(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ピック・アンド・プレースや溶接等の作業を行う作業用ロボットでは、ワークの位置や姿勢を正確に把握する必要がある。従来から、ワークを治具に固定し厳密な位置決めをすることで、ワークの位置や姿勢が変化しないようにすることが一般的に行われているが、かかる位置決め治具を精密に製作することはコストがかかる。
【0003】
そこで、近年では、カメラやレーザ等のセンサを用いて、ワークの位置や姿勢を計測することによって、ワークの位置や姿勢のばらつきに対応する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、複数の観測位置姿勢毎に二次元レーザを用いたレーザ変位センサにより治具の直線部上の点をそれぞれ検出し、検出した値から直線部上の検出点のロボット座標系の座標を観測位置姿勢毎にそれぞれ求め、検出点の2つを一組として複数の組からロボット座標系を基準とした直線部の単位方向ベクトルを複数算出し、算出した直線部の単位方向ベクトルとロボット座標系のベクトル変数で表される直線部の単位方向ベクトルとから連立方程式を作り、最小二乗法によりマニピュレータのキャリブレーションを行うことが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたように、レーザ変位センサを用いた場合、作業用ロボットに対するレーザ変位センサの取付位置や向きがずれていると、ワークの位置や姿勢を正しく計測することができない。ここで、レーザ変位センサの作業用ロボットへの取付部における座標系をロボット座標系と称し、レーザ変位センサの座標系をセンサ座標系と称することとすれば、特許文献1に記載された発明では、複数の位置及び姿勢から一つの直線部を計測することによってセンサ座標系を校正している。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、治具の直線部を用いてセンサ座標系を校正しているため、当該直線部の延伸方向がレーザ照射方向及びレーザ走査方向に対し垂直な方向に近づくにつれて校正精度の悪化を招くおそれがある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、センサの走査方向によらずセンサ座標系を校正することができる作業用ロボットの校正方法及び校正用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、ワークの位置及び姿勢を計測するセンサを備えた作業用ロボットの校正方法であって、同一平面上にない少なくとも四つの特徴点を備えた校正用治具を
前記作業用ロボットの作業と干渉しない位置であって前記作業用ロボットの先端が届く範囲内に配置し、前記センサを用いて前記校正用治具を走査して
エッジ抽出により前記特徴点を
それぞれ検出し、前記特徴点の検出結果から前記センサの座標系を校正する、ことを特徴とする作業用ロボットの校正方法が提供される。
【0010】
前記検出結果は、前記特徴点により形成される三次元形状の歪みであってもよい。前記歪みは、例えば、基準となる特徴点と検出された特徴点とを比較して求められる。
【0011】
また、前記校正用治具の走査は、前記センサの姿勢を変更した状態で複数回行うようにしてもよい。
【0012】
また、前記センサは、例えば、レーザセンサである。さらに、前記レーザセンサは、シート状にレーザ光を照射するレーザセンサであってもよい。
【0013】
また、本発明によれば、ワークの位置及び姿勢を計測するセンサを備えた作業用ロボットの前記センサの座標系を校正するための校正用治具であって、
前記校正用治具は、前記作業用ロボットの作業と干渉しない位置であって前記作業用ロボットの先端が届く範囲内に配置されており、前記校正用治具は、同一平面上にない少なくとも四つの特徴点を備えて
おり、前記特徴点は、それぞれエッジ抽出により検出可能に構成されている、ことを特徴とする校正用治具が提供される。
【0014】
前記特徴点は、例えば、多角錐形状
若しくは円錐形状の頂点であってもよいし、円柱形状の中心点であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係る作業用ロボットの校正方法及び校正用治具によれば、同一平面上にない少なくとも四つの特徴点を備えた校正用治具を用いたことにより、センサの走査方向によらずセンサ座標系を校正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、
図1(a)〜
図5(b)を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係る校正方法を用いた作業用ロボットの動作を示す側面図であり、(a)は校正処理工程、(b)はワーク計測工程、(c)は作業工程、を示している。
図2は、
図1に示した作業用ロボットの作業エリアの一例を示す平面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る校正用治具を示す斜視図であり、(a)は第一実施形態、(b)は変形例、を示している。
図4は、特徴点の検出方法の一例を示す説明図である。
【0018】
本発明の一実施形態に係る作業用ロボット1の校正方法は、例えば、
図1(b)に示したように、ワーク2の位置及び姿勢を計測するセンサ3を備えた作業用ロボット1の校正方法であって、
図1(a)及び
図3(a)に示したように、同一平面上にない六つの特徴点P
1〜P
6を備えた校正用治具4を配置し、センサ3を用いて校正用治具4を走査して特徴点P
1〜P
6を検出し、特徴点P
1〜P
6の検出結果からセンサ3の座標系(センサ座標系)を校正するものである。
【0019】
作業用ロボット1は、例えば、
図2に示したように、ピック・アンド・プレース作業を行うロボットである。作業エリアA内には、ワーク2を載置する第一テーブル21及びワーク2を移載する第二テーブル22が配置されており、第一テーブル21及び第二テーブル22に隣接する位置に作業用ロボット1が配置されている。なお、
図2において、作業用ロボット1の図は簡略化してある。
【0020】
作業用ロボット1は、例えば、体11、下腕12、上腕13及び手首14を備えた多関節ロボットである。作業用ロボット1は、体11を回転させるS軸、下腕12を前後に動かすL軸、上腕13を上下に動かすU軸、上腕13を回転させるR軸、手首14を上下に振るB軸、手首14を回転させるT軸の6軸を有している。手首14の先端には作業内容に適した先端ツール15が交換可能に接続される。なお、図示した作業用ロボット1は単なる一例であり、かかる構成に限定されるものではない。
【0021】
図2に示したようなピック・アンド・プレース作業を行う作業用ロボット1では、第一テーブル21に載置されたワーク2の位置や姿勢を正確に把握する必要がある。本実施形態では、
図1(b)に示したように、センサ3を備えた先端ツール15を手首14に接続し、作業用ロボット1を操作してワーク2の位置や姿勢を計測している。センサ3は、例えば、シート状にレーザ光を照射する二次元レーザセンサである。なお、センサ3は、ワーク2の位置や姿勢を計測することができればよく、タッチングセンサやカメラであってもよい。
【0022】
作業用ロボット1は、センサ3によりワーク2の位置や姿勢を計測した後、センサ3を備えた先端ツール15からハンド5を備えた先端ツール15に交換し、
図1(c)に示したように、ハンド5を用いて第一テーブル21上でワーク2を把持し、
図2に示した第二テーブル22にワーク2を移載する。
【0023】
ここで、センサ3を備えた先端ツール15の取付状態によっては、作業用ロボット1に対するセンサ3の取付位置や向きがずれてしまう場合がある。このとき、センサ3の取付部(手首14)における作業用ロボット1の座標系(ロボット座標系)と、センサ3上の座標系(センサ座標系)とがずれてしまうことから、センサ3でワーク2を計測したとしても正確な位置や姿勢を計測することができない。
【0024】
そこで、本願発明では、後述する校正用治具4を用いて、ロボット座標系とセンサ座標系とのずれを校正している。このセンサ座標系の校正処理は、センサ3を備えた先端ツール15に持ち替える毎に行うことが好ましい。例えば、上述した作業用ロボット1では、ハンド5からセンサ3への先端ツール15の交換、センサ3の校正、ワーク2の計測、センサ3からハンド5への先端ツール15の交換、ワーク2の把持及び移載を繰り返すこととなる。
【0025】
図3(a)に示した校正用治具4は、ワーク2の位置及び姿勢を計測するセンサ3を備えた作業用ロボット1のセンサ3の座標系を校正するための校正用治具であって、同一平面上にない六つの特徴点P
1〜P
6を備えている。本実施形態では、特徴点P
1〜P
6は四角錐形状の頂点によって定義されている。なお、特徴点は、四角錐形状の頂点に限定されるものではなく、三角錐等の多角錐形状の頂点であってもよいし、円錐形状の頂点であってもよい。
【0026】
校正用治具4は、
図3(a)に示したように、それぞれ特徴点P
1〜P
6を備えた六つの四角錐部4aと、特徴点P
1,P
4,P
5を備えた四角錐部4aの高さを調節する三つの脚部4bと、これらの四角錐部4a及び脚部4bを支持するベース4cと、を備えている。なお、説明の便宜上、特徴点にP
1〜P
6の符号を付したが、符号の順番は任意である。
【0027】
本実施形態に係る校正用治具4では、全ての特徴点P
1〜P
6が同一平面上にないことが重要である。かかる構成により、センサ3によって校正用治具4を計測した際における特徴点P
1〜P
6の検出結果が必ず三次元形状を形成することとなる。本実施形態では、この特徴点P
1〜P
6により形成される三次元形状の歪みによってセンサ3のずれを算出している。
【0028】
例えば、全ての特徴点P
1〜P
6が、同一平面上に含まれている場合、その平面に対して水平な方向から形状を測定した場合には、特徴点P
1〜P
6により形成される三次元形状が形成されず、直線状になってしまうことからずれを算出することができない。また、同一平面に対して水平に近い方向から形状を測定した場合には、特徴点P
1〜P
6により三次元形状を形成することができるものの扁平な形状になってしまい、ずれを検出することが難しくなってしまう。
【0029】
図3(a)に示した校正用治具4では、特徴点P
1,P
4,P
5を備えた四角錐部4aに対して脚部4bを配置しているが、脚部4bの配置は図示した構成に限定されるものではない。すなわち、全ての特徴点P
1〜P
6が同一平面上に含まれないようにすれば、他の特徴点を備えた四角錐部4aに脚部4bを配置するようにしてもよい。また、本実施形態では、脚部4bの高さを同じ高さに揃えているが、脚部4bの高さは個々に異なっていてもよい。
【0030】
また、
図3(a)に示した校正用治具4は、六つの特徴点P
1〜P
6を備えているが、
図3(b)に示した変形例のように、校正用治具4は、少なくとも四つの特徴点P
1〜P
4を備えていればよい。特徴点が三つ以下の場合には検出された特徴点によって三次元形状を形成することができない又は形成することができない場合があることから、特徴点は少なくとも四つ以上必要となる。
【0031】
また、特徴点P
1〜P
6は、校正用治具4を上面から見たときに校正用治具4の輪郭よりも内側に位置するように構成されている。かかる構成により、校正用治具4に特徴点P
1〜P
6を容易に形成することができる。
【0032】
かかる校正用治具4は、例えば、
図2に示したように、作業エリアA内の補助テーブル41上に固定される。補助テーブル41は、作業用ロボット1のピック・アンド・プレース作業と干渉しない位置であって、作業用ロボット1の先端が届く範囲内に配置される。
【0033】
センサ座標系の校正処理を行う場合には、例えば、センサ3の走査方向(スキャン方向)と垂直な方向に作業用ロボット1を一定の姿勢で並進させることによって、センサ3で校正用治具4の形状を測定する。このように、並進して既知の形状を取得することにより、取得形状の実形状に対する歪みからセンサ3のずれを算出することができる。
【0034】
校正用治具4の特徴点P
1〜P
6は、例えば、
図4に示したように、センサ3により取得した距離画像(
図4上図参照)から、四角錐形状の各辺をエッジ抽出により検出し、その交点Pを計算することによって算出することができる(
図4下図参照)。なお、校正用治具4上における特徴点P
1〜P
6の座標を校正用治具座標とする。
【0035】
次に、検出された特徴点P
1〜P
6の相対的な位置関係と、実際の特徴点P
1〜P
6(基準となる特徴点)の位置関係を比較する。具体的には、特徴点P
1〜P
6と作業用ロボット1の手先座標を計測し、等式
0T
E,iET
SSP
i=
0T
BBP
iを組み立て、非線形最小二乗法を繰り返し演算して解くガウス・ニュートン法でずれを計算する。求める変数の初期値は、設計値又は前回の校正結果を用いるようにすればよい。
【0036】
なお、前記等式において、
0T
E,iはロボットの原点座標から手先座標への同次変換行列、
ET
Sはロボットの手先座標からセンサ座標への同次変換行列、
SP
iはセンサ座標を基準としたi番目の特徴点の位置、
0T
Bはロボットの原点座標から校正治具座標への同次変換行列、
BP
iは校正治具座標を基準としたi番目の特徴点の位置、を意味している。
【0037】
上述した校正用治具4を用いてセンサ座標系の校正処理を行う際には、センサ3の姿勢を変更した状態で校正用治具4の走査(スキャン)を複数回行うことが好ましい。このように、センサ3の姿勢を変更して複数回測定を行うことにより、センサ座標系のずれを精度よく算出することができる。また、作業用ロボット1の作業時におけるワーク2の計測結果において、ワーク2のずれとセンサ3とのずれを容易に切り分けることができる。
【0038】
上述した本実施形態に係る作業用ロボット1の校正方法及び校正用治具4によれば、同一平面上にない少なくとも四つの特徴点を備えた校正用治具4を用いたことにより、検出された特徴点により必ず三次元形状を形成することができ、基準となる特徴点(実際の特徴点)と検出された特徴点とを比較することにより、三次元形状の歪みを算出することができる。したがって、この歪みを用いることにより、作業用ロボット1に対するセンサ3の取付位置や向きのずれを容易に算出することができ、センサ座標系の校正精度を向上することができる。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態に係る校正用治具4について、
図5(a)及び
図5(b)を参照しつつ説明する。ここで、
図5は、本発明の他の実施形態に係る校正用治具を示す斜視図であり、(a)は第二実施形態、(b)は変形例、を示している。なお、上述した第一実施形態に係る校正用治具4と同一の構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0040】
図5(a)に示した第二実施形態に係る校正用治具4は、八つの特徴点P
1〜P
8を円柱形状の中心点によって構成したものである。具体的には、校正用治具4は、直方体形状の本体4dと、本体4dの上面に形成された大径の円柱形状の第一凹部4eと、第一凹部4eの底面に形成された小径の円柱形状の第二凹部4fと、を備え、第一凹部4e及び第二凹部4fにより四つの段付き穴を形成している。
【0041】
段付き穴の特徴点P
1〜P
8(第一凹部4e及び第二凹部4fの中心点)は、センサ3により取得した距離画像から、開口部の円周をエッジ抽出により検出し、その円周から等距離にある点(中心点)を計算することによって算出することができる。なお、本実施形態では、本体4dの上面に段付き穴を四つ形成しているが、かかる個数に限定されるものではない。
【0042】
図5(b)に示した変形例は、本体4dの上面に段付き穴を一つ形成するとともに、第一凹部4eのみを有する段なし穴を二つ形成したものである。かかる構成によって、同一平面上にない少なくとも四つの特徴点P
1〜P
4を有する校正用治具4を形成することができる。
【0043】
上述した第一実施形態及び第二実施形態(変形例を含む)に示した校正用治具4において、特徴点は凸部を構成する多角錐形状の頂点又は凹部を構成する円柱形状の中心点として示されているが、特徴点は凹部を構成する多角錐形状の底点又は凸部を構成する円柱形状の中心点であってもよい。すなわち、校正用治具4は、多角錐形状の凹部を有していてもよいし、円柱形状の凸部を有していてもよい。
【0044】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、例えば、校正用治具4は、多角錐形状の頂点である特徴点及び円柱形状の中心点である特徴点の両方を含んでいてもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。