(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[空気調和機]
以下、本発明の実施の形態にかかる空気調和機1を説明する。
図1は、実施の形態にかかる空気調和機1の建物200への設置の一例を説明する模式図である。
図2は、制御装置110の機能を説明するブロック図である。
【0012】
図1に示すように、空気調和機1は、建物200の室内210に設けられた室内機10と、室外220に設けられた室外機20と、室内機10と室外機20との間を循環する冷媒Rの漏洩を検出する冷媒検出センサ30と、空気調和機1を遠隔操作するリモコン40と、を有する。室内機10と室外機20との間は、冷媒配管60で接続されており、この冷媒配管60を冷媒Rが循環することで、空気調和機1の冷凍サイクルが構成される。
【0013】
例えば、冷媒配管60を循環する冷媒Rとして、代替フロンのハイドロフルオロカーボン(HFC)類のR32などの微燃性冷媒が用いられる。この種の冷媒Rが、室内210に漏洩して所定の濃度以上となった場合、火炎源(例えば、ライターの火炎など)からの火炎が室内210で伝播する恐れがある。
【0014】
そのため、冷媒配管60の途中位置には、遮断弁50(51、52)が設けられており、冷媒検出センサ30により冷媒Rの漏洩を検出した場合、遮断弁51、52で冷媒配管60内の冷媒Rを通流する冷媒Rを遮断して、冷媒Rの漏洩を抑えることができる。
【0015】
また、建物200には、換気装置230が設けられている。この換気装置230により室内空気の換気を行うことで、室内210の冷媒濃度を下げることができる。
【0016】
[制御装置]
図2に示すように、室内機10には、空気調和機1を制御する制御装置110が設けられている。制御装置110は、運転情報取得部111と、濃度算出部112と、濃度判定値算出部113と、判定値補正部114と、漏洩状態判定部115と、出力処理部116と、を有している。制御装置110は、空気調和機1の全体制御を行うための制御プログラムや、各種パラメータを記憶する記憶装置11に接続されており、CPU(図示せず)が、記憶装置11に記憶された制御プログラムを実行することで、以下で説明する各機能が実現される。また、制御装置110は、通信装置12に接続されており、この通信装置12を介して、冷媒検出センサ30に接続されている。
【0017】
運転情報取得部111は、空気調和機1の冷暖房運転などの運転情報を取得する。
【0018】
濃度算出部112は、冷媒検出センサ30の出力信号に基づいて、室内210における冷媒Rの濃度C(以下、センサ検出値Cdと言うこともある)を算出する。また、濃度算出部112は、過去の所定期間に算出した複数のセンサ検出値Cdを記憶装置11に記憶する。
【0019】
濃度判定値算出部113は、室内210の空間容積や、換気装置230の有無、換気装置230の設置場所などの設計情報に基づいて、室内210における冷媒Rの濃度Cの許容上限判定値Cjuと、初期判定値Cjoとを算出及び設定する。ここで、許容上限判定値Cjuは、少なくとも、ISO817(冷媒の安全等級)で規定された、冷媒と空気とが均等に混合された状態で、火炎を伝播することが可能な最小冷媒濃度(燃焼限界LFL:Lower Flammability Limit)の1/4よりも小さい値が設定されている。これは、冷媒検出センサ30での冷媒検知遅れや、冷媒濃度分布などを想定した安全率を考慮した冷媒濃度検出の上限値である。また、初期判定値Cjoは、初期の冷媒濃度検出に用いる判定値であり、火炎伝播の安全性を考慮して、許容上限判定値Cjuよりも低い値が設定されている。例えば、初期判定値Cjoは、1/8LFLの値が設定されている。実施の形態では、制御装置110は、安全性を考慮して、室内210の冷媒Rの濃度Cが初期判定値Cjo以上となった場合、冷媒Rの漏洩が発生したと判定する。
【0020】
また、濃度判定値算出部113は、室内210における冷媒Rの濃度Cの一時的な増加を判定するために、初期判定値Cjoよりも小さい値の第1判定値Cjo1と、第1判定値Cjo1よりも小さい値の第2判定値Cjo2とを算出及び設定する(
図5参照)。これにより、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが、第1判定値Cjo1以上となると共に、第1判定値Cjo1以上となる期間T(例えば、T1、T2、T3)が所定期間Tth以下であり、その後、第2判定値Cjo2以下となった場合に、当該センサ検出値Cdの増加は、経時的な変動ではなく、一時的なものと判定することができる(
図5参照)。
【0021】
なお、前述した許容上限判定値Cju、初期判定値Cjo、第1判定値Cjo1、第2判定値Cjo2は、制御装置110(室内機10)の外部に設けられたリモコン40により、遠隔操作で設定されるようにしてもよい。
【0022】
判定値補正部114は、冷媒検出センサ30で検出された冷媒Rの濃度C(センサ検出値Cd)に基づいて、前述した濃度判定値算出部113で算出及び設定された初期判定値Cjoを補正する。判定値補正部114による初期判定値Cjoの補正方法については後述する。
【0023】
漏洩状態判定部115は、冷媒検出センサ30で検出された冷媒Rの濃度C(センサ検出値Cd)と、許容上限判定値Cju、初期判定値Cjoとに基づいて、室内210における冷媒Rの漏洩の有無を判定する。例えば、漏洩状態判定部115は、冷媒検出センサ30で検出された冷媒Rの濃度C(センサ検出値Cd)が、初期判定値Cjo以上である場合、室内210において、冷媒Rの漏洩が発生していると判定し、濃度C(センサ検出値Cd)が初期判定値Cjo未満である場合、室内210において、冷媒Rの漏洩が発生していないと判定する。
【0024】
出力処理部116は、漏洩状態判定部115で判定した冷媒Rの漏洩状態を、外部の報知装置(図示せず)に出力するための処理を行う。例えば、出力処理部116は、室内210における冷媒Rの漏洩が発生していると判定した場合、外部に設けられたディスプレイやスピーカなどの報知装置に対し、冷媒Rの漏洩を知らせる制御値を出力する。これにより、報知装置は、冷媒Rの漏洩を外部に報知するための表示や音声、警告音などを出力する。
【0025】
[判定値の補正方法]
次に、前述した判定値補正部114による初期判定値Cjoの補正方法を説明する。
【0026】
図3は、判定値補正部114による初期判定値Cjoの補正方法の一例を説明する図である。
図3では、横軸を時間(T)、縦軸を冷媒検出センサ30で検出した冷媒濃度CVol(%)とした場合の、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが、経時的に上昇変動する場合を示している。
【0027】
図3に示すように、制御装置110では、濃度判定値算出部113により、室内210の設計情報などに基づいて、許容上限判定値Cjuと、初期判定値Cjoとが算出及び設定されている。実施の形態では、許容上限判定値Cjuとして、ISO817で規定されたR32(A2L)の1/4LFLよりも小さい値が設定され、初期判定値Cjoとして、1/8LFLの値が設定されている。
【0028】
制御装置110では、濃度算出部112により、冷媒検出センサ30で検出された室内210における冷媒Rの濃度C(センサ検出値Cd)が一定周期毎に算出されている。実施の形態では、センサ検出値Cdは、冷媒検出センサ30の経年劣化などにより、経時的に上昇変動している。そのため、センサ検出値Cdの所定期間における平均値CdAは、右肩上がりの傾きを有する直線で表すことができる(
図3参照)。
【0029】
ここで、センサ検出値Cdは、経時的に上昇変動するので、所定時間Ta経過後には、初期判定値Cjo以上となり、実際には冷媒Rの漏洩がないにも関わらず漏洩が発生していると誤検出されてしまう可能性がある。そのため、本発明では、判定値補正部114は、所定時間Taを経過したと判定した場合、記憶装置11に記憶された過去の所定期間でのセンサ検出値Cdの平均値CdAを、初期判定値Cjoに加算する補正を行うことで補正判定値Cjcを算出及び設定する(
図3の矢印参照)。なお、補正判定値Cjcが、許容上限判定値Cju以上となると、実際には、室内210における冷媒Rの濃度C(センサ検出値Cd)が、許容上限判定値Cju以上となっており、火炎の伝播が生じ得る危険性があるにもかかわらず、漏洩状態判定部115は、センサ検出値Cdが補正判定値Cjc以下であるために、冷媒Rの漏洩を判定しない誤判定を行う可能性があるので、安全性を考慮し、補正判定値Cjcは、許容上限判定値Cju未満の範囲で設定される。
【0030】
この結果、制御装置110では、経年劣化によるセンサ検出値Cdの上昇変動に応じて、初期判定値Cjoを上げる補正が行われるので、冷媒Rの漏洩がない場合には、センサ検出値Cdは、所定時間Ta経過後も補正判定値Cjc以上となることはなく、冷媒Rの漏洩を適切に判定することができる。
【0031】
一方、冷媒検出センサ30の経年劣化(冷媒Rとの接触部分の詰まり)などにより、センサ検出値Cdが経時的に減少変動することがあり、この場合、制御装置110では、実際には冷媒Rが漏洩しているにも関わらず、漏洩していないと判定する検出遅れを生じてしまうことがある。そのため、センサ検出値Cdが経時的に減少変動する場合にも、判定値を適切に補正する必要がある。次に、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが経時的に減少変動する場合の判定値の補正方法を説明する。
【0032】
図4は、判定値補正部114による初期判定値Cjoの補正方法を説明する図である。
図4では、横軸を時間(T)、縦軸を冷媒検出センサ30で検出した冷媒濃度CVol(%)とした場合の、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが、経時的に減少変動する場合を示している。
【0033】
図4に示すように、制御装置110では、濃度判定値算出部113により、室内210の設計情報などに基づいて、許容上限判定値Cjuと、初期判定値Cjoとが算出及び設定されている。実施の形態では、許容上限判定値Cjuとして、ISO817で規定されたR32(A2L)の1/4LFLよりも小さい値が設定され、初期判定値Cjoとして、1/8LFLの値が設定されている。
【0034】
制御装置110では、濃度算出部112により、冷媒検出センサ30で検出された室内210における冷媒Rの濃度C(センサ検出値Cd)が一定周期毎に算出されている。実施の形態では、センサ検出値Cdは、冷媒検出センサ30の経年劣化により、経時的に減少変動している。そのため、センサ検出値Cdの所定期間における平均値CdAは、右肩下がりの傾きを有する直線で表すことができる(
図4参照)。
【0035】
ここで、センサ検出値Cdは、経時的に減少変動するので、所定時間Taが経過した後には、初期判定値Cjoとの差が大きくなる結果、実際には冷媒Rが漏洩しているにも関わらず漏洩が発生していないと誤判定されてしまう可能性がある。そのため、本発明では、判定値補正部114は、所定時間Taが経過した後において、記憶装置11に記憶された過去の所定期間でのセンサ検出値Cdの平均値CdAを、初期判定値Cjoから減算する補正を行うことで補正判定値Cjcを算出及び設定する(
図4の矢印参照)。
【0036】
この結果、制御装置110では、経年劣化によるセンサ検出値Cdの減少変動に応じて、初期判定値Cjoを下げる補正が行われるので、冷媒Rの漏洩がある場合には、センサ検出値Cdが補正判定値Cjc以上となり、冷媒Rの漏洩を適切に検出することができる。
【0037】
ここで、冷媒検出センサ30は、微燃性冷媒(例えば、R32)だけでなく、他のガス類や薬剤に反応してしまうことがある。例えば、冷媒検出センサ30が美容院の室内などに設置された場合、美容院で使用されるヘアスプレーガスなどに反応してしまうことがある。この場合、漏洩状態判定部115は、美容室内でヘアスプレーが使用された結果、センサ検出値Cdが、一時的に初期判定値Cjo以上となった場合、冷媒Rが漏洩していないにも関わらず、冷媒Rの漏洩と誤判定してしまうことがある。そのため、センサ検出値Cdが一時的に増加した場合にも、判定値を適切に補正することが必要となる。次に、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが一時的に増加する場合の判定値の補正方法を説明する。
【0038】
図5は、判定値補正部114による初期判定値Cjoの補正方法を説明する図である。
図5では、横軸を時間(T)、縦軸を冷媒検出センサ30で検出した冷媒濃度CVol(%)とした場合の、冷媒検出センサ30の検出値Cdが、一時的に増加した場合を示している。
【0039】
図5に示すように、制御装置110では、濃度判定値算出部113により、室内210の設計条件などに基づいて、許容上限判定値Cjuと、初期判定値Cjoとが算出及び設定されている。実施の形態では、許容上限判定値Cjuとして、ISO817で規定されたR32(A2L)の1/4LFLよりも小さい値が設定され、初期判定値Cjoとして、1/8LFLの値が設定されている。
【0040】
また、濃度判定値算出部113により、初期判定値Cjoよりも低い値の第1判定値Cjo1と、この第1判定値Cjo1よりも低い値の第2判定値Cjo2とを算出及び設定されている。第1判定値Cjo1は、冷媒検出センサ30が、冷媒Rとは異なる他のガス(例えば、ヘアスプレーガス)や薬剤などを検出した場合に、冷媒検出センサ30から出力されるセンサ検出値Cdの値が設定されている。また、第2判定値Cjo2は、冷媒検出センサ30が、他のガスや薬剤の検出しなくなった場合に、冷媒検出センサ30から出力されるセンサ検出値Cdの値が設定されている。これにより、制御装置110では、センサ検出値Cdが、所定時間T(例えば、T1、T2、T3)、第1判定値Cjo1以上となり、その後、第2判定値Cjo2以下となった場合、センサ検出値Cdは、冷媒Rの漏洩以外の他のガスの検出により、一時的に増加したと判断できる。
【0041】
制御装置110では、濃度算出部112により、冷媒検出センサ30で検出された室内210における冷媒Rの濃度C(センサ検出値Cd)が一定周期毎に算出されている。実施の形態では、センサ検出値Cdは、冷媒検出センサ30の経年劣化により、経時的に徐々に上昇変動していると共に、一時的に増加する期間(例えば、ヘアスプレーガスを3回使用)がある場合が示されている。そのため、センサ検出値Cdは、経時的な上昇変動及びヘアスプレーガスの使用による一時的な増加のため、所定時間Ta経過後に、初期判定値Cjo以上となり、冷媒Rが漏洩していないにもかかわらず、冷媒Rの漏洩が発生していると誤検出されてしまう可能性がある。
【0042】
本発明では、センサ検出値Cdが一時的に増加する場合、所定時間経過後に、一時的に増加したセンサ検出値Cdを、初期判定値Cjoに加算する補正を行うことで補正判定値Cjcを算出及び設定し、センサ検出値Cdの一時的な増加による冷媒R漏洩の誤検出を防止している。
【0043】
実施の形態では、センサ検出値Cdは、ヘアスプレーガスの使用に起因して、複数回(例えば、3回)、一時的に増加している。判定値補正部114は、1回目に増加したセンサ検出値Cdの平均値CdAからの偏差ΔCd1、2回目に増加したセンサ検出値Cdの平均値CdAからの偏差ΔCd2、3回目に増加したセンサ検出値Cdの平均値CdAからの偏差ΔCd3が初期判定値Cjoよりも小さい第1判定値Cjo1以上となる期間(例えば、T1、T2、T3)が、予め設定された閾値期間Tth未満で、その後、第1判定値Cjo1よりも小さい第2判定値Cjo2以下となるか否かを判定する。
【0044】
判定値補正部114は、センサ検出値Cdの平均値CdAからの偏差ΔCd1〜ΔCd3が第1判定値Cjo1以上となる期間(例えば、T1、T2、T3)が、予め設定された閾値期間Tth未満で、その後、第1判定値Cjo1よりも小さい第2判定値Cjo2以下となる場合、当該センサ検出値Cdの増加は、例えば、美容室などの室内で、一時的に使用されたヘアスプレーガスなどを検知したことによる一時的な増加であると判定する。一方、判定値補正部114は、センサ検出値Cdの平均値CdAからの偏差ΔCd1〜ΔCd3が第1判定値Cjo1以上となる期間(例えば、T1、T2、T3)が、予め設定された閾値期間Tth以上、又は、第1判定値Cjo1よりも小さい第2判定値Cjo2以下とならない場合、当該センサ検出値Cdの増加は、冷媒検出センサ30の経年劣化などによる経時的な上昇変動であると判定する。
【0045】
なお、センサ検出値Cdは、冷媒検出センサ30の経年劣化などによる経時的な上昇変動も加わり、センサ検出値Cdの所定時間Ta経過後の3回目の一時的な増加(ΔCd3)により、センサ検出値Cdが、初期判定値Cjo以上となり、冷媒Rの漏洩がないにも関わらず、冷媒Rの漏洩があると誤判定されてしまう。
【0046】
そのため、判定値補正部114は、ヘアスプレーガスなどの影響による一時的な増加と判定したセンサ検出値Cdの平均値CdAからの偏差ΔCd1、ΔCd2を、検出後の所定時間経過後に、それぞれ初期判定値Cjoに加算する補正を行うことにより補正判定値Cjcを算出及び設定している。実施の形態では、1回目の一時的なセンサ検出値Cdの平均値CdAからの偏差ΔCd1を、初期判定値Cjoに加算して補正判定値Cjcを算出及び設定し、2回目の一時的なセンサ検出値Cdの平均値CdAからの偏差ΔCd2を、初期判定値Cjoに加算して補正判定値Cjcを算出及び設定する。なお、補正判定値Cjcが、許容上限判定値Cju以上となると、火炎の伝播が起こりうる冷媒濃度の正確な判定が不可能となってしまうので、補正判定値Cjcは、許容上限判定値Cju未満となる範囲で設定する。
【0047】
この結果、漏洩状態判定部115では、所定時間Taを経過したと判定した後も、冷媒Rの漏洩とは異なるセンサ検出値Cdの一時的な増加によっては、補正判定値Cjc以上となることはなく、冷媒Rの漏洩がないにも関わらず、冷媒Rの漏洩が発生したと誤判定してしまうことを防止することができる。
【0048】
[空気調和機の制御方法]
次に、前述した制御装置110による空気調和機1の制御方法を説明する。
【0049】
図6は、制御装置110による空気調和機1の制御方法を説明するフローチャートである。
【0050】
ステップS101において、濃度判定値算出部113は、許容上限判定値Cju(例えば、燃焼限界LFLの1/4よりも小さい値)と、初期判定値Cjo(例えば、1/8LFL)と、第1判定値Cjo1と、第2判定値Cjo2とを算出及び設定する。
【0051】
ステップS102において、濃度算出部112は、冷媒検出センサ30の出力信号に基づいて、室内210における冷媒Rの濃度C(センサ検出値Cd)を算出すると共に、過去の所定期間に算出した複数のセンサ検出値Cdを記憶装置11に記憶する。
【0052】
ステップS103において、濃度算出部112は、記憶装置11に記憶された過去の所定期間における複数のセンサ検出値Cdの平均値CdAを算出する。
【0053】
ステップS104において、判定値補正部114は、センサ検出値Cdの平均値CdAからの偏差ΔCd(=CdA−Cd)を算出する
【0054】
ステップS105において、判定値補正部114は、偏差ΔCd(例えば、
図5に示す偏差ΔCd1、ΔCd2、ΔCd3)が、第1判定値Cjo1以上となる期間(例えば、
図5に示す期間T1、T2、T3)が閾値期間Tth未満で、その後、第1判定値Cjo1よりも小さい第2判定値Cjo2以下となるか否かを判定する。判定値補正部114は、偏差ΔCdが、前述した条件を満たす場合(ステップS105:Yes)、ステップS106に進み、偏差ΔCdが、前述した条件を満たさない場合(ステップS105:No)、ステップS107に進む。つまり、判定値補正部114は、偏差ΔCd1〜ΔCd3が、前述した条件を満たす場合、冷媒検出センサ30がヘアスプレーガスなどに反応して、センサ検出値Cdが一時的に増加したと判定する。
【0055】
ステップS106において、判定値補正部114は、所定時間経過後に、初期判定値Cjoに、ステップS105で算出した偏差ΔCd1〜ΔCd3を加算して、補正判定値Cjcを算出及び設定する。
【0056】
ステップS107において、制御装置110は、冷媒検出センサ30に電源投入後から所定時間Taを経過したか否かを判定する。制御装置110は、所定時間Taを経過していないと判定した場合(ステップS107:No)、ステップS108に進み、所定時間Taを経過したと判定した場合(ステップS107:Yes)、ステップS112に進む。つまり、制御装置110は、例えば、所定時間Taを数カ月単位(例えば、6カ月)に設定することで、所定時間Taを経過している場合には、センサ検出値Cdの長期変動(前述した、経時的な上昇変動又は減少変動)による初期判定値Cjoの補正を行うか否かを判定するタイミングであるので、次に、長期変動に起因する初期判定値Cjoの補正を実際に行う必要があるか否かの処理に進む。また、制御装置110は、所定時間Taを経過していない場合、センサ検出値Cdの長期変動による初期判定値Cjoの補正を行うか否かを判定するタイミングでないので、センサ検出値Cdの一時的な増加に対する補正処理を行う。
【0057】
ステップS108において、漏洩状態判定部115は、ステップS102で算出したセンサ検出値Cdが、補正判定値Cjc以上となる時間が、所定の閾値期間Tth以上継続しているか否かを判定し、継続していると判定した場合(ステップS108:Yes)、ステップS109に進み、継続していないと判定した場合(ステップS108:No)、ステップS102に戻って、現時刻でのセンサ検出値Cd(室内210における冷媒Rの濃度C)を算出する。
【0058】
ステップS109において、漏洩状態判定部115は、冷媒Rの漏洩が発生していると判定し、判定結果を、出力処理部116に送信する。
【0059】
ステップS110において、出力処理部116は、ディスプレイやスピーカなどの出力装置に対して、冷媒Rの漏洩を報知するための制御値を送信し、出力装置により、冷媒Rが漏洩しているという警報を報知する。
【0060】
ステップS111において、遮断弁50(51、52)の閉弁を行い、または換気装置230の駆動による室内210の空気の換気を行う。
【0061】
ここで、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30の電源投入後、所定時間Taを経過していると判定した場合(ステップS107:Yes)、ステップS112において、センサ検出値Cdの平均値CdAが、経時的に上昇変動するか否かを判定する。判定値補正部114は、センサ検出値Cdの平均値CdAが、経時的に上昇変動すると判定した場合(ステップS112:Yes)、ステップS113に進み、経時的に上昇変動しないと判定した場合(ステップS112:No)、ステップS114に進む。
【0062】
ステップS113において、判定値補正部114は、初期判定値Cdoにセンサ検出値Cdの平均値CdAを加算する補正を行うことで補正判定値Cjcを算出及び設定する。
【0063】
ステップS114において、判定値補正部114は、センサ検出値Cdの平均値CdAが、経時的に減少変動するか否かを判定する。判定値補正部114は、センサ検出値Cdの平均値CdAが、経時的に減少変動すると判定した場合(ステップS114:Yes)、ステップS115に進み、経時的に減少変動しないと判定した場合(ステップS114:No)、ステップS108に戻る。
【0064】
ステップS115において、判定値補正部114は、初期判定値Cdoからセンサ検出値Cdの平均値CdAを減算する補正を行うことで補正判定値Cjcを算出及び設定する。
【0065】
以上説明した通り、実施の形態では、
(1)室内機10と室外機20との間で熱交換用の冷媒Rを循環させるように構成された空気調和機1において、冷媒Rの漏洩を検出する冷媒検出センサ30と、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdに応じて、冷媒検出センサ30が冷媒Rの漏洩を検出する初期判定値Cjo(検出判定値)を補正する判定値補正部114と、を有する構成とした。
【0066】
また、室内機10と室外機20との間で熱交換用の冷媒Rを循環させる空気調和機1の制御方法において、冷媒Rの漏洩を検出する冷媒漏洩検出ステップ(
図6のステップS102)と、冷媒漏洩検出ステップで検出したセンサ検出値Cdに応じて、冷媒Rの漏洩を検出する初期判定値Cjoを補正する判定値補正ステップ(
図6のステップS106、S113、S115)、を有する構成とした。
【0067】
このように構成すると、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30の経年劣化などにより、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが変動しても、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdに応じて初期判定値Cjoを補正するので、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdの変動に影響されず、冷媒Rの漏洩を適切に検出することができる。
【0068】
(2)また、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが、時間の経過と共に上昇する場合、冷媒検出センサ30の初期判定値Cjoを、センサ検出値Cdに応じて上昇させる補正を行う構成とした。
【0069】
このように構成すると、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30の経年劣化などにより、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが長期的に上昇変動する場合でも、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdの上昇変動に応じて、初期判定値Cjoを上昇させる補正をするので、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdの長期的な上昇変動に影響されず、冷媒Rの漏洩を適切に検出することができる。
【0070】
(3)また、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが、時間の経過と共に低下する場合、冷媒検出センサ30の初期判定値Cjoを、センサ検出値Cdに応じて低下させる補正を行う構成とした。
【0071】
このように構成すると、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30の経年劣化などにより、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが長期的に減少上昇変動する場合でも、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdの減少変動に応じて、初期判定値Cjoを減少させる補正をするので、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdの長期的な現象変動に影響されず、冷媒Rの漏洩を適切に検出することができる。
【0072】
(4)また、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが、一時的に増加する場合、初期判定値Cjoを、センサ検出値Cdに応じて増加させる補正を行う構成とした。
(5)さらに、初期判定値Cjoよりも低い値の第1判定値Cjo1と、当該第1判定値Cjo1よりも低い値の第2判定値Cjo2とを算出する濃度判定値算出部113を有し、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが、濃度判定値算出部113で算出された第1判定値Cjo1以上となる期間が閾値期間Tth(第1判定期間)未満であると共に、その後、第2判定値Cjo2未満となる場合、センサ検出値Cdに応じて初期判定値Cjoを補正する構成とした。
【0073】
このように構成すると、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdが、長期変動とは異なる一時的な増加(例えば、ヘアスプレーガスの検出による一時的な増加)の場合でも、センサ検出値Cdの一時的な増加(ΔCd1、ΔCd2、ΔCd3)に応じて、初期判定値Cjoを一時的な増加(ΔCd1、ΔCd2、ΔCd3)分だけ上昇させる補正を行うことで、冷媒Rの漏洩を適切に検出することができる。
【0074】
(6)また、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30のセンサ検出値Cdの所定期間における平均値CdAに応じて、冷媒検出センサ30が冷媒Rの漏洩を検出する初期判定値Cjoを補正する構成とした。
【0075】
このように構成すると、判定値補正部114は、冷媒検出センサ30の平均値CdAに応じて、初期判定値Cjoを補正するので、冷媒Rの漏洩をより精度よく検出することができる。
【0076】
(7)また、濃度判定値算出部113と通信可能に設けられたリモコン40(操作装置)を有し、許容上限判定値Cju、冷媒検出センサ30が冷媒Rの漏洩を検出する初期判定値Cjoは、リモコン40により設定される構成とした。
【0077】
このように構成すると、遠隔操作可能なリモコン40を用いて、初期判定値Cjoを濃度判定値算出部113に設定することができ、判定値の設定を容易に行うことができる。
【0078】
また、本発明は、前述した実施の形態の全ての構成を備えているものに限定されるものではなく、前述した実施の形態の構成の一部を、他の実施の形態の構成に置き換えてもよく、また、前述した実施の形態の構成を、他の実施の形態の構成に置き換えてもよい。
【0079】
また、前述した実施の形態の一部の構成について、他の実施の形態の構成に追加、削除、置換をしてもよい。
【0080】
また、上記した実施の形態の構成、機能、処理、手段は、それの一部又は全部を、例えば、集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよい。また、前述した構成、機能は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムの実行により実現できるものであってもよい。
このプログラム等の情報は、メモリなどの記憶装置に記憶しておくことができる。