(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可動式カバーが前記第1状態とされた場合に、前記識別子の周りの空間を、前記内部空間から隔てるように設けられ、前記内部空間から前記識別子に向けた異物の進入を防ぐ異物進入防止機構をさらに備える、請求項1または2に記載の工作機械。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における工作機械を備えた生産システムを模式的に示す上面図である。
図2は、
図1中の生産システムに用いられる搬送機構を示す斜視図である。
【0020】
図1および
図2を参照して、生産システムは、工作機械10と、材料ストッカ122および製品ストッカ121と、搬送機構120と、搬送機構120を制御するための制御装置140とを有する。
【0021】
材料ストッカ122は、
図1において工作機械10の左隣に配設され、当該工作機械10で加工される複数の材料(加工前ワーク)をストックする装置である。製品ストッカ121は、
図1において工作機械10の右隣に配設され、当該工作機械10で加工された複数の製品、または、半製品(加工済ワーク)をストックする装置である。
【0022】
搬送機構120は、工作機械10に対して搬送対象物としてワークを搬送する。搬送機構120は、無人搬送車135およびロボット125を有する。
【0023】
ロボット125は、無人搬送車135に搭載されている。ロボット125は、無人搬送車135の上面である載置面136に搭載されている。無人搬送車135には、オペレータが携帯可能な操作盤137が付設されている。操作盤137は、データの入出力を行なうための入出力部と、当該無人搬送車135およびロボット125を手動操作するための操作部と、画面表示可能なディスプレイとを有する。
【0024】
無人搬送車135は、工場内における自身の位置を認識可能なセンサ(たとえば、レーザ光を用いた距離計測センサ)を有する。無人搬送車135は、制御装置140による制御に基づいて、工作機械10、材料ストッカ122および製品ストッカ121が配設される領域を含む工場内を無軌道で走行するように構成されている。
【0025】
ロボット125は、第1アーム126、第2アーム127および第3アーム128を有する多関節型のロボットである。ロボット125は、エンドエフェクタとしてのハンド129をさらに有する。ハンド129は、第3アーム128の先端部に取り付けられている。搬送機構120(ロボット125)は、カメラ131をさらに有する。カメラ131は、ステレオカメラである。カメラ131は、取り付けバー130を介して、第3アーム128に取り付けられている。
【0026】
図3は、
図1中の工作機械を示す正面図である。
図3を参照して、工作機械10は、回転するワークに工具を接触させることによって、ワーク加工を行なう旋盤である。工作機械10は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Control)工作機械である。
【0027】
本明細書においては、工作機械10の左右方向(幅方向)に平行で、水平方向に延びる軸を「Z軸」といい、工作機械10の前後方向(奥行き方向)に平行で、水平方向に延びる軸を「Y軸」といい、鉛直方向に延びる軸を「X軸」という。
図3中における右方向を「+Z軸方向」といい、左方向を「−Z軸方向」という。
図3中における紙面の手前方向を「+Y軸方向」といい、奥方向を「−Y軸方向」という。
図3中における上方向を「+X軸方向」といい、下方向を「−X軸方向」という。
【0028】
なお、工作機械10の構造を説明する便宜上、上記のとおりX軸、Y軸およびZ軸を設定したが、これらは、旋盤で定義されるX軸、Y軸およびZ軸と必ずしも一致するものではない。
【0029】
工作機械10は、カバー体21を有する。カバー体21は、加工エリア200を区画形成するとともに、工作機械10の外観をなしている。加工エリア200は、ワークの加工が行なわれる空間であり、ワーク加工に伴う切屑、クーラントまたはミスト等の異物が加工エリア200の外側の外部空間260(後出の
図6等を参照)に漏出しないように密閉されている。
【0030】
加工エリア200には、Z軸に平行な回転中心軸210を中心にワークを回転させるためのワーク主軸41と、複数の工具を保持し、Z軸方向に平行な旋回中心軸230を中心に旋回可能なタレットタイプの刃物台12とが配置されている。加工エリア200には、ワークの回転中心を支持するための心押し台、または、Z軸方向においてワーク主軸41と対向して配置される対向ワーク主軸がさらに配置されてもよい。
【0031】
カバー体21には、開口部26が設けられている。開口部26は、加工エリア200を外部空間260に開放している。
【0032】
開口部26は、前方開口部27と、上方開口部28とを有する。前方開口部27は、加工エリア200を+Y軸方向に向けて開放している。作業者は、加工エリア200にアクセスする場合に、前方開口部27の開口面と対向する位置に立つ。上方開口部28は、加工エリア200の上方に配置されている。上方開口部28は、前方開口部27から連なっている。前方開口部27の上端部(+X軸方向における端部)は、上方開口部28の前端部(+Y軸方向における端部)に連なっている。上方開口部28は、加工エリア200を+X軸方向に向けて開放している。
【0033】
カバー体21は、第1正面カバー16および第2正面カバー14と、天井カバー19と、機内カバー51とを有する。第1正面カバー16、第2正面カバー14および天井カバー19は、工作機械10の外観をなしている。機内カバー51は、加工エリア200に設けられている。機内カバー51は、加工エリア200を区画形成している。
【0034】
第1正面カバー16および第2正面カバー14は、Z軸方向において、開口部26の両側にそれぞれ設けられている。第1正面カバー16の内側には、ワーク主軸41等が配置されている。第2正面カバー14には、操作パネル15が設けられている。操作パネル15は、作業者が工作機械10を操作する際に用いる各種のボタンおよびスイッチ、ならびに、工作機械10におけるワークの加工状態等を示す表示部などを含む。
【0035】
天井カバー19は、工作機械10の天井に配置されている。第1正面カバー16、第2正面カバー14および天井カバー19により、開口部26が画定されている。
【0036】
機内カバー51は、第1機内サイドカバー51sと、第2機内サイドカバー51tとを有する。
【0037】
第1機内サイドカバー51sおよび第2機内サイドカバー51tは、Z軸方向に直交する平板形状を有する。第1機内サイドカバー51sおよび第2機内サイドカバー51tは、Z軸方向において、互いに離れて対向している。第1機内サイドカバー51sは、−Z軸方向における加工エリア200の端部に設けられている。ワーク主軸41は、第1機内サイドカバー51sから+Z軸方向に突出するように設けられている。第2機内サイドカバー51tは、+Z軸方向における加工エリア200の端部に設けられている。
【0038】
カバー体21は、扉部31をさらに有する。扉部31は、開口部26に設けられている。
【0039】
扉部31は、開口部26を閉塞し、加工エリア200および外部空間260の間を隔てる第1状態(閉状態)と、加工エリア200を外部空間260に向けて開放する第2状態(開状態)との間で動作可能である。扉部31は、第1状態および第2状態の間においてスライド動作する。扉部31は、第1状態および第2状態の間において、水平方向にスライド動作する。扉部31は、第1状態および第2状態の間において、Z軸方向にスライド動作する。なお、
図3中には、第2状態とされた扉部31が示されている。
【0040】
扉部31は、工作機械10の外観をなしている。扉部31は、第1状態とされた場合に、機内カバー51とともに加工エリア200を区画形成している。扉部31は、第2状態とされた場合に、第1正面カバー16と重なって配置されている。
【0041】
扉部31は、前方扉部33と、上方扉部32とを有する。扉部31が第1状態とされた場合に、前方扉部33は、前方開口部27を閉塞し、上方扉部32は、上方開口部28を閉塞する。前方扉部33は、全体として、X軸−Z軸平面に平行な板形状を有する。前方扉部33には、透明窓34が設けられている。上方扉部32は、全体として、Y軸−Z軸平面に平行な板形状を有する。前方扉部33の上端部(+X軸方向における端部)と、上方扉部32の前端部(+Y軸方向における端部)とが繋がって、角部をなしている。
【0042】
典型的には、扉部31は、ピストンまたはモータ等のアクチュエータによってスライドされる自動扉である。
【0043】
図4は、識別子を示す正面図である。
図5は、ワーク搬送時にカメラにより撮像された識別子の画像の一例を示す図である。
図3から
図5を参照して、工作機械10は、識別子71をさらに有する。識別子71は、工作機械10に対して搬送機構120の位置決めを行なうためにカメラ131により撮像される。
【0044】
識別子71は、図形である。識別子71は、平面図形である。識別子71は、平面状のシートに描かれている。識別子71は、矩形形状を有する複数の画素が2次元に配列されたマトリクス構造を有するものであり、各画素が、白色または黒色で表示されている。
【0045】
識別子71は、加工エリア200内に設けられている。識別子71は、+Y軸方向を向いて設けられている。識別子71は、開口部26(前方開口部27)がなす開口面と対向して設けられている。識別子71は、扉部31のスライド方向(Z軸方向)と平行に配置されている。なお、工作機械10における識別子71の取り付け構造については、後で詳細に説明する。
【0046】
図6は、ワーク搬送時における工作機械を示す上面図である。
図7は、ワーク搬送時における工作機械を示す正面図である。
図8は、ワーク加工時における工作機械を示す上面図である。
図9は、ワーク加工時における工作機械を示す正面図である。
【0047】
図1から
図3、および、
図6から
図9を参照して、搬送機構120は、ハンド129によりワークを把持しつつ、第1アーム126、第2アーム127および第3アーム128のうちの少なくとも1つのアームを動作させることによって、ワークを外部空間260から加工エリア200内に搬入し、ワーク主軸41に装着したり、ワーク主軸41に装着されたワークを、加工エリア200内から外部空間260に搬出したりする。
【0048】
搬送機構120による工作機械10に対するワークの搬送時、扉部31は、加工エリア200を外部空間260に向けて開放する第2状態とされる。ワークは、開口部26を通じて、加工エリア200および外部空間260の間を搬送される。一方、刃物台12に保持された工具を用いて、ワーク主軸41に保持されたワークを加工するワーク加工時、扉部31は、加工エリア200および外部空間260の間を隔てる第1状態とされ、加工エリア200が密閉される。
【0049】
制御装置140は、予めのティーチング操作によって、無人搬送車135が工作機械10に対して所定位置に配置され、ロボット125が撮像姿勢にあるときに、識別子71をカメラ131により撮像して得られた画像を、基準画像として記憶している。
【0050】
カメラ131は、搬送機構120による工作機械10に対するワークの搬送時、無人搬送車135が工作機械10に対して所定位置に配置され、ロボット125が撮像姿勢にあるときに、識別子71を撮像する。カメラ131は、識別子71を撮影する時に外部空間260に配置されている。加工エリア200における識別子71の配置によっては、カメラ131は、識別子71を撮影する時に加工エリア200に配置されてもよい。
【0051】
制御装置140は、ワーク搬送時に得られた識別子71の画像(
図5に一例が示されている)と、ティーチング操作によって得られた識別子71の基準画像とに基づいて、ティーチング操作時の撮像姿勢と、ワーク搬送時の撮像姿勢との間の誤差量を推定し、推定された誤差量に基づいて、ロボット125の姿勢の補正量を算出する。制御装置140は、算出された補正量に基づいて、ロボット125の動作を制御する。
【0052】
図6中には、カメラ131による撮像範囲310が2点鎖線により示されている。撮像範囲310は、識別子71に加えて、ワーク主軸41を含むことが好ましい。この場合に、制御装置140は、撮像された識別子71およびワーク主軸41の画像に基づいて、識別子71を基準とするワーク主軸41(チャック)の座標を算出してもよい。これにより、ワーク主軸41に対してロボット125をより高精度に動作させることが可能となる。
【0053】
続いて、識別子71の取り付け構造について詳細に説明する。
図10は、加工エリア内における識別子の取り付け構造を示す斜視図である。
【0054】
図6から
図10を参照して、識別子71は、加工エリア200において扉部31および機内カバー51のいずれか一方により支持されている。本実施の形態では、識別子71が、機内カバー51により支持されている。
【0055】
工作機械10は、支持バー68と、プレート63とをさらに有する。支持バー68は、機内カバー51の第1機内サイドカバー51sに接続されている。支持バー68は、第1機内サイドカバー51sから+Z軸方向に延出し、90°曲がって、+Y軸方向に延びている。
【0056】
プレート63は、支持バー68の先端部に接続されている。プレート63は、平面部63aを有する。平面部63aは、平板形状を有する。平面部63aは、Y軸方向に交差する平面方向に延在している。平面部63aは、Y軸方向に直交する平面方向に延在している。平面部63aには、識別子71が付されている。識別子71は、支持バー68およびプレート63を介して、機内カバー51(第1機内サイドカバー51s)により支持されている。
【0057】
識別子71が平面部63aに付されることによって、平面図形である識別子71を平面状に保つことができる。これにより、工作機械10に対する搬送機構120の位置決めを適正に行なうことができる。
【0058】
識別子71は、X軸方向(上下方向)において、ワーク主軸41の回転中心軸210よりも下方に配置されている。識別子71は、X軸方向(上下方向)において、回転中心軸210と重なる高さに配置されてもよいし、回転中心軸210よりも上方に配置されてもよい。識別子71は、Y軸方向において、扉部31(前方扉部33)と、ワーク主軸41との間に配置されている。識別子71は、Z軸方向において、第2機内サイドカバー51tよりも第1機内サイドカバー51s寄りの位置に設けられている。
【0059】
図8および
図9に示されるように、扉部31が加工エリア200および外部空間260の間を隔てる第1状態とされた場合に、識別子71は、扉部31と対向して位置決めされている。識別子71は、Y軸方向において、扉部31と隙間を設けて対向している。
【0060】
図6および
図7に示されるように、扉部31が加工エリア200を外部空間260に向けて開放する第2状態とされた場合に、識別子71は、第1状態よりも扉部31から遠ざかって位置決めされている。識別子71は、Y軸方向において、扉部31と対向せず、開口部26(前方開口部27)がなす開口面と対向している。扉部31は、第2状態とされた場合に、識別子71よりも−Z軸方向にずれた位置までスライド動作する。
【0061】
このような構成によれば、
図8および
図9に示されるように、加工エリア200におけるワーク加工のため、扉部31が第1状態とされた場合に、識別子71が扉部31と対向して位置決めされることによって、ワーク加工に伴って加工エリア200で生じるクーラント、切屑またはミスト等の異物が識別子71を汚損することを抑制できる。この際、扉部31は、工作機械10に備わった既存の設備である。このため、識別子71の汚損を防ぐためのカバー体またはアクチュエータ等の特別の装置を設ける必要がなく、工作機械10を簡易な構成にできる。
【0062】
図6および
図7に示されるように、搬送機構120による工作機械10に対するワーク搬送のため、扉部31が第2状態とされた場合に、識別子71が第1状態よりも扉部31から遠ざかって位置決めされることによって、清浄に保たれた識別子71をカメラ131により撮像することができる。これにより、工作機械10に対する搬送機構120の位置決めを適正に行なうことができる。
【0063】
工作機械10は、異物進入防止機構としての庇部62およびシール部66をさらに有する。庇部62およびシール部66は、扉部31が第1状態とされた場合に、識別子71の周りの空間を加工エリア200から隔てるように設けられ、加工エリア200から識別子71に向けた異物の進入を防ぐ。
【0064】
庇部62は、識別子71を取り囲むように、プレート63の周縁部に沿って設けられている。庇部62は、プレート63から第1状態とされた扉部31に向かって延出している。庇部62は、プレート63から+Y軸方向に向けて延出している。
【0065】
なお、庇部62は、識別子71を上方および側方から囲む形状であってもよい。すなわち、庇部62は、
図10に示される底部62mを有しない構成であってもよい。
【0066】
シール部66は、ゴム等の弾性変形可能な材料から形成されている。シール部66は、プレート63から扉部31に向かって延出する庇部62の先端部に設けられている。シール部66は、第1状態とされた扉部31と接触している。
【0067】
このような構成によれば、庇部62およびシール部66により識別子71に向けた異物の進入を防ぐことによって、識別子71をより清浄に保つことができる。
【0068】
図11は、異物進入防止機構の変形例を示す加工エリア内の側面図である。
図11を参照して、本変形例では、工作機械10が、
図10中のシール部66に替わって、ラビリンス部材76およびラビリンス部材77を有する。
【0069】
ラビリンス部材76およびラビリンス部材77は、それぞれ、庇部62および扉部31に設けられている。ラビリンス部材76およびラビリンス部材77は、L字断面のアングルからなり、Z軸方向に延びている。ラビリンス部材76およびラビリンス部材77は、Y軸方向において互いに隙間を設けて対向して配置されることによって、ラビリンス構造を構成している。
【0070】
このような構成によれば、庇部62および扉部31の間に微小な隙間が生じる構成であっても、ラビリンス部材76およびラビリンス部材77がなすラビリンス構造によって、庇部62の上方から識別子71に向けた異物の進入を防ぐことができる。
【0071】
図8を参照して、工作機械10は、識別子71の周りの空間に空気を供給するための空気供給機構81を有してもよい。空気供給機構81は、コンプレッサ82と、エア配管83とを有する。エア配管83は、コンプレッサ82から延出し、支持バー68を通って、庇部62により囲まれた識別子71の周りの空間に連通している。加工エリア200におけるワーク加工のため、扉部31が第1状態とされた場合に、コンプレッサ82からの空気がエア配管83を通じて識別子71の周りの空間に供給される。
【0072】
このような構成によれば、識別子71の周りの空間の圧力を高めることによって、加工エリア200から識別子71に向けた異物の進入をさらに効果的に防ぐことができる。
【0073】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における工作機械10の構造をまとめると、本実施の形態における工作機械10は、カメラ131を有する搬送機構120を用いて、内部空間としての加工エリア200と、その外側の外部空間260との間で搬送対象物としてのワークを搬送する作業を行なう。
【0074】
工作機械10は、加工エリア200および外部空間260の間を隔てる第1状態と、加工エリア200を外部空間260に向けて開放する第2状態との間で動作可能な可動式カバーとしての扉部31と、加工エリア200に設けられる固定式カバーとしての機内カバー51と、加工エリア200において扉部31および機内カバー51のいずれか一方である第1カバーとしての機内カバー51により支持され、工作機械10に対して搬送機構120の位置決めを行なうためにカメラ131により撮像される識別子71とを備える。
【0075】
扉部31が第1状態とされた場合に、識別子71は、扉部31および機内カバー51のいずれか他方である第2カバーとしての扉部31と対向して位置決めされ、扉部31が第2状態とされた場合に、第1状態よりも扉部31から遠ざかって位置決めされる。
【0076】
このように構成された、この発明の実施の形態1における工作機械10によれば、識別子71を清浄に保つことにより、工作機械10に対する搬送機構120の位置決めを適正に行なうことができる。これにより、搬送機構120によりワーク主軸41に対してワークを搬送する作業を、安定かつ円滑に行なうことができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、搬送機構による搬送対象物がワークである場合を説明したが、これに限られず、搬送対象物は、工具、ワーク把持用のチャック爪または治具などであってもよい。搬送機構は、無人搬送車135およびロボット125を利用したものに限られず、たとえば、自動化されたフォーク機構であってもよい。
【0078】
本発明における工作機械は、旋盤に限られず、たとえば、立形マシニングセンタまたは横形マシニングセンタであってもよいし、固定工具を用いた旋削機能と、回転工具を用いたミーリング機能とを有する複合加工機であってもよいし、ワークの付加加工(AM(Additive manufacturing)加工)と、ワークの除去加工(SM(Subtractive manufacturing)加工)とが可能なAM/SMハイブリッド加工機であってもよい。
【0079】
(実施の形態2)
図12は、この発明の実施の形態2における工作機械(ワーク搬送時)を示す上面図である。
図13は、この発明の実施の形態2における工作機械(ワーク搬送時)を示す正面図である。
図14は、この発明の実施の形態2における工作機械(ワーク加工時)を示す上面図である。
図15は、この発明の実施の形態2における工作機械(ワーク加工時)を示す正面図である。
【0080】
本実施の形態における工作機械は、実施の形態1における工作機械10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0081】
図12から
図15を参照して、本実施の形態における工作機械は、Z軸に平行な回転中心軸220を中心にワークを回転させるための対向ワーク主軸42をさらに有する。対向ワーク主軸42は、Z軸方向において、ワーク主軸41と対向して設けられている。回転中心軸210と、回転中心軸220とは、一直線上に延びている。対向ワーク主軸42は、第2機内サイドカバー51tから−Z軸方向に突出するように設けられている。
【0082】
第2正面カバー14は、第1突出部14bを有する。第1突出部14bは、第2正面カバー14の一部であって、X軸−Z軸平面に平行な板形状を有する。第1突出部14bは、第2機内サイドカバー51tよりも−Z軸方向に突出するように設けられている。−Z軸方向における第1突出部14bの端部が、開口部26を確定している。第1突出部14bは、加工エリア200に設けられている。扉部31が第2状態とされた場合に、第1突出部14bは、機内カバー51および扉部31とともに、加工エリア200を区画形成している。
【0083】
扉部31は、第2突出部31bを有する。第2突出部31bは、前方扉部33の一部である。第2突出部31bは、上方扉部32の一部であってもよい。扉部31が第2状態とされた場合に、第2突出部31bは、第1機内サイドカバー51sよりも+Z軸方向に突出するように設けられている。
【0084】
工作機械は、識別子71として、識別子71Jおよび識別子71Kを有する。カメラ131は、搬送機構120によりワーク主軸41に対してワークを搬送する場合に、識別子71Jを撮像する。カメラ131は、搬送機構120により対向ワーク主軸42に対してワークを搬送する場合に、識別子71Kを撮像する。
【0085】
識別子71Jは、加工エリア200において扉部31により支持されている。識別子71Jは、支持バー68およびプレート63を介して、扉部31により支持されている。支持バー68は、扉部31の第2突出部31bに接続されている。識別子71Jは、加工エリア200において、実施の形態1における識別子71に対応する位置に設けられている。識別子71Jは、扉部31とともに、Z軸方向にスライド動作が可能なように設けられている。
【0086】
識別子71Kは、加工エリア200において第2正面カバー14の第1突出部14bにより支持されている。識別子71Kは、支持バー68およびプレート63を介して、第2正面カバー14の第1突出部14bにより支持されている。支持バー68は、第2正面カバー14の第1突出部14bに接続されている。
【0087】
識別子71Kは、X軸方向(上下方向)において、識別子71Jからずれた位置に設けられている。識別子71Kは、識別子71Jよりも上方に設けられている。識別子71Kは、Z軸方向において、第1機内サイドカバー51sよりも第2機内サイドカバー51t寄りの位置に設けられている。
【0088】
図14および
図15に示されるように、扉部31が加工エリア200および外部空間260の間を隔てる第1状態とされた場合に、識別子71Jは、第2正面カバー14の第1突出部14bと対向して位置決めされている。識別子71Jは、Y軸方向において、第2正面カバー14の第1突出部14bと隙間を設けて対向している。
【0089】
扉部31が加工エリア200および外部空間260の間を隔てる第1状態とされた場合に、識別子71Kは、扉部31と対向して位置決めされている。識別子71Kは、Y軸方向において、扉部31と隙間を設けて対向している。
【0090】
図12および
図13に示されるように、扉部31が加工エリア200を外部空間260に向けて開放する第2状態とされた場合に、識別子71Jは、第1状態よりも第2正面カバー14の第1突出部14bから遠ざかって位置決めされている。識別子71Jは、Y軸方向において、第2正面カバー14の第1突出部14bと対向せず、開口部26(前方開口部27)がなす開口面と対向している。
【0091】
扉部31が加工エリア200を外部空間260に向けて開放する第2状態とされた場合に、識別子71Kは、第1状態よりも扉部31から遠ざかって位置決めされている。識別子71Kは、Y軸方向において、扉部31と対向せず、開口部26(前方開口部27)がなす開口面と対向している。扉部31は、第2状態とされた場合に、識別子71Kよりも−Z軸方向にずれた位置までスライド動作する。
【0092】
以上に説明した、この発明の実施の形態2における工作機械の構造についてまとめると、本実施の形態における工作機械は、加工エリア200および外部空間260の間を隔てる第1状態と、加工エリア200を外部空間260に向けて開放する第2状態との間で動作可能な可動式カバーとしての扉部31と、加工エリア200に設けられる固定式カバーとしての第2正面カバー14の第1突出部14bと、加工エリア200において扉部31および第1突出部14bのいずれか一方である第1カバーとしての第1突出部14bにより支持され、工作機械に対して搬送機構120の位置決めを行なうためにカメラ131により撮像される識別子71Kとを備える。
【0093】
扉部31が第1状態とされた場合に、識別子71Kは、扉部31および第1突出部14bのいずれか他方である第2カバーとしての扉部31と対向して位置決めされ、扉部31が第2状態とされた場合に、第1状態よりも扉部31から遠ざかって位置決めされる。
【0094】
さらに本実施の形態における工作機械は、加工エリア200において扉部31および第1突出部14bのいずれか一方である第1カバーとしての扉部31により支持され、工作機械に対して搬送機構120の位置決めを行なうためにカメラ131により撮像される識別子71Jとを備える。
【0095】
扉部31が第1状態とされた場合に、識別子71Jは、扉部31および第1突出部14bのいずれか他方である第2カバーとしての第1突出部14bと対向して位置決めされ、扉部31が第2状態とされた場合に、第1状態よりも第1突出部14bから遠ざかって位置決めされる。
【0096】
このように構成された、この発明の実施の形態2における工作機械によれば、ワーク加工時に識別子71Jおよび識別子71Kを清浄に保つことによって、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0097】
(実施の形態3)
図16は、この発明の実施の形態3における工作機械を備えた生産システムを模式的に示す上面図である。本実施の形態における工作機械は、実施の形態1における工作機械10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0098】
図16を参照して、本実施の形態では、生産システムが、工作機械410と、工具ストッカ460と、搬送機構120と、搬送機構120を制御するための制御装置140とを有する。
【0099】
工具ストッカ460は、工作機械410と隣り合って配設されている。工具ストッカ460は、複数の工具をストックする装置である。工作機械410は、マシニングセンタである。工作機械410は、立形マシニングセンタであってもよいし、横形マシニングセンタであってもよい。工作機械410は、複合加工機であってもよい。
【0100】
工作機械410は、工具マガジン415を有する。工具マガジン415は、加工目的に応じて工具を順次、加工エリアに供給するため、複数の工具を格納する装置である。工具マガジン415には、ドリル、エンドミルまたはフライス等の工具が格納されている。
【0101】
工作機械は、カバー体21を有する。カバー体21は、マガジン内エリア250を区画形成するとともに、工作機械の外観をなしている。マガジン内エリア250には、複数の工具が格納されている。カバー体21には、開口部426が設けられている。開口部426は、マガジン内エリア250をその外側の外部空間260に開放している。
【0102】
カバー体21は、本体カバー421(固定式カバー)と、扉部431(可動式カバー)とを有する。本体カバー421は、マガジン内エリア250を区画形成している。
【0103】
扉部431は、開口部426に設けられている。扉部431は、マガジン内エリア250および外部空間260の間を隔てる第1状態(閉状態)と、マガジン内エリア250を外部空間260に向けて開放する第2状態(開状態)との間で動作可能である。扉部431は、ヒンジ部432を回転中心として、第1状態および第2状態の間において回動動作する。なお、
図16中には、第1状態とされた扉部431が示されている。
【0104】
工作機械410は、識別子71をさらに有する。識別子71は、マガジン内エリア250に設けられている。識別子71は、加工エリア200において扉部431および本体カバー421のいずれか一方である第1カバーとしての本体カバー421により支持されている。
【0105】
扉部431が第1状態とされた場合に、識別子71は、扉部431および本体カバー421のいずれか他方である第2カバーとしての扉部431と対向して位置決めされている。識別子71は、扉部431が第2状態とされた場合に、第1状態よりも扉部431から遠ざかって位置決めされている。
【0106】
このように構成された、この発明の実施の形態3における工作機械410によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0107】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】工作機械は、カメラ131を有する搬送機構を用いて、加工エリア200と、その外側の外部空間260との間でワークを搬送する作業を行なう。工作機械は、加工エリア200および外部空間260の間を隔てる第1状態と、加工エリア200を外部空間260に向けて開放する第2状態との間で動作可能な扉部31と、加工エリア200に設けられる機内カバー51と、加工エリア200において機内カバー51により支持され、工作機械に対して搬送機構の位置決めを行なうためにカメラ131により撮像される識別子71とを備える。扉部31が第1状態とされた場合に、識別子71は、扉部31と対向して位置決めされ、扉部31が第2状態とされた場合に、第1状態よりも扉部31から遠ざかって位置決めされる。