(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された電磁誘導加熱装置は、以上のような構造をしており、コイルが巻回されたパイプ自体も断熱効果を有するとはいえ、内部の発熱体に加熱されて温度が上昇し、外部に放熱されてしまうことから、流体の加熱効率が低下している。
【0007】
また、特許文献1におけるパイプは、非磁性の絶縁体であるセラミック製であるので、金属製パイプなどに比べて割れ等の破損が生じやすい。
そのため、パイプの内部に高圧流体が流れると、パイプの内側と外側の圧力差により破損する可能性がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、流体の加熱効率を向上させるとともに、高圧流体の加熱も可能な小型の電磁誘導加熱装置を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る電磁誘導加熱装置は、
非磁性材料で筒状に形成され、一方の端部開口が流体の入口となる入口側開口であり、他方の端部開口が流体の出口となる出口側開口である筒状絶縁部材を備え、
前記筒状絶縁部材が前記出口側開口を除き外殻部材により囲繞され、
前記外殻部材には、前記筒状絶縁部材の前記入口側開口よりも前記出口側開口の近くに、前記外殻部材の内側に流体を流入する流入口が設けられ、
前記筒状絶縁部材の外周に電磁誘導コイルが巻回され、
前記筒状絶縁部材の内側に発熱磁性体が流路を形成して配設され、
前記外殻部材は、円筒状をなす円筒壁部の一端部が底壁部により閉塞された耐圧性を有する有底筒状容器と、前記有底筒状容器の開口を塞ぐ流出口を備えた基盤とからなり、
前記筒状絶縁部材の前記出口側開口が前記基盤に備えられた前記流出口に連結される
ことで、前記筒状絶縁部材が前記流出口を介して前記基盤に片持ち支持されることを特徴する。
【0010】
非磁性材料で筒状に形成され、一方の端部開口が流体の入口となる入口側開口であり、他方の端部開口が流体の出口となる出口側開口である筒状絶縁部材を備え、同筒状絶縁部材が出口側開口を除き外殻部材により囲繞されるので、外殻部材の内側には、外殻部材の内側で筒状絶縁部材の外周面の外側の環状空間と、筒状絶縁部材の内側の筒内空間と、外殻部材により囲繞される筒状絶縁部材の入口側開口が臨む前記環状空間と前記筒内空間を連通する連通空間とが構成される。
【0011】
外殻部材には、筒状絶縁部材の入口側開口よりも出口側開口の近くに流入口が設けられ、同流入口は、筒状絶縁部材の外周面の外側の環状空間に開口しており、流体は、筒状絶縁部材の出口側開口の近くの流入口から環状空間に流入され、同環状空間を筒状絶縁部材の入口側開口側まで流れ、環状空間から連通空間を通って筒状絶縁部材の入口側開口から内側の筒内空間に入り、筒内空間を通って外殻部材により囲繞されていない筒状絶縁部材の出口側開口から流出する。
【0012】
電磁誘導コイルによる電磁誘導により筒状絶縁部材内の発熱磁性体が発熱すると、筒状絶縁部材が加熱されて温度が上昇し、流入口から環状空間に流入した流体は、昇温した筒状絶縁部材の放熱により外殻部材に囲繞された環状空間で予め加熱された後に、連通空間を廻り込んで、筒状絶縁部材の内側の発熱磁性体に形成された流路を通過して、発熱した発熱磁性体により直接加熱されて流出する。
したがって、流入口から環状空間に流入した流体は、環状空間での第1段階の加熱と次の筒内空間での第2段階の加熱の2段階に亘って効率良く加熱されるので、流体の加熱効率が極めて高い。
【0013】
また、外殻部材の内側にあって、筒状絶縁部材の外側の環状空間と内側の筒内空間は、連通空間とともに共通の一つの空間を構成しているので、流入される流体が高圧であっても、筒状絶縁部材の外周面と内周面に加わる圧力に差がなく、筒状絶縁部材に応力が発生しないため、割れ等の破損が生じない。
【0014】
さらに、筒状絶縁部材は、出口側開口を除き外殻部材により囲繞されるので、筒状絶縁部材は外殻部材の内側に収容され、電磁誘導加熱装置を小型化することができる。
電磁誘導加熱装置を小型化しても、流体は環状空間と筒内空間の2つの加熱空間を順次通るので、加熱される流路長を長くして流体を十分加熱することができる。
外殻部材が、有底筒状容器と、その開口を塞ぐ流出口を備えた基盤とからなり、外殻部材により囲繞されない筒状絶縁部材の出口側開口が基盤に備えられた流出口に連結されるので、基盤の流出口に筒状絶縁部材の出口側開口が連結されて基盤に筒状絶縁部材が設けられ、同筒状絶縁部材を内部に収容するように有底筒状容器が覆う構造であり、よって有底筒状容器を筒状絶縁部材が設けられた基盤から取り外す簡単な作業により、有底筒状容器に覆われていた筒状絶縁部材を電磁誘導コイルとともに外部に露出して、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0015】
前記構成において、
前記外殻部材は、磁性体で構成されるようにしてもよい。
【0016】
この構成によれば、外殻部材が磁性体で構成されるので、外殻部材の内側に配設される電磁誘導コイルによる電磁誘導により外殻部材も発熱するため、流入口から環状空間に流入した流体は、筒状絶縁部材内の発熱磁性体の発熱により加熱され昇温した筒状絶縁部材の内側からの放熱による加熱されるのに加えて、外殻部材の発熱により外側から加熱されることになり、環状空間での第1段階の加熱が効果的に行われる。
【0017】
前記構成において、
前記外殻部材は、筒状をなす筒壁部の一端部が底壁部により閉塞された有底筒状容器と、前記有底筒状容器の開口を塞ぐ流出口を備えた平板状の基盤とからなり、
前記筒状絶縁部材の前記出口側開口が、前記基盤に備えられた流出口に連結されるようにしてもよい。
【0019】
前記構成において、
前記流入口は、前記基盤に設けられるようにしてもよい。
【0020】
この構成によれば、筒状絶縁部材の入口側開口よりも出口側開口の近くに設けられる流入口が基盤に設けられるので、基盤に設けられた流入口から流入した流体は、筒状絶縁部材の外周面の外側の環状空間を軸方向全長に亘って流動し、昇温した筒状絶縁部材の放熱を殆ど全て受けて、流体の第1段階の加熱が効率良く行われる。
また、基盤に流入口と流出管が設けられるので、外部からの配管も基盤に集まり、基盤から有底筒状容器を簡単に取り外すことができ、筒状絶縁部材周りのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0021】
前記構成において、
前記有底筒状容器の筒壁部が円筒状をなす円筒壁部であり、
前記筒状絶縁部材は、円筒状をなし、前記有底筒状容器の前記円筒壁部の内側に互いの円筒中心軸を一致させて配置されるようにしてもよい。
【0022】
この構成によれば、有底筒状容器の筒壁部が円筒状をなす円筒壁部であり、円筒状をなす筒状絶縁部材が有底筒状容器の前記円筒壁部の内側に互いの円筒中心軸を一致させて配置されるので、円筒壁部の内側で円筒状の筒状絶縁部材の外周面の外側の環状空間が円筒形状の空間を構成し、同環状空間を流体が抵抗なく滑らかに流動することができ、流体の圧損を低減することができる。
【0023】
前記構成において、
前記流出口は、前記基盤に貫通して固着された管状の流出管をなすようにしてもよい。
【0024】
この構成によれば、前記流出口が基盤に貫通して固着された管状の流出管で構成されるので、筒状絶縁部材の外側の環状空間と内側の筒内空間が、流出管により延長されるような構造となり、外殻部材の内側の流体の流路が長くなり、流体をより加熱することができる。
【0025】
前記構成において、
前記有底筒状容器は、底壁部がドーム状に膨出して形成されるようにしてもよい。
【0026】
この構成によれば、前記有底筒状容器の底壁部がドーム状に膨出することで、流入口から環状空間に流入した流体が、連通空間のドーム状の底面を円滑に廻り込んで、筒状絶縁部材に流入することができ、流体の圧損を減らすことができる。
【0027】
前記構成において、
前記筒状絶縁部材は、非磁性のセラミックで構成されるようにしてもよい。
【0028】
この構成によれば、前記筒状絶縁部材が非磁性のセラミックで構成されることで、電磁誘導により発熱することはなく、断熱効果も有するので、外周に巻回される電磁誘導コイルを保護することができ、熱変形しないので、電磁誘導コイルを確実に保持することができる。
【0029】
前記構成において、
前記電磁誘導コイルは、耐熱性構造を備えるようにしてもよい。
【0030】
この構成によれば、電磁誘導コイルが耐熱性構造を備えることで、電磁誘導コイルが巻回された筒状絶縁部材の外側の環状空間が高温になっても、電磁誘導コイルの酸化が防止されて十分な導電率を確保し、焼損等を防止することができる。
【0031】
前記構成において、
前記発熱磁性体は、前記筒状絶縁部材の流体の入口となる入口側開口から前記出口側開口に向けて直線的に延びる流路が複数配列された構造をなすようにしてもよい。
【0032】
この構成によれば、発熱磁性体は筒状絶縁部材の入口側開口から出口側開口に向けて直線的に延びる流路が複数配列された構造をなすので、流体の圧損を低減することができるとともに、発熱磁性体は電磁誘導コイルの磁力線が通る方向(筒状絶縁部材の中心軸方向)にほぼ均一な形状をなして、局部発熱を起こさず、流体を効率良く加熱することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、流入口から環状空間に流入した流体は、環状空間で予め加熱された後に、連通空間を廻り込んで、筒内空間に流入して発熱磁性体により直接加熱されることにより、環状空間と筒内空間で2段階に亘って高圧窒素ガスが効率良く加熱されて流出するので、流体の加熱効率が向上する。
【0034】
また、外殻部材の内側にあって、筒状絶縁部材の外側の環状空間と内側の筒内空間は、連通空間とともに共通の一つの空間を構成しているので、流入される流体が高圧であっても、筒状絶縁部材の外周面と内周面に加わる圧力に差がなく、筒状絶縁部材に応力が発生しないため、割れ等の破損が生じない。
【0035】
さらに、筒状絶縁部材は、出口側開口を除き外殻部材により囲繞されるので、筒状絶縁部材は外殻部材の内側に収容され、電磁誘導加熱装置を小型化することができる。
電磁誘導加熱装置を小型化しても、流体は環状空間と筒内空間の2つの加熱空間を順次通るので、加熱される流路長を長くして流体を十分加熱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る一実施の形態について
図1および
図2に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る一実施の形態の電磁誘導加熱装置1の縦断面図である。
本電磁誘導加熱装置1は、流体のうち特に気体を加熱するものであって、高圧の気体を電磁誘導により加熱して流出する装置である。
本実施の形態では、高圧の不活性ガスである高圧窒素ガスを用いる。
【0038】
電磁誘導加熱装置1は、有底筒状容器2と基盤3により外殻部材が構成されており、外殻部材のうち有底筒状容器2は、ステンレス製の耐圧性を有する容器であり、円筒壁部2aの一端にドーム状に膨出した底壁部2bを有する。
円筒壁部2aの底壁部2bとは反対の開口端部には、取付用フランジ2cが設けられている。
【0039】
基盤3は、円板状の金属板であり、有底筒状容器2の開口を塞ぐように被せられ、有底筒状容器2の取付用フランジ2cに当接される。
そして、取付用フランジ2cと基盤3とを、貫通したボルト4とナット5の螺合により締め付け、基盤3に有底筒状容器2が取り付けられる。
なお、基盤3は、中央に流出管35を備えている。
【0040】
有底筒状容器2の内側には、同軸に円筒状をなす筒状絶縁部材10が有底筒状容器2に接することなく挿入される。
筒状絶縁部材10は、有底筒状容器2の円筒壁部2aの内径より小さい外径を有する円筒状を形成する非磁性材料の非酸化物セラミックである窒化ケイ素の成形品である。
窒化ケイ素は、非磁性材料であるとともに、酸やアルカリに対する耐食性が強く、耐熱衝撃性に優れる。
【0041】
同筒状絶縁部材10の両端部にはフランジ部10a,10bが形成されている。
有底筒状容器2の底壁部2b側にフランジ部10aが位置し、有底筒状容器2の開口側にフランジ部10bが位置する。
筒状絶縁部材10において、筒状絶縁部材10内を流体の流れ方向から、流体の入口となる入口側開口10iの開口端部にフランジ部10aが形成され、流体の出口となる出口側開口10eの開口端部にフランジ部10bが形成される。
【0042】
この筒状絶縁部材10の内部に発熱磁性体20が配設される。
発熱磁性体20は、ステンレス製の平板状シート材21と波板状シート材22からなり、
図2に横断面図で示すように、平坦な平板状シート材21と山と谷が交互に繰り返して波形状を形成する波板状シート材22とが、交互に積層したものである。
【0043】
発熱磁性体20は、全体の輪郭形状は円筒状をなし、その外径は、筒状絶縁部材10の内径よりも幾らか小さい。
発熱磁性体20は、平板状シート材21と波板状シート材22を交互に積層したことで、直線的に形成された流路23が複数配列された構造をなす。
筒状絶縁部材10の内部に配設された発熱磁性体20における各流路23は筒状絶縁部材10の入口側開口10iから出口側開口10eに向けて直線的に延び、その流路23の指向する方向は、発熱磁性体20の輪郭形状の円筒の中心軸に対して、平行ではなく、幾らか角度を有する。
【0044】
筒状絶縁部材10の内周面には、一方の入口側開口10i側に偏った箇所に、周方向に複数突起部10cが突出形成されている。
この筒状絶縁部材10の内部に、輪郭形状が円筒状をなす発熱磁性体20が入口側開口10iを先にして挿入され、その後から筒状絶縁部材10の内部に嵌挿された環状ストッパ部材10sが、複数突起部10cとの間に、発熱磁性体20を若干の余裕を持って挟み、発熱磁性体20を配置する。
【0045】
したがって、輪郭形状が円筒状をなす発熱磁性体20は、筒状絶縁部材10の内部に内周面との間に若干の余裕を持って挿入されるとともに、突起部10cと環状ストッパ部材10sとの間に軸方向に若干の余裕を持って配置されるので、発熱磁性体20が発熱して熱膨張しても、余裕間隙で吸収される。
【0046】
そして、筒状絶縁部材10の外周には、発熱磁性体20が存在する軸方向位置に電磁誘導コイル25が巻回される。
電磁誘導コイル25は、導線の外周にニッケルメッキを施し、その上にガラス繊維を巻装しており、酸化を防止した耐熱性構造を備えている。
【0047】
なお、電磁誘導コイルの耐熱性構造には、コイル構造で耐熱性を備えるようにする空冷と、パイプコイル構造で液体により冷却を促して耐熱性を有する液冷とがある。
例えば、電磁誘導コイルを銅パイプ等を用いたパイプコイル構造として、パイプ内部に冷却水や冷却油を流してパイプを冷却することで、電磁誘導コイルの酸化を防止し、同時に焼損等も防止することができる。
【0048】
このように内部に発熱磁性体20が収容され外部に電磁誘導コイル25が巻回された筒状絶縁部材10は、筒状絶縁部材10の両端部に形成されたフランジ部10a,10bには、それぞれ金属製の円筒端部材11,12が、取り付けられる。
円筒端部材11,12は、筒状絶縁部材10と同じ内径を有する軸方向に短尺の扁平円筒状をなし、一端にフランジ部材11f,12fが取り付けられている。
【0049】
筒状絶縁部材10の一端のフランジ部10aにパッキン13aを介装して円筒端部材11のフランジ部材11fを当てがい、フランジ部材11fにフランジ部10aを間に挟むように一対の半割り環状部材15を対向させて、フランジ部材11fと半割り環状部材15を貫通したボルト17aとナット18aの螺合により締め付け、筒状絶縁部材10の一端に円筒端部材11を取り付ける。
【0050】
同様に、筒状絶縁部材10の他端のフランジ部10bにパッキン13bを介装して円筒端部材12のフランジ部材12fを当てがい、フランジ部材12fにフランジ部10bを間に挟むように一対の半割り環状部材16を対向させて、フランジ部材12fと半割り環状部材16を貫通したボルト17bとナット18bの螺合により締め付け、筒状絶縁部材10の他端に円筒端部材12を取り付ける。
【0051】
このように、内部に発熱磁性体20が収容され外部に電磁誘導コイル25が巻回されたセラミック製の筒状絶縁部材10は、両端に金属製の円筒端部材11,12が取り付けられてユニット化された状態で、基盤3に取り付けられ、有底筒状容器2に挿入される。
【0052】
基盤3は、中央に貫通固着された流出管35を備えている。
流出管35は、円筒端部材12と同径の大径円筒部35aの一端が同心に絞り加工されて円錐部35bと小径円筒部35cが形成されている。
同流出管35は、大径円筒部35aが基盤3に固着されて小径円筒部35cが外部に突出している。
【0053】
流出管35の外周囲の基盤3に、有底筒状容器2内に通じる流入口3aがあり、流入管30が外側から嵌入されている。
また、基盤3には、電磁誘導コイル25から延びる電力ケーブル32が有底筒状容器2内から外部に気密に貫通するケーブル挿通口31を有する。
【0054】
流出管35の大径円筒部35aの端部にフランジ部材36が嵌着されており、一方で、筒状絶縁部材10の出口側開口10eの開口端部に取り付けられた円筒端部材12にもフランジ部材14が嵌着されており、流出管35のフランジ部材36に円筒端部材12のフランジ部材14を当接して、ボルト37を貫通してナット38を螺合して締結することで、円筒端部材12と流出管35の大径円筒部35aとを連結して、基盤3に固着された流出管35に筒状絶縁部材10が円筒端部材12を介して取り付けられる。
【0055】
電磁誘導加熱装置1は、以上のように構成されており、有底筒状容器2の内側に同軸に筒状絶縁部材10が挿入され、基盤3に有底筒状容器2の開口が塞がれることで、有底筒状容器2と基盤3により筒状絶縁部材10が同筒状絶縁部材10の出口側開口10eを除き囲繞されるので、有底筒状容器2と基盤3の内側には、筒状絶縁部材10の外側で有底筒状容器2の円筒壁部2aの内側に環状空間Saが形成され、筒状絶縁部材10の内側に筒内空間Scが形成されるとともに、有底筒状容器2の底壁部2bの底面と筒状絶縁部材10の入口側開口10iとの間に、環状空間Saと筒内空間Scを連通する連通空間Sbが形成される。
【0056】
筒状絶縁部材10に巻回された電磁誘導コイル25に、電力ケーブル32を介して高周波電流が供給されると、電磁誘導コイル25が発生する高周波磁束が筒状絶縁部材10内の発熱磁性体20に作用して、発熱磁性体20の中に渦電流を生じ、発熱磁性体20の固有抵抗によってジュール熱を発生して、発熱磁性体20は発熱する。
また、筒状絶縁部材10とともに電磁誘導コイル25を外側から覆う有底筒状容器2もステンレス製であり、電磁誘導コイル25による電磁誘導により発熱する。
【0057】
発熱磁性体20の発熱により発熱磁性体20に構成される流路23が直接加熱され、筒状絶縁部材10の内側の筒内空間Scも加熱される。
また、筒状絶縁部材10は電磁誘導では発熱しないが、内側の発熱磁性体20の発熱により加熱されて温度が上昇し、昇温した筒状絶縁部材10からの放熱により有底筒状容器2に覆われた環状空間Saも間接的に加熱される。
さらに、環状空間Saは、電磁誘導により発熱する有底筒状容器2により外側から加熱される。
【0058】
電磁誘導加熱装置1の有底筒状容器2内には、図示しない気体加圧供給装置等から流入管30を通して高圧の窒素ガスが流入される。
高圧窒素ガスは、筒状絶縁部材10の入口側開口10iよりも出口側開口10eに近い流入管30により有底筒状容器2内の環状空間Saに流入し、環状空間Saを筒状絶縁部材10の出口側開口10e側から入口側開口10i側まで全長に亘って流れ、この間、高圧窒素ガスは、昇温した筒状絶縁部材10の放熱および有底筒状容器2の発熱により有底筒状容器2に覆われた環状空間Saで、予め効率良く加熱される。
【0059】
その後、予め加熱された高圧窒素ガスは、連通空間Sbを廻り込んで、筒状絶縁部材10の入口側開口10iの開口端部の円筒端部材11から筒内空間Scに流入し、筒内空間Scの発熱した発熱磁性体20に直線的に形成された複数の流路23を通過することにより、発熱した発熱磁性体20により直接に加熱されて筒状絶縁部材10の出口側開口10eから出て流出管35に入り流出管35から流出する。
【0060】
このように、流入管30から環状空間Saに流入された高圧窒素ガスは、上流側の環状空間Saで第1段階の加熱がなされ、次いで、下流側の筒内空間Scで第2段階の加熱がなされ、2段階に亘って効率良く加熱され、高温高圧窒素ガスとして流出される。
この加熱された高圧窒素ガスは、所要の装置、例えばタイヤの加硫装置等に供給される。
【0061】
以上のように、本電磁誘導加熱装置1では、電磁誘導コイル25が発生する高周波磁束により筒状絶縁部材10内の発熱磁性体20および筒状絶縁部材10の外側の有底筒状容器2が発熱すると、発熱磁性体20により筒状絶縁部材10が加熱されて温度が上昇し、流入管30により基盤3の流入口3aから環状空間Saに流入した高圧窒素ガスは、昇温した筒状絶縁部材10の放熱と有底筒状容器2の発熱により有底筒状容器2に覆われた環状空間Saで予め加熱され、その後、予め加熱された高圧窒素ガスは、連通空間Sbを廻り込んで、筒状絶縁部材10の筒内空間Scに流入し、筒内空間Scの発熱磁性体20に形成された流路23を通過して、発熱した発熱磁性体20により直接加熱されて流出管35から流出する。
したがって、本電磁誘導加熱装置1は、環状空間Saと筒内空間Scで2段階に亘って高圧窒素ガスが効率良く加熱されるので、窒素ガスの加熱効率が極めて高い。
【0062】
また、高圧窒素ガスが流入される耐圧性の有底筒状容器2の内部にあって、筒状絶縁部材10の外側の環状空間Saと内側の筒内空間Scは、連通空間Sbとともに共通の一つの空間を構成しているので、流入される窒素ガスがかなり高圧であっても、セラミック製の筒状絶縁部材10の外周面と内周面に加わる圧力に差がなく、筒状絶縁部材10に応力が発生しないため、割れ等の破損が生じない。
【0063】
本電磁誘導加熱装置1は、有底筒状容器2の内側に同軸に挿入された筒状絶縁部材10により、筒状絶縁部材10の外側で有底筒状容器2の円筒壁部2aの内側の環状空間Saと筒状絶縁部材10の内側の筒内空間Scとが形成されるともに、有底筒状容器2の底壁部2bの底面と対向する筒状絶縁部材10の入口側端部との間に連通空間Sbが形成されるので、流体は外側の環状空間Saから内側の筒内空間Scに廻り込んで、流路長を長くして流体を十分加熱することができるとともに、電磁誘導加熱装置1の軸方向幅を小さく抑えて小型化することができる。
【0064】
流入口3aは基盤3に設けられ、電磁誘導コイル25が巻回された筒状絶縁部材10が、基盤3に流出管35を介して一体に組付けられるので、基盤3に一体に組付けられた筒状絶縁部材10を覆うように被せられた有底筒状容器2を、ボルト4とナット5の締結を解いて基盤3から取り外す簡単な作業により、基盤3に一体に組付けられた筒状絶縁部材10が外部に露出するので、電磁誘導コイル25や発熱磁性体20等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0065】
なお、内部に発熱磁性体20が収容され外部に電磁誘導コイル25が巻回されたセラミック製の筒状絶縁部材10は、両端に金属製の円筒端部材11,12が取り付けられユニット化されているので、このユニット化されたものを、基盤3に貫通固着された流出管35からボルト37とナット38の締結を解いて取り外すことにより、ユニット全体を交換することも容易にできる。
【0066】
筒状絶縁部材10の入口側開口10iよりも出口側開口10eの近くに設けられる流入管30(流入口3a)が基盤3に設けられるので、基盤3に設けられた流入管30から流入した流体は、筒状絶縁部材10の外周面の外側の環状空間Saを筒状絶縁部材10の出口側開口10e側から入口側開口10i側まで軸方向全長に亘って流動し、この間、高圧窒素ガスは昇温した筒状絶縁部材10の放熱を殆ど全て受けて、高圧窒素ガスの第1段階の加熱が効率良く行われる。
また、基盤3に流入管30と流出管35が設けられるので、外部からの配管も基盤3に集まり、基盤3から有底筒状容器2をより簡単に取り外すことができ、筒状絶縁部材10周りの電磁誘導コイル25等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0067】
有底筒状容器2の円筒壁部2aの内側に、円筒状をなす筒状絶縁部材10が互いの円筒中心軸を一致させて配置されるので、円筒壁部2aの内側で円筒状の筒状絶縁部材10の外周面の外側の環状空間Saが円筒形状の空間を構成し、同環状空間Saを流体が抵抗なく滑らかに流動することができ、流体の圧損を低減することができる。
【0068】
高圧窒素ガスの流出口が基盤3に貫通して固着された管状の流出管35で構成されるので、筒状絶縁部材10の外側の環状空間Saと内側の筒内空間Scが、流出管35により延長されるような構造となり、有底筒状容器2の内側の流体の流路が長くなり、流体をより加熱することができる。
【0069】
有底筒状容器2の底壁部2bがドーム状に膨出することで、流入口3aから環状空間Saに流入した流体が、連通空間Sbのドーム状の底面を円滑に廻り込んで、筒状絶縁部材10に流入することができ、流体の圧損を低減することができる。
【0070】
筒状絶縁部材10は非酸化物セラミックである窒化ケイ素で構成されるので、筒状絶縁部材10自体が電磁誘導により発熱することはなく、断熱効果も有するので、外周に巻回される電磁誘導コイル25を保護することができ、熱変形しないので、電磁誘導コイル25を確実に保持することができる。
【0071】
電磁誘導コイル25は、導線の外周にニッケルメッキを施し、その上にガラス繊維を巻装して酸化を防止した耐熱性構造を備えているので、電磁誘導コイル25が巻回された筒状絶縁部材の外側の環状空間Saが高温になっても、電磁誘導コイル25の酸化が防止されて十分な導電率を確保し、焼損等を防止することができる。
【0072】
図2を参照して、発熱磁性体20は、平板状シート材21と波板状シート材22を交互に積層したことで、筒状絶縁部材10の入口側開口10iから出口側開口10eに向けて直線的に延びる流路23が複数配列された構造をなすので、流体の圧損を低減することができるとともに、電磁誘導コイル25の磁力線が通る方向(筒状絶縁部材10の中心軸方向)にほぼ均一な形状をなすので、局部発熱を起こさず、流体を効率良く加熱することができる。
【0073】
発熱磁性体20における筒状絶縁部材10の入口側開口10iから出口側開口10eに向けて直線的に延びる流路23の指向する方向は、発熱磁性体20の輪郭形状の円筒の中心軸に対して、平行ではなく、幾らか角度を有するので、発熱磁性体20の輪郭形状の円筒の中心軸方向の長さ(軸方向幅)よりも中心軸と幾らか角度を有する直線的流路を長くすることができ、流体をより加熱し、かつ発熱磁性体20の軸方向幅を小さく抑えることで、電磁誘導加熱装置1の軸方向幅を小さくして電磁誘導加熱装置1を小型化することができる。
【0074】
以上の電磁誘導加熱装置1では、発熱磁性体20がステンレス製の平板状シート材21と波板状シート材22を交互に積層したことで、直線的に延びる流路が複数配列された構造のものであったが、磁性を有する例えばステンレス製のパイプを束ねた発熱磁性体を用いることもできる。
【0075】
図3は、ステンレス製のパイプ41を束ねた発熱磁性体40の斜視図である。
同径のパイプ41を複数本概ね円形に束ねて、互いを溶接して発熱磁性体40を構成している。
この発熱磁性体40が円筒状の筒状絶縁部材10の内部に配設されると、筒状絶縁部材10の入口側開口から出口側開口に向けて直線的に延びる各パイプ41が構成する流路42が複数配列された構造をなすので、流体の圧損を低減することができるとともに、電磁誘導コイル25の磁力線が通る方向(筒状絶縁部材10の中心軸方向)にほぼ均一な形状をなすので、局部発熱を起こさず、流体を効率良く加熱することができる。
【0076】
また、
図4に示される発熱磁性体50は、複数本のステンレス製のパイプ51の両端を、相対向する一対のフランジ部材53,54にそれぞれ嵌挿して、一対のフランジ部材53,54により各パイプ51が支持されている。
各パイプ51が構成する流路52は、一方のフランジ部材53に嵌挿した入口側端部から他方のフランジ部材54に嵌挿した出口側端部に向けて直線的に延び、互いに平行に配列された構造をなすので、流体の圧損を低減することができるとともに、局部発熱を起こさず、流体を効率良く加熱することができる。
そして、本発熱磁性体50は、パイプを互いに溶接する必要がなく、部品点数を削減し、組立作業を容易にすることができる。
【0077】
また、発熱磁性体としては、金属粉末を粉末冶金法により成型して焼結したものを用いることもできる。
図5は、粉末冶金法により形成した発熱磁性体60の横断面図である。
発熱磁性体60は、磁性を有するステンレス系の金属粉末を粉末冶金法により円柱形状に成型して焼結したものに、ドリルにより貫通加工をして複数の流路61を直線的に形成している。
かかる発熱磁性体60を前記実施の形態の発熱磁性体20の代わりに筒状絶縁部材10の内側に配置するものである。
【0078】
前記実施の形態と同様に、電磁誘導コイル25が発生する高周波磁束により筒状絶縁部材10内の発熱磁性体50が発熱すると、筒状絶縁部材10が加熱されて温度が上昇し、流入管30(流入口3a)から環状空間Saに流入した流体は、昇温した筒状絶縁部材10の放熱により有底筒状容器2に覆われた環状空間Saで予め加熱された後に、筒状絶縁部材10の内側の発熱磁性体60に形成された流路61を通過して、発熱した発熱磁性体60により直接加熱されることにより、上流側の環状空間Saと下流側の筒内空間Scで2段階に亘って高圧窒素ガスが効率良く加熱されるので、窒素ガスの加熱効率が極めて高い。
【0079】
ただし、発熱磁性体60の複数の流路61の互いの間が肉厚に中実であることから、流体の圧損は、前記実施の形態より劣る。
その他、発熱磁性体としては、磁性を有する例えば、断面がハニカム形状をなすハニカム材やステンレス製の小球を集合させたもの、あるいはステンレス製の棒材を隙間を設けて集合させたものなどがある。
小球を集合した発熱磁性体は、小球どうしの間の空間が流路を構成し、棒材を集合した発熱磁性体は、棒材間の隙間が流路を構成する。
【0080】
また、以上の実施の形態では、加熱する流体を窒素ガスとしていたが、空気であってもよい。
ただし、空気の場合は、窒素ガスと違い加熱による酸化作用が問題となるので、筒状絶縁部材は、窒化ケイ素等の非酸化物セラミックで構成したり、電磁誘導コイル等は、前記電磁誘導コイル25のように、酸化を防止した耐熱性構造を備えている必要がある。
【0081】
以上、本発明に係る実施の形態に係る電磁誘導加熱装置について説明したが、本発明の態様は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むものである。