(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906838
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック成形品およびその成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20210708BHJP
B29C 65/70 20060101ALI20210708BHJP
B29C 65/56 20060101ALI20210708BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20210708BHJP
B29C 70/02 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C65/70
B29C65/56
B29C45/26
B29C70/02
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-33493(P2017-33493)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138355(P2018-138355A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2020年2月17日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的新構造材料等研究開発のうち熱可塑性CFRPの開発及び構造設計・加工基盤技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筑後 了治
【審査官】
坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−221885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/24
B29C 70/00−70/88
B29C 65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維を配向した熱可塑性樹脂シートの表面に、樹脂により形成された突出部材が設けられた繊維強化プラスチック成形品であって、
前記熱可塑性樹脂シートを片面から反対面に押して突出するように形成された膨出部と、
前記膨出部または前記膨出部の周囲に形成された貫通孔とを備え、
前記膨出部の内部空洞は、該膨出部の頂部側から裏面側に向かって内径が広がるように形成されており、
前記熱可塑性樹脂シートの突出部材が、前記膨出部の外部に形成された樹脂からなり、かつ前記膨出部の内部空間と前記貫通孔の内部に充填された樹脂に一体化されている、
ことを特徴とする繊維強化プラスチック成形品。
【請求項2】
前記貫通孔が前記膨出部の頂部または側部に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスチック成形品。
【請求項3】
前記貫通孔が膨出部の根元から横に離れた側方に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスチック成形品。
【請求項4】
連続繊維を配向した熱可塑性樹脂シートの表面に、射出成形で突出部材を成形した繊維強化プラスチック成形品の成形方法であって、
前記熱可塑性樹脂シートにおける一方の表面から押圧部材で押圧して他方の表面に膨出部を形成する工程と、
前記熱可塑性樹脂シートに貫通孔を成形する工程と、
前記熱可塑性樹脂シートに形成された前記膨出部および前記貫通孔を含む領域に、射出成形で前記突出部材を成形する工程とからなる、
ことを特徴とする繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
【請求項5】
前記膨出部と前記貫通孔を形成する工程において、前記押圧部材で前記膨出部と前記貫通孔を同一の工程で形成する
ことを特徴とする請求項4記載の繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
【請求項6】
前記膨出部と前記貫通孔を形成する工程において、前記膨出部と前記貫通孔を別々の工程で形成する
ことを特徴とする請求項4記載の繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック成形品およびその成形方法に関する。さらに詳しくは、連続繊維で強化した熱可塑性樹脂シート表面に突出部材が形成された繊維強化プラスチック成形品およびその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続繊維で強化した熱可塑性樹脂シートは高強度であるが、複雑な形状に成形することが難しい。そのため、いったんプレス成形や射出成形等の型締めで単純な形状のシートに成形した後、射出成形等により前記シート表面にリブ等の突出部を付与して複雑な形状の連続繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得ている(特許文献1)
しかし、この成形方法では、シートの平面な部分に射出成形で突出部を成形しているので、シート部と突出部との接合面である界面の面積が少なくなり、界面強度が低いという問題がある。
【0003】
界面強度を高める方法としては、つぎの従来技術がある。
特許文献2では、シート表面にプレス金型で圧縮して凹凸形状を付与し、かつ切削加工により連続繊維を凹状または凸状の形態で露出させることにより、樹脂片同士の結合強度を高めようとしている。
特許文献3では、2つの樹脂片の接触面に互いに異なる角度で傾斜させた傾斜面を向き合わせて、射出成形することにより樹脂の流れ込みを良くして接着強度を高めようとしている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献2、3の従来技術では、界面での接触面積の増加の程度は小さく、界面強度を大幅に向上させることはできないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−148124号公報
【特許文献2】特開2014−136357号公報
【特許文献3】特開2013−6389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、連続繊維で強化した熱可塑性樹脂シート表面とその表面に形成された突出部材との間の界面強度が高い繊維強化プラスチック成形品およびその成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の繊維強化プラスチック成形品は、連続繊維を配向した熱可塑性樹脂シートの表面に、樹脂により形成された突出部材が設けられた繊維強化プラスチック成形品であって、前記熱可塑性樹脂シートを片面から反対面に押して突出するように形成された膨出部と、前記膨出部または前記膨出部の周囲に形成された貫通孔とを備え、
前記膨出部の内部空洞は、該膨出部の頂部側から裏面側に向かって内径が広がるように形成されており、前記熱可塑性樹脂シートの突出部材が、前記膨出部の外部に形成された樹脂からなり、かつ前記膨出部の内部空間と前記貫通孔の内部に充填された樹脂に一体化されている、ことを特徴とする。
第2発明の繊維強化プラスチック成形品は、第1発明において、前記貫通孔が前記膨出部の頂部または側部に形成されていることを特徴とする。
第3発明の繊維強化プラスチック成形品は、第1発明において、前記貫通孔が膨出部の根元から横に離れた側方に形成されていることを特徴とする
。
第4発明の繊維強化プラスチック成形品の成形方法は、連続繊維を配向した熱可塑性樹脂シートの表面に、射出成形で突出部材を成形した繊維強化プラスチック成形品の成形方法であって、前記熱可塑性樹脂シートにおける一方の表面から押圧部材で押圧して他方の表面に膨出部を形成する工程と、前記熱可塑性樹脂シートに貫通孔を成形する工程と、前記熱可塑性樹脂シートに形成された前記膨出部および前記貫通孔を含む領域に、射出成形で前記突出部材を成形する工程とからなることを特徴とする。
第
5発明の繊維強化プラスチック成形品の成形方法は、第
4発明において、前記膨出部と前記貫通孔を形成する工程において、前記押圧部材で前記膨出部と前記貫通孔を同一の工程で形成することを特徴とする。
第
6発明の繊維強化プラスチック成形品の成形方法は、第
4発明において、前記膨出部と前記貫通孔を形成する工程において、前記膨出部と前記貫通孔を別々の工程で形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、熱可塑性樹脂シートに形成された膨出部の内部空洞と突出部材とに貫通孔を介して樹脂が充填されているので、突出部材を形成する樹脂と膨出部内に回り込んだ樹脂とが一体化されている。
しかも、膨出部の内部空洞が頂部側から裏面側に向って内径が広がっているので、膨出部の内部に充填された樹脂も裏面側に向って広がった形状となり、この樹脂形状が突出部材の引き抜き方向に対して抵抗力となる。そのため繊維強化プラスチック成形品の突出部材と熱可塑性樹脂シートとの結合強度が飛躍的に高くなっている。
第2発明によれば、膨出部に形成された貫通孔を通じて膨出部の内部空洞に樹脂が充填されているので、突出部材を形成する樹脂と膨出部内に入った樹脂とが一体化され、繊維強化プラスチック成形品の突出部材と熱可塑性樹脂シートとの結合強度が飛躍的に高くなっている。
第3発明によれば、膨出部の側方の貫通孔を通じて膨出部の内部空洞に樹脂が充填されているので、突出部材を形成する樹脂と膨出部内に入った樹脂とが一体化され、繊維強化プラスチック成形品の突出部材と熱可塑性樹脂シートとの結合強度が飛躍的に高くなっている
。
第4発明によれば、突出部材が射出成形されたときに、射出された樹脂が貫通孔を介して膨出部の内部空洞に回り込み、突出部材を形成する樹脂と膨出部内に回り込んだ樹脂とを一体化させる。そのため繊維強化プラスチック成形品の突出部材と熱可塑性樹脂シートとの結合強度を飛躍的に高くできる。
第
5発明によれば、膨出部と貫通孔を同一の工程で形成すると、少ない工程で繊維強化プラスチック成形品を成形することができる。
第
6発明によれば、膨出部と貫通孔を別々の工程で形成すると、任意の形状の膨出部や貫通孔に成形できるので、突出部材の結合強度を高くするのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る繊維強化プラスチック成形品の成形方法を示す説明図である。
【
図2】(A)図は
図1のII工程の詳細図であり、(B)図は押圧部材の説明図、(C)は膨出部と貫通孔の説明図である。
【
図3】(A)図は膨出部と貫通孔の他の形状の説明図、(B)図は押圧部材の説明図である。
【
図4】(A)図は膨出部と貫通孔のさらに他の形状の説明図、(B)図は押圧部材の説明図である。
【
図5】本発明の成形方法で作られた繊維強化プラスチック成形品Aの説明図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)図の側面図である。
【
図6】本発明の成形方法で作られた繊維強化プラスチック成形品Bの説明図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)図の側面図である。
【
図7】本発明の成形方法で作られた繊維強化プラスチック成形品Cの説明図であり、(A)は成形型10の説明図、(B1)は成形品の断面図、(B2)は成形品の斜視図である。
【
図8】本発明の成形方法で作られた繊維強化プラスチック成形品Dの説明図であり、(A)は成形型10の説明図、(B1)は成形品の断面図、(B2)は成形品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の適用対象は、連続繊維で強化した熱可塑性樹脂シート(以下、樹脂シートという)に突出部材を形成した繊維強化プラスチック成形品であり、本発明は得られた成形品とそれに用いる成形方法である。
前記樹脂シートは、連続繊維を配向して強化した熱可塑性樹脂を用いたものであり、高強度だが複雑な形状のプレス成形が難しいものである。
【0011】
連続繊維には、素材として炭素繊維やガラス繊維などを用い、繊維が一方向に配向しているものや、格子状に配向しているものや、積層して配向しているものが用いられる。
樹脂シートの形状は、代表的には平板状のものであるが、平板状の樹脂シートを一次加工して、全体にゆるやかに湾曲していたり、端縁のみ湾曲しているものなどが含まれる。
【0012】
突出部材は、射出成形により成形される。なお、射出成形が可能である限り、突出部材の成形樹脂には短繊維等が配合されていてもよい。
突出部材の形状は、棒状、板状、ブロック状などの部材を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
前記樹脂シートの表面に前記突出部材が立設された形状の繊維強化プラスチック成形品は、突出部材と樹脂シートとの間の接合面である界面の強度が全体の強度を左右するが、その界面強度を高くなるように成形するのが、本発明の成形方法である。
【0014】
その成形方法を
図1に基づき説明する。
図1は本発明に係る成形方法の基本概念を示している。
(I)準備工程
射出成形機の成形型10は、固定金型12とこの固定金型12に対し進退自在に配置された可動金型13からなり、可動金型13には固定金型12側に進退自在な押圧部材20が設けられている。そして、固定金型12と可動金型13との間に、キャビティ11が形成されている。
準備工程では、固定金型12と可動金型13の間に樹脂シート1をセットする。なお、樹脂シート1は、加熱手段で加熱されたものが用いられる。
【0015】
(II)膨出部・貫通孔成形工程
押圧部材20をキャビティ11側に押し付けて樹脂シート1を押圧する。
押圧部材20は円筒状のロッド21とその先端に形成されたピン22とからなる。この押圧部材20を樹脂シート1の片面から反対面に押し付けることで、ロッド21により、樹脂シート1に膨出部2が形成されると共に、膨出部2に貫通孔3が形成される。
【0016】
(III)押圧部材の退避
押圧部材20を退避させると、樹脂シート1に膨出部2が形成され、かつ貫通孔3が膨出部2の頂点に形成される。この状態で次工程の射出成形の準備が完了する。
(IV)射出成形
図示していないが固定金型12側からの充填装置で成形型10のキャビティ11内に樹脂を充填する。充填方向はキャビティ側(矢印x方向)からでもよく反キャビティ側(押圧部材20のある側)からでもよい。なお、反キャビティ方向では、固定金型13側に充填装置と押圧部材20を設ける。
【0017】
前記工程(II)の詳細を
図2に基づき説明する。
(B)図は押圧部材20の単体図であり、円柱状のロッド21と、その先端に形成された針状のピン22とからなる。ロッド21の長さは成形型10に合わせて任意の長さにでき、直径は形成したい膨出部2の大きさに合わせて選定すればよい。ピン22の長さや太さも形成したい貫通孔3に合わせて選定すればよい。
【0018】
(A)図の(1)〜(3)は膨出部2と貫通孔3を同時に形成する膨出部・貫通孔成形工程(II)の詳細(第6発明の実施形態)を示している。
図の(1)では、ピン22が樹脂シート1に穿孔しはじめている。
図の(2)では、ロッド21の肩で樹脂シート1を押し広げて膨出部2を形成しながら、穿孔部分も大きくしつつある。
図の(3)に示すように、ロッド21とピン22が所定量だけ樹脂シート1に貫入すると、膨出部2が形成され、かつ貫通孔3の形成が完了する。
【0019】
このようにして出来上る膨出部2は、(C)図に示すように、膨出部2の内部が空洞であって、その内部空洞2aの内径はロッド21の直径に対応している。また内部空洞2aの長さはロッド21の貫入量で決まる。
この内部空洞2aの形状は、膨出部2の頂部側から裏面側に向かって内径が広がるように形成される。その理由は、押圧部材20が、型締めされている樹脂シート1のもつ内部抵抗に抗して押圧することにより、シート内部に引張り抵抗が発生した状態で押圧成形を止めるからである。
膨出部2の頂部に形成される貫通孔3の大きさはピン22の直径で決まり、その穿孔位置はピン22のロッド21に対する形成位置で決まる。
【0020】
上記のように膨出部2と貫通孔3を形成した樹脂シート1に突出部材を形成する場合、
図1(IV)に示すように、樹脂rを成形型10のキャビティ11内に射出して充填する。この場合、キャビティ側(矢印x方向)および反キャビティ側のいずれから樹脂rを注入しても、樹脂rはキャビティ11内と膨出部2の内部空洞2aに充填される。その理由はキャビティ11と膨出部2の内部が貫通孔3で連通しているためである。
【0021】
このように、射出された樹脂rが膨出部2に形成された貫通孔3を介してその膨出部2の内部空洞2aに充填されると、突出部材を形成する樹脂rと膨出部2内に回り込む樹脂rとが一体化される。そのためプラスチック成形品の突出部材と樹脂シート1との結合強度を規定する界面の面積が飛躍的に高くなる。これが本発明の特徴となる技術原理である。
【0022】
貫通孔3の形成位置や形状は、
図2に示されたものに限定されない。要は、成形型10内のキャビティ11と膨出部2の内部空洞2aを連通させるものであればよい。
したがって、
図3(A)に示すように、貫通孔3は膨出部2の頂点ではなく側部に形成してもよい。図示の例では、貫通孔3の形成個数は2個であるが、3個以上であってもよい。
【0023】
このような膨出部2の側部に貫通孔3,3を形成するための押圧部材20としては、ロッド21の前端面に貫通孔形成用の鋭いピン22を2本以上と膨出部形成用の平頭型のピン23を備えた押圧部材20などを例示できる。
【0024】
さらに他の例を
図4に基づき説明する。
図4(A)に示す例は、膨出部2の根元から少し横に離れた側方に貫通孔3を形成した例である。この場合、成形型10に樹脂rの通り道14を形成しておけば、キャビティ11と膨出部2の内部を連通させることができる。
【0025】
上記のような側方の貫通孔3,3を形成するための押圧部材20としては、直径の太いロッド21の前端中央に膨出部形成用の平頭型のピン23と、このピン23から少し横に離れた側方に貫通孔形成用の鋭いピン22を2本以上備えたものなどを例示できる。
【0026】
図1および
図2の実施形態では、膨出部2と貫通孔3を同一の工程で同時に形成した。このように同一工程で膨出部2と貫通孔3を形成すると、少ない工程で成形でき、成形時間が短縮できる。
しかし、上記と異なり、膨出部2と貫通孔3を別々の工程で形成してもよい。
膨出部2と貫通孔3を別々の工程で形成する場合(第7発明の実施形態)、押圧部材20のロッド21を先に貫入させて膨出部2を先に形成し、その後でピン22を貫入させて貫通孔3を形成してもよく、ピン22を先に貫入させて貫通孔3を先に形成し、その後でロッド21を貫入させて膨出部2を形成してもよい。
【0027】
上記のような別工程方式に用いる押圧部材20としては、ロッド21に対しピン22を入れ子式に構成し、ロッド21とピン22を個別に動作させる構造のものを例示できる。また、別体のロッド21とピン22を用い、一方(ロッドまたはピン)の貫入後に完全に退避させて他方(ピンまたはロッド)を貫入させてもよい。
【0028】
以上のほか、膨出部2と貫通孔3の形成方法は任意に採用してよい。このような別工程方式を用いると、任意の形状の膨出部2や貫通孔3に形成できるので、突出部材の結合強度を高くするのに有利である。
【0029】
つぎに、上記成形方法で得られた繊維強化プラスチック成形品(以下、プラスチック成形品という)を説明する。
図5(A)のプラスチック成形品Aは、樹脂シート1とその表面に棒状の突出部材5が形成されたものである。樹脂シート1は既述のごとく連続繊維を配向した熱可塑性樹脂を用いたシートである。突出部材5は既述のごとく樹脂rを射出して成形されたものである。
【0030】
図5(B)に示すように、突出部材5は樹脂シート1の表面に立設された形状であるが、突出部材5を形成した樹脂rはシート1に形成された膨出部2の内部空洞2a内にも充填されている。その結果、樹脂rが突出部材5と樹脂シート1に接触する界面の面積が広がり、結合強度が非常に高くなる。
【0031】
しかも、膨出部2の内部空洞2aが頂部側から裏面側に向って内径が広がっていると、膨出部2の内部に充填された樹脂rが裏面側に向って広がった形状となり、この樹脂形状が突出部材5の引き抜き方向に対して抵抗力となる。このため、樹脂シート1への突出部材5の結合強度がより一層強くなる。
【0032】
図6(A)のプラスチック成形品Bは突出部材6が厚板状のものである。図示された貫通孔3付きの膨出部2は3個であるが、これに限らず突出部材6の長手方向寸法に合わせて適数個形成すればよい。
【0033】
突出部材は、
図5(A)のような棒状に限らず、
図6(A)に示す厚板状に形成して、リブの形態で使用することもできる。
さらに、棒状や厚板状に限らず、射出成形が可能なら、どのような形状の突出部材でも樹脂シート1上に形成できる。
【0034】
樹脂シート1は
図5および
図6に示したものは、平板状であるが、これらに限らず多少湾曲したものも許容される。
図7(A)は、樹脂シート1の成形用の固定金型12と可動金型13との対面が緩やかに湾曲したものを示している。この成形型10を用いると、同図(B1、B2)に示すように、浅皿状に湾曲した樹脂シート1に突出部材5が形成されたプラスチック成形品Cが得られる。
【0035】
図8(A)は固定金型12と可動金型13との対面が深皿状に湾曲したものを示している。このような成形型10を用いると同図(B1、B2)に示すように、深皿状に湾曲した樹脂シート1に突出部材5が形成されたプラスチック成形品Dが得られる。
【0036】
なお、
図7では浅皿状の樹脂シート1に棒状の突出部材5を形成したものを示しているが、厚板状の突出部材6を形成してもよい。
図8では深皿状の樹脂シート1に厚板状の突出部材6を形成したものを示しているが、棒状の突出部材を形成してもよい。
また、樹脂シート1は、固定金型12と可動金型13を型締めして湾曲や深皿状に形成しても良く、成形型10に挿入する前に別の加工手段で湾曲や深皿状に形成しても良い。
このように、樹脂シート1と突出部材5との組合せは任意であり、とくに制限は存在しない。
【符号の説明】
【0037】
1 樹脂シート
2 膨出部
2a 内部空洞
3 貫通孔
5,6 突出部材
10 成形型
11 キャビティ
20 押圧部材
21 ロッド
22 ピン