(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906868
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】粉体吹込システム
(51)【国際特許分類】
B65G 53/66 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
B65G53/66 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-51099(P2018-51099)
(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公開番号】特開2019-163111(P2019-163111A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2020年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391022326
【氏名又は名称】ダイヤモンドエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114269
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貞喜
(72)【発明者】
【氏名】平井 悠矢
(72)【発明者】
【氏名】宮保 知佳
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 遼太朗
(72)【発明者】
【氏名】関口 康
【審査官】
山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−016422(JP,A)
【文献】
特開2009−256090(JP,A)
【文献】
特開2018−016423(JP,A)
【文献】
特開2014−088219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 53/66
B65G 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に粉体が充填される吹込タンクと、前記吹込タンクの下部付近に設けられた排出口に接続された粉体搬送配管支管と、前記粉体搬送配管支管の途中に設けられ、前記粉体搬送配管支管内を搬送される粉体の流量を計測する粉体流量計と、前記吹込タンク内の圧力を検出するタンク内圧力計と、前記吹込タンクの内部に加圧されたガスを導入し、前記吹込タンク内の圧力と前記粉体搬送配管支管内の圧力との差により前記吹込タンク内の粉体を前記排出口より排出するための加圧ガスの圧力を調整する加圧制御弁と、前記粉体搬送配管支管内の圧力を検出する管内圧力計と、前記粉体流量計の計測値に基づいて前記加圧制御弁の開度を制御することにより前記粉体搬送配管支管内を搬送される粉体の流量を制御する制御部とを有する粉体吹込装置を複数台と、
搬送ガスが導入され、該搬送ガスにより前記吹込タンクから前記粉体搬送配管支管を経由して排出された粉体を搬送する粉体搬送配管本管とを備え、
前記各粉体吹込装置の粉体搬送配管支管が前記粉体搬送配管本管に並列に接続され、前記各粉体吹込装置を同時稼動させながら、前記各吹込タンクから排出される各粉体を混合させて連続的に所定量の粉体を搬送供給する粉体吹込システムであって、
前記各制御部は、
前記粉体流量計で計測された粉体流量実測値が所定の目標値に近づくように前記加圧制御弁を制御することを特徴とする粉体吹込システム。
【請求項2】
前記各粉体流量計の一次側(上流側)に、前記排出口から排出される粉体の量を弁の開度により調節可能な可変弁をそれぞれ配設するとともに、前記可変弁の一次側に、前記粉体をガスで流動化させ前記可変弁の入口での前記粉体の目詰まりを防止するための流動化管を接続し、
前記各制御部が、さらに、
予め設定された弁の開度設定値に基づいて前記各可変弁の開閉を制御することを特徴とする請求項1に記載の粉体吹込システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体吹込システムに関し、特に、ポストミックス型の粉体吹込システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの粉体搬送ライン上に複数の吹込タンクを並列に接続し、それぞれの吹込タンクから同時に投射した各粉体を混合して搬送するようにした粉体吹込システムは、一般にポストミックス型の粉体吹込システムなどと称されている。
ポストミックス型の場合は、各粉体の搬送量(以下「流量」という。)を個別に測定し、制御する必要がある。混合した後では粉体ごとの流量を把握することができないからである。
【0003】
従来は、粉体ごとの流量を各吹込タンクに付随の秤量器(ロードセル)による秤量値差分を粉体の排出量(流量)としてそれぞれ計算することにより求めていた(例えば特許文献1参照)。
図1は従来の粉体吹込システムの第1例(特許文献1の
図1)を示すものであるが、本願発明との比較がしやすいように、本願発明の構成図(後述の
図3)に倣って描いてあるので、特許文献1の
図1の参照符号とは異なっていることに注意されたい。
図1において、参照符号1a,1bで示すのは、内部にそれぞれ粉体A及び粉体Bが充填される吹込タンクA,Bである。ポストミックス型の粉体吹込システムの場合は、粉体Aと粉体Bは異なるものである。
参照符号2a、2bで示すのは、吹込タンク1a、1b(以下、aとbを特に区別して説明する場合を除き、単に吹込タンク1という。他の参照符号についても同様)の内部に加圧されたガスを導入し、吹込タンク1内の圧力と後述の粉体搬送配管支管6内の圧力差により吹込タンク1内の粉体を排出口より排出するための加圧ガスの圧力を調整する加圧制御弁である。加圧ガスの例としては、窒素等の不活性ガスや空気等が挙げられる。
【0004】
参照符号3a、3bで示すのは、排出口の下流側に設けられ、排出口から排出される粉体の流量を弁の開度により調節可能な可変弁である。
また、参照符号4a、4bで示すのは、吹込タンク1内の粉体の重量を検出する秤量器である。秤量器4の例として、荷重(Load)を電気信号に変換するロードセルがある。
【0005】
参照符号5a、5bで示すのは、各弁の開度を制御することにより後述の粉体搬送配管支管6a、6b内を搬送される粉体の流量を制御する制御部である。
参照符号6a、6bで示すのは、吹込タンク1の排出口に接続され、排出口から排出された粉体を後述の粉体搬送配管本管8に導くための粉体搬送配管支管である。
【0006】
参照符号7a、7bで示すのは、吹込み作業の終了時に、粉体が吹込タンク1から粉体搬送配管支管6内に流出するのを完全に阻止するために設けられる排出弁である。また、排出弁7は、吹込み作業の終了時に加圧ガスの導入を停止し吹込タンク1内の圧力が低下すると、搬送ガスの圧力により粉体搬送配管支管6を介して吹込タンク1内に搬送ガス及び粉体が逆流するので、これを完全に阻止する役割も果たしている。
参照符号8で示すのは、粉体搬送配管支管6が接続され、排出口から排出された粉体を搬送ガスによって炉等へ搬送するための粉体搬送配管本管である。
参照符号10で示すのは、吹込タンク1内の圧力を検出するタンク内圧力計であり、また、参照符号11で示すのは、粉体搬送配管支管6内の圧力を検出する管内圧力計である。なお、秤量器4、タンク内圧力計10、管内圧力計11の出力は制御部5に入力される。
【0007】
上述の粉体吹込システムでは、秤量器4による秤量値差分を粉体の流量(計算で求めた実測値)としてそれぞれ計算し、予め設定した規定量(流量の目標値)との差が所定の範囲に収まるように、制御部5が加圧制御弁2の弁開度を制御することにより差圧(タンク内圧力と粉体搬送配管支管内圧力との差)を制御している。なお、差圧を一定にして、可変弁3の開度を制御することによって流量を制御する方法もあるが、いずれにしても、秤量器4による流量の計測は、外乱による重量変動をフラットにするべく移動平均をかけるため応答性が悪く、流量制御が遅れるという問題があった。
【0008】
かかる従来の粉体吹込システムの第1例の欠点を克服するものとして、
図2に示すような従来の粉体吹込システムの第2例が知られている(特許文献2参照)。
従来の第1例と異なる点は、従来の第1例では秤量器4の出力に基づいて加圧制御弁2を制御するのに対して、第2例では、粉体搬送配管本管8の立ち上り部に設けられた粉体流量計9の出力(流量の実測値)に基づいて制御部5が加圧制御弁2を制御している点である。粉体流量計9の測定値をそのまま使用しているため、応答性に優れ、外乱による影響がないという特長がある。
【0009】
ちなみに、粉体流量計とは、粉体流量計内を粉体が通過することによる静電容量の変化によって粉体流量(吹込速度)を検出するものであり、粉体流量計は、タンク出口以降の立ち上り部に設置することが一般的である。
それは、搬送ガスと混合された粉体が粉体流量計内を下から上に通過することにより、粉体が配管内に一様に分散するため、粉体分布の偏りが生じず、高精度で流量を測定できると考えられたためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−295911号公報
【特許文献2】特許第6139762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、粉体流量計は、誘電体である粉体が粉体流量計内を通過する際の静電容量の変化によって流量を検出しているため、異種粉体が混合した状態では測定できない(混合比が変化すると静電容量が変化するから。)という欠点がある。
このため、粉体流量計9a、9bによる計測後に粉体搬送配管本管8a、8bを合流させる必要があり、搬送ガスが通る粉体搬送配管本管8a、8bを吹込タンクごとに別々に設ける必要がある。その結果、設備コストが上がるという問題があった。
【0012】
本発明は、上述のような問題に鑑みなされたものであり、制御の応答性を劣化させることなく、かつ、設備コストの大幅な上昇をもたらさないポストミックス型の粉体吹込システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ポストミックス型の粉体吹込システムに関し、本発明の上記目的は、内部に粉体が充填される吹込タンク(1)と、前記吹込タンク(1)の下部付近に設けられた排出口に接続された粉体搬送配管支管(6)と、前記粉体搬送配管支管(6)の途中に設けられ、前記粉体搬送配管支管(6)内を搬送される粉体の流量を計測する粉体流量計(9)と、前記吹込タンク(1)内の圧力を検出するタンク内圧力計(10)と、前記吹込タンク(1)の内部に加圧されたガスを導入し、前記吹込タンク(1)内の圧力と前記粉体搬送配管支管(6)内の圧力との差により前記吹込タンク(1)内の粉体を前記排出口より排出するための加圧ガスの圧力を調整する加圧制御弁(2)と、前記粉体搬送配管支管(6)内の圧力を検出する管内圧力計(11)と、前記粉体流量計(9)の計測値に基づいて前記加圧制御弁(2)の開度を制御することにより前記粉体搬送配管支管(6)内を搬送される粉体の流量を制御する制御部(5)とを有する粉体吹込装置を複数台と、搬送ガスが導入され、該搬送ガスにより前記吹込タンクから前記粉体搬送配管支管(6)を経由して排出された粉体を搬送する粉体搬送配管本管(8)とを備え、前記各粉体吹込装置の粉体搬送配管支管(6)が前記粉体搬送配管本管(8)に並列に接続され、前記各粉体吹込装置を同時稼動させながら、前記各吹込タンク(1)から排出される各粉体を混合させて連続的に所定量の粉体を搬送供給する粉体吹込システムであって、前記各制御部(5)は、前記粉体流量計(9)で計測された粉体流量実測値が所定の目標値に近づくように前記加圧制御弁(2)を制御することを特徴とする粉体吹込システムによって達成される。
【0014】
また、本発明の上記目的は、前記各粉体流量計(9)の一次側(上流側)に、前記排出口から排出される粉体の量を弁の開度により調節可能な可変弁(3)をそれぞれ配設するとともに、前記可変弁(3)の一次側に、前記粉体をガスで流動化させ前記可変弁(3)の入口での前記粉体の目詰まりを防止するための流動化管を接続し、前記各制御部(5)が、さらに、予め設定された弁の開度設定値に基づいて前記各可変弁(5)の開閉を制御することを特徴とする前記粉体吹込システムによって効果的に達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る粉体吹込システムによれば、粉体流量計の実測値に基づいて流量の制御ができるので応答性がよく、また、粉体搬送配管本管は共通のものを1本設置すればよいので、設備コストの上昇を避けることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来の粉体吹込システムの第1例を示す概略図である。
【
図2】従来の粉体吹込システムの第2例を示す概略図である。
【
図3】本発明に係る粉体吹込システムの構成の実施形態を示す概略図である。
【
図5】制御部が行う処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図3は、本発明に係る粉体吹込システムの構成の実施形態を示す概略図である。
図1に示した従来の粉体吹込システムの第1例(以下、単に「従来例」という。)との差異だけを説明し、その他の説明は重複するので省略する。
図3の本発明に係る粉体吹込システムが従来例と異なる点は、従来例が、粉体の流量(実測値)を秤量器4の測定値の時間微分(秤量値差分)によって算出し、それに基づいて制御部5が加圧制御弁2を制御するのに対して、本発明に係る粉体吹込システムでは、粉体搬送配管支管6に粉体流量計9を新たに設置し、粉体流量計9で計測した流量の実測値に基づいて制御部5が加圧制御弁2を制御するという点である。
【0018】
また、可変弁3は本発明に必須のものではないが、設置するのが好ましい。粉体吹込装置において、規定量の粉体を排出する場合、スタート時は、加圧制御弁2を開いて差圧を所定の値に設定し、規定量に対応した可変弁開度に可変弁3の弁を開き、短時間で規定量の流量に近づけるためである。その後、可変弁3の開度を固定し、粉体流量計9の実測値と規定量との差が所定の範囲内に収まるように加圧制御弁2を制御することにより流量を一定に保持する。こうすることにより立ち上がりを早めることができる。
また、目標値を途中で大きく変えたい場合は、可変弁3の開度を変えることによって行うことができる。
【0019】
また、
図3には示してはいないが、可変弁3の一次側(入口)に流動化管(後述の
図4)を設置するのが好ましい。
図4は、可変弁3へ送られる粉体をガスで流動化させ、可変弁入口での目詰まりを防止するための流動化管の一例を示す図である。粉体が流動化管内を通過する際に、流動化ガス注入口から注入されたガスによって粉体が流動化されるので、可変弁3での詰まりが防止できる。
なお、吹込タンク1の下部(排出口近辺)にも、ガスによって粉体を流動化させ、粉体の流れの状態を安定化させる下部流動排出器(不図示)が設けられている。
【0020】
次に、制御部5が行う流量制御の流れを
図5のフローチャートに基づいて説明する。なお、制御部5は汎用のパーソナルコンピュータ(パソコン)が利用可能であるが、マイコンを用いた専用の回路でももちろん構わない。この処理は、パソコンに格納された所定のプログラムによってパソコンのCPUが行うものである。
粉体吹込装置の電源がONされスタートすると、予め設定された流量の規定量(目標値)を読み込んで設定する(S101)。ここで、可変弁3が所定の開度(目標値に対応した開度)に開かれて粉体が吹込タンク1から粉体搬送配管支管6内に排出されるが、これは別系統の処理であるので、このフローチャートには記載していない。
【0021】
所定のタイミング(例えば、スタートから1分後)で粉体流量計9の流量実測値(以下「実測値」という。)を取得する(S102)。
次に、規定量と実測値との差が所定の誤差(δ)よりも小さいか否かをチェックし、規定量と実測値との差がδ以上の場合は(S103のNO)、加圧制御弁2の開度を調整して実測値を規定量に近づける必要がある。なお、δはシステムの要求に応じて適宜設定可能である。
そこで、実測値が規定量よりも少ない場合は(S104のYES)、加圧制御弁2の開度を上げて吹込タンク1内の圧力を上げ、搬送される粉体の流量を増やす(S105)。そして、ステップS102に戻り、その時の実測値を取得し(S102)、規定量と実測値の差がδよりも小さいか否かをチェックする(S103)。
【0022】
また、ステップS104において、実測値が規定量を超えている場合は(S104のNO)、加圧制御弁2の開度を下げて吹込タンク1内の圧力を下げ、搬送される粉体の流量を減らす(S106)。そして、ステップS102に戻り、その時の実測値を取得し(S102)、規定量と実測値の差がδよりも小さいか否かをチェックする(S103)。以下、この処理を繰り返す。
【0023】
一方、ステップS103において、規定量と実測値との差がδよりも小さい場合は(S103のYES)、ステップS102に戻り、その時の実測値を取得し(S102)、規定量との差がδよりも小さいか否かをチェックする(S103)。
以上の処理を繰り返すことにより、粉体の流量を所定の値に制御することができる。
【0024】
本発明に係る粉体吹込システムは、従来例(
図1)よりも応答性が良いのは言うまでもないが、粉体流量計9を使用している従来の粉体吹込システムの第2例(
図2参照)と比較しても、同程度の応答性及び精度が得られることが実験で確かめられた。
【0025】
以上で実施形態の説明を終了するが、粉体の例としては、微粉炭のほか、生石灰、脱リン剤(たとえば石灰、酸化鉄、螢石などを混合した粉粒体)、脱硫剤(酸化鉄あるいは酸化亜鉛の粉粒体)等がある。
また、本発明に係る粉体吹込システムは、異種粉体の混合吹込に最適であると説明したが、同種の粉体を同時に、あるいは吹込タンクを切り換えながら吹込を行うに場合にも適用できることは言うまでもない。なぜなら、本発明は、粉体搬送配管支管6内に粉体流量計9を設置して応答性を向上させた点に特徴があるからである。
なお、粉体吹込システムの具体的な構成、処理の内容等は、実施形態で説明したものに限るものではなく、本発明の主旨を損なわない範囲で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1:吹込タンク、2:加圧制御弁、3:可変弁、4:秤量器、5:制御部、6:粉体搬送配管支管、7:排出弁、8:粉体搬送配管本管、9:粉体流量計、10:タンク内圧力計、11:管内圧力計