(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906780
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】超微細突起形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0236 20060101AFI20210708BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20210708BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20210708BHJP
C30B 33/12 20060101ALI20210708BHJP
C30B 29/62 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
H01L31/04 280
H05H1/24
C30B29/06 B
C30B33/12
C30B29/62 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-204395(P2016-204395)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-67594(P2018-67594A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】599117211
【氏名又は名称】株式会社ユメックス
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】高村 秀一
(72)【発明者】
【氏名】前中 志郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和宣
【審査官】
吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−162639(JP,A)
【文献】
特開2007−221148(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/102165(WO,A1)
【文献】
特開2012−054438(JP,A)
【文献】
特開2011−222951(JP,A)
【文献】
特開2014−057100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
H01L 31/18−31/20
H01L 51/42−51/48
H02S 10/00−10/40
H02S 30/00−99/00
H05H 1/00−1/54
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板を放電処理室の陰極と陽極の間に載置し、
前記基板温度を500℃から1000℃とし、
前記放電処理室に、He、HまたはNeガスの単体または、これらの混合ガスを封入し、
前記陰極と陽極との間に電圧を印加することにより、前記ガスをイオンエネルギー40〜50eVでプラズマ化させて、前記シリコン基板の表面に照射し、これにより、前記シリコン基板の表面にヘリウムの気泡あるいはヘリウム原子の集合を形成させて、前記基板表面に超微細突起を形成させること、
を特徴とする超微細突起形成方法。
【請求項2】
シリコン基板を放電処理室の陰極と陽極の間に載置し、
前記基板温度を500℃から1000℃とし、
前記放電処理室に、He、HまたはNeガスの単体または、これらの混合ガスを封入し、
前記陰極と陽極との間に電圧を印加することにより、前記ガスをイオンエネルギー40〜50eVでプラズマ化させて、前記シリコン基板の表面に照射し、これにより、前記基板表面に高さ300〜1000nmの超微細突起を形成すること、
を特徴とする超微細突起形成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2の超微細突起形成方法において、
前記超微細突起は、先端にいくにつれて幅が細くなるコーン状であり、先端が半径8〜12nmの半球状であること、
を特徴とする超微細突起形成方法。
【請求項4】
請求項3の超微細突起形成方法において、
前記コーン状の超微細突起の根元と高さの比は、2.8〜3.3であること、
を特徴とする超微細突起形成方法。
【請求項5】
光照射面を有するシリコン基板と、前記光照射面に形成された多数の超微細突起とを備えたシリコン太陽電池の製造方法であって、
前記陰極と陽極との間に電圧を印加することにより、入射イオンエネルギー40〜50eVで前記ガスをプラズマ化させて、前記シリコン基板の表面に照射し、これにより、前記シリコン基板の表面にヘリウムの気泡あるいはヘリウム原子の集合を形成させて、前記基板表面に前記超微細突起を形成すること、
を特徴とするシリコン太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は 超微細突起形成方法に関し、特にシリコン表面に形成される超微細形状の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保護への貢献度が高いクリーンエネルギーとして、太陽光発電に対する期待が急激に高まっている。太陽光発電には、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池が用いられ、結晶シリコン太陽電池、薄膜太陽電池、超高効率太陽電池、有機太陽電池などがある。
【0003】
太陽光発電システムの中核である太陽電池に求められるのは、太陽エネルギーから電気への高い変換効率である。結晶シリコン太陽電池を例にすると、シリコン表面に微細な凹凸構造を設け、これにより太陽光の表面反射を極力抑える技術が知られている。反射した太陽光を再び、隣接する凹凸構造へ入射させることにより、光が基板内部に効率よく吸収される。これにより、高い変換効率を実現することができる。
【0004】
かかる凹凸を形成する技術として、以下の手法が知られている。
【0005】
特許文献1には、シリコン系基板に小さな穴が多数開いたマスクを形成して、マスクが形成されていない領域を水素プラズマでエッチングすることで、凹凸構造を形成する技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、高エネルギーのイオンを衝突させる反応性イオンエッチング法で、凹凸構造を形成する技術が開示されている。
【0007】
特許文献3には、単結晶シリコン基板の(100)面をアルカリ水溶液でエッチングすることで、エッチング速度が遅い(110)特定面を出現させて、ピラミッド状の凹凸構造を形成する技術が開示されている。
【0008】
特許文献4には、金属微粒子をスパッタリングにより付着させ、これを種として、炭化水素系ガスおよびキャリアガスを供給し、表面に炭素薄膜により被膜された針状結晶を形成する技術が開示されている(段落0020参照)。
【0009】
非特許文献1には、不純物の粒子を表面に配置して、数千eVもの高いエネルギーをもった比較的重い元素を金属材料表面に衝突させ、これにより、先の尖ったフィン状突起を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-54438号公報
【特許文献2】特許第3855105号公報
【特許文献3】特許第4188483号公報
【特許文献4】特開2004-224576号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】森下敏「スパッタリングによる表面構造変質層形成の研究」インターネット〈 URL http://repo.lib.nitech.ac.jp/bitstream/123456789/185/1/ko0058.pdf 50頁下から5行目 〜53頁2行目および62頁1行目 〜 62頁7行目〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、シリコン基板へのマスクを形成する工程と、後の工程で化学溶液等によるマスクの除去が必要であり、プロセスが複雑である。また、凹凸構造の大きさや精度は、マスクの大きさや線幅といったマスクの性能に影響される。
【0013】
特許文献2に記載された方法では、反応性イオンエッチングを行うので、環境負荷の大きなシランガスなどが不可欠である。
【0014】
特許文献3に記載された方法では、シリコン結晶の面方位に依存したエッチング速度差を利用するので、マスク処理は不要であるが、微細構造の形成には限界がある。また、多結晶のシリコンには適用できない。
【0015】
特許文献4に記載された方法では、金属微粒子をスパッタリングにより付着させる工程が必要であるとともに、表面が炭素薄膜により被膜されているので、太陽電池パネルとして使用するには電子放出能力が低下するため、炭素薄膜除去工程が必要となる。
【0016】
非特許文献1に記載された方法では、不純物の粒子を均一配置しなければ、変換効率が高いシリコン基板を得られない。また、数千eVもの高いエネルギーを有する比較的重い元素を金属材料表面に衝突させるので、シリコン基板の表面が損傷する。したがって、損傷を修復する工程が別途必要となる。
【0017】
本発明は、上記問題がない、超微細な凹凸構造をもったシリコンまたは、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)本発明にかかる超微細突起形成方法は、シリコン基板を放電処理室に載置し、前記基板温度を500℃から1000℃とし、前記放電処理室に、He、HまたはNeガスの単体または、これらの混合ガスを封入し、前記陰極と陽極との間に電圧を印加することにより、前記ガスを数十eV以下でプラズマ化して、前記シリコン基板の表面に照射し、これにより、前記基板表面に高さ数百〜1000nm程度の超微細突起を形成させる。
【0019】
したがって、マスクレスで、光学反射率の低い超微細な凹凸構造をもったシリコン表面を得ることができる。
【0020】
(2)本発明にかかる超微細突起形成方法においては、前記超微細突起の先端直径が数十nm、高さが300〜1000nm程度である。したがって、光学反射率の低い、超超微細な凹凸構造をもったシリコン表面を得ることができる。
【0021】
(3)本発明にかかる超超微細突起形成方法においては、前記超微細突起はコーン状である。したがって、光学反射率の低い超微細な凹凸構造をもったシリコン表面を得ることができる。
【0022】
(4)本発明にかかる超超微細突起形成方法においては、前記超微細突起の先端は、半径8〜12nmの半球状である。したがって、アスペクト比の大きな超微細突起を得ることができる。
【0023】
(5)本発明にかかる超超微細突起形成方法においては、前記超微細突起のアスペクト比は、2.8〜3.3である。したがって、アスペクト比の大きな超微細突起を得ることができる。これにより、光学反射率の低いシリコン基板を得ることができる。
【0024】
(6)本発明にかかるシリコン太陽電池においては、前記各超微細突起は、高さ数百〜1000nmで、アスペクト比は、2.8〜3.3であり、先端は、半径8〜12nmの半球状である。したがって、アスペクト比の大きな超微細突起を得ることができる。これにより、光学反射率の低いシリコン基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明にかかるシリコン1を30度斜めから見たSEM写真である。
【
図6】照射および非照射領域を30度斜めから見たSEM写真である。
【
図7】基板温度および入射エネルギーを高くした場合の拡散反射率の計測結果である。
【
図8】基板温度および入射エネルギーを高くした場合のラマン散乱の計測結果である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、本発明にかかる超微細突起形成方法で形成したシリコン微細突起3のSEM (走査電子顕微鏡)観察結果を示す。
図1のシリコン基板1には、長さ300nm程度のアスペクト比の大きなコーン状のシリコン微細突起3が一様に林立されている。本実施形態においては、アスペクト比が2.8〜3.3程度である。なお、
図1Aは、5000倍、
図1Bは1万倍、
図1Cは5万倍、
図1Dは10万倍の観察写真である。
【0027】
シリコン微細突起3はテーパ状であり、先端が半径8〜12nm程度の半球状である。このように、形状が円柱ではなく、テーパ状であるので、光子の捕獲効果が高い。したがって、シリコン微細突起3が形成されている箇所を目視すると黒色化している。
【0028】
シリコン微細突起3の製造方法について簡単に説明する。本実施形態においては、
図2に示すようなプラズマ照射装置10を採用した。
【0029】
プラズマ照射装置10は、熱陰極 11(LaB6) と銅陽極12の間でガス放電が行われ、これにより10
18m
-3を超える高密度のプラズマを発生させる。本実施形態においては、動作ガスは、ヘリウム(He)とした。このように、プラズマ照射装置10は、ヘリウムをプラズマ化し、このヘリウムイオンをシリコン基板表面に照射することにより、表面に超微細構造を形成する。本実施形態においては、シリコン基板として、(株)ニラコ製のケイ素/ウェハー φ100×0.5mm Low 100 N-typeを用いたが、これに限定されない。
【0030】
本実施形態においては、電子密度を10
18m
-3、電子温度を5eV程度、入射イオンエネルギーを40eV、照射温度を500℃とした。
【0031】
本実施形態においては、基板温度は、基板の裏に熱電対を貼り付けて計測したが、これに限定されない。
【0032】
形成のためのヘリウムイオン照射量は10
25 個/m
2 程度であり、シリコンの表面方位にはよらない。なお、ヘリウムプラズマ照射の条件は、これに限定され
るわけではない。
本実施形態においては、プラズマ照射する軽元素としてヘリウムを用いたが、それ以外でも、ネオン(Ne)、水素(H)ガスを用いてもよい。さらに、ヘリウム、ネオン(Ne)、水素(H)の2種以上の混合ガスを用いてもよい。
【0033】
また、基板温度は、本実施形態においては、500℃としたが、500〜700℃でも可能であり、さらに500〜1000℃程度でも可能である。
【0034】
図3に、シリコン微細突起3を形成したシリコン基板1における各波長に対する反射率を示す。特性曲線55は、上記ヘリウムプラズマ照射をした結晶シリコンの拡散反射率である。特性曲線54は、かかるヘリウムプラズマ照射をしていない結晶シリコンの拡散反射率である。両者を比較すると、太陽光の主要な波長範囲(300 ~ 2500 nm; ピークは500 ~ 600 nm)にわたって、本実施形態のようなコーン状超微細突起を形成しない通常のシリコンと比べると、拡散反射率が半分以下程度に減少している。具体的には波長500 nm では1/5以下である。
【0035】
図4に、シリコン微細突起3を形成したシリコン基板1のラマン散乱の計測結果を示す。特性曲線43は、シリコン基板1のラマン散乱であり、特性曲線45は、かかるヘリウムプラズマ照射をしていないシリコンのラマン散乱である。比較すると、散乱光のスペクトルは、シリコン基板1では、結晶シリコンの場合にみられる約520 cm
-1 にピークがあることから、結晶性の劣化はほとんどないと判断できる。このことは、非結晶シリコンの場合に見られる470 cm
-1 あたりに幅の広いピークがなかった(図示せず)ことからも結晶性の劣化が小さいといえる。かかる結果から結晶性が維持されていることがわかる。また、半値幅が4.8 cm-
-1 から5.4 cm
-1 とわずか10%程度に広がり、散乱光強度が4倍程度と強くなっており、光子捕獲効果が著しいと判断できる。すなわち、超微細構造の光閉じ込め効果が高いことがわかる。
【0036】
図5に、シリコン基板1のX 線回折計測結果を示す。本実施形態においては、表面の結晶性を調べるべく、入射角99.7 度でCu KαX 線をウエハー面に入射した。特性曲線61は、シリコン基板1の場合で、特性曲線62が
ヘリウムプラズマ照射をしていない(1, 0, 0)面を持つSi 単結晶ウエハのX 線回折計測結果である。
【0037】
両者とも、ほぼ同等の強度と幅を持つ禁制回折線(3, 0, 0)が明確に検出された。これにより、シリコン微細突起3が形成されたシリコン基板の表面近傍のSi の結晶性が損なわれていないことが、かかる特性からもわかる。
【0038】
このように、シリコン基板の温度を500℃とし、40eVでHeプラズマを基板表面に照射することにより、基板表面にシリコン微細突起3を形成させることができる。かかるシリコン微細突起3はエッチングではなく、成長により形成されたと、発明者は理解している。かかる根拠について、
図6を用いて説明する。
【0039】
基板表面の一部に金属(ステンレス)によるマスクをし、ヘリウムプラズマが照射される領域と、照射されない領域を形成し、両者を比較した。
図6Aは照射される領域と照射されない領域の境目あたりのSEM写真(10万倍)であり、斜めに超微細突起が形成されている。
【0040】
これは、ヘリウムプラズマが基板に対して斜めに照射されたものと考えられる。また、
図6Bはマスクで覆われた領域のSEM写真(10万倍)である。このように、マスクで覆われた領域(プラズマが照射されない領域)にも、小さな凸部65が散見された。かかる小さな凸部は、マスクを回折することにより形成されたと考えられる。もし、本件の超微細突起がエッチングで形成されるのであれば、回折したプラズマにより、照射されない領域の一部がエッチングされるはずである。したがって、超微細突起は成長したものと考えるのが自然である。
【0041】
また、シリコン微細突起3の形成メカニズムとしては、発明者は、以下のように考えた。シリコン基板にヘリウムプラズマを数十eV程度で照射することにより、材料内にナノメートルオーダーのヘリウムの気泡(バブル)、あるいはヘリウム原子の集合(クラスター)が形成される。このバブルあるいはクラスターが膨れ上がることによって、表面が拡張し(ボトムアッププロセス)、これにより、従来よりも微細な構造のシリコンを均一に形成できるのであろう。なぜなら、かかるナノメートルオーダーの気泡の存在により、シリコン表面が均一に軟化するからである。
【0042】
発明者は、さらに、第1実施形態と比べて、基板温度だけを650℃としたシリコン基板90(図示せず)と、第1実施形態と比べて、基板温度はそのままで、入射エネルギーを40eVから50eVに大きくするとともに、He照射量を2倍にしたシリコン基板100を(図示せず)を生成した。シリコン基板90,100の反射率を
図7に示す。
【0043】
特性曲線54はヘリウムプラズマ照射をしていない場合、特性曲線55はシリコン基板1の場合、特性曲線56はシリコン基板90の場合、特性曲線57はシリコン基板100の場合である。
【0044】
このように基板温度を650℃と高くすることで、反射率のより低いシリコン基板を得ることができた。このように、基板温度を高くすることにより、より反射率の低いシリコン基板が得られたのは、基板温度を高くすることにより、前記気泡がより形成されやすくなるためと発明者は考えた。したがって、シリコンの溶融しない限度程度までは基板温度を高くすることもできる。特に、波長450nm程度から1000nm程度では、反射率はシリコン基板1と比べて小さく、ほぼ10%以下となっている。なお、基板温度を調整するには、単位時間・単位面積あたりのヘリウムマイオンの個数、すなわち、粒子束を調整すればよい。
【0045】
また、入射エネルギーを40eVから50eVに大きくするとともに、He照射量を2倍にすることにより、シリコン基板90と同程度の反射率のシリコン基板100を得ることができた。特に、シリコン基板90では、高さが約500nm程度、シリコン基板100は、1000nm程度の高さの突起が得られた。
【0046】
このように、入射エネルギー、照射量および基板温度を調整することにより、数百〜千nm程度の高さの超微細突起を得ることができる。
【0047】
また、未処理のシリコン基板と、シリコン基板1、90,100のラマン散乱を
図8に示す。特性曲線45はヘリウムプラズマ照射をしていないシリコン基板、特性曲線43はシリコン基板1、特性曲線42はシリコン基板100、特性曲線41はシリコン基板90の場合である。
図8から、入射エネルギーを50eVと大きくするとともに、照射量を長くする方が、散乱高強度が強くなる。また、入射エネルギーおよび照射量よりも、基板温度を高くする方が、散乱高強度が強くなる(照射なしの約4倍程度)。
【0048】
一般的な反応性イオンエッチング法との違いについて説明しておく。これらの方法では、ガスとしてCF
4 、O
2を用いて、さらにシリコン基板に高周波電圧を印加することにより、数百eVのイオン衝撃により、基板前面の空間電荷層に強い電界を発生させる。すなわち、CF
4のような環境負荷の高いガスを用いる。本件では、He、H、またはNeガスをプラズマ化させて、数十evにて照射するだけであるので、かかる環境負荷の高いガスが不要となる。
【0049】
本実施形態においては、単結晶シリコンにコーン状超微細突起を形成する場合について説明したが、多結晶シリコンまたはアモルファスシリコンでも同様に形成可能である。形成条件としては、たとえば、基板の純度や抵抗値に応じて、各パラメータを変更すればよい。
【0050】
一般的なPVD法とは、内部ガスが真空ではなく、He雰囲気であることが異なる。また、一般的なCVD法とは、シランガスなどSiを含むガスを用いない点で異なる。なお、Si基板以外のガスや個体がないため、これらに起因する不純部がなく、純度の高いSi超微細構造が得られる。
【0051】
上記各実施形態においては、シリコン微細突起3のアスペクト比は2.8〜3.3程度であるが、1.5〜4程度のアスペクト比で形成することも可能である。また、シリコン微細突起3の先端は、半径8〜12nm程度のR形状である。したがって、先端に微細なR形状を持ち、かつ、アスペクト比の高い微細突起を形成することができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・・・・シリコン基板
3・・・・・・シリコン微細突起