特許第6906761号(P6906761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906761
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ガス処理方法及びガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20210708BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20210708BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20210708BHJP
【FI】
   B01D53/14 220
   B01D53/18
   C01B32/50
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-91045(P2017-91045)
(22)【出願日】2017年5月1日
(65)【公開番号】特開2018-187553(P2018-187553A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】岸本 啓
(72)【発明者】
【氏名】松岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】秋山 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】西村 真
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅
(72)【発明者】
【氏名】江▲崎▼ 丈裕
(72)【発明者】
【氏名】堀添 浩俊
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−039105(JP,A)
【文献】 特表2009−529420(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/144179(WO,A1)
【文献】 特表2017−533082(JP,A)
【文献】 特表2006−509628(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0118350(US,A1)
【文献】 特表2011−525423(JP,A)
【文献】 特表2011−525422(JP,A)
【文献】 特開2011−213494(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/114937(WO,A1)
【文献】 実開昭53−044651(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34 − 53/18
B01D 53/74 − 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
C01B 32/00 − 32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを、吸収器内において接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収工程と、
前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物が吸収された前記処理液を前記吸収器から再生器に送る送液工程と、
前記再生器において、前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離する再生工程と、を含み、
前記吸収工程では、前記被処理ガス中の前記酸性化合物と接触した前記処理液が、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離し、
前記送液工程では、前記相分離した前記第1相部分及び前記第2相部分が混合された状態の前記処理液を前記再生器内に導入させる、ガス処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のガス処理方法であって、
前記送液工程において、前記吸収器から前記再生器に送る途中で混合手段によって前記第1相部分及び前記第2相部分を混合させる、ガス処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載のガス処理方法であって、
前記送液工程では、前記吸収器の上下方向の複数箇所から流出させた前記処理液を混合して前記再生器に導入する、ガス処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載のガス処理方法であって、
前記送液工程では、前記吸収器から流出させた前記処理液を液分離器に貯留させ、前記液分離器の上下方向の複数箇所から流出させた処理液を前記再生器に導入する、ガス処理方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のガス処理方法であって、
前記送液工程において、各流出箇所からの処理液の混合割合を調整する、ガス処理方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載のガス処理方法であって、
前記吸収器の反応熱を前記再生器へ熱輸送する熱輸送手段が用いられ、前記吸収器の反応熱を前記再生器へ熱輸送する、ガス処理方法。
【請求項7】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから酸性化合物を分離するガス処理装置であって、
前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、
前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器と、
前記吸収器において前記被処理ガスと接触した前記処理液を前記再生器に送る送液部と、を備え、
前記吸収器において、前記被処理ガスと接触した前記処理液が、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離し、
前記送液部は、前記相分離した前記第1相部分及び前記第2相部分が混合された状態で前記処理液を前記再生器内に導入させる、ガス処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載のガス処理装置であって、
前記送液部は、前記相分離した前記第1相部分と前記第2相部分を混合させる混合手段を有する、ガス処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載のガス処理装置であって、
前記送液部は、前記吸収器の上下方向の複数箇所から流出させた前記処理液を混合して前記再生器に導入するように構成されている、ガス処理装置。
【請求項10】
請求項7に記載のガス処理装置であって、
前記送液部は、前記吸収器から流出させた前記処理液を貯留する液分離器を備え、
前記送液部は、前記液分離器の上下方向の複数箇所から流出させた処理液を前記再生器に導入するように構成されている、ガス処理装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のガス処理装置であって、
前記送液部は、各流出箇所からの処理液の混合割合を調整する調整手段を備えている、ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理方法及びガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理ガスに含まれる酸性化合物を処理液と接触させることによって、酸性化合物を分離させるガス処理方法が知られている。この種のガス処理方法として、例えば、下記非特許文献1及び2に開示されているように、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに液相分離する処理液(吸収剤)を用いる方法が知られている。
【0003】
非特許文献1に開示された方法を実施するガス処理装置は、図10に示すように、吸収器71と、液分離器72と、熱交換器73と、再生器74とを備えている。吸収器71は、二酸化炭素を含む排出ガス(被処理ガス)と、MEA(モノエタノールアミン)・添加剤・水で構成された吸収剤とを接触させる。吸収剤は、二酸化炭素の含有率が高い第1相部分(COリッチ相)とCOの含有率が低い第2相部分(COリーン相)とに液相分離する。この状態で、吸収剤は液分離器72に送られる。液分離器72内に貯留された吸収剤は、第1相部分が存在する下側の領域と、第2相部分が存在する上側の領域とを有する。下側の領域の吸収剤は、二酸化炭素の含有率が高いので再生器74に送られる。このとき、吸収剤は熱交換器73において予熱される。一方、上側の領域の吸収剤は、二酸化炭素の含有率が低いので吸収器71に戻される。吸収剤は、再生器74において加熱されることによって、二酸化炭素を分離する。吸収剤から分離した二酸化炭素は、回収路を通して回収される一方、二酸化炭素を放出した吸収剤は、熱交換器73を経由させて吸収器71に戻される。非特許文献1には、アミン化合物として2−(メチルアミノ)エタノール(MAE)を用いた場合のエネルギー原単位が2.7GJ/t−COであることが示されている。
【0004】
非特許文献2に開示されたガス処理装置は、図11に示すように、液分離器72の位置が熱交換器73と再生器74との間に配置されて、図10に示す装置と異なるが、それ以外の構成は同様である。
【0005】
上記ガス処理方法を実施する装置として、第1相部分と第2相部分とに液相分離する処理液(吸収剤)を用いるものではないが、下記特許文献1に開示されているように、ヒートポンプを備えた構成も知られている。ヒートポンプを用いることにより、吸収器での発熱反応で生じた熱を、再生器での吸熱反応の熱源として利用することができる。したがって、外部からの入熱量を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−213494号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】富川隆志、他2名、「二液相分離する二酸化炭素吸収剤の探索研究」、化学工学会年次大会、福岡、2014
【非特許文献2】Raynal,L.,et al.、The DMXTM process:an original solution for lowering the cost of post−combustion carbon capture、Energy Procedia、4、779−786、2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記非特許文献1及び2に開示されたガス処理方法では、二酸化炭素の含有率が高い第1相部分を含む吸収剤が再生器に送られる一方、二酸化炭素の含有率が低い第2相部分を含む吸収剤については、吸収器に戻される。これは、二酸化炭素の含有率が低い第2相部分を除去することによって、再生器に導入される処理液中に占める水の割合を低減すれば、再生器で処理液を加熱するために必要なエネルギーを低減させることができるという技術思想に基づいている。一方で、酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーをより低減させることが要望されている。
【0009】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離する処理液を用いて酸性化合物を分離させる方法及び装置において、酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーをより低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。従来方法では、酸性化合物の含有率が低い第2相部分については、再生器の導入するのではなく、吸収器に戻している。しかしながら、種々研究を重ねた結果、本発明者等は、酸性化合物の含有率が低い第2相部分を除去するよりも、第2相部分を第1相部分と一緒に再生器に導入する方が、酸性化合物を分離するために必要なエネルギーをより低減できることを発見し、本発明の創案に至った。
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明に係るガス処理方法は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを、吸収器内において接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収工程と、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物が吸収された前記処理液を前記吸収器から再生器に送る送液工程と、前記再生器において、前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離する再生工程と、を含む。前記吸収工程では、前記被処理ガス中の前記酸性化合物と接触した前記処理液が、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離し、前記送液工程では、前記相分離した前記第1相部分及び前記第2相部分が混合された状態の前記処理液を前記再生器内に導入させる。
【0012】
本発明では、吸収工程において、酸性化合物を含む被処理ガスが処理液と接触することにより、処理液は、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離する。この相分離した処理液は、第1相部分と第2相部分とが混合された状態で再生器内に導入される。すなわち、酸性化合物の含有率の大きい第1相部分に、酸性化合物の含有率の小さい第2相部分が混ざった状態の処理液が再生器に導入される。このため、再生工程においては、第2相部分を介在させた状態で酸性化合物が分離される。したがって、第2相部分を第1相部分から分離した後の処理液を再生器に導入する方法に比べ、処理液の再生(すなわち、処理液からの酸性化合物の放出)に要する再生エネルギーを低減することができる。
【0013】
前記送液工程において、前記吸収器から前記再生器に送る途中で混合手段によって前記第1相部分及び前記第2相部分を混合させてもよい。この態様では、混合手段によって第1相部分と第2相部分との混合された状態に確実にすることができる。したがって、処理液の再生に要するエネルギーの低減効果を安定させることができる。
【0014】
前記送液工程では、前記吸収器の上下方向の複数箇所から流出させた前記処理液を混合して前記再生器に導入してもよい。吸収器内では、上下に異なる位置では、第1相部分と第2相部分の存在割合が異なる。したがって、吸収器における上下方向の複数箇所から処理液を流出させることにより、再生器に導入される処理液には、第1相部分と第2相部分を一定割合の比率で含ませることができる。よって、処理液の再生に要するエネルギーの低減効果を安定させることができる。
【0015】
前記送液工程では、前記吸収器から流出させた前記処理液を液分離器に貯留させ、前記液分離器の上下方向の複数箇所から流出させた処理液を前記再生器に導入してもよい。液分離器内では、上下に異なる位置において、第1相部分と第2相部分の存在割合が異なる。したがって、液分離器における上下方向の複数箇所から処理液を流出させることにより、再生器に導入される処理液には、第1相部分と第2相部分を一定割合の比率で含ませることができる。よって、処理液の再生に要するエネルギーの低減効果を安定させることができる。
【0016】
前記送液工程において、各流出箇所からの処理液の混合割合を調整してもよい。この態様では、再生器に導入される処理液に含まれる第1相部分と第2相部分の割合を調整することができるため、第1相部分と第2相部分の割合を状況に応じた最適な割合に調整することが可能となる。
【0017】
前記吸収器の反応熱を前記再生器へ熱輸送する熱輸送手段が用いられ、前記吸収器の反応熱を前記再生器へ熱輸送してもよい。
【0018】
この態様では、熱輸送手段を用いることによって省エネルギー効果を発揮させることができる。したがって、処理液の再生に要する再生エネルギーをより低減することができる。
【0019】
本発明に係るガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから酸性化合物を分離するガス処理装置であって、前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器と、前記吸収器において前記被処理ガスと接触した前記処理液を前記再生器に送る送液部と、を備える。前記吸収器において、前記被処理ガスと接触した前記処理液が、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離する。前記送液部は、前記相分離した前記第1相部分及び前記第2相部分が混合された状態で前記処理液を前記再生器内に導入させる。
【0020】
本発明では、吸収器において、酸性化合物を含む被処理ガスと接触した処理液は、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離する。この相分離した処理液は、送液部によって、第1相部分と第2相部分とが混合された状態で再生器内に導入される。すなわち、酸性化合物の含有率の大きい第1相部分に、酸性化合物の含有率の小さい第2相部分が混ざった状態の処理液が再生器に導入される。このため、再生器においては、第2相部分を介在させた状態で酸性化合物が分離される。したがって、第2相部分を第1相部分から分離した後の処理液を再生器に導入する構成に比べ、処理液の再生(すなわち、処理液からの酸性化合物の放出)に要する再生エネルギーを低減することができる。
【0021】
前記送液部は、前記相分離した前記第1相部分と前記第2相部分を混合させる混合手段を有してもよい。
【0022】
前記送液部は、前記吸収器の上下方向の複数箇所から流出させた前記処理液を混合して前記再生器に導入するように構成されていてもよい。
【0023】
前記送液部は、前記吸収器から流出させた前記処理液を貯留する液分離器を備えてもよい。この場合、前記送液部は、前記液分離器の上下方向の複数箇所から流出させた処理液を前記再生器に導入するように構成されていてもよい。
【0024】
前記送液部は、各流出箇所からの処理液の混合割合を調整する調整手段を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離する処理液を用いて酸性化合物を分離させる方法及び装置において、酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーをより低減させることにある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2】処理液が相分離する条件を説明するための図である。
図3】処理液が相分離する条件を説明するための図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図5】本発明の第2実施形態の変形例に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図6】本発明の第3実施形態に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図7】本発明の第3実施形態の変形例に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図8】本発明の第3実施形態の変形例に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図9】本発明の第4実施形態に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図10】従来のガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図11】従来のガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るガス処理装置10は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物の吸収により相分離する処理液を用い、前記酸性化合物を含む被処理ガスから酸性化合物を分離するガス処理装置である。
【0029】
図1に示すように、ガス処理装置10は、吸収器12と、再生器14と、循環路16と、熱交換器18とを備えている。循環路16は、吸収器12から処理液を抜き出して再生器14に導入させる第1流路21と、再生器14から処理液を抜き出して吸収液に還流させる第2流路22とを含む。なお、熱交換器18は省略することが可能である。
【0030】
吸収器12は、プロセスガス等の被処理ガスを供給するガス供給路24と、処理後のガスを排出するガス排出路26と、処理液を再生器14に送るための第1流路21と、再生器14から処理液を吸収器12に戻すための第2流路22と、が接続されている。ガス供給路24は、吸収器12の下端部に接続され、ガス排出路26は、吸収器12の上端部に接続されている。第1流路21は、吸収器12の下端部又は下端部近傍に接続されている。すなわち、第1流路21は、吸収器12内に溜まった処理液を抜き出すことができる位置に接続されている。第2流路22は、吸収器12の上端部又は上端部近傍に接続されている。すなわち、第2流路22は、再生器14から還流された処理液を上から流下させることができる位置に接続されている。
【0031】
吸収器12は、被処理ガスと処理液とを接触させることにより、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させ、酸性化合物が除去されたガスを排出する。このような吸収器12としては、被処理ガスと処理液とを連続的に接触させられるものであればよく、例えば被処理ガスの流路に処理液を噴霧するもの、被処理ガスの流路に配置される充填剤を伝って処理液を流下させるもの、被処理ガス及び処理液をそれぞれ多数の微細な流路に導入して被処理ガスの微細流路と処理液の微細流路とをそれぞれ合流させるもの等を用いることができる。なお、吸収器12における酸性化合物の吸収は発熱反応である。酸性化合物が二酸化炭素である場合、二酸化炭素の吸収量1t当たりの発熱量は約1.8GJである。吸収器12において発生するこの反応熱は、被処理ガス及び処理液の温度を上昇させる。
【0032】
再生器14には、第1流路21と、第2流路22とが接続されている。第1流路21は、再生器14の上部に接続されており、吸収器12から導出された処理液を再生器14内に導入させる。第2流路22は、再生器14の下端部又は下端部近傍に接続されており、再生器14内に貯留された処理液を導出させる。第2流路22には、ポンプ28が設けられている。
【0033】
再生器14は、処理液が貯留され、この貯留された処理液を加熱することによって、酸性化合物を脱離させる。この処理液からの酸性化合物の脱離は、吸熱反応である。再生器14は、処理液を加熱すると、酸性化合物が脱離するだけでなく、処理液中の水が蒸発する。
【0034】
再生器14には、供給路30と加熱流路32とが接続されている。供給路30は、再生器14内で得られた酸性化合物を供給先に供給する。供給路30には、処理液から蒸発した酸性化合物のガスと水蒸気との混合気体を冷却するコンデンサ34が設けられている。混合気体は冷却されると、水蒸気が凝縮するので、水蒸気を分離することができる。分離された水蒸気は再生器14に還流される。コンデンサ34としては、川水等の安価な冷却水を用いた熱交換器を用いることができる。
【0035】
加熱流路32は、一端部が第2流路22に接続されているが、再生器14の下端部又は下端部近傍に接続されていてもよい。加熱流路32の他端部は再生器14の下部に接続されている。加熱流路32には、再生器14に貯留される処理液を加熱するリボイラ36が設けられている。リボイラ36は、再生器14の内部で処理液を加熱するよう配設してもよいが、図示するように、再生器14から外部に抜き出された処理液を加熱するように構成してもよい。この場合、リボイラ36は、加熱後に再生器14に還流させる加熱流路32に配設することができる。なお、リボイラ36としては、例えば電気、蒸気、バーナー等任意の熱源により直接又は間接的に処理液を加熱するものを用いることができる。
【0036】
熱交換器18は、第1流路21及び第2流路22に接続され、第1流路21を流れる処理液と第2流路22を流れる処理液との間で熱交換させる。熱交換器18は、例えばプレート熱交換器等によって構成されるが、温度差が比較的小さい流体間での熱交換が可能なマイクロチャネル熱交換器によって構成され得る。これにより、エネルギー効率を向上することができる。
【0037】
ガス処理装置10が分離する酸性化合物としては、水溶液が酸性となるものであれば特に限定されないが、例えば塩化水素、二酸化炭素、二酸化硫黄、二硫化炭素等が挙げられる。
【0038】
ガス処理装置10に用いる処理液(吸収剤)は、酸性化合物を可逆的に吸収脱離することが可能な吸収剤である。処理液は、例えば、水、アミン化合物及び有機溶剤を含むアルカリ性の吸収剤である。アミン化合物は30wt%、有機溶剤は60wt%、水は10wt%とすることが望ましい。
【0039】
アミン化合物としては、例えば、2−アミノエタノール(MEA:溶解度パラメータ=14.3(cal/cm1/2、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE:溶解度パラメータ=12.7(cal/cm1/2)等の1級アミン、例えば2−(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2−(ブチルアミノ)エタノール(BAE)等の2級アミン、例えばトリエタノールアミン(TEA)、N−メチルジエタノールアミン(MDEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等の3級アミンなどが挙げられる。
【0040】
有機溶剤としては、例えば1−ブタノール(溶解度パラメータ=11.3(cal/cm1/2)、1−ペンタノール(溶解度パラメータ=11.0(cal/cm1/2)、オクタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDEE)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)等が挙げられ、複数種を混合して用いてもよい。
【0041】
アミン化合物及び有機溶剤のそれぞれの溶解度パラメータが所定範囲に収まっていることが好ましい。溶解度パラメータは、以下の式(1)で示される。
【0042】
【数1】
【0043】
ΔHはモル蒸発潜熱、Rはガス定数、Tは絶対温度、Vはモル体積である
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、水、アミン化合物及び有機溶剤を含む吸収剤において、アミン化合物の溶解度パラメータから有機溶剤の溶解度パラメータを減じた値が1.1(cal/cm1/2以上4.2(cal/cm1/2以下となるように、アミン化合物及び有機溶剤の組合せを選択することによって、酸性化合物の吸収により酸性化合物の含有率が高い相と酸性化合物の含有率が低い相とに二相分離される。溶解度パラメータの差分の値が前記下限値に満たない場合、処理液が酸性化合物を吸収しても二相に分離しないおそれがある。一方、溶解度パラメータの差分の値が前記上限値を超える場合、処理液が酸性化合物を吸収する前から二相に分離し、処理液を酸性化合物を含む被処理ガスに接触させる工程において、処理液と被処理ガスとの接触状態が不均一となり、吸収効率が低下するおそれがある。なお、表1における「良好」とは、二酸化炭素の吸収前は単一液相であり、二酸化炭素の吸収により二液相に分離したことを意味する。また、表1における「混和せず」とは、二酸化炭素の吸収前から二液相状態で単一液相を形成しなかったことを意味する。また、表1における「分離せず」とは、二酸化炭素の吸収後でも単一液相であったことを意味する。
【0046】
本実施形態に係るガス処理装置10では、吸収器12内において二相分離する処理液が用いられる一方で、相分離した二相を再生器14内に導入されるまでに混合させる混合手段40が設けられている。第1実施形態では、第1流路21と混合手段40とにより、相分離した第1相部分及び第2相部分が混合された状態で処理液を再生器14内に導入させる送液部42が構成されている。
【0047】
混合手段40は、第1流路21に設けられており、吸収器12から再生器14に送られる途中で処理液を混合する。なお、図1では、混合手段40が第1流路21における熱交換器18よりも上流側に配置されているが、第1流路21における熱交換器18よりも下流側に配置されていてもよい。
【0048】
第1実施形態では、混合手段40がポンプによって構成されている。ポンプとしては、例えば、羽根状の回転子を有するポンプ(遠心ポンプ、軸流ポンプ等)、ギアポンプ、スクリューポンプ、往復動ポンプなどが採用され得る。処理液はポンプ内で混合されてポンプから吐出される。
【0049】
ここで、再生器14に送られる吸収液を混合する理由について説明する。図2は、処理液の吸収条件及び再生条件を説明するために作成したもので、処理液が相分離する領域と相分離しない領域との境界(図中の実線A)を示している。図の横軸は温度Tであり、縦軸は大気圧下における酸性化合物の分圧pである。図2は、アミン化合物としてEAEを用い、有機溶剤としてDEGDEEを用いた処理液の場合の相分離境界を示す。また、図3は、相分離境界について、アミン化合物としてMAEを用いた場合、有機溶剤としてDEGDMEを用いた場合についても併せて示している。
【0050】
図中の実線Aに対して左上側の領域は、二酸化炭素の吸収によって処理液が二相に分離する領域であり、右下の領域は、二酸化炭素が吸収されず処理液が二相に分離しない領域である。図2に示すように、処理液は相分離を起こし二酸化炭素を多く吸収する領域と相分離せず二酸化炭素をあまり溶解しない領域が相分離境界を挟んで存在する。そして、吸収器12においては、二相分離する領域の中で境界線Aに沿う領域Bに入る条件で運転がなされるのが好ましい。
【0051】
図2及び図3は、二酸化炭素と窒素を混合したガスを処理液に流通させたときの相分離の観察を行った結果を示すものである。試験は、処理液の温度を20℃〜90℃の範囲とし、二酸化炭素分圧を0.01気圧〜1気圧として行った。
【0052】
EAEとDEGDEEの組み合わせに関して試験を行うと、吸収条件として設定した温度40℃、二酸化炭素分圧0.2気圧の場合では、二酸化炭素濃縮相と二酸化炭素希薄相に分離した。このときの二酸化炭素吸収量は0.44mol−CO/mol−amineを示した。一方、温度90℃、二酸化炭素分圧1気圧の場合では、処理液は相分離を起こさなかった。このときの二酸化炭素吸収量は0.12mol−CO/mol−amineであった。
【0053】
吸収器12における吸収条件は、処理液が二相に分離しながら二酸化炭素が多く溶解する領域に設定し、再生器14における再生条件は、処理液が二相分離をせず二酸化炭素があまり溶解しない領域に設定することにより、再生温度と吸収温度との温度差を低く抑えることが可能となる。すなわち、温度によって二酸化炭素の吸収度合いが変化して相分離し易さが変わることによって二酸化炭素吸収濃度の平衡がずれることを利用しているため、再生温度と吸収温度との温度差を低く抑えることが可能となる。
【0054】
各処理液の場合の運転温度条件を表2に示す。表2中の再生温度の「混合」とは、本実施形態のように、相分離した処理液を再生器14に導入する場合を意味し、「非混合」は、従来技術のように、二酸化炭素含有率の低い第2相部分を吸収器12に戻し、二酸化炭素含有率の高い第1相部分のみを再生器14に導入する場合を意味している。
【0055】
【表2】
【0056】
EAE+DEGDEEの場合、「非混合」のときの吸収温度は50℃、再生温度は120℃であるので、温度差は70℃となった。これに対し、「混合」のときには吸収温度が50℃で、再生温度が90℃であるので温度差は40℃となった。したがって、「混合」の場合には、従来の約半分の温度差となることが分かる。このように、吸収器12内においては、処理液が相分離する一方で、再生器14に導入される吸収液では、相分離した二相が混合された状態になることにより、エネルギー原単位を低減することができる。「混合」の場合のエネルギー原単位は、例えば1.43GJ/t−COとなる。
【0057】
このように、処理液が酸性化合物の吸収により容易に二相分離するので、吸収器12において、酸性化合物の含有率が高い第1相部分及び酸性化合物の含有率が低い第2相部分に容易に分離できる。一方で、再生器14においては、酸性化合物の含有率が高い第1相部分だけでなく、酸性化合物の含有率の低い第2相部分が混合されて再生器14に導入されて加熱されるため、処理液から酸性化合物を分離するのに要するエネルギーを低減することができる。
【0058】
ここで、第1実施形態に係るガス処理装置10を使用したガス処理方法について説明する。ガス処理方法は、吸収工程と、送液工程と、再生工程とを含む。
【0059】
吸収工程は、吸収器12において被処理ガスと処理液とを接触させる工程である。吸収器12には、ガス供給路24を通して少なくとも二酸化炭素を含むプロセスガス等の被処理ガスが供給される。また、吸収器12には、循環路16の第2流路22を通して吸収液が導入される。吸収液は、吸収器12内を流下し、被処理ガスに含まれる二酸化炭素と接触して該二酸化炭素を吸収する。吸収器12内には、二酸化炭素を吸収した処理液が貯留される。二酸化炭素と接触した処理液は、二酸化炭素の含有率が高い第1相部分と二酸化炭素分離の含有率が低い第2相部分とに相分離する。
【0060】
送液工程は、吸収器12内に貯留された処理液を吸収器12から再生器14に送る工程である。この送液工程では、相分離した第1相部分及び第2相部分が混合された状態で処理液の全量を再生器14内に導入させる。すなわち、吸収器12から導出された処理液は、第1流路21を流れる途中で混合手段40によって混ぜ合わされる。処理液はこの状態で熱交換器18において、第2流路22を流れる処理液によって加熱され、その上で再生器14内に導入される。
【0061】
再生工程は、再生器14内に導入された処理液を加熱することにより、処理液から二酸化炭素を分離する工程である。再生器14内では、第1相部分及び第2相部分が混合された状態の処理液が流下しながら加熱される。このとき二酸化炭素の含有率の低い第2相部分を介在させた状態で処理液が加熱されるため、二酸化炭素が分離される温度を低く抑えることができる。再生器14内において、処理液が加熱されると処理液から蒸発した水蒸気が得られることがある。処理液から分離された二酸化炭素及び水蒸気は、供給路30を流れる。供給路30において、水蒸気はコンデンサ34で凝縮し、再生器14に戻される。したがって、処理液から分離された二酸化炭素のみが供給先に供給される。再生器14内に貯留された処理液は、第2流路22を流れて吸収器12に還流する。この途中、処理液は、熱交換器18において、第1流路21を流れる処理液を加熱するので、温度が下がる。
【0062】
以上説明したように、第1実施形態では、吸収工程において、二酸化炭素を含む被処理ガスが処理液と接触することにより、処理液は、二酸化炭素の含有率が高い第1相部分と二酸化炭素の含有率が低い第2相部分とに相分離する。この相分離した処理液は、第1相部分と第2相部分とが混合された状態で再生器14内に導入される。すなわち、二酸化炭素の含有率の大きい第1相部分に、二酸化炭素の含有率の小さい第2相部分が混ざった状態の処理液が再生器14に導入される。このため、再生工程においては、第2相部分を介在させた状態で二酸化炭素が分離される。したがって、第2相部分を第1相部分から分離した後の処理液を再生器に導入する方法に比べ、処理液の再生(すなわち、処理液からの二酸化炭素の放出)に要する再生エネルギーを低減することができる。
【0063】
しかも第1実施形態では、第1流路21に混合手段40が設けられているので、混合手段40によって第1相部分と第2相部分との混合された状態に確実にすることができる。したがって、処理液の再生に要するエネルギーの低減効果を安定させることができる。
【0064】
なお、第1実施形態では、第1流路21に混合手段40が設けられているが、第1流路21の配管構成、或いは再生器14への流入形状等によって、第1相部分と第2相部分が混ざり合うのであれば、混合手段40を省略することが可能である。
【0065】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
第2実施形態は、送液工程において、互いに第1相部分と第2相部分との比率が異なる複数の処理液を混合するものである。第1実施形態では、吸収器12の上下方向の1箇所から処理液が抜き出される構成となっている。つまり、第1流路21の端部は分岐することなく吸収器12に接続されている。これに対し、第2実施形態では、第1流路21の流入端が2つの分岐流路21b,21cに分かれており、各分岐流路21b,21cは、吸収器12において上下に離れた位置に接続されている。そして、この分岐流路21b,21cが合流したところに混合手段40としてのポンプが配置されている。したがって、吸収器12内の処理液は、吸収器12の上下方向の二箇所から流出され、第1流路21内において合流する。この場合、第1流路21は、一端部が再生器14に接続された主流路21aと、主流路21aの他端部に接続された2つの分岐流路21b,21cとを含むことになる。
【0067】
吸収器12内に貯留された処理液は、その上下方向の位置によって第1相部分と第2相部分との比率が異なる。例えば、下部ほど第1相部分の比率が高くなっている。あるいは、第1相部分の上側に第2相部分が存在し、その間に界面が存在している。このため、再生器14に導入される処理液における第1相部分と第2相部分の比率は、吸収器12の低い位置から抜き出された処理液と、それよりも高い位置から抜き出された処理液との流量比率及びそれぞれの抜き出される高さに応じて決まる。したがって、これらの処理液を合流させることにより、処理液に含まれる第1相部分と第2相部分の構成比率を適切な範囲に収めることができる。
【0068】
したがって、再生器14に導入される処理液に、第1相部分と第2相部分を一定割合の比率で含ませることができる。すなわち、吸収器12における分岐流路21b,21cの接続位置を適切な位置に設定することによって、第1相部分と第2相部分の比率を適切な範囲に調整することができる。よって、処理液の再生に要するエネルギーの低減効果を安定させることができる。なお、上下方向の2箇所から抜き出す構成に限られるものではなく、3箇所以上から抜き出してそれらを合流させる構成であってもよい。
【0069】
なお、図5に示すように、第1流路21に液分離器44が配置される構成として、2本の分岐流路21b,21cが液分離器44に接続される構成としてもよい。この場合、第1流路21は、一端部が再生器14に接続された第1主流路21dと、第1主流路21dの他端部と液分離器44とを接続する2つの分岐流路21b,21cと、液分離器44と吸収器12とを接続する第2主流路21eとを含むこととなる。そして、第1主流路21dに混合手段40が設けられている。両分岐流路21b,21cは、液分離器44において、互いに上下に離れた位置に接続されている。また、液分離器44内の処理液は、吸収器12内の処理液と同様に、その上下方向の位置によって第1相部分と第2相部分との比率が異なるか、第1相部分の上側に第2相部分が存在し、その間に界面が存在している。
【0070】
このため、一方の分岐流路21bを流れる処理液と、他方の分岐流路21cを流れる処理液とでは、第1相部分と第2相部分の構成比率が異なる。したがって、この場合も図4に示す形態と同様に、第1相部分と第2相部分の比率を適切な範囲に調整することができ、処理液の再生に要するエネルギーの低減効果を安定させることができる。
【0071】
なお、図4及び図5に示す構成において、混合手段40を省略することが可能である。
【0072】
(第3実施形態)
図6は本発明の第3実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
この第3実施形態では、互いに第1相部分と第2相部分との比率が異なる複数の処理液を混合する際にその混合割合を調整する調整手段48が設けられている。第3実施形態も第2実施形態と同様に、第1流路21は、一端部が再生器14に接続された主流路21aと、主流路21aの他端部に接続された2つの分岐流路21b,21cとを含んでいる。調整手段48は、各分岐流路21b,21cに設けられた開度調整可能な調整弁48a,48bを含む。各調整弁48a,48bの開度を調整することにより、各流出箇所からの処理液の混合割合を調整することができる。したがって、第1相部分と第2相部分の割合を状況に応じた最適な割合に調整することが可能となる。なお、調整弁48a,48bは、図略の制御器によって制御されてもよく、あるいは手動で開度調整されてもよい。
【0074】
なお、図7に示すように、調整手段48は、分岐流路21b,21cに設けられたポンプ48c,48dによって構成されていてもよい。この場合、図略の制御器又は手動で各ポンプ48c,48dの回転数を調整することによって、各分岐流路21b,21cを流れる処理液の混合割合を調整することができる。この場合、主流路21aのポンプを省略することができる。
【0075】
また、図8に示すように、液分離器44が設けられている場合においても、各分岐流路21b,21cに調整手段48としてのポンプ48c,48dがそれぞれ設けられた構成であってもよい。
【0076】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1及び第2実施形態と同様である。
【0077】
(第4実施形態)
図9は本発明の第4実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0078】
第4実施形態に係るガス処理装置10は、吸収器12の反応熱を再生器14へ熱輸送する熱輸送手段(ヒートポンプ)50を備えている。熱輸送手段50は、冷媒が封入された閉ループ状の循環流路50aと、それぞれ循環流路50aに設けられた圧縮機50b、蒸発器50c、膨張機構50d、ポンプ50e及び凝縮器50fと、を備えている。蒸発器50cは、例えば伝熱管によって構成され、吸収器12内に配置されている。吸収器12内では、処理液が二酸化炭素を吸収する発熱反応が生じている。蒸発器50c内を流れる液状の冷媒は、この熱によって加熱されて蒸発する。ガス状の冷媒は圧縮機50bよって圧縮されて凝縮器50f内に流入する。凝縮器50fは、例えば伝熱管によって構成され、再生器14内に配置されている。再生器14内では、処理液から二酸化炭素が脱離する吸熱反応が生じている。凝縮器50f内を流れるガス状の冷媒は、この吸熱反応により凝縮する。この凝縮した液状の冷媒は膨張機構50dによって膨張し、ポンプ50eによって送液されて蒸発器50cに流れ込む。このように、冷媒の循環によって、吸収器12の反応熱が再生器14へ熱輸送される。
【0079】
ここで、熱輸送手段50によって省エネルギー化を達成するための条件について考察しておく。凝縮温度をTH、蒸発温度をTCとすると、カルノーサイクルの効率(カルノー効率)ηは、
η=TC/(TH−TC)+1
と表すことができる。
【0080】
そして、断熱効率をηad、発電効率をη、ヒートポンプの性能をCOPabs.thとすると、ヒートポンプの性能はカルノー効率÷断熱効率÷発電効率なので、
COPabs.th=η/ηad/η=(TC/(TH−TC)+1)/ηad/η
となる。また、ヒートポンプとしての性能は一次エネルギー換算において、η・COPabs.thが1以上となるように運転する必要がある。したがって、熱輸送手段50は、COPabs.th/(1/η)が1以上となるように運転される必要ある。
【0081】
なお、従来方法では、例えば吸収器12内の温度が40℃、再生器14内の温度が120℃で運転されているので、処理液の温度と冷媒の温度(蒸発温度、凝縮温度)との温度差が10℃であると想定した場合には、TC=303K(30℃)、TH=403K(130℃)で運転されることになる。アミン化合物としてMEAを用いた場合、反応熱は1.9GJ/t−CO、蒸発潜熱は2.1GJ/t−COとなる。
カルノー効率η=303/(403−303)+1=4.03
断熱効率ηad=0.7
MEAを用いた場合では、COP,MEA=4.03×0.7=2.8
また発電効率まで考慮した場合、発電効率ηを0.4とすると
COP,MEA、th=4.03×0.7×0.4=1.13
したがって、熱輸送手段50を用いた場合のエネルギー原単位は、
1.9/1.13+2.1=3.8GJ/t−COとなる。
【0082】
ここで、COPが2.7を超えるような運転条件の温度差を算出する。
カルノー効率=2.7/0.7=3.86
吸収側の温度を固定して、カルノー効率ηc=3.86が、303/(ΔT)以上となる温度差ΔTを求めればよい。これを計算するとΔTが78.4℃以下であれば、省エネルギー化を達成することが可能となる。例えば、吸収温度が40℃の場合、再生温度が98.4℃以下であれば、従来の蒸気加熱よりも省エネルギー化を達成することが可能となる。
【0083】
第4実施形態では、熱輸送手段50を用いることによって省エネルギー効果を発揮させることができる。したがって、処理液の再生に要する再生エネルギーをより低減することができる。
【0084】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0085】
10 ガス処理装置
12 吸収器
14 再生器
40 混合手段
42 送液部
44 液分離器
48 調整手段
50 熱輸送手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11