(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906683
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】地理的に分布した衛星アクセスノードにおけるシンチレーション緩和
(51)【国際特許分類】
H04B 7/185 20060101AFI20210708BHJP
B64G 3/00 20060101ALI20210708BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
H04B7/185
B64G3/00
B64G1/66 B
【請求項の数】41
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-505195(P2020-505195)
(86)(22)【出願日】2018年1月25日
(65)【公表番号】特表2020-529772(P2020-529772A)
(43)【公表日】2020年10月8日
(86)【国際出願番号】US2018015238
(87)【国際公開番号】WO2019027500
(87)【国際公開日】20190207
【審査請求日】2020年12月18日
(31)【優先権主張番号】62/539,933
(32)【優先日】2017年8月1日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513180451
【氏名又は名称】ヴィアサット,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViaSat,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ダンクバーグ、マーク
【審査官】
佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0247930(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0295639(US,A1)
【文献】
国際公開第2016/195813(WO,A2)
【文献】
特開2003−078464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/185
B64G 1/66
B64G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星アクセスノード(SAN)を備えるビーム形成衛星通信システムであって、
前記衛星アクセスノードは、
ループバック信号をベントパイプ型衛星に送信し、当該送信に応答して前記衛星から前記ループバック信号を受信し、前記衛星に往路アップリンクデータ信号を送信する送受信機サブシステムと、
位相追跡器サブシステムと、
前記送受信機サブシステム及び前記位相追跡器サブシステムに接続された信号調整サブシステムと、を備え、
前記位相追跡器サブシステムは、
位相基準信号を受信するための位相基準ポート、
前記衛星からの受信として前記ループバック信号を受信するために、前記送受信機サブシステムと接続されたループバックポート、及び
前記位相基準ポートで受信された前記位相基準信号と前記ループバックポートで受信された前記ループバック信号との間の、前記SANの位相追跡ループの目下の位相安定性を示す位相安定性信号を出力するための監視ポート、を有し、
前記信号調整サブシステムは、
往路信号を地上ネットワークから受信するための往路入力ポート、及び
前記往路アップリンクデータ信号を前記送受信機サブシステムに送信するための往路出力ポート、を有し、
前記往路信号から生成される前記往路アップリンクデータ信号は、前記往路アップリンクデータ信号の送信が、前記位相安定性信号において位相安定性が不足していることの検出に応答して阻止されるように、前記位相安定性信号に従って位相同期化方式で送信される、ビーム形成衛星通信システム。
【請求項2】
前記SANは、前記位相安定性信号を受信するために前記位相追跡器サブシステムに接続された位相誤差検出器を更に備え、
前記位相誤差検出器は、位相安定性の不足を検出することに応答して阻止信号を出力するトリガポートを有しており、
前記信号調整サブシステムは、前記阻止信号に応答して、前記往路アップリンクデータ信号の送信を自律的に停止させるための、前記トリガポートに接続された阻止器を更に備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記位相安定性信号は、前記位相追跡ループのロック状態の関数として前記位相追跡器サブシステムによって生成され、
位相安定性の不足は、前記ロック状態が前記位相追跡ループのロックが外れていることを示すことに応答して検出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記位相安定性信号は、前記位相追跡ループのループ追跡誤差分散を推定する関数として前記位相追跡器サブシステムによって生成され、
位相安定性の不足は、前記ループ追跡誤差分散が所定の許容差レベルの外にあることに応答して検出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記位相安定性信号は、前記位相追跡ループの位相誤差の関数として前記位相追跡器サブシステムによって生成され、
位相安定性の不足は、前記位相誤差が所定の許容差レベルの外にあることに応答して検出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記位相安定性信号は、前記位相追跡ループのループ追跡の質の関数として前記位相追跡器サブシステムによって生成され、
位相安定性の不足は、前記ループ追跡の質が所定の閾値未満であることに応答して検出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記信号調整サブシステムは、前記地上ネットワークからの阻止信号の受信に応答して、前記往路アップリンクデータ信号の送信を自律的に停止するための、前記地上ネットワークに接続された阻止器を更に備え、
前記阻止信号は、前記地上ネットワークによる前記位相安定性の不足の検出に応答して、前記地上ネットワークによって生成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記往路信号は、前記地上ネットワークが前記位相安定性の不足を検出したことに応答して、前記SANからの前記往路アップリンクデータ信号によるビーム形成への寄与を除去し、それによって、前記SANによる前記往路アップリンクデータ信号の送信を停止するために、動的に計算されたビーム形成加重値に従って前記地上ネットワークによって生成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記SANは、前記ビーム形成衛星通信システムの複数の地理的に分布したSANのうちの1つであり、
各SANは、前記複数の往路アップリンクデータ信号が相互位相同期化方式で送信され、前記衛星でコヒーレントに結合されるように、それぞれの位相追跡信号に従って位相同期化方式で送信される往路アップリンクデータ信号をそれぞれ生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記位相追跡器サブシステムは、前記位相基準信号及び前記ループバック信号を受信するためのPLL入力端を有する位相ロックループ(PLL)を更に含み、
位相安定性の不足は、前記PLLの出力が経時的に許容分散を外れるときに検出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記SANは、
前記衛星に送信される前記ループバック信号から前記位相基準信号を生成するための位相基準生成器を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記SANは、
前記衛星から前記送受信機サブシステムを介して受信された同期ビーコン信号から前記位相基準信号を生成するための位相基準生成器を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
複数のSANと通信可能に接続された前記地上ネットワークを更に備え、前記SANは、前記複数のSANのうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記SANと通信するベントパイプ型衛星を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
地上ネットワークノードを備えるビーム形成衛星通信システムであって、
前記地上ネットワークノードは、
SAN追跡器サブシステムと、
往路通信サブシステムと、を有し、
前記SAN追跡器サブシステムは、
複数のSANの各々から、前記SANのそれぞれの位相基準信号と、前記SANのそれぞれのループバック信号との間の、前記SANの位相追跡ループの目下の位相安定性に対応するそれぞれのSAN追跡信号を受信するための衛星アクセスノード(SAN)入力ポート、及び
前記少なくとも1つのSANが位相安定性の不足を目下、示していることを、前記SAN追跡信号に応じて検出したことに応答して、前記複数のSANのうちの少なくとも1つと関連付けられた阻止信号を送信するための追跡出力ポート、を有し、
前記往路通信サブシステムは、
前記阻止信号を受信するための、前記追跡出力ポートに接続された追跡入力ポート、及び
複数の往路信号出力ポート、を有し、
前記複数の往路信号出力ポートの各々は、複数のSANのうちの1つに、動的に計算されたビーム形成加重値及び阻止信号に従って生成されたそれぞれの往路信号を送信し、それにより、前記少なくとも1つのSANにより、前記それぞれの往路信号の送信が前記阻止信号に従って阻止される、ビーム形成衛星通信システム。
【請求項16】
各SAN追跡信号は、前記SANの目下の位相安定性を示すためにそれぞれのSANによって生成された位相安定性信号であり、
前記阻止信号は、前記SAN追跡器サブシステムにおいて、前記SANが、当該SANによって生成された前記位相安定性信号に従って、位相安定性の不足を示しているか否かを、各SANについて検出することによって生成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
各SANについての前記SAN追跡信号は阻止信号を含み、前記阻止信号は、前記SANが位相安定性の不足を示しているか否かを直接示すために前記SANによって生成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
各SANの目下の位相安定性は、前記SANの前記位相追跡ループのロック状態の関数であり、
前記少なくとも1つのSANは、前記ロック状態が前記位相追跡ループのロックが外れていることを示すときには、位相安定性の目下の不足を示す、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
各SANの目下の位相安定性は、前記位相追跡ループの推定ループ追跡誤差分散の関数であり、
前記少なくとも1つのSANは、前記推定ループ追跡誤差分散が所定の許容差レベルの外にあるときには、位相安定性の目下の不足を示す、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
各SANの目下の位相安定性は、前記位相追跡ループの位相誤差の関数であり、
前記少なくとも1つのSANは、前記位相誤差が所定の許容差レベルの外にあるときには、位相安定性の目下の不足を示す、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
各SANの目下の位相安定性は、前記位相追跡ループのループ追跡の質の関数であり、
前記少なくとも1つのSANは、前記ループ追跡の質が所定の閾値を下回るときには、位相安定性の目下の不足を示す、請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
前記ビーム形成加重値を動的に計算するためのビーム形成器を更に備え、
前記地上ネットワークノードは、前記ビーム形成器と通信し、前記阻止信号に従って前記少なくとも1つのSANを含む送信によるビーム形成の寄与を除去するように前記ビーム形成加重値の調整を前記ビーム形成器に指示し、これにより前記少なくとも1つのSANによる各往路信号の送信が前記阻止信号に従って阻止される、請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
前記往路通信サブシステムは、前記少なくとも1つのSANによる各往路信号の送信が前記阻止信号に従って阻止されるように、前記阻止信号を前記少なくとも1つのSANに更に送信する、請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
各々が前記往路通信サブシステムと通信し、前記往路信号を受信する複数のSANを更に備え、
各SANは、往路アップリンクデータ信号を衛星に通信するための送受信機サブシステムを備え、
前記往路アップリンクデータ信号は、相互位相同期化方式で前記複数のSANによって通信される前記往路信号から生成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項25】
複数の衛星アクセスノード(SAN)を有するビーム形成衛星通信システムでの同期誤差を管理するための方法であって、
前記衛星アクセスノード(SAN)は、往路アップリンクデータ信号を、各SANのそれぞれの位相追跡ループに基づいて、相互位相同期化方式で衛星に往路アップリンクデータ信号を送信するものであり、
前記往路アップリンクデータ信号は、動的に計算されたビーム形成加重値に従って生成されるものであり、前記方法は、
SANの各位相基準と、前記SANにより衛星に送信され、当該SANにより衛星から受信される各ループバック信号との間の、位相追跡ループの位相安定性を、各SANについて監視することと、
前記複数のSANのうちの少なくとも1つについて位相安定性の不足を検出することと、
前記検出に応答して、前記少なくとも1つのSANによる往路アップリンクデータ信号の送信を阻止することと、を含む方法。
【請求項26】
前記往路アップリンクデータ信号は、各SANによって位相同期化方式で前記SANに配設されたPLLの出力に従って送信され、かつ、前記PLLへの入力として、前記SANのそれぞれの位相基準及び前記SANにより前記衛星から受信される当該SANのそれぞれのループバック信号を含んでおり、
前記位相安定性を監視することは、時間窓にわたって前記PLLの出力を追跡することを含み、
前記位相安定性の不足を検出することは、前記時間窓にわたって前記出力が許容分散を外れることを検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記位相安定性を監視することは、前記位相追跡ループのロック状態を監視することを含み、
位相安定性の不足を検出することは、前記ロック状態が、前記位相追跡ループのロックが外れていることを示していることを検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記位相安定性を監視することは、前記位相追跡ループのループ追跡誤差分散を推定することを含み、
位相安定性の不足を検出することは、前記ループ追跡誤差分散が所定の許容差レベルの外にあることを検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記位相安定性を監視することは、前記位相追跡ループの位相誤差を監視することを含み、
位相安定性の不足を検出することは、前記位相誤差が所定の許容差レベルの外にあることを検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記位相安定性を監視することは、前記位相追跡ループのループ追跡の質を監視することを含み、
位相安定性の不足を検出することは、前記ループ追跡の質が所定の閾値を下回っていることを検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記検出することは、
前記ビーム形成衛星通信システムの地上ネットワークノードにより検出すること、
N個のSANの各々についてそれぞれの不足の大きさを検出すること、
及び前記N個のSANのうちのM個がそれぞれ最大の不足を有していると識別すること、を含み、M及びNは正の整数であり、MはN未満であり、
前記阻止することは、
前記地上ネットワークノードにより阻止すること、
及び前記M個のSANに、前記検出することに応答して往路アップリンクデータ信号の送信を停止するように指示することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記監視することは、各SANが当該各SANの位相安定性を監視することを含み、
前記検出することは、少なくとも1つのSANによる監視に応答して、前記少なくとも1つのSANが不足を検出することを含み、
前記阻止することは、前記検出することに応答して、前記少なくとも1つのSANが、当該少なくとも1つのSANの往路アップリンクデータ信号の送信を自動的に停止することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記監視することは、各SANが、当該各SANの位相安定性を示すそれぞれの監視データを出力することを含み、
前記検出することは、地上ネットワークノードにより、前記少なくとも1つのSANからの前記それぞれの監視データを受信することを含み、
前記阻止することは、前記地上ネットワークノードによる前記受信に応答して、前記地上ネットワークノードにより、前記少なくとも1つのSANに、当該少なくとも1つのSANの往路アップリンクデータ信号の送信を停止するように指示することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記監視することは、各SANが当該各SANの位相安定性を監視することを含み、
前記検出することは、少なくとも1つのSANによる監視に応答して、前記少なくとも1つのSANが不足を検出することと、前記SANが前記不足を示していることを検出することに応答して、前記少なくとも1つのSANが追跡誤差信号を生成することと、を含み、
前記阻止することは、地上ネットワークノードにより、前記追跡誤差信号を受信することと、前記受信することに応答して、前記地上ネットワークノードにより、前記少なくとも1つのSANに、当該少なくとも1つのSANの往路アップリンクデータ信号の送信を停止するように指示することと、を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記監視することは、各SANが、当該各SANの位相安定性を示すそれぞれの監視データを出力することを含み、
前記検出することは、地上ネットワークノードにより、前記少なくとも1つのSANから前記それぞれの監視データを受信することを含み、
前記ビーム形成加重値は、前記地上ネットワークノードと通信する地上ビーム形成器によって動的に計算され、
前記阻止することは、前記地上ビーム形成器に、少なくとも1つのSANが関与する送信によるビーム形成の寄与を除去するように前記ビーム形成加重値を調整するように指示することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記監視することは、前記複数のSANと通信する地上ネットワークノードにより行われ、
前記阻止することは、地上ネットワークノードによる前記監視に応答して、前記地上ネットワークノードにより、少なくとも1つのSANに、当該少なくとも1つのSANの往路アップリンクデータ信号の送信を停止するように指示することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記監視することは、複数のSANと通信する地上ネットワークノードにより行われ、
前記ビーム形成加重値は、前記地上ネットワークノードと通信する地上ビーム形成器によって動的に計算され、
前記阻止することは、前記地上ビーム形成器に、少なくとも1つのSANが関与する送信によるビーム形成の寄与を除去するように前記ビーム形成加重値を調整するように指示することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記阻止することの後に、前記監視することに従って、複数のSANのうちの少なくとも1つに関する位相安定性が十分に復帰したことを検出することと、
前記位相安定性への十分な復帰を検出することに応答して、前記少なくとも1つのSANによる往路アップリンクデータ信号の送信の阻止を中止することと、を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
各SANのそれぞれの位相基準は、前記衛星に送信される当該SANのループバック信号から導出される、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
各SANのそれぞれの位相基準は、前記衛星から当該SANによって受信される同期ビーコン信号から導出される、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
前記複数のSANは、位相マスターSANを含み、
前記複数のSANの各サブセットの位相基準は、前記位相マスターSANから、前記SANの各サブセットによって受信される同期信号から導出される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概して衛星通信に関し、より具体的には、地理的に分布したアクセスノードを有する衛星通信システムにおけるシンチレーション緩和に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムは、典型的には、衛星のビームによって照射されるカバレージ領域内に位置決めされたユーザ端末とゲートウェイ端子との間の接続を提供する衛星(又は複数の衛星)を含む。ゲートウェイ端末は、インターネット又は公衆交換電話網などの他のネットワークとのインターフェースを提供することができる。ますます増大するデータへの消費者の要求を引き続き満足させることは、よりスループットの高い、より堅牢な、かつより柔軟性の高い衛星通信システムを設計することを必要とする。例えば、ゲートウェイの停電、気象条件、経時的な需要の変化、及び他の条件は、利用可能な衛星リソースを、経時的な通信サービスの提供にどのように転換すべきかに影響を及ぼし得る。したがって、固定的な衛星設計(例えば、ビームを介したリソースの固定的割り当て、ゲートウェイとユーザビームとの間の固定的割り当て、衛星を通した固定信号経路など)は、利用可能なスペクトル及び他の衛星リソースの非効率性をもたらす傾向があり、又はそうでなければ、利用可能なスペクトル及び他の衛星リソースの最適な利用を妨げる傾向がある。いくつかの衛星通信システムは、衛星のカバレージ領域にわたって地理的に分布された複数の衛星アクセスノード(例えば、ゲートウェイ端末)を使用することによって、これらの検討事項のいくつかに対処しようとしている。しかしながら、そのような経時的な設計の信頼性は、シンチレーションなどの様々な大気条件の影響を受けやすくなる。
【発明の概要】
【0003】
とりわけ、地理的に分布したアクセスノードを有する衛星通信システムにおけるシンチレーション緩和のためのシステム及び方法が記載されている。いくつかの実施形態は、ユーザ及びゲートウェイカバレージ領域にスポットビームを照射するベントパイプ型衛星と関連して動作する。ビーム形成は、衛星を介してコヒーレントに結合した所望のスポットビームを形成する信号を生成するために、分散型アクセスノードによる協調した位相同期通信と共に使用することができる。シンチレーション及び/又は他の大気の異常は、アクセスノードでの位相同期の維持を妨げる。したがって、実施形態では、アクセスノードの位相追跡性能を監視することにより、アクセスノードのうちの少なくとも1つにおいて、位相安定性の不足が生じる状況を検出することができる。位相安定性の不足を検出することに応答して、実施形態では、少なくとも当該のアクセスノードによる往路アップリンクデータ信号の送信を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示は、添付の図面と併せて説明される。
【0005】
【
図1】様々な実施形態による、衛星通信システムの一実施形態のブロック図である。
【0006】
【
図2】様々な実施形態による、ゲートウェイアンテナ及び配信ネットワークと通信する例示的な衛星アクセスノード(SAN)を有する地上セグメントネットワーク環境の一部分のブロック図である。
【0007】
【
図3】様々な実施形態による、複数のSAN及びビーム形成器と通信する例示的な地上ネットワークノードを有する地上セグメントネットワーク環境の別の部分のブロック図である。
【0008】
【
図4】様々な実施形態による、ビーム形成衛星通信システムでの同期誤差を管理するための例示的な方法のフローチャートである。
【0009】
添付の図面では、類似の構成要素及び/又はフィーチャは、同じ参照ラベルを有することができる。更に、同じ種類の様々な構成要素は、類似の構成要素の中で区別する第2のラベルによる参照ラベルに従うことによって区別することができる。第1の参照ラベルのみが本明細書で使用される場合、説明は、第2の参照ラベルに関係なく、同じ第1の参照ラベルを有する類似の構成要素のうちのいずれか1つに適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、数多くの具体的な詳細が説明される。しかしながら、当業者であれば、本発明は、これらの具体的な詳細を伴わずに実施することができることを認識するべきである。いくつかの例では、回路、構造、及び技術は、本発明を不明瞭にすることを避けるために詳細に示されていない。
【0011】
まず
図1を参照すると、様々な実施形態に係る衛星通信システム100の一実施形態がブロック図に示されている。衛星通信システム100は、宇宙部分を介して複数のユーザ端末110と通信する地上セグメントネットワーク150を含む。宇宙部分は、ベントパイプ型静止(GEO)衛星などの1つ以上の衛星105を含むことができる。地上セグメントネットワーク150は、衛星105と通信する任意の好適な数の衛星アクセスノード(SAN)165(例えば、ゲートウェイ端末)を含むことができる。いくつかの実施形態では、衛星との通信は、20ギガヘルツを超える搬送波周波数によるものである。例えば、往路アップリンクデータ信号は、少なくとも25ギガヘルツの搬送波周波数を使用して衛星に送信することができる。
【0012】
本明細書で使用される用語「地上」は、一般的に、「宇宙」にないネットワークの部分を含む。例えば、地上ネットワークの端末は、モバイル航空機端末等を含むことができる。ユーザ端末110は、典型的には、衛星通信システム100の地上端末として実現されるが、それらは分かりやすくするために別々に論じられる。図示されていないが、各ユーザ端末110は、コンピュータ、ローカルエリアネットワーク(例えば、ハブ又はルータを含む)、インターネット機器、無線ネットワークなどの様々な顧客端末(CPE)に接続することができる。いくつかの実施態様では、ユーザ端末110は、固定及びモバイルのユーザ端末110を備える。
【0013】
地上セグメントネットワーク150では、SAN165はまた、配信ネットワーク175と通信することもできる。配信ネットワーク175は、一般に、ルーティングノード、コアノード、ネットワーク運営センター(NOC)、衛星及びゲートウェイ端末指揮センターなどの任意の好適な地上ネットワークノード170を含む。配信ネットワーク175の地上ネットワークノード170は、インターネット180又はIPネットワーク、イントラネット、広域ネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)、公衆交換電話網(PSTN)、公衆陸上モバイルネットワークなどの、1つ以上の追加のネットワークとの接続を提供することができる。ネットワークインフラストラクチャは、有線、無線、光学、又は他の種類のリンクのような様々なタイプの接続を含むことができる。ネットワークインフラストラクチャはまた、地上セグメントネットワーク150の構成要素(例えば、地上ネットワークノード170)を互いに、及び/又は他の地上セグメントネットワーク150と接続する(例えば、他の衛星と通信する)こともできる。
【0014】
衛星通信システム100のSAN165は、地理的に分布している。いくつかの実施形態では、分布したSAN165は、地上ビーム形成を可能にする。例えば、地上セグメントネットワーク150は、1つ以上の地上ネットワークノード170と通信する地上ネットワークノード170の1つとして、又は任意の他の好適なやり方で実現することができる、地上ビーム形成器172(例えば、往路チャネルビーム形成器及び/又は復路チャネルビーム形成器)を備えることができる。ビーム形成器172は、分布したSAN165と通信される信号に動的に重みを加えることができる。SAN165は、信号がコヒーレントに結合してユーザ及び/又はゲートウェイビームを形成するように、協調した位相同期化方式で、ビーム加重信号を衛星105と通信することができる。いくつかのこのような実施形態は、ゲートウェイツー衛星リンク、衛星ペイロード、及び衛星ツーユーザリンクのエンドツーエンド特性を考慮するビーム加重値を加えることによって、エンドツーエンドビーム形成を可能にすることができる。いくつかのエンドツーエンドビーム形成手法の例は、「エンドビーム形成システム及び衛星」と題されたPCT特許公開第WO/2016/195813号に記載されている。
【0015】
衛星通信システム100の動作中に、伝搬する電磁信号が辿る経路に沿って様々な異常が生じ得る。そのような異常は、それらの異常領域を通過する信号の位相及び/又は振幅の変動を引き起こすことがある。例えば、高周波信号(例えば、衛星信号)が、電子密度の小さな異常性を有する電離層の領域を通過するとき、信号は散乱及び屈折率の変動を経験し、これは、平面波の位相変化を引き起こし得る。同様に、(例えば、圧力/密度、温度、及び他の変動による)大気の屈折率の異常が生じ得る。シンチレーションは、太陽風の電子密度の変化により、惑星間を伝搬する電磁波においても発生し得る。伝搬経路に沿った異常から生じる位相及び/又は振幅の変動は、一般に「シンチレーション」と呼ばれる。このような1つの異常が、クラウド130として例示されている。このクラウドは、衛星105とSAN165nとの間で通信される信号の位相及び/又は振幅の変動を潜在的に引き起こすことがある。このような異常性は、SAN165のサブセットを含む通信にだけ影響する傾向があり、したがって比較的局所的になる傾向がある(例えば、図示されているように、クラウド130として示される大気の異常性は、SAN165nを含む通信にのみ影響するであろう)。
【0016】
1つ以上のSAN165から到来する通信は、本明細書では「往路」又は「往路リンク」通信と称され、1つ以上のSANに(例えば、ユーザ端末110から)向かう通信は、本明細書では「復路」又は「復路リンク」通信と称される。地上(例えば、SAN165及びユーザ端末110)から宇宙(例えば、衛星105)への通信は、本明細書では「アップリンク」通信と称され、宇宙から地上への通信は、本明細書では「ダウンリンク」通信と称される。SAN165は、1つ以上のゲートウェイアンテナ145を介した往路アップリンクチャネル172を介して衛星105へと通信することができ、かつ、1つ以上のゲートウェイアンテナ145を介した復路ダウンリンクチャネル174を介して衛星105から通信を受信することができる。ユーザ端末110は、ユーザアンテナ115を介した復路アップリンクチャネル178を介して衛星105へと通信することができ、かつ、それらのユーザアンテナ115を介した往路ダウンリンクチャネル176を介して衛星105から通信を受信することができる。一般に、シンチレーション及び他の同様の懸念事項は、地上と宇宙との間の任意の無線周波通信に影響を及ぼし得る。シンチレーションは、一般に、周波数が高ければ高いほど、より大きくなり、Ka帯域又はそれ以上(例えば、V帯域)で動作するシステムにとって特に懸念される。本明細書の説明は、SAN165と衛星105との間の通信、すなわち、往路アップリンクチャネル172及び/又は復路ダウンリンクチャネル174を伝搬する通信に関するそのような懸念事項の作用に焦点を当てている。
【0017】
ビーム形成衛星通信システム100のいくつかの実施形態は、分布したSAN165間の位相同期を維持することに依存する。本明細書に記載されているように、様々な位相追跡ループ及び他の同期技
術を使用して、信号が所望の位相関係で衛星105に到着することを確実にすることができる。例えば、SAN165間の相互位相同期は、アップリンク信号を衛星105でコヒーレントに結合することができる。しかしながら、このような技術は、シンチレーション又は他の環境条件が存在する場合、SAN165を介する位相コヒーレンスを維持することができないことがある。例えば、シンチレーションが過度に急速に、かつ/又は過度に大きい位相の変化を引き起こす場合は、位相追跡ループが位相ロックを維持することができないことがある。SAN165を介した位相コヒーレンスが欠如すると、衛星105では、もはや信号をコヒーレントに結合することができなくなり、それにより、衛星通信システム100によるビーム形成が劣化する。
【0018】
例えば、クラウド130として示される大気の異常は、SAN165nを含む通信に影響を及ぼす。このような事例では、SAN165により通信される特定の信号が、不正確な位相で衛星に到着する可能性が高く、その特定の信号は、衛星通信システム100のビーム形成プロセスに期待されるほどに寄与しない。本明細書に記載される実施形態では、位相安定性のこのような欠如を検出すると、その特定の信号の寄与をビーム形成から能動的に最小化又は排除することができる。例えば、本明細書に記載される技術は、SAN165nが衛星105と通信することを停止させる(例えば、そのSAN165nからのアップリンク信号の送信を止める)こと、影響を受けた信号のビーム加重を低減させる(例えばビーム加重を、より小さく、無視できるほどに若しくはゼロに)こと、及び/又は他のやり方でSAN165nの通信を阻止することができる。
【0019】
1つ以上の影響を受けたSAN165による通信を阻止するか否か、及びどのように阻止するかを判断することは、様々な考慮事項を含み得る。例えば、負に寄与する信号を除去することは、ビーム形成に対して正の影響を及ぼすことができるが、関与する分布したSAN165の数を格段に低減させることは、ビーム形成に対して負の影響を及ぼすことがある(例えば、地上ビーム形成技術は、関与する分布した地上端末が多数であればあるほど、より改善することができる)。したがって、特定のSAN165からの通信をいつ阻止するかを判断することは、大気の異常によって影響を受けた信号を除去することの利益が、ビーム形成に寄与するSAN165の数を低減することの不利益をいつ上回るかを判断することを伴うことになる。同様に、1つ以上の影響を受けたSANを含む通信を阻止することを判断した後、いくつかの実施形態では、望ましい場合には、これらのSAN165を含む通信を再開するために、様々な技術を使用することができる。このような一実現形態では、影響を受けたSAN165nによるアップリンク通信を阻止することは、所定の時間の間だけであり、それらの通信は、所定の時間が経過した後に自動的に再開が許容される(例えば、大気の異常が依然として存在する場合には、影響を受けたSAN165からの通信を再度阻止することができる)。別のこのような実現形態では、以前に影響を受けたSAN165が依然として大気の異常によって影響されているか否かを(例えば、定期的に)検出することができる。例えば、影響を受けたSAN165を含むアップリンク及び/又はダウンリンク通信は阻止されているが、影響されたSAN165は、依然としてループバック通信に携わることができ、このことから、このSANは、その位相安定性を大気の異常により影響されているかどうかを判断するための代理物として判断することができる。
【0020】
図2は、様々な実施形態による、ゲートウェイアンテナ145及び配信ネットワーク175と通信する例示的な衛星アクセスノード(SAN)165を有する部分的な地上セグメントネットワーク環境200のブロック図を示す。SAN165は、送受信機サブシステム230、位相追跡器サブシステム210、及び信号調整サブシステム250を備えることができる。送受信機サブシステム230の実施形態は、ゲートウェイアンテナ145と接続され、1つ以上の衛星との通信を行う。送受信機サブシステム230の実現形態では、例えば、1つ以上のユーザ端末に向かう往路リンクリンクトラフィック、及び/又はそれから到来する復路リンクトラフィックを通信することができる。図示のように、往路リンクトラフィックは、往路リンク信号送信機234を介して通信することができ、復路リンクトラフィックは、復路リンク信号受信機238を介して受信することができる。送受信機サブシステム230のいくつかの実現形態はまた、ループバック送信機232及びループバック受信機236も備える。いくつかの実現態様では、ループバック送信機232は、ループバック信号をベントパイプ型衛星に送信することができ、ループバック信号は、衛星により中継され得、リレーされたループバック信号は、ループバック受信機236を介してSAN165により受信され得る。いくつかの実現態様は、別個のループバック送信機232及びループバック受信機236を備えておらず、それどころか、ループバック信号は、往路リンク信号送信機234を使用して送信され、復路リンク信号受信機238を使用して受信される。例えば、ループバック信号は、ビーム形成された信号と同じ帯域幅で動作する擬似雑音(PN)変調信号であってよく、PN変調は、ビーコン信号がビーム形成された信号と干渉することを回避するスペクトル拡散処理を提供することができる。PN変調はまた、(例えば、SAN165の間のシンボル同期を提供するために)タイミング情報を提供することもできる。
【0021】
位相追跡器サブシステム210の実施形態では、位相基準とSAN165を含む衛星通信の位相との間で安定した追跡を維持しようとする位相追跡ループを実現する。いくつかの実施形態では、位相追跡器サブシステム210は、位相基準信号を受信するための位相基準ポート211と、衛星からSAN165により受信されるループバック信号を受信するための、トランシーバサブシステム230(例えば、ループバック受信機236)に接続されたループバックポート212と、位相追跡安定性信号を出力するための監視ポート213と、を備える。位相追跡安定性信号の実施形態では、位相基準ポート211で受信された位相基準信号と、ループバックポート212で受信されたループバック信号との間の追跡に従って、SAN165の追跡ループの目下の位相安定性を示す。
【0022】
位相基準信号は、様々な技術を使用して生成することができる。いくつかの実現形態では、位相基準情報は、衛星同期ビーコン信号から導出することができる。例えば、送受信機サブシステム230は、衛星のビーコン送信機から同期ビーコン信号を受信するビーコン受信機240を備えることができ、位相基準発生器215は、位相基準ポート211と接続することができる。一実現形態では、別個のビーコン受信機240は存在せず、同期ビーコン信号は、復路リンク信号受信機238により受信される(例えば、同期ビーコン信号は、受信復路リンクトラフィックから容易に解析されるように設計されている)。他の実現形態では、ビーコン受信機240は、別のSAN165(例えば、SAN165の一部又は全てについての位相マスターとして予め指定されたSAN)によるなどの別の地上ネットワーク構成部品により生成されたマスタービーコンを受信することができる。例えば、マスタービーコンは、マスターSAN165により衛星に送信され、衛星により1つ以上の他のSAN165にリレーされ、それぞれのビーコン受信機240を介して他のSAN165により受信され得る。
【0023】
位相追跡器サブシステム210の実施形態では、SAN165の衛星との通信と位相基準との間の位相安定性を維持しようとする。いくつかの実施態様では、SAN165は、SAN165の内部に位相同期データ216を生成する位相基準発生器215を備える。例えば、位相基準発生器215は、局所発振器などを備えることができる。位相追跡器サブシステム210の実施形態は、位相調整データ214を位相基準発生器215に通信して、例えば、位相同期データ216を調整し、それによって、ループバック送信機232により送信されるループバック信号の位相を調整して、ループバック受信機236により受信されリレーされたループバック信号を、ビーコン受信機240により受信される同期ビーコン信号と整合させることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、位相基準発生器215は、基準発生器215により出力される位相同期データ216の関数としてループバック信号を生成するループバック発生器220に接続される。ループバック発生器220の出力は、生成されたループバック信号を衛星に送信するために、ループバック送信機232に供給することができる。いくつかの実施形態では、タイミング同期データ222(例えば、SAN165通信の時間同期のために)を、ループバック発生器220により出力することができる。例えば、位相追跡器サブシステム210の実施形態では、タイミング調整データ218をループバック発生器220と通信して、タイミング同期データ222を調整し(例えば、ループバック送信機232により送信されるループバック信号のタイミングを調整し)、それによって、ループバック受信機236により受信されリレーされたループバック信号のタイミングを、ビーコン受信機240により受信されるビーコン信号のタイミングと整合するように調整することができる。
【0025】
信号調整サブシステム250は、実施形態では、送受信機サブシステム230及び位相追跡器サブシステム210と接続される。信号調整サブシステム250は、配信ネットワーク175の1つ以上の地上ネットワークノード170から往路リンクトラフィックを受信することができ、配信ネットワーク175の1つ以上の地上ネットワークノード170に復路リンクトラフィックを送信することができる。いくつかの実施形態では、信号調整サブシステム250は、動的に計算されたビーム形成加重値に従って生成された往路リンクデータ信号254を受信するために、(例えば、配信ネットワーク175の1つ以上のノードを介して)ビーム形成器に接続された往路入力ポート252を備える。
図1を参照して上述したように、SAN165は、地上ビーム形成を行うように相互位相同期化方式で動作する、複数の地理的に分布したSAN165のうちの1つとして実現することができる。したがって、信号調整サブシステム250の実施形態では、往路リンクデータ信号254が、相互位相同期化方式で送受信機サブシステム230により衛星に送信されるように、受信されビーム形成された往路リンクデータ信号254を送受信機サブシステム230に出力することができる。信号調整サブシステム250による相互位相同期化の実現は、位相追跡器サブシステム210により維持される位相安定性に基づくことができる。したがって、送受信機サブシステム230の実施形態では、位相同期データ216を(例えば、位相基準発生器215による出力として)受信することができ、信号調整サブシステム250は、位相同期データ216を使用して、相互に同期化された往路アップリンクデータ信号を生成することができる。いくつかの実施態様では、複数のSAN165は、更に、相互に時間同期化される。このような実現形態では、信号調整サブシステム250は、タイミング同期データ222を(例えば、ループバック発生器220による出力として)受信することができ、信号調整サブシステム250は、タイミング同期データ222を使用して、往路アップリンクデータ信号を相互に同期化させることができる。
【0026】
上記のように、シンチレーションの量がかなり多いと、位相追跡器サブシステム210の位相安定性を維持する能力を低下させるおそれがある。例えば、SAN165がGEO衛星と通信している場合、ループバック信号の送信と、リレーされたループバック信号の受信との間に、およそ1/4秒の往復遅延が存在する。このような遅延は、(例えば、シンチレーションで生じ得る)位相の高速変動を処理する能力を制限するおそれがあり、位相追跡ループの追跡帯域幅を外れる速度で生じる位相変動は、位相追跡ループにより除去されないことがある。このような場合、絶対位相誤差、及び時間平均化又はフィルタリングされた位相誤差が大きくなり得る。実施形態では、位相安定性の不足(すなわち、位相追跡器サブシステム210が、その往路アップリンクデータ信号の相互位相同期化のための十分な位相安定性を維持することができないこと)を検出することができ、これにより、その往路アップリンクデータ信号の送信を阻止することができる。図示されるように、SAN165の実施形態は、位相安定信号244を受信するための、位相追跡器サブシステム210に接続された位相誤差検出器245を備える。位相安定性信号244は、位相追跡器サブシステム210によって維持される追跡ループの目下の位相安定性(すなわち、位相基準ポート211で受信された位相基準信号と、ループバックポート212で受信されたループバック信号との間の位相安定性)を示す。位相誤差検出器245はまた、位相安定性信号244に従って位相安定性の不足を検出することに応答して、阻止信号246を出力するためのトリガポート247も備える。信号調整サブシステム250の実施形態では、阻止信号246に応答して、往路アップリンクデータ信号の送信を自動的に停止するための、トリガポート247に接続された阻止器255を備えることができる。
【0027】
位相安定性信号244は、位相追跡器サブシステム210により様々なやり方で生成することができる。いくつかの実施形態では、位相安定性信号244は、位相追跡ループのロック状態の関数として、位相追跡器サブシステム210により生成される。例えば、位相追跡器サブシステム210は、位相追跡ループを監視して、ループがロック状態にあるか又はロックから外れているかを検出することができ、ロック状態が位相追跡ループのロックが外れていることを示していることに応答して、位相安定性の不足が検出される。いくつかの実施形態では、位相追跡器サブシステム210は、位相基準信号及びリレーされたループバック信号をその入力として取り込む位相ロックループ(PLL)を備える。PLLは、PLLがロック状態にあるか否かを確実に示す出力を提供するように設計することができる。一実現形態では、PLLは、その位相安定性の関数である誤差電圧を出力する。これは、位相安定性が維持される場合(すなわち、PLLがロック状態にあるとき)、安定状態にある誤差電圧が生成されるように行われる。例えば、位相誤差検出器245は、誤差電圧が所定の大きさで安定状態から離れて変動したことを検出することに応答して、阻止信号246を生成することができる。
【0028】
他の実施形態では、位相安定信号244は、位相追跡ループにおいて測定された位相誤差(例えば、リレーされたループバック信号と位相基準信号との間の位相差)の関数として、位相追跡器サブシステム210により生成される。代替的に、実施形態では、位相追跡ループのループ追跡誤差分散を推定することができる。例えば、リレーされたループバック信号の位相が位相基準信号から変化する場合に、ループ追跡誤差(例えば、位相追跡器サブシステム210により生成される誤差電圧)を監視することができる、また、位相安定性信号244は、そのループ追跡誤差、又はそのループ追跡誤差の経時的な変動の尺度を示すことができる。所定の許容差レベル(例えば、誤差電圧マージン)を超える位相誤差又はループ追跡誤差分散が測定された場合、、位相安定性の不足を示すことができる。例えば、位相誤差検出器245は、測定された位相誤差又はループ追跡誤差分散が所定の許容差レベルを超えていることを検出することに応答して、阻止信号246を生成することができる。
【0029】
他の実施形態では、位相追跡器サブシステム210は、位相安定性信号244としてループ追跡の質の指標を出力するように設計されている。いくつかの実施態様では、位相誤差又はループ追跡誤差分散を測定することの当然の結果としてループ追跡の質を効率的に測定することができる。例えば、位相誤差又はループ追跡誤差分散の増加は、ループ追跡の質の低下を示すことができる。したがって、このような実施形態では、ループ追跡の質が所定の閾値を下回っていることに応答して、位相安定性の不足を検出することができる。一実現形態では、比較器が、経時的な誤差電圧の周期的サンプルを閾値電圧レベルと比較し、比較器の出力端はカウンタ回路に接続されている。カウンタ回路は、サンプリングされた誤差電圧がサンプリング窓にわたって閾値電圧レベルを超える回数を集計して、集計値と所定の閾値最大値との間の差を出力する。例えば、集計値が大きくなると、差がより小さくなり、それによって、ループ追跡の質がより低いことを示す。このような実現形態では、位相誤差検出器245は、カウンタ出力が特定のレベルを下回ったことを検出することに応答して、阻止信号246を生成することができる。
【0030】
信号調整サブシステム250の様々な実施形態では、往路アップリンクデータ信号の通信を様々なやり方で阻止することができる。いくつかの実施形態では、阻止器255は、位相誤差検出器245から阻止信号246を受信し、往路アップリンクデータ信号の送信を自律的に停止する。いくつかのこのような実施形態は完全に自律的であり、ネットワークの残りの部分は、SAN165がその通信を阻止していることを知ることなく動作し続ける。例えば、ビーム形成器、又は地上ネットワークの他の構成要素は、SAN165が往路アップリンクデータ信号を送信することを中止したことを検出することができ、このSAN165に対する信号の生成を止めることができ、ビーム形成加重値を調整してビーム形成へのSAN165の寄与を低減又は除去することができ、かつ/又は、別のやり方で、検出に応答することができる。他のこのような実施形態では、信号調整サブシステム250(又はSAN165の任意の好適な構成要素)は、配信ネットワーク175のノードに、往路アップリンクデータ信号の通信が停止されていることを通知することができる。したがって、配信ネットワークは、SAN165に対する信号の生成を停止することができる。例えば、いくつかの実現形態では、影響を受けた信号を衛星アップリンクから除去することにより、十分なビーム形成利率を達成することができ、一方、他の実現形態では、影響を受けたSAN165をスケジューリング及びビーム形成計算から除去することにより、更なるビーム形成利率を達成することができる。
【0031】
他の実施形態では、このように阻止することは、配信ネットワーク175の1つ以上のノードからの、又は配信ネットワーク175と通信する1つ以上のノードからの関与を更に伴う。このような実施形態では、SAN165は、位相安定性信号244を、配信ネットワーク175にある地上ネットワークノード170に、又は配信ネットワーク175を介して地上ネットワークノード170に通信し、地上ネットワークノード170は、阻止の判断を行うことができる(例えば、地上ネットワークノード170は、位相安定性の不足があるか否かを、位相安定性信号244に従って判断することができる)。例えば、位相誤差検出器245は、各SAN165に実装するのではなく、地上ネットワークノード170に実装してもよい。いくつかのこのような実施形態では、SAN165(例えば、信号調整サブシステム250の阻止器255)は、配信ネットワーク175から阻止信号246を受信することができ、それに応答して、往路アップリンクデータ信号の送信を自律的に停止することができる。他のこのような実施形態では、位相安定性信号244は、位相安定性の不足を検出することに応答して、ビーム形成加重値を調整するために(ビーム形成器によって直接、又はビーム形成器に指示するための別の地上ネットワークノード170によって)使用される。例えば、ビーム形成器は、位相安定性の不足を検出することに応答して、SAN165からの、影響を受けた往路アップリンクデータ信号によるビーム形成の寄与を除去するために、ビーム形成加重値を動的に再計算することができる。同様に、ビーム形成器は、位相安定性の不足を検出することに応答して、SANからの、影響を受けた復路ダウンリンク信号によるビーム形成の寄与を除去するために、ビーム形成加重値を調整することができる。ビーム形成の寄与を除去することは、適用可能なビーム加重値をゼロに、又は実質的にゼロに低減することを含むことができ、例えば、特定のSANに対するゼロのビーム加重値は、その特定のSANによる往路アップリンクデータ信号の送信を有効に停止する。いくつかの代替的実現形態では、阻止信号246は、位相安定性信号244を通信する代わりに、又はそれに加えて、配信ネットワークと通信することができる。例えば、SAN165の位相誤差検出器245は、位相安定性の不足を検出することに応答して、阻止信号246を出力することができ、ビーム形成器は、阻止信号246を受信することができ、ビーム形成器は、SAN165による往路アップリンクデータ信号の送信を必要に応じて有効に停止するために、ビーム形成加重値を調整することができる。
【0032】
図3は、様々な実施形態による、複数のSAN165及びビーム形成器172と通信する例示的な地上ネットワークノード305(
図2の地上ネットワークノード170の一例)を有する別の部分的な地上セグメントネットワーク環境300のブロック図を示す。図示されていないが、地上ネットワークノード170は、複数のSAN165との接続を提供する配信ネットワーク175の一部であってよく、又は、地上ネットワークノード170は、このような配信ネットワーク175を介してSAN165と通信することができる。更に、ビーム形成器172は、別個の構成要素として示されているが、地上ネットワークノード170の一部として実装することもできる。地上セグメントネットワーク環境300は、
図1及び2を参照して上述した機能を実行するための追加の実施形態を可能にすることができる。
【0033】
図示のように、地上ネットワークノード170は、SAN追跡器サブシステム320及び通信システム310を備えることができる。SAN追跡器サブシステム320は、複数のSANそれぞれから、SAN165の各位相基準信号とSAN165の各ループバック信号との間の、SAN165の追跡ループの目下の位相安定性に対応する各SAN追跡信号315を受信するためのSAN入口ポート321を備えることができる。例えば、
図2を参照して説明したように、各SAN165は、そのSAN165の位相追跡器サブシステム210の目下の位相安定性を示す位相安定性信号244を出力することができ、各SAN追跡信号315は、それぞれの位相安定信号244に対応することができる。代替的に、SAN追跡信号315は、位相安定性信号244のうちの1つ以上から導出することができる(例えば、複数の位相安定性信号244から集計データを使用して、傾向、異常などを検出する)。SAN追跡信号315は、直接、又は通信システム310を介して受信することができる。
【0034】
SAN追跡器サブシステム320はまた、少なくとも1つのSAN165が、SAN追跡信号に従って位相安定性の不足を目下、示していることを検出することに応答して、SAN165のうちの少なくとも1つに関連付けられた阻止信号246を送信するための追跡出力ポート322を備えることもできる。阻止信号246は、
図2の位相誤差検出器245を参照して説明した技術を使用して、SAN追跡器サブシステム320により生成することができる。例えば、SAN追跡器サブシステム320は、SAN追跡信号315のうちの1つ以上が、対応するSAN165の位相追跡ループに関して、ロックの外れているロック状態、所定の許容差レベルの外にある推定ループ追跡誤差分散、所定の許容差レベルの外にある位相誤差、所定の閾値を下回るループ追跡の質など、を示していると判断することができる。いくつかの実施形態では、SAN追跡信号315のうちの1つ以上は、位相安定性の不足の判断が、各SAN165によって行われ、地上ネットワークノード170によっては行われないように、対応するSAN165の位相誤差検出器245により生成された阻止信号246を含むことができる。
【0035】
通信システム310の実施形態は、往路通信サブシステム330を備える。往路通信サブシステム330は、阻止信号246を受信するための、追跡出力ポート322に接続された追跡入力ポート332を備えることができる。往路通信サブシステム330はまた、各SAN165とそれぞれ往路信号を通信するための複数の往路信号出力ポート333を備えることもできる。上述のように、往路信号は、動的に計算されたビーム形成加重値(例えば、ビーム形成器172により適用される)に従って生成され、少なくとも1つのSAN165によるそれぞれの往路信号の送信は、阻止信号246に従って阻止される。いくつかの実施形態では、阻止することには、影響を受けたSAN165に阻止信号246を通信する往路通信サブシステム330が関与する。これにより、影響を受けたSAN165による各往路信号の送信が阻止信号
246に従って阻止される。例えば、各影響を受けたSAN165は、阻止信号246を受信し、その阻止器255は、その往路アップリンクデータ信号の送信を停止する。他の実施形態では、往路通信サブシステム330は、阻止信号246に従って、影響を受けたSAN165に往路信号を送信しないことを判断し、それにより、影響を受けたSAN165による信号の送信を効果的に停止する。他の実施形態では、地上ネットワークノード170は、阻止信号246に従って、影響を受けたSAN165が関与する送信によるビーム形成の寄与を除去するために、適切なビーム形成加重値を調整するようビーム形成器172に指示し、それによって、影響を受けたSAN165による往路信号の送信を効果的に阻止することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、地上ネットワークノード170は、複数のSAN165からの位相安定性情報を集計することにより、異なる又は追加の機能を果たすことができる。いくつかのこのような実施形態によれば、SAN追跡器サブシステム320は、SAN追跡信号315を使用して、SAN165についてのそれぞれの不足の大きさを判断することができる。各不足の大きさは、絶対的な大きさ、相対的な大きさ、又は他のSAN165のいくつか又は全てと比較した、1つのSAN165の相対的位相安定性に対する任意の好適な尺度とすることができる。例えば、SAN追跡器サブシステム320は、SAN165のN個(Nは、2を超える正の整数であり、地上ネットワークノード170と通信するSAN165の総数以下である)についてSAN追跡信号315を評価して、N個のSANのうちで最大の不足を有するM個(MはN未満の正の整数)を識別することができる。阻止信号246は、識別されたM個のSAN165による往路アップリンクデータ信号の通信を阻止するために生成することができる。
【0037】
図2及び3のいくつかの実施形態は、往路リンクトラフィック(例えば、往路アップリンクデータ信号)に焦点を当てて説明しているが、実施形態は、復路リンク方向で同様の技術を適用することができる。例えば、いくつかの地上ビーム形成アーキテクチャでは、復路リンクトラフィックは、SAN165によるダウンリンク信号として受信される。受信された復路リンクトラフィックを同期し、ビーム加重することにより、受信された信号を遡及的にかつ効率的にビーム形成することができる。いくつかの実施形態では、SAN165の信号調整サブシステム250(例えば、
図2に示す)は、位相調整データ216及び/又はタイミング調整データ222の関数として、受信信号の相互位相同期化及び/又は時間同期化を実行することができる。相互同期化信号は、配信ネットワーク175を介してビーム形成器172と(例えば、ビーム形成器172の復路ビーム形成サブシステムと)通信することができ、このサブシステムは、信号に復路ビーム加重値を加えて復路リンクビーム形成に遡及的に影響を及ぼすことができる。更に、上記の往路リンク実装について説明したのと同様の技術は、位相安定性の不足が検出されるときに、ビーム形成からの復路リンクトラフィックの寄与を阻止するために使用することができる。例えば、阻止することは、(例えば、特定のSAN165の信号調整サブシステム250が、受信した信号をビーム形成器172に引き渡さないことによって)明示的に、及び/又は(例えば、配信ネットワーク175を介して受信された後に、ビーム形成器172を使用して信号を重み付けし、ビーム形成への寄与を効率的に除去することによって)暗示的におこなうことができる。
【0038】
図4は、様々な実施形態による、ビーム形成衛星通信システムでの同期誤差を管理するための例示的な方法400のフローチャートを示す。方法400は、位相追跡に依存して、相互位相同期化方式で、往路アップリンクデータ信号を衛星(例えば、ベントパイプ型GEO衛星)に送信する複数のSANを有するビーム形成衛星通信システムに関連して動作する。この関連で、往路アップリンクデータ信号は、動的に計算されたビーム形成加重値に従って生成される。方法400の実施形態は、SANの各位相基準と、SANにより衛星に送信され、このSANにより衛星から受信される各ループバック信号との間の、位相追跡ループの位相安定性を、各SANについて監視することによって、ステージ404で始まる。
【0039】
実施形態は、ステージ408で、複数のSANのうちの少なくとも1つについて位相安定性の不足を検出することによって継続する。上述したように、ステージ404で監視すること及びステージ408で検出することは、様々なやり方で実行することができる。いくつかの実施形態では、ステージ404で監視することは、位相追跡ループのロック状態を監視することを含むことができ、ステージ408で検出することは、ロック状態が、位相追跡ループのロックが外れていることを示すことを検出することを含むことができる。他の実施形態では、ステージ404で監視することは、位相追跡ループのループ追跡誤差分散を推定することを含むことができ、ステージ408で検出することは、ループ追跡誤差分散が所定の許容差レベルの外にあることを検出することを含むことができる。更に他の実施形態では、ステージ404で監視することは、位相追跡ループの位相誤差を監視することを含むことができ、ステージ408で検出することは、位相誤差が所定の許容差レベルの外にあることを検出することを伴うことができる。他の実施形態では、ステージ404で監視することは、位相追跡ループのループ追跡の質を監視することを含むことができ、ステージ408で検出することは、ループ追跡の質が所定の閾値を下回っていることを検出することを含むことができる。
【0040】
実施形態は、ステージ412で、検出することに応答して、少なくとも1つのSANによる往路アップリンクデータ信号の送信を阻止することによって継続する。方法400の異なるステージは、SAN及び/又は地上ネットワークノードを使用して実行され、異なる実施形態を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、各SANは、ステージ404でその位相安定性を監視し、少なくとも1つのSANは、その監視することに応答して、ステージ408で不足を検出し、少なくとも1つのSANは、その往路アップリンクデータ信号を送信することを停止することにより、ステージ412で阻止することを自律的に実行する。他の実施形態では、各SANは、ステージ404でその位相安定性を監視し、かつ監視データを生成し、ステージ408で検出することは、SANからの監視データを受信することに応答して、地上ネットワークノードによって実行され、ステージ412で阻止することは、少なくとも1つの影響を受けたSANに、監視データを受信することに応答して、往路アップリンクデータ信号の送信を停止することを指示することを含む。いくつかのこのような実施形態では、SANにより出力される監視データは、それ自体の位相安定性の不足を検出することに応答して、SANにより生成される追跡エラー信号を含むことができ、ステージ412で阻止することは、追跡エラー信号に従って、少なくとも1つの影響を受けたいSANに指示することを含むことができる。いくつかの代替的実施形態では、各SANは、その位相安定性をステージ404で監視し、ステージ408での検出は、(例えば、受信した監視データから)SAN又は地上ネットワークノードのどちらかによって実行されるが、ステージ412での阻止は、少なくとも1つの影響を受けたSANが関与する送信によるビーム形成の寄与を除去するために、ビーム形成加重値を調整するように地上ビーム形成器に指示することを含む。更に他の実施形態では、ステージ404での監視は、地上ネットワークノードにより行うことができ、例えば、SANの各位相追跡ループから位相安定性を受信することにより行うことができる。このような実施形態では、ステージ412での阻止は、往路アップリンクデータ信号の送信の停止を、影響を受けた少なくとも1つのSANに指示すること、及び/又はビーム形成加重値を調整して、少なくとも1つのSANが関与する送信によるビーム形成の寄与を除去するようにビーム形成器に指示することを伴うことができる。
【0041】
いくつかの実施形態は、SANごとに方法400を実行するが、他の実施形態は、集合的な位相安定性情報を使用して、ネットワークレベルで方法400を実行することができる。例えば、ステージ408で検出することは、地上ネットワークノードが、N個のSANのそれぞれにつきそれぞれの不足の大きさを検出すること、及びN個のSANのうちのM個がそれぞれ最大の不足を有しているとして識別することを含むことができる。このような場合、ステージ412で阻止することは、地上ネットワークノードが、検出することに応答して、(例えば、それらのSANでの阻止器に指示することにより明示的に、及び/又は、適切なビーム形成加重値を調節することにより暗示的に)M個の識別されたSANによる往路アップリンクデータ信号の送信を停止せよと指示することを含むことができる。
【0042】
本明細書に開示される方法は、記載される方法を達成するための1つ以上の行動を含む。方法及び/又は行動は、特許請求の範囲から逸脱することなく互いに入れ換えることができる。換言すれば、具体的な行動の順序が指定されない限り、具体的な行動の順序及び/又は使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく修正することができる。
【0043】
上述のあるシステム構成要素の方法及び機能の様々な操作は、対応する機能を実行することができる任意の好適な手段によって実行することができる。これらの手段は、ハードウェアに全体的に又は部分的に実現することができる。したがって、これらは、ハードウェア内で適用可能な機能のサブセットを実行するように適合された1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)を備えることができる。代替的に、機能は、1つ以上の集積回路(IC)上の1つ以上の他の処理ユニット(又はコア)によって実行されてもよい。他の実施形態では、他の種類の集積回路(例えば、構造化/プラットフォームASIC、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び他の半カスタムIC)を使用することができ、これらはプログラミングすることができる。それぞれは、1つ以上の一般的又はアプリケーション固有のコントローラによって実行されるようにフォーマットされた、コンピュータ可読媒体内に具現化された命令で、全体的に又は部分的に実現されてもよい。
【0044】
本開示に関連して説明される方法又はアルゴリズム又は他の機能の工程は、ハードウェア内に直接、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール内に、又は2つの組み合わせで、具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、任意の形態の有形の記憶媒体内に存在することができる。使用することができる記憶媒体のいくつかの例としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、取り外し可能ディスク、などが挙げられる。記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み取り、記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサと接続することができる。代替的に、記憶媒体はプロセッサと一体であってもよい。
【0045】
ソフトウェアモジュールは、単一の命令、又は多くの命令であってよく、異なるプログラムの中で、複数の記憶媒体にわたって、いくつかの異なるコードセグメントにわたって分散されてよい。したがって、コンピュータプログラム製品は、本明細書に提示される操作を実行することができる。例えば、このようなコンピュータプログラム製品は、その上に有形に記憶された(及び/又は符号化された)命令を有するコンピュータ可読な有形媒体であってよく、命令は、本明細書に記載される操作を実行するための1つ以上のプロセッサによって実行可能である。コンピュータプログラム製品は、包装材料を含むことができる。ソフトウェア又は命令はまた、送信媒体を介して送信することができる。例えば、ソフトウェアは、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL)、又は赤外線、ラジオ、若しくはマイクロ波などの無線技術などの送信媒体を使用して、ウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信することができる。
【0046】
機能を実現するフィーチャはまた、機能の部分が異なる物理的位置に実現されるように分散されることを含む、様々な位置に物理的に位置決めすることもできる。本明細書で使用されるとき、「少なくとも1つの」が前置きされた項目のリストに使用される、「又は」は、例えば、「少なくとも1つのA、B、又はC」が、A又はB又はC又はAB又はAC又はBC又はABC(即ち、A及びB及びC)のリストを意味するように、離接的なリストを示す。更に、用語「例示的な」は、記載された実施例が他の実施例よりも好ましいか、又はより良好であることを意味するものではない。