(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願の一実施形態に係る対物レンズについて説明する。本実施形態に係る対物レンズ(以降、単に対物レンズと記す)は、結像レンズと組み合わせて使用される無限遠補正型の顕微鏡対物レンズであり、観察時に浸液とともに用いられる、1.42以上の物体側開口数を有する液浸系対物レンズである。なお、使用される浸液は、標本内部の屈折率に近い屈折率を有する媒質であり、例えば、水、オイルなどである。
【0011】
対物レンズは、物体側から順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群から構成されている。
【0012】
第1レンズ群は、第1の接合レンズと少なくとも1枚の正レンズからなる。最も物体側に配置されたレンズ成分である第1の接合レンズは、物体側に平面を向けた平凸レンズと、その平凸レンズの像側に配置された物体側に凹面を向けた第1のメニスカスレンズと、からなる接合レンズである。即ち、平凸レンズは、対物レンズを構成するレンズのうちの最も物体側に配置されたレンズであり、平凸レンズの平面は、浸液と接する対物レンズの第1面である。
【0013】
なお、第1レンズ群は、第1の接合レンズと1枚の正レンズまたは、第1の接合レンズと2枚の正レンズで構成されていることが望ましい。また、2枚の正レンズは、それぞれ単レンズであることが望ましい。
【0014】
第1の接合レンズの像側のレンズ面である凸面は、半球の球冠(球面部分)に対応する球面又はそれを少し越える球面であることが望ましい。これにより、第1の接合レンズの像側の凸面の曲率が浮遊条件(アプラナティックな条件)を満たし、球面収差とコマ収差の発生が抑制される。その結果、高い開口数を実現することができる。また、第1の接合レンズの接合面を物体側に向けた凹面とすることで、この接合面の負の屈折力によりペッツバール和が補正される。
【0015】
第1レンズ群は、その正の屈折力により光線束の発散を小さくして、発散を抑えた光線束を第2レンズ群に導くように構成されている。第1レンズ群に含まれる少なくとも1枚の正レンズは、第2レンズ群へ導かれる光線束の発散の抑制に有効である。なお、少なくとも1枚の正レンズは、それぞれ単レンズであることが望ましく、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであることがさらに望ましい。
【0016】
第2レンズ群は、複数の接合レンズを含んでいる。第2レンズ群に含まれる複数の接合レンズで球面収差と色収差が補正される。対物レンズが高い開口数を有し且つアポクロマートを実現するためには、第2レンズ群に3枚接合レンズが含まれることが望ましい。
【0017】
第3レンズ群は、物体側から順に配置された、像側に凹面を向けた第2の接合レンズと、物体側に凹面を向けた負レンズと、像側に凸面を有する正レンズと、から構成されている。第2の接合レンズは、正レンズとその正レンズの像側に配置された負レンズとからなる接合レンズである。第2の接合レンズよりも像側に配置された負レンズと正レンズは、接合されていてもよく、また、それぞれ単レンズとして構成されてもよい。即ち、第3レンズ群は、像側に凹面を向けた第2の接合レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状を有する接合レンズから構成されてもよい。また、第3レンズ群は、第2の接合レンズと、物体側に凹面を向けた単レンズである負レンズと、像側に凸面を向けた単レンズである正レンズから構成されてもよい。
【0018】
第3レンズ群に含まれる第2の接合レンズは、強い負の屈折力を有する。これにより、ペッツバール和が補正されるとともに、球面収差とコマ収差も良好に補正される。なお、第2の接合レンズは、色収差を良好に補正するため、正レンズと負レンズとを接合した接合レンズであることが望ましい。
【0019】
第3レンズ群に含まれる物体側に凹面を向けた負レンズでは、物体側の凹面の負の屈折力によりペッツバール和が良好に補正されるとともに、諸収差も良好に補正される。また、第3レンズ群に含まれる物体側に凹面を向けた負レンズと像側に凸面を向けた正レンズでは、対物レンズから出射する際の光線高及び光線角度が調整される。なお、物体側に凹面を向けた負レンズと像側に凸面を向けた正レンズは、それぞれ物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであり、それらが接合した接合レンズとして構成されることが望ましい。このように構成することで、倍率色収差が補正される。
【0020】
本明細書において、光線束(pencil of light)とは、物体の一点(物点)から出射した光線の束のことである。また、レンズ成分とは、単レンズ、接合レンズを問わず、物点からの光線が通るレンズ面のうち物体側の面と像側の面の2つの面のみが空気(又は浸液)と接する一塊のレンズブロックのことである。
【0021】
対物レンズは、以下の条件式(1)を満たすように構成されている。
3.5 ≦ (H/f)×NA
ob ≦ 5.2 (1)
【0022】
但し、Hは対物レンズにおける軸上マージナル光線高さの最大値である。fは対物レンズの焦点距離である。NA
obは対物レンズの物体側の開口数である。なお、軸上マージナル光線とは、光軸上の物点からの発散光線束に含まれる、対物レンズの射出瞳の最も光軸から離れた位置(つまり、最も外側)を通過する光線のことである。
【0023】
条件式(1)は、高い開口数を実現しながら、標本中の広い範囲を中心から周辺まで十分な解像で且つ明るく高いコントラストで観察するための条件式である。(H/f)×NA
obが上限値を超えないことにより、マージナル光線高さが高くなりすぎることを防ぐことができる。このため、球面収差やコマ収差などの諸収差の発生量を小さくして、諸収差を良好に補正することが可能となる。また、(H/f)×NA
obが下限値を下回らないことにより、第2レンズ群で十分なマージナル光線高さを確保できるため、第3レンズ群でのマージナル光線高さを相対的に小さくすることができる。これにより、実質的に好ましい範囲にまで像面湾曲を補正することが可能となる。
【0024】
以上のように構成された対物レンズによれば、1.42以上の高開口数を有し、且つ、アポクロマートを実現することができる。
【0025】
以下、対物レンズの更に望ましい構成について説明する。
対物レンズは、以下の条件式(2)から条件式(5)を満たすように構成されることが望ましい。
1.8≦((H−L)/f)×NA
ob≦3.2 (2)
1≦(f
1/f)
/NA
ob≦1.4 (3)
1.75≦n
1≦1.9 (4)
9≦f
p/f≦17 (5)
【0026】
但し、Lは第3レンズ群における軸上マージナル光線高さの最小値である。f
1は第1の接合レンズの焦点距離である。n
1は第1のメニスカスレンズの屈折率である。f
pは対物レンズの同焦点距離である。なお、同焦点距離とは、対物レンズを顕微鏡に取り付け面から対物レンズの前側焦点位置までの距離のことであり、同焦距離ともいう。
【0027】
条件式(2)は、条件式(1)で得られる効果をさらに効果的に発揮するための条件式であり、像面湾曲補正のためのマージナル光線高さの上げ下げについて規定している。((H−L)/f)×NA
obが上限値を超えないことにより、第3レンズ群内部でのマージナル光線高さを十分に低くすることができる。これにより、第3群レンズでペッツバール和を効果的に補正することが可能となり、その結果、広視野に渡り像面湾曲を良好に補正することが可能となる。((H−L)/f)×NA
obが下限値を下回らないことにより、第3レンズ群内部でのマージナル光線高さが低くなりすぎることを防ぐことができる。このため、第3レンズ群が大きくなりすぎることを防ぐことができる。これに伴い、対物レンズ終端部付近での光線束の発散が適度に抑えられるため、対物レンズ終端部で光線束を平行光に変換する際に、極端に強い正の屈折力を必要としない。従って、平行光に変換する際に生じるコマ収差を小さくすることができる。
【0028】
条件式(3)は、先玉レンズで生じる高次収差とペッツバール和とをバランスよく補正するための条件式である。(f
1/f)
/NA
obが上限値を超えないことにより、先玉レンズである第1の接合レンズの屈折力が弱くなりすぎることを防ぐことが可能であり、第1の接合レンズから射出される光線束の発散を十分に小さくすることができる。そのため、それ以降の光学系へ入射する際の光線高さが高くなりすぎることを防ぐことができる。その結果、1.42以上の高NAの対物レンズにおいても球面収差や軸外収差を良好に補正することが可能となる。また、(f1/f)/NAobが下限値を下回らないことにより、第1の接合レンズの屈折力が強くなりすぎることを防ぐことができる。これにより、それ以降の光学系での光線高さが低くなりすぎることを防ぐことが可能となり、それ以降の光学系、特に第2レンズ群以降で像面湾曲を補正する目的で光線高を上げ下げすることが可能となる。このため、さらに良好に像面湾曲を補正することが可能となる。
【0029】
条件式(4)は、第1レンズ群での収差の発生量を抑えながら発散角が大きな光線を十分に屈折させるための条件式である。条件式(4)を満たすことで、第1のメニスカスレンズに入射する発散角が大きな光線を十分に曲げることができるため、第2レンズ群以降のレンズ群において、それらのレンズ群を通過する光線の高さを下げることができる。その結果、光学系全体での色収差の発生を極力抑えながら、高次の球面収差と高次のコマ収差の発生を抑えることができる。一般に、屈折率の高い硝材は高分散(低アッベ数)を有している。これを考慮すると、n
1が上限値を超えないことにより、アッベ数が小さくなりすぎることを回避することができるため、先玉レンズで発生する軸上色収差、倍率色収差の発生量を抑えることができる。また、n
1が下限値を下回らないことにより、光学系全体での高次の球面収差、高次のコマ収差の発生を抑えることができる。
【0030】
条件式(5)は、所定の同焦点距離を維持しながら広視野を確保するための条件式である。L/fが上限値を超えないことにより、対物レンズの同焦点距離が所定の距離を超えないようにしながら、対物レンズの焦点距離が短くなり過ぎることを防ぐことができる。これにより、対物レンズと所定の焦点距離を有する結像レンズとの組み合わせである顕微鏡光学系の倍率が高くなりすぎることを防ぐことができる。このため、広視野の観察に対応することが可能となる。L/fが下限値を下回らないことにより、顕微鏡光学系の倍率が低くなりすぎることを防ぐことができる。このため、高精細な観察に対応することが可能となる。
【0031】
対物レンズは、第1の負レンズを有し、さらに、以下の条件式(6)を満たすように構成されることが望ましい。
0.005 ≦ d/h
1 ≦ 0.1 (6)
【0032】
但し、dは第1の負レンズの光軸上の厚さである。h
1は第1の負レンズの物体側のレンズ面における軸上マージナル光線高さである。
【0033】
条件式(6)は、高次収差をより良く補正するための条件式である。条件式(6)を満たすことで既定の同焦点距離によって制限された対物レンズ内の限られた空間に余裕が生まれる。このため、レンズ間隔を調整して各レンズ面での生じる屈折力を大きくしたり、レンズ枚数を増やしたりすることが可能となり、高次収差をより良好に補正することが可能となる。d/h
1が上限値を超えないことにより、第1の負レンズが厚くなりすぎることを防ぐことができる。これにより、空間に余裕が生まれるため、高次収差を良好に補正することができる。また、d/h
1が下限値を下回らないことにより、第1の負レンズが薄くなりすぎることを防ぐことができる。このため、レンズ枠への接着時や組み立て時にレンズへ応力が掛かることによる収差発生を防ぐことができる。
【0034】
なお、対物レンズは、条件式(1)から条件式(5)の代わりに下記の条件式(1−1)から条件式(5−1)を満たすように構成されていてもよい。
3.8≦(H/f)×NA
ob≦4.8 (1−1)
2.4≦((H−L)/f)×NA
ob≦3.0 (2−1)
1.03≦(f
1/f)
/NA
ob≦1.2 (3−1)
1.8≦n
1≦1.89 (4−1)
10≦f
p/f≦16 (5−1)
以下、上述した対物レンズの実施例について説明する。
【0035】
[実施例1]
図1は、本実施例に係る対物レンズ1の断面図である。対物レンズ1は、物体側から順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3からなる、顕微鏡用の液浸系対物レンズである。
【0036】
第1レンズ群G1は、物体側から順に配置された、接合レンズCL1(第1の接合レンズ)と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL3と、からなる。接合レンズCL1は、最も物体側に配置された平面を物体側に向けた平凸レンズL1と、平凸レンズL1の像側に配置された物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2(第1のメニスカスレンズ)からなる。メニスカスレンズL3は、正レンズである。
【0037】
第2レンズ群G2は、複数の接合レンズ(接合レンズCL2、接合レンズCL3)を含んでいる。より詳細には、第2レンズ群G2は、物体側から順に配置された、接合レンズCL2と、接合レンズCL3と、両凸レンズL10からなる。
【0038】
接合レンズCL2は、正負正の3枚接合レンズからなる第1の色消しレンズ成分である。接合レンズCL2は、両凸レンズL4と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL5と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL6からなる。
【0039】
接合レンズCL3は、負正負の3枚接合レンズからなる第2の色消しレンズ成分である、接合レンズCL3は、像側に凹面を向けたメニスカスレンズL7と、両凸レンズL8と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL9からなる。接合レンズCL3は、接合レンズCL2の近くに、より具体的には、接合レンズCL2の最も像側のレンズ面s12と接合レンズCL3の最も物体側のレンズ面s13との光軸上の距離が接合レンズCL3の光軸上の厚さよりも小さくなる位置に、配置されている。
【0040】
第3レンズ群G3は、物体側から順に配置された、像側に凹面を向けた接合レンズCL4(第2の接合レンズ)と、物体側に凹面を向けた接合レンズCL5からなる。接合レンズCL4は、像側に凹面を向けたメニスカス形状を有し、物体側から順に、正レンズである両凸レンズL11と、負レンズである両凹レンズL12からなる。接合レンズCL5は、物体側に凹面を向けたメニスカス形状を有し、物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL13と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL14からなる。
【0041】
なお、対物レンズ1では、メニスカスレンズL5、メニスカスレンズL7、メニスカスレンズL9が条件式(6)を満たしている。即ち、メニスカスレンズL5、メニスカスレンズL7、メニスカスレンズL9は、対物レンズ1の第1の負レンズである。
【0042】
対物レンズ1のレンズデータは、以下のとおりである。なお、レンズデータ中のINFは無限大(∞)を示している。
対物レンズ1
s r d nd νd
1 INF 0
2 INF 0.17 1.52397 54.41
3 INF 0.152 1.51495 41
4 INF 0.756 1.51633 64.14
5 -3.0323 3.649 1.883 40.76
6 -3.3067 0.1
7 -10 1.306 1.883 40.76
8 -7.6719 0.15
9 13.0236 7.376 1.43875 94.93
10 -8.042 0.573 1.738 32.26
11 -28.0828 3.659 1.43875 94.93
12 -10.2544 0.311
13 45.4925 0.565 1.63775 42.41
14 14.4615 7.275 1.43875 94.93
15 -7.8092 0.564 1.63775 42.41
16 -32.0204 0.25
17 12.2183 5.141 1.43875 94.93
18 -24.5259 0.15
19 6.3796 5.386 1.43875 94.93
20 -12.7768 0.578 1.63775 42.41
21 3.7146 4.272
22 -3.3463 4.361 1.7725 49.6
23 -11.08 2.719 1.7847 26.29
24 -7.3475
【0043】
ここで、sは面番号を、rは曲率半径(mm)を、dは面間隔(mm)を、ndはd線に対する屈折率を、νdはアッベ数を示す。これらの記号は、以降の実施例でも同様である。なお、面番号s1,s2は物体面且つカバーガラスCGの物体側の表面を示している。面番号s3,s4,s24が示す面は、それぞれカバーガラスCGの像側の表面、対物レンズ1の最も物体側のレンズ面、対物レンズ1の最も像側のレンズ面である。屈折率nd3は、浸液IMの屈折率を示している。また、例えば、面間隔d1は、面番号s1が示す面から面番号s2が示す面までの光軸上の距離を示している。
【0044】
対物レンズ1の各種データは、以下のとおりである。なお、f
G1、f
G2、f
G3は、それぞれ第1レンズ群G1の焦点距離、第2レンズ群G2の焦点距離、第3レンズ群G3の焦点距離、βは対物レンズの倍率、FNは視野数、WDは作動距離である。その他のパラメータは、上述したとおりである。
【0045】
β=60、FN=22、WD=0.152mm、H=8.072mm、f=3mm、NA
ob=1.5、L=2.363mm、f
1=4.7916mm、n
1=1.833、f
p=45mm、f
G1=4.29mm、f
G2=15.05mm、f
G3=-15.1443mm
【0046】
メニスカスレンズL5を第1の負レンズとすると、dとh
1は、以下のとおりである。
d=0.573mm、h
1=16.0312mm、
【0047】
メニスカスレンズL7を第1の負レンズとすると、dとh
1は、以下のとおりである。
d=0.565mm、h
1=15.014mm、
【0048】
メニスカスレンズL9を第1の負レンズとすると、dとh
1は、以下のとおりである。
d=0.564mm、h
1=15.342mm、
【0049】
対物レンズ1は、以下に示すように、条件式(1)から条件式(6)を満たしている。
(1)(H/f)×NA
ob=4.036
(2)((H−L)/f)×NA
ob=2.8545
(3)(f
1/f)
/NA
ob=1.0648
(4)n
1=1.833
(5)f
p/f=15
(6)d/h
1=0.03574 (メニスカスレンズL5の場合)
(6)d/h
1=0.03763 (メニスカスレンズL7の場合)
(6)d/h
1=0.03676 (メニスカスレンズL9の場合)
【0050】
図2は、対物レンズ1と組み合わせて使用される結像レンズ10の断面図である。結像レンズ10は、無限遠補正型の対物レンズと組み合わせて物体の拡大像を形成する顕微鏡結像レンズである。結像レンズ10は、両凸レンズL1と、両凸レンズの像側に配置された物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2と、からなる接合レンズCL1である。結像レンズ10は、対物レンズ1の最も像側のレンズ面s24から結像レンズ10の最も物体側のレンズ面s1までの光軸上の距離が133mmになるように、配置されている。なお、結像レンズ10の焦点距離は180mmである。
【0051】
結像レンズ10のレンズデータは、以下のとおりである。
結像レンズ10
s r d nd νd
1 193.123 5.5 1.48749 70.23
2 -61.238 4.6 1.72047 34.71
3 -105.391
【0052】
図3は、対物レンズ1と結像レンズ10からなる光学系の収差図であり、対物レンズ1と結像レンズ10が形成する像面における収差を示している。
図3(a)は球面収差図であり、
図3(b)は正弦条件違反量を示した図であり、
図3(c)は非点収差図であり、
図3(d)はコマ収差図である。なお、図中の“M”はメリディオナル成分、“S”はサジタル成分を示している。
図3に示されるように、本実施例では、広い視野に渡って収差が良好に補正されている。
【0053】
[実施例2]
図4は、本実施例に係る対物レンズ2の断面図である。対物レンズ2は、物体側から順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3からなる、顕微鏡用の液浸系対物レンズである。
【0054】
第1レンズ群G1は、物体側から順に配置された、接合レンズCL1(第1の接合レンズ)と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL3と、からなる。接合レンズCL1は、最も物体側に配置された平面を物体側に向けた平凸レンズL1と、平凸レンズL1の像側に配置された物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2(第1のメニスカスレンズ)からなる。メニスカスレンズL3は、正レンズである。
【0055】
第2レンズ群G2は、複数の接合レンズ(接合レンズCL2、接合レンズCL3)を含んでいる。より詳細には、第2レンズ群G2は、物体側から順に配置された、接合レンズCL2と、接合レンズCL3と、両凸レンズL10からなる。
【0056】
接合レンズCL2は、正負正の3枚接合レンズからなる第1の色消しレンズ成分である。接合レンズCL2は、両凸レンズL4と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL5と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL6からなる。
【0057】
接合レンズCL3は、負正負の3枚接合レンズからなる第2の色消しレンズ成分であり、像側に凹面を向けたメニスカスレンズL7と、両凸レンズL8と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL9からなる。接合レンズCL3は、接合レンズCL2の近くに、より具体的には、接合レンズCL2の最も像側のレンズ面s12と接合レンズCL3の最も物体側のレンズ面s13との光軸上の距離が接合レンズCL3の光軸上の厚さよりも小さくなる位置に、配置されている。
【0058】
第3レンズ群G3は、物体側から順に配置された、像側に凹面を向けた接合レンズCL4(第2の接合レンズ)と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL13と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL14からなる。接合レンズCL4は、像側に凹面を向けたメニスカス形状を有し、物体側から順に、正レンズである両凸レンズL11と、負レンズである両凹レンズL12からなる。
【0059】
なお、対物レンズ2では、メニスカスレンズL5、メニスカスレンズL7、メニスカスレンズL9が条件式(6)を満たしている。即ち、メニスカスレンズL5、メニスカスレンズL7、メニスカスレンズL9は、対物レンズ2の第1の負レンズである。
【0060】
対物レンズ2のレンズデータは、以下のとおりである。
対物レンズ2
s r d nd νd
1 INF 0
2 INF 0.17 1.52397 54.41
3 INF 0.143 1.51495 41
4 INF 0.6 1.51633 64.14
5 -2.9657 4.088 1.883 40.76
6 -3.4989 0.1
7 -10 1.597 1.883 40.76
8 -7.2578 0.15
9 12.6465 7.37 1.43875 94.93
10 -8.042 0.523 1.738 32.26
11 -75.5769 4.357 1.43875 94.93
12 -10.1926 0.283
13 45.2348 0.523 1.63775 42.41
14 14.1108 6.542 1.43875 94.93
15 -8.2794 0.475 1.63775 42.41
16 -48.0863 0.25
17 12.1423 4.759 1.43875 94.93
18 -34.4139 0.15
19 6.4418 5.523 1.43875 94.93
20 -13.6512 0.597 1.63775 42.41
21 3.8526 4.37
22 -3.4655 3.461 1.7725 49.6
23 -10.3549 0.5
24 -12 2.536 1.80518 25.42
25 -7.3961
【0061】
面番号s4,s25が示す面は、それぞれ対物レンズ2の最も物体側のレンズ面、対物レンズ2の最も像側のレンズ面である。
【0062】
対物レンズ2の各種データは、以下のとおりである。
【0063】
β=60、FN=22、WD=0.143mm、H=7.973mm、f=3mm、NA
ob=1.5、L=2.519mm、f
1=5.0898mm、n
1=1.833、f
p=45mm、f
G1=4.36mm、f
G2=16.46mm、f
G3=-17.54mm
【0064】
メニスカスレンズL5を第1の負レンズとすると、dとh
1は、以下のとおりである。
d=0.523mm、h
1=16.472mm、
【0065】
メニスカスレンズL7を第1の負レンズとすると、dとh
1は、以下のとおりである。
d=0.523mm、h
1=14.824mm、
【0066】
メニスカスレンズL9を第1の負レンズとすると、dとh
1は、以下のとおりである。
d=0.475mm、h
1=14.674mm、
【0067】
対物レンズ2は、以下に示すように、条件式(1)から条件式(6)を満たしている。
(1)(H/f)×NA
ob=3.9865
(2)((H−L)/f)×NA
ob=2.727
(3)(f
1/f)
/NA
ob=1.131066667
(4)n
1=1.833
(5)f
p/f=15
(6)d/h
1=0.03175 (メニスカスレンズL5の場合)
(6)d/h
1=0.03528 (メニスカスレンズL7の場合)
(6)d/h
1=0.03237 (メニスカスレンズL9の場合)
【0068】
図5は、対物レンズ2と結像レンズ10からなる光学系の収差図であり、対物レンズ2と結像レンズ10が形成する像面における収差を示している。なお、結像レンズ10は、対物レンズ2の最も像側のレンズ面s25から結像レンズ10の最も物体側のレンズ面s1までの光軸上の距離が133mmになるように、配置されている。
図5(a)は球面収差図であり、
図5(b)は正弦条件違反量を示した図であり、
図5(c)は非点収差図であり、
図5(d)はコマ収差図である。
図5に示されるように、本実施例では、広い視野に渡って収差が良好に補正されている。
【0069】
[実施例3]
図6は、本実施例に係る対物レンズ3の断面図である。対物レンズ3は、物体側から順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3からなる、顕微鏡用の液浸系対物レンズである。
【0070】
第1レンズ群G1は、物体側から順に配置された、接合レンズCL1(第1の接合レンズ)と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL3と、両凸レンズL4からなる。接合レンズCL1は、最も物体側に配置された平面を物体側に向けた平凸レンズL1と、平凸レンズL1の像側に配置された物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2(第1のメニスカスレンズ)からなる。メニスカスレンズL3は、正レンズである。
【0071】
第2レンズ群G2は、複数の接合レンズ(接合レンズCL2、接合レンズCL3)を含んでいる。より詳細には、第2レンズ群G2は、物体側から順に配置された、接合レンズCL2と、接合レンズCL3と、両凸レンズL11からなる。
【0072】
接合レンズCL2は、正負正の3枚接合レンズからなる第1の色消しレンズ成分である。接合レンズCL2は、両凸レンズL5と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL6と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL7からなる。
【0073】
接合レンズCL3は、負正負の3枚接合レンズからなる第2の色消しレンズ成分であり、像側に凹面を向けたメニスカスレンズL8と、両凸レンズL9と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL10からなる。接合レンズCL3は、接合レンズCL2の近くに、より具体的には、接合レンズCL2の最も像側のレンズ面s14と接合レンズCL3の最も物体側のレンズ面s15との光軸上の距離が接合レンズCL3の光軸上の厚さよりも小さくなる位置に、配置されている。
【0074】
第3レンズ群G3は、物体側から順に配置された、像側に凹面を向けた接合レンズCL4(第2の接合レンズ)と、物体側に凹面を向けた接合レンズCL5からなる。接合レンズCL4は、像側に凹面を向けたメニスカス形状を有し、物体側から順に、正レンズである両凸レンズL12と、負レンズである両凹レンズL13からなる。接合レンズCL5は、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL14と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL15からなる。
【0075】
なお、対物レンズ3では、メニスカスレンズL6、メニスカスレンズL8、メニスカスレンズL10が条件式(6)を満たしている。即ち、メニスカスレンズL6、メニスカスレンズL8、メニスカスレンズL10は、対物レンズ3の第1の負レンズである。
【0076】
対物レンズ3のレンズデータは、以下のとおりである。
対物レンズ3
s r d nd νd
1 INF 0
2 INF 0.17 1.52397 54.41
3 INF 0.144 1.51495 41
4 INF 0.667 1.51633 64.14
5 -2.8462 3.705 1.883 40.76
6 -3.2561 0.1
7 -10 0.924 1.883 40.76
8 -8.8357 0.15
9 49.7862 1.2 1.883 40.76
10 -132.2999 0.15
11 16.1699 6.797 1.43875 94.93
12 -8.042 0.474 1.738 32.26
13 -30.4208 3.517 1.43875 94.93
14 -10.5162 0.366
15 36.573 0.502 1.63775 42.41
16 11.4502 7.533 1.43875 94.93
17 -8.6066 0.485 1.63775 42.41
18 -27.1528 0.249
19 10.3799 5.468 1.43875 94.93
20 -35.9049 0.15
21 7.0141 5.038 1.43875 94.93
22 -10.4018 0.57 1.63775 42.41
23 4.175 4.018
24 -3.1086 4.346 1.7725 49.6
25 -9.9919 2.737 1.7847 26.29
26 -7.1561
【0077】
面番号s4,s26が示す面は、それぞれ対物レンズ3の最も物体側のレンズ面、対物レンズ3の最も像側のレンズ面である。
対物レンズ3の各種データは、以下のとおりである。
【0078】
β=60、FN=22、WD=0.144mm、H=8.009mm、f=3mm、NA
ob=1.5、L=2.336mm、f
1=4.7086mm、n
1=1.833、f
p=45mm、f
G1=4.04mm、f
G2=14.3mm、f
G3=-13.82mm
【0079】
メニスカスレンズL6を第1の負レンズとすると、dとh
1は、以下のとおりである。
d=0.474mm、h
1=16.61mm、
【0080】
メニスカスレンズL8を第1の負レンズとすると、dとh
1は、以下のとおりである。
d=0.502mm、h
1=15.818mm、
【0081】
メニスカスレンズL10を第1の負レンズとすると、dとh
1は、以下のとおりである。
d=0.485mm、h
1=16.24mm、
【0082】
対物レンズ3は、以下に示すように、条件式(1)から条件式(6)を満たしている。
(1)(H/f)×NA
ob=4.0045
(2)((H−L)/f)×NA
ob=2.8365
(3)(f1/f)
/NA
ob=1.046355556
(4)n
1=1.833
(5)f
p/f=15
(6)d/h
1=0.02854 (メニスカスレンズL6の場合)
(6)d/h
1=0.03174 (メニスカスレンズL8の場合)
(6)d/h
1=0.02986 (メニスカスレンズL10の場合)
【0083】
図7は、対物レンズ3と結像レンズ10からなる光学系の収差図であり、対物レンズ3と結像レンズ10が形成する像面における収差を示している。なお、結像レンズ10は、対物レンズ3の最も像側のレンズ面s26から結像レンズ10の最も物体側のレンズ面s1までの光軸上の距離が133mmになるように、配置されている。
図7(a)は球面収差図であり、
図7(b)は正弦条件違反量を示した図であり、
図7(c)は非点収差図であり、
図7(d)はコマ収差図である。
図7に示されるように、本実施例では、広い視野に渡って収差が良好に補正されている。