特許第6906886号(P6906886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906886
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】血栓摘出手術用吸引システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20210708BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   A61B17/00
   A61M1/00
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-252225(P2014-252225)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-112497(P2015-112497A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2017年12月12日
【審判番号】不服2019-15375(P2019-15375/J1)
【審判請求日】2019年11月18日
(31)【優先権主張番号】61/916,034
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/550,941
(32)【優先日】2014年11月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514318507
【氏名又は名称】レックス メディカル リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル スティーブン フェルティバーガー
(72)【発明者】
【氏名】マーク−アラン レヴィン
【合議体】
【審判長】 佐々木 一浩
【審判官】 芦原 康裕
【審判官】 栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/022796(WO,A2)
【文献】 特開昭61−168366(JP,A)
【文献】 特開2008−68081(JP,A)
【文献】 実開昭60−135136(JP,U)
【文献】 特開2009−297193(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0065471(US,A1)
【文献】 特開2009−264385(JP,A)
【文献】 特表2010−536439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B17/3207, A61B17/22, A61M1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引システムであって、
モータを有している吸引ポンプを含む電気的サブアッセンブリと、チャンバとを収容するハウジングであって、前記チャンバが前記ハウジング内に吸引された粒子を受入れるように前記ハウジング内に位置決めされているハウジングと、
前記チャンバの外に設けられ該チャンバと流体連通する収集バッグと、
前記チャンバに連結された第1チューブ部分と、前記収集バッグに連結されたバッグチュービングとを備えたチュービングアセンブリであって、該チュービングアセンブリは、前記第1チューブ部分を第2チューブ部分および第3チューブ部分に分枝するコネクタを備え、前記第2チューブ部分は、第1カテーテルと流体連通していて該第1カテーテルを通る粒子を吸引し、前記第3チューブ部分は、第2カテーテルと流体連通していて該第2カテーテルを通る粒子を吸引するチュービングアセンブリと、を備え、
前記ポンプが前記チャンバの外に位置決めされ、前記チャンバが、吸引された粒子を受入れる入力ポートと、吸引された粒子を前記チャンバから前記収集バッグ内に搬送する出口ポートとを有し、前記チャンバへの粒子の搬入およびチャンバからの粒子の搬出ができるように、前記入力ポートは前記第1チューブ部分を接続できるように構成され、前記出力ポートはバッグチュービングを接続できるように構成され、前記ポンプが前記ハウジング内のチャンバに粒子を吸引し吸引された粒子を前記チャンバから前記チュービングアセンブリを通して前記収集バッグに圧送するように電気的に作動させられ、
前記収集バッグは、前記ハウジングのベースの下で実質的に平坦化された状態で輸送および持ち運びされる、
ことを特徴とする吸引システム。
【請求項2】
前記コネクタは、前記第1チューブ部分の入力端に連結されかつ前記第2チューブ部分の出力端および前記第3チューブ部分の出力端に連結されたTコネクタを有している、
請求項1記載の吸引システム。
【請求項3】
コントローラを更に有し、前記収集バッグ内の背圧が所定値を超えると、前記コントローラが信号をポンプに伝送して前記ポンプを停止させる、
請求項1または2に記載の吸引システム。
【請求項4】
前記収集バッグが充満されたことを使用者に表示するインジケータを更に有する、
請求項1〜のいずれか1項に記載の吸引システム。
【請求項5】
非導電性の輸送および持ち運び用タブを更に有し、該輸送および持ち運び用タブは、前記電気的サブアッセンブリの回路を完成して前記ポンプの作動を可能にすべく取外すことができる、
請求項1〜のいずれか1項に記載の吸引システム。
【請求項6】
前記第1チューブ部分の少なくとも実質的部分が、輸送および持ち運び中に前記ハウジングのベースの下に置かれる、
請求項1〜のいずれか1項に記載の吸引システム。
【請求項7】
前記収集バッグは、輸送中または持ち運び中に、前記第1チューブ部分の一部の下に置かれる、
請求項1〜のいずれか1項に記載の吸引システム。
【請求項8】
前記第2チューブ部分に連結された第1弁および前記第3チューブ部分に連結された第2弁を更に有し、前記第1弁および前記第2弁は、流体がそれぞれのチューブ部分を通って流れることができるように選択的に作動できる、
請求項1〜のいずれか1項に記載の吸引システム。
【請求項9】
前記ハウジングと、前記収集バッグと、前記チュービングアセンブリとが使い捨てである、
請求項1〜のいずれか1項に記載の吸引システム。
【請求項10】
前記ハウジングが、頂部分およびベースを備え、
輸送形態で、前記チュービングアセンブリは、巻回形態に巻かれる第1チューブを備え、前記第1チューブの少なくとも実質的部分が前記ベースの下に置かれる、
請求項1〜のいずれか1項に記載の吸引システム。
【請求項11】
前記粒子は、前記モータのピストンの第1の方向への運動によって前記チャンバに吸引され、次いで、前記モータのピストンの反対方向への運動によって前記チャンバから圧送される、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の吸引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2013年12月13日付米国仮特許出願第61/916,034号からの優先権を主張する。この米国仮特許出願の全内容は出典を明示することによって本願の開示の一部とする。
【0002】
本発明は吸引ポンプに関し、より詳しくは、血栓摘出手術または他の血管手術に使用する吸引ポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、移植片または生体血管内の血餅および他の妨害物質を破砕する種々の試みがなされてきた。1つのアプローチは、ウロキナーゼまたはストレプトキナーゼ等の血栓溶解剤を注射することである。しかしながら、これらの試みは高額で、長期の入院措置を必要とし、かつ薬物毒性および血餅が破壊されたときの出血性合併症を引き起こす危険がある。
【0004】
血餅を破砕する他のアプローチとして、機械的血栓摘出デバイスがある。例えば、下記特許文献1には、管腔のサイズおよび形状に一致するように拡大して内腔を押付ける6つの形状記憶ワイヤからなるケージまたはバスケットが開示されている。
【0005】
下記特許文献2(その全体を本願に援用する)には、定常波を発生して血栓を破砕しまたは軟化させるべく回転するワイヤが開示されている。単一ワイヤは移植片との接触が最小でかつ血栓物質を機械的に有効に除去できるため、前記バスケットデバイスよりも侵襲性は小さい。
【0006】
下記特許文献3および4(両方ともその全体を本願に援用する)には、移植片内の血餅を破砕する回転血栓摘出ワイヤの他の例が開示されている。血栓摘出ワイヤはその遠位端が正弦波形状を有しかつ実質的に真直な非定置位置においてシース内に収納されている。シースを後退させると、ワイヤの遠位端部分が露出され、ワイヤをその非直線正弦波形状に戻すことができる。モータを付勢するとワイヤが回転移動されて波型パターンが形成され、血栓が軟化される。
【0007】
神経血管血栓摘出手術では、血栓摘出ワイヤは曲がりくねった血管をナビゲートする必要がある。すなわち、ワイヤは大腿動脈に挿通され、次に、脳の小さい脳動脈に前進されるときに小さく曲がりくねった血管をナビゲートしなければならない。脳内では、頸動脈と椎骨脳底動脈とが出合ってウィリス動脈輪(circle of Willis)を形成している。このウィリス動脈輪から、他の動脈、例えば前大脳動脈、中大脳動脈および後大脳動脈が派生しかつ脳の種々の部分に繋がっている。
【0008】
大腿動脈から脳動脈へのルートの血管のサイズおよび湾曲並びに脳動脈自体のサイズおよび構造のため、アクセスは困難である。血栓摘出デバイスが大き過ぎると、1mmほどの小さい血管を通るナビゲーションは困難になる。また、デバイスの剛性が大き過ぎると、挿入中に血管壁に損傷を与えてしまう。これに対し、デバイスのフレキシビリティが大き過ぎると、血管湾曲部を通って前進させるのに充分な剛性を欠き、血管内につかえてしまう。下記特許文献5、6(これらの全内容は本願に援用する)に開示されたデバイスは、フレキシビリティと剛性との最適バランスがとれた、脳動脈血餅を破砕する血栓摘出デバイスを提供している。したがって、トラッキングガイドワイヤの有効な挿入性を有すると同時に、血管に損傷を与えることなく血餅を有効に軟化させる高速回転を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,766,191号明細書
【特許文献2】米国特許第6,090,118号明細書
【特許文献3】米国特許第7,037,316号明細書
【特許文献4】米国特許第7,819,887号明細書
【特許文献5】米国特許第8,764,779号明細書
【特許文献6】米国特許第8,663,259号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特に神経血管の血栓摘出手術において粒子が軟化された後は、軟化された粒子が下流側に移動しないように確保すべく、粒子を吸引するのが有利である。軟化された粒子が充分に大きい場合には脳卒中のような発作を引き起こすことがあり、ときには死を招くこともある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一態様として、吸引ポンプおよびチャンバを収容するハウジングと、チャンバと流体連通する収集バッグと、チャンバに連結された第1チューブ部分を備えたチュービングアセンブリとを有する吸引システムを有利に提供する。チュービングアセンブリは、第1チューブ部分を第2チューブ部分および第3チューブ部分に分枝するコネクタを備え、第2チューブ部分は第1カテーテルと流体連通して該第1カテーテルを通る粒子を吸引し、第3チューブ部分は第2カテーテルと流体連通して該第2カテーテルを通る粒子を吸引する。
【0012】
或る実施形態では、コネクタは、第1チューブ部分の入力端に連結されかつ第2チューブ部分の出力端および第3チューブ部分の出力端に連結されたT-フィッティングを有している。
【0013】
或る実施形態では、チャンバは、粒子を受入れる入力ポートと、吸引された粒子をチャンバから収集バッグ内に搬送する出口ポートとを有している。
【0014】
或る実施形態では、収集バッグは、ハウジングのベースの下で実質的に平坦化された状態で輸送される。
【0015】
吸引ポンプには、ポンプに電気的に接続されてポンプのオン・オフを行うスイッチを設けることができる。収集バッグが充満されたことを使用者に表示するインジケータを設けることもできる。
【0016】
或る実施形態では、収集バッグ内の背圧が所定値を超えると、コントローラが信号をポンプに伝送してポンプを停止させる。
【0017】
或る実施形態では、非導電性の輸送用タブが、回路を完成してポンプの作動を可能にするように、取外すことができる。
【0018】
或る実施形態では、第1チューブ部分の少なくとも実質的部分が、輸送中にハウジングのベースの下に置かれる。収集バッグは、輸送中に、第1チューブ部分の一部の下に置かれる。
【0019】
或る実施形態では、第1弁が第2チューブ部分に連結されかつ第2弁が第3チューブ部分に連結され、第1弁および第2弁は、流体がそれぞれのチューブ部分を通って流れることができるように選択的に作動できる。
【0020】
本発明の他の態様では、吸引ポンプおよびチャンバを収容するハウジングを有し、該ハウジングが頂部およびベースを備えている吸引システムが提供される。輸送形態では、チュービングアセンブリは、巻回形態に巻かれる第1チューブを備え、第1チューブの少なくとも実質的部分がベースの下に置かれる。収集バッグはハウジングと流体連通し、収集バッグの少なくとも一部が、輸送形態で第1チューブの実質的部分の下に置かれる。
【0021】
或る実施形態では、チュービングアセンブリが第2チューブおよび第3チューブを有し、各チューブは第1チューブと流体連通している。或る実施形態では、第1チューブは、第2チューブおよび第3チューブに別々に連結されるスプリットコネクタを有している。吸引ポンプは更に、第2チューブ部分に連結された第1弁および第3チューブ部分に連結された第2弁を有し、第1弁および第2弁は、それぞれ、流体がそれぞれのチューブ部分を通って流れることができるように選択的に作動できる。吸引システムには更に、ハウジング内に配置される電源パックを設けることができる。
【0022】
或る実施形態では、チャンバが、吸引された粒子を受入れる入力ポートと、吸引された粒子をチャンバから収集バッグ内に搬送する出口ポートとを有している。
【0023】
本発明はまた、他の態様で、ポンプと、該ポンプに給電する電源パックと、身体から吸引した粒子を搬送するチュービングアセンブリと、吸引された粒子を受入れる収集バッグとを有し、ポンプが、チュービングを通して粒子を吸引しかつ吸引された粒子を収集バッグ内にポンピングする構成の使い捨て可能な滅菌吸引キットを提供する。好ましい実施形態では、ポンプおよび電源パックはハウジング内に収容される。或る実施形態では、チュービングはハウジングの下に置かれる。或る実施形態では、ハウジングはチャンバを有し、ポンプは付勢されて、粒子をハウジング内のチャンバ内に吸引しかつ吸引された粒子をチャンバからチュービングアセンブリを通して収集バッグ内にポンピングする。
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の吸引システムを示す斜視図である。
図2A図1の吸引システムが血栓摘出装置に取付けられたところを示す斜視図である。
図2B図2の血栓摘出装置の近位側部分の分解図である。
図2C】イントロデューサカテーテルへのRHVの取付けを示す斜視図である。
図2D】ガイドカテーテルを通して血栓摘出装置のイントロデューサカテーテルをウィリス動脈輪内に挿入することおよびイントロデューサカテーテルへのRHVの挿入および取付けを示す概略図である。
図3図1の吸引システムを示す分解図である。
図4】チュービングを示す斜視図およびポンプ配線およびチュービング連結を示す概略図である。
図5図1の吸引システムを示す平面図である。
図6図1の吸引システムを示す側面図である。
図7図1の吸引システムのチュービングを示す平面図である。
図8】吸引システムの平面図であり、内部コンポーネンツを示すためポンプハウジングの上半部を取外した状態を示すものである。
図9図5の9-9線に沿う吸引システムの断面図である。
図10】シッピングタブの取外しを示す断面図である。
図11図1の吸引システムを図9とは反対側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで図面を詳細に参照すると、幾つかの図面を通して同じコンポーネンツは同じ参照番号で示されている。図1は、本発明の吸引システム10のポンプハウジング11および収集バッグアセンブリ13を示し、これらは明瞭化のため分離されている。吸引システム10は、以下に詳細に説明する血栓摘出装置200のような血栓摘出装置に使用されるように設計されている。吸引システム10はまた、他の血栓摘出デバイス並びに吸引を必要とする他の医療処置と組み合わせた吸引に使用することもできる。
【0027】
最初に図1および図3を参照すると、ポンプハウジング11は、頂ハウジングすなわち頂カバー12およびポンプベース14を有している。ポンプハウジング11内には電気的サブアセンブリ15が収容されており、該サブアセンブリ15は、頂カバー12の開口19を通って突出するオン/オフ電源スイッチ16を有している。ポンプスイッチ16には、該スイッチ16がオンされて手術部位から粒子を吸引すべくポンプが作動していることを表示するランプを設けることができる。可聴インジケータを含む他の形式のインジケータを設けることも考えられる。電気的サブアセンブリ15のコンポーネンツについては、より詳細に後述する。吸引システム10はまた、バッグチュービング80およびポンプチュービング90を備えたチュービングアセンブリ17を有し、バッグチュービング80およびポンプチュービング90については詳細に後述する。吸引システム10の収集バッグアセンブリ13はバッグ21およびバッグチュービング80用コネクタ24を有し、バッグ21は、図1および図3では、膨張していない平らな輸送位置にあるところが示されている。収集バッグ21は、ベース14およびチュービングアセンブリ17の下に配置されて輸送され、輸送および携帯性を容易にするコンパクトなユニットを提供するのが好ましい。収集バッグアセンブリ18は更に、所望の場合に弁を開くことにより収集バッグ21を排気させる1方向ストップコック20を有している。頂カバー12を通して見ることができるLEDインジケータ27は、収集バッグ21が充満されていることを表示する。
【0028】
図1および図5に示すように、頂カバー12は、実質的に真直な側部12a、12bおよび湾曲端部12c、12dを有している。また頂カバー12は、オン・オフスイッチ16用の開口19を有している。該開口19を通って非導電性のプルタブ30が延びており、該プルタブ30は輸送中に回路を遮断して、ポンプ10が不意に作動することを防止する。このことは図9および図10に最も良く示されており、プルタブ30の遠位端30aは、支柱29c、29dの間に配置された導電性プレート29a、29bの間に介在され、近位端30bは開口19を通ってポンプハウジング11の外部に延びていて、使用者がアクセスできるようになっている。ポンプ10を作動させたい場合には、プルタブ30を矢印(図10)の方向に移動させ、両導電性プレート29a、29bを電気的に接触させて、下記の電気回路を完成させる。
【0029】
ベース14は、頂面14aおよび底面14b(図3および図6参照)を有している。底面14bはテーブル上に置かれるように設計されている。ベース14を頂カバー12に取付けるため、円筒状の支柱46を通ってねじ40がねじ込まれる(図面の明瞭化のため、全ての支柱およびねじに参照番号が付されている訳ではない)。より滑らかな表面を形成するため、ねじ頭にはパッド(図示せず)を設けることができる。ベース14はまた、切欠き部14cを有している。
【0030】
図3および図4に最も良く示すように、電気的サブアセンブリ15は、コントローラ53およびモータポンプ54を有している。出力ポート62および入力ポート60がハウジング(チャンバ)55から延びている。ベース14には、1つ以上のバッテリ(例えば12ボルトのバッテリ)を収容した電源パック52が取付けられている。血液および粒子は、ポンプ54により入力ポート60を通ってチャンバ55内に吸引され、かつポンプ54により出力ポート62を通って収集バッグ21内に排出される。
【0031】
ここで図3および図4を参照してチュービングアセンブリ17を説明すると、チュービングアセンブリ17は、バッグチュービング80、ポンプチュービング90およびコネクタチューブ70を有している。バッグチュービング80はチューブ入口端82を有し、該チューブ入口端82は、連結ポート74においてコネクタチューブ70のT-コネクタ71に連結されている。バッグチュービング80のチューブ出口端84は、収集バッグアセンブリ13のコネクタ24(図3)に連結されており、粒子をバッグチュービング80からバッグ21内に搬送する。
【0032】
T−コネクタ71は、コネクタチューブ70の出力端73に連結されている。前述のように、T-コネクタ71のポート74はバッグチュービング80の入口端82を受入れる。T-コネクタ71の他のポート(90°ポート)は、コントローラ53に連結されるコネクタ77を受入れる。この構成により、バッグ21が充満されて背圧がコントローラ53により検出されると、コントローラ53は、ポンプ54を停止させる信号をポンプ54に送る。これにより吸引が終了され、バッグ21はその破裂を招く虞のある過充填が防止される。コネクタチューブ70の反対側端部72はチャンバ(ハウジング)55の出力ポート62に連結されている。この構成により、血液または他の粒子は、チャンバ55から端部72を通ってコネクタチューブ70内に搬送され、連結ポート74を通って入口端82に入り、バッグチュービング80を通って出口端84から出て、コネクタ24および収集バッグ21内に入る。
【0033】
ポンプチュービング90は、長いチューブ105と、コネクタチューブ96と、短いチューブ94とを有している。T-コネクタ92は、長いチューブ105の流体連通を、コネクタチューブ94と短いチューブ96とに分けて、後述のように、一方のチューブがガイドカテーテルに連結されかつ他方のチューブが血栓摘出カテーテルに連結されるようにしている。長いチューブ105の一端は、吸引力を付与するチャンバ55の入力ポート60に連結される。長いチューブ105は、一連の円形隣接巻回として延びている。より詳しくは、T-コネクタ92が、その90°ポートを介して、長いチューブ105の入力端105bを短いチューブ94の出力端94aに連結している。短いチューブ94の反対側の入力端94bは、切換弁97のルア97bに連結され、カテーテルチュービング104の出力端104aが切換弁97の入力端に連結されている。短いチューブ94は、図示のように、S字の一部のような形状をなして延びている。したがって、短いチューブ94は、血栓摘出カテーテルからの粒子および血液がカテーテルのルーメンを通って吸引され、出力端104aを出て弁97のルーメンに入り、弁97を出て短いチューブ94の入力端94bに入り、短いチューブ94の出力端94aを出て長いチューブ105の入力端105bに入り、長いチューブ105の端105aを出てチャンバ(ハウジング)55に入る(端105aはハウジング55の入口ポート60に連結されている)ときに、カテーテルチュービング104を長いチューブ105に流体的に連結する。他の実施形態では、切換弁97は、例えば図2Aに示すように、RHVのサイドポートに直接連結される。
【0034】
T-コネクタ92はまた、その180°ポートで、長いチューブ105をコネクタチューブ96の出力端96aに連結している。コネクタチューブ96の反対側端部96bは、切換弁101のルア99b内に延びている。短いチューブ96は、約270°の円弧に亘って円形態様で延びている。弁101の入力端のチュービング98は、ガイドカテーテルに連結される。したがって、粒子および血液は、ガイドカテーテルのルーメンを通ってカテーテルチュービング98内に吸引され、更に切換弁101のルーメンを通って該切換弁の反対側端部を出て、短いチューブ96の入力端96b内に入り、該短いチューブ96の出力端96aを出て長いチューブ105入力端105b内に入り、更に、長いチューブ105を通って該チューブの端部105aを出て、入力ポート60およびチャンバ(ハウジング)55内に入る。他の実施形態では、切換弁101は、例えば図2Aに示すように、RHVのサイドポートに直接連結することができる。
【0035】
後述するように、切換弁97は血栓摘出カテーテルを通して吸引するように選択的に作動でき、また後述するように、切換弁101もガイドカテーテルを通して吸引するように選択的に作動できる。一実施形態では、各切換弁97、101はそれぞれスライダ機構97a、101aを有し(図7参照)、該スライダ機構97a、101aは、一方向にスライドしたときはそれぞれのチューブ(該チューブは、流体/粒子の流れのための切換弁内のルーメンを形成する)をクランプして流れを遮断し、他方向にスライドしたときはチューブのクランプを解除して吸引できるようにする。図7には、両スライダ機構97a、101aが開位置にあるところが示されている。矢印の方向に移動すると、両スライダ機構は閉位置に移動して流れを遮断する。流れを開閉する他の形式の弁および機構を考えることもできる。ルアロック97b、99bは、チューブ94、96をそれぞれの弁97、101に連結する。
【0036】
図4の図式は、コンポーネンツの電気的接続を示している。スイッチ16は、ワイヤ64aを介して電源パック52の正極ターミナルに接続されている。ワイヤ64aは接続部64bで分岐しており、ワイヤ64cが電源パック52をLEDインジケータ27に接続している。LEDインジケータ27は、ワイヤ64jを介してコントローラ54に接続されている。スイッチ16をオンにしたときに入力信号をコントローラ53に伝達するワイヤ64dを介して、スイッチ16もコントローラ53に接続されている。電源パック52の負極は、ワイヤ64fを介して導電性プレート29aに接続されている。対向する導電性プレート29bは、ワイヤ64gを介してコントローラ53に接続されている。コントローラ53およびポンプ54は、ワイヤ64hを介して接続されている。前述のように、両導電性プレート29a、29bの間には、回路を遮断する非導電性タブ30が介在されている。
【0037】
収集バッグ18が充満されると、これはコントローラ53により検出され、ポンプ54が自動的に停止される。より詳しくは、コントローラ53が収集バッグ21内の背圧を測定する。バッグ21の充満度が高くなると、バッグが膨張されなくなるので測定がより困難になる。背圧が所定値まで上昇すると、コントローラ53は信号をポンプ54に伝達してポンプ54を停止させる。このようにして、収集バッグ21の過大膨張および破裂が防止される。
【0038】
一実施形態でのポンプ54は、モータにより作動されるピストンを有している。ピストンが第1方向、例えばチャンバ55に対して外方に移動されると、血液および粒子がポンプチュービング90(図3)を通って吸引され、ピストンが逆方向、例えばチャンバ55内に移動されると、血液および粒子がチャンバ55からバッグチュービング80および収集バッグ21内にポンピングされる。
【0039】
本発明の吸引システムは、ポータブルキットとして提供できる。この態様では、全アセンブリ(ポンプハウジング、チュービングおよび収集バッグ)は滅菌パッケージとして提供される。また、或る実施形態では、全アセンブリ(ポンプハウジング、チュービングおよび収集バッグ)を使い捨て可能にすることができる。
【0040】
本発明のポンプは、血液および/または粒子を吸引する種々のデバイスと組み合わせて使用できる。例えば、本発明のポンプを、特許文献5に開示された血栓摘出装置と組み合わせた場合について説明する。特許文献5のデバイスの詳細は、全体を本願に援用する該特許文献5から理解されよう。血栓摘出装置は図2Aおよび図2Bに示されておりかつその全体が参照番号200で示されている。血栓摘出装置200は、モータハウジング212、回転血栓摘出ワイヤ230、回転止血弁(rotating hemostatic valve:RHV)240、イントロデューサシース260およびテレスコーピングチューブすなわち管状コネクタ280を有している。RHV240はイントロデューサカテーテル300に連結でき、イントロデューサカテーテル300については、その使用方法に関連して後述する(例えば図2C参照)。イントロデューサシース260はRHV240内に挿入でき、RHV240およびイントロデューサカテーテル300を通して血栓摘出ワイヤ230の挿入を行う。
【0041】
血栓摘出装置すなわち血栓摘出アセンブリ200は、カテーテルとは別体のユニットとして回転血栓摘出ワイヤを提供する。すなわち、血栓摘出ワイヤ230は、RHV240を通して挿入可能な別体ユニットとして提供される。RHV240は、手術部位にアクセスできるようにイントロデューサカテーテル300の近位端に連結できる遠位端252を有している(図2C参照)。イントロデューサシース260は、イントロデューサカテーテル300を通してRHV240内に血栓摘出ワイヤ230をRHV240内に挿入することを補助し、イントロデューサシース260の壁は、血栓摘出ワイヤ230がRHV240に入るときに、ワイヤ230の非直線状の遠位端を実質的に真直な(実質的に直線状の)形状に維持する。
【0042】
また、本発明の血栓摘出ワイヤ230は、所望ならば、モータに連結する前に、イントロデューサシース260およびイントロデューサカテーテル300内でスライドさせることができる。これにより、ワイヤ30の導入および操作が補助される。なぜならば、このことが煩わしいものではなくかつワイヤ230の操作中にモータハウジングを取付ける場合よりも軽量だからである。しかしながら、ワイヤ230をイントロデューサシース260、RHV240およびイントロデューサカテーテル300に挿入する前に、ワイヤ230をモータハウジング212に取付けることを考えることもでき、これにより、ワイヤ230は、モータハウジング212が取付けられた状態で、イントロデューサシース260(イントロデューサカテーテル300)内でスライドすることが可能になる。したがって、手術前または手術中の所望の時点でモータハウジング212をワイヤ230に取付けることが可能になる。
【0043】
モータハウジング212(これはハンドル部分をも形成する)は、モータ214およびモータから延びた駆動軸215を収容する。任意であるが、モータ252の回転速度を15000rpmから例えば1500rpm、750rpm、150rpmに減速させるギア減速機(図示せず)を設けることもできる。ハウジング212内には、モータ214に給電する1つ以上のバッテリ(例えば3ボルトバッテリ)が配置される。モータ駆動軸215は、その端部215aが例えばスナップフィットのような種々のカップリングにより血栓摘出ワイヤ230の近位端に連結される。このスナップフィットでは、ワイヤ30の近位端のキャップ231が、モータ駆動軸15上に摩擦嵌合される。磁気カプラのような他の種々の形式の連結を考えることもできる。ハウジング230には、参照番号218で示す印刷回路基板を設けることもできる。
【0044】
ハウジング半部213aおよび対応するハウジング半部213bの凹部221を通ってスイッチ219が延びている。任意であるが、モータにはポテンショメータ(図示せず)を接続して、モータ速度を上昇および下降するダイアリングを可能にし、血栓摘出ワイヤ230の回転速度を調節しかつ種々の処置および/または血餅の位置およびサイズを調節することができる。好ましい実施形態では、ポテンショメータは、第3ターミナルに接続しないことにより、2ターミナル可変レジスタすなわちレオスタットとして使用される。この態様では、初期位置においてモータ速度は所望の最小回転にあり、ノブの回転(または他の実施形態ではノブのスライディング)によりモータ速度を徐々に増大させる。かくして、ハウジング212から突出しているオン・オフスイッチ219は、モータ215を回転させて装置を付勢(すなわちワイヤ230を回転)させるように、モータ215に電気的に接続されている。
【0045】
図2図4に示された他のコンポーネンツについて説明すると、前述のように、回転止血弁240またはハウジングはイントロデューサカテーテル300に連結できる(図2C参照)。慣用のイントロデューサカテーテルを使用できるし、本発明の装置用に特殊設計されたカテーテルを使用することもできる。標準的なことであるが、RHV240は、サイドアーム256の方向を変えるためカテーテル300に対して回転できる。
【0046】
サイドアーム256はRHV240の管状部分246から延びておりかつ後述のように流体を導入しおよび/または真空を付与するためのポート257を有している。RHV240の遠位端255にはルアロックが設けられており、回転ノブ252の雌ねじをイントロデューサカテーテル300の近位側雄ねじにねじ込むことにより、RHVがイントロデューサカテーテル300に連結される。取付けられると、チューブ延長部248がイントロデューサカテーテル300のルーメン内に嵌合される。
【0047】
RHV240の管状部分246は、イントロデューサシース260の管状部分262をスライド可能に受入れるルーメンを有している。近位端254の近位側キャップ258は、該キャップ258をRHV240に取付けるべく、RHV240の近位側雄ねじ247に係合させる雌ねじを有している。かくして、キャップ258を回転させてRHV240に緊締させると、キャップ258は、イントロデューサシース260を通って延びているイントロデューサシース260の管状部分262に対してリングを押付ける。近位側シールを設けることもできる。
【0048】
RHV240のサイドアーム256は、管状部分46のルーメンと流体連通するルーメンを有している。造影染料のような流体がアーム256を通って注入され、ルーメン(すなわち管状部分246のルーメンの内壁とイントロデューサシース260の外壁との間の空間)を通り、次に、血栓摘出ワイヤ230とイントロデューサカテーテル300との間の空間を通って流れ、イントロデューサカテーテル300の遠位側開口303(図2D)から出て血管内に流入する。この造影染料は、流体の流れが血管内に再流入したことを表示するのに使用される。
【0049】
サイドアーム256は、回転ワイヤ230により血管から離脱された粒子を吸引する真空にも使用される。吸引された粒子は、イントロデューサカテーテル300の遠位側開口303(図2D)内に流入し、ワイヤ230とイントロデューサカテーテル300との間の空間を通り、続いて管状部分246のルーメン255を通り、次に出口257から出てシステム10のカテーテルチュービング104に流入し、長いチューブ105を通ってチャンバ55内に入り、チューブ70、80を通って収集バッグ18内に排出される。
【0050】
使用方法に関連して後述するガイドカテーテル150にも流体注入用サイドアーム152を設けることができることは理解されよう(図2D参照)。サイドアーム152は、システム10による吸引にも使用できる。或いは、図2Aに示すように、サイドアーム172を備えたRHV170を、サイドアームを備えていないガイドカテーテル150に使用することもできる。ポンプを作動させると、粒子が、イントロデューサカテーテル300とガイドカテーテル150との間の空間を通ってチュービング98および長いチューブ105内に吸引されてチャンバ55内に入り、更に該チャンバ55からチューブ70、80を通って収集バッグ18に入る。
【0051】
他の実施形態では、RHVがサイドアームを備えていない。この実施形態では、サイドアームを備えたガイドカテーテルが、注入および吸引に使用される。しかしながら、サイドアームを備えたガイドカテーテルは、サイドアームを備えたRHVと組合せて使用することもでき、これにより、吸引は、RHVおよびニューロ・カテーテルおよび/またはガイドカテーテルを介して行うことができる。これは図2Dに示されている。
【0052】
前述のように、イントロデューサシース260の管状部分262はRHV240のルーメンを通って延びかつRHV240内またはイントロデューサカテーテル300のルーメンの近位側部分に終端している。管状部分262は、ワイヤ230をRHV240内に挿通し、次にイントロデューサカテーテル300のルーメンを通して手術部位まで導く間に真直状態に維持するため、血栓摘出ワイヤ230の剛性より大きい剛性を有することが好ましい。
【0053】
イントロデューサシース260の近位端は、コネクタチューブ280に取付けられる。拡大された近位端265にはねじフランジを設け、管状コネクタ280の雌ねじとねじ係合できるようにするのが好ましい。流体の漏洩をシールしてサイドアーム256を通る真空性を向上させるため、イントロデューサシース260の近位端265に弁を設ける代わりにまたは設けることに加え、コネクタチューブ280の遠位端282内に弁を設けることができる。
【0054】
別の構成として、チューブ280およびイントロデューサシース260は、一体に取付けられかつ取付けユニットとして血栓摘出ワイヤ230上に配置された一ユニットとして提供できることに留意されたい。しかしながら、他の実施形態では、ワイヤ230は、イントロデューサシース260に挿通されかつイントロデューサカテーテル300を介して手術部位で操作される。ひとたび配置されたならば、前述のように、コネクタチューブ280次に遠位端282でイントロデューサシース260にねじ係合されかつ近位端284でモータハウジング212に取付けられる。この態様では、コネクタチューブ280は、ワイヤ230をイントロデューサシース260に挿通する前または挿通後に、ワイヤ230上に配置できる。ワイヤ230は、シースと一緒にパッケージングされるか、シース260およびチューブ280とは別にパッケージングされる。
【0055】
コネクタチューブ280の近位端284は、モータハウジング212に取付けるように構成されている。コネクタチューブ280の内溝内には、スナップフィットを行うためのリングが座合されている。前述のように、ワイヤ230の近位端は、モータ214の駆動軸215に取付けられる。一実施形態では、ワイヤ230の端キャップ231は、モータ駆動軸215の開口215a内にスナップフィットされる。ワイヤ230をモータ駆動軸215に取付ける他の方法も考えられ、例えばバヨネットマウント、またはワイヤ230に磁石を取付け、モータハウジングに取付けられた磁石と協働させるマグネチックカプラにすることもできる。
【0056】
理解されようが、着脱可能なモータハウジング212にすることにより、異なるモータ速度および/または異なるバッテリを備えた他のハンドルをワイヤ230に取付けて使用できる。この着脱は、同じ手術中でも行うことができる。
【0057】
或る実施形態では、ハウジングは、バッテリの充電後または交換後に取外し、殺菌しおよび再使用できる。
【0058】
或る実施形態では、ワイヤ230をモータ駆動軸に直接連結する代わりに、手術部位への挿入後または挿入前に、ワイヤ230の近位端を、ギア減速機に連結されたカプラチューブに取付けることができる。この連結は、摩擦嵌め、マグネチックカップリングまたはツイスト連結(例えばバヨネット連結)により行うことができる。
【0059】
ワイヤ230は、長手方向軸線に対して傾斜した遠位側コイル状チップを有している。図2Aには、正弦波形状を有するワイヤ230が示されている。他の実施形態では、ワイヤは、回転時に定常波を創成するJチップを形成している。Jチップ形状では、ワイヤが充分な速度でモータにより回転されるときの角度により、少なくとも1つの振動モードが形成される。この定常波の創成の詳細は、特許文献2(該特許文献2の全内容は本願に援用する)に説明されている。
【0060】
ワイヤ230は、サイン曲線に似た実質的な正弦波形状を形成している。より詳しくは、ワイヤ230は、近位側領域から中間領域を経て遠位側領域に至る長さの大部分に亘って延びている実質的に直線状の部分を有している。遠位側領域236では、ワイヤ230は正弦波形状を有し、図示のように、第1方向(図2Aの方向で見て上方)を向いた第1弧状領域233と、該第1弧状領域233から長手方向に間隔を隔てておりかつ反対の第2方向(図2Aの方向で見て下方)を向いた第2弧状領域235とを有している。これらの弧状領域233、235は、ワイヤ230が回転するときに血管構造と接触する「ピーク」を形成している。ワイヤ230のこの傾斜した(非直線状の)遠位側部分には、コイルの隙間を塞ぐカバー材料を備えたコイル状部分を設けることができる。好ましい実施形態では、近位側(領域233)の波の振幅は遠位側(領域235)の波の振幅より小さく、カテーテルの出入り運動を容易にすることに留意されたい。
【0061】
ワイヤ230がイントロデューサカテーテル300内に完全に後退されると、ワイヤ230の湾曲領域230が圧縮され、これにより、遠位側領域は、実質的に真直形状すなわち実質的に直線状の非定置形状をなして収容される。RHV240に取付けられたイントロデューサカテーテル300が近位側への軸線方向移動により後退されるか、ワイヤ230がイントロデューサカテーテル300に対して前進されるか、またはワイヤ230およびカテーテル300の両方がそれぞれ遠位側方向および近位側方向に移動されると、ワイヤ230が露出されて、ワイヤ230がその実質的に非直線状の正弦波形状に戻り、血管の管腔内で長手方向軸線回りを回転できるようになる。
【0062】
かくして、理解されようが、ワイヤ230は、近位端がRHV240の遠位端に取付けられたイントロデューサカテーテル300内で前進される。所望部位で、ワイヤ230およびイントロデューサカテーテル300が相対移動されてワイヤ230を露出させ、その非直線形状にして、血管壁上の血栓物質を破砕する動力回転運動が行われる。Jチップワイヤが使用されるときは、ワイヤは、イントロデューサカテーテル300内で回転され、方向変更される。
【0063】
任意であるが、イントロデューサシース300のフレキシブルな管状部分262には、その壁内に1つ以上の編組ワイヤを埋入して剛性を高めることができる。このような編組ワイヤはシース300の長手方向に配向するのが好ましい。
【0064】
形状記憶材料からなるコイル状チップの一実施形態では、記憶される形状は、図2Aに示すように正弦波状またはS字状である。イントロデューサカテーテル300内のワイヤの状態は実質的に直線状である。この状態は、ワイヤを手術部位に定置するのに使用される。ワイヤがより温かい体温に露出されると、チップはオーステナイト状態に変態し、記憶されたS字形状になる。或いは、ワイヤのコイル状チップをイントロデューサカテーテルの壁内で圧縮し、チップが解放されたときに、記憶された非直線状の形状になるようにする。或いは、コイル状チップを、予めS字状に形成された放射線不透過性コイル状ポリマーで作ることができる。
【0065】
ワイヤ230の詳細は、以前に本願に援用した特許文献5に開示されている。
血栓摘出装置10の使用方法について以下に説明する。使用方法は、正弦波状チップを備えたワイヤを有する図2Aの実施形態について説明するが、他のワイヤを同様な態様で使用できることは理解されよう。
【0066】
アクセスシース(図示せず)が血管内に挿入され、次に、例えば直径0.035インチまたは0.038インチのガイドワイヤおよびガイドカテーテル150´がシースに挿通されかつ血管構造を通して前進される。図2Dの実施形態では、ガイドカテーテル150´は吸引用のサイドアーム152を有しているが、サイドアームを備えていないガイドカテーテルを、図2Aの実施形態のような吸引用サイドアームを備えたRHVと組み合わせて使用することもできる。
【0067】
ガイドワイヤが取出され、例えば0.014インチの直径を有するより小径のガイドワイヤおよびイントロデューサカテーテル300が、ガイドカテーテル150´に挿通されかつ大腿動脈F内でガイドワイヤGによりシースにアクセスし、画像を介して配置される。イントロデューサカテーテル300は、脳動脈の血管系Aを通して(例えばウィリス動脈輪を通して)所望部位まで前進される(図2D参照)。ひとたび所望部位に到達すると、ガイドワイヤが引出される。イントロデューサカテーテル300は、取付けられたRHV240により挿入されるのが好ましいことに留意されたい。すなわち、RHV240の管状部分246は、イントロデューサカテーテルに挿通されかつキャップ251を回転することによりイントロデューサカテーテルに取付けられる。
【0068】
他の実施形態では、イントロデューサカテーテル300をガイドカテーテルに挿通する前にRHV240を取付ける代わりに、カテーテル300をガイドカテーテルに導入後にRHV240を取付けることができることに留意されたい。
【0069】
イントロデューサシース260は、図2Cに示すように、RHV240に挿通されかつキャップ258を回転することによりRHV240に取付けられる。血栓摘出ワイヤ230は、イントロデューサシース260のルーメンおよびRHV240のルーメンを通してイントロデューサカテーテル300のルーメン内に挿入される。イントロデューサカテーテル300は、図2Dに示すようにガイドカテーテル150´から延びているが、ワイヤ230はイントロデューサカテーテル300内に留まっている。次に、ワイヤ230とイントロデューサシース300とを相対移動させることにより、ワイヤ230の遠位端が目標手術部位においてイントロデューサカテーテル300から露出される。ワイヤ230は、この時点でモータ駆動軸215に取付けられるか、ワイヤが露出される前に取付けられるか、手術中の他の時点、例えばワイヤ230をイントロデューサシース260に挿通する前にモータ駆動軸215に取付けられる。この取付けは、コネクタチューブ280をイントロデューサシース260に連結することにより、およびコネクタ280の近位端をモータハウジング212に連結することにより達成される。ワイヤ230は、コネクタチューブおよびコネクタ280を通ってモータ駆動軸215まで延びている。或いは前述のように、コネクタチューブ280はモータハウジング212に取付ける前にイントロデューサシース260に連結でき、或いはワイヤ230が手術部位に到達しかつイントロデューサシースから露出された後に連結できる。
【0070】
ワイヤ230がイントロデューサカテーテル300から露出されたならば、ハウジング122上のスイッチ219が作動され、これによりワイヤ230がその長手方向軸線の回りで回転され、血栓を破砕および軟化させる。
【0071】
軟化された粒子を吸引するため、ポンプ54のスイッチ16を入れる。これにより、軟化された粒子が、ワイヤ230とイントロデューサカテーテル300との間の空間およびRHV240内を移動して、RHV240を通って吸引される。より大きい粒子は、ガイドカテーテル150(または150´)とイントロデューサカテーテル300との間の空間を通って吸引される。吸引された粒子は、それぞれのRHVのサイドポートを通ってそれぞれのチュービングおよびチャンバ55内に移動する。ポンプ54は、前述のように、吸引された粒子をチャンバ55からバッグチュービング80を通って収集バッグ21内にポンピングする。イントロデューサカテーテル300には、任意であるがサイドポート(単一または複数)を設けることができ、および/またはガイドカテーテル150には、任意であるが、RHVのサイドアームの代わりにまたは該サイドアームに加えて、小さい軟化粒子を吸引するためのサイドポート152のようなサイドポート(単一または複数)を設けることができる。
【0072】
任意であるが、デリバリ(アクセス)シースまたはデリバリカテーテルには、血流を閉塞し、閉塞された空間内での吸引を可能にするバルーン(図示せず)を設けることができる。
【0073】
上記説明は多くの特定構成を含んでいるが、これらの特定構造は開示の範囲を限定するものではなく、好ましい実施形態の単なる例示である。当業者ならば、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲および精神に含まれる他の多くの可能な変更を考えることができるであろう。
【符号の説明】
【0074】
10 吸引システム
11 ポンプハウジング
13 収集バッグアセンブリ
17 チュービングアセンブリ
52 電源パック
53 コントローラ
54 ポンプ
55 チャンバ(ハウジング)
150 ガイドカテーテル
200 血栓摘出装置(血栓摘出アセンブリ)
214 モータ
230 回転血栓摘出ワイヤ
240 RHV(回転止血弁)
300 イントロデューサカテーテル
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11