(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンからのトルクが伝達される入力要素、中間要素、出力要素、前記入力要素と前記中間要素との間でトルクを伝達する第1弾性体、および前記中間要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する第2弾性体を含むダンパ装置において、
前記入力要素と前記出力要素との相対回転に応じて回転する第1質量体を有し、前記入力要素と前記出力要素との間に、前記第1弾性体、前記中間要素および前記第2弾性体を含むトルク伝達経路と並列に設けられる回転慣性質量ダンパと、
第2質量体と、
前記出力要素に対する前記入力要素の捩れ角が所定角度以上になると前記第1および第2弾性体と並列に作用する第3弾性体と備え、
前記第3弾性体は、前記出力要素に対する前記入力要素の前記捩れ角が前記所定角度未満である間、前記第2質量体と前記出力要素とを連結するダンパ装置。
エンジンからのトルクが伝達される入力要素、中間要素、出力要素、前記入力要素と前記中間要素との間でトルクを伝達する第1弾性体、および前記中間要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する第2弾性体を含むダンパ装置において、
前記入力要素と前記出力要素との相対回転に応じて回転する第1質量体を有し、前記入力要素と前記出力要素との間に、前記第1弾性体、前記中間要素および前記第2弾性体を含むトルク伝達経路と並列に設けられる回転慣性質量ダンパと、
第2質量体と、前記第2質量体と前記出力要素とを連結する弾性体とを含むダイナミックダンパとを備え、
前記ダイナミックダンパは、前記ダイナミックダンパの共振点の振動数が、前記出力要素の振動振幅が理論上ゼロになる反共振点の振動数のうちの最小振動数に一致するように設計されているダンパ装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示のダンパ装置10を含む発進装置1を示す概略構成図であり、
図2は、発進装置1を示す断面図である。これらの図面に示す発進装置1は、駆動装置としてのエンジン(内燃機関)EGを備えた車両に搭載されるものであり、ダンパ装置10に加えて、エンジンEGのクランクシャフトに連結されて当該エンジンEGからのトルクが伝達される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ装置10に連結されると共に自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機TMの入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、ロックアップクラッチ8等を含む。
【0011】
なお、以下の説明において、「軸方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10の中心軸(軸心)の延在方向を示す。また、「径方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の径方向、すなわち発進装置1やダンパ装置10の中心軸から当該中心軸と直交する方向(半径方向)に延びる直線の延在方向を示す。更に、「周方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の周方向、すなわち当該回転要素の回転方向に沿った方向を示す。
【0012】
ポンプインペラ4は、
図2に示すように、フロントカバー3に密に固定されて作動油が流通する流体室9を画成するポンプシェル40と、ポンプシェル40の内面に配設された複数のポンプブレード41とを有する。タービンランナ5は、
図2に示すように、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してタービンハブ52に固定され、タービンハブ52は、ダンパハブ7により回転自在に支持される。ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレード60を有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
【0013】
ロックアップクラッチ8は、油圧式多板クラッチとして構成されており、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除する。ロックアップクラッチ8は、フロントカバー3に固定されたセンターピース30により軸方向に移動自在に支持されるロックアップピストン80と、クラッチドラム81と、ロックアップピストン80と対向するようにフロントカバー3の側壁部33の内面に固定される環状のクラッチハブ82と、クラッチドラム81の内周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第1摩擦係合プレート(両面に摩擦材を有する摩擦板)83と、クラッチハブ82の外周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第2摩擦係合プレート84(セパレータプレート)とを含む。
【0014】
更に、ロックアップクラッチ8は、ロックアップピストン80を基準としてフロントカバー3とは反対側に位置するように、すなわちロックアップピストン80よりもダンパ装置10およびタービンランナ5側に位置するようにフロントカバー3のセンターピース30に取り付けられる環状のフランジ部材(油室画成部材)85と、フロントカバー3とロックアップピストン80との間に配置される複数のリターンスプリング86とを含む。図示するように、ロックアップピストン80とフランジ部材85とは、係合油室87を画成し、当該係合油室87には、図示しない油圧制御装置から作動油(係合油圧)が供給される。係合油室87への係合油圧を高めることで、第1および第2摩擦係合プレート83,84をフロントカバー3に向けて押圧するようにロックアップピストン80を軸方向に移動させ、それによりロックアップクラッチ8を係合(完全係合あるいはスリップ係合)させることができる。なお、ロックアップクラッチ8は、油圧式単板クラッチとして構成されてもよい。
【0015】
ダンパ装置10は、
図1および
図2に示すように、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11と、中間部材(中間要素)12と、ドリブン部材(出力要素)15とを含む。更に、ダンパ装置10は、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ドライブ部材11と中間部材12との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第1スプリング(第1弾性体)SP1と、それぞれ対応する第1スプリングSP1と直列に作用して中間部材12とドリブン部材15との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第2スプリング(第2弾性体)SP2と、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング(第3弾性体)SPiとを含む。
【0016】
すなわち、ダンパ装置10は、
図1に示すように、ドライブ部材11とドリブン部材15との間に、互いに並列に設けられる第1トルク伝達経路TP1および第2トルク伝達経路TP2を有する。第1トルク伝達経路TP1は、複数の第1スプリングSP1、中間部材12および複数の第2スプリングSP2により構成され、これらの要素を介してドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する。本実施形態において、第1トルク伝達経路TP1を構成する第1および第2スプリングSP1,SP2として、同一の諸元(ばね定数)を有するコイルスプリングが採用されている。ただし、第1および第2スプリングSP1,SP2として、互いに異なるばね定数を有するものが採用されてもよい。
【0017】
また、第2トルク伝達経路TP2は、複数の内側スプリングSPiにより構成され、互いに並列に作用する複数の内側スプリングSPiを介してドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する。本実施形態において、第2トルク伝達経路TP2を構成する複数の内側スプリングSPiは、ドライブ部材11への入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の閾値)よりも小さい予め定められたトルク(第1の閾値)T1に達してドライブ部材11のドリブン部材15に対する捩れ角が所定角度θref以上になってから、第1トルク伝達経路TP1を構成する第1および第2スプリングSP1,SP2と並列に作用する。これにより、ダンパ装置10は、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。
【0018】
本実施形態では、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに内側スプリングSPiとして、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなる直線型コイルスプリングが採用されている。これにより、アークコイルスプリングを用いた場合に比べて、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに内側スプリングSPiを軸心に沿ってより適正に伸縮させることができる。この結果、ドライブ部材11(入力要素)とドリブン部材15(出力要素)との相対変位が増加していく際に第2スプリングSP2等からドリブン部材15に伝達されるトルクと、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対変位が減少していく際に第2スプリングSP2等からドリブン部材15に伝達されるトルクとの差すなわちヒステリシスを低減化することが可能となる。ただし、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに内側スプリングSPiの少なくとも何れかとして、アークコイルスプリングが採用されてもよい。
【0019】
図2に示すように、ダンパ装置10のドライブ部材11は、ロックアップクラッチ8のクラッチドラム81に連結される環状の第1入力プレート部材111と、第1入力プレート部材111と対向するように複数のリベットを介して当該第1入力プレート部材111に連結される環状の第2入力プレート部材112とを含む。これにより、ドライブ部材11、すなわち第1および第2入力プレート部材111,112は、クラッチドラム81と一体に回転し、ロックアップクラッチ8の係合によりフロントカバー3(エンジンEG)とダンパ装置10のドライブ部材11とが連結されることになる。
【0020】
第1入力プレート部材111は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓111woと、それぞれ円弧状に延びると共に各外側スプリング収容窓111woの径方向内側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の図示しない内側スプリング収容窓(切欠)と、第1入力プレート部材111の各内側スプリング収容窓の外側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部111sと、複数(本実施形態では、例えば3個)の図示しない外側スプリング当接部と、複数(本実施形態では、例えば6個)の内側スプリング当接部111ci(
図1参照)とを有する。第1入力プレート部材111の各内側スプリング収容窓は、内側スプリングSPiの自然長よりも長い周長を有する。また、第1入力プレート部材111の外側スプリング当接部は、周方向に沿って互いに隣り合う外側スプリング収容窓111woの間に1個ずつ設けられる。更に、内側スプリング当接部111ciは、第1入力プレート部材111の各内側スプリング収容窓の周方向における両側に1個ずつ設けられる。
【0021】
第2入力プレート部材112は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓112woと、それぞれ円弧状に延びると共に各外側スプリング収容窓112woの径方向内側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の図示しない内側スプリング収容窓(切欠)と、第2入力プレート部材112の各内側スプリング収容窓の外側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部112sと、複数(本実施形態では、例えば3個)の図示しない外側スプリング当接部と、複数(本実施形態では、例えば6個)の内側スプリング当接部112ci(
図1参照)とを有する。第2入力プレート部材112の各内側スプリング収容窓は、内側スプリングSPiの自然長よりも長い周長を有する。また、第1入力プレート部材111の外側スプリング当接部は、周方向に沿って互いに隣り合う外側スプリング収容窓112woの間に1個ずつ設けられる。更に、内側スプリング当接部112ciは、第2入力プレート部材112の各内側スプリング収容窓の周方向における両側に1個ずつ設けられる。また、本実施形態では、第1および第2入力プレート部材111,112として、同一の形状を有するものが採用され、これにより、部品の種類の数を削減することが可能となる。
【0022】
中間部材12は、ドライブ部材11の第1入力プレート部材111よりもフロントカバー3側に配置される環状の第1中間プレート部材121と、ドライブ部材11の第2入力プレート部材112よりもタービンランナ5側に配置されると共に複数のリベットを介して第1中間プレート部材121に連結(固定)される環状の第2中間プレート部材122とを含む。
図2に示すように、第1および第2中間プレート部材121,122は、第1および第2入力プレート部材111,112をダンパ装置10の軸方向における両側から挟み込むように配置される。
【0023】
第1中間プレート部材121は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング収容窓121wと、それぞれ対応するスプリング収容窓121wの外側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部121sと、複数(本実施形態では、例えば3個)の図示しないスプリング当接部とを有する。第1中間プレート部材121のスプリング当接部は、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング収容窓121wの間に1個ずつ設けられる。第2中間プレート部材122は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング収容窓122wと、それぞれ対応するスプリング収容窓122wの外側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部122sと、複数(本実施形態では、例えば3個)の図示しないスプリング当接部とを有する。第2中間プレート部材122のスプリング当接部は、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング収容窓122wの間に1個ずつ設けられる。また、本実施形態では、第1および第2中間プレート部材121,122として、同一の形状を有するものが採用され、これにより、部品の種類の数を削減することが可能となる。
【0024】
ドリブン部材15は、板状の環状部材として構成されており、第1および第2入力プレート部材111,112の軸方向における間に配置されると共に、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。ドリブン部材15は、
図3に示すように、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓15woと、各外側スプリング収容窓15woの径方向内側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング収容窓15wiと、複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング当接部15coと、複数(本実施形態では、例えば6個)の内側スプリング当接部15ciとを有する。外側スプリング当接部15coは、周方向に沿って互いに隣り合う外側スプリング収容窓15woの間に1個ずつ設けられる。また、各内側スプリング収容窓15wiは、内側スプリングSPiの自然長に応じた周長を有する。更に、内側スプリング当接部15ciは、各内側スプリング収容窓15wiの周方向における両側に設けられる。
【0025】
第1および第2入力プレート部材111,112の外側スプリング収容窓111wo,112woと、ドリブン部材15の外側スプリング収容窓15woとには、第1および第2スプリングSP1,SP2が互いに対をなす(直列に作用する)ように1個ずつ配置される。また、ダンパ装置10の取付状態において、第1および第2入力プレート部材111,112の各外側スプリング当接部と、ドリブン部材15の各外側スプリング当接部15coとは、互いに異なる外側スプリング収容窓15wo,111wo,112woに配置されて対をなさない(直列に作用しない)第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。
【0026】
更に、第1および第2中間プレート部材121,122のスプリング当接部は、それぞれ共通の外側スプリング収容窓15wo,111wo,112woに配置されて互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。また、互いに異なる外側スプリング収容窓15wo,111wo,112woに配置されて対をなさない(直列に作用しない)第1および第2スプリングSP1,SP2は、第1および第2中間プレート部材121,122のスプリング収容窓121w,122wに配置される。更に、互いに対をなさない第1および第2スプリングSP1,SP2は、フロントカバー3側で第1中間プレート部材121のスプリング支持部121sにより径方向外側から支持(ガイド)されると共に、タービンランナ5側で第2中間プレート部材122のスプリング支持部122sにより径方向外側から支持(ガイド)される。
【0027】
これにより、第1および第2スプリングSP1,SP2は、ダンパ装置10の周方向に交互に並ぶ。また、各第1スプリングSP1の一端は、第1および第2入力プレート部材111,112(ドライブ部材11)の対応する外側スプリング当接部と当接し、各第1スプリングSP1の他端は、第1および第2中間プレート部材(中間部材12)の対応するスプリング当接部と当接する。更に、各第2スプリングSP2の一端は、第1および第2中間プレート部材(中間部材12)の対応するスプリング当接部と当接し、各第2スプリングSP2の他端は、ドリブン部材15の対応する外側スプリング当接部15coと当接する。
【0028】
この結果、互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2は、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で、第1および第2中間プレート部材(中間部材12)の対応するスプリング当接部を介して直列に連結される。従って、ダンパ装置10では、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する弾性体の剛性、すなわち第1および第2スプリングSP1,SP2の合成ばね定数をより小さくすることができる。なお、本実施形態において、それぞれ複数の第1および第2スプリングSP1,SP2は、同一円周上に配列され、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各第1スプリングSP1の軸心との距離と、発進装置1等の軸心と各第2スプリングSP2の軸心との距離とが等しくなっている。
【0029】
また、ドリブン部材15の各内側スプリング収容窓15wiには、内側スプリングSPiが配置される。ダンパ装置10の取付状態において、各内側スプリング当接部15ciは、内側スプリングSPiの対応する端部と当接する。更に、ダンパ装置10の取付状態において、各内側スプリングSPiのフロントカバー3側の側部は、第1入力プレート部材111の対応する内側スプリング収容窓の周方向における中央部に位置すると共に、第1入力プレート部材111のスプリング支持部111sにより径方向外側から支持(ガイド)される。また、ダンパ装置10の取付状態において、各内側スプリングSPiのタービンランナ5側の側部は、第2入力プレート部材112の対応する内側スプリング収容窓の周方向における中央部に位置すると共に、第2入力プレート部材112のスプリング支持部112sにより径方向外側から支持(ガイド)される。
【0030】
これにより、各内側スプリングSPiは、
図2に示すように、流体室9内の内周側領域に配置され、第1および第2スプリングSP1,SP2により包囲される。この結果、ダンパ装置10ひいては発進装置1の軸長をより短縮化することが可能となる。そして、各内側スプリングSPiの一方の端部は、ドライブ部材11への入力トルク(駆動トルク)あるいは車軸側からドリブン部材15に付与されるトルク(被駆動トルク)が上記トルクT1に達してドライブ部材11のドリブン部材15に対する捩れ角が所定角度θref以上になると、第1および第2入力プレート部材111,112の対応する内側スプリング収容窓の両側に設けられた内側スプリング当接部111ci,112ciの一方と当接することになる。
【0031】
また、ダンパ装置10は、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制する図示しないストッパを有する。当該ストッパは、ドライブ部材11への入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2に達すると、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制し、これに伴って、第1および第2スプリングSP1,SP2および内側スプリングSPiのすべての撓みが規制される。
【0032】
更に、ダンパ装置10は、
図1に示すように、複数の第1スプリングSP1、中間部材12および複数の第2スプリングSP2を含む第1トルク伝達経路TP1と、複数の内側スプリングSPiを含む第2トルク伝達経路TP2との双方に並列に設けられる回転慣性質量ダンパ20を含む。本実施形態において、回転慣性質量ダンパ20は、ダンパ装置10の入力要素であるドライブ部材11と出力要素であるドリブン部材15との間に配置されるシングルピニオン式の遊星歯車21を有する。
【0033】
本実施形態において、遊星歯車21は、外周に外歯15tを含んでサンギヤとして機能するドリブン部材15と、それぞれ外歯15tに噛合する複数(本実施形態では、例えば3個)のピニオンギヤ23を回転自在に支持してキャリヤとして機能する第1および第2入力プレート部材111,112と、各ピニオンギヤ23に噛合する内歯25tを有すると共にサンギヤとしてのドリブン部材15(外歯15t)と同心円上に配置されるリングギヤ25とにより構成される。従って、サンギヤとしてのドリブン部材15、複数のピニオンギヤ23およびリングギヤ25は、流体室9内で、ダンパ装置10の径方向からみて第1および第2スプリングSP1,SP2(並びに内側スプリングSPi)と軸方向に少なくとも部分的に重なり合う。
【0034】
図2および
図3に示すように、外歯15tは、ドリブン部材15の外周面に周方向に間隔をおいて(等間隔に)定められた複数の箇所に形成される。従って、外歯15tは、外側スプリング収容窓15woおよび内側スプリング収容窓15wi、すなわちドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する第1スプリングSP1、第2スプリングSP2および内側スプリングSPiよりも径方向外側に位置する。なお、外歯15tは、ドリブン部材15の外周の全体に形成されてもよい。
【0035】
遊星歯車21のキャリヤを構成する第1入力プレート部材111は、
図2に示すように、外側スプリング収容窓111wo(外側スプリング当接部)よりも径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)に配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のピニオンギヤ支持部115を有する。同様に、遊星歯車21のキャリヤを構成する第2入力プレート部材112も、
図2に示すように、外側スプリング収容窓112wo(外側スプリング当接部)よりも径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)に配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のピニオンギヤ支持部116を有する。
【0036】
第1入力プレート部材111の各ピニオンギヤ支持部115は、
図4に示すように、フロントカバー3側に突出するように形成された円弧状の張り出し部115aと、当該張り出し部115aの端部から径方向外側に延出された円弧状のフランジ部115fとを有する。また、第2入力プレート部材112の各ピニオンギヤ支持部116は、タービンランナ5側に突出するように形成された円弧状の張り出し部116aと、当該張り出し部116aの端部から径方向外側に延出された円弧状のフランジ部116fとを有する。
【0037】
第1入力プレート部材111の各ピニオンギヤ支持部115(フランジ部115f)は、第2入力プレート部材112の対応するピニオンギヤ支持部116(フランジ部116f)と軸方向に対向し、互いに対をなすフランジ部115f,116fは、それぞれピニオンギヤ23に挿通されたピニオンシャフト24の端部を支持する。また、本実施形態において、第1入力プレート部材111のピニオンギヤ支持部115(フランジ部115f)は、それぞれリベットを介してロックアップクラッチ8のクラッチドラム81に締結される。更に、本実施形態において、中間部材12を構成する第1中間プレート部材121はピニオンギヤ支持部115の張り出し部115aの内周面により調心される。また、中間部材12を構成する第2中間プレート部材122は、ピニオンギヤ支持部116の張り出し部116aの内周面により調心される。
【0038】
遊星歯車21のピニオンギヤ23は、
図4に示すように、外周にギヤ歯(外歯)23tを有する環状のギヤ本体230と、ギヤ本体230の内周面とピニオンシャフト24の外周面との間に配置される複数のニードルベアリング231と、ギヤ本体230の両端部に嵌合されてニードルベアリング231の軸方向における移動を規制する一対のスペーサ232とを含む。ピニオンギヤ23のギヤ本体230は、
図4に示すように、ギヤ歯23tの歯底よりも当該ピニオンギヤ23の径方向における内周側で当該ギヤ歯23tの軸方向における両側に突出すると共に円柱面状の外周面を有する環状の径方向支持部230sを含む。また、各スペーサ232の外周面は、径方向支持部230sと同径、若しくは当該径方向支持部230sよりも小径に形成されている。
【0039】
複数のピニオンギヤ23は、周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶようにキャリヤとしての第1および第2入力プレート部材111,112(ピニオンギヤ支持部115,116)により回転自在に支持される。更に、各スペーサ232の側面と第1および第2入力プレート部材111,112のピニオンギヤ支持部115,116(フランジ部115f,116f)との間には、ワッシャ235が配置される。また、ピニオンギヤ23のギヤ歯23tの両側の側面と、第1および第2入力プレート部材111,112のピニオンギヤ支持部115,116(フランジ部115f,116f)との軸方向における間には、
図4に示すように間隙が形成される。
【0040】
遊星歯車21のリングギヤ25は、内周に内歯25tが形成された環状のギヤ本体250と、それぞれ円環状に形成された2枚の側板251と、各側板251をギヤ本体250の軸方向における両側の側面に固定するための複数のリベット252とを含む。ギヤ本体250、2枚の側板251および複数のリベット252は、一体化されて回転慣性質量ダンパ20の慣性質量体(第1質量体)として機能する。本実施形態において、内歯25tは、ギヤ本体250の内周面の全体にわたって形成される。ただし、内歯25tは、ギヤ本体250の内周面に周方向に間隔をおいて(等間隔に)定められた複数の箇所に形成されてもよい。
【0041】
各側板251は、凹円柱面状の内周面を有し、内歯25tに噛合する複数のピニオンギヤ23により軸方向に支持される被支持部として機能する。すなわち、2枚の側板251は、内歯25tの軸方向における両側で、それぞれ内歯25tの歯底よりも径方向内側に突出して少なくともピニオンギヤ23のギヤ歯23tの側面と対向するようにギヤ本体250の対応する側面に固定される。本実施形態において、各側板251の内周面は、
図4に示すように、内歯25tの歯先よりも僅かに径方向内側に位置する。
【0042】
各ピニオンギヤ23と内歯25tとが噛合した際、各側板251の内周面は、ピニオンギヤ23(ギヤ本体230)の対応する径方向支持部230sにより径方向に支持される。これにより、複数のピニオンギヤ23の径方向支持部230sによりリングギヤ25をサンギヤとしてのドリブン部材15の軸心に対して精度よく調心して当該リングギヤ25をスムースに回転(揺動)させることが可能となる。また、各ピニオンギヤ23と内歯25tとが噛合した際、各側板251の内面は、ピニオンギヤ23のギヤ歯23tの側面およびギヤ歯23tの歯底から径方向支持部230sまでの部分の側面と対向する。これにより、リングギヤ25の軸方向における移動は、少なくともピニオンギヤ23のギヤ歯23tの側面により規制されることになる。更に、リングギヤ25の各側板251の外面と、第1および第2入力プレート部材111,112のピニオンギヤ支持部115,116(フランジ部115f,116f)との軸方向における間には、
図4に示すように間隙が形成される。
【0043】
加えて、ダンパ装置10では、タービンランナ5(およびタービンハブ52)が連結部材55を介して各内側スプリングSPiに連結される。連結部材55は、円環状に形成されており、タービンランナ5のタービンシェル50およびタービンハブ52に複数のリベットを介して固定される。また、連結部材55は、その外周部から軸方向に延出された複数(本実施形態では、例えば6個)のスプリング当接部55cを有する。複数のスプリング当接部55cは、
図3に示すように、2個ずつ対をなして周方向に間隔をおいて並ぶように配設され、互いに対をなす2個のスプリング当接部55cは、内側スプリングSPiの自然長に応じた間隔をおいて対向する。
【0044】
また、内側スプリングSPiを保持するドリブン部材15には、当該内側スプリングSPiを収容する各内側スプリング収容窓15wiの周方向における両側に位置するように複数(本実施形態では、例えば6個)の有端スリット15sが形成されている。各有端スリット15sは、一端側で対応する内側スプリング収容窓15wiと連通すると共に、当該内側スプリングSPiの端部の中心を通る円周に沿って内側スプリング当接部15ciの内側スプリングSPiと当接する端面から離間するように円弧状に延在する。また、各有端スリット15sの周長は、連結部材55の各スプリング当接部55cの周長よりも長く定められている。
図3に示すように、各有端スリット15sには、連結部材55のスプリング当接部55cが挿通される。ダンパ装置10の取付状態において、連結部材55の各スプリング当接部55cは、対応する内側スプリングSPiの端部に当接し、各スプリング当接部55cとドリブン部材15の各有端スリット15sの閉鎖端を画成する部分との間には隙間が形成される。
【0045】
これにより、タービンランナ5、タービンハブ52および連結部材55は、複数の内側スプリングSPiを介して、ダンパ装置10の出力要素であるドリブン部材15に連結される。そして、慣性質量体(第2質量体)としてのタービンランナ5、タービンハブ52および連結部材55と、これらとドリブン部材15との間で並列に配置される複数の内側スプリングSPi(弾性体)とは、ドライブ部材11のドリブン部材15に対する捩れ角が所定角度θref未満であって各内側スプリングSPiの端部に第1および第2入力プレート部材111,112の内側スプリング当接部111ci,112ciが当接していない間、ダイナミックダンパ90を構成する。このように、内側スプリングSPiをダイナミックダンパ90の弾性体として兼用することで、ダイナミックダンパ90に専用の弾性体を設ける必要がなくなるので、ダンパ装置10の大型化を良好に抑制することが可能となる。
【0046】
「ダイナミックダンパ」は、振動体(本実施形態では、ドリブン部材15)に対してトルク(平均トルク)の伝達経路に含まれないように弾性体(スプリング)と質量体とを連結することにより構成され、振動体の共振周波数に一致する周波数(エンジン回転数)で当該振動体に逆位相の振動を付加して振動を減衰するものである。すなわち、内側スプリングSPiのばね定数(剛性)と質量体としてのタービンランナ5等の重さを調整することで、ダイナミックダンパ90により所望の周波数の振動を減衰することが可能となる。
【0047】
また、ドリブン部材15の内側スプリング収容窓15wiの周方向における両側に有端スリット15sを形成することで、当該ドリブン部材15の内側スプリング当接部15ciと連結部材55のスプリング当接部55cとの双方が内側スプリングSPiの端部の中心付近を押すように、内側スプリング当接部15ciとスプリング当接部55cとを内側スプリングSPiの端部の中心と重なるように交差(直交)させることができる。これにより、内側スプリングSPiを軸心に沿ってより適正に伸縮させてヒステリシス、すなわち荷重の減少時に当該内側スプリングSPiに作用する摩擦力を低減化することが可能となる。本実施形態において、有端スリット15sの周長は、各内側スプリングSPiが完全に収縮する前に、連結部材55の各スプリング当接部55cと、各有端スリット15sの閉鎖端を画成するようにドリブン部材15に定められたストッパ部15stとが当接するように定められる。これにより、タービンランナ5の回転に伴って一対のスプリング当接部55cの一方がドリブン部材15の対応するストッパ部15stに当接すると、完全に収縮していない内側スプリングSPiを介してタービンランナ5とドリブン部材15とが一体に回転することになる。
【0048】
上述のように構成される発進装置1において、ロックアップクラッチ8によるロックアップが解除されている際、
図1からわかるように、エンジンEGからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)は、ポンプインペラ4、タービンランナ5、連結部材55および内側スプリングSPiを介してタービンランナ5と一体に回転するドリブン部材15並びにダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。
【0049】
これに対して、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されると、エンジンEGからフロントカバー3およびロックアップクラッチ8を介してドライブ部材11に伝達されたトルクは、入力トルクが上記トルクT1未満であってドライブ部材11のドリブン部材15に対する捩れ角が所定角度θref未満である間、複数の第1スプリングSP1、中間部材12および複数の第2スプリングSP2を含む第1トルク伝達経路TP1と、回転慣性質量ダンパ20とを介してドリブン部材15およびダンパハブ7に伝達される。また、入力トルクが上記トルクT1以上になると、ドライブ部材11に伝達されたトルクは、第1トルク伝達経路TP1と、複数の内側スプリングSPiを含む第2トルク伝達経路TP2と、回転慣性質量ダンパ20とを介してドリブン部材15およびダンパハブ7に伝達される。
【0050】
ロックアップの実行時(ロックアップクラッチ8の係合時)にドライブ部材11がドリブン部材15に対して回転すると(捩れると)、第1および第2スプリングSP1,SP2が撓むと共に、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転に応じて質量体としてのリングギヤ25が軸心周りに回転(揺動)する。このようにドライブ部材11がドリブン部材15に対して回転(揺動)する際には、遊星歯車21の入力要素であるキャリヤとしてのドライブ部材11すなわち第1および第2入力プレート部材111,112の回転速度がサンギヤとしてのドリブン部材15の回転速度よりも高くなる。従って、この際、リングギヤ25は、遊星歯車21の作用により増速され、ドライブ部材11よりも高い回転速度で回転する。これにより、回転慣性質量ダンパ20の質量体であるリングギヤ25から、ピニオンギヤ23を介して慣性トルクをダンパ装置10の出力要素であるドリブン部材15に付与し、当該ドリブン部材15の振動を減衰させることが可能となる。なお、回転慣性質量ダンパ20は、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で主に慣性トルクを伝達し、平均トルクを伝達することはない。
【0051】
更に、質量体としてのタービンランナ5等と、当該タービンランナ5等とドリブン部材15と連結する弾性体である複数の内側スプリングSPiとは、ドライブ部材11のドリブン部材15に対する捩れ角が所定角度θref未満であって各内側スプリングSPiの端部に第1および第2入力プレート部材111,112の内側スプリング当接部111ci,112ciが当接していない間、ダイナミックダンパ90を構成する。かかるダイナミックダンパ90は、ドリブン部材15に対し、当該ドリブン部材15の振動とは逆位相の振動を付与し、当該ダイナミックダンパ90によってもドリブン部材15の振動を減衰させることができる。
【0052】
次に、
図5を参照しながら、ダンパ装置10における振動の減衰原理について詳細に説明する。
【0053】
上述のように、ダンパ装置10では、ドライブ部材11に伝達される入力トルクが上記トルクT1に達するまで、第1トルク伝達経路TP1に含まれる第1および第2スプリングSP1,SP2と回転慣性質量ダンパ20とが並列に作用する。このように、第1および第2スプリングSP1,SP2と回転慣性質量ダンパ20とが並列に作用する際、中間部材12と第1および第2スプリングSP1,SP2とを含む第1トルク伝達経路TP1からドリブン部材15に伝達されるトルクは、中間部材12とドリブン部材15との間の第2スプリングSP2の変位(撓み量すなわち捩れ角)に依存(比例)したものとなる。これに対して、回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に伝達されるトルクは、ドライブ部材11とドリブン部材15との角加速度の差、すなわちドライブ部材11とドリブン部材15との間の第1および第2スプリングSP1,SP2の変位の2回微分値に依存(比例)したものとなる。これにより、ダンパ装置10のドライブ部材11に伝達される入力トルクTが、T=T
0sinωtといったように周期的に振動していると仮定すれば(ただし、“ω”は、入力トルクTの周期的な変動(振動)における角振動数である。)、ドライブ部材11から第1トルク伝達経路TP1を介してドリブン部材15に伝達される振動の位相と、ドライブ部材11から回転慣性質量ダンパ20を介してドリブン部材15に伝達される振動の位相とは、180°ずれることになる。
【0054】
更に、中間部材12を有するダンパ装置10では、第1および第2スプリングSP1,SP2の撓みが許容され、かつ内側スプリングSPiが撓んでいない状態に対して、2つの固有振動数(共振周波数)を設定することができる。すなわち、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行された状態でエンジンEGからドライブ部材11へのトルクの伝達が開始されると仮定した場合、第1トルク伝達経路TP1では、第1および第2スプリングSP1,SP2の撓みが許容され、かつ内側スプリングSPiが撓んでいない際に、ドライブ部材11とドリブン部材15とが互いに逆位相で振動することによる共振あるいはドライブ部材11と図示しないドライブシャフトとの間で発生する主に変速機の共振(第1共振、
図5における共振点R1参照)が発生する。
【0055】
また、第1トルク伝達経路TP1の中間部材12は、環状に形成されており、ドライブ部材11にエンジンEGからのトルクが伝達される際、中間部材12に作用する慣性力が当該中間部材12の振動を妨げる抵抗力(主に回転する中間部材12に作用する遠心力に起因した摩擦力)よりも大きくなる。従って、ドライブ部材11にエンジンEGからのトルクが伝達されるのに伴って振動する中間部材12の減衰比ζは、値1未満になる。なお、一自由度系における中間部材12の減衰比ζは、
ζ=C/{2・√[J2・(k1+k2)]}と表すことができる。ただし、“J
2”は、中間部材12の慣性モーメントであり、“k
1”は、ドライブ部材11と中間部材12との間で並列に作用する複数の第1スプリングSP1の合成ばね定数であり、“k
2”は、中間部材12とドリブン部材15の間で並列に作用する複数の第2スプリングSP2の合成ばね定数であり、“C”は、中間部材12の振動を妨げる当該中間部材12の単位速度あたりの減衰力(抵抗力)である。すなわち、中間部材12の減衰比ζは、少なくとも中間部材12の慣性モーメントJ
2と第1および第2スプリングSP1,SP2の剛性k
1,k
2とに基づいて定まる。
【0056】
また、上記減衰力Cは、次のようにして求めることができる。すなわち、上記減衰力Cによる損失エネルギSc、中間部材12の変位xをx=A・sin(ω
12・t)とすれば(ただし、“A”は、振幅であり、“ω
12”は、中間部材12の振動周波数である。)、Sc=π・C・A
2・ω
12と表すことができる。更に、中間部材12の1サイクルの振動における上述のヒステリシスHによる損失エネルギShは、中間部材12の変位xをx=A・sin(ω
12・t)とすれば、Sh=2・H・Aと表すことができる。そして、上記減衰力Cによる損失エネルギScとヒステリシスHによる損失エネルギShとが等しいと仮定すれば、上記減衰力Cは、C=(2・H)/(π・A・ω
12)と表すことができる。
【0057】
更に、一自由度系における中間部材12の固有振動数f
12は、
f12=1/(2π)・√[(k1+k2)/J2]と表され、中間部材12を環状に形成することで慣性モーメントJ
2が比較的大きくなることから、当該中間部材12の固有振動数f
12は比較的小さくなる。これにより、第1トルク伝達経路TP1では、
図5に示すように、第1および第2スプリングSP1,SP2の撓みが許容され、かつ内側スプリングSPiが撓んでいない際に、エンジンEGの回転数Ne(ドライブ部材11の回転数)が共振点R1の振動数(および後述の反共振点A1の振動数)に対応した回転数よりもある程度高まった段階で、中間部材12がドライブ部材11およびドリブン部材15の双方と逆位相で振動することによる当該中間部材12の共振(第2共振、
図5における共振点R2参照)が発生する。
【0058】
また、第1トルク伝達経路TP1(第2スプリングSP2)からドリブン部材15に伝達される振動の振幅は、
図5において一点鎖線で示すように、エンジンEGの回転数(ドライブ部材11の回転数)が、比較的小さい中間部材12の固有振動数に対応した回転数に達する前に減少から増加に転じることになる。これに対して、回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に伝達される振動の振幅は、
図5において二点鎖線で示すように、エンジンEGの回転数(ドライブ部材11の回転数)が増加するにつれてが徐々に増加していく。これにより、ダンパ装置10では、中間部材12の存在により第1トルク伝達経路TP1を介して伝達されるトルクに2つのピークすなわち共振(R1,R2)が発生することに起因して、
図5において実線で示すように、ドリブン部材15の振動振幅Θ
3が理論上ゼロになる反共振点A1,A2を合計2つ設定することができる。
【0059】
更に、ダンパ装置10において、ドリブン部材15に連結されたダイナミックダンパ90は、ドリブン部材15に対し、当該ドリブン部材15の振動とは逆位相の振動を付与する。具体的には、エンジンEGの回転数Neすなわちドライブ部材11の回転数(ドライブ部材11に伝達される振動の周波数)が低く、回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に付与される慣性トルクが小さくなる際、ダイナミックダンパ90は、
図5において点線で示すように、回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に付与される振動と同位相の振動を当該ドリブン部材15に付与する。すなわち、ダイナミックダンパ90は、反共振点A1よりも低回転側の領域において、回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に付与される慣性トルクを補完するように作用し、第1トルク伝達経路TP1からドリブン部材15に伝達される振動の少なくとも一部を打ち消す。
【0060】
逆に、エンジンEGの回転数Neすなわちドライブ部材11の回転数(ドライブ部材11に伝達される振動の周波数)が高く、回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に付与される慣性トルクが大きくなる(過剰になる)際、ダイナミックダンパ90は、
図5において点線で示すように、第1トルク伝達経路TP1(第2スプリングSP2)からドリブン部材15に付与される振動と同位相の振動を当該ドリブン部材15に付与する。すなわち、ダイナミックダンパ90は、反共振点A1およびA2の間の回転数域において、第1トルク伝達経路TP1からのトルクを補完するように作用し、回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に付与される慣性トルクの少なくとも一部を打ち消す。
【0061】
この結果、ダンパ装置10では、
図5において実線で示すように、当該ダンパ装置10からダイナミックダンパ90を省略したもの(
図5における破線参照)に比べて、低回転側の反共振点A1よりも低回転側の領域や、2つの反共振点A1,A2間の回転数域におけるトルク変動T
Fluc(振動レベル)をより低下させることができる。従って、エンジンEGの回転数Ne(ドライブ部材11の回転数)が比較的低い領域におけるダンパ装置10の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0062】
更に、本実施形態では、ダイナミックダンパ90の共振点の振動数を低回転側の反共振点A1の振動数に一致させており、これにより、反共振点A1付近、特に、反共振点A1よりも低回転側の領域におけるトルク変動T
Fluc(振動レベル)をより低下させることが可能となる。そして、このように反共振点A1よりも低回転側の領域におけるトルク変動T
Flucを低下させることで、ロックアップクラッチ8のロックアップ回転数Nlupを低回転側の反共振点A1の振動数に対応したエンジンEGの回転数Nea
1よりも低く設定することができるので、エンジンEGの回転数がより低い状態で当該エンジンEGからのトルクを変速機TMに機械的に伝達することが可能となる。この結果、エンジンEGと変速機TMとの間の動力伝達効率を向上させて、エンジンEGの燃費をより向上させることができる。なお、ロックアップ回転数Nlupは、エンジンEGの始動後に最初に当該エンジンEGとダンパ装置10とを連結する際の回転数であり、複数のロックアップ回転数の中で最も低いもの、すなわちドライブ部材11から第1トルク伝達経路TP1を介してドリブン部材15にトルクが伝達される回転数域の最小回転数である。
図5に示すように、ロックアップ回転数Nlupは、共振点R1での共振の振動数に対応した回転数よりも高く、共振点R1での共振(2つの固有振動数の小さい方での共振)は、ダンパ装置10が使用される回転数域において発生しない仮想的なものとなる。
【0063】
また、ダイナミックダンパ90を含むダンパ装置10では、反共振点A1が形成された直後に当該ダイナミックダンパ90によって振動が減衰されたのに伴ってトルク変動T
Fluc(振動レベル)が高まる(揺り戻しが発生する)が、ダイナミックダンパ90の共振点の振動数を低回転側の反共振点A1の振動数に一致させて低回転側の反共振点A1よりも低回転側の領域におけるトルク変動T
Flucを低下させることで、反共振点A1が形成された直後のトルク変動T
Fluc(振動レベル)の高まりを抑え、当該トルク変動T
Flucを許容範囲内のものとすることができる。なお、
図5は、ダンパ装置10におけるヒステリシスを考慮しない状態でのトルク変動T
Fluc等を示すものであり、実際には、反共振点A1が形成された直後のトルク変動T
Fluc(振動レベル)の高まりは、当該ヒステリシスによって減衰されると考えられる。
【0064】
ただし、ダイナミックダンパ90の共振点の振動数は、必ずしも反共振点A1の振動数と一致していなくてもよく、ダイナミックダンパ90は、その共振点の振動数が反共振点A1の振動数よりも若干小さくなるように設計されてもよく、その共振点の振動数が反共振点A1の振動数よりも若干大きくなるように設計されてもよい。また、例えば変速機TMのシャフトの共振が顕在化してしまうような場合には、ダイナミックダンパ90の共振点の振動数を当該シャフトの共振の振動数に一致させてもよい。
【0065】
本実施形態のダンパ装置10では、第1トルク伝達経路TP1において第2共振(
図5における共振点R2参照)が発生すると、中間部材12がドリブン部材15と逆位相で振動するようになり、
図5において一点鎖線で示すように、ドライブ部材11から第1トルク伝達経路TP1を介してドリブン部材15に伝達される振動の位相と、ドライブ部材11から回転慣性質量ダンパ20を介してドリブン部材15に伝達される振動の位相とが一致することになる。また、ダイナミックダンパ90の共振点の振動数を反共振点A1の振動数付近に設定した場合、第1トルク伝達経路TP1において第2共振が発生すると、ダイナミックダンパ90からドリブン部材15に伝達される振動の位相は、第1トルク伝達経路TP1からドリブン部材15に伝達される振動の位相および回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に伝達される振動の位相と一致することになる。
【0066】
ここで、ロックアップの実行によりエンジンEGからドライブ部材11にトルクが伝達される状態にあり、かつ内側スプリングSPiが撓んでいない本実施形態のダンパ装置10を含む振動系については、次式(1)のような運動方程式を構築することができる。ただし、式(1)において、“J
1”は、ドライブ部材11の慣性モーメントであり、“J
2”は、上述のように中間部材12の慣性モーメントであり、“J
3”は、ドリブン部材15の慣性モーメントであり、“J
i”は、回転慣性質量ダンパ20の質量体であるリングギヤ25の慣性モーメントである。更に、“θ
1”は、ドライブ部材11の捩れ角であり、“θ
2”は、中間部材12の捩れ角であり、“θ
3”は、ドリブン部材15の捩れ角である。また、“λ”は、回転慣性質量ダンパ20を構成する遊星歯車21のギヤ比(外歯15t(サンギヤ)のピッチ円直径/リングギヤ25の内歯25tのピッチ円直径)、すなわちドリブン部材15の回転速度に対する質量体としてのリングギヤ25の回転速度の比である。
【0068】
更に、ドライブ部材11への入力トルクTが上述のように周期的に振動していると仮定すると共に、ドライブ部材11の捩れ角θ
1、中間部材12の捩れ角θ
2、およびドリブン部材15の捩れ角θ
3が[θ
1,θ
2,θ
3]
T=[Θ
1,Θ
2,Θ
3]
Tsinωtといったように周期的に応答(振動)すると仮定すれば、次式(2)の恒等式を得ることができる。ただし、“Θ
1”は、エンジンEGからのトルクの伝達に伴って生じるドライブ部材11の振動の振幅(振動振幅、すなわち最大捩れ角)であり、“Θ
2”は、ドライブ部材11にエンジンEGからのトルクが伝達されるのに伴って生じる中間部材12の振動の振幅(振動振幅)であり、“Θ
3”は、ドライブ部材11にエンジンEGからのトルクが伝達されるのに伴って生じるドリブン部材15の振動の振幅(振動振幅)である。
【0070】
式(2)において、ドリブン部材15の振動振幅Θ
3がゼロである場合、ダンパ装置10によりエンジンEGからの振動が理論上完全に減衰されてドリブン部材15よりも後段側の変速機TMやドライブシャフト等には理論上振動が伝達されないことになる。従って、式(2)の恒等式を振動振幅Θ
3について解くと共に、Θ
3=0とすることで、次式(3)に示す条件式を得ることができる。式(3)は、入力トルクTの周期的な変動における角振動数の二乗値ω
2についての2次方程式である。当該角振動数の二乗値ω
2が式(5)の2つの実数解の何れか(または重解)である場合、第1トルク伝達経路TP1からドリブン部材15に伝達されるエンジンEGからの振動と、回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に伝達される振動とが互いに打ち消し合い、ドリブン部材15の振動振幅Θ
3が理論上ゼロになる。この点からも、ダンパ装置10では、ドリブン部材15の振動振幅Θ
3が理論上ゼロになる反共振点を合計2つ設定し得ることが理解されよう。
【0072】
上記式(3)の2つの解ω
1およびω
2は、2次方程式の解の公式から得ることが可能であり、ω
1<ω
2が成立する。そして、低回転側(低周波側)の反共振点A1の振動数(以下、「最小振動数」という)fa
1は、次式(4)に示すように表され、高回転側(高周波側)の反共振点A2の振動数fa
2(fa
2>fa
1)は、次式(5)に示すように表される。また、最小振動数fa
1に対応したエンジンEGの回転数Nea
1は、“n”をエンジンEGの気筒数とすれば、Nea
1=(120/n)・fa
1と表される。
【0074】
これにより、ダンパ装置10では、要求されるロックアップ回転数Nlupや最小振動数fa
1に基づいて、複数の第1スプリングSP1の合成ばね定数k
1、複数の第2スプリングSP2の合成ばね定数k
2、中間部材12の慣性モーメントJ
2、および回転慣性質量ダンパ20の質量体であるリングギヤ25の慣性モーメントJ
iを選択・設定することで、振動減衰性能をより向上させることが可能となる。ただし、ダンパ装置10が適用される車両や原動機等の諸元によっては、式(3)の重解(=1/2π・√{(k
1+k
2)/(2・J
2)}を上記最小振動数fa
1としてもよい。
【0075】
なお、ダンパ装置10において、ドライブ部材11に遊星歯車21のサンギヤを連結(一体化)すると共に、ドリブン部材15を遊星歯車21のキャリヤとして構成してもよい。また、ダイナミックダンパ90は、タービンランナ5を含まない専用の質量体を含むものであってもよい。更に、上述のダンパ装置10では、内側スプリングSPiがダイナミックダンパ90の弾性体として兼用されるが、これに限られるものではない。すなわち、
図6に示す発進装置1Xに含まれるダンパ装置10Xのダイナミックダンパ90Xは、専用の複数のスプリングSPdと、ドリブン部材15Xに連結されると共に複数のスプリングSPdを保持する連結部材150と、質量体としてのタービンランナ5に設けられた複数のスプリング当接部55cとを含む。この場合、スプリングSPdは、軸方向からみて回転慣性質量ダンパ20のリングギヤ25と重なるようにタービンランナ5の外周部近傍に配置されるとよい。これにより、デッドスペースとなりがちなタービンランナ5の外周部近傍の領域をスプリングSPdの配置スペースとして有効に利用し、装置全体のスペース効率を向上させることが可能となる。
【0076】
更に、エンジンEGのロックアップ回転数Nlupは、必ずしも、低回転側の反共振点A1の振動数に対応したエンジンEGの回転数Nea
1よりも低く設定される必要はない。すなわち、ロックアップ回転数Nlupは、低回転側の反共振点A1の振動数(最小振動数fa
1)に対応した回転数Nea
1を中心とする所定の回転数範囲内に設定されてもよい。当該所定の回転数範囲は、例えば、Nea
1−1000rpm≦Nlup≦Nea
1+1000rpm、より好ましくは、Nea
1−600rpm≦Nlup≦Nea
1+600rpmという範囲であってもよい。また、ロックアップ回転数Nlupは、回転数Nea
1と一致していてもよく、回転数Nea
1付近の値(例えば、Nea
1−100rpm≦Nlup≦Nea
1+100rpm)に設定されてもよい。
【0077】
図7は、本開示における他の変形態様のダンパ装置10Yを含む発進装置1Yを示す概略構成図である。なお、発進装置1Yやダンパ装置10Yの構成要素のうち、上述の発進装置1やダンパ装置10等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0078】
図10に示すダンパ装置10Yは、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11Yと、中間部材(中間要素)12Yと、ドリブン部材(出力要素)15Yとを含む。更に、ダンパ装置10Yは、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ドライブ部材11Yと中間部材12Yとの間でトルクを伝達する複数の第1スプリング(第1弾性体)SP1と、それぞれ対応する第1スプリングSP1と直列に作用して中間部材12Yとドリブン部材15Yとの間でトルクを伝達する複数の第2スプリング(第2弾性体)SP2とを含む。複数の第1スプリング(第1弾性体)SP1、中間部材12Y、複数の第2スプリング(第2弾性体)SP2は、ドライブ部材11Yとドリブン部材15Yとの間でトルク伝達経路TPを構成する。更に、ドリブン部材15Yには、ダイナミックダンパ90Yが連結される。ダイナミックダンパ90Yは、専用の複数のスプリングSPdと、ドリブン部材15Yに連結されると共に複数のスプリングSPdを保持する連結部材150Yと、質量体としてのタービンランナ5に設けられた複数のスプリング当接部55cとを含む。
【0079】
また、回転慣性質量ダンパ20Yは、上記回転慣性質量ダンパ20と同様にシングルピニオン式の遊星歯車21により構成され、ドライブ部材11Yとドリブン部材15Yとの間にトルク伝達経路TPと並列に設けられる。回転慣性質量ダンパ20Yにおいて、ドライブ部材11Y(第1および第2入力プレート部材111,112)は、複数のピニオンギヤ23を回転自在に支持して遊星歯車21のキャリヤとして機能する。また、ドリブン部材15Yには、外歯15tを有し、遊星歯車21のサンギヤとして機能する。
【0080】
更に、ダンパ装置10Yは、ドライブ部材11Yと中間部材12Yとの相対回転、すなわち第1スプリングSP1の撓みを規制する第1ストッパST1と、中間部材12Yとドリブン部材15Yとの相対回転、すなわち第2スプリングSP2の撓みを規制する第2ストッパST2とを含む。第1および第2ストッパST1,ST2の一方は、ドライブ部材11Yへの入力トルクがダンパ装置10Yの最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2よりも小さい予め定められたトルクT1に達してドライブ部材11Yのドリブン部材15Yに対する捩れ角が所定角度θref以上になると、ドライブ部材11Yと中間部材12Yとの相対回転、または中間部材12Yとドリブン部材15Yとの相対回転を規制する。また、第1および第2ストッパST1,ST2の他方は、ドライブ部材11Yへの入力トルクがトルクT2に達すると、中間部材12Yとドリブン部材15Yとの相対回転、またはドライブ部材11Yと中間部材12Yとの相対回転を規制する。
【0081】
これにより、第1および第2ストッパST1,ST2の一方が作動するまで、第1および第2スプリングSP1,SP2の撓みが許容され、第1および第2ストッパST1,ST2の一方が作動すると、第1および第2スプリングSP1,SP2の一方の撓みが規制される。そして、第1および第2ストッパST1,ST2の双方が作動すると、第1および第2スプリングSP1,SP2の双方の撓みが規制される。従って、ダンパ装置10Yも、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。なお、第1または第2ストッパST1,ST2は、ドライブ部材11Yとドリブン部材15Yとの相対回転を規制するように構成されてもよい。
【0082】
このような構成を有するダンパ装置10Yにおいても、上述のダンパ装置10,10Xと同様の作用効果を得ることが可能となる。また、ダンパ装置10Yでは、第1および第2スプリングSP1,SP2の何れか一方が他方の径方向外側で周方向に間隔をおいて並ぶように配設されてもよい。すなわち、例えば複数の第1スプリングSP1が流体室9内の外周側領域に周方向に間隔をおいて並ぶように配設されてもよく、例えば複数の第2スプリングSP2が複数の第1スプリングSP1の径方向内側で周方向に間隔をおいて並ぶように配設されてもよい。この場合、第1および第2スプリングSP1,SP2は、径方向からみて少なくとも部分的に重なるように配置されてもよい。また、スプリングSPdは、軸方向からみて回転慣性質量ダンパ20Yのリングギヤ25と重なるようにタービンランナ5の外周部近傍に配置されてもよく、第1または第2スプリングSP1,SP2と周方向に並ぶように配置されてもよい。更に、ダンパ装置10Yにおいて、ドライブ部材11Yに遊星歯車21のサンギヤを連結(一体化)すると共に、ドリブン部材15Yを遊星歯車21のキャリヤとして構成してもよい。
【0083】
図8は、本開示における更に他の変形態様のダンパ装置10Zを含む発進装置1Zを示す概略構成図である。なお、発進装置1Zやダンパ装置10Zの構成要素のうち、上述の発進装置1やダンパ装置10等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0084】
図8に示すダンパ装置10Zは、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11Zと、第1中間部材(第1中間要素)13と、第2中間部材(第2中間要素)14と、ドリブン部材(出力要素)15Zとを含む。更に、ダンパ装置10Zは、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ドライブ部材11と第1中間部材13との間でトルクを伝達する複数の第1スプリング(第1弾性体)SP1′と、第1中間部材13と第2中間部材14との間でトルクを伝達する複数の第2スプリング(第2弾性体)SP2′と、第2中間部材14とドリブン部材15Zとの間でトルクを伝達する複数の第3スプリング(第3弾性体)SP3とを含む。複数の第1スプリング(第1弾性体)SP1′、第1中間部材13、複数の第2スプリング(第2弾性体)SP2′、第2中間部材14、複数の第3スプリングSP3は、ドライブ部材11Zとドリブン部材15Zとの間でトルク伝達経路TPを構成する。また、回転慣性質量ダンパ20Zは、上記回転慣性質量ダンパ20,20Yと同様にシングルピニオン式の遊星歯車21により構成され、ドライブ部材11Zとドリブン部材15Zとの間にトルク伝達経路TPと並列に設けられる。更に、ドリブン部材15Zには、ダイナミックダンパ90Zが連結される。ダイナミックダンパ90Yは、専用の複数のスプリングSPdと、ドリブン部材15Zに連結されると共に複数のスプリングSPdを保持する連結部材150Zと、質量体としてのタービンランナ5に設けられた複数のスプリング当接部55cとを含む。
【0085】
このような第1および第2中間部材13,14を有するダンパ装置10Zでは、第1〜第3スプリングSP1′,SP2′およびSP3のすべての撓みが許容されている際に、トルク伝達経路TPにおいて3つの共振が発生する。すなわち、トルク伝達経路TPでは、第1〜第3スプリングSP1′〜SP3の撓みが許容されている際に、ドライブ部材11Zとドリブン部材15Zとが互いに逆位相で振動することによるダンパ装置10Z全体の共振が発生する。また、トルク伝達経路TPでは、第1〜第3スプリングSP1′〜SP3の撓みが許容されている際に、第1および第2中間部材13,14がドライブ部材11Zおよびドリブン部材15Zの双方と逆位相で振動することによる共振が発生する。更に、トルク伝達経路TPでは、第1〜第3スプリングSP1′〜SP3の撓みが許容されている際に、第1中間部材13がドライブ部材11Zとは逆位相で振動し、第2中間部材14が第1中間部材13とは逆位相で振動し、かつドリブン部材15Zが第2中間部材14とは逆位相で振動することによる共振が発生する。従って、ダンパ装置10Zでは、トルク伝達経路TPからドリブン部材15Zに伝達される振動と、回転慣性質量ダンパ20Zからドリブン部材15Zに伝達される振動とが理論上互いに打ち消し合うことになる反共振点を合計3つ設定することが可能となる。
【0086】
更に、ダンパ装置10Zにおいても、ドリブン部材15Zに連結されたダイナミックダンパ90Zは、ドリブン部材15Zに対し、当該ドリブン部材15Zの振動とは逆位相の振動を付与する。すなわち、ダイナミックダンパ90Zも、回転慣性質量ダンパ20Zからドリブン部材15Zに付与される慣性トルクが小さくなる際には、当該慣性トルクを補完するように作用し、逆に、回転慣性質量ダンパ20Zからドリブン部材15Zに付与される慣性トルクが大きくなる(過剰になる)際、当該慣性トルクの少なくとも一部を打ち消す(トルク伝達経路TPからのトルクを補完する)ように作用する。この結果、このダンパ装置10Zにおいもて、最も低回転側の反共振点よりも低回転側の領域や、隣り合う反共振点の間の回転数域における振動レベルをより低下させることが可能となるので、振動減衰性能をより向上させることができる。また、ダンパ装置10Zでは、第1の反共振点よりも高回転側(高周波側)の第2の反共振点を例えば変速機TMの入力軸ISの共振点(の振動数)に一致させたり(より近づけたり)、第2の反共振点よりも高回転側(高周波側)の第3の反共振点を例えばダンパ装置10Z内の共振点(の振動数)に一致させたり(より近づけたり)することで、これらの共振の発生をも良好に抑制することができる。
【0087】
なお、ダンパ装置10Zは、3つ以上の中間部材をトルク伝達経路TPに含むように構成されてもよい。また、ダンパ装置10Zにおいて、ドライブ部材11Zに遊星歯車21のサンギヤを連結(一体化)すると共に、ドリブン部材15Zを遊星歯車21のキャリヤとして構成してもよい。更に、ダンパ装置10Zにおいて、例えば第1中間部材13に遊星歯車21のサンギヤを連結(一体化)してもよく、例えば第1中間部材13を遊星歯車21のキャリヤとして構成してもよい。
【0088】
図9は、ダンパ装置10に適用可能な他のドリブン部材15Bを示す正面図である。同図に示すドリブン部材15Bでは、上述のドリブン部材15における有端スリット15sが省略されており、内側スプリング収容窓15wiの周長が2本の内側スプリングSPiの周長の合計よりも長く定められている。図示するように、各内側スプリング収容窓15wiには、2本の内側スプリングSPiが間隔をおいて配置される。また、ドリブン部材15Bと共に用いられる連結部材55Bは、内側スプリング収容窓15wiと同数のスプリング当接部55cを有し、各スプリング当接部55cは、2本の内側スプリングSPiの周方向における間に差し込まれて両者の端部に当接する。すなわち、取付状態において、各内側スプリングSPiの一方の端部は、ドリブン部材15Bの対応する内側スプリング当接部15ciに当接し、他方の端部は、連結部材55Bの対応するスプリング当接部55cに当接する。
【0089】
このような構成を採用しても、質量体としてのタービンランナ5等と弾性体としての複数の内側スプリングSPiとを含むダイナミックダンパ90をダンパ装置10の出力要素であるドリブン部材15Bに連結することができる。また、ドリブン部材15Bを採用した場合も、内側スプリング当接部15ciとスプリング当接部55cとの双方が内側スプリングSPiの端部の中心付近を押すように、内側スプリング当接部15ciとスプリング当接部55cとを内側スプリングSPiの端部の中心と重なるように交差(直交)させることができる。これにより、内側スプリングSPiを軸心に沿ってより適正に伸縮させてヒステリシス、すなわち減荷時に当該内側スプリングSPiに作用する摩擦力を低減化することが可能となる。
【0090】
図10は、本開示における更に他の変形態様のダンパ装置10Vを含む発進装置1Vを示す概略構成図である。なお、発進装置1Vやダンパ装置10Vの構成要素のうち、上述の発進装置1やダンパ装置10等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0091】
図10のダンパ装置10Vは、上記ダンパ装置10から中間部材12を省略したものに相当し、回転要素としてドライブ部材(入力要素)11Vおよびドリブン部材(出力要素)15Vを含むと共に、トルク伝達弾性体としてドライブ部材11Vとドリブン部材15Vとの間に並列に配置される複数のスプリングSPを含むものである。また、回転慣性質量ダンパ20Vは、上記回転慣性質量ダンパ20等と同様にシングルピニオン式の遊星歯車21により構成され、ドライブ部材11Vとドリブン部材15Vとの間に、スプリングSPを含む第1トルク伝達経路TP1と並列に設けられる。更に、ダイナミックダンパ90Vは、質量体(第2質量体)としてのタービンランナ5、図示しないタービンハブおよび連結部材55と、これらとドリブン部材15Vとの間で並列に配置される弾性体である複数の内側スプリングSPiにより構成される。複数の内側スプリングSPiは、ドライブ部材11Vのドリブン部材15Vに対する捩れ角が所定角度未満であって各内側スプリングSPiの端部にドライブ部材11Vの内側スプリング当接部111ci,112ciが当接していない間、ダイナミックダンパ90Vの弾性体として用いられる。
【0092】
かかるダンパ装置10Vでは、ドライブ部材11Vから第1トルク伝達経路TP1を介してドリブン部材15Vに伝達される振動と、ドライブ部材11Vから回転慣性質量ダンパ20Vを介してドリブン部材15Vに伝達される振動とが理論上互いに打ち消し合うことになる反共振点を1つ設定することができる。また、ダンパ装置10Vにおいて、ダイナミックダンパ90Vは、主に、エンジンEGの回転数Neすなわちドライブ部材11Vの回転数(ドライブ部材11Vに伝達される振動の周波数)が高まり、回転慣性質量ダンパ20Vからドリブン部材15Vに付与される慣性トルクが大きくなった(過剰になった)際に、第1トルク伝達経路TP1(スプリングSP)からドリブン部材15Vに付与される振動と同位相の振動を当該ドリブン部材15Vに付与する。すなわち、ダイナミックダンパ90Vは、反共振点よりも高回転側の回転数域において、第1トルク伝達経路TP1からのトルクを補完するように作用し、回転慣性質量ダンパ20Vからドリブン部材15Vに付与される慣性トルクの少なくとも一部を打ち消す。また、ダイナミックダンパ90Vも、エンジンEGの回転数Neすなわちドライブ部材11の回転数(ドライブ部材11に伝達される振動の周波数)が低い際に(反共振点よりも低回転側の回転数域で)、回転慣性質量ダンパ20Vからドリブン部材15Vに付与される慣性トルクを補完するように作用し、第1トルク伝達経路TP1からドリブン部材15Vに伝達される振動の少なくとも一部を打ち消すことができる。これにより、ダンパ装置10Vにおいても、振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0093】
図11は、本開示における他の変形態様のダンパ装置10Wを含む発進装置1Wを示す概略構成図である。なお、発進装置1Wやダンパ装置10Wの構成要素のうち、上述の発進装置1やダンパ装置10等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0094】
図11に示す発進装置1Wに含まれるダンパ装置10Wでは、内側スプリングSPiが当該ダンパ装置10Wのトルク伝達弾性体としてのみ利用される。また、ダンパ装置10Wのダイナミックダンパ90Wは、複数(例えば、3個)の専用のスプリングSPdと、ドリブン部材15Wに連結されると共に複数のスプリングSPdを保持する連結部材150Wと、質量体としてのタービンランナ5に固定された連結部材55Wとを含む。連結部材150Wは、複数のリベットを介してドリブン部材15Wに連結(固定)される内周部と当該内周部から径方向外側に延出された複数(例えば、6個)のスプリング当接部151cとを有する第1プレート部材151と、複数のリベットを介して当該第1プレート部材151に連結(固定)される環状の第2プレート部材152とを含む。第1プレート部材151の複数のスプリング当接部151cは、2個ずつ対をなすように形成され、互いに対をなす2個のスプリング当接部151cの間には、1個のスプリングSPdが配置される。また、第2プレート部材152は、タービンランナ5よりも若干大きい外径を有し、第1プレート部材151の複数のスプリング当接部151cと共に複数のスプリングSPdを保持するように形成されている。更に、連結部材55Wは、2個ずつ対をなして周方向に間隔をおいて並ぶように軸方向に延出された複数(例えば6個)のスプリング当接部55cを有し、タービンランナ5のタービンシェル50の外周部に固定(溶接)される。そして、互いに対をなす2個のスプリング当接部55cの間には、1個のスプリングSPdが配置される。
【0095】
かかるダンパ装置10Wにおいて、ダイナミックダンパ90WのスプリングSPdは、軸方向からみて回転慣性質量ダンパ20のリングギヤ25と重なるようにタービンランナ5の外周部近傍すなわち流体室9内の外周側領域に配置される。これにより、デッドスペースとなりがちなタービンランナ5の外周部近傍の領域をスプリングSPdの配置スペースとして有効に利用し、装置全体のスペース効率を向上させることが可能となる。更に、ダイナミックダンパ90WのスプリングSPdの捩れ角を充分に確保することができるので、ダイナミックダンパ90Wの振動減衰性能をより向上させることが可能となる。また、内側スプリングSPiの剛性をより高くすることができるので、ダンパ装置10Wの最大入力トルクをより高くすることが可能となる。
【0096】
以上説明したように、本開示のダンパ装置は、エンジン(EG)からのトルクが伝達される入力要素(11,11Y,11Z)、中間要素(12,12Y,13,14)、出力要素(15,15Y,15Z,15W)、前記入力要素と前記中間要素との間でトルクを伝達する第1弾性体(SP1,SP1′)、および前記中間要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する第2弾性体(SP2,SP2′)を含むダンパ装置(10,10X,10Y,10Z,10W)において、前記入力要素(11,11Y,11Z)と前記出力要素(15,15Y,15Z)との相対回転に応じて回転する第1質量体(25)を有し、前記入力要素(11,11Y,11Z)と前記出力要素(15,15Y,15Z,15W)との間に、前記第1弾性体(SP1)、前記中間要素および前記第2弾性体(SP2)を含むトルク伝達経路(TP1,TP)と並列に設けられる回転慣性質量ダンパ(20,20Y,20Z)と、第2質量体(5,52,55,55B,55W)と、前記第2質量体と前記出力要素(15,15Y,15Z,15W)とを連結する弾性体(SPi,SPd)を含むダイナミックダンパ(90,90X,90Y,90Z,90W)とを備えるものである。
【0097】
本開示のダンパ装置では、入力要素に伝達される入力トルクが周期的に振動していると仮定すれば、入力要素からトルク伝達経路を介して出力要素に伝達される振動の位相と、入力要素から回転慣性質量ダンパを介して出力要素に伝達される振動の位相とが180°ずれることになる。また、中間要素を含むトルク伝達経路では、第1および第2弾性体の撓みが許容されている状態に対して、複数の固有振動数(共振周波数)を設定すると共に、入力要素の回転数が当該複数の固有振動数の何れかに対応した回転数に達した段階で中間要素の共振を発生させることができる。従って、本開示のダンパ装置では、トルク伝達経路から出力要素に伝達される振動と、回転慣性質量ダンパから出力要素に伝達される振動とが理論上互いに打ち消し合うことになる反共振点を2つ設定することが可能となる。更に、第2質量体および当該第2質量体と出力要素とを連結する弾性体は、ダイナミックダンパを構成し、当該ダイナミックダンパは、出力要素に対し、当該出力要素の振動とは逆位相の振動を付与する。これにより、入力要素に伝達される振動の周波数(入力要素の回転数)が小さく、回転慣性質量ダンパから出力要素に付与される慣性トルクが小さくなる際、ダイナミックダンパは、トルク伝達経路から出力要素に伝達される振動の少なくとも一部を打ち消す(慣性トルクを補完する)ように作用する。逆に、入力要素に伝達される振動の周波数(入力要素の回転数)が大きく、回転慣性質量ダンパから出力要素に付与される慣性トルクが大きくなる(過剰になる)際、ダイナミックダンパは、当該慣性トルクの少なくとも一部を打ち消す(トルク伝達経路からのトルクを補完する)ように作用する。この結果、本開示のダンパ装置では、低回転側の反共振点よりも低回転側の領域や、2つの反共振点の間の回転数域における振動レベルをより低下させることができるので、入力要素の回転数が比較的低い領域における振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0098】
また、前記入力要素(11,11Y,11Z)から前記トルク伝達経路(TP1)を介して前記出力要素(15,15Y,15Z,15W)にトルクが伝達される回転数域の最小回転数(Nlup)は、前記出力要素の振動振幅(15,15Y,15Z,15W)が理論上ゼロになる反共振点(A1,A2)の振動数のうちの最小振動数(fa
1)に対応した回転数(Nea
1)よりも低くてもよい。すなわち、本開示のダンパ装置では、低回転側の反共振点よりも低回転側の領域における振動レベルをより低下させることができるので、トルク伝達経路を介して出力要素にトルクが伝達される回転数域の最小回転数(ロックアップ回転数)をより低下させて動力の伝達効率を向上させ、それによりエンジンの燃費をより向上させることが可能となる。
【0099】
更に、前記入力要素(11,11Y,11Z)から前記トルク伝達経路(TP1)を介して前記出力要素(15,15Y,15Z,15W)にトルクが伝達される回転数域の最小回転数(Nlup)は、前記出力要素(15,15Y,15Z,15W)の振動振幅が理論上ゼロになる反共振点(A1,A2)の振動数のうちの最小振動数(fa
1)に対応した回転数(Nea
1)を中心とする所定の回転数範囲に含まれてもよい。この場合、前記所定の回転数範囲は、前記最小振動数に対応した回転数を“Nea
1”としたときに、Nea
1−600rpm以上、かつNea
1+600rpm以下の範囲であってよい。
【0100】
また、前記ダンパ装置(10)は、前記出力要素(15)に対する前記入力要素(11)の捩れ角が所定角度(θref)以上になると前記第1および第2弾性体(SP1,SP2)と並列に作用する第3弾性体(SPi)を更に備えてもよく、前記第3弾性体(SPi)は、前記出力要素(15)に対する前記入力要素(11)の前記捩れ角が前記所定角度(θref)未満である間、前記第2質量体(12)と前記出力要素(15)とを連結するものであってもよい。これにより、ダイナミックダンパに専用の弾性体を設ける必要がなくなるので、ダンパ装置の大型化を良好に抑制することが可能となる。
【0101】
また、前記トルク伝達経路(TP)は、前記中間要素として第1および第2中間要素(13,14)を含むと共に、第3弾性体(SP3)を更に含んでもよく、前記第1弾性体(SP1′)は、前記入力要素(11Z)と前記第1中間要素(13)との間でトルクを伝達してもよく、前記第2弾性体(SP2′)は、前記第1中間要素(13)と前記第2中間要素(14)との間でトルクを伝達してもよく、前記第3弾性体(SP3)は、前記第2中間要素(14)と前記出力要素(15Z)との間でトルクを伝達してもよい。かかるダンパ装置では、入力要素からトルク伝達経路を介して出力要素に伝達される振動と、入力要素から回転慣性質量ダンパを介して出力要素に伝達される振動とが理論上互いに打ち消し合うことになる反共振点を合計3つ設定することができるので、振動減衰性能をより一層向上させることが可能となる。
【0102】
更に、前記第2質量体は、流体伝動装置のタービンランナ(5)を含むものであってもよい。ただし、前記第2質量体は、タービンランナを含まない専用の質量体であってもよいことはいうまでもない。
【0103】
また、前記出力要素(15,15Y,15Z,15W)は、変速機(TM)の入力軸(IS)に作用的(直接または間接的)に連結されてもよい。
【0104】
本開示の他のダンパ装置は、エンジン(EG)からのトルクが伝達される入力要素(11V)、出力要素(15V)、前記入力要素(11V)と前記出力要素(15V)との間でトルクを伝達するトルク伝達弾性体(SP)を含むダンパ装置(10V)において、前記入力要素(11V)と前記出力要素(15V)との相対回転に応じて回転する第1質量体(25)を有し、前記入力要素(11V)と前記出力要素(15V)との間に、前記トルク伝達弾性体(SP)を含むトルク伝達経路(TP1)と並列に設けられる回転慣性質量ダンパ(20V)と、第2質量体(5,55)および前記第2質量体(5,55)と前記出力要素(15V)とを連結する弾性体(SPi)とを備えるものである。
【0105】
かかるダンパ装置では、トルク伝達経路から出力要素に伝達される振動と、回転慣性質量ダンパから出力要素に伝達される振動とが理論上互いに打ち消し合うことになる反共振点を1つ設定することができる。また、第2質量体および当該第2質量体と出力要素とを連結する弾性体は、ダイナミックダンパを構成する。当該ダイナミックダンパは、主に、入力要素に伝達される振動の周波数(入力要素の回転数)が大きく、回転慣性質量ダンパから出力要素に付与される慣性トルクが大きくなる(過剰になる)際、当該慣性トルクの少なくとも一部を打ち消す(トルク伝達経路からのトルクを補完する)ように作用する。また、当該ダイナミックダンパは、入力要素に伝達される振動の周波数(入力要素の回転数)が小さく、回転慣性質量ダンパから出力要素に付与される慣性トルクが小さくなる際、トルク伝達経路から出力要素に伝達される振動の少なくとも一部を打ち消す(慣性トルクを補完する)ように作用し得る。これにより、ダンパ装置の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0106】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。