特許第6906885号(P6906885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6906885しわを減少させるためのマイクロニードルシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906885
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】しわを減少させるためのマイクロニードルシート
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20210708BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20210708BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20210708BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20210708BHJP
   A61L 31/00 20060101ALN20210708BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20210708BHJP
【FI】
   A61M37/00 530
   A61K8/02
   A61K8/73
   A61K8/81
   A61Q19/08
   !A61L31/00
   !A61P17/00
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-231306(P2014-231306)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-93325(P2016-93325A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年11月7日
【審判番号】不服2019-7344(P2019-7344/J1)
【審判請求日】2019年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲シュ▼
(72)【発明者】
【氏名】大西 一行
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 栗山 卓也
【審判官】 平瀬 知明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0182306(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/150069(WO,A1)
【文献】 特表2010−540507(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0082543(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/004301(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0269685(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/041627(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104095761(CN,A)
【文献】 特表2013−530785(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/064632(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端部分及び近位端部分を含む複数の部分を含むマイクロニードルであって、
複数の部分のうちの少なくとも2つが異なるポリマーで作られており、
遠位端部分が高膨潤性及び高粘弾性を有する少なくとも1種のポリマーで作られており、
高膨潤性及び高粘弾性を有する前記ポリマーが、架橋ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール架橋PMVE/MA及びそれらの混合物からなる群から選択され、
少なくとも近位端部分が水溶解性であり、50KDa未満の分子量を有するヒアルロン酸二糖、オリゴ糖、デキストリン、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)、及び、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)からなる群から選択される水溶解性ポリマーを含み、
前記遠位端部分が皮膚内への挿入後に脱離し、
前記遠位端部分が皮膚内での水の吸収に伴って皮膚表面下で膨潤して皺を皮膚内部から押して皺をより浅く幅広くすることにより皺を減少可能なマイクロニードル。
【請求項2】
高膨潤性及び高粘弾性を有する前記少なくとも1種のポリマーが、500000から100000000の間の高い分子量を有する、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項3】
高膨潤性及び高粘弾性を有する前記ポリマーが、ポリエチレングリコール架橋PMVE/MAである、請求項2に記載のマイクロニードル。
【請求項4】
前記遠位端部分が、炭酸ナトリウムを含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項5】
哺乳動物の角質層を穿刺できる、請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項6】
遠位端部分が活性成分である、請求項1から5のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項7】
遠位端部分が活性成分を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項8】
遠位端部分が皮膚内への挿入時に1時間未満で膨潤する、請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項9】
前記遠位端部分の直径が、皮膚内への挿入後1時間で少なくとも2倍に増加する、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の複数のマイクロニードルを含むシートマスク。
【請求項11】
マイクロニードルのアレイを含むシートの形成方法であって、
(a)マイクロニードルのネガに対応するキャビティを有する型を用意する工程と、
(b)架橋ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール架橋PMVE/MA及びそれらの混合物からなる群から選択される、高膨潤性及び高粘弾性を有するポリマーを含む物質のブレンドを型内に充填し、遠位端部分を成形する工程と、
(c)型を乾燥させる工程と、
(d)50KDa未満の分子量を有するヒアルロン酸二糖、オリゴ糖、デキストリン、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)、及び、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)からなる群から選択される水溶解性物質のブレンドを型に流し込み、近位端部分を成形する工程と、
(e)型を乾燥させる工程と、
(f)マイクロニードルを型から外す工程と
を含む、
前記遠位端部分が皮膚内への挿入後に脱離し、
前記遠位端部分が皮膚内での水の吸収に伴って皮膚表面下で膨潤して皺を皮膚内部から押して皺をより浅く幅広くすることにより皺を減少可能なマイクロニードルのアレイを含むシートの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、マイクロニードルを使用した、高膨潤性及び高粘弾性を有するポリマーの送達に関する。
【背景技術】
【0002】
角質層(SC)は、低分子量物質を含む外因性物質に対する主たる障壁を構成する。皮膚に浸透する物質は、SCの高度に組織された細胞間脂質二重層を通って拡散しなければならない。親油性であるこの細胞間の微細経路は、送達媒体とSCとの間の濃度勾配に沿った受動拡散により、外因性物質がSC障壁を通過する主要な経路である。効果的な受動拡散、そしてそのことによりSC障壁の貫通が可能な分子の理想的な特性は、分子量が600Da未満であることが知られている。
【0003】
高分子量分子について、SC障壁を除去することを目的とする技術、たとえばテープストリッピング及び吸引、レーザー、又は、熱アブレーションは実用的でなく、一方で無針注射はこれまで、従来の針に基づく送達に置き換わることができなかった。
【0004】
角質層障壁を破壊するために複数の微細突起からなる微細構造装置を使用するという着想は、1970年代に初めて提案された。角質層を穿刺して微視的な穴を残し、それに続く内部への薬物送達又は外部への間質液の移動を可能にするシステムをもたらすために、固体微細突起を含む様々な装置が開発されてきた。たとえばシリコン又はポリマーを使用した固体微細突起及びマイクロニードルアレイの製造は、当技術分野において記載されており、たとえばWO2009040548、US6743211、US6743211、US6743211、IE 2005/0825、US60/749.086、US6924087、US6743211、US6663820、US6743211、US6767341、US6743211、US6663820、US6652478、US6743211、US6749792、US6451240、US6767341、US6743211、US6230051、US6908453、US7108681、US6931277B1、EP1517722B1、US20060200069A1、US6611707、US6565532、US6960193、US6743211、US6379324、WO2007/040938A1、US6256533、US6743211、US6591124、US7027478、US6603987、US6821281、及びUS6565532を参照のこと。
【0005】
当技術分野において現在知られているかかるシステムの使用は、ごく少量の薬物送達という問題と関連する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2009040548
【特許文献2】US6743211
【特許文献3】IE 2005/0825
【特許文献4】US60/749.086
【特許文献5】US6924087
【特許文献6】US6663820
【特許文献7】US6767341
【特許文献8】US6652478
【特許文献9】US6749792
【特許文献10】US6451240
【特許文献11】US6230051
【特許文献12】US6908453
【特許文献13】US7108681
【特許文献14】US6931277B1
【特許文献15】EP1517722B1
【特許文献16】US20060200069A1
【特許文献17】US6611707
【特許文献18】US6565532
【特許文献19】US6960193
【特許文献20】US6379324
【特許文献21】WO2007/040938A1
【特許文献22】US6256533
【特許文献23】US6591124
【特許文献24】US7027478
【特許文献25】US6603987
【特許文献26】US6821281
【特許文献27】米国特許第6,219,574号
【特許文献28】カナダ特許出願第2,226,718号
【特許文献29】米国特許第6,652,478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SCを横断する高分子量の輸送を増強するための、しっかりとした代替的ストラテジーが必要とされることは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実証されるとおり、本発明者らは、本発明によるマイクロニードルが、高膨潤性及び高粘弾性ポリマーで角質層を穿刺できることを示した。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様において、遠位端部分及び近位端部分を含む複数の部分を含むマイクロニードルであって、複数の部分のうちの少なくとも2つが異なるポリマーで作られており、遠位端部分が高膨潤性及び高粘弾性を有する少なくとも1種のポリマーで作られている、マイクロニードルが提供される。
【0010】
一実施形態において、高膨潤性及び高粘弾性を有する少なくとも1種のポリマーは、500kDaから100000kDaの間、好ましくは1000kDaから20000kDaの間、より好ましくは2100kDaから15000kDaの間の高い分子量を有する。
【0011】
一実施形態において、高膨潤性及び高粘弾性を有するポリマーは、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール架橋PMVE/MA、メチルビニルエーテルのコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは高膨潤性及び高粘弾性を有するポリマーは、架橋ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール架橋PMVE/MA、メチルビニルエーテルのコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、高膨潤性及び高粘弾性を有するポリマーは、ポリエチレングリコール架橋PMVE/MAである。
【0012】
一実施形態において、遠位端部分は、細孔形成炭酸剤を含有する。一実施形態において、少なくとも近位端部分は、水溶解性である。一実施形態において、遠位端部分は、皮膚内への挿入後に脱離する。一実施形態において、少なくとも近位端部分は、遠位端部分より迅速に分解する。
【0013】
一実施形態において、マイクロニードルは、哺乳動物の角質層を穿刺できる。一実施形態において、遠位端部分は、活性成分である。一実施形態において、遠位端部分は、活性成分を含む。一実施形態において、遠位端部分は、皮膚内への挿入時に膨潤する。一実施形態において、遠位端部分は、皮膚内への挿入時に1時間未満で膨潤する。一実施形態において、遠位端部分の直径は、皮膚内への挿入後1時間で少なくとも2倍に増加する。
【0014】
本発明の第2の態様において、複数のマイクロニードルを含むシートマスクが提供される。
【0015】
本発明の第3の態様において、化粧品分野における及び/又は皮膚のしわを減少させるためのマイクロニードルの使用が提供される。
【0016】
本発明の第4の態様において、マイクロニードルのアレイを含むシートの形成方法であって、
(a)マイクロニードルのネガ(negative)に対応するキャビティを有する型(mold)を用意する工程と、
(b)高膨潤性及び高粘弾性を有するポリマーを含む物質のブレンドを型内に充填し、遠位端部分を成形する工程と、
(c)型を乾燥させる工程と、
(d)可溶性物質のブレンドを型に流し込む工程と、
(e)型を乾燥させる工程と、
(f)マイクロニードルを型から外す工程と
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】表2において指定される配合物から調製されるPEG架橋PMVE/MA(F1〜F4)の膨潤比を示す図である。
図2】表2において指定されるPEG架橋PLAの膨潤比を示す図である。
図3】ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸及びPEG架橋PMVE/MAの膨潤比を示す図である。
図4】動的周波数掃引試験におけるゲルの粘弾性を示す図である。
図5】30秒間圧力を適用することにより全層の新生仔ブタ皮膚にわたり挿入された、F2(A)及びF3(B)配合物から調製されたMN-1(420μm)並びにF2(C)及びF3(D)から調製されたMN-2(280μm)の挿入後のOCT画像を示す図である。
図6】全層のブタ皮膚内へと48時間にわたり膨潤するMN-F2及びMN-F3のOCT画像を示す図である。
図7】異なる時間間隔でのMNの体積(mm3/cm2)を示す図である(平均±SD、n=5)。
図8】透明接着テープの除去後に全層のブタ皮膚に挿入されたままの膨潤したMNを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
生物学的障壁を横断する高分子量ポリマーの輸送における使用のためのマイクロニードル
本発明によれば、高膨潤性を有するポリマーは、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水中での1時間のインビトロインキュベーションにおいて少なくとも10倍超、好ましくは1時間のインキュベーションにおいて少なくとも20倍、より好ましくは1時間のインキュベーションにおいて少なくとも30倍、より一層好ましくは、1時間のインキュベーションにおいて少なくとも40倍、最も好ましくは1時間のインキュベーションにおいて約45〜55倍に膨潤可能なポリマーである。この膨潤比は、下の実施例セクションに記載の方法により算出できる。
【0019】
本発明によれば、高粘弾性を有するポリマーは、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水中でのインビトロインキュベーション後にゲルを形成すると考えられるポリマーである。ゲルは、レオメーターでの動的周波数掃引試験において低周波数(0.01Hz)であっても、高弾性係数G'、高粘性係数G''、1未満のタンジェント(δ)[タンジェント(δ)=G''/G']、及び高稠度G*(G*2=G'2+G''2)を示す。
【0020】
本願において、用いられている微細突起又は微細突出の種類として「マイクロニードル」に言及する。多くの場合において、同一の発明原理が、皮膚又は他の生体膜に貫入するための他の微細突起又は微細突出の使用に適用されることが、当業者により理解されるであろう。他の微細突起又は微細突出には、たとえば、米国特許第6,219,574号及びカナダ特許出願第2,226,718号に記載のマイクロブレード並びに米国特許第6,652,478号に記載のエッジドマイクロニードルが含まれていてもよい。一般に、微細突出は、少なくとも約100μm、少なくとも約150μm、少なくとも約200μm、少なくとも約250μm、又は少なくとも約300μmの高さを有することが好ましい。一般に、微細突出は、約1mm以下、約800μm以下、約500μm以下、又はいくつかの場合において約300μm以下の高さを有することも好ましい。微細突出は、少なくとも3:1(高さ対底部の直径)、少なくとも約2:1、又は少なくとも約1:1の縦横比を有していてもよい。
【0021】
一実施形態において、マイクロニードルは、円形底部を有する円錐状の形状であり、底部の上のマイクロニードルの高さの点に向かって先細りになる。好適には、本発明のアレイの実施形態において、マイクロニードルは、その底部において1〜500μmの直径を有しうる。一実施形態において、本発明のマイクロニードル及び本発明における使用のためのマイクロニードルは、50〜300μm、たとえば100〜200μmの範囲の直径を有しうる。別の一実施形態において、本発明のマイクロニードルは、1μm〜50μmの範囲、たとえば20〜50μmの範囲の直径のものであってもよい。
【0022】
近位端部分
一実施形態において、近位端部分は、1種又は複数の可溶性ポリマーで作られている。近位端部分は、近位端を含む部分である。好適なポリマーの例には、低分子量(好ましくは50KDa未満、より好ましくは10KDa未満)を有するヒアルロン酸、単糖(たとえばグルコース、フルクトース、ガラクトース)、二糖(たとえば、スクロース、ラクトース、マルトース)、オリゴ糖、デキストリン、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリビニルピロリドン、及びGantrez型ポリマーが含まれるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、好適なポリマーは、Gantrez型ポリマー、たとえばポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)及びそのエステル、並びにポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸)(PMVE/MAH)である。
【0024】
遠位端部分
一実施形態において、遠位端部分は、1種又は複数のヒドロゲル形成ポリマーで作られている。遠位端部分は、遠位端を含む部分である。好適なポリマーの例には、高い分子量(好ましくは500kDa超、より好ましくは1000kDa超、より一層好ましくは2100kDa超)を有するヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、架橋ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール架橋ポリ乳酸/ポリグリコール酸/ポリ乳酸-co-グリコール酸/ポリジオキサノン、ポリ(スチレン)-block-ポリ(アクリル酸)、ポリエチレングリコール架橋ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PEG架橋PMVE/MA)、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、セルロース、天然及び合成ゴム、アルギン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、及びPEG架橋Gantrez型ポリマー(PEG架橋Gantrez)が含まれるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0025】
Gantrez型ポリマーには、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)及びそのエステル、並びにポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸)(PMVE/MAH)が含まれる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、高膨潤性及び高粘弾性を有するポリマーは、異なるパーセンテージの細孔形成剤、たとえば炭酸ナトリウム(Na2CO3)を含有する。
【0027】
本発明によれば、細孔形成剤は、ポリマー上の遊離酸基をイオン化させることが可能な作用剤であり、そのことにより隣接基を退け、構造をなお一層広げる。
【0028】
経皮送達において使用されるためには、マイクロニードルは、角質層に開口部を創出可能でなければならない。
【0029】
好適には、マイクロニードルは、50.0N cm2未満、たとえば20.0N cm2未満、たとえば10N cm2未満の挿入の圧力がマイクロニードル上にそれらの長さに沿ってかけられるとき、手の力で破砕することはない。
【0030】
遠位端部分の解放
本発明によれば、近位端部分は、皮膚内への挿入後に溶解可能なポリマーで作られている
【0031】
近位端部分の可溶化及び遠位端部分の体積膨張により、遠位端部分は分離して皮膚内に残存するであろう。
【0032】
任意選択の外部水を、マイクロニードルシートの適用と組み合わせて、近位端部分の溶解を加速するために添加できるのであり、これはマイクロニードルシートの前又は後に適用される。
【0033】
薬物送達
任意選択で、活性物質の送達のための微細突起の強度及び膨潤特性を、微細突起の放出特性とともに更に変化させるために、ポリマーの架橋を使用できる。たとえば、軽度架橋ヒドロゲル微細突起は、1回用量のみが必要な場合に薬物を迅速に送達できる。中度架橋ヒドロゲル微細突起は、長期的薬物送達を可能にするために使用でき、そのことにより皮膚内への一定の薬物送達を容易にする。
【0034】
シートマスクにおけるマイクロニードルの使用
マイクロニードルは、角質層を穿刺するためのシートにおける使用に好適な任意のサイズ及び形状でありうる。シートのマイクロニードルは、角質層を貫き、任意選択でそれを通過するよう設計される。好適には、マイクロニードルの高さは、表皮上層内又は表皮深層までの貫入を可能にするよう改変できる。
【0035】
シートにおける個々のマイクロニードルのそれぞれの間の尖端分離距離は、皮膚への貫入を確保しつつ、高い経皮輸送速度を提供するのに十分に短い分離距離を有するよう修正できる。装置の実施形態において、微細突起間の尖端分離距離の範囲は、50〜1000μm、たとえば100〜400μm、又は200〜300μmの範囲でありうる。これは、角質層への効率的な貫入と高膨潤性及び高粘弾性を有するポリマー送達の増強との両立の達成を可能にする。
【0036】
本発明のマイクロニードルが、円錐状、棒状及び/又は柱状を含むが、これに限定されない、任意の合理的な形状をとりうることは、当業者には明らかであろう。かかるものとして、マイクロニードルは、先端部で底部と同一の直径を有していてもよく、又は直径が底部から先端部の方向に先細りしてもよい。
【0037】
シートのための化粧用支持材
支持材は、たとえば、マスク、ワイプ、パッチ、及び一般にあらゆるタイプの多孔質基材から選択される。好ましくは、これらの支持材は長円構造を有し、すなわち、それらが定義される平面の寸法より小さい厚さを有する。
【0038】
別の支持材は、たとえばフロックアプリケーター(flocked applicator)であってもよい。このアプリケーターは、たとえば、表面をフロッキングで被覆された、エラストマー又はプラスチックで作られている本体部を含む。
【0039】
支持材は、ディスク、マスク、タオル、グローブ、プレカットロールの形態、又は化粧使用に好適な任意の他の形態にするため、切断されていてもよい。
【0040】
化粧品分野におけるマイクロニードルの使用
マイクロニードルシートは、しわの外観を減少させることにより、皮膚の美的外観を改善するため、高膨潤性及び高粘弾性を有するポリマーを送達するために使用される。
【0041】
マトリックスの量の低下は、皮膚の厚さの減少及び皮膚弾性の劣化をもたらし、しわの形成を引き起こす。
【0042】
皮膚内に位置する遠位端部分は、皮膚内での水の吸収に伴って、更に膨潤し、体積を増加させると考えられる。しわ部位の皮膚表面下でのかかる体積膨張は、しわを皮膚内部から押し、しわをより浅く、幅広くする。
【0043】
特定の実施形態において、本発明のマイクロニードルは、半永久的又は永久的マーキングを皮膚に適用するために使用できる。
【0044】
マイクロニードルの製造方法
マイクロニードルのアレイの形成方法であって、
(a)マイクロニードルのネガに対応するキャビティを有する型を用意する工程と、
(b)高膨潤性及び高粘弾性を有する物質のブレンドを流し込み型内に充填し、遠位端部分を成形する工程と、
(c)室温で数時間乾燥させる工程と、
(d)可溶性物質のブレンドを型に流し込む工程と、
(e)室温で乾燥させる(任意選択で加熱する)工程と、
(f)マイクロニードルを型から外し、シートを所望の形状に切断する工程と
を含む、方法。
【0045】
本発明は、例としてのみ提示される以下の記載を、図面を参照して読むことでより良く理解されるであろう。
【実施例】
【0046】
PEG架橋PMVE/MA、PEG架橋ポリ乳酸、ヒアルロン酸、及び架橋ヒアルロン酸の膨潤性物質を、試験1及び試験2の結果においてスクリーニングし、皮膚内での膨張及び固定のための好適性の指標である膨潤特性及び粘弾性の観点から、マイクロニードルの遠位端部分のための物質を選択した。試験1及び2に基づいて選択された膨潤性物質を、マイクロニードルの試作において使用した。48時間にわたるこれらの試作品の挿入及び皮膚内膨潤を、試験3及び試験4において更に研究した。
【0047】
遠位端部分のための物質選択:インビトロ膨潤特性
試験物質
PEG架橋PMVE/MA:試料F1〜4を、水性ポリマーブレンド[表1]を48時間、室温で乾燥させ、80℃でオーブン内で24時間硬化させ、PEGとPMVE/MA[Gantrez(登録商標)S-97]との間の化学的架橋を誘導することにより調製した。
【0048】
【表1】
【0049】
PEG架橋ポリ乳酸(PEG-PLA)
【0050】
【表2】
【0051】
高分子量ヒアルロン酸及び架橋ヒアルロン酸
【0052】
【表3】
【0053】
試験方法:
試験物質は、質量がW0であり、塩水中で7時間にわたり室温で膨潤させた。一定の間隔で物質を除去し、濾紙で拭き取って過剰な水を取り除いた。これは質量がWtであった。以下の式を使用して膨潤比を算出し、次にグラフにプロットした。
【0054】
【数1】
【0055】
結果
図1は、PEG架橋PMVE/MA(F1〜F4)の膨潤比を示す。F4の膨潤研究を10分後に中断した。なぜなら、F4が膨潤ではなく溶解していたからである。しかしながら、Na2CO3の添加は有意な膨潤の増加をもたらした。F2及びF3は、高い流体吸収能及び膨潤時の良好な機械的強度も有していた。
【0056】
PEG架橋PLAの膨潤特性:
図2は、表2に特定されるPEG架橋PLAの膨潤比を示す。これらの物質の膨潤特性は、以下の順序を示すことが見出された。EDL-60>EL-40>EDL-50>EDL-40。
【0057】
高分子量HA、架橋HA及びPEG架橋PMVE/MA(F2及びF3)の膨潤特性:
図3は、ヒアルロン酸(HA-1〜3)、架橋ヒアルロン酸、及びPEG架橋PMVE/MA(F2及びF3)の膨潤特性を比較する。高分子量HAは、7時間のインキュベーションにわたってより良好な膨潤を示し、HA-3は、高分子量を有する3つのHAのなかで最も迅速な膨潤及び最も高い膨潤比を示した。これらの物質の膨潤特性は、以下の順序を示すことが見出された:架橋HA>F3>HA-3>HA-2>F2>HA-1。
【0058】
結論:
選択された物質の膨潤特性は、以下の順序を示すことが見出された:架橋HA>F3>HA-3>HA-2>F2>HA-1。
【0059】
遠位端部分のための物質選択:インビトロ粘弾性
試験物質
【0060】
【表4】
【0061】
試験方法:
試験物質をストレーナー内に置き、生理食塩水中で室温でインキュベートし、皮膚内での膨潤を模倣した。7時間後、試験物質はストレーナー内で膨潤し、ゲルを形成した。これらのゲルを除去し、濾紙で拭き取って過剰な水を取り除いた。粘弾性を、動的周波数掃引試験において以下の条件下でレオメーターで測定した。
【0062】
幾何学的形状:円錐及び平板の幾何学的形状
【0063】
試験構成:動的周波数掃引試験(ひずみ制御)
【0064】
ひずみ:0.1%
【0065】
温度:32℃
【0066】
初期周波数:0.01Hz
【0067】
最終周波数:10Hz
【0068】
1ディケード当たりの点(Points Per decade):10
【0069】
tan(δ)及びG*を以下の式を使用して算出し、次にグラフにプロットした。
【0070】
【数2】
【0071】
結果:
図4は、レオメーターで測定されたゲルの粘弾性を示す。1未満の値を有するtan(δ)は、粘性特性より弾性の高い振舞いを意味し、物質は一層ゲルのように振る舞う。この物理化学的振舞いは、とりわけ皮膚との接触を最も模倣する0.01〜0.1Hz低周波数の場合、皮膚内での膨張及び固定のための好適性の指標である。したがって、tan(δ)の値によれば、固定のための物質のゲルの振舞いは、以下の順序を示した:HA、F3、F2、HA-3、HA-1及びHA-2。より高いG*は、より高いゲルの硬度を意味し、これは皮膚による圧縮に抗して形状を維持する能力を示す。とりわけ低周波数でのG*の値によれば、物質の硬度は以下の順序を示した:F3、架橋HA、F2、HA-1、HA-3及びHA-2。
【0072】
結論
評価された物質のほとんどは、低いtan(δ)及び高いG*を有し、これは皮膚内での形状維持及び固定のために良好である。最良の3つの物質は、F3、架橋HA、及びF2であることが見出された。膨潤特性は、架橋HA>F3>HA-3>HA-2>F2>HA-1という順序を示したので、膨潤特性及び粘弾性が、マイクロニードルの遠位端部分のための物質を選択するために比較される必要がある。F2、F3、及び架橋HAが、マイクロニードルの遠位端部分のために最良であることが見出された。
【0073】
PEG架橋PMVE/MA(F2/F3)を遠位端部分として有するマイクロニードル(MN)の皮膚内挿入
試験試料:
【0074】
【化1】
【0075】
【表5】
【0076】
試験方法:
マイクロニードルの調製:
マイクロニードル(MN)を、以下の図解による2段階法で、420μmの高さを有するMN-1の型及び280μmの高さを有するMN-2の型を使用して調製した。
【0077】
0.05gのF2又はF3ブレンド[表2]を型内に入れ、ブレンドをスパチュラで広げ、MN穴の全領域を覆った。
【0078】
MN型を遠心分離機にかけて、ブレンドをMN穴内に入れた。
【0079】
MNを放置して室温で乾燥させた。
【0080】
次に、PMVE/MA[Gantrez(登録商標)S-97]を型内に流し込んだ。
【0081】
MN型を遠心し、ブレンドをMN穴内に入れた。
【0082】
次にMNを放置して乾燥させ、オーブン内に80℃で24時間置いた。
【0083】
次に、MNを型から除去し、側壁を温かいメスで切断した。
【0084】
【化2】
【0085】
MNの皮膚内へのエクスビボ貫入
全層の切除ブタ皮膚を、リン酸緩衝生理食塩水で湿らせたティッシュのベッド上に置き、間質液の底流をシミュレートした。皮膚を緊張させ、金属ピンで支持材上に固定し、インビボの状況をシミュレートした。MN試料を親指で30秒間、全層の新生仔ブタ皮膚内に手作業で挿入し、エレベーターを呼ぶボタンを押すときに使用されるのに似た力を適用した。MNを適所に維持するために、透明接着テープを使用した。皮膚内へのMNの貫入深さを評価するために、光干渉断層法(OCT)を使用した。
【0086】
結果
図5は、全層の新生仔ブタ皮膚にわたるMN(MN-1-F2/F3及びMN-2-F2/F3)の貫入深さを示し、表4は、異なるMNの平均挿入深さを示す。観察された貫入のばらつきは、同じMNアレイの異なるMNから観察される異なる貫入率により説明できる。下のOCT画像に示すとおり(図4)、F2及びF3で作られているすべてのニードルが皮膚内への貫入に成功した。MN-1-F2/F3の長さのおよそ74%(約310μm)及びMN-2-F2/F3の長さのおよそ72%(約200μm)が皮膚内に貫入した。
【0087】
【表6】
【0088】
結論
F2及びF3物質を遠位端部分として使用し、可溶性Gantrezを近位端部分として有する、2つの試作品の調製に成功した。OCT画像に示すとおり、両方の試作品が破損することなく、平均でそれらの全長の72〜74%が皮膚内に貫入した。
【0089】
PEG-PMVE/MA(F2/F3)を遠位端部分として有するマイクロニードル(MN)の皮膚内膨潤
試験試料:
【0090】
【表7】
【0091】
マイクロニードルを、8頁の試験3に詳述する手順に従った2段階法で、600μmの高さを有するMNの型を使用して調製した。
【0092】
試験方法:
MNの皮膚内への膨潤
全層の切除ブタ皮膚をゲル創傷ドレッシング上に置き、リン酸緩衝生理食塩水中で24時間予め平衡化し、間質液の底流をシミュレートした。皮膚を緊張させ、金属ピンで支持材上に固定し、インビボの状況をシミュレートした。MNを手作業で皮膚内に挿入した。実験中、インキュベーター内で37℃で構成を維持した。MNの皮膚内への膨潤をモニタリングするためOCTを使用し、MN体積の変化を以下の設定時間に測定した:0、0.5、1、3、6、24及び48時間。
【0093】
結果
600μmの高さを有するMNの型を使用して、寸法に従い、MN-F2及びMN-F3を試作した。図6は、MN-F2及びMN-F3が異なる時間間隔で皮膚内で形状の変化を示し、膨潤したことを示す。MN-F2及びMN-F3の遠位端部分は、少なくとも48時間皮膚を膨張させ、皮膚内に留まり続けることが観察された。
【0094】
図7は、皮膚内で48時間の挿入にわたりMNにより吸収される1cm2当たりの体積をプロットした。異なる時点での単一のMNの平均体積を使用して計算を実施した。MNアレイは0.5×0.5cmの表面を覆い、そこに361個のMNが存在する。皮膚内への挿入の48時間後、1cm2の寸法の表面上のMN-F2及びMN-F3により吸収される流体の体積は、それぞれ21.02±5.29及び23.08±4.65μl/cm2だった。図7に示すとおり、MN-F3により吸収される総体積はMN-F2と比較して異なる時点で大きいことが見出され、両方のMNの遠位端部分の膨潤が皮膚内への挿入直後に始まり、少なくとも48時間持続することを示す。
【0095】
図8に示すとおり、適用後、可溶性近位端部分の溶解により、MN-F2及びMN-F3の遠位端部分を皮膚内に挿入されたまま残された。
【0096】
結論
F2及びF3を遠位端部分として使用して、それらの寸法に従い、MN-F2及びMN-F3を試作した。2つのMNの遠位端部分を、適用後に皮膚内に残すことに成功した。2つのMNの遠位端部分の膨潤は、皮膚内への48時間の挿入中によく観察され、MN-F3はMN-F2よりも良好な膨潤(約5倍の膨潤)を示した。それらの皮膚内での膨張及び固定は、少なくとも48時間持続することが観察された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8