特許第6906777号(P6906777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906777
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20210708BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20210708BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/23 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/90 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20210708BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20210708BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/77 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/787 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/79 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/717 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 33/16 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20210708BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 33/10 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 33/08 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 33/18 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/30 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/315 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/27
   A61Q11/00
   A61K8/20
   A61K8/23
   A61K8/24
   A61K8/49
   A61K8/365
   A61K8/36
   A61K8/362
   A61K8/90
   A61K8/86
   A61K8/84
   A61K8/81
   A61K8/73
   A61P1/02
   A61P43/00 121
   A61K33/34
   A61K33/30
   A61K31/555
   A61K31/77
   A61K31/787
   A61K31/79
   A61K31/717
   A61K33/16
   A61K33/42
   A61K33/24
   A61K31/4166
   A61K31/4415
   A61K31/355
   A61K33/06
   A61K33/10
   A61K33/08
   A61K33/18
   A61K31/30
   A61K31/315
   A61K31/155
   A61K31/197
   A61K31/194
   A61K31/20
【請求項の数】8
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-554452(P2017-554452)
(86)(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公表番号】特表2018-511644(P2018-511644A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】KR2016003945
(87)【国際公開番号】WO2016167600
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2019年4月1日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0054519
(32)【優先日】2015年4月17日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0184839
(32)【優先日】2015年12月23日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0045670
(32)【優先日】2016年4月14日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0045681
(32)【優先日】2016年4月14日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソ−ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キョ−テ・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン−ホ・ハ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ−ヒョン・アン
(72)【発明者】
【氏名】イン−ホ・イ
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−155312(JP,A)
【文献】 特開2004−059563(JP,A)
【文献】 特開2008−184436(JP,A)
【文献】 特開2007−308429(JP,A)
【文献】 特表2002−505261(JP,A)
【文献】 特開平06−065083(JP,A)
【文献】 特開平07−165550(JP,A)
【文献】 特開平06−145020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ジカルボン酸またはその塩
ii)部分溶解性カルシウム塩;及び
iii)リン酸塩
を有効成分として含む、しみ歯防止または緩和用口腔用組成物であって、
前記ジカルボン酸の塩が、ナトリウム塩又はカリウム塩であり、
前記部分溶解性カルシウム塩が組成物の総重量の5〜25重量%の量で存在し、
前記部分溶解性カルシウム塩が、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、水酸化カルシウム、ヨウ素酸カルシウムまたはこれらの混合物である、組成物
【請求項2】
前記ジカルボン酸は、炭素数2〜9のジカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記カルシウム塩は、溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記リン酸塩は、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウムまたはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記リン酸塩は、組成物の総重量の0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項7】
i)ジカルボン酸またはその塩とii)部分溶解性カルシウム塩との重量比が1:5〜50(ジカルボン酸またはその塩:部分溶解性カルシウム塩)であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
i)ジカルボン酸またはその塩と、ii)部分溶解性カルシウム塩と、iii)リン酸塩との重量比が1:5〜50:1〜30(ジカルボン酸またはその塩:部分溶解性カルシウム塩:リン酸塩)であることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関し、より詳しくは、しみ歯緩和のための口腔用組成物に関する。
【0002】
本出願は、2015年4月17日出願の韓国特許出願第10−2015−0054519号、2015年12月23日出願の韓国特許出願第10−2015−0184839号、2016年4月14日出願の韓国特許出願第10−2016−0045670号及び2016年4月14日出願の韓国特許出願第10−2016−0045681号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
歯がしみる症状は、露出した象牙質部分が冷たい空気や刺激的な飲食物などに接触したとき、敏感に感じられる症状であり、その根本的な原因としては、歯の象牙質に存在する多くの細管が外部に露出したことが挙げられる。しみ歯症状は軽い症状から、激しくて持続的な痛みまで多様である。また、再生されない歯の特性上、痛み止めや消炎剤などの服用はしみる症状の根本的な解決策とならず、しみ歯症状を緩和するための様々な治療法が発達してきた。
【0004】
しみ歯症状を緩和するため、神経伝達過程を撹乱する方法が多く用いられている。従来、ナトリウム(Na)とカリウム(K)とのイオン均衡を撹乱して外部刺激源が脳に伝達されることを防止する方式が最も多く用いられている。カリウム供給源としてグラソーなど、多くのメーカーで使用している窒酸カリウム(KNO)を用いてしみ歯を緩和することが一般的である。しかし、イオン撹乱の場合、持続期間が短く、それを解決するための努力が求められた。
【0005】
ROBINSON、Richard(WO2012−057739)らにより、アルギニンと炭酸カルシウムを用いてしみ歯の症状を緩和する技術が提案された。しかし、該技術もしみ歯症状を完全に緩和することができず、短期間でしみ歯の症状を緩和できる技術の開発が必要であった。また、UV架橋を通じてアクリル系高分子で象牙細管を塞ぐ技術があるが、これは歯科的施術が必要である。
【0006】
しみ歯症状の治療には、大きく象牙細管封鎖法と歯髄神経脱感作法の2つがある。象牙細管封鎖法は、露出した象牙細管をレジンなどで詰めるか、又は、フッ素塗布などで損失されたエナメル質を回復させる方法である。また、歯髄神経脱感作法は、神経伝達がナトリウムイオンとカリウムイオンとの適正の比率によって調節される点に鑑みて、カリウムイオンの含量を人為的に高めることで、神経がしみる痛みを感じられなくする治療法である。しかし、このような専門的な治療施術は歯科で受けなければならず煩雑である。
【0007】
したがって、容易に適用することができ、且つ、象牙細管を効果的に封鎖し、封鎖した象牙細管を維持することで、しみ歯症状の緩和を短期間で体感できる製品の開発が切実に求められている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、象牙細管を効果的に封鎖することでしみ歯症状を防止または緩和する口腔用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記口腔用組成物を、それを必要とする個体に適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法を提供することを他の目的とする。
【0010】
また、本発明は、しみ歯症状の防止または緩和用組成物を製造するための有効成分の用途を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成するため、本発明は、i)銅塩または亜鉛塩;ii)水溶性またはアルコール溶解性高分子;またはiii)i)とii)との混合物を有効成分として含むしみ歯防止または緩和用口腔用組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、i)銅塩または亜鉛塩;ii)水溶性またはアルコール溶解性高分子;またはiii)i)とii)との混合物を有効成分として含む組成物を、それを必要とする個体に適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、しみ歯症状の防止または緩和用組成物を製造するためのi)銅塩または亜鉛塩;ii)水溶性またはアルコール溶解性高分子;またはiii)i)とii)との混合物の用途を提供する。
【0014】
本発明は、i)銅塩または亜鉛塩;及び/またはii)ジカルボン酸またはその塩を有効成分として含むしみ歯防止または緩和用口腔用組成物を提供する。特に、本発明者らは、i)銅塩または亜鉛塩;及びii)ジカルボン酸またはその塩をともに有効成分として含む組成物が、それぞれを含む組成物に比べて相乗効果を奏することを確認した。したがって、望ましくはi)銅塩または亜鉛塩;及びii)ジカルボン酸またはその塩を有効成分として含むしみ歯防止または緩和用口腔用組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、i)銅塩または亜鉛塩;及び/またはii)ジカルボン酸またはその塩を有効成分として含む組成物を、それを必要とする個体に適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、しみ歯症状の防止または緩和用組成物を製造するためのi)銅塩または亜鉛塩;及び/またはii)ジカルボン酸またはその塩の用途を提供する。
【0017】
本発明は、i)ジカルボン酸またはその塩;及びii)部分溶解性カルシウム塩を有効成分として含むしみ歯防止または緩和用口腔用組成物を提供し、望ましくは前記組成物にリン酸塩を有効成分としてさらに含むことを特徴とするしみ歯防止または緩和用口腔用組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、i)ジカルボン酸またはその塩;及びii)部分溶解性カルシウム塩を有効成分として含む組成物を、それを必要とする個体に適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法を提供し、望ましくは前記組成物にリン酸塩を有効成分としてさらに含む組成物を、それを必要とする個体に適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、しみ歯症状の防止または緩和用組成物を製造するためのi)ジカルボン酸またはその塩;及びii)部分溶解性カルシウム塩の用途を提供し、望ましくはi)ジカルボン酸またはその塩;ii)部分溶解性カルシウム塩;及びリン酸塩の用途を提供する。
【0020】
本発明者らは、しみ歯防止及び緩和のため、露出した象牙細管を封鎖して外部の刺激を遮断することが重要であるという点を認識し、前記物質の優れた象牙細管封鎖効能を確認して、本発明の完成に至った。
【0021】
象牙質(dentin)は、歯牙組織の殆どを成している堅い組織であり、象牙質全体にわたって微細な管である象牙細管(dental tubles)が分布している。
【0022】
歯髄(dental pulp)内の細胞突起が歯髄からエナメル質(enamel)まで分布して象牙細管を構成し、象牙細管と細胞突起との間の空間は象牙質液で満たされている。
【0023】
本明細書で使われる用語「しみ歯」は、限定されないが、虫歯や他の病的な原因と別に、外部刺激に対して鋭くて一時的又は持続的な痛みが現れるすべての現象を意味する。前記外部刺激は、普通温度刺激を意味し、殆ど冷たい温度刺激に症状を訴えるが、熱い温度に痛みが現れることもある。このような温度刺激の外にも、歯牙の乾燥、外部物質との接触、甘い食べ物またはすっぱい食べ物による浸透圧などの刺激によっても痛みが現れることがある。これは歯の全般にわたって現れることも、上顎や下顎、または右側や左側など特定部位に限定して現れることも、象牙質知覚過敏症(dentine hyperesthesia)、齲蝕、歯髄炎症と伴うこともある。
【0024】
このようなしみ歯症状の原因としては、象牙細管の入口露出が考えられる。
エナメル質またはセメント質が破壊され、象牙細管の入口が外部に露出すれば、象牙細管の細胞突起、神経及び象牙質液を通じて刺激が歯髄側に伝達され、痛みが感じられるようになる。
【0025】
本明細書で使われる用語「防止」は、上述したしみ歯の症状、敏感性歯の症状などが発生する前に予防する包括的な概念として理解され得る。
【0026】
本明細書で使われる用語「緩和」は、上述したしみ歯の症状、敏感性歯の症状などが減るか又は和らぐことを意味し、改善、予防、治療などを含む広い概念として理解され得る。
【0027】
また、本明細書で使われる用語「改善」は、しみ歯の症状、敏感性歯の症状などを治療して、症状を元の状態に近く回復させることを意味する広い概念として理解され得る。
【0028】
[i)銅塩または亜鉛塩;ii)水溶性またはアルコール溶解性高分子;またはiii)i)とii)との混合物を有効成分として含むしみ歯防止または緩和用口腔用組成物]
本発明において、以下、「i)銅塩または亜鉛塩;ii)水溶性またはアルコール溶解性高分子;またはiii)i)とii)との混合物を有効成分として含むしみ歯防止または緩和用口腔用組成物」についての説明は、記載の重複を避けるため、「i)銅塩または亜鉛塩;ii)水溶性またはアルコール溶解性高分子;またはiii)i)とii)との混合物を有効成分として含む組成物を適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法」及び「しみ歯症状の防止または緩和用組成物を製造するためのi)銅塩または亜鉛塩;ii)水溶性またはアルコール溶解性高分子;またはiii)i)とii)との混合物の用途」でも同様に適用されることとする。
【0029】
前記口腔用組成物を口腔内に適用する場合、銅塩または亜鉛塩が口腔内に存在するタンパク質または酵素、これらに限定されないが、例えば、ムチン、ヒスタチン、シスタチン、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、カゼイン、アミラーゼ、リゾチーム、グロブリン、粘膜糖蛋白質、アルブミン、オリゴ及びポリペプチドなどと、口腔内でタンパク質複合体(沈殿物)を形成することができる。前記タンパク質複合体は、直径が7μm以下であり得る。すなわち、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7μm以下であり得、望ましくは5μm以下であり得る。歯の象牙細管の平均直径が3〜7μmであるため、口腔内で形成されたタンパク質複合体は象牙細管の内部に容易に導入可能である。
【0030】
また、前記口腔用組成物は、象牙細管液と反応してタンパク質複合体を形成することができる。
【0031】
また、前記複合体は、タンパク質凝集体であるため、象牙細管内のタンパク質と強い2次結合である水素結合を形成でき、亜鉛イオンとタンパク質の凝集によって電気的に非編在化している状態で歯の構成成分と静電引力も発生でき、象牙細管内の歯髄;及び構成成分であるヒドロキシアパタイトとタンパク質との親和力が高いため、象牙細管内で長時間残留できる特徴を有し、最終的には象牙細管を効果的に封鎖して歯のしみ歯症状を防止または緩和することができる。
【0032】
本発明において、前記銅塩または亜鉛塩は組成物総重量の0.02〜5重量%で含むことができ、すなわち、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5重量%含むことができ、0.05〜3重量%含むことが望ましく、0.05〜1重量%含むことがより望ましい。0.02重量%未満を含む場合は、タンパク質との複合体の生成量が十分ではなく、しみ歯緩和効果を発揮し難い。また、5重量%を超えて含む場合は、口腔刺激などの原因になる恐れがある。
【0033】
本発明で使用された銅塩は、これらに限定されないが、例えば、塩化第一銅、塩化第二銅、ヨウ化第一銅、硫酸銅、窒酸銅、ピロリン酸銅、クロロフィル銅、グルコン酸銅またはこれらの2以上の混合物であり得る。
【0034】
本発明で使用された亜鉛塩は、これらに限定されないが、例えば、窒酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、炭酸亜鉛、フッ化亜鉛、水酸化亜鉛、シュウ酸亜鉛またはこれらの2以上の混合物であり得る。
【0035】
また、本発明は、象牙細管の封鎖効果を上昇させるため、水溶性またはアルコール溶解性高分子を含むことができる。
【0036】
本明細書で使われる用語「薬効剤」とは、口腔用組成物に含まれて、歯の健康を改善または向上できる物質をすべて含む用語である。前記薬効剤の種類としては、例えば、虫歯予防剤、膿漏予防剤、歯美白剤、口臭予防剤、歯石除去剤及びしみ歯防止剤などが挙げられる。
【0037】
従来のしみ歯薬効剤は、歯面に長く留まらず、効果が持続できなかった。また、不溶性塩を形成して象牙細管を埋める方式の薬効剤は、不溶性塩の歯への付着力が低く、象牙細管を埋めた粒子が再度抜け出るため、効果が低下した。これらの短所を解決するための物質を探索していたところ、本発明者らは、水溶性またはアルコール溶解性高分子を含む口腔用組成物が象牙細管の表面を覆う効果があってしみ歯を効果的に防止または緩和できるだけでなく、高分子の粘着力と歯の構成成分との2次結合力の高い官能基を含む高分子を使用することで、高分子内の相互作用と基質である歯との相互作用を向上させ、歯に付着した後容易に離れ落ちることを抑制できて歯付着特性を強化することができ、さらに水溶性及びアルコール溶解性高分子が鎖状に薬物を捕集して歯組織または象牙細管組織に付着する特性を有し、薬効剤の歯付着持続時間を伸ばす効果を奏することを見つけた。
【0038】
前記水溶性またはアルコール溶解性高分子は、これらに限定されないが、親水性を有するヒドロキシアパタイトと親和性を有し得る。前記親和性高分子は、水または極性溶媒であるアルコール、例えば、エタノールに溶解されねばならない。したがって、前記水溶性またはアルコール溶解性高分子は、官能基としてカルボン酸、ヒドロキシ、ピロール、ピリジン、アミン、アミノ酸、イミン、ペプチド、カーボネート、エステル、エーテルなどのような官能性がある高分子を含むことができる。
【0039】
前記水溶性またはアルコール溶解性高分子は、これらに限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコール三元共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリピロール、ポリビニルピロリドン、ポリピリジン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、セルロースまたはこれらの2以上の混合物であり得、前記生体親和性高分子は、象牙細管の構成成分であるヒドロキシアパタイト及び象牙細管のタンパク質と親和性を有し、それによって口腔内に長く残留することができる。
【0040】
本発明において、前記水溶性またはアルコール溶解性高分子は、組成物総重量の0.1〜15重量%で含むことができる。すなわち、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、10.9、11、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.8、11.9、12、12.1、12.2、12.3、12.4、12.5、12.6、12.7、12.8、12.9、13、13.1、13.2、13.3、13.4、13.5、13.6、13.7、13.8、13.9、14、14.1、14.2、14.3、14.4、14.5、14.6、14.7、14.8、14.9、15重量%を含むことができ、0.3〜10重量%含むことが望ましく、0.5〜5重量%含むことがより望ましい。前記高分子の含量が0.1重量%未満であれば、生体残留特性が劣り、15重量%を超えれば、口腔衛生剤が求める物性を満たせない恐れがある。
【0041】
本発明において、前記水溶性またはアルコール溶解性高分子は、分子量が8,000〜9,000,000であり得、600,000〜4,000,000であることが望ましい。前記水溶性またはアルコール溶解性高分子の分子量が9,000,000を超えれば、製造時の粘度が高過ぎて製造し難く、8,000未満であれば、歯との粘着力が低過ぎて歯に対する高分子の粘着特性を発揮できない恐れがある。
【0042】
また、本発明は、象牙細管の封鎖を誘導する前記銅塩または亜鉛塩を有効成分として含む口腔用組成物及び封鎖した象牙細管の封鎖効果を上昇させるため、水溶性またはアルコール溶解性高分子を含むことができる。
【0043】
本発明において、前記銅塩または亜鉛塩は、前記水溶性またはアルコール溶解性高分子と0.02〜5:0.1〜15の重量比で混合することができる。すなわち、0.02〜1:0.1〜15、0.02〜2:0.1〜15、0.02〜3:0.1〜15、0.02〜4:0.1〜15、0.02〜5:0.1〜15、0.02〜5:0.1〜1、0.02〜5:0.1〜2、0.02〜5:0.1〜3、0.02〜5:0.1〜4、0.02〜5:0.1〜5、0.02〜5:0.1〜6、0.02〜5:0.1〜6、0.02〜5:0.1〜7、0.02〜5:0.1〜8、0.02〜5:0.1〜9、0.02〜5:0.1〜10、0.02〜5:0.1〜11、0.02〜5:0.1〜12、0.02〜5:0.1〜13、0.02〜5:0.1〜14、0.02〜5:0.1〜15の重量比で混合することができ、0.05〜3:0.3〜10の重量比で混合することが望ましく、すなわち、0.05〜1:0.3〜10、0.05〜2:0.3〜10、0.05〜3:0.3〜10、0.05〜1:0.3〜1、0.05〜1:0.3〜2、0.05〜1:0.3〜3、0.05〜1:0.3〜4、0.05〜1:0.3〜5、0.05〜1:0.3〜6、0.05〜1:0.3〜7、0.05〜1:0.3〜8、0.05〜1:0.3〜9、0.05〜1:0.3〜10の重量比で混合することで、しみ歯症状の防止または緩和効果を上昇させることができる。上記の範囲から外れる場合は、剤形化及び製品の安定性に問題が生じ得、所望のしみ歯緩和効果が得られない恐れがある。
【0044】
したがって、本発明の口腔用組成物は、象牙細管封鎖能に優れ、短期間で効率的にしみ歯症状を防止または緩和することができる。
【0045】
本発明による口腔用組成物は、適切な剤形化及び剤形安定性、所望の効果の増進、使用嗜好度の増進などのため、例えば、湿潤剤、研磨剤、薬効剤、甘味剤、pH調整剤、防腐剤、結合剤、香料、増白剤、気泡剤または精製水などの添加剤をさらに含むことができるが、これらに限定されない。
【0046】
前記湿潤剤は例えば、これらに限定されないが、濃グリセリン、グリセリン、ソルビトール水溶液または非結晶性ソルビトール水溶液を単独でまたは混合して使用でき、その使用量は口腔用組成物の全体重量に対して1〜60重量%であり得るが、これに限定されない。
【0047】
前記研磨剤は例えば、これらに限定されないが、沈降シリカ、シリカゲル、ジルコニウムシリケート、リン酸一水素カルシウム、無水リン酸一水素カルシウム、含水アルミナ、炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カルシウムピロリン酸塩、不溶性メタリン酸塩またはアルミニウムシリケートを使用することができる。このような研磨剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して1〜60重量%であり得るが、これに限定されない。
【0048】
前記水溶性またはアルコール溶解性高分子は、薬効剤と0.1〜15:0.005〜5の重量比で混合し、すなわち、0.1〜1:0.05〜5、0.1〜2:0.05〜5、0.1〜3:0.05〜5、0.1〜4:0.05〜5、0.1〜5:0.05〜5、0.1〜6:0.05〜5、0.1〜7:0.05〜5、0.1〜8:0.05〜5、0.1〜9:0.05〜5、0.1〜10:0.05〜5、0.1〜11:0.05〜5、0.1〜12:0.05〜5、0.1〜13:0.05〜5、0.1〜14:0.05〜5、0.1〜15:0.05〜5、0.1〜15:0.05〜1、0.1〜1:0.05〜2、0.1〜1:0.05〜3、0.1〜1:0.05〜4、0.1〜1:0.05〜5で混合し、0.3〜10:0.01〜3の重量比で混合することが望ましい。すなわち、0.3〜1:0.01〜3、0.3〜2:0.01〜3、0.3〜3:0.01〜3、0.3〜4:0.01〜3、0.3〜5:0.01〜3、0.3〜5:0.01〜3、0.3〜6:0.01〜3、0.3〜7:0.01〜3、0.3〜8:0.01〜3、0.3〜9:0.01〜3、0.3〜10:0.01〜3、0.3〜10:0.01〜1、0.3〜1:0.01〜2、0.3〜1:0.01〜3の重量比で混合することができ、上記のような重量比で混合することで、従来薬効剤が歯面に長く留まらず効果が持続できないという短所を解決した。
【0049】
前記薬効剤は例えば、これらに限定されないが、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、クロルヘキシジン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アミノカプロン酸、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロールまたは酵素類などを単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
本発明において、前記薬効剤は、組成物総重量の0.005〜5重量%であり得る。すなわち、0.005、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5重量%であり得、0.01〜2重量%であることが望ましく、0.3〜1重量%であることがより望ましい。0.005重量%未満であれば、薬効剤が有効に効果を発揮できず、5重量%を超えれば、含有量に比べて著しい効果を発揮できない。
【0051】
前記甘味剤は例えば、これらに限定されないが、サッカリンナトリウム、キシリトール、エリトリトールまたはアスパルテームなどを使用でき、このような甘味剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して0.05〜0.5重量%であり得るが、これに限定されない。
【0052】
前記pH調整剤は例えば、これらに限定されないが、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、酒石酸または酒石酸ナトリウムなどを使用でき、望ましいpHは5〜10、すなわち、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10である。
【0053】
前記防腐剤は例えば、これらに限定されないが、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは安息香酸ナトリウムなどを単独でまたは混合して使用することができる。
【0054】
前記結合剤は例えば、これらに限定されないが、グアーガム、ペクチン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ラポナイト、カルボマー、カラギナン、キサンタンガムまたはアルジネート類などを使用することができる。このような結合剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して0.1〜3重量%であり、望ましくは0.5〜2重量%であり得るが、これに限定されない。
【0055】
前記香料は例えば、これらに限定されないが、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、カルボンまたはメントールなどを単独でまたは混合して使用でき、これらを一定比率混合した香料にアニスオイル(anise oil)を適量混合することが望ましい。
【0056】
前記増白剤としては酸化チタンを使用でき、望ましくは0.1〜2重量%を使用することができる。
【0057】
前記気泡剤は例えば、これらに限定されないが、陰イオン性界面活性剤であるアルキル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンの共重合体(ポロキサマー)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを使用することができる。このような気泡剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して0.5〜5重量%であり、望ましくは0.5〜3.5重量%であり得るが、これに限定されない。
【0058】
前記甘味剤は、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルレチン酸などを単独でまたは混合して使用でき、0.05〜0.5重量%を混合して使用することができる。
【0059】
本発明の口腔用組成物は、その他の添加剤としてデキストラナーゼなどの酵素類を使用することもできる。
【0060】
本発明の口腔用組成物は、有効成分、添加剤の外に、残量の水、望ましくは精製水を含むことができる。
【0061】
本発明による口腔用組成物は、その剤形において例えば、歯磨き剤、口腔用洗浄剤、スプレー、口腔用清浄剤、ガム、キャンデー類、口腔うがい液、歯美白剤などの剤形を有しえるが、これに限定されず、口腔内に投入後、口腔組織と接触する可能性のある剤形であれば制限なく含まれ、通常の技術者に周知の通常の手段によって剤形化することができる。
【0062】
また、本発明は、i)銅塩または亜鉛塩;ii)水溶性またはアルコール溶解性高分子;またはiii)i)とii)との混合物を有効成分として含む組成物を、それを必要とする個体に適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法を提供する。
【0063】
前記個体は、望ましくは哺乳動物、より望ましくはヒトであり得、前記適用は望ましくは口腔内に適用することを意味する。
【0064】
[i)銅塩または亜鉛塩;及びii)ジカルボン酸またはその塩を有効成分として含むしみ歯防止または緩和用口腔用組成物]
本発明において、以下、「i)銅塩または亜鉛塩;及びii)ジカルボン酸またはその塩を有効成分として含むしみ歯防止または緩和用口腔用組成物」についての説明は、記載の重複を避けるため、「i)銅塩または亜鉛塩;及びii)ジカルボン酸またはその塩を有効成分として含む組成物を適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法」及び「しみ歯症状の防止または緩和用組成物を製造するためのi)銅塩または亜鉛塩;及びii)ジカルボン酸またはその塩の用途」でも同様に適用されることとする。
【0065】
前記口腔用組成物を口腔内に適用する場合、銅塩または亜鉛塩が口腔内に存在するタンパク質または酵素、これらに限定されないが、例えば、ムチン、ヒスタチン、シスタチン、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、カゼイン、アミラーゼ、リゾチーム、グロブリン、粘膜糖蛋白質、アルブミン、オリゴ及びポリペプチドなどと口腔内でタンパク質複合体(沈殿物)を形成することができる。前記タンパク質複合体は、直径が7μm以下であり得る。すなわち、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7μm以下であり得、望ましくは5μm以下であり得る。歯の象牙細管の平均直径が3〜7μmであるため、口腔内で形成されたタンパク質複合体は象牙細管の内部に容易に導入可能である。
【0066】
前記タンパク質複合体は、タンパク質凝集体であるため、象牙細管内のタンパク質と強い2次結合である水素結合を形成でき、亜鉛イオンとタンパク質の凝集によって電気的に非編在化している状態で歯の構成成分と静電引力も発生でき、象牙細管内の歯髄;及び構成成分であるヒドロキシアパタイトとタンパク質との親和力が高いため、象牙細管内で長時間残留できる特徴を有し、最終的には象牙細管を効果的に封鎖して歯のしみ歯症状を防止または緩和することができる。
【0067】
また、ジカルボン酸は、唾液内のカルシウムイオンと接触してカルシウム複合体を形成するが、歯の象牙細管の封鎖、カルシウムイオンとの反応性及び歯への付着力などを考慮して、炭素数2〜9のジカルボン酸であることが望ましく、すなわち、炭素数2、3、4、5、6、7、8、9のジカルボン酸であり得る。口腔内で形成された前記カルシウム複合体は象牙細管の内部に容易に導入可能であり、特に前記銅塩または亜鉛塩が形成したタンパク質複合体とともに象牙細管を封鎖できるため、より効果的に象牙細管を封鎖してしみ歯症状を防止または緩和することができる。
【0068】
また、前記口腔用組成物は、象牙細管液と反応して複合体を形成することができる。
【0069】
すなわち、前記組成物は、口腔内でタンパク質複合体及びカルシウム複合体を形成して優れた象牙細管封鎖能を有するため、しみ歯防止及び/または緩和効果を発揮することができる。
【0070】
本発明において、前記銅塩または亜鉛塩は、組成物総重量の0.02〜5重量%で含むことができる。すなわち、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5重量%含むことができ、0.05〜3重量%含むことが望ましく、0.05〜1重量%含むことがより望ましい。0.02重量%未満を含む場合は、タンパク質との複合体の生成量が十分ではなくしみ歯緩和効果を発揮し難く、5重量%を超えれば、口腔刺激などの原因になる恐れがある。
【0071】
本発明で使用された銅塩は、これらに限定されないが、例えば、塩化第一銅、塩化第二銅、ヨウ化第一銅、硫酸銅、窒酸銅、ピロリン酸銅、クロロフィル銅、グルコン酸銅またはこれらの2以上の混合物であり得る。
【0072】
本発明で使用された亜鉛塩は、これらに限定されないが、例えば、窒酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、炭酸亜鉛、フッ化亜鉛、水酸化亜鉛、シュウ酸亜鉛またはこれらの2以上の混合物であり得る。
【0073】
望ましくは、本発明は、象牙細管の封鎖効果を上昇させるため、ジカルボン酸またはその塩を含むことができ、より望ましくは炭素数2〜9のジカルボン酸またはその塩を含むことができる。
【0074】
前記ジカルボン酸は、これらに限定されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸またはその2以上の混合物であり得、優れた沈殿物形成を考慮して、より高い水溶解度を有するシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸またはその2以上の混合物が望ましい。
【0075】
ジカルボン酸の塩は、前記ジカルボン酸と金属イオンとが結合したものを意味し、前記金属は例えば、これらに限定されないが、望ましくはナトリウム(Na)、カリウム(K)であり得る。
【0076】
本発明において、前記ジカルボン酸またはその塩は、組成物総重量の0.01〜5重量%で含むことができる。すなわち、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5重量%含むことができ、0.1〜3重量%含むことが望ましく、0.1〜1重量%含むことがより望ましい。0.01重量%未満を含む場合は、カルシウム複合体の生成量が十分ではなくしみ歯緩和効果を発揮し難く、5重量%を超えれば、原料自体の味が強過ぎて実際使用が困難であるという問題があり得る。
【0077】
本発明において、前記銅塩または亜鉛塩は、ジカルボン酸またはその塩と1:0.1〜12の重量比で混合し、すなわち1:0.1〜1、1:0.1〜2、1:0.1〜3、1:0.1〜4、1:0.1〜5、1:0.1〜6、1:0.1〜7、1:0.1〜8、1:0.1〜9、1:0.1〜10、1:0.1〜11、1:0.1〜12の重量比で混合し、望ましくは1:0.5〜7の重量比、すなわち、1:0.5〜1、1:0.5〜2、1:0.5〜3、1:0.5〜4、1:0.5〜5、1:0.5〜6、1:0.5〜7で混合することで、しみ歯症状の防止または緩和の上昇効果を奏することができる。上記の範囲から外れる場合は、剤形化及び製品の安定性に問題があり得、所望のしみ歯緩和効果が得られない恐れがある。
【0078】
したがって、本発明の口腔用組成物は、象牙細管封鎖能に優れ、短期間で効率的にしみ歯症状を防止または緩和することができる。
【0079】
本発明による口腔用組成物は、適切な剤形化及び剤形安定性、所望の効果の増進、使用嗜好度の増進などのため、例えば、湿潤剤、研磨剤、薬効剤、甘味剤、pH調整剤、防腐剤、結合剤、香料、増白剤、気泡剤または精製水などの添加剤をさらに含むことができるが、これらに限定されない。
【0080】
前記湿潤剤は例えば、これらに限定されないが、濃グリセリン、グリセリン、ソルビトールまたは非結晶性ソルビトールを単独でまたは混合して使用でき、その使用量は口腔用組成物の全体重量に対して1〜60重量%であり得るが、これに限定されない。
【0081】
前記研磨剤は例えば、これらに限定されないが、沈降シリカ、シリカゲル、ジルコニウムシリケート、リン酸一水素カルシウム、無水リン酸一水素カルシウム、含水アルミナ、炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カルシウムピロリン酸塩、不溶性メタリン酸塩またはアルミニウムシリケートを使用することができる。このような研磨剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して1〜60重量%であり得るが、これに限定されない。
【0082】
前記薬効剤は例えば、これらに限定されないが、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、クロルヘキシジン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アミノカプロン酸、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロールまたは酵素類などを単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0083】
本発明において前記薬効剤は、組成物総重量の0.005〜5重量%であり得る。すなわち、0.005、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5重量%であり得、0.01〜2重量%であることが望ましく、0.3〜1重量%であることがより望ましい。0.005重量%未満であれば、薬効剤が有効に効果を発揮できず、5重量%を超えれば、含有量に比べて著しい効果を発揮することができない。
【0084】
前記甘味剤は例えば、これらに限定されないが、サッカリンナトリウム、キシリトール、エリトリトールまたはアスパルテームなどを使用でき、このような甘味剤の使用量は一般に口腔用組成物の全体重量に対して0.05〜0.5重量%であり得るが、これに限定されない。
【0085】
前記pH調整剤は例えば、これらに限定されないが、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを使用でき、本発明による組成物の望ましいpHは5〜10である。
【0086】
前記防腐剤は例えば、これらに限定されないが、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、パラオキシ安息香酸エステルまたは安息香酸ナトリウムなどを単独でまたは混合して使用することができる。
【0087】
前記結合剤は例えば、これらに限定されないが、グアーガム、ペクチン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ラポナイト、カルボマー、カラギナン、キサンタンガムまたはアルジネート類などを使用することができる。このような結合剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して0.1〜3重量%であり、望ましくは0.5〜2重量%であり得るが、これに限定されない。
【0088】
前記香料は例えば、これらに限定されないが、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、カルボンまたはメントールなどを単独でまたは混合して使用でき、望ましくはこれらを一定比率混合した香料にアニスオイルを適量混合することができる。
【0089】
前記増白剤としては酸化チタンを使用でき、望ましくは0.1〜2重量%を使用することができる。
【0090】
前記気泡剤は例えば、これらに限定されないが、陰イオン性界面活性剤であるアルキル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンの共重合体(ポロキサマー)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを使用することができる。このような気泡剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して0.5〜5重量%であり、望ましくは0.5〜3.5重量%であり得るが、これに限定されない。
【0091】
前記甘味剤は例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルレチン酸などを単独でまたは混合して使用でき、0.05〜0.5重量%を混合して使用することができる。
【0092】
本発明の口腔用組成物は、その他添加剤としてデキストラナーゼなどの酵素類を使用することもできる。
【0093】
本発明の口腔用組成物は、有効成分、添加剤の外に、残量の水、望ましくは精製水を含むことができる。
【0094】
本発明による口腔用組成物は、その剤形において例えば、歯磨き剤、口腔用洗浄剤、スプレー、口腔用清浄剤、ガム、キャンデー類、口腔うがい液、歯美白剤などの剤形を有し得るが、これに限定されず、口腔内に投入後、口腔組織と接触する可能性のある剤形であれば制限なく含まれ、通常の技術者に周知の通常の手段によって剤形化することができる。
【0095】
また、本発明は、i)銅塩または亜鉛塩;及びii)ジカルボン酸またはその塩を有効成分として含む組成物を、それを必要とする個体に適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法を提供する。
【0096】
前記個体は、望ましくは哺乳動物、より望ましくはヒトであり得、前記適用は望ましくは口腔内に適用することを意味する。
【0097】
[i)ジカルボン酸またはその塩;及びii)部分溶解性カルシウム塩を有効成分として含むしみ歯防止または緩和用口腔用組成物]
本発明において、以下、「i)ジカルボン酸またはその塩;及びii)部分溶解性カルシウム塩を有効成分として含むしみ歯防止または緩和用口腔用組成物」についての説明は、記載の重複を避けるため、「i)ジカルボン酸またはその塩;及びii)部分溶解性カルシウム塩を有効成分として含む組成物を適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法」及び「しみ歯症状の防止または緩和用組成物を製造するためのi)ジカルボン酸またはその塩;及びii)部分溶解性カルシウム塩の用途」でも同様に適用されることとする。
【0098】
本発明者らは、本発明の組成物が唾液及び/または象牙細管液とカルシウム複合体を形成して露出した象牙細管を封鎖することで、優れたしみ歯防止及び/または緩和効果を奏することを確認した。
【0099】
ジカルボン酸は、唾液内のカルシウムイオンと接触してカルシウム複合体を形成するが、歯の象牙細管の封鎖、カルシウムイオンとの反応性及び歯への付着力などを考慮して、炭素数2〜9のジカルボン酸、すなわち、炭素数2、3、4、5、6、7、8、9のジカルボン酸であることが望ましい。口腔内で形成された前記カルシウム複合体は、象牙細管の内部に容易に導入可能であり、部分溶解性カルシウム塩、望ましくは溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩をさらに含まれる場合、より多くのカルシウム複合体を形成して象牙細管をより効果的に封鎖し、しみ歯症状を防止及び/または緩和することができる。また、望ましくは、リン酸塩をさらに含む場合、より優れたしみ歯防止及び/または緩和効果;及び歯の再石灰化(remineralization)効果を達成でき、これは本発明者らが実験によって確認した。
【0100】
すなわち、前記組成物は、歯の再石灰化効能及び/または象牙細管封鎖能を有することを特徴とする。
【0101】
本発明は、ジカルボン酸またはその塩を含むことができ、望ましくは炭素数2〜9のジカルボン酸またはその塩を含むことができる。
【0102】
前記ジカルボン酸は、これらに限定されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸またはその2以上の混合物であり得、優れた沈殿物形成を考慮して、より高い水溶解度を有するシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸またはその2以上の混合物が望ましい。
【0103】
ジカルボン酸の塩は、前記ジカルボン酸と金属イオンとが結合したものを意味し、前記金属は例えば、これらに限定されないが、望ましくはナトリウム(Na)、カリウム(K)であり得る。
【0104】
本発明において、前記ジカルボン酸またはその塩は、組成物総重量の0.01〜5重量%で含むことができる。すなわち、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5重量%含むことができ、0.1〜3重量%含むことが望ましく、0.1〜1重量%含むことがより望ましい。0.01重量%未満を含む場合は、カルシウム複合体の生成量が十分ではなくしみ歯緩和効果を発揮し難く、5重量%を超えれば、原料自体の味が強過ぎて実際使用が困難であるという問題があり得る。
【0105】
本発明の組成物は、象牙細管の封鎖効果を上昇させるため、部分溶解性カルシウム塩を含む。
【0106】
本明細書で使われる用語「部分溶解性(partially soluble)カルシウム塩」とは、溶媒、望ましくは水に全部溶解されず、一部のみが溶解されるカルシウム塩を意味し、本発明で使われる部分溶解性カルシウム塩は、望ましく溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩である。すなわち、本発明者らは、溶解度が高過ぎるカルシウム塩が含まれる場合、反応があまりにも早く進んでしまい、歯に適用する前の製品内でカルシウム複合体が形成されるという問題点があるため、適切な溶解度を有するカルシウム塩を本発明の組成物に添加することで著しい効果を奏することを確認した。
【0107】
すなわち、前記カルシウム塩は、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、水酸化カルシウム、ヨウ素酸カルシウムまたはこれらの2以上の混合物であり得る。
【0108】
本発明の組成物に添加できる溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20であるカルシウム塩の例及びその溶解度積定数(Ksp)は以下のようである。
i)炭酸カルシウム:3.8×10−9
ii)リン酸水素カルシウム:1×10−7
iii)亜硫酸カルシウム:6.8×10−8
iv)硫酸カルシウム:9.1×10−6
v)フッ化カルシウム:5.3×10−9
vi)水酸化カルシウム:5.5×10−6
vii)ヨウ素酸カルシウム:7.1×10−7
【0109】
本発明において、前記カルシウム塩は、組成物総重量の1〜50重量%で含むことができる。すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、1〜5、5〜10、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50重量%で含むことができ、1〜30重量%で含むことが望ましく、5〜25重量%で含むことがより望ましい。1重量%未満を含む場合は、カルシウム複合体の生成量が十分ではなくしみ歯緩和効果を発揮し難く、50重量%を超えれば、固形分の含量が多過ぎて相安定性に問題が生じ得る。
【0110】
また、本発明において、i)ジカルボン酸またはその塩と、ii)部分溶解性カルシウム塩との重量比は、1:5〜50(ジカルボン酸またはその塩:部分溶解性カルシウム塩)であり得、すなわち、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、1:28、1:29、1:30、1:31、1:32、1:33、1:34、1:35、1:36、1:37、1:38、1:39、1:40、1:41、1:42、1:43、1:44、1:45、1:46、1:47、1:48、1:49、1:50であり得、1:10〜40であることが望ましく、1:15〜35であることがより望ましい。
【0111】
望ましくは、本発明の組成物は、象牙細管の封鎖効果を上昇させるため、リン酸塩をさらに含むことができる。本発明者らは、リン酸塩を本発明の組成物に添加することで、歯の再石灰化、しみ歯防止及び/または緩和に著しい効果が得られることを実験的に確認した。すなわち、リン酸塩をさらに含むことで、しみ歯防止及び/または緩和に相乗効果が発揮されることを確認した。したがって、最も望ましくは、本発明は、i)ジカルボン酸またはその塩;ii)部分溶解性カルシウム塩;及びiii)リン酸塩を有効成分として含むことを特徴とするしみ歯防止または緩和用口腔用組成物を提供する。
【0112】
本発明において、前記リン酸塩は、リン酸と金属イオンとが結合したものを意味し、前記金属は例えば、これらに限定されないが、望ましくはナトリウム(Na)、カリウム(K)などであり得る。
【0113】
すなわち、例えば、これらに限定されないが、前記リン酸塩は第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウムまたはこれらの2以上の混合物であり得る。
【0114】
本発明において、前記リン酸塩は、組成物総重量の0.01〜10重量%で含むことができる。すなわち、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10重量%を含むことができ、0.1〜7重量%を含むことが望ましく、0.5〜5重量%を含むことがより望ましい。0.01重量%未満を含む場合は、しみ歯緩和効果を発揮し難く、10重量%を超えれば、溶解度が低下して相安定性に問題が生じ得る。
【0115】
また、本発明において、i)ジカルボン酸またはその塩と、ii)部分溶解性カルシウム塩と、iii)リン酸塩との重量比は、1:5〜50:1〜30(ジカルボン酸またはその塩:部分溶解性カルシウム塩:リン酸塩)であり得る。すなわち、1:5:1〜30、1:10:1〜30、1:15:1〜30、1:20:1〜30、1:25:1〜30、1:30:1〜30、1:35:1〜30、1:40:1〜30、1:45:1〜30、1:50:1〜30、1:5〜50:1、1:5〜50:2、1:5〜50:3、1:5〜50:4、1:5〜50:5、1:5〜50:6、1:5〜50:7、1:5〜50:8、1:5〜50:9、1:5〜50:10、1:5〜50:11、1:5〜50:12、1:5〜50:13、1:5〜50:14、1:5〜50:15、1:5〜50:16、1:5〜50:17、1:5〜50:18、1:5〜50:19、1:5〜50:20、1:5〜50:21、1:5〜50:22、1:5〜50:23、1:5〜50:24、1:5〜50:25、1:5〜50:26、1:5〜50:27、1:5〜50:28、1:5〜50:29、1:5〜50:30であり得、1:10〜40:2〜25であることが望ましく、1:15〜35:2〜20であることがより望ましい。上記の重量比で混合することで、しみ歯症状の防止または緩和の相乗効果を奏することができる。上記の範囲から外れる場合は、剤形化及び製品の安定性に問題が生じ得、所望のしみ歯緩和効果が得られない恐れがある。
【0116】
本発明による口腔用組成物は、適切な剤形化及び剤形安定性、所望の効果の増進、使用嗜好度の増進などのため、例えば、湿潤剤、研磨剤、薬効剤、甘味剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、結合剤、香料、増白剤、気泡剤または精製水などの添加剤をさらに含むことができるが、これらに限定されない。
【0117】
前記湿潤剤は例えば、これらに限定されないが、濃グリセリン、グリセリン、ソルビトールまたは非結晶性ソルビトールを単独でまたは混合して使用でき、その使用量は口腔用組成物の全体重量に対して1〜60重量%であり得るが、これに限定されない。
【0118】
前記研磨剤は例えば、これらに限定されないが、シリカ(沈降シリカ)、シリカゲル、ジルコニウムシリケート、含水アルミナまたはアルミニウムシリケートを使用することができる。研磨剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して1〜60重量%であり得るが、これに限定されない。
【0119】
前記薬効剤は例えば、これらに限定されないが、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、クロルヘキシジン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アミノカプロン酸、塩酸ピリドキシン、トコフェリルアセテート、酢酸トコフェロールまたは酵素類などを単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0120】
本発明において、前記薬効剤は、組成物総重量の0.005〜5重量%であり得、0.01〜2重量%であることが望ましく、0.3〜1重量%であることがより望ましい。0.005重量%未満であれば、薬効剤が有効に効果を発揮できず、5重量%を超えれば、含有量に比べて著しい効果を発揮することができない。
【0121】
前記甘味剤は例えば、これらに限定されないが、サッカリンナトリウム、キシリトール、エリトリトールまたはアスパルテームなどを使用でき、このような甘味剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して0.05〜0.5重量%であり得るが、これに限定されない。
【0122】
前記pH調整剤は例えば、これらに限定されないが、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを使用することができる。
【0123】
前記防腐剤は例えば、これらに限定されないが、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、パラオキシ安息香酸エステルまたは安息香酸ナトリウムなどを単独でまたは混合して使用することができる。
【0124】
前記増粘剤としては例えば、カルボキシメチルセルロースなどを使用することができる。
【0125】
前記結合剤は例えば、これらに限定されないが、グアーガム、ペクチン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ラポナイト、カルボマー、カラギナン、キサンタンガムまたはアルジネート類などを使用することができる。このような結合剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して0.1〜3重量%であり、望ましくは0.5〜2重量%であり得るが、これに限定されない。
【0126】
前記香料は例えば、これらに限定されないが、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、カルボンまたはメントールなどを単独でまたは混合して使用でき、望ましくはこれらを一定比率混合した香料にアニスオイルを適量混合することができる。
【0127】
前記増白剤としては酸化チタンを使用でき、望ましくは0.1〜2重量%で使用することができる。
【0128】
前記気泡剤は例えば、これらに限定されないが、陰イオン性界面活性剤であるアルキル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンの共重合体(ポロキサマー)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを使用することができる。このような気泡剤の使用量は、一般に口腔用組成物の全体重量に対して0.5〜5重量%であり、望ましくは0.5〜3.5重量%であり得るが、これに限定されない。
【0129】
前記甘味剤は例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルレチン酸などを単独でまたは混合して使用でき、0.05〜0.5重量%を混合して使用することができる。
【0130】
本発明の口腔用組成物は、その他の添加剤としてデキストラナーゼなどの酵素類を使用することもできる。
【0131】
本発明の口腔用組成物は、有効成分、添加剤の外に、残量の水、望ましくは精製水を含むことができる。
【0132】
本発明による口腔用組成物は、その剤形において例えば、歯磨き剤、口腔用洗浄剤、スプレー、口腔用清浄剤、ガム、キャンデー類、口腔うがい液、歯美白剤などの剤形を有し得るが、これに限定されず、口腔内に投入後、口腔組織と接触する可能性のある剤形であれば制限なく含まれ、通常の技術者に周知の通常の手段によって剤形化することができる。
【発明の効果】
【0133】
したがって、本発明による口腔用組成物は、象牙細管液と反応してタンパク質複合体を形成する特性を有する銅塩または亜鉛塩を含むことで、象牙細管の封鎖を誘導し、象牙細管の封鎖効果を維持するため水溶性またはアルコール溶解性高分子を含むことで、象牙細管の封鎖効果を著しく上昇させ、短期間で効率的にしみ歯症状を防止または緩和する効果を奏することができる。
【0134】
また、本発明による口腔用組成物は、象牙細管液と反応してタンパク質複合体を形成する特性を有する銅塩または亜鉛塩を含み、カルシウムのような無機物と反応して複合体を形成するジカルボン酸を含むことで、象牙細管の封鎖を誘導し、封鎖効果を著しく上昇させることで、短期間で効率的にしみ歯症状を防止または緩和する効果を奏することができる。
【0135】
また、本発明による口腔用組成物は、口腔内でカルシウム複合体を形成する特性を有するジカルボン酸及びその塩を含むことで象牙細管の封鎖を誘導し、部分溶解性カルシウム塩及び/またはリン酸塩をさらに含むことで象牙細管の封鎖効果を著しく上昇させ、短期間で効率的にしみ歯症状を防止または緩和する効果を奏することができる。
【0136】
また、本発明は、i)ジカルボン酸またはその塩;及びii)部分溶解性カルシウム塩を有効成分として含む組成物を、それを必要とする個体に適用する段階を含むしみ歯症状を防止または緩和する方法を提供する。
【0137】
前記個体は、望ましくは哺乳動物、より望ましくはヒトであり得、前記適用は望ましくは口腔内に適用することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0138】
図1】実施例1のタンパク質沈澱を示した写真である。
図2】実施例2のタンパク質沈澱を示した写真である。
図3】実験例1−2(象牙細管封鎖力)による実施例1〜4の結果を示した写真である。
図4】実験例1−2(象牙細管封鎖力)による実施例5〜9の結果を示した写真である。
図5】実験例1−2(象牙細管封鎖力)による比較例1及び2の結果を示した写真である。
図6】実験例2−1(象牙細管封鎖力)による実施例10〜15の結果を示した写真である。
図7】実験例2−1(象牙細管封鎖力)による比較例3〜6の結果を示した写真である。
図8】実験例2−1(象牙細管封鎖力)による比較例7〜9の結果を示した写真である。
図9】実験例3−2(象牙細管封鎖力)による実施例16〜21の結果を示した写真である。
図10】実験例3−2(象牙細管封鎖力)による実施例23〜27の結果を示した写真である。
図11】実験例3−2(象牙細管封鎖力)による実施例28〜32の結果を示した写真である。
図12】実験例3−2(象牙細管封鎖力)による比較例10〜15の結果を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0139】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明を具体的に説明する。しかし、本発明による実施例及び実験例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例及び実験例によって限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例及び実験例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0140】
1.銅塩または亜鉛塩、及び/または、水溶性またはアルコール溶解性高分子含有組成物
実施例1〜9及び比較例1〜2の製造
【0141】
実施例及び比較例の歯磨き組成物は、下記表1に示した成分及び組成比で製造した。湿潤剤としてのソルビトール液に、粉末成分としてサッカリンナトリウム、防腐剤などを分散させ、精製水に入れた後、混合機で1次混合し、その後、研磨剤として沈降シリカまたは炭酸カルシウムなどと、薬効剤としてモノフルオロリン酸ナトリウムと亜鉛塩または銅塩などを投入して混合した。最後に、気泡剤であるラウリル硫酸ナトリウム、水溶性またはアルコール溶解性高分子類、安定剤類、香料成分を入れ、真空状態下で混合して歯磨き組成物を製造した。
【0142】
【表1】
【0143】
<実験例1−1>
象牙細管内タンパク質沈澱効果の実験
表1の実施例1及び2と比較例1及び2の歯磨き組成物を使用した歯磨き剤のタンパク質沈澱効果は、象牙細管液とその成分が類似するウシ血清タンパク質を用いて検証した。
【0144】
1)実験方法
(1)象牙細管液沈澱効果
1. 実施例と比較例を生理食塩水に10%濃度で十分分散させた後、遠心分離して上澄み液のみをエッペンドルフチューブに入れた。
2. FBSを加えて、最終的にFBSと生理食塩水との比率が1:3になるようにした。
3. 沈殿したタンパク質の様相を光学顕微鏡で観察し、沈殿率の結果を表2に示した。
【0145】
(2)実験結果
【表2】
【0146】
表2から分かるように、実施例1及び2は血清タンパク質と反応してタンパク質複合体を形成した。比較例1及び2は効果がなかったが、実施例1及び2はタンパク質複合体を形成し、その大きさが2μm程度であって、約5μm程度の直径を有する象牙細管内に入るのに適したことが確認できた(図1及び2)。
【0147】
<実験例1−2>
象牙細管封鎖力(dentine coverageの評価)
表1の実施例1〜9と比較例1及び2の歯磨き組成物を使用した歯磨き剤の象牙細管封鎖効果は、牛歯の試片を用いた象牙細管封鎖能評価法を用いてSEMイメージでその結果を確認した。
【0148】
1)実験方法
(1)象牙細管封鎖能
1. 牛歯試片の表面をグラインディングして象牙細管を露出させ、クエン酸溶液で表面を脱灰させた試片を、実施例と比較例の歯磨き剤、人工唾液を20回繰り返して処理した。
2. 処理した試片を蒸留水で洗浄した後、乾燥してSEMイメージで観測した。SEMイメージの結果は、次のように6点尺度で評価して、3点以上を有効と判断した。その結果は表3に示した。
【0149】
[評価基準]
6:表面を完全に覆った後、多重層(multi−layer)を形成。
5:象牙細管を塞ぎ、象牙質表面を完全に覆う。
4:象牙細管の内部に浸透し、表面の一部を覆う。
3:象牙細管と象牙質の表面が50%以上覆われる。
2:象牙細管と象牙質の表面に沈殿物が観測され、50%以下を覆う。
1:象牙細管を塞ぐことができない。
【0150】
2)実験結果
【表3】
【0151】
表3から分かるように、比較例1及び2は象牙細管を全く封鎖できなかったが、タンパク質沈殿を誘導する実施例1及び2は象牙細管封鎖能を有することが確認でき、水溶性またはアルコール溶解性高分子を含む実施例3〜5は、これを含まない比較例1及び2と比べて、象牙質の表面に均一に塗布されて優れた象牙細管封鎖効果を有することが確認できた。タンパク質沈殿誘導体と水溶性またはアルコール溶解性高分子をともに含む実施例6〜9は、象牙細管表面を覆う実施例3〜5と比べてさらに厚い層を形成して最も優れた象牙細管封鎖能を見せ、封鎖持続効率も増進して、これらの相乗効果を通じて効率的なしみ歯の緩和が可能であることを確認した。
【0152】
2.銅塩または亜鉛塩;及びジカルボン酸またはその塩の含有組成物
実施例10〜15及び比較例3〜9の製造
実施例及び比較例の歯磨き組成物を下記表4に示した成分及び組成比で製造した。より詳しくは、湿潤剤としてのソルビトール液に、粉末成分としてサッカリンナトリウム、防腐剤(パラオキシ安息香酸エステル)などを分散させ、精製水に入れた後、混合機で1次混合し、その後、研磨剤として沈降シリカまたは炭酸カルシウムなどと、薬効剤としてモノフルオロリン酸ナトリウム、亜鉛塩または銅塩と、ジカルボン酸またはその塩などを投入して混合した。最後に、気泡剤であるラウリル硫酸ナトリウムを入れて、真空状態下で混合して歯磨き組成物を製造した。
【0153】
【表4】
【0154】
<実験例2−1>
象牙細管封鎖力(dentine coverageの評価)
表4の実施例10〜15と比較例3〜9の歯磨き組成物を使用した歯磨き剤の象牙細管封鎖効果は、牛歯の試片を用いた象牙細管封鎖能評価法を用いてSEMイメージでその結果を確認した。
【0155】
1)実験方法
実験方法と評価基準は、上記実験例1−2と同様である。
【0156】
2)実験結果
実験結果を下記表5に示した。
【表5】
【0157】
図6〜8及び表5に示したように、しみ歯緩和製剤を含まない比較例3は象牙細管封鎖効果がなく、有機物と反応して沈殿物を形成する銅塩または亜鉛塩を単独で使用したとき(比較例4、5)、及び無機物であるカルシウムと反応して沈殿物を形成するジカルボン酸を単独で使用したとき(比較例6、7、8、9)は、象牙細管封鎖効果が多少低下する傾向があった。しかし、銅塩または亜鉛塩とジカルボン酸またはその塩をともに使用したとき(実施例10〜15)、有機物及び無機物の何れとも反応し、2つの物質も反応して沈殿物を形成するため、反応して生成された水不溶性沈殿物の量が増えながら、歯付着力も優れてしみ歯緩和効果が増進することが確認できた。特に、シュウ酸の場合、単独で使用したときはその効果が低いが、有機物複合体である銅塩または亜鉛塩とともに使用したとき、効果が著しく増加して、この2つの相乗効果を通じて効率的なしみ歯緩和が可能になることが確認できた(実施例12、比較例6)。
【0158】
3.ジカルボン酸またはその塩;及び部分溶解性カルシウム塩含有組成物
実施例16〜23及び比較例10〜12の製造
実施例及び比較例の歯磨き組成物を下記表6に示した成分及び組成比で製造した。湿潤剤としてのソルビトール液に、粉末成分としてジカルボン酸またはその塩、薬効剤としてモノフルオロリン酸ナトリウムなどを分散させ、精製水に入れた後、混合機で1次混合し、その後、研磨剤としてシリカ(沈降シリカ)と溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩である炭酸カルシウム及びリン酸水素カルシウムなどと、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース、キサンタンガムなどを投入して混合した。気泡剤であるラウリル硫酸ナトリウム、最後に薬効剤としてトコフェリルアセテートを入れて、真空状態下で混合して歯磨き組成物を製造した。
【0159】
【表6】
【0160】
実施例24〜32及び比較例13〜15の製造
実施例及び比較例の歯磨き組成物を下記表7に示した成分及び組成比で製造した。湿潤剤としてのソルビトール液に、粉末成分としてジカルボン酸またはその塩、薬効剤としてモノフルオロリン酸ナトリウム、リン酸塩であるリン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどを分散させ、精製水に入れた後、混合機で1次混合し、その後、研磨剤としてシリカ(沈降シリカ)と溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩である炭酸カルシウム及びリン酸水素カルシウムなどと、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース、キサンタンガムなどを投入して混合した。気泡剤であるラウリル硫酸ナトリウム、最後に薬効剤としてトコフェリルアセテートを入れて、真空状態下で混合して歯磨き組成物を製造した。
【0161】
【表7】
【0162】
<実験例3−1>
再石灰化(remineralization)効果の確認
本発明者らは、表6及び7の実施例16〜32と比較例10〜15の歯磨き組成物を使用した歯磨き組成物の再石灰化効果を測定した。
【0163】
1)実験方法
(1)歯の再石灰化の実験
1. 牛歯試片の表面をグラインディングして象牙細管を露出させ、クエン酸溶液で表面を脱灰させた試片を、ADAの虫歯予防実験法を用いて実施例と比較例の歯磨き剤、人工唾液を20回繰り返して処理した。
2. 初期硬度と末期硬度をビッカース硬度計を用いて測定した後、変化値(ΔVHN、Vickers hardness number)を用いて再石灰化度を測定した。
【0164】
2)実験結果
実験結果を下記表8に示した。
【表8】
【0165】
表8から分かるように、実施例16〜23は、溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩とジカルボン酸またはその塩によって、歯の硬度が比較例10〜15に比べて増加することが確認できた。また、実施例24〜32の硬度増加率は、溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩、ジカルボン酸またはその塩とリン酸塩とが相乗効果を奏しながら、硬度増加幅がさらに大きくなることが確認できた。しかし、溶解度の高い塩である比較例12と15の場合は、カルシウム塩とジカルボン酸とリン酸塩とが直ちに反応し、歯の再石灰化に肯定的な影響より否定的な影響を及ぼすことが確認できた。
【0166】
<実験例3−2>
象牙細管封鎖力(dentine coverageの評価)
表6及び7の実施例16〜32と比較例10〜15の歯磨き組成物を人工唾液に1:3で分散させた後、歯磨きの象牙細管封鎖効果を示差走査顕微鏡を用いてイメージ撮影した後、象牙細管封鎖能評価法を用いてSEMイメージでその結果を確認した。
【0167】
1)実験方法
実験方法と評価基準は、上記実験例1−2と同様である。
【0168】
2)実験結果
実験結果を下記表9に示した。
【表9】
【0169】
表9から分かるように、ジカルボン酸またはその塩と溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩を使用する場合、象牙細管封鎖能が向上することを実施例16〜23から確認できた。また、ジカルボン酸またはその塩、溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩及びリン酸塩を同時に適用した実施例24〜32の場合、リン酸塩の相乗作用によって封鎖能がさらに上昇することが確認された。これは歯硬度の結果と一致する傾向性を有すると確認できる。一方、比較例から分かるように、溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩のみを含む場合、リン酸塩のみを含む場合及び溶解性カルシウムとジカルボン酸またはその塩を使用した場合にも、象牙細管封鎖力は低かった。したがって、溶解度積定数(Ksp)が10−5〜10−20のカルシウム塩とジカルボン酸またはその塩を一緒に適用することが象牙細管封鎖に効果的であり、そこにさらにリン酸塩を加える場合は象牙細管封鎖能がより一層上昇することが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12