【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0013】
手段1.外気を取入れて温度及び湿度の調節を行い、建物内空間もしくは内調機に供給する外調機と、
建物内空間の空気を循環して温調する内調機と、第1熱源装置、及び、第2熱源装置と、
前記第1熱源装置と、前記外調機との間に第1熱媒体を循環可能とする第1循環経路と、
前記第2熱源装置と、前記外調機との間に第2熱媒体を循環可能とする第2循環経路と、
前記第1循環経路の前記第1熱媒体を流動させて前記第1循環経路に循環させる第1循環ポンプと、
前記第2循環経路の前記第2熱媒体を流動させて前記第2循環経路に循環させる第2循環ポンプとを備え、
前記第1熱源装置は前記第1熱媒体を昇温可能に構成され、前記第2熱源装置は前記第2熱媒体を降温可能に構成され、
前記第1熱媒体が前記外調機において取入れた外気の昇温に寄与し、前記第2熱媒体が前記外調機において取入れた外気の降温に寄与するように構成された空調システムにおいて、
前記第2循環経路における前記第2熱源装置入口の前記第2熱媒体の温度を計測する第2熱媒体温度計測手段と、
前記第1循環経路と、前記第2循環経路との間に接続される往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管、及び、往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管と、
前記往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管の開閉を行う第1バルブと、
前記往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管の開閉を行う第2バルブと、
前記第1バルブ、及び、前記第2バルブの開閉制御を行う温度調節手段とを備え、
前記温度調節手段は、
前記第2熱媒体温度計測手段で計測された前記第2熱媒体の温度が特定温度以下とされた場合に前記第1バルブを開状態とするとともに、
前記第1バルブを前記開状態とした場合に、前記第2バルブも開状態とし、
前記第1バルブが前記開状態とされた場合には、前記第1循環経路の前記第1熱媒体が、前記往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管を介して、前記第2循環経路に流入し、
前記第2バルブが前記開状態とされた場合には、前記第2循環経路の前記第2熱媒体が、前記往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管を介して、前記第1循環経路に流入することを特徴とする空調システム。
【0014】
手段1によれば、第2循環経路を循環する第2熱媒体の第2熱源装置入口温度が特定温度以下とされた場合には、第1バルブが開状態とされることで、第1循環経路を循環する比較的高温度の第1熱媒体が第2循環経路に流入し、第2熱媒体と混合することとなる。これにより、第2熱媒体の温度の低下を抑制する、又は、第2熱媒体の温度を上昇させることができ、例えば、外気温が氷点下となっている状況において、第2循環経路の第2熱媒体が凍結してしまうといった事態を防止することができる。従って、第2循環経路、或いは第2循環経路が接続される外調機内第2熱媒体コイル内で第2熱媒体が凍結することで、好適な温度・湿度調節を行うことが困難となってしまったり、凍結した第2熱媒体が膨張して外調機内第2熱媒体コイルや第2循環経路が破損したりしてしまうといった事態を回避することができる。
【0015】
さらに、例えば、第1循環経路の第1熱媒体と、第2循環経路の第2熱媒体との間で、第1熱媒体及び第2熱媒体を混合させることなく熱交換を行うような構成に比べ、第1バルブを開状態とすることで第2熱媒体を即効で昇温させることが可能となり、比較的急激な温度変化にも対応可能である上、細かな温度調節についても行うことができる。加えて、外調機において、外調機内第2熱媒体コイル内の第2熱媒体の凍結を防止するためのヒータを外調機内に設ける場合に比べ、外調機のコンパクト化を図ることができるとともに、第2熱媒体の凍結防止にかかるコストの削減を図ることができる。さらに、前記ヒータのない既存の外調機をそのまま利用して、本手段の空調システムを構成し、第2熱媒体の凍結防止を図ることも可能である。
【0016】
また、第1バルブを閉状態とすることで、第1熱媒体と、第2熱媒体との間で熱交換が行われることを回避することができ、第1循環経路の第1熱媒体、及び、第2循環経路の第2熱媒体の熱効率の低下を防止するとともに、第1循環経路の第1熱媒体、及び、第2循環経路の第2熱媒体のそれぞれの温度調節(温度管理)を比較的容易に行うことができる。さらに、第1バルブが開状態とされた場合には、第2バルブも開状態とされることから、第1循環経路、及び、第2循環経路の第1熱媒体、及び、第2熱媒体の圧力を好適に保つことができるとともに、第1熱媒体を比較的スムースに第2循環経路に流入させることができる。特に、例えば、第2バルブの開度が、往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管における第1熱媒体の流量と、往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管における第2熱媒体の流量とが同じ、又は、ほぼ同じとなるように、第1バルブの開度に応じて調節される場合には、かかる作用効果がより顕著に奏されることとなる。
【0017】
また、空調システムとして、例えば、外調機に取入れられた外気を冷却する必要がない状況であっても、外気温が特定外気温以下とされた場合には、第2熱媒体の凍結を防止するべく、第2循環ポンプを駆動させて第2熱媒体を強制的に循環させる機能を設けることが考えられる。さらに、第2熱源装置に対し低温度の第2熱媒体が流入して、第2循環経路に接続される第2熱源装置の熱交換器(蒸発器)において第2熱媒体が凍結してしまう等といった事態を回避するべく、第2熱媒体温度計測手段で計測された第2熱媒体の温度が熱源凍結回避温度以下となってしまう場合に、第2熱源装置の安全回路により第2循環ポンプを停止状態として第2熱源装置の熱交換器を保護する機能が発動することが考えられる。この場合には、第2熱媒体の温度が熱源凍結回避温度以下となるのに、第2熱媒体を循環させることができないことから、第2循環経路の外調機側で第2熱媒体が凍結するおそれが高まってしまう。
【0018】
この点、第1バルブが開状態とされる契機とされる特定温度を、熱源凍結回避温度よりも高く設定することにより、第2熱媒体温度計測手段の計測温度が熱源凍結回避温度以下となることを抑制し、第2熱源装置の熱交換器保護回路による第2循環ポンプ停止を回避することができる。従って、第2循環ポンプが停止状態とされ、第2熱媒体を循環不可能な状態に至ってしまうことを抑止することができる。また、万一、第2熱媒体が熱源凍結回避温度以下となり、第2循環ポンプが停止状態とされた場合であっても、第1バルブを開状態とすることで、第1循環経路の第1熱媒体を循環させる第1循環ポンプにより、第1熱媒体を第2循環経路に流入させ、当該第1熱媒体が混合された第2熱媒体を循環させることができる。このため、第1バルブを開状態とすることで、第2循環経路の第2熱媒体の温度を、熱源凍結回避温度以下の状態から、熱源凍結回避温度以上、さらには、特定温度以上となるまでに上昇させることが可能となる。従って、第2熱媒体の凍結防止効果がより確実に奏される。尚、「前記第1バルブ、及び、前記第2バルブの開度は、前記第2熱媒体温度計測手段の計測温度に応じて比例制御されること」としてもよい。この場合、特定温度を比例帯の中央の設定温度としてもよいし、比例帯の上限値としてもよい。
【0019】
手段2.前記第1循環経路は、前記第1熱源装置で温度調節された前記第1熱媒体を前記外調機に供給する第1往路と、前記外調機において外気との間で熱交換が行われた前記第1熱媒体を前記第1熱源装置に供給する第1復路とを備え、
前記第2循環経路は、前記第2熱源装置で温度調節された前記第2熱媒体を前記外調機に供給する第2往路と、前記外調機において外気との間で熱交換が行われた前記第2熱媒体を前記第2熱源装置に供給する第2復路とを備え、
前記第2熱媒体温度計測手段は、前記第2復路における前記第2熱媒体の温度を計測可能に設けられ、
前記往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管は、前記第1往路と、前記第2復路との間に接続され、
前記往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管は、前記第2往路と、前記第1復路との間に接続され、
前記第1バルブが前記開状態とされた場合には、前記第1往路の前記第1熱媒体が、前記往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管を介して、前記第2復路に流入し、
前記第2バルブが前記開状態とされた場合には、前記第2往路の前記第2熱媒体が、前記往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管を介して、前記第1復路に流入することを特徴とする手段1に記載の空調システム。
【0020】
手段2によれば、第1バルブを開状態とすることで、第1往路の第1熱媒体が第2復路に流入するようになっている。従って、外調機で熱交換される前の比較的温度の高い第1熱媒体を、第2熱源装置に流入する手前の第2熱媒体に混入させることができる。このため、第2循環経路における第2熱媒体の温度上昇をより確実に図ることができる上、第2熱源装置に低温度の第2熱媒体が流入し、第2熱源装置の第2循環経路において第2熱媒体が凍結してしまうといった事態をより確実に防止することができる。さらに、第2バルブを開状態とすることで、第2往路の第1熱媒体が第1復路に流入するようになっている。このため、例えば、第2循環経路の第2熱媒体が第1往路に流入してしまうことで、外調機に供給される第1熱媒体の温度が低下してしまうといった事態を回避することができる。加えて、例えば、往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管、及び、往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管のうち一方の出口側の直下流側に他方の入口側が接続されるような場合のように、上記のような第1熱媒体を用いて第2熱媒体の温度を高めるといった作用効果が上手く奏されなくなってしまう(例えば、往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管を介して第2循環経路に流入した第1熱媒体の一部が、その直後、往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管を介して、第1循環経路に戻されてしまう等)といった事態を回避することができる。
【0021】
また、外調機における第1循環経路、及び、第2循環経路に接続される先は、外調機の外調機内第1熱媒体コイル(加熱コイル)、及び、外調機内第2熱媒体コイル(冷却コイル)により構成され、第1熱媒体、及び、第2熱媒体の水圧が高くなることから、往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管、及び、往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管をそれぞれ比較的シンプルに接続することで、往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管、及び、往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管に別途のポンプ等を設置しなくても、第1バルブ、及び、第2バルブを開状態とするだけで、(入口出口の圧力差の違いにより、外調機の加熱コイル、及び、冷却コイルよりも流れ易い)往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管、及び、往き第2熱媒体及び還り第1熱媒体バイパス管に、第1熱媒体、及び、第2熱媒体を流通させることができる。従って、構成の簡素化、制御の簡素化、及び、コストの削減等を図ることができる。
【0022】
手段3.それぞれ複数台設置されている前記第1熱源装置および前記第2熱源装置は、空冷式または水冷式のヒートポンプチラーであり、第2熱媒体の冷熱負荷要求が多くなると熱源台数制御により、前記第1熱源装置の一部が前記第2熱源装置に切り替わり、切り替わった熱源装置はバルブの切り替えで前記第1循環経路から前記第2循環経路に接続が変更され、
第1熱媒体の温熱負荷要求が多くなると熱源台数制御により、前記第2熱源装置の一部が前記第1熱源装置に切り替わり、切り替わった熱源装置は前記バルブの切り替えで前記第2循環経路から前記第1循環経路に接続が変更されるよう構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の空調システム。
【0023】
手段3によれば、空冷式ヒートポンプチラーもしくは水冷式ヒートポンプチラーの、冷凍サイクルの蒸発器と凝縮器と圧縮機と膨張弁の流れを4方弁で切り替えることで2つの熱交換器をそれぞれ蒸発器から凝縮器、凝縮器から蒸発器に切り替え可能で、冷熱、温熱を切り替え取り出し可能な機器特性を十分生かして、冷熱専用熱源、温熱専用熱源よりも、台数を減少した形でイニシャルコストを削減でき、中間期に冷熱専用熱源、温熱専用熱源の一部が停止して遊んでしまうところ、本発明では熱源装置を有効利用できる。
【0024】
手段4.前記外調機に取入れられる外気温を計測可能な外気温計測手段を備え、
前記外気温計測手段で計測された外気温が特定外気温以下とされた場合に、複数ある前記第2熱源装置のうちの1台に内蔵される第2熱媒体循環ポンプを定格流量で駆動状態として前記第2熱媒体を強制循環させる強制循環制御が行われる構成であって、
前記特定外気温は、前記第1バルブが前記開状態とされる熱媒体混合制御よりも先に、前記強制循環制御が開始されることとなる温度に設定されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の空調システム。
【0025】
手段4によれば、熱媒体混合制御が開始される段階では、既に強制循環制御が行われており、外調機内第2熱媒体コイル内においてまだ高温である第2熱媒体が強制循環されている状態となっている。このため、第2熱媒体温度計測手段の計測温度が特定温度以下とされた場合に、例えば、第1循環ポンプだけで第2循環経路における第2熱媒体を循環させなければならないような構成に比べ、往き第1熱媒体及び還り第2熱媒体バイパス管を介して第2循環経路に流入した第1熱媒体と混合されて昇温された第2熱媒体を比較的スムースに第2循環経路に循環させることができる。従って、第2循環経路において第2熱媒体が凍結するといった事態をより確実に防止することができる。尚、「前記第2熱媒体循環ポンプ」は、「前記第2循環ポンプ」であることとしてもよい。