特許第6906853号(P6906853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906853
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】サスペンションリンクの支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/02 20060101AFI20210708BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20210708BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   B60G7/02
   B62D25/20 F
   B62D25/08 L
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-148494(P2017-148494)
(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公開番号】特開2019-26123(P2019-26123A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】福田 保和
(72)【発明者】
【氏名】百中 淳志
(72)【発明者】
【氏名】木船 彰泰
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−164846(JP,A)
【文献】 特開2016−112913(JP,A)
【文献】 特開2008−307970(JP,A)
【文献】 実開平03−013205(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 7/02
B62D 25/08
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延びるフレーム材であるサイドメンバと、
前記サイドメンバの車幅方向の外側に取り付けられ、前記車両の前後方向に延びるロッカと、
車長方向に延びるサスペンションリンクのリンク先端を前記サイドメンバの下部で前記ロッカの車幅方向の内側に保持するブラケットと、を備えるサスペンションリンクの支持構造であって、
前記ブラケットは、
前記リンク先端の車幅方向の外側部分を支持するベース部と、
記ベース部における前記車両前方側の部分から車幅方向の外側に屈曲し、先端部が前記ロッカに当接する前方壁部と、
前記ベース部における前記車両後方側の部分から車幅方向の外側に屈曲し、先端部が前記ロッカに当接する後方壁部と、
車両上方側で、前記前方壁部の一部と前記後方壁部の一部とに繋がる上方壁部と、
車両下方側で、前記前方壁部の一部と前記後方壁部の一部とに繋がる下方壁部とを備え、
前記前方壁部の前端に設けられるフランジ部、前記後方壁部の後端に設けられるフランジ部、及び前記下方壁部の下端に設けられるフランジ部は、前記ロッカの内面に固定され、
前記上方壁部の上端に設けられるフランジ部は、前記サイドメンバの下面に沿うように形成され、前記下面に固定されているサスペンションリンクの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションリンクを車体に取り付けるサスペンションリンクの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車両の車輪を車体に懸架するサスペンションが設けられている。サスペンションに備わるサスペンションリンクの先端(リンク先端)はブラケットを介して車体に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、車両の左後方部におけるサスペンション3の取付状態を説明する説明図である。図中のUPは車両上方、DWは車両下方、FRが車両前方、RRは車両後方を示す。
【0004】
図6のサスペンション3は、コイルスプリング31とショックアブソーバー32とサスペンションリンク30とを備え、それぞれの先端が車体に取り付けられている。サスペンションリンク30のリンク先端30sにはブッシュが収納されている。このブッシュを介して、リンク先端30sを中心にサスペンションリンク30の後端側が揺動可能なようにリンク先端30sがブラケット5に連結される。ブラケット5は、車両の前後方向に延びるフレーム材であるサイドメンバ2の下部に垂下するように設けられており、サスペンションリンク30の車両上下方向の揺動が阻害されない。ブラケット5の車外方向(車両左方LS)には、ドアの敷居となるロッカ4が配置されており、ブラケット5は車外から見えないようになっている。ロッカ4は、サイドメンバ2の車外方向に取り付けられ、車両の前後方向に延びる部材であって、サイドシルと呼ばれることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−128711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブラケット5は、単にサイドメンバ2の下面にぶら下げられるように取り付けられたり、さらにブラケット5の車外側の面をロッカ4に面接触させるように取り付けられる。このようなサスペンションリンクの支持構造では、ブラケット5の厚みを厚くするなどしても、ブラケット5の車両幅方向の剛性を十分に確保することが難しい。そのため、従来のサスペンションリンクの支持構造を採用した車両には、横G(車両横方向への加速度)が作用したとき、操縦安定性に関わる操舵の効きや、スタビリティ、リニアリティなどに課題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされ、その目的の一つは、車両幅方向への応力に対する剛性に優れるサスペンションリンクの支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係るサスペンションリンクの支持構造は、
車両の前後方向に延びるフレーム材であるサイドメンバと、
前記サイドメンバの車幅方向の外側に取り付けられ、前記車両の前後方向に延びるロッカと、
車長方向に延びるサスペンションリンクのリンク先端を前記サイドメンバの下部で前記ロッカの車幅方向の内側に保持するブラケットと、を備えるサスペンションリンクの支持構造であって、
前記ブラケットは、
前記リンク先端の車幅方向の外側部分を支持するベース部と、
前記ベース部の上端側に設けられ、前記サイドメンバの下面に沿って取り付けられるフランジ部と、
前記ベース部における前記車両前方側の部分から車幅方向の外側に屈曲し、先端部が前記ロッカに当接する前方壁部と、
前記ベース部における前記車両後方側の部分から車幅方向の外側に屈曲し、先端部が前記ロッカに当接する後方壁部と、
を備える。
【0009】
上記サスペンションリンクの支持構造の一形態として、
前記ブラケットはさらに、
車両上方側で、前記前方壁部の一部と前記後方壁部の一部とに繋がる上方壁部と、
車両下方側で、前記前方壁部の一部と前記後方壁部の一部とに繋がる下方壁部と、
を備える形態を挙げることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、車幅方向の外方側に向う応力に対する耐性をブラケットに持たせることができる。その結果、サスペンションリンクの支持構造が横Gに対して強く、車両の操縦安定性を向上させることができる。
【0011】
前方壁部と後方壁部に加えて、上方壁部と下方壁部とを備えるブラケットは、その剛性が非常に高い。ブラケットの各壁部が互いを支え合う箱状となっているからである。このような形状のブラケットであれば、上下、左右、前後のいずれの方向に作用する応力に対しても高い耐性を備え、車両の操縦安定性の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両のサイドメンバとサスペンションとの位置関係を示す概略図である。
図2】実施形態に係るサスペンションリンクの支持構造の概略構成図である。
図3図2のIII−III部分断面図である。
図4】実施形態に係るサスペンションリンクの支持構造に備わるブラケットの概略斜視図である。
図5図4のブラケットの概略正面図である。
図6】車両におけるサスペンションの取付状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係るサスペンションリンクの支持構造を図面に基づいて説明する。図中のUP、DW、FR、RR、LS、およびRSはそれぞれ、車両上方、車両下方、車両前方、車両後方、車両左方、および車両右方を示す。なお、本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
<実施形態1>
≪全体構成≫
図1に示すように、車両は、その前後方向に延びる左右一対のフレーム材であるサイドメンバ2を備える。サイドメンバ2,2の間にはフロアパネル9が配置される。本例では、このサイドメンバ2の車両後方RRにサスペンション3を取り付けたサスペンションリンクの支持構造1(図2,3)を説明する。まず、サスペンション3の構造を簡単に説明する。
【0015】
≪サスペンション≫
サスペンション3は、本例ではトレーリングアーム式のものを例示しているが、車体に揺動可能に支持されるサスペンションリンク30を有するものであれば特に限定されない。本例のサスペンション3は、一対のサスペンションリンク30と、一対のコイルスプリング31と、一対のショックアブソーバー32と、を備える。各部材30,31,32の端部は、車体に取り付けられる。
【0016】
≪サスペンションリンクの支持構造≫
図2は、車両左方LSのサスペンションリンクの支持構造1を車両前方FRから見た部分断面図、図3は、図2のIII−III部分断面図である。図2,3に示すサスペンションリンクの支持構造1は、図1のサイドメンバ2(図3では紙面奥側にある)と、サイドメンバ2の車幅方向の外側(ここでは、車両左方LS)に取り付けられ、車両の前後方向に延びるロッカ4と、サスペンションリンク30のリンク先端30sをサイドメンバ2の下部でロッカ4の車幅方向の内側(ここでは、車両右方RS)の位置に保持する外側ブラケット5および内側ブラケット6,7と、を備える。ロッカ4はサイドメンバ2に溶接で固定される。
【0017】
[外側ブラケット]
本例のサスペンションリンクの支持構造1に備わる外側ブラケット5は、図4,5に示すように、板状のベース部50と、四つの壁部51,52,53,54とを備える。外側ブラケット5は、鋼などの合金製とすることが好ましい。
【0018】
ベース部50は、リンク先端30sの車幅方向の外側部分に対向し、当該外側部分を支持する板状部分であって、その中央部に貫通孔50hを備える。貫通孔50hは、外側ブラケット5にリンク先端30sを固定する締付機構8(図2,3参照)を貫通させるための孔である。
【0019】
上方壁部51(図2〜5のクロスハッチング部分)は、ベース部50の上端から車幅方向の内側(車両右方RS)に屈曲している(特に、図2を参照)。リンク先端30sは図1に矢印で示されるように、サイドメンバ2の下面のうち、上方側に屈曲する部分の角付近に設置される。そのため、本例の上方壁部51も、車両前方FR側よりも車両後方RR側が高くなるように形成されている(図4,5)。その上方壁部51の上端には、さらに車内方向に屈曲するフランジ部51fが形成されている。フランジ部51fは、サイドメンバ2の下面20に沿うように形成されており、サイドメンバ2の下面20に面接触する。この面接触した部分が溶接によってサイドメンバ2に固定される。
【0020】
下方壁部52(図2〜5のクロスハッチング部分)は、ベース部50の車両下方DWの端部から車幅方向の外側(車両左方LS)に屈曲する部材で、さらにその先端部が車両下方DWに屈曲するフランジ部52fとなっている。フランジ部52fの車幅方向の外側の面は、ロッカ4に当接する(図2参照)。この当接部分が溶接によってロッカ4に固定される。
【0021】
前方壁部53は、ベース部50の車両前方FRの端部から車幅方向の外側に屈曲する部材(図2〜5のクロスハッチング部分)で、さらのその先端が車両前方FRに屈曲するフランジ部53fとなっている。フランジ部53fの車幅方向の外側の面は、ロッカ4に当接する(特に図3を参照)。この当接部分が溶接によってロッカ4に固定される。ここで、図5に示すように、ベース部50を平面視したときに、前方壁部53は、車幅方向の外側(図5では紙面手前側)に向うに従い車両前方FRに傾斜している。このような傾斜を形成することで、外側ブラケット5を成形する際の離型性を向上させることができる。
【0022】
後方壁部54は、ベース部50の車両後方RRの端部から車幅方向の外側に屈曲する部材(図2〜5のクロスハッチング部分)で、さらのその先端が車両後方RRに屈曲するフランジ部54fとなっている。フランジ部54fの車幅方向の外側の面は、ロッカ4に当接する(特に図3を参照)。この当接部分が溶接によってロッカ4に固定される。後方壁部54は、図5に示すように、ベース部50を平面視したときに、車幅方向の外側(図5では紙面手前側)に向うに従い車両後方RRに傾斜している。このような傾斜を形成することで、外側ブラケット5を成形する際の離型性を向上させることができる。
【0023】
上述した四つの壁部51,52,53,54は次のような関係になっている。まず、上方壁部51は、前方壁部53の一部と後方壁部54の一部とに繋がっており、両壁部53,54の車両前後方向への変形を抑制している。より具体的には、上方壁部51は、前方壁部53の輪郭線を構成する辺のうちのベース部50に対して交差する辺と、後方壁部54の輪郭線を構成する辺のうちのベース部50に対して交差する辺と、を繋いでいる。本例では、上方壁部51は、前方壁部53の上端辺530と、後方壁部54の車幅方向の内方側の辺のうち、ベース部50に対して当該内方側に傾いた傾斜辺540とを繋ぐ捻じれた面となっている。
【0024】
一方、下方壁部52も、前方壁部53の一部と後方壁部54の一部とに繋がっており、両壁部53,54の車両前後方向への変形を抑制している。より具体的には、下方壁部52は、前方壁部53を構成する辺と後方壁部54を構成する辺のうち、ベース部50と交差する辺同士を繋いでいる。本例では、下方壁部52は、前方壁部53の下端辺531と、後方壁部54の下端辺541とを繋ぐ概略平面となっている。
【0025】
以上説明した外側ブラケット5は、ベース部50によってリンク先端30sからの応力(車幅方向の応力)を面で受け、応力を分散させることができる。また、外側ブラケット5は、ベース部50を底面とし、壁部51,52,53,54を周壁とする概略箱型となっており、部材52,53,54の先端部(フランジ部52f,53f,54f)がロッカ4に当接している。そのため、車幅方向の応力に対して部材52,53,54が突っ張るので、外側ブラケット5は車幅方向の応力に対して変形し難い。また、外側ブラケット5は、その壁部51,52,53,54が互いに支え合うように繋がった概略箱型となっていることで、外側ブラケット5全体に応力が分散し、当該応力を減衰させるので、その応力がロッカ4に伝達してロッカ4が変形することを抑制できる。
【0026】
[内側ブラケット]
第一内側ブラケット6は、上述した外側ブラケット5とでリンク先端30sを挟み込む部材である。第一内側ブラケット6には、外側ブラケット5の貫通孔50hに対応する貫通孔60hを備えており、両ブラケット5,6の貫通孔50h,60hにネジなどの締付機構8を嵌め込むことで、リンク先端30sをサイドメンバ2の下部に垂下させることができる。
【0027】
一方、第二内側ブラケット7は、第一内側ブラケット6を確りとサイドメンバ2に固定するための部材である。両ブラケット6,7の固定は溶接によって行われる。本例では両内側ブラケット6,7は別部材であるが、一体の部材とすることもできる。
【0028】
≪効果≫
本実施形態に係るサスペンションリンクの支持構造1によれば、車幅方向の外方側に向う応力に対する耐性を外側ブラケット5に持たせることができる。その結果、サスペンションリンクの支持構造1が横Gに対して強くなり、車両の操縦安定性を向上させることができる。また、実施形態の構成によれば外側ブラケット5を過度に厚くしたり大きくしたりする必要がなく、小型の外側ブラケット5で横Gに対して高い剛性をサスペンションリンクの支持構造1に持たせることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 サスペンションリンクの支持構造
2 サイドメンバ
20 下面
3 サスペンション
30 サスペンションリンク 30s リンク先端
31 コイルスプリング 32 ショックアブソーバー
4 ロッカ
5 外側ブラケット(ブラケット)
50 ベース部 50h 貫通孔
51 上方壁部 51f フランジ部
52 下方壁部 52f フランジ部
53 前方壁部 53f フランジ部 530 上端辺 531 下端辺
54 後方壁部 54f フランジ部 540 傾斜辺 541 下端辺
6 第一内側ブラケット 60h 貫通孔
7 第二内側ブラケット
8 締付機構
9 フロアパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6