(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作業者の身体に装着される装着体と、当該装着体に連結されるロープと、当該ロープの他端側に取り付けられるフックとを有してなる安全帯を備えた安全帯使用状況確認システムにおいて、
前記フックに加速度センサーを取り付け、
当該加速度センサーからの出力によってフックが作業現場の固定部に係止されたか否かを検出する係止検出手段を設け、
前記フックが装着体から離脱されたことを検出する離脱検出センサーを設け、
当該離脱検出センサーによって装着体からフックが離脱されたことを検出した場合に、前記係止検出手段を用いて、前記加速度センサーによってフックが作業現場の固定部に係止されたか否かを検出するようにしたことを特徴とする安全帯使用状況確認システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の安全帯使用状況確認システム1について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
この実施の形態における安全帯使用状況確認システム1は、工事現場の足場などを移動しながら作業する際に用いられるものであって、
図1に示すように、作業者の身体に装着される装着体3と、この装着体3に連結されるロープ4と、そのロープ4の先端側に取り付けられたフック5とを有する安全帯2やサーバー7などを備えて構成されている。そして、特徴的に、本実施の形態では、加速度センサー6aをフック5に取り付けるとともに、その加速度センサー6aからの出力によってフック5を固定部8に係止させたか否かを検出する係止検出手段71(
図2参照)などを備えて構成されている。以下、本実施の形態における安全帯使用状況確認システム1について詳細に説明する。
【0018】
まず、作業者の身体に装着される装着体3は、作業者の胴回りに装着される胴ベルト31や、肩・胸回りに装着されるハーネス32などによって構成されるものであって、その胴ベルト31やハーネス32に設けられたバックルなどを用いて身体に密着させるように取り付けられる。この装着体3には、安全帯2のフック5を係止させるための係止部34が取り付けられており、この係止部34にフック5を取り付けて移動できるようになっている。
【0019】
ロープ4は、落下の際の荷重に耐えられる強度を有する紐や帯などで構成されるものであって、ハーネス32の背中などに取り付けられた図示しないD環や、巻取器、ショックアブソーバー、伸縮調節器などを介して取り付けられる。
【0020】
フック5は、このロープ4の他端側にユニバーサルジョイントやジョイント環などのジョイント部41を介して、あるいは、直接的に取り付けられるものであって、
図3に示すように、フック本体5aと、センサー取付部5bを備えて構成される。このうち、フック本体5aは、鉤状に構成された鉤状本体51と、その鉤状本体51の開口部を開閉する片開翼52aと、その片開翼52aを不意に開かせないようにするための補助翼52bなどを備えて構成されており、フック5を固定部8(
図1参照)に係止させる場合には、図示しないバネの力に抗して片開翼52aと補助翼52bを同時に内側に寄せるように回動させ、片開翼52aの規制部53を補助翼52bから離間させるようにする。これによって、片開翼52aが鉤状本体51の内側に回動し、固定部8にフック本体5aを係止させることができるようになる。このようにして、フック本体5aを固定部8に係止させると、バネの力によって片開翼52aや補助翼52bが元の位置に戻り、これによって、片開翼52aの規制部53が補助翼52bに当接した状態で固定されるため、片開翼52aが不意に開かないようになる。
【0021】
一方、センサー取付部5bは、フック本体5aの基端部に対して、ピンを介して固定されるものであって、内側に加速度センサー6aを有するボックス60を取り付けるための開口部54を設けるようにしている。このセンサー取付部5bは、フック本体5aに沿った平面、すなわち、鉤状本体51や片開翼52a、補助翼52bを含む平面に沿って設けられており、ここに加速度センサー6aを取り付けることで、フック5の係止方向の加速度を特定して係止状態を検出できるようにしている。すなわち、この加速度センサー6aがフック本体5aに対して紐などを介して揺動可能に取り付けられていると、歩行時などに加速度センサー6aが種々の方向に振れてしまい、フック5を固定部8に係止した際に掛かる加速度の方向を特定することが難しくなる。このため、この実施の形態では、フック本体5aに対して加速度センサー6aを固定して取り付けるようにしている。
【0022】
この加速度センサー6aは、XYZ軸方向の加速度を検出できるようにしたものであって、バッテリーを内蔵するボックス60内に取り付けられる。このボックス60には、この加速度センサー6aのほか、磁気センサーやジャイロセンサーなどが取り付けられており、これらのセンサーを用いて作業者の状態を検出できるようにしている。
【0023】
この加速度センサー6aによって検出された加速度は、
図1や
図2に示すように、無線によってサーバー7側に送信され、そのサーバー7の係止検出手段71を用いて固定部8への係止状態が判断される。なお、ここでは、サーバー7の係止検出手段17を用いて係止状態を検出できるようにしているが、加速度センサー6aが取り付けられているボックス60内で係止状態を判断できるようにしてもよい。
【0024】
次に、この係止状態を判断する係止検出手段71の構成について説明する。
【0025】
通常、このフック5を所持した作業者が歩行する場合、その歩行によって加速度センサー6aが振れ、
図4の上側波形に示すように、周期的な加速度が検出される。そして、所定値以上の加速度が検出されることによって、作業者が安全帯2を装着していると判断することができる。また、磁気センサーをボックス60内に取り付けている場合は、作業者のポケットに磁石6cを入れておくことによって、係止部34に係止されたフック5の磁気センサーを反応させ、これによって作業者が安全帯2を装着していると判断するようにする。
【0026】
次に、作業者がフック5を固定部8に係止させる場合、
図4の上側波形図に示すように、フック5の平面方向下向きに所定の重力加速度以上の加速度が検出される。この加速度は、フック本体5aの大きさによっても変化するが、例えば、2G以上の加速度が検出されたタイミングを検出する。そして、平面方向下向きに所定値以上(2G以上)の重力加速度が検出されたタイミングを記憶させておく(
図5の状態)。これにより、作業者がフック5を固定部8に係止させたか否かを判断することができる。
【0027】
ところで、このようにフック5の係止状態を検出する場合、装着体3にフック5を係止させた場合と、固定部8にフック5を係止させた場合とを明確に区別する必要がある。そこで、この実施の形態では、装着体3の係止部34からフック5が離脱されたことを検出する離脱検出センサー6bを設けるようにしている。
【0028】
このような離脱検出センサー6bとしては、種々のセンサーを用いることができるが、例えば、ボックス60内に磁気センサーを取り付けておき、これに対応して、身体側に磁石6cなどを取り付けておくようにしておく。そして、装着体3の係止部34からフック5が離脱された場合、すなわち、磁石6cと磁気センサーである離脱検出センサー6bが離間した場合、フック5が装着体3の係止部34から離脱されたことが検出される。そして、その後に検出された加速度センサー6aの値によって固定部8への係止状態を判断することができる。この離脱状態について
図4の波形図を用いて説明する。
図4の下側波形において大きく上側に突出した波形は、離脱検出センサー6bが磁石6cと接近している状態を示し、また、小さな波形は、離脱検出センサー6bがフック5を身体から離脱している状態を示している。そこで、離脱検出センサー6bによってフック5の離脱が検出されている時間内で、加速度センサー6aを用いてフック5の係止状態を検出する。なお、ここでは、離脱検出センサー6bとして磁気センサーを用いたが、これ以外に、装着体3の係止部34にリミットスイッチなどを設けておき、装着体3の係止部34にフック5が係止されたことを検出するようにしてもよい。
【0029】
ところで、フック5を作業現場の固定部8に係止させる場合、適正にフック5が係止されているか否かを検出する必要がある。そこで、適正にフック5が係止されているか否かを検出するために、係止検出手段71を用いて、次のような判断を行うようにする。
【0030】
(1)所定時間当たりの係止回数と基準値との比較による判断
例えば、20回/5分などのように所定時間当たりの係止回数を基準値として記憶させておき、この基準値を超えている場合に、「適正」であると判断する。このとき、基準値としては、作業現場によって係止状態が異なるため、あらかじめ、
図6に示すように、作業パターン毎の基準値を設定しておき、その作業パターンに該当する作業者の基準値と、
図5上図○印、すなわち、
図4において2G以上の加速度が検出された係止タイミングとを比較して係止状態が適正であるか否かを判断する。
【0031】
(2)グルーピングされた係止状態と基準値との比較による判断
例えば、
図5下図に示すように、数秒以内に係止された一連の係止を1つの係止と判断し、そのグルーピングされた係止回数と基準値である係止回数とを比較することによって、適正に係止が行われているか否かを判断できるようにする。このような方法は、頻繁に係止が行われる作業などにおいて好適に使用することができる。
【0032】
(3)移動距離と係止回数の比較による判断
例えば、加速度センサー6aによって水平方向(XY方向)の移動を検出した場合、所定距離の移動範囲内に基準値以上の係止が行われているか否かを判断して、適正に係止が行われているか否かを判断することもできる。これによって、作業場所を変える都度、フック5を係止させたか否かを判断することができる。
【0033】
(4)前回の係止との今回の係止との時間間隔による判断
例えば、前回係止された時刻からタイマーを作動させ、所定時間以内に次の係止が行われているか否かを判断することによって、適正に係止が行われているか否かを判断することもできる。
【0034】
(5)フック5を複数設けている場合の判断
例えば、フック5やロープ4を2つ設けておき、交互にフック5を係止させながら作業を行うような場合、一のフック5における係止から次の係止までの時間と、他のフック5における係止から次の係止までの時間がオーバーラップしているか否かによって、適正に係止が行われているか否かを判断することもできる。このとき、それぞれのフック5に、同様の加速度センサー6aを取り付けおき、それぞれの係止状態を判断できるようにしておく。
【0035】
そして、このような判断を行うことにより、適正に係止されていないことが検出された場合、作業者へ警報を通知するなどの他、作業者の係止状態の履歴として記憶部に格納したり、印刷処理などを行うようにする。
【0036】
次に、このように構成された安全帯使用状況確認システム1の使用例について、
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
まず、作業者は、作業を行うに際して装着体3を装着するとともに、作業着のポケットなどに磁石6cを入れ、フック5を装着体3の係止部34に係止させるようにする。そして、この状態で、高所に登って作業を行う。このとき、磁石6cと離脱検出センサー6bが接近しているため、
図4の磁気センサーの波形に示すように大きな波形が検出された状態となり、加速度センサー6aによる係止状態の判断は行われない。
【0038】
そして、その作業者が高所で作業を行う場合、作業者の移動に伴って加速度センサー6aが周期的な加速度が検出される。これによって、装着体3を装着していると判断することができる(ステップS1)。もしくは、離脱検出センサー6bが磁石6cに反応することによって、装着体3を装着していると判断することもできる。
【0039】
次に、作業者が作業を行う場合、装着体3の係止部34からフック5を取り外して手摺などの固定部8にフック5を係止させる。このとき、装着体3の係止部34からフック5が取り外されることによって、離脱検出センサー6bが、フック5の離脱状態を検出し(ステップS2)、また、フック5に取り付けられた加速度センサー6aの値によって、フック5が固定部8に係止されたか否かを判断する(ステップS3)。このとき、フック5の平面方向下方に向けた所定値以上の加速度が検出された場合、フック5が固定部8に係止されたと判断して、この係止されたタイミングを記憶する(ステップS4)。
【0040】
サーバー7側では、この離脱検出センサー6bの検出状態や加速度センサー6aからの値、および、その作業者の作業パターンに従って、適正にフック5の係止が行われているか否かを判断する(ステップS5)。
【0041】
このとき、所定時間当たりの係止回数と基準値とを比較する場合、その所定時間当たりその基準値を下回っている場合は、適正に係止が行われていないと判断する。
【0042】
あるいは、グルーピングされた係止状態と基準値とを判断する場合、次の係止までが3秒以内である係止状態を1つの係止と判断し、そのグルーピングされた係止回数と基準値である回数とを比較する。そして、係止回数が基準値を下回っている場合、適正に係止が行われていないと判断する。
【0043】
また、水平方向の移動距離と係止回数の比較による判断を行う場合、加速度センサー6aによって水平方向の移動を検出し、所定距離以内に基準値以上の係止が行われているか否かを判断して、適正に係止が行われているか否かを判断する。
【0044】
また、前回の係止との今回の係止との時間間隔による判断を行う場合は、前回係止された時刻からタイマーを作動させ、所定時間以内に次の係止が行われているか否かを判断することによって、適正に係止が行われているか否かを判断する。
【0045】
さらには、フック5を複数設けて交互に係止させる場合は、一のフック5における係止から次の係止までの時間と、他のフック5における係止から次の係止までの時間がオーバーラップしているかを判断することによって、適正に係止が行われているか否かを判断する。
【0046】
そして、このような判断を行うことにより、適正に係止されていないと判断された場合、作業者に対して警報などの通知を行うようにする(ステップS6)。
【0047】
このように上記実施の形態によれば、作業者の身体に装着される装着体3と、当該装着体3に連結されるロープ4と、当該ロープ4の他端側に取り付けられるフック5とを有してなる安全帯2を備えた安全帯使用状況確認システム1において、前記フック5に加速度センサー6aを取り付け、当該加速度センサー6aからの出力によってフック5が作業現場の固定部8に係止されたか否かを検出する係止検出手段71を
設け、前記フック5が装着体3から離脱されたことを検出する離脱検出センサー6bを設け、当該離脱検出センサー6bによって装着体3からフック5が離脱されたことを検出した場合に、前記係止検出手段71を用いて、前記加速度センサー6aによってフック5が作業現場の固定部8に係止されたか否かを検出するようにしたので、フック5に取り付けられた加速度センサー6aを用いて、フック5を固定部8に係止したか否かを検出することができるようになり、高所からの落下を未然に防止することができるようになる。
また、フック5を装着体3に係止させて動き回る状態と、フック5を作業現場の固定部8に係止させる状態とを明確に区別することができ、固定部8へのフック5の係止を確実に検出することができるようになる。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0049】
例えば、上記実施の形態では
、加速度センサー6aによって検出された加速度の大きさによって係止状態を検出するようにしたが、加速度の波形パターンによって係止状態を検出するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、サーバー7に加速度を送信して適正に係止されたか否かを判断するようにしたが、その一例として、スマートフォンなどの携帯端末に専用のアプリケーションを格納しておき、そのアプリケーションを用いて適正な係止であるか否かの判断や警報などを行うようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、係止の適正判断を行うようにしたが、この適正判断については、種々の方法を用いることもできる。