特許第6906914号(P6906914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906914
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】波長選択素子、光源装置及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20210708BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20210708BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20210708BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20210708BHJP
   F21V 9/00 20180101ALI20210708BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20210708BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20210708BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20210708BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20210708BHJP
【FI】
   G02B5/26
   G02F1/13357
   G02B5/28
   G02B5/30
   F21V9/00
   F21S2/00 439
   H01L33/48
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-169008(P2016-169008)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-36459(P2018-36459A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 治
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一貴
(72)【発明者】
【氏名】前田 強
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−202962(JP,A)
【文献】 特開2007−317952(JP,A)
【文献】 特開2012−199497(JP,A)
【文献】 特開2016−095947(JP,A)
【文献】 特開2010−019958(JP,A)
【文献】 特開2008−270707(JP,A)
【文献】 特開2014−017474(JP,A)
【文献】 特開2011−049236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/26
F21S 2/00
F21V 9/00
G02B 5/28
G02B 5/30
G02F 1/13357
H01L 33/48
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子からの入射光を波長に従って、第1の透過率で透過する第1の波長選択膜と、
前記第1の波長選択膜の上部に設けられた基材と、
前記基材の上部に設けられ、前記基材からの前記入射光を波長に従って、前記第1の透過率と異なる第2の透過率で透過する第2の波長選択膜と、
前記第1の波長選択膜の面のうちの前記発光素子に近い側の面に位置する受光面と、を有し、
前記入射光が入射される前記受光面の少なくとも一部が、前記発光素子に向かって凹となる曲面形状を有することを特徴とする波長選択素子。
【請求項2】
前記曲面形状は、前記発光素子の配光特性に応じて定められていることを特徴とする請求項1に記載の波長選択素子。
【請求項3】
前記曲面形状は、前記発光素子から射出された光が前記受光面に対して略垂直に入射されるように定められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の波長選択素子。
【請求項4】
前記第1の波長選択膜および前記第2の波長選択膜のうちの少なくとも1つの膜は、屈折率が互いに異なる複数の誘電体層が積層された誘電体多層膜を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の波長選択素子。
【請求項5】
前記第1の波長選択膜および前記第2の波長選択膜のうちの少なくとも1つの膜は、コレステリック液晶膜を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の波長選択素子。
【請求項6】
前記第1の波長選択膜は、前記第2の波長選択膜の光透過特性と異なる光透過特性を持つことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の波長選択素子。
【請求項7】
前記第1の波長選択膜は空気層を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の波長選択素子。
【請求項8】
前記曲面形状は、球面の一部であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の波長選択素子。
【請求項9】
前記曲面形状は、楕円体面の一部であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の波長選択素子。
【請求項10】
前記発光素子からの前記入射光は、白色光であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の波長選択素子。
【請求項11】
赤、緑及び青の3原色に対応する波長帯域に通過帯域を有し、
赤と緑の間及び緑と青の間に対応する波長帯域に阻止帯域を有する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の波長選択素子。
【請求項12】
少なくとも1つの発光素子と、
前記少なくとも1つの発光素子からの入射光を波長に応じて異なる透過率で透過させる請求項1乃至11のいずれか1項に記載の波長選択素子と
を有することを特徴とする光源装置。
【請求項13】
前記波長選択素子と前記発光素子の間が、基材で充填されていることを特徴とする請求項12に記載の光源装置。
【請求項14】
前記波長選択素子の屈折率と前記基材の屈折率との差は、前記波長選択素子の屈折率と空気の屈折率との差よりも小さいことを特徴とする請求項13に記載の光源装置。
【請求項15】
前記発光素子は、複数個であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項16】
請求項12乃至15のいずれか1項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出された光を光源とする液晶パネルと
を有することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択素子、光源装置及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、擬似白色発光素子と液晶表示素子の間に多層膜からなる反射フィルタが配置された液晶表示装置が開示されている。当該反射フィルタは、緑と赤の間の波長の光を透過する反射特性を有する多層膜を有している。これにより、液晶表示素子への入射光の色純度が向上するため、色再現性の良い画像を表示することができる液晶表示装置が提供されることが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−85232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ITU(国際電気通信連合)によるBT.2020規格の勧告等を背景として表示装置の色再現性の向上が求められている。そのため、表示装置に用いられる光源装置からの出射光の色純度を更に向上させることが課題となり得る。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、色純度を更に向上し得る波長選択素子並びにこれを用いた光源装置及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、発光素子からの入射光を波長に応じて異なる透過率で透過させる波長選択素子であって、前記入射光が入射される受光面の少なくとも一部が、前記発光素子に向かって凹となる曲面形状を有することを特徴とする波長選択素子が提供される。
【0007】
本発明の他の一観点によれば、少なくとも1つの発光素子と、前記少なくとも1つの発光素子からの入射光を波長に応じて異なる透過率で透過させる波長選択素子であって、前記入射光が入射される受光面の少なくとも一部が、前記発光素子に向かって凹となる曲面形状を有する波長選択素子とを有することを特徴とする光源装置が提供される。
【0008】
本発明の他の一観点によれば、少なくとも1つの発光素子と、前記少なくとも1つの発光素子からの入射光を波長に応じて異なる透過率で透過させる波長選択素子であって、前記入射光が入射される受光面の少なくとも一部が、前記発光素子に向かって凹となる曲面形状を有する波長選択素子とを有する光源装置と、前記光源装置から射出された光を光源とする液晶パネルとを有することを特徴とする表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、色純度を更に向上し得る波長選択素子並びにこれを用いた光源装置及び表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】誘電体多層膜の透過特性を示すグラフである。
図2】第1実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す概略図である。
図3A】第1実施形態に係る光源装置の平面図である。
図3B】第1実施形態に係る光源装置の断面図である。
図4】第1実施形態に係る波長選択素子を透過する光の強度の一例を示すグラフである。
図5】第2実施形態に係る光源装置の断面図である。
図6A】第3実施形態に係る光源装置の平面図である。
図6B】第3実施形態に係る光源装置の断面図である。
図6C】第3実施形態に係る光源装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
[第1実施形態]
上述のように、特許文献1の液晶表示装置では、液晶パネルを背面から照明する光を高純色化するために、誘電体多層膜が用いられている。誘電体多層膜は、屈折率の異なる誘電体層が交互に積層された構造を有し、特定の波長を有する光を選択的に透過させる。図1は誘電体多層膜の透過特性の一例を示すグラフである。図1の横軸は入射光の波長を示しており、縦軸は透過率を示している。また、図1には、積層面の法線方向に対する入射光の角度が、0deg.、15deg.、30deg.、45deg.の4つの場合における透過特性が示されている。
【0013】
図1に示されている誘電体多層膜の透過特性は、積層面の法線方向(0deg.)から入射する光に対して、R(赤)/G(緑)/B(青)の3原色の波長が高い透過率となるように最適化されている。R/G/Bの3原色の波長をそれぞれ610/530/470(nm)とするとき、図1に実線で示されているように、R/G/Bの3原色に対応する波長が通過帯域となっており、透過率がいずれも80%以上となっている。また、BとGの間の470〜530(nm)及びGとRの間の560〜610(nm)の波長帯域において、透過率が極小となる阻止帯域が存在する。これにより、図1に示す誘電体多層膜は、3原色の光を高い透過率で透過させるとともに、3原色の中間の波長の光の大部分は減衰又は反射させることにより、入射光を3原色の波長に純色化させることができる。
【0014】
しかしながら、図1に示されるように、誘電体多層膜には、入射角が積層面の法線方向に対して大きくなるにつれて透過特性が短波長側へシフトするという角度依存性がみられる。入射角に応じて、入射光が誘電体多層膜中を通過する光路長が変化するためである。このような透過特性の角度依存性により、図1に示される誘電体多層膜の透過特性は、積層面に対して大きな角度(>15deg.)から入射された光に対しては上述の最適化の条件を満たさなくなる。このように、誘電体多層膜に斜めから入射された光に対しては純色化が十分に行われない場合がある。本実施形態は、透過特性に角度依存性を有する誘電体多層膜等を採用した場合であっても色純度を更に向上し得る波長選択素子並びにこれを用いた光源装置及び表示装置を提供する。
【0015】
図2は、第1実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す概略図である。液晶表示装置は、液晶パネル1及びバックライトユニット2を備える。液晶パネル1とバックライトユニット2の間には、光拡散シート、プリズムシート等が更に設けられていてもよい。
【0016】
液晶パネル1は、電極10、液晶層11、ガラス基板12a、12b、カラーフィルタ13、偏光板14a、14bを備える。一対のガラス基板12a、12bは、液晶層11を挟んで対向する。ガラス基板12a、12bのうち、バックライトユニット2側のガラス基板12aには、複数の電極10が設けられている。液晶表示装置の制御部(不図示)は、ガラス基板12aの複数の電極10の間に電圧を印加することにより、液晶層11内に液晶層11と平行な電界を生成する。この電界が液晶分子を回転させることにより液晶表示装置の表示が制御される。
【0017】
偏光板14a、14bは、ガラス基板12a、12bの外側の面にそれぞれ設けられている。偏光板14a、14bの偏光軸の向きは、バックライトユニット2から照明される光が、電極10に電圧が印加されている場合に通過又は遮断されるように設定されている。例えば、図3に示す偏光板14a、14bの偏光軸の向きは、互いに直交するように構成される。
【0018】
カラーフィルタ13は、ガラス基板12bと液晶層11との間に設けられる。カラーフィルタ13は、バックライトユニット2から照明される光のうち、R/G/Bの3原色のいずれかの波長帯域の光を通過させる。
【0019】
バックライトユニット2は、エッジライト方式のバックライトである。バックライトユニット2は、導光板21と、光源装置22とを備える。光源装置22は、導光板21の端部に設けられており、液晶パネル1を照明する光を、導光板21を介して供給する。エッジライト方式では、光源装置22が導光板21の端部に設けられているため、光源装置22が占有する面積を小さくすることができ、バックライトユニット2を省スペース化することができる。バックライトユニット2の液晶パネル1と反対側には、導光板21に供給された光を液晶パネル1に向けて反射する光反射シート等が更に設けられていてもよい。
【0020】
なお、図2ではバックライトユニット2の方式としてエッジライト方式を例示しているが、液晶パネル1の背面に複数の光源装置を配列した直下型方式であってもよい。一部の光源装置のみを駆動することにより、コントラスト比を向上させることができる。
【0021】
図3A及び図3Bは、第1実施形態に係る光源装置22の構成を示す概略図である。図3Aは、光源装置22を光が射出される面の法線方向から見た平面図である。図3Bは、図3AのA−A’線における断面図である。光源装置22は、波長選択素子222、基材223、発光素子224及びこれらを搭載する基板221を備える。発光素子224は、白色光を生成して射出する素子である。発光素子224は、例えば、青色発光ダイオード、蛍光体及びこれらを搭載するパッケージにより構成され得る。蛍光体には、YAG(YAl12)等を主成分とする材料が用いられ得る。青色発光ダイオードから射出された青色光の一部は、蛍光体により黄色光に変換される。発光素子224は、このようにして得られた青色光と黄色光とを混合して白色光として射出する。
【0022】
基材223は、発光素子224を中心としてこれを覆うように形成された構造物である。基材223は、球体の一部である半球状の形状をなしている。基材223の材料には、ガラス、樹脂等の可視光を透過する材料が用いられ得る。波長選択素子222は、基材223の表面に設けられた膜状の部材である。波長選択素子222は、発光素子224からの入射光を波長に応じて異なる透過率で透過させる。基材223が発光素子224を中心とする半球状の形状を有するため、その表面に設けられた波長選択素子222は、半球面状、すなわち、発光素子224に向かって凹となる曲面形状の受光面を有する。また、波長選択素子222と発光素子224の間は基材223で充填されている。
【0023】
波長選択素子222は、例えば、誘電体多層膜、コレステリック液晶膜等を用いて構成され得る。波長選択素子222の構造は、垂直に入射された光に対し、R/G/Bの3原色の波長が高い透過率となるように最適化されている。
【0024】
発光素子224から射出された白色光は、基材223を透過して波長選択素子222に入射する。波長選択素子222は、発光素子224からの入射光を波長に応じて異なる透過率で透過させる。具体的には、波長選択素子222は、入射光をR/G/Bの3原色に分離する。これにより、光源装置22は、3原色に純色化された光を射出することができる。
【0025】
波長選択素子222が誘電体多層膜を用いて構成されている場合の構造の例を説明する。誘電体多層膜は、屈折率が互いに異なる複数の誘電体層が積層された構造となっている。より具体的には、誘電体多層膜は、高屈折率の誘電体膜と低屈折率の誘電体膜を交互に複数層積層した構造を有する。層間での反射により生じた反射光と入射光との干渉等の現象により、誘電体多層膜は、波長に応じて異なる透過率となる。誘電体膜の層数、各層の膜厚、屈折率を適宜設計することにより、所望の透過特性の誘電体多層膜を得ることができる。高屈折率の誘電体膜の例としては、例えばTiO、Nb、Taが挙げられる。低屈折率の誘電体膜の例としては、例えばSiO、MgF、CaFが挙げられる。これらの誘電体膜は、例えば、マグネトロンスパッタ法により形成することができる。
【0026】
波長選択素子222がコレステリック液晶膜を用いて構成されている場合の構造の例を説明する。コレステリック液晶膜は、薄膜状に形成されたコレステリック液晶を含む1又は2以上の層で構成された膜である。コレステリック液晶は液晶分子がなす螺旋の方向及びピッチに応じて特定の波長かつ特定の円偏光の光を反射する。この性質により、例えば、左方向の円偏光の光を反射するコレステリック液晶層と、右方向の円偏光の光を反射するコレステリック液晶層とが積層された構造の積層膜は、波長選択素子222として機能し得る。また、同方向の円偏光を反射する2層のコレステリック液晶層の間に4分の1波長板が形成された構造の積層膜も、波長選択素子222として機能し得る。
【0027】
図4は本実施形態に係る波長選択素子222を透過する光の強度の一例を示すグラフである。図4の横軸は入射光の波長を示しており、縦軸は任意単位(arb. units)による強度を示している。また、図4には、発光素子224から射出された光の法線方向に対する射出角度が0〜80degの9つの場合における、波長選択素子222を透過する光の強度が示されている。本透過特性は、シミュレーションにより得られたものである。発光素子224はランバーシアン型の配光特性を有する点光源とした。また、波長選択素子222の形状は発光素子224の位置を中心とする半球面形状とした。
【0028】
図4によれば、射出角度が0〜80degのいずれの場合においても、強度の差はあるものの、ほぼ同じ波長帯域に通過帯域及び阻止帯域が存在することがわかる。より具体的には、赤、緑及び青の3原色に対応する波長帯域に通過帯域が存在し、赤と緑の間及び緑と青の間に対応する波長帯域に阻止帯域が存在する。
【0029】
波長選択素子222は、発光素子224に向かって凹となる曲面形状を有する。そのため、図3Bに矢印で図示されるように、発光素子224から射出された光束は、射出角度によらず波長選択素子222の受光面に対して略垂直の角度で入射する。そのため、波長選択素子222を構成する誘電多層膜等の材料自体が図1に示すような角度依存性を有していたとしても、その影響は十分に低減される。そのため、波長選択素子222は、図4に示されるシミュレーション結果のようにいずれの角度に射出された光に対しても同じ波長帯域に通過帯域及び阻止帯域が存在する透過特性となる。したがって、当該波長選択素子222を含む光源装置22から射出される光は、良好な色純度を有する。また、当該光源装置22を光源とするバックライトユニット2を備えた表示装置は、良好な色再現性を有する。なお、略垂直とは、角度依存性による影響が十分に小さい角度範囲を指すものとし、例えば、図1から理解されるように角度依存性が小さい15deg以下の範囲と規定し得る。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、透過特性に角度依存性を有する誘電体多層膜等を採用した場合であっても色純度を更に向上し得る波長選択素子並びにこれを用いた光源装置及び表示装置が提供される。
【0031】
また、本実施形態においては、波長選択素子222と発光素子224の間の光路が基材223で充填されている。ここで、基材223は、空気よりも屈折率が大きいガラス、樹脂等を主材料とし得るため、波長選択素子222の屈折率と基材223の屈折率の差を、波長選択素子222の屈折率と空気の屈折率との差よりも小さくすることができる。この場合、発光素子224から射出された光が波長選択素子222を通過するまでの光路をこれらと屈折率が近い基材223で充填することができるため、光路中の屈折率の変動を小さくすることができる。この構成により、基材223の部分が空気等の中空である場合と比べて光の伝搬効率が向上し得る。
【0032】
なお、波長選択素子222及び基材223の形状は、半球面としたが、これらの形状は少なくとも発光素子224に向かって凹となる曲面形状を有していればよく、その他の曲面形状であってもよい。この場合、これらの形状が直線の場合に比べれば色純度を向上する効果が得られる。例えば、波長選択素子222の形状は、球面の一部を切り取って得られる形状、すなわち球面の一部であってもよい。
【0033】
また、発光素子224の配光特性が異なる場合、例えば、垂直方向に指向性を有する配光特性の場合、垂直方向に射出される光束の割合が多くなるため、波長選択素子222及び基材223の形状は、半球面よりも扁平な形状の方がより好ましい場合もある。このとき、図3Bに示すA−A’断面での波長選択素子222及び基材223の形状は半円形よりも扁平な形状、例えば半楕円形状となる。このように、波長選択素子222の受光面の曲面形状は発光素子224の配光特性に応じて定めることができる。
【0034】
[第2実施形態]
第1実施形態においては、基材223は、波長選択素子222と発光素子224の間を充填している。これに対し、第2実施形態においては、第1実施形態の基材223に対応する基材225が膜状となっており、基材225と発光素子224の間が中空である点が第1実施形態と異なる。
【0035】
図5は、光源装置22の断面図であり、第1実施形態における図3Bに対応する図である。基材225は膜状の材料であるため、波長選択素子222と発光素子224の間に空隙が存在する。この空隙部は空気、窒素等の気体で満たされていてもよく、真空であってもよい。その他の構成は同様であるため説明を省略する。本実施形態の構成においても第1実施形態と同様に、色純度を更に向上し得る波長選択素子並びにこれを用いた光源装置及び表示装置が提供される。
【0036】
また、本実施形態では、基材225が膜状であるため、まず平面状の基材225上に波長選択素子222に形成し、その後波長選択素子222が形成された基材225を曲面形状に曲げて成形するという工法により製造することが可能となる。このような工法を採用する利点について説明する。波長選択素子222を形成する工程において基材225が平面状である方が好ましい場合がある。例えば、波長選択素子222を形成する工程がマグネトロンスパッタ法等の真空装置を用いる工程である場合、基材225が平面である方が、波長選択素子222の厚さのばらつきを低減することができる。
【0037】
なお、波長選択素子222に加えて基材225自体の屈折率をも利用して波長選択の機能を実現してもよい。言い換えると、基材225自体が波長選択素子222の一部であってもよい。また、図5では発光素子224に対して基材225の外側の面に波長選択素子222が形成されている。しかしながら、発光素子224に対して基材225の内側の面に波長選択素子222が形成されていてもよく、基材225の両面に波長選択素子222が形成されていてもよい。両面に形成される波長選択素子は、各々が異なる透過特性を有していてもよい。
【0038】
[第3実施形態]
第1実施形態においては、基材223及び波長選択素子222の表面の曲面形状として半球面形状を例示している。これに対し、第3実施形態においては、発光素子224が複数個設けられており、更に第1実施形態の基材223に対応する基材227と波長選択素子226の表面が楕円体面形状となっている点が第1実施形態と異なる。また、本実施形態では、第2実施形態と同様に基材227が膜状であり、基材227と発光素子224の間は中空となっているものとするが、第1実施形態のように波長選択素子226と発光素子224の間の光路が基材227で充填されていてもよい。
【0039】
図6A図6B及び図6Cは、第3実施形態に係る光源装置22の構成を示す概略図である。図6Aは、光源装置22を光が射出される面の法線方向から見た平面図である。
図6Bは、図6AのA−A’線における断面図であり、図6Cは、図6AのB−B’線における断面図である。本実施形態においては、基材227と波長選択素子226の表面が楕円体面形状を有しているため、図6Aに示されるように、上面視において波長選択素子226は楕円の一部である半楕円形状である。また、A−A’線はこの楕円の短軸に対応し、B−B’線はこの楕円の長軸に対応する。
【0040】
図6B及び図6Cに示されるように、本実施形態の光源装置22はB−B’線に沿う向きに並ぶ2つの発光素子224を備える。この2つの光源装置から射出される光束を波長選択素子222に可能な限り垂直に近い角度で入射するように構成するため、基材227及び波長選択素子226の表面はB−B’線断面において半楕円面形状となっている。本実施形態によれば、発光素子224が複数個設けられている場合であっても、第1実施形態の場合と同様に、色純度を更に向上し得る波長選択素子並びにこれを用いた光源装置及び表示装置が提供される。
【0041】
なお、3個以上の発光素子224がB−B’線に沿う向きに並ぶ構成となっている場合には、図6Aに示す波長選択素子226の表面の楕円形状の長軸を発光素子224の個数に応じてより長く設計することで同様の効果が得られる。
【0042】
[その他の実施形態]
上述の実施形態は、本発明を適用しうるいくつかの態様を例示したものに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜修正や変形を行うことを妨げるものではない。
【0043】
例えば、波長選択素子222の受光面が有する曲面形状は、上述の例には限定されず、例えば、円筒面の一部、楕円筒面の一部、輪環面(ドーナツ形状の表面)の一部等であってもよい。
【0044】
また、当該受光面の曲面形状は一部に平面を含んでいてもよい。図4に示されるように、発光素子224の発光面に対して水平に近い方向に射出される光量は少ない。そのような光量の少ない方向については透過特性が変動したとしても影響が少ないため、当該方向に対応する波長選択素子222の受光面は平面であってもよい。
【0045】
本発明が適用され得る液晶表示装置の構成は図2に示すものに限定されない。例えば、図2では、液晶層11に平行な電界を生成させる構成となっているが、液晶層11に垂直な電界を生成させる方式であってもよく、その場合、電極10の配置は図2とは異なるものとなり得る。
【0046】
本発明に用いられ得る発光素子は、複数の波長を含む光を射出し得るものであれば上述したものに限定されない。例えば、量子ドットを蛍光体に用いた発光素子であってもよく、有機電界発光素子や、複数色の発光ダイオードもしくはレーザーダイオードを組み合わせた発光素子であってもよい。
【0047】
本発明に用いられ得る光源装置の基板221は、発光素子224を備える面に、光を吸収する材料が塗布されていてもよい。光を吸収する材料が塗布されていることで、波長選択素子222からの反射光が、再び波長選択素子222に異なる角度で入射することを抑制し、本発明の効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0048】
221 基板
222 波長選択素子
223 基材
224 発光素子
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C