特許第6906670号(P6906670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6906670
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】配向液晶フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20210708BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20210708BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20210708BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20210708BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20210708BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210708BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/13363
   G02F1/1335 510
   G02F1/1337 525
   B32B7/023
   B32B27/30 A
   B32B27/38
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-160923(P2020-160923)
(22)【出願日】2020年9月25日
(62)【分割の表示】特願2020-144989(P2020-144989)の分割
【原出願日】2020年8月28日
【審査請求日】2020年9月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暢
(72)【発明者】
【氏名】三田 聡司
(72)【発明者】
【氏名】内山 友成
【審査官】 森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−215558(JP,A)
【文献】 特開2003−14935(JP,A)
【文献】 特開2017−27057(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/170360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/023
B32B 27/30
B32B 27/38
G02B 5/30
G02F 1/1335 − 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶分子が配向した配向液晶層上に、接着剤層を介して光学層が貼り合わせられた配向液晶フィルムの製造方法であって、
配向液晶層の第一主面に、非硬化型樹脂と有機溶媒とを含む樹脂溶液を塗布して、非硬化型の樹脂コート層を形成し、
前記樹脂コート層上に接着剤層を介して光学層を貼り合わせる、
配向液晶フィルムの製造方法
【請求項2】
前記樹脂コート層のガラス転移温度が20℃以上である、請求項1に記載の配向液晶フィルムの製造方法
【請求項3】
前記接着剤層の厚みが0.01〜5μmである、請求項1または2に記載の配向液晶フィルムの製造方法
【請求項4】
着剤を活性エネルギー線により硬化して前記接着剤層を形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造方法
【請求項5】
前記光学層が、偏光子、透明フィルム、または他の配向液晶層である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造方法
【請求項6】
前記配向液晶層において、液晶分子がホモジニアス配向している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造方法
【請求項7】
前記光学層が偏光子を含み、
前記配向液晶層における液晶分子の配向方向と、前記偏光子の吸収軸方向とのなす角が10〜80°である、請求項6に記載の配向液晶フィルムの製造方法
【請求項8】
前記樹脂コート層の厚みが、0.05〜3μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造方法
【請求項9】
前記非硬化型樹脂の重量平均分子量が2万以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造方法
【請求項10】
前記非硬化型樹脂が、非硬化型のアクリル樹脂または非硬化型のエポキシ樹脂を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造方法
【請求項11】
前記樹脂溶液に、前記配向液晶層を構成する液晶化合物の未硬化物が溶出し、
前記樹脂コート層に、前記未硬化物が含まれる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造方法
【請求項12】
前記樹脂溶液を塗布した後、前記光学層を貼り合わせる前に、40〜150℃で加熱を行う、請求項1〜11のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造。
【請求項13】
光重合性液晶モノマーを含有する液晶性組成物を支持基板上に塗布し、
前記支持基板上の液晶性組成物を加熱して、液晶モノマーを液晶状態として配向させ、
光照射により前記液晶モノマーを重合または架橋することにより、
前記配向液晶層を形成する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記支持基板が樹脂フィルムである、請求項13に記載の配向液晶フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記支持基板上に前記配向液晶層が設けられた状態で、前記配向液晶層の前記支持基板と接していない面に、前記樹脂溶液を塗布する、請求項13または14に記載の配向液晶フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記配向液晶層から前記支持基板を剥離し、
支持基板の剥離により露出した配向液晶層の表面に、前記樹脂溶液を塗布する、請求項13または14に記載の配向液晶フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記樹脂溶液の有機溶媒は、前記光重合性液晶モノマーに対する溶解性を有し、かつ前記光重合性液晶モノマーの光硬化物を不溶または難溶である、請求項13〜16のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記光学層が、透明フィルム、偏光子、または前記配向液晶層とは別の配向液晶層である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の配向液晶フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶分子が配向した配向液晶フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の光学補償、有機EL素子の外光反射防止等の機能を有する光学フィルムとして、液晶化合物が所定方向に配向した液晶フィルム(配向液晶フィルム)が用いられている。配向液晶フィルムは、ポリマーの延伸フィルムに比べて複屈折が大きいため、薄型化や軽量化に有利である。画像表示装置においては、配向液晶フィルムは、粘着剤または接着剤を介して偏光子と一体積層した偏光板として、有機ELパネルや液晶表示パネルに貼り合わせられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
液晶化合物は、基板上に塗布する際のせん断力や配向膜の配向規制力等により、液晶分子を所定方向に配向させることが可能であり、種々の光学異方性を有する配向液晶フィルムが得られる。例えば、正の屈折率異方性を有するネマチック液晶分子を基板面に平行に配向させたホモジニアス配向液晶層は、nx>ny=nzの屈折率異方性を有するポジティブAプレートとして利用できる。
【0004】
サーモロトピック液晶を用いる場合は、液晶化合物を含む溶液(液晶性組成物)を基板上に塗布し、組成物中に含まれる化合物が液晶状態となるように加熱して液晶分子を配向させる。液晶性組成物が光重合性を有する液晶化合物(液晶モノマー)を含む場合は、液晶分子を配向させた後、光照射により液晶モノマーを硬化することにより、配向状態が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−7700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置には、より高い耐久性が要求されるようになっており、画像表示装置を構成する光学部材は、高温環境に長時間暴露された場合でも、光学特性の変化が小さいことが求められている。上記特許文献1では、液晶化合物の配向パラメータを制御することにより、配向液晶フィルムの高温環境でのレターデーションの変化を低減できることが記載されている。
【0007】
液晶の配向状態だけでなく、液晶層に隣接して配置される層の影響により、高温環境において配向液晶フィルムの光学特性が変化する場合がある。例えば、粘着剤層を介して配向液晶層と偏光子とを貼り合わせた場合には、高温環境下でのレターデーション変化がほとんど生じないのに対して、紫外線硬化型の接着剤を介して配向液晶層と偏光子とを貼り合わせた試料は、高温環境下でレターデーションが上昇する傾向がみられた。
【0008】
かかる課題に鑑み、本発明は、高温環境に長時間暴露された場合でも、光学特性の変化が小さく、加熱耐久性に優れる配向液晶フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
配向液晶フィルムは、液晶分子が所定方向に配向した配向液晶層を備える。配向液晶層は、例えば、光重合性液晶モノマーを含有する液晶性組成物を支持基板上に塗布し、支持基板上の液晶性組成物を加熱して、液晶モノマーを液晶状態として配向させ、光照射により液晶モノマーを重合または架橋することにより形成される。配向液晶層において、液晶分子はホモジニアス配向していてもよい。配向液晶層の形成に用いる支持基板は、樹脂フィルムであってもよい。
【0010】
本発明の配向液晶フィルムは、配向液晶層の第一主面に接する樹脂コート層を備え、樹脂コート層上に接着剤層を介して貼り合わせられた光学層を備える。配向液晶層に貼り合わせられる光学層としては、偏光子や透明フィルムが挙げられる。光学層は、他の配向液晶層であってもよい。
【0011】
一実施形態において、配向液晶フィルムは、光学層として偏光子を含む円偏光板であってもよい。液晶分子がホモジニアス配向している配向液晶層と偏光子とが積層された配向液晶フィルムにおいて、配向液晶層における液晶分子の配向方向と、偏光子の吸収軸方向とのなす角は10〜80°であってもよい。
【0012】
配向液晶フィルムは、配向液晶層の第二主面に接着剤層を介して他の光学層が貼り合わせられたものであってもよい。配向液晶層の第二主面にも樹脂コート層が設けられていてもよい。
【0013】
樹脂コート層は、非硬化型樹脂層であることが好ましい。樹脂コート層を構成する樹脂材料の重量平均分子量は2万以上が好ましい。樹脂コート層の樹脂材料としては、非硬化型のアクリル樹脂、非硬化型のエポキシ樹脂等が挙げられる。樹脂コート層のガラス転移温度は20℃以上であってもよい。樹脂コート層の厚みは0.05〜3μmが好ましい。樹脂コート層には、配向液晶層を構成する液晶化合物の未硬化物が含まれていてもよい。
【0014】
配向液晶層上に、樹脂と有機溶媒とを含む樹脂溶液を塗布することにより、樹脂コート層が形成される。樹脂溶液の有機溶媒は、光重合性液晶モノマーに対する溶解性を有し、かつ光重合性液晶モノマーの光硬化物を不溶または難溶であるものが好ましい。配向液晶層の表面に樹脂溶液を塗布した後、光学層を貼り合わせる前に、40〜150℃で加熱を行ってもよい。
【0015】
配向液晶層上の樹脂コート層と光学層とを貼り合わせる接着剤層の厚みは、好ましくは0.01〜5μmである。接着剤は、活性エネルギー線硬化型の接着剤であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の配向液晶フィルムは加熱耐久性に優れ、高温環境に長時間暴露した場合でも、レターデーションの変化が小さい。そのため、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置用光学部材として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の配向液晶フィルムの断面図である。
図2】支持基板上に配向液晶層を備える積層体の断面図である。
図3】配向液晶層上に樹脂コート層が形成された積層体の端面図である。
図4】一実施形態の配向液晶フィルムの断面図である。
図5】粘着剤層を備える配向液晶フィルムの断面図である。
図6】一実施形態の配向液晶フィルムの断面図である。
図7】一実施形態の配向液晶フィルムの断面図である。
図8】画像表示装置の積層構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、一実施形態の配向液晶フィルムの構成を示す断面図である。配向液晶フィルム100は、配向液晶層1の一方の主面に接する樹脂コート層6を備え、樹脂コート層6上に、接着剤層3を介して貼り合わせられた光学層4を備える。
【0019】
[配向液晶層]
配向液晶層1は、所定方向に配向した液晶分子を含む。例えば、支持基板8上に、液晶化合物を含む液晶性組成物を塗布し、液晶化合物を所定方向に配向させた後、配向状態を固定することにより、図2に示す様に、支持基板8上に配向液晶層1が形成される。
【0020】
<液晶性組成物>
液晶化合物としては、棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物等が挙げられる。支持基板の配向規制力によりホモジニアス配向しやすいことから、液晶化合物としては棒状液晶化合物が好ましい。棒状液晶化合物は、主鎖型液晶でも側鎖型液晶でもよい。棒状液晶化合物は、液晶ポリマーでもよく、重合性液晶化合物の重合物でもよい。重合前の液晶化合物(モノマー)が液晶性を示すものであれば、重合後は液晶性を示さないものであってもよい。
【0021】
液晶化合物は、加熱により液晶性を発現するサーモトロピック液晶であることが好ましい。サーモトロピック液晶は、温度変化に伴って、結晶相、液晶相、等方相の相転移を生じる。液晶性組成物に含まれる液晶化合物は、ネマチック液晶、スメクチック液晶、およびコレステリック液晶のいずれでもよい。ネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック配向性を持たせてもよい。
【0022】
サーモトロピック性を示す棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が挙げられる。
【0023】
重合性液晶化合物としては、例えば、ポリマーバインダーを用いて棒状液晶化合物の配向状態を固定可能とした重合性液晶化合物、重合により液晶化合物の配向状態を固定可能とした重合性官能基を有する重合性液晶化合物等が挙げられる。この中でも、光重合性官能基を有する光重合性液晶化合物が好ましい。
【0024】
光重合性液晶化合物(液晶モノマー)は、1分子中にメソゲン基と少なくとも1つの光重合性官能基とを有する。液晶モノマーが液晶性を示す温度(液晶相転移温度)は、40〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましく、55〜100℃がさらに好ましい。
【0025】
液晶モノマーのメソゲン基としては、ビフェニル基、フェニルベンゾエート基、フェニルシクロヘキサン基、アゾキシベンゼン基、アゾメチン基、アゾベンゼン基、フェニルピリミジン基、ジフェニルアセチレン基、ジフェニルベンゾエート基、ビシクロヘキサン基、シクロヘキシルベンゼン基、ターフェニル基等の環状構造が挙げられる。これらの環状単位の末端は、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0026】
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。光重合性液晶モノマーは、1分子中に2以上の光重合性官能基を有するものが好ましい。2以上の光重合性官能基を含む液晶モノマーを用いることにより、光硬化後の液晶層に架橋構造が導入されるため、配向液晶フィルムの耐久性が向上する傾向がある。
【0027】
光重合性液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、国際公開第00/37585号、米国特許第5211877号、米国特許第4388453号、国際公開第93/22397号、欧州特許第0261712号、独国特許第19504224号、独国特許第4408171号、英国特許第2280445号、特開2017−206460号公報、国際公開第2014/126113号、国際公開第2016/114348号、国際公開第2014/010325号、特開2015−200877号公報、特開2010−31223号公報、国際公開第2011/050896号、特開2011−207765号公報、特開2010−31223号公報、特開2010−270108号公報、国際公開第2008/119427号、特開2008−107767号公報、特開2008−273925号公報、国際公開第2016/125839号、特開2008−273925号公報等に記載の化合物が挙げられる。液晶モノマーの選択により、複屈折の発現性や、レターデーションの波長分散を調整することもできる。
【0028】
液晶性組成物には、液晶モノマーに加えて、液晶モノマーの所定方向への配向を制御する化合物が含まれていてもよい。例えば、液晶性組成物に側鎖型液晶ポリマーを含めることより、液晶化合物(モノマー)をホメオトロピック配向させることができる。また、液晶組成物にカイラル剤を添加することにより、液晶化合物をコレステリック配向させることができる。
【0029】
液晶性組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。紫外線照射により液晶モノマーを硬化する場合は、光硬化を促進するために、液晶性組成物は、光照射によりラジカルを生成する光重合開始剤(光ラジカル発生剤)を含んでいることが好ましい。液晶モノマーの種類(光重合性官能基の種類)に応じて、光カチオン発生剤や光アニオン発生剤を用いてもよい。光重合開始剤の使用量は、液晶モノマー100重量部に対して、0.01〜10重量部程度である。光重合開始剤の他に増感剤等を用いてもよい。
【0030】
液晶モノマーと、必要に応じて各種の配向制御剤、重合開始剤等を溶媒と混合することにより、液晶性組成物を調製できる。溶媒は、液晶モノマーを溶解可能であり、かつ基板を侵食しない(または侵食性が低い)ものであれば特に限定されず、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。2種以上の溶媒の混合溶媒を用いてもよい。
【0031】
液晶性組成物の固形分濃度は、通常5〜60重量%程度である。液晶性組成物は、界面活性剤やレベリング剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0032】
<支持基板>
液晶性組成物を塗布する支持基板8としては、ガラス板、金属板、金属ベルト、樹脂フィルム基板等が挙げられる。支持基板は第一主面および第二主面を有し、第一主面上に液晶性組成物を塗布する。
【0033】
支持基板8としてフィルム基板を用いることにより、基板上への液晶性組成物の塗布から液晶モノマーの光硬化、およびその後の加熱処理までの一連の工程を、ロール・トゥー・ロールにより実施できるため、配向液晶フィルムの生産性を向上できる。フィルム基板を構成する樹脂材料は、液晶性組成物の溶媒に溶解せず、かつ液晶性組成物を配向させるための加熱時の耐熱性を有していれば特に制限されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマー等の環状ポリオレフィン;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;アクリル系ポリマー;スチレン系ポリマー;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。
【0034】
支持基板8は、液晶分子を所定方向に配向させるための配向能を有していてもよい。例えば、支持基板として延伸フィルムを用いることにより、その延伸方向に沿って液晶分子をホモジニアス配向させることが可能である。延伸フィルムの延伸率は、配向能を発揮し得る程度であればよく、例えば、1.1倍〜5倍程度である。延伸フィルムは二軸延伸フィルムであってもよい。二軸延伸フィルムであっても、縦方向と横方向の延伸倍率が異なるものを用いれば、延伸倍率の大きい方向に沿って液晶分子を配向させることができる。延伸フィルムは斜め延伸フィルムであってもよい。支持基板8として延伸フィルムを用いることにより、支持基板の長手方向および幅方向のいずれとも平行ではない方向に液晶分子を配向させることができる。
【0035】
支持基板8は、第一主面に配向膜を備えるものでもよい。配向膜は、液晶化合物の種類や基板の材質等によって、適宜、適切なものを選択すればよい。液晶分子を所定方向にホモジニアス配向させるための配向膜としては、ポリイミド系やポリビニルアルコール系の配向膜をラビング処理したものが好適に用いられる。また、光配向膜を用いてもよい。配向膜を設けずに、支持基板としての樹脂フィルムにラビング処理を施してもよい。
【0036】
支持基板8は、液晶分子をホメオトロピック配向させるための配向膜を備えていてもよい。ホメオトロピック配向性の配向膜(垂直配向膜)を形成するための配向剤としては、レシチン、ステアリン酸、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルアミンハイドロクロライド、一塩基性カルボン酸クロム錯体、シランカップリング剤やシロキサン化合物等の有機シラン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン、テトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0037】
<支持基板上への配向液晶層の形成>
液晶化合物がサーモトロピック液晶である場合は、支持基板8の第一主面上に液晶性組成物を塗布し、加熱により液晶化合物を液晶状態として配向させる。
【0038】
支持基板8上に液晶性組成物を塗布する方法は特に限定されず、スピンコート、ダイコー、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、スプレーコート、マイヤーバーコート、ナイフロールコート、エアーナイフコート等を採用できる。溶液を塗布後、溶媒を除去することにより、支持基板上に液晶性組成物層が形成される。塗布厚みは、溶媒を乾燥後の液晶性組成物層の厚み(配向液晶フィルムの厚み)が0.1〜20μm程度となるように調整することが好ましい。
【0039】
支持基板上に形成された液晶性組成物層を加熱して液晶相とすることにより、液晶化合物が配向する。具体的には、液晶性組成物を支持基板上に塗布後、液晶性組成物のN(ネマチック相)−I(等方性液体相)転移温度以上に加熱して、液晶性組成物を等方性液体状態にする。そこから、必要に応じ徐冷してネマチック相を発現させる。このとき、一旦液晶相を呈する温度に保ち、液晶相ドメインを成長させてモノドメインとすることが望ましい。あるいは、液晶性組成物を支持基板上に塗布後、ネマチック相が発現する温度範囲内で温度を一定時間保持して液晶分子を所定方向に配向させてもよい。
【0040】
液晶化合物を所定方向に配向させる際の加熱温度は、液晶性組成物の種類に応じて適宜選択すればよく、通常40〜200℃程度である。加熱温度が過度に低いと液晶相への転移が不十分となる傾向があり、加熱温度が過度に高いと配向欠陥が増加する場合がある。加熱時間は液晶相ドメインが十分に成長するように調整すればよく、通常30秒〜30分程度である。
【0041】
加熱により液晶化合物を配向させた後、ガラス転移温度以下の温度に冷却することが好ましい。冷却方法は特に限定されず、例えば、加熱雰囲気から室温に取り出せばよい。空冷、水冷等の強制冷却を行ってもよい。
【0042】
液晶層に光照射を行うことにより、光重合性液晶化合物(液晶モノマー)が液晶規則性を有した状態で光硬化が行われる。照射光は、光重合性液晶化合物を重合せさることが可能であればよく、通常は、波長250〜450nmの紫外または可視光が用いられる。液晶性組成物が光重合開始剤を含む場合は、光重合開始剤が感度を有する波長の光を選択すればよい。照射光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED、ブラックライト、ケミカルランプ等が用いられる。光硬化反応を促進するために、光照射は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0043】
液晶性組成物の光硬化の際に、所定方向の偏光を利用することにより、液晶化合物を所定方向に配向させることもできる。上記のように、支持基板8の配向規制力により液晶化合物を配向させる場合は、照射光は非偏光(自然光)でもよい。
【0044】
照射強度は、液晶性組成物の組成や光重合開始剤の添加量等に応じて適宜調整すればよい。照射エネルギー(積算照射光量)は、通常20〜10000mJ/cm程度であり、50〜5000mJ/cmが好ましく、100〜800mJ/cmがより好ましい。光硬化反応を促進するために、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0045】
光照射により液晶モノマーを光硬化後の重合物は非液晶性であり、温度変化による、液晶相、ガラス相、結晶相の転移が生じない。そのため、液晶モノマーを所定方向に配向させた状態で光硬化した液晶層は、温度変化による分子配向の変化が生じ難い。また、配向液晶フィルムは、非液晶材料からなるフィルムに比べて複屈折が格段に大きいため、所望のレターデーションを有する光学異方性素子の厚みを格段に小さくできる。配向液晶フィルム(液晶層)の厚みは、目的とするレターデーション値等に応じて設定すればよく、通常0.1〜20μm程度であり、0.2〜10μmが好ましく、0.5〜7μmがより好ましい。
【0046】
配向液晶層の光学特性は特に限定されない。配向液晶層の正面レターデーションおよび厚み方向レターデーションは、用途等に応じて適宜設定すればよい。液晶がホモジニアス配向している場合、配向液晶層の正面レターデーションは、例えば、20〜1000nm程度である。配向液晶層が1/4波長板である場合、正面レターデーションは、100〜180nmが好ましく、120〜150がより好ましい。配向液晶層が1/2波長板である場合、正面レターデーションは、200〜340nmが好ましく、240〜300nmがより好ましい。液晶がホメオトロピック配向している場合は、配向液晶層の面内レターデーションは略0(例えば5nm以下、好ましくは3nm以下)であり、厚み方向レターデーションの絶対値は、30〜500nm程度である。
【0047】
[樹脂コート層]
上記の通り、光硬化後の液晶層は、加熱しても相転移を生じないため、未硬化の配向液晶層に比べると熱安定性に優れている。しかし、光硬化後の液晶層を高温環境に長時間暴露すると、光学特性が変化する場合があり、加熱耐久性向上の余地がある。特に、配向液晶層に接着剤を介して他の光学層を貼り合わせた配向液晶フィルムは、長時間の加熱により、レターデーションが上昇する傾向があり、加熱耐久性に課題がある。
【0048】
図3に示す様に、配向液晶層1の表面に樹脂コート層6を設けることにより、配向液晶層の光学特性の加熱安定性の向上が期待できる。樹脂コート層6は、配向液晶層1の表面に、樹脂と有機溶媒とを含む樹脂溶液を塗布することにより形成される。
【0049】
<樹脂材料>
樹脂コート層6の樹脂材料としては、非硬化型樹脂が好ましい。非硬化型樹脂とは、樹脂溶液をコーティングした後に、光硬化や熱硬化等の硬化反応を伴わずに樹脂層を形成可能な材料である。非硬化型樹脂は、光硬化性または熱硬化性の反応性基を含まないものであるが、少量の反応性基が残存していてもよい。例えば、反応性官能基当量(1当量の反応性官能基をを含む樹脂の質量)は、3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、5000以上または6000以上であってもよい。
【0050】
樹脂材料は、透明性が高く、着色が少ないものが好ましい。樹脂材料としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリマーが挙げられる。これらの中でも、配向液晶層1および接着剤層3との密着性が高いことから、アクリル樹脂およびエポキシ樹脂が好ましい。樹脂材料は2種以上を混合してもよい。樹脂コート層のヘイズ上昇を抑制する観点から、2種以上の樹脂材料は、相溶性を有するものが好ましい。
【0051】
樹脂コート層6の樹脂材料のガラス転移温度は、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上または50℃以上であってもよい。粘着剤等の層間の接着に用いられるポリマー材料は、粘性を持たせるために、一般的には、ガラス転移温度が室温よりも低く設定されている。一方、配向液晶層の表面に設けられる樹脂コート層6は、室温よりも高いガラス転移温度を有することにより、画像表示装置の使用環境における特性変化が小さく、これに伴って配向液晶層の光学特性の変化が抑制される傾向がある。硬化反応を伴わずに樹脂コート層6の膜強度を維持する観点から、樹脂材料の重量平均分子量は、2万以上が好ましく、3万以上がより好ましい。
【0052】
(樹脂層の形成)
樹脂溶液の有機溶媒は、上記の樹脂材料を溶解可能なものであれば特に限定されない。有機溶媒は、配向液晶層を溶解しないものが好ましい。例えば、配向液晶層が光重合性液晶モノマーの光硬化物を含む場合は、当該硬化物を不溶または難溶である有機溶媒が好ましい。一方、有機溶媒は、光硬化前の液晶性化合物(モノマー)に対する溶解性を示すものであってもよい。有機溶媒は、1種の溶媒でもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。
【0053】
樹脂溶液の固形分濃度は、1〜50重量%程度の範囲で、コーティングに適した粘度となるように調整すればよい。厚みが小さい樹脂コート層を均一に形成する観点から、樹脂溶液の固形分濃度は30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、15重量%以下または10重量%以下であってもよい。
【0054】
配向液晶層1の表面に樹脂溶液を塗布する方法は特に限定されず、各種のコーティング法を適宜に採用できる。樹脂溶液を塗布後に、有機溶媒を除去するために加熱を行ってもよい。加熱温度は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。加熱温度が過度に高い場合は、基材への熱ダメージや液晶化合物の再配向等により、配向液晶フィルムの加熱安定性が低下する場合がある。そのため、加熱温度は150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、110℃以下または100℃以下であってもよい。
【0055】
樹脂コート層6の厚みは特に限定されないが、薄型化、接着性および透明性維持等の観点から、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下であってもよい。一方、未硬化モノマー等の配向液晶層1からの溶出物を樹脂コート層6に内包させブリードアウトを抑制する観点から、樹脂コート層6の厚みは、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。
【0056】
樹脂コート層を設けることにより配向液晶層の加熱耐久性が向上する理由は定かではないが、光硬化後の液晶層に残存している未硬化のモノマーや、3次元ネットワーク構造の形成が不十分な部分に含まれている遊離の添加剤等が、樹脂溶液の有機溶媒により溶出し、樹脂コート層に取り込まれるため、加熱によるレターデーション変化の原因となる物質が配向液晶層から除去されることが一因として考えられる。配向液晶層内の未硬化物等が有機溶媒に溶出した場合でも、溶出成分が樹脂コート層内に取り込まれるため、配向液晶層表面への析出物等に起因する汚染や透明性の低下を防止できる。有機溶媒除去のための加熱の際に液晶が再配向し、配向状態が安定化されること等も、加熱安定性向上に寄与していると考えられる。
【0057】
配向液晶層1上に設けられた樹脂コート層6と光学層4とを接着剤層3を介して積層することにより、図1に示す積層体が得られる。
【0058】
[光学層]
光学層4は特に限定されず、光学フィルムとして一般的に用いられる光学等方性または光学異方性のフィルムを特に制限なく使用できる。光学層4の具体例としては、位相差フィルムや偏光子保護フィルム等の透明フィルム、偏光子、視野角拡大フィルム、視野角制限(覗き見防止)フィルム、輝度向上フィルム等の機能性フィルムが挙げられる。光学層4は、単層でもよく積層体でもよい。光学層4は、配向液晶層であってもよい。例えば、光学層4は、偏光子の一方の面または両面に透明保護フィルムが貼り合わせられた偏光板であってもよい。偏光板が一方の面に透明保護フィルムを備える場合、偏光子と配向液晶層とを貼り合わせてもよく、透明保護フィルムと配向液晶層とを貼り合わせてもよい。
【0059】
例えば、液晶表示装置では、液晶セルから視認側に射出される光の偏光状態を適宜に変換して、視野角特性を向上させる等の目的で、画像表示セル(液晶セル)と偏光子との間に光学補償フィルムとしての位相差板が配置される場合がある。有機EL表示装置では、外光が金属電極層で反射して鏡面のように視認されることを抑制するために、セルと偏光板との間に1/4波長板が配置される場合がある。
【0060】
[接着剤層]
上記のように、配向液晶層1の表面に樹脂コート層6を設け、その上に接着剤層3を介して光学層4を貼り合わせることにより、配向液晶フィルム100における配向液晶層1の加熱耐久性を向上できる。
【0061】
接着剤層3を構成する接着剤は、光学的に透明であればその材料は特に制限されず、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。前述の樹脂コート層6には非硬化型樹脂が用いられるのに対して、接着剤には、硬化型の組成物が用いられる。接着剤層3の厚みは、被着体の種類や接着剤の材料等に応じて適宜に設定される。塗布後の架橋反応により接着性を示す硬化型の接着剤を用いる場合、接着剤層3の厚みは0.01〜5μmが好ましく、0.03〜3μmがより好ましい。
【0062】
接着剤としては、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト接着剤系、活性エネルギー線硬化型接着剤等の各種形態のものが用いられる。これらの中でも、接着剤層の厚みを小さくできることから、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好ましい。
【0063】
水系接着剤としては、例えば、ビニルポリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等の水溶性または水分散性ポリマーを含むものを例示できる。このような水系接着剤からなる接着剤層は、フィルム上に水溶液を塗布し、乾燥させることにより形成される。水溶液の調製に際しては、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒を配合することもできる。
【0064】
水系接着剤に配合される架橋剤としては、ホウ酸やホウ砂;カルボン酸化合物;アルキルジアミン類;イソシアネート類;エポキシ類;モノアルデヒド類;ジアルデヒド類;アミノ−ホルムアルデヒド樹脂;二価金属または三価金属の塩およびその酸化物等が挙げられる。
【0065】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線や紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル重合、カチオン重合またはアニオン重合可能な接着剤である。中でも、低エネルギーで硬化可能であることから、紫外線照射によりラジカル重合が開始する光ラジカル重合性接着剤が好ましい。
【0066】
ラジカル重合性接着剤のモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、ビニル基を有する化合物が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、C1−20鎖状アルキル(メタ)アクリレート、脂環式アルキル(メタ)アクリレート、多環式アルキル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。ラジカル重合性接着剤は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N‐メチロール(メタ)アクリルアミド、N‐メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N‐エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素含有モノマーを含んでいてもよい。ラジカル重合性接着剤は、架橋成分として、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9‐ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート等の多官能モノマーを含んでいてもよい。
【0067】
光ラジカル重合性接着剤等の光硬化型接着剤は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、反応種に応じて適宜選択すればよい。例えば、ラジカル重合性接着剤には、光重合開始剤として、光照射によりラジカルを生成する光ラジカル発生剤を配合すること好ましい。光ラジカル発生剤の具体例は後述する。光ラジカル発生剤の含有量は、モノマー100重量部に対して、通常0.1〜10重量部程度、好ましくは、0.5〜3重量部である。なお、ラジカル重合性接着剤を電子線硬化型として用いる場合には、光重合開始剤は特に必要ない。ラジカル重合性接着剤には、必要に応じて、カルボニル化合物等で代表される光増感剤を添加することもできる。光増感剤は、電子線による硬化速度や感度を上昇させるために用いられる。光増感剤の使用量はモノマー100重量部に対して、通常0.001〜10重量部程度、好ましくは、0.01〜3重量部である。
【0068】
接着剤は、必要に応じて適宜の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤、エチレンオキシド等の接着促進剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、染料、加工助剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤、可塑剤、レベリング剤、発泡抑制剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤等が挙げられる。
【0069】
配向液晶層1上に設けられた樹脂コート層6の表面および光学層4の表面のいずれか一方または両方に接着剤を塗布し、硬化することにより、接着剤層3を介して、樹脂コート層6が設けられた配向液晶層1と光学層4が積層される。接着剤の硬化は、接着剤の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、水系接着剤は、加熱により硬化できる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化できる。
【0070】
[配向液晶フィルムの積層構成]
支持基板8上の配向液晶層1の表面に樹脂コート層6が設けられ、樹脂コート層6上に接着剤層3を介して光学層4が貼り合わせられた配向液晶フィルム103は、そのまま光学部材として用いてもよい。この場合、支持基板8が配向液晶フィルム103の一部を構成する。図1に示す配向液晶フィルム100の様に、配向液晶層1から支持基板を剥離してもよい。支持基板の剥離により露出した配向液晶層1の表面には、図5に示す様に、適宜の粘着剤層2を積層してもよい。
【0071】
図5に示す形態では、支持基板8を剥離後の配向液晶層1の露出面(配向液晶層形成時の基板面)に粘着剤層2を積層しているが、配向液晶フィルムは、配向液晶層形成時の空気面側に粘着剤層を積層し、配向液晶層の基板面側に樹脂コート層および接着剤層を介して光学層を貼り合わせたものであってもよい。
【0072】
粘着剤層2を構成する粘着剤は特に制限されず、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤等の、透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性を示し、耐候性や耐熱性等に優れる粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚みは、被着体の種類等に応じて適宜設定され、一般には5〜500μm程度である。
【0073】
配向液晶層1上への粘着剤層2の積層は、例えば、予めシート状に形成された粘着剤を、配向液晶層1の表面に貼り合わせることにより行われる。配向液晶層1上に粘着剤組成物を塗布した後、溶媒の乾燥、架橋、光硬化等を行って粘着剤層2を形成してもよい。配向液晶層1と粘着剤層2との接着力(投錨力)を高めるために、配向液晶層1の表面にコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理や易接着層を形成した後に、粘着剤層2を積層してもよい。
【0074】
粘着剤層2の表面には、セパレーター9が仮着されていることが好ましい。セパレーター9は、粘着剤付き光学フィルムを画像表示セル50と貼り合わせるまでの間、粘着剤層2の表面を保護する。セパレーターの構成材料としては、アクリル、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等のプラスチックフィルムが好適に用いられる。セパレーターの厚みは、通常5〜200μm程度である。セパレーターの表面には、離型処理が施されていることが好ましい。離型剤としては、シリコーン系材料、フッ素系材料、長鎖アルキル系材料、脂肪酸アミド系材料等が挙げられる。
【0075】
支持基板8を剥離後の配向液晶層1の露出面には、適宜の接着剤層または粘着剤層を介して他の光学層を積層してもよい。例えば、図6に示す様に、配向液晶層1上に、適宜の接着剤層7を介して、他の光学層5を積層してもよい。光学層5の上には、さらに粘着剤層(不図示)が積層されていてもよく、粘着剤層の表面にはセパレーターが仮着されていてもよい。
【0076】
配向液晶層1から支持基板8を剥離し、支持基板の剥離により露出した配向液晶層1の表面に、樹脂溶液を塗布して樹脂コート層16を形成してもよい。図7に示すように、支持基板の剥離により露出した配向液晶層1の表面に設けられた樹脂コート層16上には、接着剤層7を介して光学層5が貼り合わせられていてもよい。
【0077】
図7では、配向液晶層1の両面に樹脂コート層6,16が設けられているが、樹脂コート層は、配向液晶層1の片面のみに設けられていてもよい。支持基板8上に配向液晶層1が密着積層された積層体101の配向液晶層1の表面(配向液晶層形成時の空気面)には樹脂コート層を形成せず、配向液晶層1から支持基板8を剥離後に、露出した配向液晶層1の表面(配向液晶層形成時の基板面)のみに樹脂コート層16を形成してもよい。
【0078】
<円偏光板>
配向液晶フィルムは、視認性向上等を目的としたディスプレイ用光学フィルムとして用いることができる。例えば、液晶表示装置では、液晶セルから視認側に射出される光の偏光状態を適宜に変換して、視野角特性を向上させる等の目的で、画像表示セル(液晶セル)と偏光子との間に光学補償フィルムとしての位相差板が配置される場合がある。
【0079】
一実施形態において、配向液晶フィルムは、配向液晶層1上の樹脂コート層6形成面に、接着剤層3を介して光学層4としての偏光板が貼り合わせられた円偏光板である。円偏光板は、2層以上の配向液晶層を備えるものであってもよい。
【0080】
偏光板は、1層の偏光子のみからなるものでもよく、前述のように、偏光子の一方の面または両面に透明保護フィルムが貼り合わせられていてもよい。偏光子としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0081】
中でも、高い偏光度を有することから、ポリビニルアルコールや、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて所定方向に配向させたポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素染色および延伸を施すことにより、PVA系偏光子が得られる。樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成し、積層体の状態でヨウ素染色および延伸を行ってもよい。
【0082】
偏光板と配向液晶層とが積層された円偏光板においては、少なくとも1層の配向液晶層は液晶分子がホモジニアス配向していることが好ましい。円偏光板では、液晶分子がホモジニアス配向している配向液晶層における液晶分子の配向方向と、偏光子の吸収軸方向とが平行でも直交でもないように配置される。
【0083】
例えば、円偏光板が配向液晶層を1層のみ有する場合、配向液晶層1は1/4波長板であり、偏光子の吸収軸方向と液晶分子の配向方向(一般には遅相軸方向)とのなす角は45°に設定される。偏光子の吸収軸方向と液晶分子の配向方向とのなす角は、35〜55°であってもよく、40〜50°であってもよく、43〜47°であってもよい。
【0084】
偏光板4と1/4波長板としての配向液晶層1とが、両者の光学軸のなす角が45°となるように積層された構成においては、さらに、光学層5として、液晶分子が基板面に対して垂直配向(ホメオトロピック配向)している配向液晶層を備えていてもよい。偏光板上に、1/4波長板としての配向液晶層1とポジティブCプレートとして機能するホメオトロピック配向液晶層5とが順に積層されることにより、斜め方向からの外光に対しても反射光を遮蔽可能な円偏光板を形成できる。偏光板上に、ホメオトロピック配向液晶層(ポジティブCプレート)とホモジニアス配向液晶層(ポジティブAプレートである1/4波長板)とが順に積層されていてもよい。
【0085】
図6,7に示す様に、光学層としての偏光板4に複数の配向液晶層1,5が積層された円偏光板において、配向液晶層1,5は、いずれもホモジニアス配向液晶層であってもよい。この場合、偏光板4に近い側に配置される配向液晶層1が1/2波長板であり、偏光板から遠い側に配置される配向液晶層5が1/4波長板であることが好ましい。この積層構成では、1/2波長板の遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とのなす角が75°±5°、1/4波長板の遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とのなす角が15°±5°となるように配置することが好ましい。このような積層構成の円偏光板は、可視光の広い波長範囲にわたって円偏光板として機能するため、反射光の色付きを低減できる。
【0086】
[画像表示装置]
図8は画像表示装置の積層構成例を示す断面図であり、画像表示セル50の表面に、粘着剤層2を介して配向液晶層1を備える配向液晶フィルムが貼り合わせられている。配向液晶フィルムは、2層以上の配向液晶層を備えるものであってもよい。画像表示セル50としては、液晶セルや有機ELセル等が挙げられる。
【0087】
上記のように、配向液晶フィルムは、配向液晶層の表面に樹脂コート層を設けることにより、配向液晶層の加熱耐久性が向上している。表面に樹脂コート層が形成された配向液晶層を備える画像表示装置は、加熱環境に長時間曝された場合も配向液晶層のレターデーションの変化が小さいため、視認性の変化が小さく、加熱耐久性に優れている。
【実施例】
【0088】
以下に、配向液晶フィルムの作製例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0089】
[配向液晶フィルムの作製]
<比較例1>
ネマチック液晶相を示す光重合性液晶化合物(BASF製「Paliocolor LC242」)をシクロペンタノンに溶解して、固形分濃度30重量%の溶液を調製した。この溶液に、界面活性剤(ビック・ケミー製「BYK−360」)および光重合開始剤(IGM Resins製「Omnirad907」)を添加して、液晶性組成物溶液を調製した。レベリング剤および重合開始剤の添加量は、光重合性液晶化合物100重量部に対して、それぞれ、0.01重量部および3重量部とした。
【0090】
フィルム基材として、二軸延伸ノルボルネン系フィルム(日本ゼオン製「ゼオノアフィルム」、厚み:33μm、面内レターデーション:135nm)を用いた。フィルム基材の表面に、上記の液晶性組成物を乾燥後の厚みが1μmとなるようにバーコーターにより塗布し、100℃で3分間加熱して液晶を配向させた。室温に冷却した後、窒素雰囲気下で、積算光量400mJ/cmの紫外線を照射して光硬化を行い、フィルム基材上にホモジニアス配向液晶層が形成された積層体を得た。
【0091】
<実施例1〜6>
シクロペンタノンと酢酸エチルの混合溶媒に、表1に示す樹脂を固形分濃度3重量%となるように溶解して、樹脂溶液を調製した。比較例1の積層体の配向液晶層の表面に、ワイヤーバー(#10)で樹脂溶液を塗布した後、85℃で加熱して溶媒を除去して、配向液晶層の表面にコーティング樹脂層を形成した。なお、表1において、実施例1〜3のアクリル樹脂は、楠本化成より入手したものであり、実施例4〜6および比較例3のエポキシ樹脂は三菱ケミカルより入手したものである。
【0092】
<比較例2>
比較例1の積層体の配向液晶層の表面に、ワイヤーバー(#10)でシクロペンタノンを塗布した後、85℃で1分間加熱して溶媒を除去した。
【0093】
<比較例3>
シクロペンタノンと酢酸エチルの混合溶媒に、エポキシ当量約190のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル製「jER828」および光カチオン重合開始剤(サンアプロ製「CPI100P」)を、エポキシ樹脂濃度が3重量%となるように溶解して、光硬化性の樹脂組成物(溶液)を調製した。比較例1の積層体の配向液晶層の表面に、ワイヤーバー(#10)で組成物を塗布した後、85℃で加熱して溶媒を除去して、その後、紫外線を照射して、エポキシ樹脂を光硬化した。
【0094】
[配向液晶層を備える偏光板(円偏光板)の作製]
厚み20μmの無延伸ノルボルネン系フィルム(日本ゼオン製「ゼオノアフィルム」)の片面に、UV硬化型接着剤を介して厚み5μmのPVA系偏光子が設けられた積層体(片保護偏光板)を準備した。
【0095】
ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人製「HEAA」)62重量部、アクリロイルモルホリン(興人製「ACMO」)25重量部、PEG400#ジアクリレート(共栄社化学製「ライトアクリレート9EG−A」)7重量部、ならびに光重合開始剤(IGM Resins製「Omnirad907」)3重量部、および2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬製「カヤキュアDETX−S」)3重量部を混合して、UV硬化型接着剤組成物を調製した。この接着剤を、上記の片保護偏光板の表面に約1μmの厚みで塗布し、接着剤の塗布層上に、実施例および比較例の積層体の配向液晶層側の面を貼り合わせた後、積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射して接着剤を硬化させた。貼り合わせ時に、偏光子の吸収軸方向と、配向液晶層における液晶分子の配向方向(フィルム基材の遅相軸方向)とのなす角を45°とした。
【0096】
配向液晶フィルムからフィルム基材を剥離し、配向液晶フィルムの表面に、厚み15μmのアクリル系粘着シートを貼り合わせ、片保護偏光板の偏光子上にUV硬化型接着剤層を介して配向液晶層が貼り合わせられ、その上にアクリル系粘着シートを備える偏光板を得た。実施例1〜6および比較例3では、接着剤層と配向液晶層の間に、厚み約300nmの樹脂層が形成されていた。
【0097】
[評価]
<外観>
コーティング樹脂層を形成後(比較例2はシクロペンタノンによる表面処理後)のフィルム表面を目視にて観察し、析出物が確認されなかったものをOK、析出物が確認されたものをNGとした。
【0098】
<レターデーション変化>
上記の偏光板の粘着剤層をガラス板に貼り合わせて評価用試料を作製した。位相差計(王子計測機器製「KOBRA21−ADH」)により波長590nmの面内レターデーションを測定した後、評価用試料を85℃の空気循環式恒温オーブンに120時間投入した。オーブンから試料を取り出した後、再度面内レターデーションを測定し、加熱試験前後のレターデーションの変化率を算出した。
【0099】
<色相変化>
上記の偏光板の粘着剤層をコーニング製の無アルカリガラスに貼り合わせて評価用試料を作製した。評価用試料の無アルカリガラスの下にアルミニウム蒸着ポリエステルフィルム(東レアドバンスドフィルム製「DMS−X42」)を配置し、分光測色計(コニカミノルタ製「CM−2600d」を用いて、偏光板側から光を照射し、SCI方式で反射光の色相(Lab色空間におけるaおよびbの値)を測定した。その後、評価用試料を85℃の空気循環式恒温オーブンに120時間投入した。オーブンから試料を取り出した後、再度、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム上で反射光の色相を測定し、加熱試験前後での反射光の色相の変化量√{(Δa+(Δb}を算出した。
【0100】
上記の各実施例および比較例における樹脂コート層の形成に用いた樹脂種、ならびに配向液晶フィルムの評価結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
配向液晶層の表面処理を実施しなかった比較例1では、加熱試験前後のRe変化量が3%、反射光の色相変化が2.2であったのに対して、シクロペンタノンによる処理を実施した比較例2では、Re変化が抑制され、これに伴って反射光の色相の変化も抑制されていた。しかし、比較例2では、配向液晶層の表面に析出物が確認され、外観不良を生じていた。
【0103】
非硬化型の樹脂を用いて、配向液晶層上に樹脂コート層を形成した実施例1〜6では、比較例1に比べてRe変化および反射光の色相変化が抑制されており、かつ外観も良好であった。実施例1の樹脂コート層表面をテトラヒドロフランに溶解させて樹脂分を抽出し、MALDI−TOF質量分析により分析したところ、未反応の液晶モノマーが確認された。これらの結果から、樹脂溶液を塗布することにより、配向液晶層中の未硬化物等が抽出され、これが樹脂コート層内に取り込まれることが、配向液晶層の加熱耐久性向上に寄与していると考えられる。
【0104】
光カチオン硬化性の樹脂組成物を用い、配向液晶層上へのコーティング後に樹脂層のUV硬化を行った比較例1では、加熱耐久試験後に正面Reが低減しており、加熱耐久性が不充分であった。これらの結果から、配向液晶層上に、非硬化型の樹脂コート層を形成することにより、配向液晶層の加熱耐久性を向上し、レターデーションの変化が小さく、反射光の色付きや色の変化が少ない円偏光板が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0105】
1 配向液晶層
6 樹脂コート層
8 支持基板
4 光学層(偏光板)
5 光学層(配向液晶層)
3,7 接着剤層
2 粘着剤層
9 セパレーター
50 画像表示セル

【要約】
【課題】高温環境に長時間暴露された場合でも、光学特性の変化が小さく、加熱耐久性に優れる配向液晶フィルムを提供する。
【解決手段】液晶配向フィルム(100)は、液晶分子が配向した配向液晶層(1)、配向液晶層の第一主面に接する樹脂コート層(6)、および樹脂コート層(6)上に接着剤層(3)を介して貼り合わせられた光学層(4)を備える。樹脂コート層は、非硬化型樹脂層である。樹脂コート層のガラス転移温度は20℃以上であってもよい。光学層は偏光子を含む偏光板であってもよい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8