号のフォーマットの一例である。
図11に示すように、上りリンク信号の送信手順(その2)で用いられる制御信号には、「上りビーム識別子」と「送信タイミング情報」と「リソース割当情報」とが格納されている。
【0088】
本送信手順(その2)では、
図9に示すように、ユーザ装置20は、上りビーム#1を用いて、スモール基地局11に上りリンクの信号を送信する。従って、
図11に示す制御信号には、上りビーム#1に関する「上りビーム識別子」、「送信タイミング情報」及び「リソース割当情報」が含まれることになる。
【0089】
なお、リソース割当情報は、例えば、スモール基地局11の上りリソース割当部105により生成され、送信タイミング情報は、スモール基地局11の上り送信タイミング指示部104により生成されるようにしてもよい。
図7に戻り説明を続ける。
【0090】
ステップS403で、ユーザ装置20の信号送信部102及び送信タイミング制御部212は、ステップS402の処理手順で受信した制御信号で指示された送信タイミングで、上りビーム#1を用いて、スモール基地局11に上りリンク信号を送信する。上りリンク信号に特に制約はないが、例えば、PUSCH信号であってもよい。
【0091】
ステップS404で、スモール基地局12の信号送信部102は、ユーザ装置20に制御信号を送信する。当該制御信号は、例えば、物理レイヤの制御チャネル(PDCCH等)により送信されるUL grantであってもよい。当該制御信号のフォーマットは、ステップS402の処理手順における制御信号のフォーマットと同一であるため説明は省略する。当該制御信号には、上りビーム#2に関する「上りビーム識別子」、「送信タイミング情報」及び「リソース割当情報」が含まれる。
【0092】
なお、リソース割当情報は、例えば、スモール基地局11の上りリソース割当部105により生成され、基地局間通信部103を介してスモール基地局12に通知されるようにしてもよい。同様に、送信タイミング情報は、スモール基地局11の上り送信タイミング指示部104により生成され、基地局間通信部103を介してスモール基地局12に通知されるようにしてもよい。スモール基地局11が、スモール基地局11、12で形成されるスモールセルの無線リソース制御を集中管理しているため、例えば、ユーザ装置20から受信する上りリンク信号の処理を、スモール基地局11が一括管理するのが望ましい場合も想定されるためである。
図10に戻り説明を続ける。
【0093】
ステップS405で、ユーザ装置20の信号送信部102及び送信タイミング制御部212は、ステップS404の処理手順で受信した制御信号で指示された送信タイミングで、上りビーム#2を用いて、スモール基地局12に上りリンク信号を送信する。上りリンク信号に特に制約はないが、例えば、PUSCH信号であってもよい。
【0094】
なお、スモール基地局11、12及びユーザ装置20は、ステップS402〜ステップS405の処理手順を、サブフレームごとに行うようにしてもよい。また、ステップS402及びステップS403の処理手順と、ステップS404及びステップS405の処理手順とは、独立したタイミングで行われるようにしてもよい。
【0095】
なお、ユーザ装置20は、上りビーム#1がスモール基地局11に到達し、上りビーム#2がスモール基地局12に到達することを意識しなくてもよい。すなわち、ユーザ装置20は、単純にスモール基地局11、12の指示に従って複数の上りビームで上りリンク信号を送信するようにすればよく、各上りビームがどのスモール基地局に到達するのかを意識していなくてもよい。
【0096】
以上、上りリンク信号送信手順(その2)を説明したが、本送信手順がPUSCHの送信に適用される場合、例えば、他のユーザ装置20との間における直交性の確保、ユーザ装置20からの複数の上りビームによるMIMO空間多重によるユーザデータの通信容量の増大等を図ることができる。また、従来のLTEにおけるタイミングアドバンス制御(TA制御)では、MAC(Medium Access Control)レイヤでタイミング制御コマンドを送信するようにしていたが、本手順によれば、ステップS402及びステップS404の処理手順で物理レイヤの制御チャネルを用いて制御信号を送信することが可能になるため、サブフレームごとにきめ細かな送信タイミング制御を行うことが可能になる。
【0097】
[送信手順(その3)]
次に、上りリンク信号の送信手順(その3)について説明する。なお、特に言及しない点については上りリンク信号の送信手順(その1)と同一でよい。
【0098】
図12は、上りリンク信号の送信手順(その3)の概要を示す図である。
図12に示すように、スモール基地局11は、下りビーム#1−2を用いて、ユーザ装置20に下りリンクの信号を送信している。また、スモール基地局12は、下りビーム#2−2を用いて、ユーザ装置20に下りリンクの信号を送信している。更に、ユーザ装置20は、上りビーム#1〜#4を用いて上りリンクの信号を送信している。ユーザ装置20は、上りビーム#1〜4から同一の内容の上りリンク信号を送信するようにしてもよいし、それぞれ直交されたリソースを用いて異なる内容の上りリンク信号を送信するようにしてもよい。
【0099】
図12の例では、上りビーム#1で送信される上りリンク信号がスモール基地局11に到達し、上りビーム#2で送信される上りリンク信号がスモール基地局12に到達する前提とするが、ユーザ装置20は、各上りビームで送信される上りリンク信号が、どのスモール基地局に到達するのかを意識していなくてもよい。
【0100】
上りリンク信号の送信手順(その3)において、ユーザ装置20は、スモール基地局11からの指示に従い、上りビーム#1〜4で送信する全ての上りリンクの信号の送信タイミングを制御する。すなわち、上りリンク信号の送信手順(その1)及び上りリンク信号の送信手順(その2)と異なり、ユーザ装置20は、上りビームごとに送信タイミングを変更するのではなく、同一の送信タイミングで、全ての上りリンクの信号を送信する。また、ユーザ装置20は、スモール基地局11から、上りビーム#1〜#4で送信する上りリンクの信号の無線リソースの割当てに関する指示を受けるようにする。
【0101】
図13は、上りリンク信号の送信手順(その3)におけるシーケンス図の一例である。
図13を用いて、上りリンク信号の送信手順(その3)における具体的な処理手順を説明する。
【0102】
ステップS501で、スモール基地局11、12とユーザ装置20との間で、下りリンク信号の送信に用いられる下りビームと、上りリンク信号の送信に用いられる上りビームとが決定される。ステップS501の処理手順は、ステップS301の処理手順と同一であるため、説明は省略する。なお、ステップS501の処理手順の一部は省略することができる。例えば、上りリンク信号の送信に用いられる上りビームの決定が省略されてもよい。ユーザ装置20が、各上りビーム#1〜4から同一の上りリンク信号を送信するような場合など、スモール基地局11、12との間で、どの上りビーム#1〜4を用いて通信するのかを予め決定しておく必要がない場合も想定されるためである。
【0103】
ステップS502で、スモール基地局11の信号送信部102は、ユーザ装置20に制御信号を送信する。当該制御信号は、例えば、物理レイヤの制御チャネル(PDCCH等)により送信されるUL grantであってもよい。
【0104】
図14は、上りリンク信号の送信手順(その3)で用いられる制御信号のフォーマットの一例である。上りリンク信号の送信手順(その3)で用いられる制御信号のフォーマットには、2つの形態が考えられる。
図14(a)に示す制御信号のフォーマットには、「送信タイミング情報」と「リソース割当情報」とが一つずつ格納されている。
図14(a)に示す制御信号のフォーマットは、例えば、ユーザ装置20が、上りビーム#1〜4から同一の内容の上りリンクの信号を送信する場合に用いられるようにしてもよい。
図14(b)に示す制御信号のフォーマットには、最初に「送信タイミング情報」が一つ格納され、その後に「上りビーム識別子」と「リソース割当情報」とが繰り返し格納されている。
図12(b)に示す制御信号のフォーマットは、例えば、ユーザ装置20が、上りビーム#1〜4から、それぞれ直交されたリソースを用いて異なる内容の上りリンクの信号を送信する場合に用いられるようにしてもよい。
【0105】
なお、リソース割当情報は、例えば、スモール基地局11の上りリソース割当部105により生成され、送信タイミング情報は、スモール基地局11の上り送信タイミング指示部104により生成されるようにしてもよい。
図13に戻り説明を続ける。
【0106】
ステップS503で、ユーザ装置20の信号送信部102及び送信タイミング制御部212は、ステップS502の処理手順で受信した制御信号で指示された送信タイミングで、上りビーム#1を用いて上りリンク信号を送信する。上りリンク信号は、上りリンク信号に特に制約はないが、例えば、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)、SRS(Sounding Reference Signal)、PRACH(Physical Random Access Channel)等であってもよい。なお、PRACH信号は、例えば、ユーザ装置20が最初に上りリンク通信を開始する際に用いられる信号であるが、本処理手順により送信するようにしてもよい。同様に、ステップS504〜ステップS506にて、ユーザ装置20の信号送信部102及び送信タイミング制御部212は、ステップS502の処理手順で受信した制御信号で指示された送信タイミングで、上りビーム#2〜4を用いて上りリンク信号を送信する。
【0107】
以上、上りリンク信号送信手順(その3)を説明したが、本送信手順は、上りリンクの物理チャネルのうち、比較的指向性をもたせずに送信するのが望ましいような物理チャネルの送信に適用されるようにしてもよい。これにより、ユーザ装置20の処理負荷を軽減させることが可能になる。
【0108】
(下りリンク信号送信手順)
続いて、実施の形態に係る無線通信システムにおいて、スモール基地局11、12からユーザ装置20に送信される下りリンク信号を制御する場合の処理手順を説明する。下りリンク信号を制御する処理手順には、複数の下りリンク信号の受信タイミングをユーザ装置20で同期させる方法、及び下りリンク信号に対する無線リソース割当方法を組み合わせた複数の処理手順が考えられる。
【0109】
図15は、ユーザ装置における下りリンク信号の同期方法を説明するための図である。まず、
図15を用いて、複数の下りリンク信号の受信タイミングをユーザ装置20で同期させる方法について説明する。
図15に示すように、スモール基地局11は、下りビーム#1−2を用いて下りリンク信号をユーザ装置20に送信し、スモール基地局12は、下りビーム#2−2を用いて下りリンク信号をユーザ装置20に送信している。
【0110】
ユーザ装置20における下りリンク信号の同期方法として、3つの方法が考えられる。まず、1点目の方法として、ユーザ装置20は、複数の下りリンク信号の各々に対して、個別に受信タイミングの同期を取らずに下りリンク信号を処理する方法が考えられる。すなわち、ユーザ装置20から見ると、スモール基地局11から送信される下りリンク信号と、スモール基地局12から送信される下りリンク信号とでは、伝搬遅延の違いにより受信タイミングが異なる場合が発生し得ることになる。従って、ユーザ装置20は、どちらか一方の下りリンク信号に受信タイミングを同期させた場合、もう片方の下りリンク信号については、受信タイミングに同期ずれが生じる可能性がある。しかしながら、スモール基地局間の距離がそれほど遠くない場合、同期ずれは無視できる範囲であることが想定されるため、ユーザ装置20の処理負荷を軽減させるために、個別に同期を取らないようにする方法が考えられる。なお、受信タイミングの同期をとるとは、例えば、OFDMシンボル同期及びフレーム同期等をとることをいう。
【0111】
次に、2点目の方法として、ユーザ装置20は、複数の下りリンク信号の各々に対して、個別に同期を取りつつ下りリンク信号を処理する方法が考えられる。最後に、3点目の方法として、ユーザ装置20は、スモール基地局11、12に対して、個別に送信タイミングを指示する方法が考えられる。すなわち、既存のLTEにて用いられているタイミングアドバンス制御に相当する制御を、下りリンク信号に適用する方法である。
【0112】
図16は、下りリンク信号に対する無線リソース割当方法を説明するための図である。
図16を用いて、下りリンク信号に対する無線リソース割当方法について説明する。まず、
図16(a)に示すように、下りビーム#1−2及び下りビーム#2−2を用いてスモール基地局11、12からユーザ装置20に送信される下りリンク信号の無線リソースの割当を、スモール基地局11から指示する方法が考えられる。次に、
図16(b)に示すように、下りビーム#1−2を用いてスモール基地局11からユーザ装置20に送信される下りリンク信号の無線リソースの割当て、及び、下りビーム#2−2を用いてスモール基地局12からユーザ装置20に送信される下りリンク信号の無線リソースの割当てを、スモール基地局11及びスモール基地局12からそれぞれ指示する方法が考えられる。
【0113】
以下、同期方法及び無線リソース割当方法を組み合わせた下りリンク信号送信手順について、いくつかの組み合わせパターンを具体的に説明する。
図17〜
図19を用いて、下りリンク信号の送信手順(その1)について説明し、
図20〜
図21を用いて、下りリンク信号の送信手順(その2)について説明し、
図22〜
図25を用いて、下りリンク信号の送信手順(その3)について説明する。また、
図25を用いて、上述した3点目の同期方法がTDDに適用される場合を想定し、サブフレームにガード時間を設ける場合の一例について説明する。
【0114】
なお、本実施の形態に係る無線通信システムは、以下で説明する組み合わせパターン以外の組み合わせパターンについても適用することが可能である。
【0115】
[送信手順(その1)]
図17は、下りリンク信号の送信手順(その1)の概要を示す図である。
図17に示すように、スモール基地局11は、下りビーム#1−2を用いて、ユーザ装置20にDLデータを送信すると共に、DLデータに対するDLリソース割当情報を送信している。また、スモール基地局12は、下りビーム#2−2を用いて、ユーザ装置20にDLデータを送信している。また、
図17の例では、ユーザ装置20は、後述するサイト識別子を用いて、下りビーム#1−2から送信される下りリンク信号と、下りビーム#2−2から送信される下りリンク信号に対して、個別に受信タイミングの同期を取るようにする。
【0116】
図18は、下りリンク信号の送信手順(その1)におけるシーケンス図の一例である。
図18を用いて、下りリンク信号の送信手順(その1)における具体的な処理手順を説明する。なお、
図18の例では、スモール基地局11が、スモール基地局11及び12により形成されるスモールセルの無線リソース制御を集中管理していると仮定する。
【0117】
ステップS601で、スモール基地局11、12とユーザ装置20との間で、下りリンク信号の送信に用いられる下りビームと、上りリンク信号の送信に用いられる上りビームとが決定される。ステップS601の処理手順は、ステップS301の処理手順と同一であるため、説明は省略する。
【0118】
ステップS602で、スモール基地局11の信号送信部102は、下りビーム#1−2を用いてユーザ装置20に制御信号とDLデータとを送信する。当該制御信号は、DLデータの格納場所(例えばRBの位置等)を示すリソース割当情報と、2つのビーム(ビーム#1−2、#2−2)の各々が異なるスモール基地局から送信されていることを示すサイト識別子とを含む。サイト識別子は、スモール基地局11、12を一意に識別することができる情報でもよいし、例えば従来のLTEにおいてPUCCHのDCIに格納されるレイヤ数のように、スモール基地局の数(ここでは「2」)を示す情報であってもよい。
【0119】
当該制御信号に含まれるサイト識別子は、例えば、物理レイヤの制御チャネル(PDCCH)に含まれるDCIにマッピングされるようにしてもよい。また、当該制御信号全体がDCIにマッピングされるようにしてもよい。また、当該DLデータは、例えば、物理レイヤの共用チャネル(PDSCH)に含まれるようにしてもよい。
【0120】
図19は、下りリンク信号の送信手順(その1)で用いられる制御信号のフォーマットの一例である。
図19に示すように、下りリンク信号の送信手順(その1)で用いられる制御信号には、「サイト識別子」と「リソース割当情報」とが格納されている。なお、「リソース割当情報」は、スモール基地局11及びスモール基地局12から送信されるDLデータに対する無線リソースの割当情報であり、例えば、従来のLTEと同様の構成であってもよい。
図18に戻り説明を続ける。
【0121】
ステップS603で、ユーザ装置20の受信タイミング同期部211は、ステップS602で受信した下りリンク信号の制御信号に含まれる「サイト識別子」より、2つの異なるスモール基地局(11及び12)から下りリンク信号を受信していることを認識し、スモール基地局11から受信した下りリンク信号に対して受信タイミングを同期させるように信号受信部201に指示する。また、信号受信部201は、当該制御信号に基づいて下りビーム#1−2に含まれるDLデータを取得する。
【0122】
ステップS604で、スモール基地局12の信号送信部102は、下りビーム#2−2を用いてユーザ装置20にDLデータを送信する。当該DLデータは、例えば、物理レイヤの共用チャネル(PDSCH)に含まれるようにしてもよい。
【0123】
ステップS605で、ユーザ装置20の受信タイミング同期部211は、ステップS602で受信した下りリンク信号の制御信号に含まれる「サイト識別子」より、2つの異なるスモール基地局(11及び12)から下りリンク信号を受信していることを認識し、スモール基地局12から受信した下りリンク信号に対して受信タイミングを同期させるように信号受信部201に指示する。また、信号受信部201は、当該制御信号に基づいて下りビーム#2−2に含まれるDLデータを取得する。
【0124】
なお、図示の便宜上、ステップS602〜ステップS605は別々に記載されているが、ステップS602〜ステップS605の処理手順は並行して行われる。
【0125】
以上、下りリンク信号送信手順(その1)を説明した。本送信手順がPDSCHの送信に適用される場合、例えば、下りリンクにおける直交性が確保され、ユーザデータの通信容量の増大等を図ることができる。また、本送信手順(その1)は、制御信号をスモール基地局11からまとめて送信するようにしているため、スモール基地局11、12とユーザ装置20との間で送受信される制御信号の数を削減することができる。
【0126】
[送信手順(その2)]
次に、下りリンク信号の送信手順(その2)について説明する。なお、特に言及しない点については上りリンク信号の送信手順(その1)と同一でよい。
【0127】
図20は、下りリンク信号の送信手順(その2)の概要を示す図である。
図20に示すように、スモール基地局11は、下りビーム#1−2を用いて、ユーザ装置20にDLデータを送信すると共に、DLデータに対するDLリソース割当情報を送信している。また、スモール基地局12も、下りビーム#2−2を用いて、ユーザ装置20にDLデータを送信すると共に、DLデータに対するDLリソース割当情報を送信している。また、ユーザ装置20は、サイト識別子を用いて、下りビーム#1−2から送信される下りリンク信号と、下りビーム#2−2から送信される下りリンク信号に対して、個別に受信タイミングの同期を取るようにする。
【0128】
図21は、下りリンク信号の送信手順(その2)におけるシーケンス図の一例である。
図21を用いて、下りリンク信号の送信手順(その2)における具体的な処理手順を説明する。
【0129】
ステップS701で、スモール基地局11、12とユーザ装置20との間で、下りリンク信号の送信に用いられる下りビームと、上りリンク信号の送信に用いられる上りビームとが決定される。ステップS701の処理手順は、ステップS301の処理手順と同一であるため、説明は省略する。
【0130】
ステップS702で、スモール基地局11の信号送信部102は、下りビーム#1−2を用いてユーザ装置20に制御信号とDLデータとを送信する。当該制御信号は、DLデータの格納場所(例えばRBの位置等)を示すリソース割当情報と、ビーム#1−2がスモール基地局11から送信されていることを示すサイト識別子とを含む。サイト識別子は、スモール基地局11、12を一意に識別することができる情報であってもよい。また、スモール基地局11及び12を区別できる情報であればどのような情報であってもよい。
下りリンク信号の送信手順(その2)で用いられる制御信号のフォーマットは、
図19と同一であるため説明は省略する。
【0131】
ステップS703で、ユーザ装置20の受信タイミング同期部211は、ステップS702で受信した下りリンク信号の制御信号に含まれる「サイト識別子」より、当該下りリンク信号がスモール基地局11から送信される下りリンク信号であることを認識し、当該下りリンク信号に対して受信タイミングを同期させるように信号受信部201に指示する。また、信号受信部201は、当該制御信号に基づいて下りビーム#1−2に含まれるDLデータを取得する。
【0132】
ステップS704で、スモール基地局12の信号送信部102は、下りビーム#2−2を用いてユーザ装置20に制御信号とDLデータとを送信する。当該DLデータは、例えば、物理レイヤの共用チャネル(PDSCH)に含まれるようにしてもよい。
【0133】
当該制御信号は、DLデータの格納場所(例えばRBの位置等)を示すリソース割当情報と、ビーム#2−2がスモール基地局12から送信されていることを示すサイト識別子とを含む。サイト識別子は、スモール基地局11、12を一意に識別することができる情報であってもよい。また、スモール基地局11及び12を区別できる情報であればどのような情報であってもよい。
【0134】
ステップS705で、ユーザ装置20の受信タイミング同期部211は、ステップS704で受信した下りリンク信号の制御信号に含まれる「サイト識別子」より、当該下りリンク信号がスモール基地局12から送信される下りリンク信号であることを認識し、スモール基地局12から受信した下りリンク信号に対して受信タイミングを同期させるように信号受信部201に指示する。また、信号受信部201は、当該制御信号に基づいて下りビーム#2−2に含まれるDLデータを取得する。
【0135】
なお、図示の便宜上、ステップS702〜ステップS705は別々に記載されているが、ステップS702〜ステップS705の処理手順は並行して行われる。
【0136】
以上、上りリンク信号送信手順(その2)を説明した。本送信手順がPDSCHの送信に適用される場合、例えば、下りリンクにおける直交性が確保され、ユーザデータの通信容量の増大等を図ることができる。
【0137】
[送信手順(その3)]
図22は、下りリンク信号の送信手順(その3)の概要を示す図である。
図22に示すように、スモール基地局11は、下りビーム#1−2を用いて、ユーザ装置20にDLデータを送信すると共に、DLデータに対するDLリソース割当情報を送信している。また、スモール基地局12は、下りビーム#2−2を用いて、ユーザ装置20にDLデータを送信している。また、
図22の例では、ユーザ装置20は、下りビーム#1−2から送信される下りリンク信号に合わせて受信タイミングの同期を取るようにする。
【0138】
すなわち、ユーザ装置20は、下りリンク信号の送信手順(その1)のように複数の下りビームの各々と受信タイミングの同期を取るのではなく、いずれか1つの下りビームと受信タイミングの同期を取るようにする。
【0139】
図23は、下りリンク信号の送信手順(その3)におけるシーケンス図の一例である。
図23を用いて、下りリンク信号の送信手順(その3)における具体的な処理手順を説明する。
【0140】
ステップS801で、スモール基地局11、12とユーザ装置20との間で、下りリンク信号の送信に用いられる下りビームと、上りリンク信号の送信に用いられる上りビームとが決定される。ステップS801の処理手順は、ステップS301の処理手順と同一であるため、説明は省略する。
【0141】
ステップS802で、スモール基地局11の信号送信部102は、下りビーム#1−2を用いてユーザ装置20に制御信号とDLデータとを送信する。当該制御信号には、DLデータの格納場所(例えばRBの位置等)を示すリソース割当情報が含まれる。
【0142】
図24は、下りリンク信号の送信手順(その3)で用いられる制御信号のフォーマットの一例である。
図24に示すように、下りリンク信号の送信手順(その3)で用いられる制御信号には、「リソース割当情報」が格納されている。
図23に戻り説明を続ける。
【0143】
ステップS803で、ユーザ装置20の受信タイミング同期部211は、ステップS802で受信した下りリンク信号に対して受信タイミングを同期させるように信号受信部201に指示する。また、信号受信部201は、当該制御信号に基づいて下りビーム#1−2に含まれるDLデータを取得する。
【0144】
ステップS804で、スモール基地局12の信号送信部102は、下りビーム#2−2を用いてユーザ装置20にDLデータを送信する。ユーザ装置20の信号受信部201は、ステップS802で受信した制御信号に基づいて下りビーム#2−2に含まれるDLデータを取得する。
【0145】
なお、図示の便宜上、ステップS802〜ステップS804は別々に記載されているが、ステップS802〜ステップS804の処理手順は並行して行われる。
【0146】
以上、下りリンク信号送信手順(その3)を説明した。本送信手順(その3)では、ユーザ装置20にて同期処理を複数の下りビームの各々と受信タイミングの同期を取るのではなく、いずれか1つの下りビームと受信タイミングの同期を取るようにするため、ユーザ装置20の処理負荷を軽減させることが可能になる。その一方で、複数の下りビームの間で同期ずれが生じる可能性があるため、ユーザ装置20から見た場合に、スモール基地局11から受信される下りリンク信号の受信タイミングと、スモール基地局12から受信される下りリンク信号の受信タイミングに、大きな差が生じないような場合(すなわち、伝搬遅延の差が大きくないような場合)に適用されることが考えられる。
【0147】
また、一部の制御チャネル(例えば、CSI−RSのような参照信号等)など、多少の同期ずれの影響は無視できるような下りリンク信号の送信に適用されることが考えられる。
【0148】
[ガード時間の一例]
図15で説明したように、下りリンク信号の同期方法(3点目の方法)として、ユーザ装置20は、スモール基地局11、12に対して、個別に送信タイミングを指示する方法が考えられる。この同期方法がTDDを用いる通信方式に適用される場合、スモール基地局11、12にて上りリンク信号及び下りリンク信号が重ならないようにするため、サブフレームにガード時間を設ける必要がある。
【0149】
図25は、ガード時間の一例を示す図である。
図25において、Sub#0〜Sub#6は、ユーザ装置で認識されるサブフレーム間隔を示している。なお、#0〜#6は説明のため便宜上の数字である。「DL(Downlink) Rx」は、ユーザ装置20で受信される下りリンク信号を意味している。「UL(Uplink) Tx」は、ユーザ装置20から送信される上りリンク信号を意味している。「DL Tx」は、スモール基地局11、12から送信される下りリンク信号を意味している。「UL Rx」は、スモール基地局11、12で受信される上りリンク信号を意味している。すなわち、「DL Tx」及び「DL Rx」は互いに対になっており、同様に、「UL Tx」及び「UL Rx」は互いに対になっている。なお、設定されるガード時間はスモール基地局11、12によらず同一であるため、以下の説明では、スモール基地局11を例に説明する。
【0150】
図25に示すように、本実施の形態における無線通信システムでは、スモール基地局11から送信される下りリンク信号(DL Tx)のうち、ダウンリンクからアップリンクに切り替わる際の最後のサブフレームにガード時間(GP1)を設けるようにする。GP1は、例えば、ユーザ装置20が送信/受信の回路を切替える際に最低限必要な時間である。
【0151】
また、スモール基地局11から送信される下りリンク信号(DL Tx)のうち、アップリンクからダウンリンクに切り替わる際の最初のサブフレームにガード時間(GP2)を設けるようにする。GP2は、例えば、セル設計を考慮した最大伝搬遅延時間の2倍の時間である。セル設計を考慮した最大伝搬遅延は、例えば、既存のLTEのように可変であってもよい。すなわち、オペレータの運用等に応じて適宜決定(変更)されるようにしてもよい。
【0152】
スモール基地局11がSub#4で送信する下りリンク信号(DL Tx)は、伝搬遅延時間(T1)遅れてユーザ装置20に到達することになる。すなわち、スモール基地局がSub#4で送信する下りリンク信号(DL Tx)は、ユーザ装置20におけるサブフレーム(Sub#4)の開始時間に合わせるために、T1時間早く送信される必要がある。
【0153】
一方、ユーザ装置20がSub#2で送信する上りリンク信号(UL Tx)のサブフレームは、伝搬遅延により、伝搬遅延時間(T1)遅れてスモール基地局11に到達することになる。これにより、スモール基地局11では、Sub#3の上りリンク信号(UL Tx)とSub#4のダウンリンク信号(DL Tx)とのサブフレームがT2時間(T1時間×2)分重なってしまうことになる。TDDの場合、下りリンク信号及び上りリンク信号の周波数が同一であるため、重なった区間では下りリンク信号又は上りリンク信号のいずれか一方しか送受信することができない。そのため、
図25に示すガード時間の一例では、スモール基地局11から送信される下りリンク信号(DL Tx)のうち、アップリンクからダウンリンクに切り替わる際の最初のサブフレームにガード時間(GP2)を設けるようにしている。
【0154】
なお、
図25の例において、ユーザ装置20の送信タイミング指示部203は、信号送信部202を介して、スモール基地局11に下りリンク信号(DL Tx)の送信タイミングを指示することになる。ユーザ装置20は、例えば、スモール基地局11、12の各々から送信されるCSI−RS(Channel State Information−Reference Signal)等の参照信号を元に受信タイミングのずれを推定し、スモール基地局11、12に送信タイミングを指示する(タイミング調整コマンドを送信する)ようにしてもよい。
【0155】
<効果>
以上、説明したように、本実施の形態では、基地局を有する無線通信システムにおいて、前記基地局と通信を行うユーザ装置であって、前記基地局から送信される第一の下り制御信号を受信する受信手段と、複数のアンテナポートの各々又は複数のビームの各々で、上り信号を送信する送信手段と、前記第一の下り制御信号に基づいて、前記複数のアンテナポートの各々又は複数のビームの各々で送信される上り信号の各々の送信タイミングをサブフレーム毎に制御する制御手段と、を有するユーザ装置が提供される。
【0156】
このユーザ装置20により、ビームフォーミングを行うユーザ装置20と基地局10とを有する無線通信システムにおいて、効率的に通信を行うことを可能にする技術を提供することができる。
【0157】
また、前記受信手段は、前記第一の下り制御信号とは異なる第二の下り制御信号を受信し、前記制御手段は、前記第一の下り制御信号及び前記第二の下り制御信号に基づいて、前記複数のアンテナポートの各々又は複数のビームの各々で送信される上り信号の各々の送信タイミングをサブフレーム毎に制御するようにしてもよい。
【0158】
このユーザ装置20により、ユーザ装置20から複数の上りビームを用いて上りリンク信号が送信される場合に、第一の基地局及び第二の基地局から見た場合の受信タイミングが同期されることになる。これにより、本実施の形態における無線通信システムは、例えば、他のユーザ装置20から送信される上りリンク信号との間における直交性の確保、ユーザ装置20からの複数の上りビームによるMIMO空間多重によるユーザデータの通信容量の増大等を図ることができる。また、従来のLTEと比較して、サブフレームごとにきめ細かな送信タイミング制御を行うことが可能になる。
【0159】
また、前記第一の下り制御信号及び前記第二の下り制御信号は、前記複数のビームを識別する識別子を含み、前記送信手段は、前記識別子に対応するアンテナポート又はビームを用いて、前記基地局に上り信号を送信するようにしてもよい。これにより、ユーザ装置20は、第一の基地局及び第二の基地局から指示されたアンテナポート又はビームを用いて、上りリンク信号を送信することができる。
【0160】
また、本実施の形態では、基地局と他の基地局とユーザ装置とを有する移動通信システムにおいて、前記ユーザ装置と通信を行う基地局であって、前記ユーザ装置から送信される上り信号を受信する受信手段と、前記上り信号に基づいて算出された、又は、前記他の基地局から取得した、前記上り信号の送信タイミングを前記ユーザ装置に指示する情報を含む制御信号をサブフレームごとに送信する送信手段と、を有する基地局が提供される。
【0161】
この基地局10により、ビームフォーミングを行うユーザ装置と基地局とを有する無線通信システムにおいて、効率的に通信を行うことを可能にする技術を提供することができる。
【0162】
また、本実施の形態では、第一の基地局と第二の基地局とを有する無線通信システムにおいて、前記第一の基地局と前記第二の基地局と通信を行うユーザ装置であって、前記第一の基地局から送信される第一の下り信号と前記第二の基地局から送信される第二の下り信号とを受信する受信手段と、前記第一の下り信号のサブフレームごとの受信タイミングと、前記第二の下り信号のサブフレームごとの受信タイミングとをそれぞれ異なる受信タイミングで同期させるように前記受信手段を制御する同期手段と、を有するユーザ装置が提供される。
【0163】
このユーザ装置20により、ビームフォーミングを行うユーザ装置20と基地局10とを有する無線通信システムにおいて、効率的に通信を行うことを可能にする技術を提供することができる。
【0164】
また、前記受信手段は、前記第一の基地局から送信される第一の制御信号であって、前記第一の下り信号が前記第一の基地局から送信された信号であることを示す識別子と、前記第二の下り信号が前記第二の基地局から送信された信号であることを示す識別子とを含む第一の制御信号を受信し、前記同期手段は、前記第一の制御信号に基づいて、前記受信手段を制御するようにしてもよい。更に、前記受信手段は、前記第一の基地局から送信される第一の制御信号であって、前記第一の下り信号が前記第一の基地局から送信された信号であることを示す識別子を含む第一の制御信号と、前記第二の基地局から送信される第二の制御信号であって、前記第二の下り信号が前記第二の基地局から送信された信号であることを示す識別子を含む第二の制御信号とを受信し、前記同期手段は、前記第一の制御信号及び前記第二の制御信号に基づいて、前記受信手段を制御するようにしてもよい。
【0165】
このユーザ装置20により、例えば、第一の基地局と第二の基地局とから別々に送信される下りリンク信号における直交性が確保され、ユーザデータの通信容量の増大等を図ることができる。
【0166】
また、本実施の形態では、第一の基地局と第二の基地局とを有する無線通信システムにおいて、前記第一の基地局と前記第二の基地局と通信を行うユーザ装置であって、前記第一の基地局から送信される第一の下り信号と前記第二の基地局から送信される第二の下り信号とを受信する受信手段と、前記第一の下り信号を受信する受信タイミングと前記第二の下り信号とを受信する受信タイミングとを同期させるために、前記第一の基地局及び前記第二の基地局に対して送信タイミングの変更を指示する信号を送信する送信手段と、を有するユーザ装置が提供される。
【0167】
このユーザ装置20により、ビームフォーミングを行うユーザ装置20と基地局10とを有する無線通信システムにおいて、効率的に通信を行うことを可能にする技術を提供することができる。
【0168】
また、上記の各装置の構成における「手段」を、「部」、「回路」、「デバイス」等に置き換えてもよい。
【0169】
<付記>
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記のようにも記載できる。
(付記1)
基地局を有する無線通信システムにおいて、前記基地局と通信を行うユーザ装置であって、
前記基地局から送信される第一の下り制御信号を受信する受信手段と、
複数のアンテナポートの各々又は複数のビームの各々で、上り信号を送信する送信手段と、
前記第一の下り制御信号に基づいて、前記複数のアンテナポートの各々又は複数のビームの各々で送信される上り信号の各々の送信タイミングをサブフレーム毎に制御する制御手段と、
を有するユーザ装置。
(付記2)
前記受信手段は、前記第一の下り制御信号とは異なる第二の下り制御信号を受信し、
前記制御手段は、前記第一の下り制御信号及び前記第二の下り制御信号に基づいて、前記複数のアンテナポートの各々又は複数のビームの各々で送信される上り信号の各々の送信タイミングをサブフレーム毎に制御する、付記1に記載のユーザ装置。
(付記3)
前記第一の下り制御信号及び前記第二の下り制御信号は、前記複数のビームを識別する識別子を含み、
前記送信手段は、前記識別子に対応するアンテナポート又はビームを用いて、前記基地局に上り信号を送信する、付記2に記載のユーザ装置。
(付記4)
前記第一の下り制御信号及び前記第二の下り制御信号は、物理レイヤで用いられる制御信号である、付記2又は3に記載のユーザ装置。
(付記5)
基地局と他の基地局とユーザ装置とを有する移動通信システムにおいて、前記ユーザ装置と通信を行う基地局であって、
前記ユーザ装置から送信される上り信号を受信する受信手段と、
前記上り信号に基づいて算出された、又は、前記他の基地局から取得した、前記上り信号の送信タイミングを前記ユーザ装置に指示する情報を含む制御信号をサブフレームごとに送信する送信手段と、を有する基地局。
(付記6)
第一の基地局と第二の基地局とを有する無線通信システムにおいて、前記第一の基地局と前記第二の基地局と通信を行うユーザ装置であって、
前記第一の基地局から送信される第一の下り信号と前記第二の基地局から送信される第二の下り信号とを受信する受信手段と、
前記第一の下り信号のサブフレームごとの受信タイミングと、前記第二の下り信号のサブフレームごとの受信タイミングとをそれぞれ異なる受信タイミングで同期させるように前記受信手段を制御する同期手段と、
を有するユーザ装置。
(付記7)
前記受信手段は、前記第一の基地局から送信される第一の制御信号であって、前記第一の下り信号が前記第一の基地局から送信された信号であることを示す識別子と、前記第二の下り信号が前記第二の基地局から送信された信号であることを示す識別子とを含む第一の制御信号を受信し、
前記同期手段は、前記第一の制御信号に基づいて、前記受信手段を制御する、付記6に記載のユーザ装置。
(付記8)
前記受信手段は、前記第一の基地局から送信される第一の制御信号であって、前記第一の下り信号が前記第一の基地局から送信された信号であることを示す識別子を含む第一の制御信号と、前記第二の基地局から送信される第二の制御信号であって、前記第二の下り信号が前記第二の基地局から送信された信号であることを示す識別子を含む第二の制御信号とを受信し、
前記同期手段は、前記第一の制御信号及び前記第二の制御信号に基づいて、前記受信手段を制御する、付記6に記載のユーザ装置。
(付記9)
前記第一の制御信号は、物理チャネルで送信されるDCIにマッピングされる、付記7又は8に記載のユーザ装置。
(付記10)
第一の基地局と第二の基地局とを有する無線通信システムにおいて、前記第一の基地局と前記第二の基地局と通信を行うユーザ装置であって、
前記第一の基地局から送信される第一の下り信号と前記第二の基地局から送信される第二の下り信号とを受信する受信手段と、
前記第一の下り信号を受信する受信タイミングと前記第二の下り信号とを受信する受信タイミングとを同期させるために、前記第一の基地局及び前記第二の基地局に対して送信タイミングの変更を指示する信号を送信する送信手段と、
を有するユーザ装置。
【0170】
<実施形態の補足>
以上、実施の形態を説明してきたが、開示される発明はそのような実施形態に限定されず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。上記の説明における項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。機能ブロック図における機能部又は処理部の境界は必ずしも物理的な部品の境界に対応するとは限らない。複数の機能部の動作が物理的には1つの部品で行われてもよいし、あるいは1つの機能部の動作が物理的には複数の部品により行われてもよい。説明の便宜上、ユーザ装置及び基地局は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明の実施の形態に従ってユーザ装置が有するプロセッサにより動作するソフトウェア、及び、基地局が有するプロセッサにより動作するソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に保存されてもよい。本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【0171】
なお、実施の形態において、UL grantは第一の下り制御信号、第二の下り制御信号及び制御信号の一例である。DCIは第一の制御信号及び第二の制御信号の一例である。信号受信部101及び信号受信部201は、受信手段の一例である。信号送信部102及び信号送信部202は、送信手段の一例である。送信タイミング制御部212は、制御手段の一例である。受信タイミング同期部211は、同期手段の一例である。
【0172】
本特許出願は2015年3月20日に出願した日本国特許出願第2015−058738号に基づきその優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2015−058738号の全内容を本願に援用する。