【文献】
Nat. Chem. Biol.,2010年,Vol. 6,p. 273-275
【文献】
Nat. Biotechnol.,2004年,Vol. 22,p. 1559-1566
【文献】
Plant Biotechnol. J.,2008年,Vol. 6,p. 22-30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケシ(opium poppy)植物またはその植物細胞にてテバインの蓄積を増やす方法であって、前記方法が、前記植物または植物細胞のゲノムを遺伝的に改変して、前記植物または植物細胞にてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)の活性を同時に低下させるヘアピンRNAをコードする核酸分子を含むようにすることを含み、前記核酸分子が、配列番号7を含む、上記方法。
T6ODMおよびCODMの前記活性を同時に低下させることが、CODMをコードする内在性遺伝子およびT6ODMをコードする内在性遺伝子からの転写物の蓄積を低下させることを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
野生型植物または植物細胞と比べてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)の低下した活性を有する遺伝子改変したケシ植物またはその植物細胞の遺伝子が、CODMをコードする内在性遺伝子及びT6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるヘアピンRNAをコードする核酸分子を含み、前記核酸分子が、配列番号7を含む、前記ケシ植物または植物細胞。
前記T6ODMが配列番号1に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有し、かつ前記CODMが配列番号3に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の方法。
テバインを生産する方法であって、前記方法が、請求項7〜11のいずれか一項に記載の植物またはその植物細胞から回収される乳状液またはケシ殻からテバインを単離することを含む、上記方法。
単離された核酸分子であって、配列番号7の配列を含むポリヌクレオチド、および前記ポリヌクレオチドに操作可能に連結される異種プロモーターを含む、前記核酸分子。
ケシ植物またはその植物細胞にてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を同時に低下させるための発現ベクターであって、前記発現ベクターが請求項15に記載の単離された核酸を含む、前記発現ベクター。
ケシ植物またはその植物細胞にて安定な遺伝子改変を生成して、ケシ植物または植物細胞にてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を同時に低下させるための、配列番号7を含む配列を有するポリヌクレオチド分子の使用。
【発明の概要】
【0008】
本開示は高レベルのテバインを有するケシ(opium poppy)の生産に関する。さらに詳しくは、本開示はテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)の発現/活性を同時に低下させることによって高レベルのテバインを有するケシの生産に関する。
【0009】
本開示の種々の態様は、ケシ植物にてテバインの蓄積を増やす方法に関するものであり、該方法は、ポピー(poppy)植物にてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)の活性を同時に低下させるように植物を遺伝的に改変することを含む。野生型T6ODMは配列番号1のアミノ酸配列を有してもよい。野生型CODMは配列番号3のアミノ酸配列を有してもよい。
【0010】
ある場合には、T6ODMの活性を同時に低下させるように植物を遺伝的に改変することは、T6ODMをコードする内在性遺伝子からの転写物の蓄積を減らすために発現構築物を導入することを含む。ある場合には、T6ODMをコードする内在性遺伝子からの転写物の蓄積を低下させる発現構築物の配列は配列番号2または配列番号4の一部を含む。ある場合には、T6ODMの活性を同時に低下させるように植物を遺伝的に改変することは、T6ODMをコードする内在性遺伝子に機能喪失突然変異を導入することを含む。
【0011】
ある場合には、CODMの活性を同時に低下させるように植物を遺伝的に改変することは、CODMをコードする内在性遺伝子からの転写物の蓄積を減らすための発現構築物を導入することを含む。ある場合には、CODMをコードする内在性遺伝子からの転写物の蓄積を低下させるための発現構築物の配列は配列番号2または配列番号4の一部を含む。ある場合には、CODMの活性を同時に低下させるように植物を遺伝的に改変することは、CODMをコードする内在性遺伝子に機能喪失突然変異を導入することを含む。
【0012】
本開示の種々の態様は、野生型植物に比べてテバインのレベルが増加したケシ植物を生産する方法に関するものであり、該方法は、テバイン6−O−脱メチル化酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つの機能喪失対立遺伝子を有する第1の親を、コデイン3−O−脱メチル化酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つの機能喪失対立遺伝子を有する第2の親と交配することと、テバイン6−O−脱メチル化酵素をコードする遺伝子の機能喪失対立遺伝子およびコデイン3−O−脱メチル化酵素をコードする遺伝子の機能喪失対立遺伝子の双方を有する子孫を自家受粉させてテバイン6−O−脱メチル化酵素をコードする遺伝子の機能喪失変異対立遺伝子についてホモ接合型であり、かつコデイン3−O−脱メチル化酵素をコードする遺伝子の機能喪失対立遺伝子についてホモ接合型である植物を生産することとを含む。
【0013】
本開示の種々の態様は、テバイン含量が増加したケシ植物を生産する方法に関するものであり、該方法は、植物にて内在性テバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させることと、植物にてコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させることとを含む。ある場合には、T6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させることは、T6ODMをコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を導入するまたは作製することを含む。ある場合には、CODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させることは、CODMをコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を導入するまたは作製することを含む。
【0014】
ある場合には、T6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させることは、T6ODMをコードする内在性遺伝子の一部に対して相同な第1の異種核酸分子を発現させることを含み、その際、第1の異種核酸分子はT6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させる。ある場合には、CODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させることは、CODMをコードする内在性遺伝子に機能喪失対立遺伝子を導入するまたは作製することを含む。ある場合には、CODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させることは、CODMをコードする内在性遺伝子の一部に対して相同な第2の異種核酸分子を発現させることを含み、その際、第2の異種核酸分子はCODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させる。
【0015】
ある場合には、CODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させることは、CODMをコードする内在性遺伝子の一部に対して相同な異種核酸分子を発現させることを含み、その際、異種核酸分子はCODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させる。ある場合には、T6ODMの活性を低下させることはT6ODMをコードする内在性遺伝子に機能喪失対立遺伝子を導入するまたは作製することを含む。
【0016】
ある場合には、機能喪失対立遺伝子は遺伝子における破壊または点突然変異を含む。破壊は欠失または挿入であってもよい。挿入は、T−DNAまたは転位因子であってもよい。
【0017】
ある場合には、第1の異種核酸分子がRNA干渉によってT6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させる。
【0018】
ある場合には、第2の異種核酸分子がRNA干渉によってCODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させる。
【0019】
ある場合には、異種核酸分子がRNA干渉によってCODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させる。
【0020】
ある場合には、異種核酸分子は配列番号2または配列番号4の一部を含む。ある場合には、異種核酸分子は配列番号7の一部を含む。ある場合には、異種核酸分子は配列番号8の一部を含む。
【0021】
ある場合には、T6ODMは配列番号1に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有し、かつCODMは配列番号3に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0022】
本開示の種々の態様は、野生型のケシ植物に比べてテバイン含量が増加したケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)分子法を使用して、コデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして第1の植物を特定することと;(ii)前記第1の植物の、テバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を有する第2の植物との交配を確立することと、(iii)交配に由来する子孫を自家受粉させることと、(iv)CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子およびT6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子の双方についてホモ接合型である植物について自家受粉した植物に由来する子孫をスクリーニングすることとを含む。
【0023】
ある場合には、T6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子を有する第2の植物は分子法を用いて特定される。ある場合には、T6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子は第2の植物またはその祖先の遺伝子改変によって生成される。ある場合には、T6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子を有する第2の植物はATCC PTA−9110として寄託されている株の植物である。
【0024】
本開示の種々の態様は、野生型のケシ植物に比べてテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)分子法を用いてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして第1の植物を特定することと、(ii)前記第1の植物の、コデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を有する第2の植物との交配を確立することと、(iii)交配に由来する子孫を自家受粉させることと、(iv)CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子およびT6ODMをコード内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子の双方についてホモ接合型である植物について自家受粉した植物に由来する子孫をスクリーニングすることとを含む。ある場合には、CODMをコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を有する第2の植物は分子法を用いて特定される。ある場合には、CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子は第2の植物またはその祖先の遺伝子改変によって生成される。ある場合には、CODMをコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を有する第2の植物はATCC PTA−9109として寄託されている株の植物である。
【0025】
本開示の種々の態様は、野生型のケシ植物に比べて増加したテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、分子法を用いてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして植物を特定することと、(ii)コデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子に機能喪失対立遺伝子を導入するように植物を遺伝的に改変することと、(iii)植物を自家受粉させることと、(iv)CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子およびT6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子の双方についてホモ接合型である植物について自家受粉した植物に由来する子孫をスクリーニングすることとを含む。
【0026】
本開示の種々の態様は、野生型のケシ植物に比べて増加したテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)分子法を用いてコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして植物を特定することと、(ii)遺伝子改変によって植物にてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子を導入するように植物を遺伝的に改変することと、(iii)植物を自家受粉させることと、(iv)CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子およびT6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子の双方についてホモ接合型である植物について自家受粉した植物に由来する子孫をスクリーニングすることとを含む。
【0027】
本開示の種々の態様は、野生型のケシ植物に比べて増加したテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)分子法を用いてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして植物を特定することと、(ii)コデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させるように植物を遺伝的に改変することと、(iii)植物を自家受粉させることと、(iv)T6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子についてホモ接合型であり、かつCODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させている植物について自家受粉した植物に由来する子孫をスクリーニングすることとを含む。ある場合には、CODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるように植物を遺伝的に改変することは、CODMをコードする内在性遺伝子を標的とするヘアピンRNAを発現させるための発現構築物を導入することを含む。
【0028】
本開示の種々の態様は、野生型のケシ植物に比べて増加したテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)コデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして植物を特定することと、(ii)テバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させるように植物を遺伝的に改変することと、(iii)植物を自家受粉させることと、(iv)CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子についてホモ接合型であり、かつT6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させている植物について自家受粉した植物に由来する子孫をスクリーニングすることとを含む。ある場合には、T6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるように植物を遺伝的に改変することは、T6ODMをコードする内在性遺伝子を標的とするヘアピンRNAを発現させるための発現構築物を導入することを含む。
【0029】
ある場合には、分子法はゲノム中の標的化誘発局所的損傷(TILLING)の方法論を含む。
【0030】
本開示の種々の態様は上記に記載されているような方法にによって生産されるケシ植物に関する。
【0031】
本開示の種々の態様は、野生型の植物に比べてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)の低下した活性を有する遺伝子改変したケシ植物またはケシ植物細胞に関するものであり、ケシ植物はT6ODMおよびCODMまたは双方の低下した発現を有するように遺伝子改変される。
【0032】
ある場合には、植物はT6ODMの発現を低下させるための第1の発現構築物とCODMの発現を低下させるための第2の発現構築物とを含む。ある場合には、第1の発現構築物はT6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるための第1のヘアピンRNAをコードする第1の核酸分子を含む。ある場合には、T6ODMをコードする内在性の遺伝子は配列番号15の配列を含み、有するmRNAをコードする。ある場合には、第1のヘアピンRNAをコードする核酸分子は配列番号2の一部を含む。
【0033】
ある場合には、第2の発現構築物はCODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるための第2のヘアピンRNAをコードする第2の核酸分子を含む。ある場合には、CODMをコードする内在性の遺伝子は配列番号16の配列を含み、有するmRNAをコードする。ある場合には、第2のヘアピンRNAをコードする核酸分子は配列番号4の一部を含む。
【0034】
ある場合には、植物または植物細胞はT6ODMおよびCODMの発現を低下させるための核酸分子を含む発現構築物を含む。ある場合には、核酸分子は、CODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるためのヘアピンRNAをコードする。ある場合には、核酸分子は、T6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるためのヘアピンRNAをコードする。ある場合には、核酸分子は、T6ODMおよびCODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるのに十分な単一のヘアピンRNAをコードする。ある場合には、核酸分子は配列番号2、配列番号4または双方の一部を含む。
【0035】
ある場合には、発現構築物は、T6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるための第1のヘアピンRNAをコードする第1の核酸分子と、CODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるための第2のヘアピンRNAをコードする第2の核酸分子とを含む。ある場合には、T6ODMをコードする内在性遺伝子は配列番号15の配列を含み、有するmRNAをコードする。ある場合には、T6ODMをコードする内在性遺伝子は配列番号1の配列を有するポリペプチドをコードする。ある場合には、CODMをコードする内在性遺伝子は配列番号16の配列を含み、有するmRNAをコードする。ある場合には、T6ODMをコードする内在性遺伝子は配列番号3の配列を有するポリペプチドをコードする。ある場合には、第1の核酸分子および第2の核酸分子のそれぞれは、配列番号2、配列番号4、または双方の一部を含む。
【0036】
ある場合には、ヘアピンRNAをコードする核酸分子は配列番号8の一部を含む。ある場合には、ヘアピンRNAをコードする核酸分子は配列番号7の一部を含む。
【0037】
ある場合には、第1の核酸分子は配列番号8の一部を含む。ある場合には、第1の核酸分子は配列番号7の一部を含む。
【0038】
ある場合には、第2の核酸分子は配列番号8の一部を含む。ある場合には、第2の核酸分子は配列番号7の一部を含む。
【0039】
ある場合には、植物または植物細胞は、T6ODMの低下した活性を有するように遺伝子改変され、CODMの低下した活性は植物または植物細胞の遺伝子改変によって導入されなかったCODMをコードする内在性遺伝子における突然変異によって付与される。ある場合には、植物または植物細胞の遺伝子改変によって導入されなかったCODMをコードする内在性遺伝子における突然変異は、特許寄託指定PTA−9109のもとで寄託された植物の種子に存在する突然変異である。
【0040】
ある場合には、植物はCODMの低下した活性を有するように遺伝子改変され、T6ODMの低下した活性は植物または植物細胞の遺伝子改変によって導入されなかったT6ODMをコードする内在性遺伝子における突然変異によって付与される。ある場合には、植物または植物細胞の遺伝子改変によって導入されなかったT6ODMをコードする内在性遺伝子における突然変異は、特許寄託指定PTA−9109のもとで寄託された植物の種子に存在する突然変異である。
【0041】
本開示の種々の態様は、6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の低下した発現を有する遺伝子改変したポピー植物またはポピー植物細胞に関するものであり、遺伝子改変した植物は、植物または植物細胞にてT6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるトランスジェニック発現構築物と、植物または植物細胞にてCODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるトランスジェニック発現構築物とを含む。
【0042】
本開示の種々の態様は上記に記載されているようなケシ植物の種子に関する。
【0043】
本開示の種々の態様はテバインの生産のための上記に記載されているような植物の使用に関する。
【0044】
本開示の種々の態様は上記に記載されているような植物に由来するケシ殻に関する。
【0045】
本開示の種々の態様は上記に定義されているような植物から単離された乳状液に関する。
【0046】
本開示の種々の態様はテバインを生産する方法に関するものであり、前記方法は、上記に記載されているような植物から回収される乳状液またはケシ殻からテバインを単離することを含む。
【0047】
本開示の種々の態様は単離された核酸分子に関するものであり、核酸分子の配列は配列番号7の一部を含む。
【0048】
本開示の種々の態様は、ケシ植物にてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を同時に低下させるための発現ベクターに関するものであり、発現ベクターは配列番号7の一部を含む核酸分子を含む。
【0049】
本開示の種々の態様は、ケシ植物にてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を同時に低下させるために配列番号2または配列番号4の一部を含む配列を有するポリヌクレオチド分子の一部の使用に関する。
【0050】
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面と併せて本発明の具体的な実施形態の以下の説明の評価の際に当業者に明らかになるであろう。
【0051】
本明細書で開示されている方法は、テバイン:モルヒネの増加した比率を有するポピー植物を生産するのに有用であってもよい。
【0052】
本開示の特定の態様はケシ植物またはケシ植物細胞にてテバインの蓄積を増やす方法に関するものであり、該方法は、1以上の安定な遺伝子改変を含んでポピー植物またはポピー植物細胞にてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)の活性を同時に低下させるように植物または植物細胞のゲノムを遺伝的に改変することを含む。
【0053】
本開示の特定の態様は、野生型の植物または植物細胞に比べてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)の低下した活性を有する遺伝子改変したケシ植物またはケシ植物細胞に関するものであり、その際、遺伝子改変したケシ植物またはケシ植物細胞はT6ODM、CODMまたは双方の発現を低下させるための1以上の安定な遺伝子改変を含む。
【0054】
本開示の特定の態様は、テバイン含量の増加したケシ植物を生産する方法に関するものであり、該方法は、(a)植物にて内在性のテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させることと、(b)植物にてコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させることとを含み、その際、T6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させることとは、T6ODMをコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を有するように植物を遺伝的に改変することを含む。
【0055】
本開示の特定の態様は、テバイン含量の増加したケシ植物を生産する方法に関するものであり、該方法は、(a)植物にて内在性のテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させることと、(b)植物にてコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させることとを含み、その際、T6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させることとは、T6ODMをコードする内在性遺伝子の一部に相同性である異種核酸分子を発現させることを含み、異種核酸分子の発現がT6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させる。
【0056】
本開示の特定の態様は、テバイン含量の増加したケシ植物を生産する方法に関するものであり、該方法は、(a)植物にて内在性のテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させることと、(b)植物にてコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させることとを含み、その際、CODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させることとは、CODMをコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を有するように植物を遺伝的に改変することを含む。
【0057】
本開示の特定の態様は、テバイン含量の増加したケシ植物を生産する方法に関するものであり、該方法は、(a)植物にて内在性のテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させることと、(b)植物にてコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させることとを含み、その際、CODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させることは、CODMをコードする内在性遺伝子の一部に相同性である異種核酸分子を発現させることを含み、異種核酸分子の発現がCODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させる。
【0058】
本開示の特定の態様は、6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の低下した発現を有する遺伝子改変したポピー植物またはポピー植物細胞に関するものであり、該遺伝子改変した植物は、植物または植物細胞にてT6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるための安定して遺伝するトランスジェニック発現構築物と、植物または植物細胞にてCODMをコードする内在性遺伝子の発現を低下させるための安定して遺伝するトランスジェニック発現構築物とを含む。
【0059】
本開示の特定の態様は、野生型ケシ植物に比べて増加したテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)分子法を用いてコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして第1の植物を特定することと、(ii)前記第1の植物の、テバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を有する第2の植物との交配を確立することと、(iii)交配に由来する子孫を自家受粉させることと、(iv)CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子およびT6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子の双方に関してホモ接合型である植物について自家受粉した植物の子孫をスクリーニングすることとを含む。
【0060】
本開示の特定の態様は、野生型ケシ植物に比べて増加したテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)分子法を用いてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして第1の植物を特定することと、(ii)前記第1の植物の、コデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を有する第2の植物との交配を確立することと、(iii)交配に由来する子孫を自家受粉させることと、(iv)CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子およびT6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子の双方に関してホモ接合型である植物について自家受粉した植物の子孫をスクリーニングすることとを含む。
【0061】
本開示の特定の態様は、野生型ケシ植物に比べて増加したテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)分子法を用いてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして植物を特定することと、(ii)コデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子に機能喪失対立遺伝子を導入するように植物を遺伝的に改変することと、(iii)植物を自家受粉させることと、(iv)CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子およびT6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子の双方に関してホモ接合型である植物について自家受粉した植物の子孫をスクリーニングすることとを含む。
【0062】
本開示の特定の態様は、野生型ケシ植物に比べて増加したテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)分子法を用いてコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして植物を特定することと、(ii)遺伝子改変によって植物にてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子に機能喪失対立遺伝子を導入するように植物を遺伝的に改変することと、(iii)植物を自家受粉させることと、(iv)CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子およびT6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子の双方に関してホモ接合型である植物について自家受粉した植物の子孫をスクリーニングすることとを含む。
【0063】
本開示の特定の態様は、野生型ケシ植物に比べて増加したテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)分子法を用いてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして植物を特定することと、(ii)コデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させるように植物を遺伝的に改変することと、(iii)植物を自家受粉させることと、(iv)T6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子に関してホモ接合型であり、かつCODMをコードする内在性遺伝子の低下した発現を有する植物について自家受粉した植物の子孫をスクリーニングすることとを含む。
【0064】
本開示の特定の態様は、野生型ケシ植物に比べて増加したテバイン含量を有するケシ植物を生成する方法に関するものであり、該方法は、(i)分子法を用いてコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子にて機能喪失対立遺伝子を含むとして植物を特定することと、(ii)テバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)をコードする内在性遺伝子の発現を低下させるように植物を遺伝的に改変することと、(iii)植物を自家受粉させることと、(iv)CODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失対立遺伝子に関してホモ接合型であり、かつT6ODMをコードする内在性遺伝子の低下した発現を有する植物について自家受粉した植物の子孫をスクリーニングすることとを含む。
【0065】
本開示の特定の態様は、単離された核酸分子に関するものであり、核酸分子の配列は配列番号7を含む。
【0066】
本開示の特定の態様は、ケシ植物にてテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)をコードする内在性遺伝子の発現を同時に低下させるための配列番号2または配列番号4の一部を含む配列を有するポリヌクレオチド分子の使用に関する。
【0067】
本開示の特定の態様は、請求されているような植物または植物細胞から回収されるケシ殻に関する。
【0068】
本開示の特定の態様は、請求されているような植物または植物細胞から回収される乳状液に関する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本開示は、遺伝子改変したケシの植物、その種子、細胞、殻、子孫、または生産されるその乳状液に関するものであり、遺伝子改変した植物は、鎮痛剤生合成の間での酵素テバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)およびコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)の活性の合わせた低下のせいで野生型の植物と比べて増加したレベルのテバインを有する乳状液を産生する。本開示はまた、そのような遺伝子改変したケシ植物を得る方法にも関する。
【0071】
定義
「ケシ(opium poppy)植物」または「ポピー(poppy)植物」は本明細書で使用されるとき、種Papaver Somniferumの植物を指す。
【0072】
植物の「畑」は本明細書で使用されるとき、極めて近傍で一緒に栽培される複数のケシを指す。
【0073】
「活性」は本明細書で使用されるとき、植物細胞における特定の酵素機能のレベルを指す。本開示の文脈では、低下したT6ODM活性は6位でのO−脱メチル化活性の低下を指すのに対して、低下したCODM活性は3位でのO−脱メチル化活性の低下を指す。活性の低下は、たとえば、突然変異のせいでのタンパク質の低下した機能性の結果、または、たとえば、低下した翻訳のせいでのタンパク質の低下した発現の結果であることができる。
【0074】
「遺伝子改変」は本明細書で使用されるとき、現代バイオテクノロジーの技法によって得られる遺伝物質の新規の組み合わせを指す。遺伝子改変には、遺伝物質が外来性の遺伝物質の挿入によって変化させられている「導入遺伝子」が含まれるが、これらに限定されない。しかしながら、遺伝子改変には、以下で議論されているようなCRISPR/Ca9、TALENS等のような技法により標的指向化法で導入される内在性遺伝子における変化(たとえば、挿入、欠失または置換)も含まれる。しかしながら、本開示の目的では、「遺伝子改変」は、無作為変異誘発の従来の手段によって生成される突然変異とそれに続く従来の育種手段から生じる遺伝物質の新規の組み合わせを含むようには意図されない。
【0075】
「導入遺伝子」は本明細書で使用されるとき、遺伝子改変法によって植物細胞に伝達されている組換え遺伝子または遺伝物質を指す。「トランスジェニック植物」または「形質転換された植物」は本明細書で使用されるとき、外来性の核酸配列またはDNA断片を植物細胞に組み込んでいるまたは統合している植物を指す。導入遺伝子は、対象とするRNAまたはポリペプチドをコードするDNA分子に操作可能に連結される同種または異種のプロモーターを含んでもよい。
【0076】
「操作可能に連結される」はプロモーターと第2のDNA配列との間での機能的な結合を指し、その際、プロモーター配列は第2のDNA配列に相当するDNA配列の転写を開始し、それに介在する。一般に、操作可能に連結されるは連結されている核酸配列が連続的であることを意味する。
【0077】
「遺伝子改変した」植物または植物細胞は本明細書で使用されるとき、本明細書で定義されているような遺伝子改変を保有する植物または植物細胞を広く指す。
【0078】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリペプチド」は、長さ(たとえば、少なくとも5、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、40、50、100以上のアミノ酸)または翻訳後修飾(たとえば、グリコシル化またはリン酸化)または、たとえば、ペプチドに共有結合した1以上の非アミノアシル基(たとえば、糖、脂質等)の存在にかかわらず、天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸(D−またはL−アミノ酸のいずれか)の任意の鎖を包含し、それには、たとえば、天然のタンパク質、合成または組換えのポリペプチドまたはペプチド、ハイブリッド分子、ペプトイド、ペプチド模倣体、等が挙げられる。本明細書で使用されるとき、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は相互交換可能に使用されてもよい。
【0079】
「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸」または「核酸分子」は本明細書で使用されるとき、一本鎖または二本鎖であることができ、任意で、DNAまたはRNAのポリマーへの組み込みが可能である合成の、非天然のまたは変化したヌクレオチド塩基を含有するDNAまたはRNAのポリマーを指す。「核酸」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド配列」または「核酸分子」は遺伝子、cDNA、DNAおよび遺伝子によってコードされるRNAを包含する。核酸、核酸配列、ポリヌクレオチド配列および核酸分子は少なくとも3、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも5000、または少なくとも10000のヌクレオチドまたは塩基対を含んでもよい。
【0080】
「断片」、「その断片」、「遺伝子断片」または「その遺伝子断片」は本明細書で使用されるとき、CODMおよび/またはT6ODMをコードする遺伝子の発現をそれでもやはり低下させてもよい「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸」または「核酸分子」の一部を指す。一実施形態では、断片は、少なくとも20、少なくとも40、少なくとも60、少なくとも80、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも150、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450または少なくとも500の連続するヌクレオチドを含む。
【0081】
「非天然の変異体」は本明細書で使用されるとき、生物に対してネイティブであるが、変異誘発によって導入されるそのヌクレオチド配列の1以上に対する修飾を含む核酸配列を指す。
【0082】
「対立遺伝子」または「対立遺伝子変異体」は本明細書で使用されるとき、ゲノムの特定の位置での同一遺伝子の代替形式を指す。
【0083】
「野生型」は本明細書で使用されるとき、核酸分子または構築物で形質転換されなかった、遺伝子改変されなかった、またはさもなければ本明細書に記載されているように変異させなかった植物または植物物質を指す。「野生型」はまた、T6ODM活性およびCODM活性を低下させなかった植物または植物物質を指してもよい。
【0084】
用語「同一性」は本明細書で使用されるとき、2つのポリペプチド分子間または2つのポリヌクレオチド分子間での配列類似性を指す。同一性は並べた配列における各位置を比較することによって決定することができる。アミノ酸配列間または核酸配列間の同一性の程度は、配列によって共有される、たとえば、特定された領域にわたって共有される位置での同一のまたは一致するアミノ酸または核酸の数の関数である。同一性の比較のための配列の最適な配列比較は、http://clustalw.genome.ad.jpで入手可能なClustal W(商標)プログラム、SmithおよびWaterman,1981,Adv.Appl.Math,2:482の局所的相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443の相同性配列比較アルゴリズム、PearsonおよびLipman,1988,Proc. Natl.Acad.Sci.USA,85:2444の類似法についての検索,ならびにこれらのアルゴリズムのコンピュータによる実施(たとえば、GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,Madison,Wis.,U.S.A.)を含む、当該技術で既知のような種々のアルゴリズムを用いて行われてもよい。配列同一性はまた、Altschul,et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−10(公開された初期設定を用いて)に記載されたBLASTアルゴリズム(たとえば、BLASTnおよびBLASTp)を用いて決定されてもよい。BLAST解析を行うためのソフトウエアは全米バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/でのインターネットを介して)を介して利用可能である。たとえば、2つの核酸配列間の配列同一性は、以下の初期設定:期待閾値10;ワードサイズ11;マッチ/ミスマッチのスコア2、−3;ギャップコストの存在5、伸長2でのBLASTnアルゴリズムを用いて決定することができる。2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、以下の初期設定:期待閾値10;ワードサイズ3;マトリクスBLOSUM62;ギャップコストの存在11、伸長1でのBLASTpアルゴリズムを用いて決定することができる。別の実施形態では、当業者は所与の配列を容易にかつ適正に並べることができ、単なる目視検査によって配列の同一性/相同性を推定することができる。
【0085】
本明細書で使用されるとき、「異種の」、「外来性の」および「外因性の」DNAおよびRNAは相互交換可能に使用され、それが存在する植物ゲノムの一部として天然には存在しない、またはそれが自然界で存在するものとは異なるゲノムにおける位置(単数)もしくは位置(複数)にて見いだされるDNAまたはRNAを指す。従って、異種のまたは外来性のDNAまたはRNAは、同一の背景(すなわち、同一の5’および3’配列に連結される)での宿主ゲノムで普通見いだされない核酸である。態様の1つでは、異種のDNAは宿主DNAと同一であってもよいが、宿主ゲノムにおける異なる位置に導入されてもよく、および/または当該技術で既知の方法によって修飾されており、その際、修飾には、ベクターにおける挿入、外来性のプロモーターおよび/または他の調節要素に連結されること、または複数のコピーで反復されることが挙げられるが、これらに限定されない。別の態様では、異種DNAは宿主DNAとは、異なる生物、異なる種、異なる属、または異なる生物界に由来してもよい。さらに、異種DNAは導入遺伝子であってもよい。本明細書で使用されるとき、「導入遺伝子」は、生物の1つから単離され、異なる生物に導入されている遺伝子配列を含有するDNAのセグメントを指す。本開示の文脈では、核酸分子はCODMおよびT6ODMの活性を低下させる植物に対して異種である核酸を含んでもよい。
【0086】
「発現」または「発現すること」は本明細書で使用されるとき、遺伝子からの情報が機能的な遺伝子産物の合成で使用される過程を指し、遺伝子によってコードされる産物の検出可能なレベルの生産、または産物の活性に関係してもよい。遺伝子発現は、転写、RNAのプロセッシング、翻訳、翻訳後修飾、タンパク質分解を誘導する多数のレベルで調節されてもよい(すなわち、開始され、増やされ、減らされ、終結され、維持され、または起きないようにされる)。遺伝子発現はまた、遺伝子産物の活性、たとえば、基質を変換する遺伝子産物の能力に影響を及ぼす突然変異の導入によっても調節することができる。本開示の文脈では、CODMおよび/またはT6ODMをコードする内在性遺伝子の低下した発現、またはCODMおよび/またはT6ODMポリペプチドの低下した発現は、CODMおよび/またはT6ODMをコードする内在性遺伝子の低下した転写によって、CODMおよび/またはT6ODMをコードするmRNA転写物の低下した翻訳によって、または機能的ポリペプチドの翻訳を妨害する、もしくは基質を変換する能力が低下したポリペプチドの翻訳を生じる突然変異の導入によって達成することができる。内在性遺伝子のそのような低下した発現は、内在性遺伝子の発現を低下させるように設計された発現構築物を含む導入遺伝子の発現から生じてもよい。
【0087】
「ケシ殻」は本明細書で使用されるとき、種子を取り出すための成熟ケシさく果およびケシさく果の茎の脱殻の結果生じる殻物質を指す。
【0088】
「乳状液」は本明細書で使用されるとき、切開した熟していないケシさく果に由来する風乾した乳状の滲出液を指す。
【0089】
用語「上昇したテバイン含量」または「上昇したレベルのテバイン」は本明細書で使用されるとき、相当する野生型植物におけるテバインのレベルと比べて1以上の組織での有意に上昇したレベルのテバインを指す。用語「上昇した」はまた、野生型植物の1以上の組織と比べて同じ組織で有意に上昇しているテバインのレベルも包含する一方で、テバインの野生型のレベルは植物の他のどこかで持続する。
【0090】
用語「低下したモルヒネ含量」は本明細書で使用されるとき、相当する野生型植物におけるモルヒネのレベルと比べて1以上の組織で有意に低下したレベルのモルヒネを指す。用語「低下した」はまた、野生型植物の1以上の組織と比べて同じ組織で有意に低下しているモルヒネのレベルも包含する一方で、モルヒネの野生型のレベルは植物の他のどこかで持続する。
【0091】
「発現を減らすこと」、「活性を減らすこと」、「発現を低下させること」および「活性を低下させること」は、たとえば、「阻害すること」、「下方調節すること」、「ノックアウトすること」、「サイレンシングすること」のような発現および活性に関する周知の同等の用語を包含するように意図される。
【0092】
アルカロイド含量を参照して「実質的にない」は、特定のアルカロイドまたはアルカロイドの組み合わせが、ケシ殻、ケシ殻の濃縮物またはアヘンのアルカロイドの組み合わせの0.6重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、または0.2重量%未満を構成することを意味する。
【0093】
「発現構築物」は本明細書で使用されるとき、核酸がコードする配列の一部または全部が転写されるのが可能である遺伝子産物をコードする核酸を含有する遺伝子構築物の任意の種類を指す。転写物はタンパク質に翻訳されてもよいが、翻訳される必要はない。特定の実施形態では、発現には、遺伝子の転写およびmRNAの遺伝子産物への翻訳の双方が含まれる。他の実施形態では、発現は対象とする遺伝子をコードする核酸の、たとえば、siRNAへの転写のみを含む。
【0094】
本開示の核酸分子の発現構築物はさらに、プロモーター、および他の調節要素、たとえば、エンハンサー、サイレンサー、ポリアデニル化部位、転写ターミネーター、選択可能なマーカーまたはスクリーニング可能なマーカーを含んでもよい。
【0095】
本明細書で使用されるとき、「ベクター」または「構築物」は、たとえば、任意の供給源に由来するプラスミド、コスミド、ウイルス、ベクター、自己複製するポリヌクレオチド分子、ファージ、または線状もしくは環状の一本鎖もしくは二本鎖のDNAもしくはRNAのポリヌクレオチド分子のような任意の組換えポリヌクレオチド分子を指してもよい。「ベクター」または「構築物」は、対象とする遺伝子または遺伝子断片をコードするヌクレオチド配列に加えて、プロモーター、ポリアデニル化部位、エンハンサーまたはサイレンサー、および転写ターミネーターを含んでもよい。本明細書で使用されるとき、「形質転換ベクター」は、細胞、植物または植物物質の形質転換、またはDNAの細胞、植物または植物物質への導入に使用されるベクターを指してもよい。
【0096】
本明細書で使用されるとき、「プロモーター」は、コーディング配列の転写の開始および速度を指示するヌクレオチド配列を指す(Roeder,Trends Biochem Sci,16:402,1991にて概説されている)。プロモーターはRNAポリメラーゼが結合する部位を含有し、他の調節要素(たとえば、転写因子)の結合のための部位も含有する。プロモーターは天然に存在してもよいし、合成であってもよい(植物プロモーターの概説についてはDatla,et al.Biotech.Ann.Rev.3:269,1997を参照のこと)。さらに、プロモーターは、種特異的(たとえば、B.napusのみで活性)、組織特異的(たとえば、ナピン、ファセオリン、ゼイン、グロブリン、dlec2、γ-カフィリン種子特異的プロモーター);発生特異的 (たとえば、胚形成の間のみ活性);構成的(たとえば、トウモロコシユビキチン、コメユビキチン、コメアクチン、Arabidopsisアクチン、サトウキビ桿菌状ウイルス、CsVMVおよびCaMV 35S、Arabidopsisポリユビキチン、Solanum bulbocastanumポリユビキチン、Agrobacterium tumefaciens−由来のノパリンシンターゼ、オクトピンシンターゼ、およびマンノピンシンターゼの遺伝子のプロモーター)または誘導性(たとえば、スチルベンシンターゼのプロモーターおよび光、熱、低温、乾燥、創傷、ホルモン、ストレスおよび化学物質によって誘導されるプロモーター)であってもよい。プロモーターには、TATAボックスまたはInr要素で構成される短いDNA配列である最小プロモーターおよび発現の制御のために調節要素が付加される転写開始の部位を特定するのに役立つ他の配列が含まれる。プロモーターはまた、最小プロモーターに加えてコーディング配列の発現を調節するDNA要素、たとえば、エンハンサーおよびサイレンサーを含むヌクレオチド配列も指してもよい。従って、態様の1つでは、本開示の構築物の発現は、種特異的な、組織特異的な、発生特異的な、または誘導性のプロモーターを選択することによって調節されてもよい。
【0097】
「構成的プロモーター」は本明細書で使用されるとき、環境因子または発生因子にかかわらず、複数の組織またはすべての組織で下流に位置するコーディング配列の発現を主導するプロモーターを指す。
【0098】
当業者は、テバインが合成されている組織にて構築物の発現を効果的に指示するプロモーターを使用することが重要であることを理解するであろう。たとえば、内在性のT6ODMまたはCODMのプロモーターが使用されてもよい。或いは、オピオイド生合成の間に導入される発現構築物の高レベルの発現を指示する適当な条件下で有用な構成的な、組織特異的な、または誘導性のプロモーターを採用することができる。
【0099】
エンハンサーおよびサイレンサーは、それぞれ活発にまたは否定的に連結されたプロモーターの転写に影響を及ぼすDNA要素である(BlackwoodおよびKadonaga,Science,281:61,1998にて概説された)。
【0100】
ポリアデニル化部位は、ポリアデニル化部位から約30bp下流で一連のヌクレオチドAを付加するようにRNA転写機構に信号を送るDNA配列を指す。
【0101】
転写ターミネーターは転写の終結に信号を送るDNA配列を指す。転写ターミネーターは当該技術で既知である。たとえば、ノパリンシンターゼ、マンノピンシンターゼ、オクトピンシンターゼの遺伝子から単離されるものおよびTiプラスミドに由来する他のオープンリーディングフレームのような転写ターミネーターは、Agrobacterium tumefaciensに由来してもよい。他のターミネーターには限定しないで、CaMVおよび他のDNAウイルス、dlec2、ゼイン、ファセオリン、リパーゼ、オスモチン、ペルオキシダーゼ、たとえば、Solanum tuberosumに由来するPinIIおよびユビキチン遺伝子から単離されるものが挙げられてもよい。
【0102】
本開示の文脈では、核酸構築物はさらに選択可能なマーカーを含んでもよい。選択可能なマーカーは外来性の遺伝物質を含有する植物または植物細胞について選択するのに使用されてもよい。外来性の遺伝物質には、除草剤または抗生剤のような作用物質に対して耐性を付与する酵素、または構築物の存在を報告するタンパク質が挙げられてもよいが、これらに限定されない。
【0103】
多数の植物の選択可能なマーカー系が当該技術で既知であり、本発明と調和している。以下の総説はこれら周知の系を説明している:MikiおよびMcHugh;Journal of Biotechnology,107:193−232; Selectable marker genes in transgenic plants:applications,alternatives and biosafety(2004)。
【0104】
選択可能なマーカーの例には、カナマイシン耐性をコードし、カナマイシンを用いて選択することができるneo遺伝子、NptII、G418、hpt等;抗生剤アンピシリンによる選択のためのamp耐性遺伝子;ハイグロマイシン耐性のためのハイグロマイシンR遺伝子;WO/2008/070845に記載されているものを含むビアラホス耐性をコードするBAR遺伝子(ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼをコードする);突然変異体EPSPシンターゼ遺伝子、グリホサート耐性をコードするaadA、ブロモキシニルに対する耐性を付与するニトリラーゼ遺伝子;イミダゾリノンまたはスルホニルウレア耐性を付与する突然変異体アセト乳酸シンターゼ遺伝子(ALS)、ALS、およびメソトレキセート耐性DHFR遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
さらに、本発明の文脈で使用されてもよいスクリーニング可能なマーカーには、その種々の発色性基質が知られている酵素をコードするβ−グルクロニダーゼまたはuidA遺伝子(GUS)、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびルシフェラーゼ(LUX)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
Papaver somniferumにおけるアルカロイド産生
図1はテバインからのモルヒネの生合成の2つの経路を描いている模式図である。6位(環C)でのテバインのO−脱メチル化はテバイン6−O−脱メチル化酵素(T6ODM)によって触媒されるのに対して、3位(環A)でのO−脱メチル化はコデイン3−O−脱メチル化酵素(CODM)によって触媒される。従って、テバインは6位または3位で脱メチル化を受けてそれぞれ、ネオピノンまたはオリパビンを生じる。ネオピノンは自然にコデイノンに変換し、それは次いでコデイノン還元酵素(COR)によってコデインに還元される。コデインはCODMによって3位で脱メチル化されてモルヒネを生じる。T6ODMによる6位でのオリパビンの脱メチル化はモルフィノンを生じ、それは次いでCORによってモルヒネに還元される。
【0107】
本発明者は、T6ODM酵素およびCODM酵素の活性を同時に低下させることによって親植物と比べて増加したレベルのテバインと低いレベルのコデインおよびモルヒネとを含有する植物を生産することが可能であってもよいという仮説を立てた。
【0108】
T6ODM酵素およびCODM酵素の野生型アミノ酸配列はそれぞれ配列番号1および3にて提示されている。T6ODM酵素をコードする内在性遺伝子に相当するcDNA配列は配列番号2として提示され、CODM酵素をコードする内在性遺伝子に相当するcDNA配列は配列番号4として提示されている。しかしながら、当業者は、T6ODMおよびCODMの遺伝子における天然に存在する変異は、同じ機能的タンパク質をコードするやや異なる核酸配列を伴って変種植物の間に存在してもよいことを容易に理解するであろう。
【0109】
CODMおよびT6ODMの活性または発現の低下
本発明の遺伝子改変した植物におけるCODMおよびT6ODMの発現および/または活性は、植物にてこれら酵素の活性の低下を生じる方法によって低下させてもよい。これは、たとえば、DNA、RNAおよび/またはタンパク質のレベルでCODMおよびT6ODMの活性を変化させることによって達成されてもよい。
本明細書で使用されるとき、「活性」は酵素のその同族の基質との生化学的な反応を指す。本発明の文脈では、低下したT6ODM(またはCODM)の活性はT6ODM(またはCODM)酵素のタンパク質レベルの低下および/またはT6ODM(またはCODM)酵素がテバインとの反応を触媒する速度の低下から生じてもよい。
【0110】
CODMおよびT6ODMをコードする内在性遺伝子を変異させること
態様の1つでは、本発明は、CODMおよびT6ODMをコードする内在性遺伝子を標的としてCODMおよびT6ODMの発現および/または活性を変える遺伝子改変に関する。内在性のCODMおよびT6ODMの遺伝子は、限定しないで、CODMおよびT6ODMの遺伝子をノックアウトすること;またはCODMおよびT6ODMの遺伝子を崩壊させる異種DNAをノックインすることによって変化させてもよい。当業者は、これらのアプローチがコーディング配列、プロモーター、または遺伝子の転写に必要な他の調節要素に適用されてもよいことを理解する。たとえば、CRISPR/Cas9およびTALENSのような技術を使用して、CODMおよびT6ODMをコードする内在性遺伝子双方に機能喪失突然変異を導入することができる。次いで、そのような機能喪失突然変異を含む各遺伝子の少なくとも一方の対立遺伝子を有する植物を自家受粉させて、CODMおよびT6ODMをコードする遺伝子における機能喪失対立遺伝子についてホモ接合型の子孫を作り出すことができる。一部の実施形態では、CODM(またはT6ODM)をコードする内在性遺伝子の遺伝子改変は、1以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換によって配列が異なり、かつ低下したCODM(またはT6ODM)活性を有するまたはCODM(またはT6ODM)活性を有さないポリペプチドを生じる。
【0111】
欠失には内在性タンパク質の1以上の残基の欠如が関与する。本開示の目的では、欠失変異体には、内在性タンパク質のアミノ酸が翻訳されない実施形態、たとえば、最初の「開始」メチオニンが置換されるまたは欠失する場合が含まれる。
【0112】
挿入突然変異には通常、ポリペプチドの末端ではない点での物質の付加が関与するが、アミノ末端およびカルボキシ末端の付加を含む融合タンパク質が含まれてもよい。置換変異体には通常、タンパク質内の1以上の部位での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換が関与し、ポリペプチドの1以上の特性を調節するように設計されてもよい。この種の置換は一部の実施形態では、保存的であってもよく、すなわち、1つのアミノ酸が類似の形状、サイズ、電荷、疎水性、親水性等もので置き換えられる。保存的置換は当該技術で周知であり、それには、たとえば、アラニンからセリン;アラニンからリシン;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸からグルタミン酸;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸からアスパラギン酸;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシンからロイシンまたはバリン;ロイシンからバリンまたはイソロイシン;リシンからアルギニン;メチオニンからロイシンまたはイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニン;セリンからスレオニン;スレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン;およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化が挙げられる。
【0113】
従って、CODM酵素は配列番号1に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を持つアミノ酸配列を有してもよい。従って、T6ODM酵素は配列番号2に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を持つアミノ酸配列を有してもよい。
【0114】
内在性遺伝子を標的とする導入遺伝子の発現
別の態様では、本開示はそれらの各mRNA転写物を標的とすることによってCODMおよびT6ODMの発現および/または活性を低下させることに関する。この点で、同時抑制、アンチセンスの発現、小型ヘアピン(shRNA)の発現、干渉RNA(RNAi)の発現、二本鎖(dsRNA)の発現、逆向き反復dsRNAの発現、マイクロ干渉RNA(miRNA)、センス配列およびアンチセンス配列の同時発現、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない当該技術で既知の方法によってCODMおよびT6ODMのT mRNA転写物のレベルを低下させてもよい。
【0115】
一実施形態では、本開示は、配列番号2または配列番号4に記述されている分子の少なくとも一部に相補性であるまたは本質的に相補性である核酸分子の使用に関する。「相補性」である核酸分子は、標準のWatson・Crick相補性規則に従って塩基対合が可能であるものである。本明細書で使用されるとき、用語「相補性配列」は、上述の同じヌクレオチド比較によって評価されてもよいとき、または本明細書に記載されているもののような相対的にストリンジェントな条件下で配列番号2または配列番号4のアミノ酸セグメントとハイブリッド形成することができると定義されるとき、実質的に相補性である核酸配列を意味する。中程度にストリンジェントな、好ましくはストリンジェントな条件下で2つの配列が互いにハイブリッド形成するならば、核酸分子は実質的に相補性(または相同性/同一性を有する)であってもよい。フィルター結合する配列への中程度にストリンジェントな条件下でのハイブリッド形成は、65℃での0.5MのNaHPO
4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mMのEDTA、および42℃での0.2×SSC/1%SDSでの洗浄にて実施されてもよい(Ausubel,et al.(eds),1989,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,Green Publishing Associates,Inc.,and John Wiley & Sons,Inc.,New York,at p.2.10.3を参照のこと)。或いは、フィルター結合する配列へのストリンジェントな条件下でのハイブリッド形成は、65℃での0.5MのNaHPO
4、7%SDS、1mMのEDTA、および68℃での0.1×SSC/0.1%SDSでの洗浄にて実施されてもよい(Ausubel,et al.(eds),1989,上記を参照のこと)。ハイブリッド形成の条件は対象とする配列に応じて既知の方法に従って改変されてもよい(Tijssen,1993,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes,Part I, Chapter 2 “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”, Elsevier, N.Y.)。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度およびpHで特定の配列についての熱融点より約5℃低いように選択される。
【0116】
植物における同時抑制の現象は、内在性遺伝子と同様に導入遺伝子の発現の低下を生じる遺伝子のトランスジェニックコピーの導入に関係する。観察された効果は、導入遺伝子と内在性遺伝子の間での配列同一性に左右される。
【0117】
用語「RNA干渉」(RNAi)は宿主植物における天然に存在する遺伝子の発現を下方調節するまたはサイレンシングする周知の方法を指す。RNAiは二本鎖RNA分子または小型ヘアピンRNAを用いて、それらが実質的な相同性または全相同性を共有する核酸配列の発現を変化させる。概説については、Agrawal,N.et al,(2003),Microbiol.Mol.Biol.Rev.67(4):657−685を参照のこと。RNAはその過程では開始剤および標的の双方である。このメカニズムはウイルス由来のRNAおよびトランスポゾンを標的とし、発生を調節することおよびゲノムの維持でも役割を担っている。手短には、二本鎖RNAが酵素ダイサーによって切断され、21〜23bpの短い断片(siRNA)を生じる。各断片の二本鎖の一方がRNA誘導のサイレンシング複合体(RISC)に組み込まれる。RISCが会合したRNA鎖がmRNAと対合し、mRNAの切断を誘導する。或いは、RISCが会合したRNA鎖がゲノムDNAと対合し、遺伝子の転写に影響を及ぼす後成的な変化を生じる。マイクロRNA(miRNA)はゲノム自体から転写されるRNAの型であり、類似の方法で機能する。同様に、shRNAはダイサーによって切断され、RISCと会合してmRNAの切断を生じてもよい。
【0118】
ポピーにおける遺伝子サイレンシングの具体例はRNAiのアプローチを用いて報告されている。2008年、Allenらは、ケシにおけるモルフィナン経路の酵素、サルタリジノール7−O−アセチルトランスフェラーゼ(SalAT)をコードする遺伝子の抑制を報告した。ヘアピンRNAが介在するSalATの抑制は全アルカロイドの23%までのサルタリジンの蓄積を生じた。関連技術の記載にて上記で議論されたように、Allenら(2004)はRNAiを介して多重遺伝子CORファミリーのメンバーすべてをサイレンシングするように設計されたキメラヘアピンRNA構築物を用いてケシにてコデイノン還元酵素(COR)をサイレンシングした。
【0119】
遺伝子発現のアンチセンス抑制にはmRNA分解の触媒は関与しないが、代わりにmRNAに結合し、タンパク質翻訳を阻止する一本鎖RNA断片が関与する。
【0120】
アンチセンスおよびセンス双方の抑制は、センス・アンチセンスハイブリッド、またはRNA依存性のRNAポリメラーゼによって生成される二本鎖RNA(dsRNA)から作られるRNAをサイレンシングすること(sRNA)が介在する。sRNAの主要なクラスには、その生合成で異なる小型干渉RNA(siRNA)およびマイクロRNA(miRNA)が挙げられる。
【0121】
ダイサー様の複合体によるdsRNA前駆体のプロセッシングによって、21ヌクレオチドのsiRNAと、RNA誘導のサイレンシング複合体(RISC)内からの標的転写物のmiRNA主導の切断が得られる。
【0122】
T6ODMおよびCODMの発現は、T6ODMおよびCODMについての内在性コーディング配列に対する高い相同性(好ましくは100%の相同性)の約21bp以上の長さの領域を含有する合成遺伝子または無関係の遺伝子を用いて抑制されてもよい。
【0123】
たとえば、Jorgensen,R.A.,Doetsch,N.,Muller,A.,Que,Q.,Gendler,KおよびNapoli,C.A.(2006),A paragenetic perspective on integration of RNA silencing into the epigenome and in the biology of higher plants.Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.71:481−485.を参照のこと。さらなる概説については、たとえば、Ossowski,S.,Schwab,RおよびWeigel,D.,(2008),Gene silencing in plants using artificial microRNAs and other small RNAs.The Plant Journal,53:674−690を参照のこと。
【0124】
CODMおよびT6ODMについての内在性のコーディング配列の一部に対して実質的に同一である核酸分子も本開示の文脈で使用されてもよい。本明細書で使用されるとき、2つの分子が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも82.5%、少なくとも85%、少なくとも87.5%、少なくとも90%、少なくとも92.5%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するのであれば、一方の核酸分子はもう1つの核酸分子と「実質的に同一」であってもよい。従って、配列番号2または配列番号4に対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92.5%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である核酸配列を含む核酸配列は本開示の文脈での使用に好適であってもよい。一実施形態では、2つの核酸分子はそれぞれ、少なくとも20の同一の連続するヌクレオチドを含む。
【0125】
CODMまたはT6ODMをコードする核酸配列の断片が使用されてもよい。そのような断片は、場合によっては、CODMまたはT6ODMをコードする核酸配列の少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも300、または少なくとも400の連続するヌクレオチドの長さを有してもよい。或いは、そのような断片は、場合によっては、CODMまたはT6ODMをコードする核酸配列の少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、または少なくとも50の連続するヌクレオチドの最短長さ、および3000未満、2000未満、1750未満、1500未満、1250未満、1000未満、750未満、または500未満の連続するヌクレオチドの最長長さ、またはそのような最短長さと最長長さの組み合わせを有してもよい。
【0126】
一実施形態では、本開示の遺伝子改変したケシ植物は、ゲノムに安定的に統合された、植物に対して異種である第1の核酸分子を含む。第1の核酸分子は、CODM酵素の発現を低下させるためにRNA、たとえば、ヘアピンRNAをコードする。遺伝子改変したケシ植物はさらに、植物に対して異種である第2の核酸分子を含む。第2の核酸分子はT6ODM酵素の発現を低下させるためにRNA、たとえば、ヘアピンRNAをコードする。
【0127】
第1と第2の核酸分子は単一の遺伝子構築物または複数の構築物に存在してもよい。一実施形態では、第1および/または第2の核酸分子はプロモーターに対してセンス方向で配置されてもよい。別の実施形態では、第1および/または第2の核酸分子はプロモーターに対してアンチセンス方向で配置されてもよい。さらなる実施形態では、遺伝子構築物はプロモーターに対してセンスおよびアンチセンス双方の方向での少なくとも2つの核酸分子を含んでもよい。センスおよびアンチセンス双方の方向で核酸分子を含む遺伝子構築物はステム・ループ(ヘアピン)構造を形成することができるmRNA転写物を生じてもよい。
【0128】
核酸分子の一方または双方は同一プロモーターの転写制御下にあってもよい。
【0129】
様々な事例では、第1と第2の異種核酸分子はそれぞれ、
配列番号4に記述されている核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%または100%の配列同一性を持っている核酸配列の少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも300、または少なくとも400の連続するヌクレオチド;
配列番号2に記述されている核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%または100%の配列同一性を持っている核酸配列の少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも300、または少なくとも400の連続するヌクレオチド
を含む。
【0130】
様々な事例では、第1および第2の核酸分子はそれぞれ
配列番号4に記述されている核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%または100%の配列同一性を持っている核酸配列のうち、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、または少なくとも50の連続するヌクレオチドの最短長さおよび1750未満、1500未満、1250未満、1000未満、750未満または500未満の連続するヌクレオチドの最長長さを持つ、またはそのような最短と最長の長さの組み合わせを持つ核酸分子および
配列番号2に記述されている核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%または100%の配列同一性を持っている核酸配列のうち、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、または少なくとも50の連続するヌクレオチドの最短長さおよび1750未満、1500未満、1250未満、1000未満、750未満または500未満の連続するヌクレオチドの最長長さを持つ、またはそのような最短と最長の長さの組み合わせを持つ核酸分子
を含む。
【0131】
当業者は、CODMおよびT6ODMの活性の低下が植物または植物細胞に導入される異なる核酸分子の数によって限定されなくてもよいことも十分に理解するであろう。一実施形態では、1つの核酸分子が酵素をコードする内在性遺伝子の一方または双方を標的としてもよい。従って、別の実施形態では、本開示の遺伝子改変したケシ植物は、ゲノムに安定して統合された、植物に対して異種の核酸分子を含む。核酸分子は、CODM酵素の発現を低下させるためのRNA(たとえば、ヘアピンRNA)と、T6ODM酵素の発現を低下させるためのRNA(たとえば、ヘアピンRNA)とを含む単一の転写物をコードする。本開示で具体的に例示されている機能する実施形態では、核酸分子は、CODM酵素とT6ODM酵素の双方の発現を低下させるための単一のヘアピンRNAを含む単一の転写物をコードする。
【0132】
態様の1つでは、核酸分子は、CODM(配列番号4);T6ODM(配列番号2);それらの対立遺伝子変異体;それらの非天然の変異体;それらの断片のコーディング配列の一部またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0133】
一実施形態では、T6ODM(配列番号2)のコーディング配列の断片は、CODMおよびT6ODM双方の内在性コーディング配列の発現を標的とするRNAiヘアピンをコードする発現構築物の作製に好適である。本開示で具体的に例示されている機能する実施形態では、そのような断片は配列番号7を含む。本開示で具体的に例示されている機能する実施形態では、そのような発現構築物は配列番号5を含む。本開示で具体的に例示されている機能する実施形態では、RNAiヘアピンは配列番号6を含む核酸によってコードされる。
【0134】
プロモーターに対して双方の方向で核酸を含む発現構築物はさらにスペーサーを含んでセンス方向における核酸分子とアンチセンス方向における核酸分子を分離してもよい。本明細書で使用されるとき、「スペーサー」は少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも150、または少なくとも200のヌクレオチドを含んでもよい。
【0135】
当業者は、前述の説明例では、部分的なCODMおよびT6ODMのコーディング配列がCODMおよびT6ODMの構築物を構築するために提案されたが、完全なCODMおよびT6ODMのコーディング配列、代替のCODMおよび/またはT6ODMのコーディング配列、5’UTRおよび/または3’UTR、またはこれらの配列の変異させた誘導体も使用することができることも容易に理解するであろう。本発明の文脈で使用されてもよい核酸分子の最大数は所与の形質転換法を用いて標的の植物または植物細胞に送達されてもよい構築物の最大サイズによってのみ限定されてもよい。
【0136】
種々の実施形態では、本開示の遺伝子改変した植物はさらに、植物に対して異種の第3の核酸分子を含んでもよい。第3の核酸分子はCyp80B3の発現を高めてモルフィナンの合計レベルを高めるためである。
【0137】
内在性のCODMおよびT6ODMポリペプチドを標的とする導入遺伝子の発現
さらなる態様では、本開示はタンパク質レベルでCODMおよびT6ODMを標的とすることによってCODMおよびT6ODMの活性を低下させることに関する。たとえば、CODM(またはT6ODM)の活性は酵素の翻訳後修飾に影響を及ぼすことによって、または異種タンパク質の導入によって低下させてもよい(たとえば、CODM(またはT6ODM)の変異させた形態は、それが野生型酵素と会合し、その活性を変えるように、または基質を変換できずに基質に対する野生型酵素を打ち負かすもしくはCODM(またはT6ODM)酵素に特異的に結合する抗体を打ち負かすように発現させてもよい)。
【0138】
当業者は、CODMまたはT6ODM遺伝子のプロモーターおよび/または他の調節要素の配列を含む核酸分子が本発明の文脈で使用されてもよいことも十分に理解する。実施形態では、CODM(または場合によってはT6ODM)遺伝子のプロモーターおよび/または調節要素の配列を含む異種核酸分子を用いて内在性CODM(または場合によってはT6ODM)遺伝子のプロモーターから離れて細胞機構にバイアスをかけるので、結果的にCODM(またはT6ODM)の発現を低下させてもよい。
【0139】
核酸構築物またはその要素のサイズまたは長さは本明細書に記載されている具体的な実施形態に限定されない。たとえば、当業者は、導入遺伝子の要素のサイズは代わりに導入遺伝子の要素の機能によって定義されてもよく、プロモーターの要素は代わりに、十分なレベルでかつ所望の組織で転写を主導することができたものとして決定されてもよいことを十分に理解する。同様に、本発明の核酸構築物によって転写されたmRNAにより形成されるステムループ構造は長さが異なってもよい多数の遺伝子セグメントを含んでもよい。たとえば、ステムループはイントロンのようなスペーサーに加えて各およそ21〜30塩基対の3つの遺伝子セグメントを含んでもよい(126bpに加えてイントロン)。
【0140】
当業者は、遺伝子セグメントのサイズは組み合わせた要素サイズの合計によって確立されてもよく、標的生物に導入遺伝子を送達するのに使用される形質転換法に左右されてもよいことを十分に理解する。たとえば、各形質転換法(アグロバクテリウム、遺伝子銃、VIGSに基づく送達系)は理論的な最大導入遺伝子サイズに限定されてもよい。
【0141】
植物の形質転換
アグロバクテリウムが介在する導入による植物細胞へのDNAの導入は当業者に周知である。たとえば、植物細胞の形質転換にTiまたはRiプラスミドが使用されるのであれば、TiまたはRiプラスミドに含有されるT−DNAの左右の境界双方が使用されることが多いが、少なくとも右境界が隣接領域として挿入される遺伝子に連結されなければならない。アグロバクテリウムが形質転換に使用されるのであれば、統合されるDNAは特定のプラスミドおよび具体的には中間ベクターまたはバイナリーベクターにクローニングされなければならない。中間ベクターは、T−DNAにおける配列に相同性である配列による相同組換えによってアグロバクテリウムのTiまたはRiプラスミドに組み込まれてもよい。これはまたT−DNAの導入に必要とされるvir領域も含有する。中間ベクターはアグロバクテリウムにて複製することができない。中間ベクターはヘルパープラスミド(コンジュゲーション)によってAgrobacterium tumefaciensに移すことができる。バイナリーベクターはアグロバクテリウムと同様にE.coliにて複製することができる。それらは選択マーカー遺伝子と、左右のT−DNA境界配列によって囲まれたリンカーまたはポリリンカーとを含有する。それらはアグロバクテリウムで直接形質転換することができる。宿主細胞として作用するアグロバクテリウムはvir領域を運ぶプラスミドを含有すべきである。vir領域はT−DNAの植物細胞への導入に必要とされる。追加のT−DNAが存在してもよい。そのような形質転換されたアグロバクテリウムを植物細胞の形質転換に使用する。植物細胞の形質転換へのT−DNAの使用は広範に研究されており、植物の形質転換に関する標準の総説および説明書に適宜記載されている。この目的でAgrobacterium tumefaciensまたはAgrobacterium rhizogenesと共に培養された植物外植片を植物細胞へのDNAの導入に使用することができる。
【0142】
アグロバクテリウムの形質転換を用いてケシ植物を形質転換することができる(Chitty,et al.(Meth.Molec.Biol,344:383−391; Chitty,et al.(Functional Plant Biol,30:1045−1058);Facchini,et al.(Plant Cell Rep.,27(4):719−727))。Facchiniら(2008)は、稔性で除草剤耐性のケシ植物の生産のための体細胞胚形成を介したA.tumefaciensが介在する遺伝子形質転換プロトコールを開示した。形質転換は、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターが主導するホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(pat)遺伝子とCaMV35Sプロモーターが主導するβ−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を内部に持つ形質転換ベクターであるpCAMBIA3301が介在した。50mMのATPおよび50mMのMgCl
2の存在下で外植片をA.tumefaciensと共に共培養した。次いで、カルス誘導培地で予備培養した根部外植片を形質転換に使用した。2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)および6−ベンジルアデニン(BA)の双方を含有する培地での外植片から除草剤耐性で増殖するカルスが得られた。培地からのBAの除去によって球形の胚様カルスが誘導され、それをホルモンを含まない培地に入れ、体細胞胚を形成させた。特定の培養条件下で体細胞胚を小植物に変換し、土壌に移した。植物を成熟させ、種子を播いた。調べたトランスジェニック株でPATおよびGUSの転写物および酵素活性を検出した。
【0143】
それにもかかわらず、本発明は植物細胞を形質転換する特定の方法に限定されず、当業者は、植物へのDNA導入の他の好適な方法が使用されてもよいことを容易に理解するであろう。核酸を細胞に導入する(本明細書では「形質転換」とも呼ぶ)方法は当該技術で既知であり、それらには、ウイルス法(Clapp.Clin.Perinatol,20:155−168,1993;Lu,et al.J.Exp.Med,178:2089−2096,1993;EglitisおよびAnderson.Biotechniques,6:608−614,1988;Eglitis,et al,Avd.Exp.Med.Biol,241:19−27,1988);微量注入のような物理的方法(Capecchi.Cell,22:479−488,1980)、エレクトロポレーション(WongおよびNeumann.Biochim.Biophys Res.Commun,107:584−587,1982;Fromm,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:5824−5828,1985;U.S.Pat.No.5,384,253)および遺伝子銃(JohnstonおよびTang.Methods Cell Biol,43:353−365,1994;Fynan,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:11478−11482,1993);化学法(Grahamおよびvan der Eb.Virology,54:536−539,1973;Zatloukal,et al.Ann.NY.Acad.Sci,660:136−153,1992);および受容体介在法(Curiel,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8850−8854,1991;Curiel,et al.Hum.Gen.Ther,3:147−154,1992;Wagner,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:6099−6103,1992)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
DNAを植物細胞に導入する別の方法は遺伝子銃による。この方法には、DNAで被覆された顕微鏡的粒子(たとえば、金またはタングステンの粒子)による植物細胞の衝撃が関与する。粒子は、通常、気体または放電によって細胞壁および細胞膜を通って迅速に加速され、それによってDNAが細胞内に放出され、細胞のゲノムに組み込まれる。この方法は、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、コメ、木質の樹木種等を含む多数の作物の形質転換に使用されている。遺伝子銃の衝撃は、真核性および原核性双方の微生物、ミトコンドリア、および微生物や植物の葉緑体におけると同様に多種多様な動物組織に形質移入するのに有効であることが証明されている(Johnston.Nature,346:776−777,1990;Klein,et al.Bio/Technol,10:286−291,1992;PecorinoおよびLo.Curr.Biol,2:30−32,1992;Jiao,et al,Bio/Technol,11:497−502,1993)。
【0145】
DNAを植物細胞に導入する別の方法はエレクトロポレーションによる。この方法には、プロトプラスト/細胞/組織に適用される高電圧のパルスが関与し、外来性DNAの取り込みを促す原形質膜に一時的な孔を生じる。外来性のDNAは孔を通って細胞質に入り、次いで核に入る。
【0146】
植物細胞はリポソームが介在する遺伝子導入によって形質転換されてもよい。この方法は、核酸を細胞に送達するための、水性内部を伴う環状脂質分子であるリポソームの使用を指す。リポソームはDNA断片を被包し、次いで細胞膜に付着し、それと融合してDNA断片を導入する。従って、DNAは細胞に入り、次いで核に入る。
【0147】
本発明と矛盾しない植物細胞を形質転換するための他の周知の方法には、花粉形質転換(Toledo大学、1993年、米国特許第5,177,010号を参照のこと);Whiskers技術(米国特許第5,464,765号および同第5,302,523号を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
本発明の核酸構築物は植物のプロトプラストに導入されてもよい。植物のプロトプラストは機械的手段または酵素的手段を用いて細胞壁が完全にまたは部分的に取り除かれている細胞であり、リン酸カルシウムに基づく沈殿、ポリエチレングリコール処理およびエレクトロポレーションを含む既知の方法で形質転換されてもよい(たとえば、Potrykus,et al.,Mol.Gen.Genet.,199:183,1985;Marcotte,et al.,Nature,335:454,1988を参照のこと)。ポリエチレングリコール(PEG)は酸化エチレンのポリマーである。それは植物のプロトプラストへのDNAの取り込みを誘導する高分子遺伝子キャリアとして広く使用されている。PEGを二価のカチオンと組み合わせて使用してDNAを沈殿させ、細胞の取り込みを達成してもよい。或いは、PEGを、たとえば、ポリ(エチレンイミン)およびポリL−リシンのような他のポリマーと複合体化してもよい。
【0149】
標的指向化組換え、相同組換えおよび部位特異的組換え(植物における部位特異的組換え系の概説については、概説Baszcynski,et al.Transgenic Plants,157:157−178,2003を参照のこと)を含むが、これらに限定されない多数の方法によって本発明の核酸分子が植物細胞のゲノム内に向けられてもよい。植物における(Reiss.International Review of Cytology,228:85−139,2003にて概説された)および動物細胞における(SorrellおよびKolb.Biotechnology Advances,23:431−469,2005にて概説された)相同組換えおよび遺伝子標的指向化は当該技術で既知である。
【0150】
本明細書で使用されるとき、「標的化組換え」はゲノムの部位への核酸構築物の組込みを指し、その際、組込みは組込みの部位に相当する配列を含む構築物によって促される。
【0151】
相同組換えは、細胞に導入されるDNAの小片と細胞のゲノムの間での配列同一性に頼る。相同組換えは高等真核生物では極端に稀な事象である。しかしながら、相同組換えの頻度は、DNA二本鎖切断、三本鎖形成オリゴヌクレオチドまたはアデノ随伴ウイルスの導入を含む戦略によって増やされてもよい。
【0152】
本明細書で使用されるとき、「部位特異的組換え」は酵素の存在下で少なくとも2つの別個の配列が相互作用して単一の核酸配列に結合する場合に生じる酵素的組換えを指す。部位特異的組換えは、限られた配列相同性しか有さないDNA分子間でのDNA鎖の交換を触媒する、たとえば、リコンビナーゼ、トランスポザーゼおよびインテグラーゼのような酵素に頼る。部位特異的組換えのメカニズムは当該技術で既知である(Grindley,et al.Annu.Rev.Biochem,75:567−605,2006にて概説された)。部位特異的組換えの認識部位(たとえば、Creおよびattの部位)は普通30〜50bpである。その間で組換えが起きる部位のペアは普通同一であるが、例外、たとえば、λインテグラーゼのattPおよびattBがある(Landy.Ann.Rev.Biochem,58:913−949,1989)。
【0153】
追加の方法は、部位特異的ヌクレアーゼ、たとえば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、ZFN、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子様のエフェクターヌクレアーゼ、TALENSおよび操作されたcrRNA/トレーサーRNAを伴うクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR−関連ヌクレアーゼ(CRISPR/Cas)によってゲノムDNAを標的とし、切断して、標的化された変異誘発を誘導する、細胞性DNA配列の標的化された欠失を誘導する、および所定のゲノム遺伝子座内での外来性ドナーDNAポリヌクレオチドの標的化組換えを促す方法および組成物の近年の開発から選択されてもよい。外来性DNAの標的化された挿入のための現在の方法には通常、少なくとも1つの導入遺伝子と、活発に転写されるコーディング配列の特定のゲノム遺伝子座を結合し、切断するように設計されている部位特異的ヌクレアーゼ、たとえば、ZENとを含有するドナーDNAポリヌクレオチドによる植物組織の同時形質転換が関与する。これによってドナーDNAポリヌクレオチドが切断されたゲノム遺伝子座内に安定して挿入され、活発に転写されるコーディング配列を含む特定のゲノム遺伝子座での標的化された遺伝子付加を生じる。
【0154】
本明細書で使用されるとき、用語「亜鉛フィンガー」は、その構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化されるDNA結合タンパク質結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域を定義する。
【0155】
「亜鉛フィンガーDNA結合タンパク質(または結合ドメイン)は、その構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1以上の亜鉛フィンガーを介して配列特異的にDNAを結合する、大型タンパク質内のタンパク質またはドメインである。用語、亜鉛フィンガーDNA結合タンパク質は亜鉛フィンガータンパク質またはZFPと略記されることが多い。亜鉛フィンガー結合ドメインを「操作して」所定のヌクレオチド配列に結合することができる。亜鉛フィンガータンパク質を操作する方法の非限定例は設計および選択である。設計された亜鉛フィンガータンパク質は、その設計/組成が主として合理的な基準から生じる、自然界に存在しないタンパク質である。設計のための合理的な基準には、置換規則の適用、および既存のZFPの設計や結合データの情報を保存しているデータベースにて情報を処理するためのコンピュータ化アルゴリズムが挙げられる(米国特許第6,453,242号;WO98/53058も参照のこと)。
【0156】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は1以上のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復ドメインはその同族標的DNA配列とのTALEの結合に含まれる。単一の「反復単位」も「反復」と呼ばれ、通常長さ33〜35のアミノ酸であり、天然に存在するTALEタンパク質内での他のTALE反復配列との少なくとも若干の配列相同性を示す(米国特許公開番号2011/0301073)。
【0157】
CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)/Cas(CRISPR関連の)ヌクレアーゼ系。手短には、「CRISPR DNA結合ドメイン」は、CAS酵素と協調した作用がゲノムDNAを選択的に認識し、結合し、切断することができる短い鎖のRNA分子である。CRISPR/Cas系を操作してゲノムにおける所望の標的で二本鎖切断(DSB)を作り出すことができ、修復阻害剤の使用によってDSBの修復に影響を与えてエラーを起こし易い修復を増やすことができる(Jinek,et al,(2012),Science,337,p.816−821)。
【0158】
亜鉛フィンガー、CRISPRおよびTALE結合ドメインを「操作して」、たとえば、天然に存在する亜鉛フィンガーの認識らせん領域の操作(1以上のアミノ酸を変えること)を介して所定のヌクレオチド配列に結合することができる。同様に、たとえば、DNA結合に含まれるアミノ酸(反復可変二残基またはRVD領域)を操作することによってTALEを「操作して」、所定のヌクレオチド配列に結合することができる。従って、操作したDNA結合タンパク質(亜鉛フィンガーまたはTALE)は天然に存在しないタンパク質である。DNA結合タンパク質を操作するための方法の非限定例は設計および選択である。設計されたDNA結合タンパク質は、その設計/組成が主として合理的な基準から生じる、自然界に存在しないタンパク質である。設計のための合理的な基準には、置換規則の適用、および既存のZFPおよび/またはTALEの設計や結合データの情報を保存しているデータベースにて情報を処理するためのコンピュータ化アルゴリズムが挙げられる(米国特許第6,453,242号;WO98/53058および米国公開番号2011/0301073も参照のこと)。
【0159】
「選択された」亜鉛フィンガー、CRISPRまたはTALEは、その生産が主として、たとえば、ファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択のような経験的な過程から生じる、自然界に見いだされないタンパク質である。
【0160】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、T6ODMまたはCODMのポリペプチドをコードする遺伝子に結合する亜鉛フィンガータンパク質をコードし、その遺伝子の発現の低下を生じる。特定の実施形態では、亜鉛フィンガータンパク質はT6ODMまたはCODMをコードする遺伝子の調節性領域に結合する。他の実施形態では、亜鉛フィンガータンパク質は、T6ODMまたはCODMのポリペプチドをコードするメッセンジャーRNAに結合し、その翻訳を妨げる。亜鉛フィンガータンパク質によって標的化するための部位を選択する方法は、たとえば、US6,453,424に記載されており、亜鉛フィンガータンパク質を用いて植物にて遺伝子の発現を阻害する方法は、たとえば、US2003/0037355に記載されており、そのそれぞれが参照によって本明細書に組み入れられる。TALEタンパク質によって標的化するための部位を選択する方法は、たとえば、Moscou,MJ.,Bogdanove,AJ.,2009,A simple cipher governs DNA recognition by TAL effectors.Science,326:1501に記載されている。
【0161】
核酸分子は、植物細胞の代々の世代がCODMおよびT6ODMの低下した発現を有するためにそれが嬢細胞に遺伝性であるように植物ゲノムに安定して組み込まれるようになる。これには、植物細胞ゲノムに統合する、たとえば、無作為に統合する本発明の核酸分子が関与してもよい。或いは、本発明の核酸分子は、嬢細胞に対して遺伝性である外来性の自己複製するDNAのままであってもよい。本明細書で使用されるとき、嬢細胞に対して遺伝性である外来性の自己複製するDNAもまた、「植物ゲノムに安定して組み込まれる」と見なされる。
【0162】
CODMおよびT6ODMの活性または発現の低下についての試験
CODMおよびT6ODMをコードする内在性遺伝子の破壊、その発現、またはCODMおよびT6ODMの酵素活性は、分子生物学の当該技術で既知の方法によって確認されてもよい。たとえば、内在性遺伝子の破壊はPCRとその後のサザンブロット解析によって評価されてもよい。CODMおよびT6ODMのmRNAレベルは、たとえば、リアルタイムPCR、RT−PCR、ノーザンブロット解析、マイクロアレイ遺伝子解析、およびRNA分解酵素保護によって測定されてもよい。CODMおよびT6ODMのタンパク質レベルは、限定しないで、酵素活性アッセイ、ELISAおよびウエスタンブロット解析によって測定されてもよい。CODMおよびT6ODMの発現またはその欠如はテバインの増加した蓄積の予測因子として使用されてもよい。CODMおよびT6ODMの酵素活性は生化学的にまたは機能的に評価されてもよい。
【0163】
たとえば、CODM(および/またはT6ODM)の活性は、幾つもの異種基質、たとえば、テバインの存在下、酵素によって形成される生成物の検出を含むが、これらに限定されない当該技術で既知の方法によって生化学的に測定されてもよい。CODM(および/またはT6ODM)の活性は、機能的に、たとえば、ポピー組織におけるテバインのレベルを評価することによっても測定されてもよい。
【0164】
本開示の遺伝子改変したケシ植物は、前記植物またはその種子、苗木、殻、さく果、またはその子孫にて、野生型の種子、苗木、殻、さく果、またはその子孫と比べて少なくとも57%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%CODMおよび/またはT6ODMの活性の低下を生じてもよい。
【0165】
CODMおよび/またはT6ODMにおける機能喪失突然変異についての標的化スクリーニング
本開示はさらに、CODMおよび/またはT6ODMをコードする内在性遺伝子における機能喪失突然変異についての標的化スクリーニングと、突然変異を組み合わせて双方の遺伝子座で機能喪失突然変異についてホモ接合型である植物を得るためのその後の植物の育種が関与する、テバインのレベルが増加したケシ植物を生成する方法に関する。ケシの育種家は改善された品種の育成のために種々の選択法を使用している。しかしながら、種々の異なる所望の特徴を持つ親のハイブリッド形成が関与する最も上手く行った育種法。そのようなアプローチを上手く用いて、さく果の数、種子やケシの収量、モルヒネ含量、および耐倒伏性を高めている。
【0166】
用語「T−DNA挿入」は、挿入変異誘発を介して遺伝子を破壊するために転移DNA(T−DNA)を利用する方法を指す。従って、ケシ植物にてCODMおよび/またはT6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を下方調節することまたはサイレンシングすることはT−DNA変異誘発によって達成することができ、その際、T−DNAは変異を導入するために植物ゲノムでの無作為挿入に使用される。その後、T−DNAに特異的なプライマー1つとCODM(または場合によってはT6ODM)をコードする遺伝子に特異的なプライマー1つとを含むプライマーペアを用いたPCRによって、または他の高処理能力技術によって、CODMおよび/またはT6ODMをコードする遺伝子におけるT−DNAの挿入について植物をスクリーニングすることができる。挿入変異原としてのT−DNAの概説については、たとえば、Krysan,P.J.et al.(1999),Plant Cell,11:2283−2290を参照のこと。トランスポゾンを用いた挿入変異誘発も採用されてもよい。
【0167】
種々の形態の変異誘発によって突然変異(欠失、挿入および点突然変異を含む)を植物細胞のゲノムに無作為に導入して非天然の変異体を作り出すことができる。種子を含む植物素材の変異誘発の方法および所望の表現型についてのその後のスクリーニングまたは選択は、WO2009109012に記載されているように周知である。突然変異を起こした植物および植物細胞も、たとえば、TILLING(ゲノム中の標的化誘発局所的損傷)によって、CODMおよび/またはT6ODMをコードする遺伝子における突然変異について具体的にスクリーニングすることができる。天然の植物集団に存在する機能喪失突然変異はEcoTILLINGによって特定することができる。
【0168】
CODMおよびT6ODMをコードする内在性遺伝子にて機能喪失突然変異がいったん特定されると、従来の育種法を介してそれらを組み合わせ、双方の遺伝子座にて機能喪失突然変異についてホモ接合型である植物を生産することができる。或いは、CODMをコードする内在性遺伝子にて特定された機能喪失突然変異を、遺伝子改変によって導入されるT6ODMをコードする内在性遺伝子における突然変異と組み合わせることができ、逆もまた同様である。或いは、CODMをコードする内在性遺伝子にて特定された機能喪失突然変異を、上記に記載されているようにT6ODMの発現を低下させるように設計された発現構築物を含む遺伝子改変と組み合わせることができ、逆もまた同様である。
【0169】
アルカロイドの回収および分析
ケシの栽培およびアヘンの回収には従来、種子鞘を手動で切開し、乳状液を回収する工程が関与した。しかしながら、モルヒネおよび関連化合物をケシ殻から抽出する方法は従来の技法を回避したが、高品質の種子および薬学上価値のある原料を同時に入手することを可能にする。ケシ植物のケシ殻または乳状液からテバインを回収することはWO2009109012に記載されているように当該技術で周知である。以下に記載されている特定の方法に加えて、ケシ殻または乳状液からのアルカロイド抽出物を分析する方法もWO2009109012にて議論されている。
【実施例】
【0170】
図2を参照して本発明者は、CODMおよびT6ODMをコードする遺伝子を標的とする単一のヘアピン構築物を使用して、親植物に比べて高レベルのテバイン(および低レベルのコデインとモルヒネ)を含有する植物はT6ODMおよびCODM酵素の活性を同時に低下させることによって作製することができるという仮説を調べた。
【0171】
図3を参照して、CODMおよびT6ODMの遺伝子のコーディング配列は非常に増加したレベルの同一性を有する。従って、本発明者はCODMをコードする内在性遺伝子とT6ODMのコーディング配列の一部に由来するT6ODMをコードする内在性遺伝子との双方をRNAiによって標的とするための単一の発現構築物を作り出した。
図2で示したRNAi遺伝子構築物のセンスおよびアンチセンスの部分に使用したT6ODMのコーディング配列の一部に
図3で下線を引く。プライマーAAAGGCGCGCCCCTTGTCCTCAACCAAATおよびAAAATTTAAATTCCACTTTTAAACAAAGCを用いてケシ植物材料から単離されたcDNAから342塩基対のセンス断片を増幅した。プライマー(AAAACTAGTCCTTGTCCTCAACCAAAT)、OPP026(AAAGGATCCTCCACTTTTAAACAAAGC)を用いてケシ植物材料から単離されたcDNAから342塩基対のアンチセンス断片を増幅した。これら2つの断片を用いてβ−グルクロニダーゼに由来する配列を間に挟んだこれら2つの断片を伴うヌクレオチド分子を作り出した。
【0172】
転写されてヘアピンRNAを作る核酸分子の配列は配列番号6として提供されている。T6ODMの配列には下線を引くのに対してT6ODMの配列間に介在する「ヘアピン」配列はβ−グルクロニダーゼのコーディング配列に由来する。
【0173】
カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターおよびオクトピンシンターゼに由来する転写終結配列および翻訳終結配列と共に配列番号6を含む完全な発現構築物をTDNA転移ベクターにクローニングした。ベクターの左境界と右境界の間の配列は配列番号5として提供されるように提供されている。第1の下線領域(すなわち、「センス」T6ODMに特異的な配列)に対して5’の配列は35Sプロモーター配列を含むのに対して、第2の下線領域(すなわち、「アンチセンス」T6ODMに特異的な配列)に対して3’の配列はオクトピンシンターゼに由来する転写終結配列および翻訳終結配列を含む。
【0174】
この発現構築物は従来のポリメラーゼ鎖反応(PCR)およびクローニング法(たとえば、制限酵素とライゲーションによる)の組み合わせを用いて生成された一方で、当業者は、重複伸長PCRクローニングまたは直接合成を含む種々の従来の技法を用いて構築物を作製してもよいことを理解するであろう。
【0175】
配列番号6を含む、右境界から左境界までのT−DNA全体の配列は配列番号4として提供されている。
【0176】
ウイルスが誘導する遺伝子のサイレンシング(VIGS)を用いてT6ODMおよびCODMをコードする内在性遺伝子をサイレンシングする遺伝子カセットの能力を一時的に調べた。VIGSは、対象とする遺伝子の断片を運ぶウイルスベクターを用いて、標的遺伝子のサイレンシングを開始させる二本鎖RNAを生成する植物RNAのサイレンシング法である。発現構築物を発現させるためにのTRV1(ヘルパープラスミド)およびpTRV2(バイナリーベクター)TRV系のVIGSベクター。浸潤後48時間、72時間、5日間、7日間および2週間で組織を採取した。
図4aおよび
図4bで示すように、発現構築物の一時的な発現は、形質転換の48時間後、CODMおよびT6ODMをコードする内在性遺伝子からの転写物の実質的な下方調節を生じた(上記
図3aおよび
図3bの双方における右から最初の棒)。
【0177】
次いで、発現構築物によって安定して形質転換された植物を以下のプロトコールに従って生成した。
【0178】
形質転換プロトコール
ケシの胚軸/根の形質転換
必要な培地
LB
アグロバクテリウム浮遊培地
20g/Lのスクロースを含有するB5塩およびビタミン、pH5.6〜5.8±0.2
【0179】
新芽発芽培地
20g/Lのスクロース、8g/Lの寒天で補完された、半分に薄めたMurashigeおよびSkoogの基礎培地
【0180】
一次カルス誘導培地
30g/Lのスクロース、2.0mg/LのNAAおよび0.1mg/LのBAP、8g/Lの寒天を含有するB5培地
【0181】
体細胞胚誘導培地
1.0mg/LのNAA、0.5mg/LのBAP、50mg/Lのパロモマイシン、300mg/Lのチメンチンおよび8g/Lの寒天を含有するB5培地
【0182】
胚誘導培地
30g/Lのスクロース、0.25g/LのMES、0.2g/Lのミオ−イノシトール、1mg/Lの2,4−D、2.5mg/LのAgNO
3、8g/Lの寒天で補完したMurashigeおよびSkoogの基礎培地。pHは5.6±0.2。(に加えて抗生剤−チメンチン300mg/L)
【0183】
胚の成熟および発芽
30g/Lのスクロース、0.25g/LのMES、0.2g/Lのミオ−イノシトール、1mg/Lのベンジルアデニン、1mg/Lのゼアチン、2.5mg/LのAgNO
3、8g/Lの寒天で補完したMurashigeおよびSkoogの基礎培地。pHは5.6±0.2。(に加えて抗生剤−チメンチン300mg/L)
【0184】
植物ホルモンを含まない植物再生培地
50mg/Lのパロモマイシン、300mg/Lのチメンチンおよび8g/Lの寒天を含有するB5培地
【0185】
新芽伸長培地
30g/Lのスクロース、0.25g/LのMES、0.2g/Lのミオ−イノシトール、0.5mg/Lのベンジルアデニン、2.5mg/LのAgNO
3、8g/Lの寒天で補完したMurashigeおよびSkoogの基礎培地。pHは5.6±0.2。(に加えて抗生剤−チメンチン300mg/L)
【0186】
発根培地
30g/Lのスクロース、0.25g/LのMES、0.2g/Lのミオ−イノシトール、2.5mg/LのAgNO
3、8g/Lの寒天で補完したMurashigeおよびSkoogの基礎培地。pHは5.6±0.2。(に加えて抗生剤−チメンチン300mg/L)
【0187】
種子の滅菌および発芽
70%(vv
−1)エタノールで30秒間および1%(vv
−1)次亜塩素酸ナトリウム溶液で2分間をそれぞれ3回で種子の表面を滅菌し、次いで無菌水で5回すすいだ。およそ50個の種子を瓶における25mLの寒天固化培地に載せた。基礎培地は、30g/Lのスクロースで補完し(Gamborg,et al.1968)、0.8%(wv
−1)の寒天で固化した1/2MurashigeおよびSkoogの基礎培地から成った。寒天を加える前に培地をpH5.6〜5.8に合わせ、次いでオートクレーブによって滅菌した。標準の白色蛍光灯および16時間の明期のもとで25℃での生長室にて種子を発芽させた。
【0188】
Agrobacterium tumefaciensの調製
バイナリーベクターpORE::ALM−MIRMACをエレクトロポレーションによってAgrobacterium tumefaciens株EHA105にて動員した。50mg/Lのカナマイシンおよび100mg/Lのリファムピシンを含有する液状Luria−Bertani培地[1%トリプトン、0.5%酵母抽出物、および1%NaCl、pH7.0]にて180rpmでの旋回振盪器において28℃でA.tumefaciensの培養物をA
600=0.8まで増殖させた。4000rpmでの10分間の遠心分離によって細菌細胞を回収し、液状植菌培地(20g/Lのスクロースを含有するB5塩およびビタミン)にてA
600=0.5の細胞密度で再浮遊させた。
【0189】
トランスジェニック植物の生産
12日齢の苗に由来する切り取られた子葉、ライン118を胚軸の長手二分によって単離した。液状植菌培地におけるA.tumefaciensの培養物に胚軸を15分間浸け、無菌の濾紙上で乾燥ブロットし、一次カルス誘導培地上で25℃にて暗所でインキュベートした。A.tumefaciensとの共培養の2日後、50mg/Lのパロモマイシンと300mg/Lのチメンチンを含有する新しい一次カルス誘導培地に胚軸を移した。インキュベートの4〜5週間後、体細胞胚誘導培地にて一次カルスを継代した。誘導培地での培養の3週間後、体細胞胚を植物ホルモンを含まない植物再生培地に移した。成熟胚を植物ホルモンを含まない培地に入れ、未成熟胚を胚成熟および発芽の培地に移した。次いで最初の子葉が出現したら、それを新芽伸長培地に移植した。最終的に、新芽が約0.5〜1cmであれば、それらを発根培地に入れた。再生された推定上のトランスジェニック小植物を標準の白色蛍光灯および16時間の明期のもとで25℃での生長室にて生長させた。次いで、発根した小植物を加熱滅菌した土壌を含有するポットに移し、ポリエチレン袋で1週間覆って高湿度を持続させ、25℃で1〜2週間、生長室で維持し、その後、植物を温室に移した。
【0190】
方法
(1)アグロバクテリウムにおける所望の構築物の単一コロニーを摘み取り、適当な抗生剤を含有する2mLのLB液体培地にそれを植菌し、28℃で一晩培養して始動培養物を調製する。
(2)始動培養物と共に適当な抗生剤を含有する100mLのLB液体培地を植菌し、28℃で一晩培養する。所望のOD
600=0.5〜0.8が達成されるまで細胞をインキュベートする。
(3)4000rpmで10分間の遠心分離によって細胞をペレットにする。
(4)最終OD
600=0.5までアグロバクテリウム浮遊培地にて細胞を再浮遊させる。
(5)アグロバクテリウム浮遊液に浸しながら、12日齢の苗に由来する根および胚軸のセグメントを約5mmのセグメントに切断する。
(6)時折回転させながら、アグロバクテリウム浮遊液にてペトリ皿で15分間、根および胚軸のセグメントをインキュベートする。
(7)無菌の濾紙上で根および胚軸のセグメントを乾燥ブロットし、一次カルス誘導培地を含有するプレートに移す。暗下(アルミホイルで覆った)での生長キャビネットにて22±2℃で2日間インキュベートする。
(8)共培養の2日後、無菌蒸留水で根および胚軸のセグメントを洗浄し、無菌の濾紙上で乾燥ブロットし、一次カルス誘導培地(抗生剤パロモマイシンを加えた)を含有するプレートに移す。
(9)暗所(アルミホイルで覆った)での標準の条件(16/8時間明期)の生長室にて植物をおよそ4〜5週間インキュベートする。
(10)インキュベートの4〜5週間後、一次カルスを体細胞胚誘導培地(抗生剤パロモマイシンを加えた)で継代した。
(11)誘導培地における培養の3週間後、成熟体細胞胚を植物ホルモンを含まない培地(抗生剤なし)に移した。未成熟の胚を胚成熟および発芽の培地(抗生剤なし)での別の回の選択に配置し、胚が成熟し、発芽し始めるまで16/8時間明期のもとでの生長キャビネットにて22±2℃でインキュベートした。
(12)発芽している胚を、新芽伸長培地を含有するプレートに新芽が出現するまで移し、その後、発根培地に移す。
(13)約0.5〜1.0cmの新芽を発根培地に移す。
(14)発根した小植物を水道水のもとで洗浄し、付着している寒天全体を取り除き、次いで小ポットにおける無菌土壌に移し、サランラップ(登録商標)で覆い、順化のために生長キャビネットにてインキュベートした。
(15)得られた推定上の形質転換体を導入遺伝子の存在および発現について分析する。
注:発根培地には抗生剤は含まれない。
【0191】
化学薬品
(1)50mg/mLのパロモマイシン硫酸塩のストック:粉末を水に溶解することによって調製し、濾過によって滅菌し、等分し、−20℃で保存する。
(2)50mg/mLのカナマイシンのストック:粉末を水に溶解することによって調製し、濾過によって滅菌し、等分し、−20℃で保存する。
(3)100mg/mLのリファムピシンのストック:粉末をDMSOに溶解することによって調製し、等分し、−20℃で保存する。
(4)300mg/mLのチメンチンのストック:粉末を水に溶解することによって調製し、濾過によって滅菌し、等分し、−20℃で保存する。
(5)2.0mg/mLのNAAのストック:粉末を1NのNaOHに溶解することによって調製し、水で容量を調整し、濾過によって滅菌し、等分し、−20℃で保存する。
(6)2.0mg/mLのBAPのストック:粉末を1NのNaOHに溶解することによって調製し、水で容量を調整し、濾過によって滅菌し、等分し、−20℃で保存する。
(7)5mg/mLのAgNO
3のストック:粉末を水に溶解することによって調製し、濾過によって滅菌し、+4℃で保存する。
(8)1.0mg/mLのゼアチンのストック:粉末を1NのNaOHに溶解することによって調製し、水で容量を調整し、濾過によって滅菌し、等分し、−20℃で保存する。
(9)培地に使用する化学薬品はすべて、約50℃に冷却した時点で加熱滅菌した培地に加える。90×25mmのペトリ皿に注ぐ前に回転して培地を十分に混合する。
【0192】
再生したトランスジェニック植物の特徴付け
発現構築物を含むT−DNAは、パロマイシンへの耐性を付与するnptII遺伝子を含んだ。6つの小植物(AM1〜AM6)がパロモマイシンに耐性として特定されたということは、これらの植物が発現構築物で形質転換されたことを示唆している。ヘアピン発現構築物に特異的なプライマー(配列番号9,TAACCGACTTGCTGCCCCGA;配列番号10,AAATAGAGATGCTTGCAGAAGATCCCG)を用いたこれらの小植物から単離されたゲノムDNAでのポリメラーゼ鎖反応は、植物AM1、AM2およびAM3がゲノムDNAに由来するアンプリコンを含有することを示した。アクチン用のプライマー(配列番号11,CGTTTGAATCTTGCTGGCCGTGAT;配列番号12,TAGACGAGCTGCCTTTGGAAGTGT)を陽性対照として用いて試料がPapaver somniferumに由来するゲノムDNAを含有することを確認した。
【0193】
図4を参照して、ヘアピンに特異的なプライマー(配列番号9,TAACCGACTTGCTGCCCCGA;配列番号10,AAATAGAGATGCTTGCAGAAGATCCCG)を用いて植物AM1〜AM6からのRNA抽出物で逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)を行い、発現構築物が植物AM1、AM2およびAM3で発現されていることを実証した。
【0194】
CODMおよびT6ODMをコードする内在性の転写物に特異的なプライマーを用いて植物AM1〜AM6からのRNA抽出物でRT−PCRを行った。
図5を参照して、発現構築物の発現は、発現構築物を発現していない植物と比べてT6ODMをコードする内在性遺伝子の発現を下方調節するのに十分であると思われた。
図6を参照して、発現構築物の発現は、発現構築物を発現していない植物と比べてCODMをコードする内在性遺伝子の発現を下方調節するのに十分であると思われた。
【0195】
アルカロイドの分析
酸性抽出:0.100gの粉砕したさく果または茎(ポピーに由来する)を10%酢酸、10%水および80%メタノールの溶液5mLと混合し、その後30分間撹拌し、次いで濾過した。濾液を直接HPLCに注入した。
【0196】
280nm、45℃の温度および0.8mL/分の流速で操作する2μLの注入容量でのKinetex2.6μmのC18、50×2.0mmのカラムを有するHPLC勾配システムで試料すべてを流した。溶離液Aは10mMの酢酸アンモニウム緩衝液、pH5.5であったのに対して溶離液Bはアセトニトリル(100%)だった。勾配プロファイルは以下のとおりである。
工程番号 時間(分) パーセントA パーセントB
1 0 95 5
2 0.25 85 15
3 2.00 60 40
4 2.01 95 5
5 3.00 20 80
6 4.00 10 90
7 5.00 0 100
報告された数字は乾燥出発物質の重量パーセントである。
【0197】
図7A〜
図7Dを参照して、AM1のさく果およびAM2およびAM3の葉におけるアルカロイドの分析は、発現構築物が存在せず、野生型レベルのT6ODMおよびCODMの発現を有する植物と比べてテバインの増加した蓄積およびモルヒネの低い蓄積を示した。AM2およびAM3植物のさく果におけるアルカロイドのその後の分析は、テバインがAM2のさく果にてアルカロイドの4.82%まで蓄積し、AM3のさく果にて全アルカロイドの3.13%まで蓄積することを示した。AM1、AM2およびAM3の植物ではモルヒネは実質的に検出されなかった。
【0198】
【表1】
【0199】
自家受粉したAM1、AM2およびAM3の形質転換体の子孫が3:1に分離すると思われることは、導入遺伝子が安定して組み込まれ、遺伝することを示している。
【0200】
発現構築物を運び、内在性のCODMおよびT6ODMの転写物が検出され得ない6つの追加の個々の形質転換体を単離した(AM12、AM13、AM16、AM17およびAM19)。これらの追加の植物のさく果における分析は、テバインがさく果にてアルカロイドの8.28%まで多く蓄積することを示した(表2を参照のこと)。
【0201】
【表2】
【0202】
発現構築物を含有するAM1の子孫種子から植物を生長させた。発現構築物を運んでいる6つのAM1の子孫に由来するケシ殻におけるモルヒネ、オリパビン、コデインおよびモルヒネの濃度を表3にて提供する。
【0203】
【表3】
【0204】
操作
本発明の特定の実施形態が記載され、説明されてきた一方で、そのような実施形態は本発明の説明のみと見なされるべきであり、添付のクレームに従って解釈されるような本発明を限定すると見なされるべきではない。
【0205】
本記載はASCIIテキスト形式での電子形態で配列表を含有する。配列表における配列は以下のテーブルで再現される。
【0206】
【化1】
【0207】
【化2】
【0208】
【化3】
【0209】
【化4】
【0210】
【化5】
【0211】
【化6】
【0212】
【化7】
【0213】
【化8】
【0214】
【化9】