特許第6906913号(P6906913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6906913車両用の電源装置とこの電源装置を搭載してなる電動車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906913
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】車両用の電源装置とこの電源装置を搭載してなる電動車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/209 20210101AFI20210708BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20210708BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20210708BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20210708BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01M50/209
   H01M50/224
   H01M50/249
   B60K1/04 Z
   B62D25/20 E
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-167393(P2016-167393)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-37173(P2018-37173A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 渉
(72)【発明者】
【氏名】阿部 剛頌
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雄佑
(72)【発明者】
【氏名】植田 義明
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−172938(JP,A)
【文献】 特開2005−222701(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/100072(WO,A1)
【文献】 特開2013−193686(JP,A)
【文献】 特表2016−533009(JP,A)
【文献】 特開2008−166196(JP,A)
【文献】 特開2006−040547(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/179917(WO,A1)
【文献】 特開2009−016076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/209
H01M 50/224
H01M 50/249
B60K 1/04
B60R 16/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側の側板が車両の幅方向に伸びる姿勢で車両に固定され、車両の固定部を車両の幅方向に離して複数カ所に設けている外装ケースと、この外装ケースに収納される複数の電池セルと、を備える車両用の電源装置であって、
前記側板は、金属板からなるとともに、
前記固定部として上端の両端部に設けられ、前記外装ケースの外側に突出する複数の折曲片と、
幅方向に離して設けられる複数の除肉開口部と、を有しており、
前記複数の除肉開口部は、幅方向において前記複数の折曲部と対応する領域に設けられる第1の除肉開口部と、幅方向において隣接する折曲部の間の領域に設けられる第2の除肉開口部とを含んでおり、
前記折曲片に近い位置となる前記第1の除肉開口部の開口面積を、前記折曲片から離れた位置となる前記第2の除肉開口部の開口面積よりも大きくしてなることを特徴とする車両用の電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載される車両用の電源装置であって、
前記側板が、車両の幅方向に細長い形状で、
前記外装ケースの内部に、複数の電池セルを積層してなる電池積層体の両端にエンドプレートを配置してなる電池ブロックを収納しており、
前記電池ブロックは、前記電池セルの積層方向を前記側板の長手方向とする姿勢で前記外装ケースに収納され、
前記側板は、互いに接近する出隅と入り隅となるようにZ字状に折曲加工された一対の変形ラインを有しており、前記エンドプレートの近傍に前記変形ラインを設けてなることを特徴とする車両用の電源装置。
【請求項3】
請求項に記載される車両用の電源装置であって、
前記外装ケース内に、前記側板の長手方向に並べて2組の電池ブロックが配置され、
前記変形ラインが、2組の電池ブロックの中央部に配置してなる前記エンドプレートの近傍に配置されてなることを特徴する車両用の電源装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載される車両用の電源装置であって、
前記外装ケースが、底面の中央部に車両の長手方向に伸びる横溝部を有し、この横溝部を設けてなる中央部に浅い収納部を設けて、浅い収納部の両側に深い収納部を設けており、
前記電池ブロックが前記深い収納部に配置されてなることを特徴とする車両用の電源装置。
【請求項5】
請求項に記載される車両用の電源装置であって、
前記変形ラインが、前記深い収納部の両側に配置してなる前記側板の前記浅い収納部側に配置されてなることを特徴とする車両用の電源装置。
【請求項6】
車両の走行モータに電力を供給する電源装置を搭載する電動車両であって、
前記電源装置が、両側の側板が車両の幅方向に伸びる姿勢で車両に固定され、車両の固定部を車両の幅方向に離して複数カ所に設けている外装ケースと、この外装ケースに収納される複数の電池セルと、を備え、
前記側板は、金属板からなるとともに、
前記固定部として上端の両端部に設けられ、前記外装ケースの外側に突出する複数の折曲片と、
幅方向に離して設けられる複数の除肉開口部と、を有しており、
前記複数の除肉開口部は、幅方向において前記複数の折曲部と対応する領域に設けられる第1の除肉開口部と、幅方向において隣接する折曲部の間の領域に設けられる第2の除肉開口部とを含んでおり、
前記折曲片に近い位置となる前記第1の除肉開口部の開口面積を、前記折曲片から離れた位置となる前記第2の除肉開口部の開口面積よりも大きくしてなることを特徴とする電動車両。
【請求項7】
請求項に記載される電動車両であって、
前記電源装置の外装ケースがシートの下方に固定されてなることを特徴とする電動車両。
【請求項8】
請求項又はに記載される電動車両であって、
前記外装ケースの固定部が、車両の幅方向に伸びるクロスメンバーに固定されてなることを特徴とする電動車両。
【請求項9】
請求項ないしのいずれかに記載される電動車両であって、
前記側板が、車両の幅方向に細長い形状で、
前記外装ケースの内部に、複数の電池セルを積層してなる電池積層体の両端にエンドプレートを配置してなる電池ブロックを収納しており、
前記電池ブロックは、前記電池セルを積層方向を前記側板の長手方向とする姿勢で前記外装ケースに収納され、
前記側板は、互いに接近する出隅と入り隅となるようにZ字状に折曲加工された一対の変形ラインを有しており、前記エンドプレートの近傍に前記変形ラインを設けてなることを特徴とする電動車両。
【請求項10】
請求項に記載される電動車両であって、
前記外装ケース内に、前記側板の長手方向に並べて2組の電池ブロックが配置され、
前記変形ラインが、2組の電池ブロックの中央部に配置してなる前記エンドプレートの近傍に配置されてなることを特徴する電動車両。
【請求項11】
請求項9又は10のいずれかに記載される電動車両であって、
前記外装ケースが、底面の中央部に車両の長手方向に伸びる横溝部を有し、この横溝部を設けてなる中央部に浅い収納部を、浅い収納部の両側に深い収納部を設けており、
前記電池ブロックが前記深い収納部に配置されてなることを特徴とする電動車両。
【請求項12】
請求項11に記載される電動車両であって、
前記変形ラインが、前記深い収納部の両側に配置してなる前記側板の浅い収納部側に配置されてなることを特徴とする車両用の電源装置。
【請求項13】
請求項に記載される電動車両であって、
前記クロスメンバーが車両の幅方向に2列に配置され、
2列のクロスメンバーの間に前記外装ケースを配置してなることを特徴とする電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドカーや電気自動車等の電動車両に搭載されて走行モータを駆動する電源装置と、この電源装置を搭載してなる電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電源装置は、衝突などの事故で車両が損傷される状態においても高い安全性が要求される。車両用の電源装置は、充放電の容量と出力を大きくしているので、外装ケースの内容積を大きくして多量の電池を収納している。大容積の電源装置は、外装ケースを細長い形状とし、車両の幅方向に延びる姿勢でシート下にできるスペースに収納できる。この位置に搭載される電源装置は、側面衝突、すなわち車両が側突する状態で、電池を保護する構造が要求される。電池の損傷が、熱暴走やショートの原因となって安全性を低下させるからである。
車両の側面衝突で電池を保護する技術は開発されている。(特許文献1〜3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−125097号公報
【特許文献2】特開2014−80117号公報
【特許文献3】特開2013−67334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の側突で電源装置を保護する従来の構造は、車両側の構造を改善して、側突時に電源装置の損傷を少なくする構造としている。この構造は、側突時に電源装置と異なる部分を変形させて電源装置の損傷を防止し、あるいは、側突時に電源装置を車両から切り離して電源装置の損傷を防止する。この構造は、車両側で車体構造を変更する必要があり、シャーシー設計を変更する必要があって極めてハイコストになる欠点がある。また、ハイブリッドカーではない、エンジンのみで走行する通常の車種にモータと電源装置を搭載してハイブリッドカーとした多数の車種のものが販売されているが、シャーシー設計から変更して側突から電池を保護する構造では、通常の車種にモータと電源装置を搭載してハイブリッドカーとすることができず、種々の車種をハイブリッドカーや電動車両にできない欠点がある。また、側突時に車両の損傷が大きいと、電源装置の近傍が損傷を受け、さらに車両から分離された電源装置が損傷されるのを回避できず、この状態で電池を安全に保護できない欠点がある。さらにまた、側突時に側突部分を特定して、電源装置近傍の損傷を防止する構造は、電池を保護しながら、全体を軽量化するのが難しく、重量が増加して車両の燃費が低下することがある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、車両の重量を増加することなく、側突時における電池の損傷を防止して高い安全性を実現できる車両用の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の車両用の電源装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。車両用の電源装置は、両側の側板21が車両の幅方向に伸びる姿勢で車両に固定される外装ケース2と、この外装ケース2に収納してなる複数の電池セル1とを備える。外装ケース2は、車両の固定部20を車両の幅方向に離して複数カ所に設けており、側板21は、複数の肉開口部4を幅方向に離して設けており、固定部20に近い肉開口部4の開口面積を、固定部20から離れた肉開口部4の開口面積よりも大きくしている。
【0007】
以上の電源装置は、外装ケースの重量を増加することなく、あるいは重量の増加を最小限に制限しながら、側突時における電池の損傷を防止して高い安全性を実現できる特徴がある。それは、以上の電源装置が、外装ケースの側板に設けている肉開口部の開口面積を、側突で変形し難い固定部側では大きく、側突で変形しやすい固定部から離れた部分では開口面積を小さくして変形し難くしているからである。とくに、以上の電源装置は、固
定部の近くであって側突で変形し難い部分の肉開口部を大きく、固定部から離れて側突で変形しやすい部分の肉開口部を小さくして、この部分が局部的に大きく変形するのを防止するので、肉開口部の開口面積比を、外装ケース全体の強度や側板等の強度、さらに肉開口部の形状や大きさなどを考慮して最適値に調整することで、側突時に側板が局部的に大きく変形するのを防止できる。外装ケースに内蔵している電池は、側板の最も大きく変形する部位で著しく損傷されるが、以上の電源装置は、肉開口部を設けながら、側板の変形が局部的に集約して大きくなることがなく、側突時における外装ケースの最大変形量を小さくして、内蔵電池の損傷を安全に保護できる特徴がある。
【0008】
ちなみに、本発明者の実験では、側板の固定部に2個、固定部から離れた部分に1個の肉開口部を、側板の長手方向に等間隔に並べて設ける比較例の電源装置に比較して、以上の電源装置では、側板の固定部には2個の肉開口部の開口面積に匹敵する大きな肉開口部を設け、固定部から離れた部分の肉開口部を約1/2と小さくすることで、同じ側突において最大変形を1/3以下に減少することに成功した。
【0009】
また、本発明の車両用の電源装置は、外装ケース2の平面形状を車両の幅方向に細長い長方形として、外装ケース2が、長手方向の両端部に固定部20を設けて、側板21が両端部と中間部とに肉開口部4を設けて、側板21の両端部に設けた肉開口部4を中間部に設けた肉開口部4よりも開口面積を大きくすることができる。
【0010】
また、本発明の車両用の電源装置は、側板21を、車両の幅方向に細長い形状とし、外装ケース2の内部に、複数の電池セル1を積層してなる電池積層体6の両端にエンドプレート7を配置してなる電池ブロック3を収納して、電池ブロック3は、電池セル1の積層方向を側板21の長手方向とする姿勢で外装ケース2に収納し、側板21が、エンドプレート7の近傍に変形ライン5を備えることができる。
【0011】
以上の電源装置は、側突時における側板の変形で電池が損傷されるのを有効に防止できる特徴がある。それは、側板が、エンドプレートの近傍に変形ラインを設けているので、側突時に側板の変形ラインを変形させることで、側板の変形が強靭なエンドプレートに接触して、電池を損傷しないからである。さらに、以上の電源装置は、変形して電池を損傷させないエンドプレートの近傍で側板を変形させるので、側突時における側板の変形を電池を損傷しない部分に集約できる。このため、側突時に側板が変形しても、変形が電池を損傷させることがなく、側突時の電池の安全性をさらに向上できる特徴がある。
【0012】
また、本発明の車両用の電源装置は、外装ケース2内に、側板21の長手方向に並べて2組の電池ブロック3を配置し、変形ライン5を、2組の電池ブロック3の中央部に配置してなるエンドプレート7の近傍に配置することができる。
【0013】
以上の電源装置は、側突時に、エンドプレートの近傍であって、電池を損傷させない2カ所で側板を変形できるので、変形量を大きくしながら、電池の損傷を有効に阻止できる特徴がある。
【0014】
また、本発明の車両用の電源装置は、外装ケース2が、底面の中央部に車両の長手方向に伸びる横溝部26を有し、この横溝部26を設けてなる中央部に浅い収納部27を、浅い収納部27の両側に深い収納部28を設けて、電池ブロック3を深い収納部28に配置することができる。
【0015】
さらに、本発明の車両用の電源装置は、変形ライン5を、深い収納部28の両側に配置してなる側板21の浅い収納部27側に配置することができる。
【0016】
以上の電源装置は、変形ラインを浅い収納部側に配置しているので、側突時に変形ラインをより変形しやすくして、電池損傷部分の変形を少なくできる。それは、浅い収納部は深い収納部に比較して側板の上下幅が狭くて変形しやすいので、この浅い収納部側で側板を変形させることで、変形ラインの変形を大きくできるからである。
【0017】
本発明の電動車両は、車両の走行モータ31に電力を供給する電源装置10を搭載する電動車両であって、電源装置10が、両側の側板21が車両の幅方向に伸びる姿勢で車両に固定される外装ケース2と、この外装ケース2に収納してなる複数の電池セル1とを備え、外装ケース2は、車両の固定部20を車両の幅方向に離して複数カ所に設けて、側板21は、複数の肉開口部4を幅方向に離して設けて、固定部20に近い肉開口部4の開口面積を、固定部20から離れた肉開口部4の開口面積よりも大きくすることができる。
【0018】
また、本発明の電動車両は、電源装置10の外装ケース2をシート34の下方に固定することができる。
【0019】
また、本発明の電動車両は、外装ケース2の固定部20を、車両の幅方向に伸びるクロスメンバー32に固定することができる。
【0020】
また、本発明の電動車両は、外装ケース2の平面形状を車両の幅方向に細長い長方形とし、外装ケース2が、長手方向の両端部に固定部20を設けて、側板21が両端部と中間
部とに肉開口部4を設けて、側板21の両端部に設けた肉開口部4を中間部に設けた肉開口部4よりも開口面積を大きくすることができる。
【0021】
また、本発明の電動車両は、側板21を車両の幅方向に細長い形状とし、外装ケース2の内部に、複数の電池セル1を積層してなる電池積層体6の両端にエンドプレート7を配置してなる電池ブロック3を収納し、電池ブロック3が、電池セル1の積層方向を側板21の長手方向とする姿勢で外装ケース2に収納し、側板21がエンドプレート7の近傍に変形ライン5を備えることができる。
【0022】
また、本発明の電動車両は、外装ケース2内に、側板21の長手方向に並べて2組の電池ブロック3を配置し、変形ライン5を、2組の電池ブロック3の中央部に配置してなるエンドプレート7の近傍に配置することができる。
【0023】
また、本発明の電動車両は、外装ケース2が、底面の中央部に車両の長手方向に伸びる横溝部26を有し、この横溝部26を設けてなる中央部に浅い収納部27を設けて、浅い収納部27の両側に深い収納部28を設けて、電池ブロック3を深い収納部28に配置することができる。
【0024】
また、本発明の電動車両は、変形ライン5を、深い収納部28の両側に配置してなる側板21の浅い収納部27側に配置することができる。
【0025】
また、本発明の電動車両は、クロスメンバー32を車両の幅方向に2列に配置し、2列のクロスメンバー32の間に外装ケース2を配置することができる。
【0026】
さらにまた、本発明の電動車両は、クロスメンバー32が、車両の中央部に切り離し部33を設けて、切り離し部33を除く両側に設けられ、切り離し部33の近傍に変形ライン5を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例にかかる車両用の電源装置の斜視図である。
図2図1に示す電源装置の正面図である。
図3図1に示す電源装置の平面図である。
図4図1に示す電源装置を搭載する電動車両の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車両用の電源装置とこの電源装置を搭載する電動車両を例示するものであって、本発明は電源装置と電動車両を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0029】
図1の斜視図と、図2の正面図と、図3の平面図に示す車両用の電源装置10は、車両に固定される外装ケース2に複数の電池セル1を収納している。この電源装置10をフロントシート34の下に固定している電動車両30を図4に示している。この電動車両30は、ハイブリッドカーで、車両を走行させる走行モータ31を備え、この走行モータ31に電力を供給する電源装置10を搭載している。この電動車両30は、2列のクロスメンバー32をシャーシーに固定している。クロスメンバー32は車両の幅方向に伸びるように配置され、2列のクロスメンバー32の間に外装ケース2を配置して、電源装置10の外装ケース2をフロントシート34の下にできるスペースに配置している。
【0030】
外装ケース2は、車両の幅方向に細長い箱形で、平面形状を長方形として、車両に固定される固定部20を両側の両端部に設けている。図4の外装ケース2は、固定部20を車両のシャーシーに設けているクロスメンバー32に固定して、外装ケース2を平行な2列のクロスメンバー32の間に配置している。
【0031】
外装ケース2は、両側の側板21と、底板22と、天板23と、端板24とで細長い箱形としている。側板21と底板22と天板23と端板24は金属板で、互いに連結されて内部に電池ブロック3と、制御回路を実装する回路基板を収納している。図の電源装置10は、外装ケース2をクロスメンバー32の間に配置するので、外装ケース2の上部に固定部20を設けて、外装ケース2のほぼ全体をクロスメンバー32の間に配置している。
【0032】
側板21は、側突に対して充分な折曲強度が要求されることから、相当に厚い金属板、たとえば1mm〜2mmの鉄板が使用される。厚くて重い金属板の側板21は軽量化するために、複数の肉開口部4を設けている。図に示す側板21は、両側に2個、全体で4個の肉開口部4を側板21の長手方向に離して設けている。外装ケース2は両側に2枚の側板21を設けているので、図の外装ケース2は、各々の側板21に各々4個、全体で8個の肉開口部4を設けて軽量化している。肉開口部4は、大きくして側板21を軽量化できるが、大きすぎると強度が低下する。側板21は、たとえば、肉開口部4の開口面積を側板全体の10%として、重量を10%軽くできるが、側突に対する強度が要求されることから大きさが制約される。軽量化のために肉開口部4を大きくすると折曲強度が低下して、側突時の変形量が大きくなるからである。側突時に側板21が大きく変形すると、内側に突出する部分が内側の電池セル1に衝突して損傷させる原因となる。厚い金属板の側板21が大きく変形して、電位のある金属製外装缶に接触すると大きなショート電流が流れ、また、外装缶を破損して電池内部の正負の電極をショートして電池を熱暴走させる原因となる。この弊害は、側板21の折曲強度を強くして、側突時における側板21の変形量を小さくして防止できるが、このことを実現するには、軽量化のために設けている肉開口部4の開口面積を小さくする必要があるが、肉開口部4の開口面積を小さくすると重くなって燃費が低下する欠点がある。すなわち、側板21の軽量化と折曲強度とは互いに相反する特性であって両方を同時に満足することが極めて難しく、軽量化して電池セル1の損傷を少なくすることが極めて難しい。
【0033】
図1図2に示す外装ケース2は、側突時における側板21の変形量を少なくして電池の損傷を有効に保護しながら、側板21を軽量化するという、極めて難しい特性を満足する。このことを実現するために、複数の肉開口部4の開口面積を部位によって変化させている。外装ケース2は、固定部20を車両に固定しているので、固定部20の近傍は車両に補強されて変形量が少なくなる。図3の電源装置10は、両側を車両のクロスメンバー32に固定しているので、クロスメンバー32によって外装ケース2の固定部20が補強される。
【0034】
図1図2の側板21は、車両で補強される固定部20に近い肉開口部4の開口面積を大きくして軽量化し、固定部20から離れて車両に補強されない部分の肉開口部4の開口面積を小さくして、側突時の変形を少なくする。図1図2に示す外装ケース2は、
両側の両端部に固定部20を設けて両端部を車両で補強しているので、固定部20に近い側板21の両端部に設けている肉開口部4の開口面積を大きくして軽量化し、固定部20から離れた位置に設けている肉開口部4の開口面積を小さくして変形量を小さくしている。いいかえると、両端の固定部20から離れて車両で補強されない側板21の中間部に設けている肉開口部4は、固定部20に近くにあって車両で補強される両端部に設けている肉開口部4よりも小さくして、変形量を小さくしている。図の側板21は、全ての肉開口部4の上下幅を同じとして、開口幅Wを変化して開口面積を調整している。車両の幅方向に細長い側板21は、側突時に全長が短くなるように押し潰されるので、側板21の肉開口部4は、側板21は長手方向の開口幅Wを小さくして折曲強度を強くできる。図1図2の側板21は、側突時の折曲強度を向上するために、肉開口部4の開口幅Wを変更して変形量を小さくしている。言い換えると、肉開口部4の開口幅Wを変更して軽量化と変形量を改善する側板21は、肉開口部4の開口面積を調整してより効果的に軽量化と折曲強度の補強効果を実現する。
【0035】
図1図2の側板21は、両端部に設けている肉開口部4の開口幅W1を、中間部に設けている肉開口部4の開口幅W2よりも大きくして側板21を軽量化し、中間部に設けている肉開口部4の開口幅W2を両端部の肉開口部4の開口幅W1よりも小さくして折曲強度を大きく、側突時の変形量を小さくしている。図の側板21は、固定部20に近い両端部の肉開口部4の開口幅W1を、固定部20から離れた中間部の肉開口部4の開口幅W2の約3倍としている。
【0036】
底板22は、側突時に変形部分を特定するために、変形ライン5を設けている。側板21の変形ライン5は、側突時に変形して内側の突出部がエンドプレート7に衝突するように、エンドプレート7の近傍、正確にはエンドプレート7の外側に配置している。図1の側板21は、中間部に2列の変形ライン5を設けている。2列の変形ライン5は、長手方向に直線状に並べて配置される2組の電池ブロック3のエンドプレート7の近傍に配置される。
【0037】
図1図3の側板21は、金属板をZ字状に折曲加工して、互いに接近する出隅と入り隅となる一対の変形ライン5を設けている。側突時に、入り隅側の変形ライン5が内側に突出して、エンドプレート7に衝突する。図の側板21は、中間部に2列の変形ライン5を設けて、変形ライン5の間を内側に突出する形状、言い換えると、凹部となって外装ケース2の横幅を狭くする形状としている。2列の変形ライン5の間を凹部とする側板21は、変形ライン5を設けて側板21が外側に突出せず、搭載スペースを大きくしない特徴がある。出隅と入り隅の間隔、すなわち一対の変形ライン5で設けられる凹部の深さは、大きくして側突時における側板21の変形を変形ライン5の変形量で大きく吸収できるが、大きすぎると、凹部が深くなって、深い凹部によって外装ケース2の横幅が狭くなって、収納スペースが小さくなる。したがって、凹部の深さは、要求される収納スペースと、側突時における変形ライン5の変形量とを考慮して、たとえば1cm以上、好ましくは1.5cm以上とする。
【0038】
図4のクロスメンバー32は、車両の中央部に切り離し部33を設けて、切り離し部33の近傍に変形ライン5を設けている。図3の電源装置10は、クロスメンバー32の切り離し部33に変形ライン5を設けているが、変形ライン5は切り離し部33から離れてその近傍、たとえば、切り離し部33から5cm以下、好ましくは3cm以下だけ離して配置することもできる。それは、側突時に車両のシャーシーがクロスメンバー32の切り離し部33の近傍で変形することがあり、また、側突時にシャーシーが切り離し部33で変形して、その近傍に設けている側板21の変形ライン5を変形させることができるからである。エンドプレート7の近傍に変形ライン5を設ける外装ケース2は、側突時に変形ライン5を変形させて、側板21の他の部分の変形を少なくできる。とくに、変形部を側板21に衝突させて、電池セル1に衝突させないので、変形による電池セル1の損傷を防止できる。
【0039】
側板21は、上縁の両端部を外側に突出する折曲片21Xを設けて、この折曲片21Xを固定部20としている。固定部20は、天板23にも設けている。天板23は3枚の金属板を外装ケース2の長手方向に並べて、上面開口部を閉塞している。両端の天板23Aは、両側に突出する折曲片23Xを設けて、この折曲片23Xを側板21の折曲片21Xに重ねて固定部20としている。側板21と天板23に折曲片21X、23Xを設けて、これを重ねて固定部20とする構造は、2枚の折曲片21X、23Xを重ねて固定部20を補強できる。固定部20は長手方向に離して両端部に止め穴25を設けている。止め穴25は止ネジ(図示せず)を介して車両のクロスメンバー32に固定される。
【0040】
図1図2の外装ケース2は、底板22の中央部であって、2列の変形ライン5の内側に、外装ケース2の幅方向に伸びる横溝部26を設けてこの部分を浅い収納部27としている。外装ケース2中央部の浅い収納部27は、電池の保護回路や充放電をコントロールする回路を実装する回路基板を収納している。
【0041】
外装ケース2は、中央部の浅い収納部27の両側に、深い収納部28を設けて、深い収納部28に電池ブロック3を収納している。図3の外装ケース2は、内部に4組の電池ブロック3を収納している。4組の電池ブロック3は、2組を直線状に並べて、これを2列に配置している。各電池ブロック3は、外装ケース2の長手方向と平行に配設されて、電池セル1の積層方向を側板21の長手方向とする姿勢で収納している。電池ブロック3は、複数の電池セル1を積層して電池積層体6とし、電池積層体6の両端にエンドプレート7を配置して、エンドプレート7をバインドバー(図示せず)で連結している。エンドプレート7は、電池セル1を積層方向に加圧して固定するので、アルミニウム等の厚い金属ブロックが使用される。また、プラスチックと金属との複合材や積層体で製作される。図1図2の外装ケース2は、深い収納部28の両側に配置してなる側板21の浅い収納部27側に変形ライン5を設けている。
【0042】
電池セル1は、積層できる角形電池セル1である。さらに電池セル1は、リチウムイオン二次電池等の非水系電解液電池である。非水系電解液電池が、容積と重量に対する容量を大きくできるからである。ただ、本発明の電源装置は電池セル1をリチウムイオン二次電池には特定せず、現在使用され、あるいはこれから開発される全ての二次電池、たとえば、ニッケル水素電池なども使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、側突時における電池の損傷を防止して安全性を向上し、さらに軽量化して優れた燃費を実現するための車両用の電源装置と、この電源装置を搭載する電動車両に有効に使用できる。
【符号の説明】
【0044】
1…電池セル
2…外装ケース
3…電池ブロック
4…肉開口部
5…変形ライン
6…電池積層体
7…エンドプレート
10…電源装置
20…固定部
21…側板
21X…折曲片
22…底板
23…天板
23X…折曲片
24…端板
25…止め穴
26…横溝部
27…浅い収納部
28…深い収納部
30…電動車両
31…走行モータ
32…クロスメンバー
33…切り離し部
34…シート
図1
図2
図3
図4