特許第6906795号(P6906795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906795
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】段ボールと段ボール箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/42 20060101AFI20210708BHJP
   B65D 5/56 20060101ALI20210708BHJP
   B65D 5/62 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   B65D65/42 A
   B65D5/56 D
   B65D5/62 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-255128(P2017-255128)
(22)【出願日】2017年12月29日
(65)【公開番号】特開2019-119484(P2019-119484A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2019年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】391025936
【氏名又は名称】株式会社アイザック
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】砂田 豊
【審査官】 武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−95262(JP,A)
【文献】 特開2004−107811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/42
B65D 5/56
B65D 5/62
D21H 19/00−19/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボール本体と、前記段ボール本体に形成された機能層を有し、前記機能層は、パール第1層、パール第2層、トルマリン層が重ねられて複数層構造となり、前記パール第1層と前記パール第2層はパール顔料を合成樹脂中に含有し、前記トルマリン層はトルマリン粉末を合成樹脂中に含有し、前記段ボール本体の表面を被覆していることを特徴とする段ボール。
【請求項2】
前記機能層は、前記ダンボール本体表面のライナ及び中芯に設けられている請求項1記載の段ボール。
【請求項3】
前記機能層の前パール第1層及び前パール第2層の少なくとも1層には、調色用顔料が配合されている請求項1又は2記載の段ボール。
【請求項4】
前記機能層の前記合成樹脂は、アクリル系合成樹脂の主剤から成る請求項1,2又は3記載の段ボール。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか記載の前記段ボール本体により形成されたことを特徴とする段ボール箱。
【請求項6】
前記機能層は、前記ダンボール本体の両面のライナ及び中芯に設けられている請求項5記載の段ボール箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物品を包装して保管や輸送を行う段ボールと段ボール箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の段ボールを所定形状に切断して組み立てた段ボール箱があり、物品の保管や輸送に使用されている。また、段ボールに各種の機能を付与し、包装する物品の劣化を抑えたり、意匠性を高めたりするものもある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている紙用塗料は、難解性のある合成樹脂に、天然石微粉末または天然土微粉末、またはこれらの微粉末2種類以上の混合微粉末30〜50重量パーセントを混合して作られている。微粉末は、例えば角閃石微粉末、トルマリン微粉末、珪藻土微粉末などである。この塗料を段ボールの表面に塗布することにより、含有された天然石微粉末や天然土微粉末が特有に持つ消臭性能・赤外線の放射性能・保湿性能・抗菌性能等を付与することができ、それらの結果として、包装した野菜や生花等の鮮度を保持することができる。
【0004】
特許文献2に開示されている段ボールと段ボール箱は、外側に位置する中芯の外側面に、所定の機能を有する機能層が設けられている。機能層には揮発性の薬剤が設けられ、例えば防錆剤、消臭剤、防腐剤、防虫剤等である。機能層には薬剤の他に、マイナスイオンを発生する等種々の機能を有するトルマリン粉末が混入されていてもよいと記載されている。
【0005】
特許文献3に開示されている保冷段ボールは、合成樹脂エマルジョンと、常温域における全反射率が0.5%以下の金属又は無機鉱物の粉末又はペーストを含有する塗工剤が表面に塗工されているものである。無機鉱物は、例えばパールマイカである。この保冷段ボールは、パールマイカの熱反射性による保冷性に加え、合成樹脂エマルジョンによる低透湿性を有するので、内容物として青果物を入れ、鮮度を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−95262号公報
【特許文献2】特開2009−91028号公報
【特許文献3】特開2004−107811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景技術の場合、特許文献1と特許文献2は、トルマリン粉末を塗布したことによる副次的な効果として、保冷性やマイナスイオンの発生効果を段ボールに付与することができ、特許文献3は、パールマイカの熱反射性による保冷性を段ボールに付与することができるが、これらの構造のダンボールでは、断熱性や遮熱性の機能が十分に高いものではない。
【0008】
さらに、特許文献3に開示されているようなこれまでの技術では、合成樹脂エマルジョンを段ボール原紙表面に印刷、塗工、塗布しても、セルロース繊維によって生じる凹凸の影響から平滑な面に出来なかった。従って、通常はその凹凸により塗工面から繊維が飛び出したような状態となる。この状態は、合成樹脂面に穴が開いた状態であり、この繊維を介して段ボール原紙に水分が吸収されると言う問題がある。
【0009】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、高い断熱性と鮮度保持機能を有し、確実に収容物の劣化を防ぎ、なおかつ美粧性にも優れた段ボールと段ボール箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、段ボール本体と、前記段ボール本体のライナまたは中芯に形成された機能層からなり、前記機能層にはパール顔料とトルマリン粉末が合成樹脂中に混合され前記段ボール本体の表面を被覆している段ボールである。前記機能層は、前記ダンボール本体表面のライナ及び中芯に設けられているものでも良く、前記中芯の両側の各前記ライナに、各々前記機能層が設けられていても良い。
【0011】
前記機能層は、段ボール本体の表面又は裏面から順に、パール第1層、パール第2層、トルマリン層が重ねられて、複数層構造となって設けられている。前記パール第1層と前記パール第2層は前記パール顔料を前記合成樹脂中に含有し、前記トルマリン層は前記トルマリン粉末を前記合成樹脂中に含有している。前記パール第2層には、調色用顔料も混入されている。前記機能層のパール第1層及びパール第2層の少なくとも1層には、調色用顔料が配合されているものである。また、前記機能層の前記合成樹脂は、アクリル系合成樹脂の主剤から成る。
【0012】
また本発明は、段ボール本体のライナまたは中芯に、パール顔料とトルマリン粉末を含有している機能層が設けられた段ボールからなる段ボール箱である。特に、前記機能層は、前記ダンボール本体の両面のライナ及び中芯に設けられていると良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の段ボールと段ボール箱は、簡単な構造で、高い断熱機能と鮮度保持機能を有し、確実に収容物の劣化を防ぐことができる。また、表面に光沢があり、美粧性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施形態の段ボールの縦断面図である。
図2】この実施形態の段ボールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の段ボール10は、紙等で作られた段ボール本体11を有し、段ボール本体11は、平坦なシート状の第1ライナ12と、第1ライナ12の裏面12aに貼り付けられ連続する山部と谷部で凹凸が形成された中芯14と、中芯14の、第1ライナ12と反対側の面に貼り付けられた平坦なシート状の第2ライナ16から成る両面段ボールである。
【0016】
第1ライナ12の、裏面12aと反対側の表面12b、つまり中芯14とは反対側の外表面12bには、機能層18が設けられている。機能層18は、合成樹脂皮膜であり、第1ライナ12側から、パール第1層20、パール第2層22、トルマリン層24が設けられ、3層構造となっている。
【0017】
パール第1層20について説明する。パール第1層20は、水性のパールニスにメタノールを混合した合成樹脂の塗料を印刷し形成したものである。パールニス:メタノールは、2:1の質量割合である。パールニスは、例えば商品名パールニスBL、サカタインクス株式会社製である。パールニスBLの成分は、主剤としてアクリル系合成樹脂26(65〜90%)、パール顔料28(5〜20%)、添加剤(5〜15%)である。なお、パール顔料28はパール状の光沢を出す粉末顔料であり、例えば商品名TWINCLPEARL、日本光研株式会社製、合成マイカ、粒度分布5〜60μmであり、色は適宜選択され、例えば青である。なお、添加剤は、ポリエチレンワックスやアルコール類等である。
【0018】
ここでパール顔料28について説明する。パール状の光沢を出す粉末顔料には、天然マイカと合成マイカがある。天然マイカは自然鉱物の雲母を基材にして表面に金属酸化物(二酸化チタン/酸化鉄)を被覆させたものである。合成マイカは、酸化アルミニウムフレークを基材にして、結晶成長法を用いて人工的に合成するものであり、酸化チタンや酸化鉄で被膜されている。合成マイカは、天然マイカよりも表面が平滑で粒子径、厚みのバラつきが少ない特徴を持つ。ここでは、パール顔料28として合成マイカを使用し、合成マイカを鱗片状に並べることができるため、白色度が高く、透過色が鮮やかである。パール顔料28の機能は、美粧性が高いこと以外に、酸化作用や活性酸素の生成、鮮度保持効果等が期待される。光反射性、熱反射性による断熱作用もある。
【0019】
次に、パール第2層22について説明する。パール第2層22は、水性のパールニスに調色用顔料30を添加し、さらにメタノールを2:1の質量割合で混合した合成樹脂の塗料を印刷して形成したものである。水性のパールニスはパール第1層20で使用したものと同じであり、例えば商品名パールニスBL、サカタインクス株式会社製であり、成分は主剤としてアクリル系合成樹脂26(65〜90%)、パール顔料28(5〜20%)、添加剤(5〜15%)である。なお、調色用顔料30は、黄45gと紅(朱色)10gを混合したものであり、パールニスBLに混合する質量割合はパールニスBL100に対して0.03である。
【0020】
なお、調色用顔料30は、パール第1層20とパール第2層22に別々に配合しても良い。その場合、黄色をパール第2層22に配色し、パール第1層20にはアンカー剤として朱色を配色すると良い。これにより、黄色の波長を相殺し、青色を際立たせることができる。さらに、一般的に段ボール印刷に使用される、赤、青、緑を適宜少しずつ配色し、その色の印刷を違和感なく使用することが出来る。また、上記朱色において、赤とせず朱色としたのは、黄色の波長が弱いため赤の波長を下げるために用いたものである。
【0021】
次に、一番外側となるトルマリン層24について説明する。トルマリン層24は、水性の撥水ニスにトルマリン粉末32を混合した合成樹脂の塗料を印刷して形成したものである。撥水ニスは、例えば商品名ブライトーンFC3090A、サカタインクス株式会社製である。ブライトーンFC3090Aの成分は、主剤としてアクリル系合成樹脂26(90〜99%)、添加剤(1〜10%)である。なお、添加剤はポリエチレンワックス等である。トルマリン粉末32は、水系のスラリーであるトルマリン機能製剤として添加され、トルマリン機能製剤は、例えば商品名Ionized Cera HG、エネックス株式会社製、固形分38%、トルマリン天然鉱石粉末10%、界面活性剤1〜3%、その他水、である。ブライトーンFC3090Aに対するIonized Cera HGの質量割合は、100に対して10である。
【0022】
ここで、トルマリン粉末32について説明する。トルマリンは電気石とも呼ばれ、誘電体の特性から温度や圧力の変化によって電荷が変化し、外表面の両側は正負に分極する。熱の移動メカニズムに、熱伝導、対流、熱放出があり、固体物質では、熱伝導が影響を与える。熱伝導の仕組みは、原子・分子の格子振動の伝播や自由電子の移動によるものである。一方、誘電体が分極することを誘電分極といい、両端に正負が分離され自由電子が物体内を移動できない状態であり、熱伝導が発生しない。従って、トルマリンは、断熱素材としての機能を有するといえる。
【0023】
次に、この発明の段ボール10を使用して組み立てられた段ボール箱について説明する。段ボール10を打ち抜いて、側面と底面、天面、糊付片等が、折罫線で区切られて一体に設けられた箱体形成片を作り、糊付け片に糊を塗布して所定の位置に糊付けし、折罫線を所定の角度に折り、箱体とする。組み立てた時に、箱体の外側面又は内表面に機能層18が位置している。
【0024】
この実施形態の段ボール10によれば、パール顔料28の光反射性、熱反射性、遮熱性と、トルマリン粉末32の断熱性を、組み合わせることにより、高い保冷性、保温性、を持たせることができる。また、パール顔料28の、酸化作用等による鮮度保持効果も持たせることができる。さらに、表面にはパール状の光沢があり、意匠性、化粧性があり、美粧性にも優れている。機能層18は、パール第1層20、パール第2層22、トルマリン層24のいずれも、アクリル系合成樹脂26を主剤として使用して形成され、人体に対して無害で安全である。パール顔料とトルマリン粉末の性能を得るために、異種材料を貼り合わせる等の加工が不要であり、パール第1層20、パール第2層22、トルマリン層24を重ねて印刷するだけで、パール顔料28とトルマリン粉末32による各種の作用効果を得ることができる。
【0025】
その他、この実施形態のダンボール10は、減法混合による色合い調合法により、パール第1層20をアンカー(下地)剤として、紙表面の凸凹を平滑にし、パール第2層22のパール顔料28を鱗片状に並べて反射効率を向上させ、所望の色合いを出し美粧性を高めている。特に、この実施形態では、パール顔料28の反射を任意の発色を選ぶことができる。例えば、パール第1層20に紅(朱)を、パール第2層22に黄を用いることで、パール顔料28の青の発色を際立たせている。これは、減法混合という色合いの調合手法で、従来の段ボールなどの印刷では用いられることが無かった方法である。この実施形態では、各色の発色(光の波長)を適宜選択することで、人間の色覚には、別の色に感じる効果を得ている。
【0026】
さらに、この実施形態のダンボール10は、PETフィルムにアルミを蒸着したアルミ蒸着フィルムと同等の吸湿率を示す。これは、パール第1層20をアンカー(下地)剤として、紙表面の凸凹を平滑にし、パール第2層22のパール顔料28が鱗片状に平たく並べられて、ハイバリア素材として機能し、上記従来の、合成樹脂を段ボール原紙表面に塗布した場合のような繊維の飛び出しが抑えられ、表面が平滑で均一な厚みの被覆層になる。その結果、水分の透過や吸収が阻止され、アルミ蒸着フィルムと同等の吸湿率が得られ、結露の防止や鮮度保持に寄与するものである。特に、生鮮食料品を収容した段ボールにおいて、輸送中に冷蔵庫と室温の間で出し入れする場合にも、内部での結露を抑えることができる。
【0027】
また、この発明の段ボール10を使用して組み立てられた段ボール箱は、高い保冷性、保温性を有して収容物の劣化を防ぐことができる。酸化作用等による鮮度保持効果があり、収容物が食品や生花の場合に、収容物の鮮度を維持することができる。
【0028】
なお、この発明の段ボールと段ボール箱は、上記実施形態に限定されるものではなく、第1ライナ12、中芯14、第2ライナ16の各表裏面または一方の面に機能層18を形成しても良い。これにより、熱伝導、熱輻射の双方をより効果的に抑えることができ、上記実施形態よりもさらにダンボール10の、水蒸気等のガス透過度を下げることができる。従って、ダンボール10の内外の熱移動を極力抑え、ダンボール10の内外の熱移動は、効率の低い対流のみとなり、断熱性の高いダンボールを形成することができる。この他、水蒸気やその他の気体の移動も抑制し、内部の商品の品質維持にも寄与する。特に、機能層18がダンボール本体11の両面の第1第2ライナ12,16及び中芯14に設けられていると良い。これにより、段ボール箱内の商品を断熱保護し、外部からの気体の流入や酸素の等の透過を抑え、箱内部の商品の品質の低下を抑えることができる。
【0029】
機能層を形成する撥水ニスやパールニスの、商品や使用されている材料は、上記以外でも良く、トルマリン粉末とパール顔料を含有しているものであれば、自由に選択可能である。機能層は、3層で設けられているもの以外でも良く、2層や1層でもよく、同じ層にパール顔料とトルマリン粉末が混入しているものでもよい。段ボール箱の大きさや形状は、収容物に合わせて適宜変更設定可能であり、底面や天面の構造も自由である。段ボール本体は、紙製のものの他、合成樹脂製のものや、それらを複合した素材のもの等、適宜の素材のものに適用することができる。ダンボール本体の構造も、一対のライナと中芯から成る両面段ボール以外に、片面段ボールや複両面段ボール等でもよい。用途によっては、段ボール箱の内側面や、段ボール本体の中芯に、機能層を設けてもよく、この場合でも保冷性や保温性等の同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0030】
10 段ボール
11 段ボール本体
12 第1ライナ
14 中芯
16 第2ライナ
18 機能層
20 パール第1層
22 パール第2層
24 トルマリン層
26 アクリル系合成樹脂
28 パール顔料
30 調色用顔料
32 トルマリン粉末
図1
図2