(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906684
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】電動式ユーティリティビークル用の調整装置およびユーティリティビークルを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
B60G 17/016 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
B60G17/016
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-505252(P2020-505252)
(86)(22)【出願日】2018年7月18日
(65)【公表番号】特表2020-529351(P2020-529351A)
(43)【公表日】2020年10月8日
(86)【国際出願番号】EP2018069456
(87)【国際公開番号】WO2019025183
(87)【国際公開日】20190207
【審査請求日】2020年2月26日
(31)【優先権主張番号】102017213199.3
(32)【優先日】2017年7月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル チョントシュ
(72)【発明者】
【氏名】デーネシュ ヴァニィ
(72)【発明者】
【氏名】リハールド ブダフォキ
(72)【発明者】
【氏名】ゾルターン ノーグラーディ
(72)【発明者】
【氏名】メリンダ ハヨーシュ
【審査官】
佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−125204(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/179122(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/016
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前車軸(2)と、少なくとも2つの後車軸(3)と、前記後車軸(3)を駆動する少なくとも1つの電動モータと、前記電動モータに電流を供給するバッテリ(5)と、を有する電動式ユーティリティビークル(1)用の調整装置であって、
前記調整装置は、複数の前記後車軸(3)のうちの少なくとも1つの後車軸(3)の、車道(4)からのレベルを調整するように適合されており、
前記調整装置は、前記バッテリ(5)を充電するために前記電動モータが発電機として動作しかつ2つの前記後車軸(3)によって駆動される回生動作を識別するように適合されており、
前記調整装置は、識別した前記回生動作において、少なくとも1つの調整可能な前記後車軸(3)の前記レベルおよび前記後車軸(3)の負荷を調整するように適合されており、
前記調整装置は、それまで負荷がより弱く加わっていた方の後車軸(3)の負荷を増大させ、これにしたがい、同時に、それまで負荷がより強く加わっていた方の後車軸(3)の負荷が減少されるように適合されている、
調整装置。
【請求項2】
前記調整装置は、識別した前記回生動作において、少なくとも1つの調整可能な前記後車軸(3)の前記レベルが調整され、これによって2つの前記後車軸(3)に同じ負荷がそれぞれ加わるように適合されている、
請求項1記載の調整装置。
【請求項3】
前記調整装置は、さらに勾配センサを有し、前記調整装置は、前記勾配センサによって前記ユーティリティビークル(1)の下降走行が検出される場合に、前記回生動作を識別するように適合されている、
請求項1または2記載の調整装置。
【請求項4】
以下の条件、すなわち
a)前記勾配センサによって検出した、前記車道(4)の勾配が、あらかじめ設定された第1値と等しいかまたは前記第1値よりも大きい、
b)前記ユーティリティビークル(1)のアクセルペダルが操作されていない、かつ、
c)前記条件a)およびb)が、あらかじめ設定された時間またはそれよりも長く持続する、
という条件が満たされる場合に、前記回生動作を識別するように、前記調整装置が適合されている、
請求項3記載の調整装置。
【請求項5】
前車軸(2)と、少なくとも2つの後車軸(3)と、複数の前記後車軸(3)のうちの少なくとも1つの後車軸(3)の、車道(4)からのレベルを調整する調整装置と、前記後車軸(3)を駆動する少なくとも1つの電動モータと、前記電動モータに電流を供給するバッテリ(5)と、を有する電動式ユーティリティビークル(1)を動作させる方法であって、
前記バッテリ(5)を充電するために前記電動モータが発電機として動作しかつ2つの前記後車軸(3)によって駆動されるように、少なくとも1つの調整可能な前記後車軸(3)のレベルおよび前記後車軸(3)の負荷を調整し、
前記調整装置は、それまで負荷がより弱く加わっていた方の後車軸(3)の負荷を増大させ、これにしたがい、同時に、それまで負荷がより強く加わっていた方の後車軸(3)の負荷が減少されるように適合されている、
電動式ユーティリティビークル(1)を動作させる方法。
【請求項6】
2つの前記後車軸(3)に同じ負荷がそれぞれ加わるように、調整可能な前記後車軸(3)の前記レベルを調整する、
請求項5記載の電動式ユーティリティビークル(1)を動作させる方法。
【請求項7】
前記回生動作が終了した後、2つの前記後車軸(3)に異なる大きさの負荷が加わるように、調整可能な前記後車軸(3)の前記レベルを調整する、
請求項5または6記載の電動式ユーティリティビークル(1)を動作させる方法。
【請求項8】
前記ユーティリティビークル(1)の前記後車軸(3)は、空気ばね式軸であり、前記後車軸(3)の空気ばねベローズにおける圧力を検出する圧力センサにより、前記後車軸(3)に加わる前記負荷をそれぞれ検出し、検出した前記圧力を前記調整装置に送信する、
請求項5から7までのいずれか1項記載の、電動式ユーティリティビークル(1)を動作させる方法。
【請求項9】
2つの前記後車軸(3)が、対で配置されている、
請求項5から8までのいずれか1項記載の電動式ユーティリティビークル(1)を動作させる方法。
【請求項10】
請求項1から4までのいずれか1項記載の調整装置を有する電動式ユーティリティビークル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式ユーティリティビークル用の調整装置およびユーティリティビークルを動作させる方法に関する。電動式ユーティリティビークルは、前車軸と、少なくとも2つの後車軸と、後車軸を駆動する少なくとも1つの電動モータと、電動モータに電流を供給するバッテリと、を有し、調整装置は、複数の後車軸のうちの少なくとも1つの後車軸の、車道からのレベルを調整するように、適合されている。
【背景技術】
【0002】
図2には、前車軸2と、対で配置されている2つの後車軸3と、を有する、従来技術からのこのようなユーティリティビークルが示されている。後車軸3の間では、負荷分配が可能である。一般に、3つのタイプの負荷分配が使用される。第1負荷分配タイプは、固定の負荷分配を使用し、したがって例えば、複数の後車軸3のうちの1つが、常に駆動軸であるのに対し、他の後車軸3は常に非駆動軸である。第2負荷分配タイプは、可変式であり、ここではより大きな負荷が加わる軸が駆動軸として使用される。第3負荷分配タイプは、一時的な可変式であり、ここではトラクションを補助するために特定の時間において1つの軸が過負荷になる。
図2には、長さの異なる矢印により、異なる負荷が示されている。
【0003】
負荷分配は、複数の後車軸のうちの1つの後車軸の、車道に対するレベルを調整するレベル制御システムによって行われる。レベルと負荷とは、異なるパラメータである。このレベルは、2つの後車軸3に加わる負荷が、特定の期間にわたって実質的に等しくなるように、連続的に調整可能である。レベル制御システムは、特定のパラメータまたはEoL調整(End-of-Line)にしたがって、加わる負荷を確定する。加わる負荷は、例えばトラクションを補助するために運転者またはASR(Anti-Slip-Regulation)システムにより、これが変更されるまで維持される。レベル制御システムは、それぞれの後車軸に加わる負荷を全負荷の0%〜100%でそれぞれ調整可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、電動式ユーティリティビークルにおいて、後車軸のレベル制御を実現することである。この課題は、請求項1の特徴的構成を有する、電動式ユーティリティビークル用の調整装置によって、また請求項5の特徴的構成を有する、電動式ユーティリティビークルを動作させる方法によって解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に規定されている。
【0005】
本発明によれば、バッテリを充電するために電動モータが発電機として動作しかつ2つの後車軸によって駆動される回生動作を識別するように、調整装置が適合されており、また少なくとも1つの調整可能な後車軸のレベルおよび負荷を調整し、これによって回生が最適化されるように、調整装置が適合されている。有利には、2つの後車軸によって回生が最適化されるように、2つの後車軸においてタイヤの十分な転がり抵抗を調整する。好適には、2つの後車軸に、実質的に同じ負荷をそれぞれ加えることが可能である。本発明は、ユーティリティビークルが、1つの軸にそれぞれ取り付けられている複数の比較的小型の電動モータを有する場合に特に有利である。本発明により、すべての電動モータを回生に最適に関与させることが可能である。
【0006】
調整装置は、好適には、さらに勾配センサを有し、この勾配センサによってユーティリティビークルの下降走行が検出される場合に、回生動作を識別するように、調整装置が適合されている。さらに好ましくは、以下の条件、すなわち、a)勾配センサによって検出した、車道の勾配が、あらかじめ設定された第1値と等しいかまたは第1値よりも大きい、b)ユーティリティビークルのアクセルペダルが操作されていない、かつc)条件a)およびb)が、あらかじめ設定された時間またはそれよりも長く持続する、という条件が満たされる場合に、回生動作を識別するように、調整装置が適合されている。これにより、回生動作が、有利には確実に識別される。さらに、特に短い勾配区間において、調整装置による不必要な切り換えが回避される。
【0007】
本発明には、前車軸と、少なくとも2つの後車軸と、これらの後車軸のうちの少なくとも1つの後車軸の、車道からのレベルを調整する調整装置と、後車軸を駆動する少なくとも1つの電動モータと、電動モータに電流を供給するバッテリと、を有する電動式ユーティリティビークルを動作させる方法も含まれる。本発明による方法では、バッテリを充電するために電動モータが発電機として動作しかつ後車軸によって駆動される回生動作を最適化するように、調整可能な少なくとも1つの後車軸のレベルを調整する。有利には、2つの後車軸によって回生が最適化されるように、2つの後車軸において、タイヤの十分な転がり抵抗を調整する。好適には、2つの後車軸に実質的に同じ負荷がそれぞれ加わる。
【0008】
好適には、後車軸は、空気ばね式軸であり、後車軸の空気ばねベローズにおける圧力を検出する圧力センサにより、後車軸に加わる負荷を検出する。検出した圧力は、調整装置にフィードバックされる。これにより、後車軸に加わる負荷が、わずかなコストで正確に調整される。
【0009】
以下では、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例による、ユーティリティビークルおよびユーティリティビークルを動作させる方法を示す図である。
【
図2】従来技術のユーティリティビークルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には、時間的に連続する3つの図で、本発明の一実施例によるユーティリティビークルおよびユーティリティビークル1を動作させる方法が示されている。
【0012】
電動式ユーティリティビークル1は、前車軸2と、2つの後車軸3と、これらの後車軸3のうちの少なくとも1つの後車軸(例えば後ろ側の後車軸3)の、車道4からのレベルを調整する調整装置(図示せず)と、後車軸3を駆動する電動モータと、電動モータに電流を供給するバッテリ5と、を有する。図示した実施例では、軸2、3にそれぞれ取り付けられている複数の電動モータが設けられている。2つの後車軸3は、対で配置されており、これにより、これらの後車軸3が、車道4から同じレベルに調整されている場合、これらの後車軸3には実質的に同じ負荷が加わる。
【0013】
図1の左側の図には、平坦な車道4における通常動作が示されている。この場合、2つの後車軸3のうちの1つ、この実施例では前側の後車軸3が、主駆動軸として使用される。他方の後車軸3、この実施例では、後ろ側の後車軸3は、副駆動軸として使用される。この構成は、後ろ側の後車軸3の、車道4からのレベルが、前側の後車軸3の、車道4からのレベルに比べてより高くなっていることにより、調整装置(図示せず)によって生じる。後ろ側の後車軸3が、車道4から完全に持ち上がっている場合、この後車軸3は、無負荷軸として使用される。
図1に示した図において、異なる負荷は、長さの異なる矢印でそれぞれ示されている。
【0014】
図1の中央の図は、勾配における回生動作を示している。回生動作では、バッテリ5を充電するために電動モータは、発電機として動作しかつ複数の後車軸3によって駆動される。この際には、調整装置により、回生が最適化されるように、調整可能な後車軸3のレベルおよび負荷が調整される。例えば、それまで負荷がより弱く加わっていた方の後車軸3の負荷を増大させることができ、これにしたがい、同時に、それまで負荷がより強く加わっていた方の後車軸3の負荷が減少される。これにより、調整装置による回生が最適化されるように、これらの後車軸3の負荷比が調整される。好適には、調整装置は、2つの後車軸3に実質的にそれぞれ同じ負荷が加わるように、調整可能な後車軸3のレベルおよび負荷を調整することが可能である。これにより、2つの後車軸3には、実質的に、タイヤの同じ転がり抵抗が作用し、これにより、ただ1つの後車軸3だけでなく、2つの後車軸3により、回生が補助される。本発明は、ユーティリティビークル1が、1つの軸にそれぞれ取り付けられている複数の比較的小型の電動モータを有する場合に特に有利である。本発明により、すべての電動モータを、回生に最適に関与させることが可能である。
【0015】
図1の右側の図には、勾配における回生動作の後の、平坦な車道4における通常動作が再び示されている。ここでは、調整装置により、2つの後車軸3に異なる負荷が加わるように、調整可能な後車軸3のレベルが調整される。この場合、2つの後車軸3のうちの1つの後車軸3、この実施例ではここでも前側の後車軸3が、主駆動軸として使用される。他方の後車軸3、この実施例ではここでも後ろ側の後車軸3は、副駆動軸として、もしくは無負荷軸として使用可能である。
【0016】
図示した実施例において、勾配センサ(図示せず)により、
図1の中央の図に示したように、ユーティリティビークル1の下降走行が検出される場合に、調整装置は、回生動作を識別することが可能である。特に、調整装置は、以下の条件が満たされる場合に回生動作を識別可能である。すなわち、a)勾配センサによって検出した、車道4の勾配が、あらかじめ設定された第1値と等しいかまたはこの第1値よりも大きい、b)ユーティリティビークル1のアクセルペダル(図示せず)が操作されていない、かつc)条件a)およびb)が、あらかじめ設定された時間またはそれより長く持続する、という条件が満たされる場合に調整装置は、回生動作を識別可能である。これにより、有利には、回生動作が確実に識別される。さらに、特に短い勾配区間において、調整装置による不必要な切り換えが回避される。
【0017】
調整装置は、択一的には、この調整装置が外部の装置から回生信号を受け取ることにより、受動的に回生動作を識別可能である。この場合には、外部装置により、回生動作の能動的な識別が行われる。
【0018】
この実施例による方法では、ユーティリティビークル1の後車軸3は、空気ばね式軸であってよい。後車軸3に加わる負荷は、後車軸3の空気ばねベローズ(図示せず)における圧力を検出する圧力センサ(図示せず)によって検出可能であり、検出した圧力は、調整装置にフィードバックされる。これにより、少ないコストで正確に、後車軸3に加わる負荷を調整もしくは制御可能である。
【0019】
調整装置は、完全に電気的に動作する電動式ユーティリティビークルに、また電動モータに加えて、例えば内燃機関のような別の駆動部を有するハイブリッド車両に適している。
【符号の説明】
【0020】
1 電動式ユーティリティビークル
2 前車軸
3 後車軸
4 車道
5 バッテリ