(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁層は、前記二次コイルに加えて前記高圧整流平滑回路を更に包含するように設けられ、前記導電層は、前記絶縁層を介して前記二次コイル及び前記高圧整流平滑回路の両方の周囲に設けられる、請求項1に記載のX線高電圧装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るX線高電圧装置6及び高電圧発生器71、72を説明する。なお、以下の説明では、重複する説明を適宜省略する。
【0011】
(実施形態)
図1、
図2、
図3、
図4、
図5及び
図6を参照しながら、高圧トランス618と高圧整流平滑回路6191から6192の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る高圧トランス618の一つをZX平面に平行な平面により切断し、−Y方向から示した図である。
図1の高圧トランス618は、外鉄型単相トランスで、コア617の中央脚に一つの一次コイル616と、n個の二次コイルI11からI1nを同軸上に巻いてある。なお、
図1のコア617はEER型フェライト・コアである。一次コイル616は、巻型631の上に巻かれ、コア617と絶縁される。一次コイル616は、高圧トランス618に設けられる入力側のコイルである。一次コイル616の上には、絶縁フィルム632と、シールド板633がある。n個の二次コイルI11からI1nは、絶縁層641から64nで覆われ、更に、絶縁層641から64nの外側には、導電層651から65nによって覆われている。二次コイルI11からI1nは、高圧トランス618に設けられる出力側のコイルである。
【0012】
図2は、実施形態に係る高圧トランス618の及び高圧トランス618に接続された高圧整流平滑回路619nの一つをXY平面に平行な平面により切断し、樹脂よりも内側の部分を+Z方向から見た図である。
図2では、n個の二次コイルのうちI1nを例に説明しているが、二次コイルI11からI1n−1も同じ構造である。シールド板633は、その巻き始めと巻き終わりが短絡しないように、絶縁フィルム634で絶縁される。高圧整流平滑回路619nには、二次コイルI1nの2つの端子が接続され、二次コイルI1nに誘導された電圧を整流・平滑し、直流電圧を端子66nと67nに出力する。
図2では、二次コイルI1nと高圧整流平滑回路619nを一体化し、導電層65nで包んだ例を示したが、二次コイルI1nと高圧整流平滑回路619nを分離し、二次コイルI1nのみを導電層65nで包んでもよい。
【0013】
図3は、実施形態に係る高圧トランス618及び、高圧トランス618に接続された高圧整流平滑回路6191から619nをYZ平面に平行な平面により切断し、+X方向から示した図である。高圧整流平滑回路6191から619nの出力端子は縦続接続され、これらの両端に直流の高電圧が出力される。高圧整流平滑回路6191から619nは、コッククロフト・ウォルトン回路、倍電圧整流回路又は、全波整流回路で構成することができる。導電層651から65nは、樹脂PLで覆われ、コア617、一次コイル616及び、シールド板633と絶縁される。
【0014】
絶縁層641から絶縁層64nは、
図1、
図2及び
図3に示すように、それぞれ二次コイルI11から二次コイルI1nを包んでいる。すなわち、絶縁層641から絶縁層64nは、それぞれ二次コイルI11から二次コイルI1nを収納する絶縁体で作製された容器である。或いは、絶縁層641から絶縁層64nは、それぞれ二次コイルI11から二次コイルI1nを収納する絶縁体で作製された中空の部材である。
【0015】
これらの絶縁層は、例えば、溶融した樹脂に二次コイルを浸漬することにより形成される。或いは、これらの絶縁層は、二次コイルに熱硬化性樹脂の粉末を付着させ、これを加熱することにより形成される。また、これらの方法を1気圧あるいは減圧した大気中又は、不活性ガス中で実施した場合、二次コイルI11から二次コイルI1nの巻線間に空気又は、不活性ガスを残すことができる。
【0016】
なお、絶縁層641から絶縁層64nは、二次コイルI11から二次コイルI1nそれぞれに加え、高圧整流平滑回路6191から高圧整流平滑回路619nそれぞれを包んでいてもよい。また、絶縁層641から絶縁層64nは、二次コイルI11から二次コイルI1nそれぞれではなく、高圧整流平滑回路6191から高圧整流平滑回路619nそれぞれを包んでいてもよい。
【0017】
また、導電層651と高圧整流平滑回路6191との間、導電層652と高圧整流平滑回路6192との間から導電層65nと高圧整流平滑回路619nとの間の少なくとも一つに絶縁層が設けられていてもよい。
【0018】
導電層651から導電層65nは、
図3、
図4及び
図5に示すように、導電性を有する中空の部材である。導電層651から導電層65nは、それぞれ二次コイルI11及び高圧整流平滑回路6191から二次コイルI1n及び高圧整流平滑回路619nを収納している。すなわち、導電層651から導電層65nは、
図5に示すように、それぞれ二次コイルI11及び高圧整流平滑回路6191から二次コイルI1n及び高圧整流平滑回路619nを覆うように設けられる。更に言い換えると、導電層651から導電層65nは、
図5に示すように、それぞれ二次コイルI11及び高圧整流平滑回路6191から二次コイルI1n及び高圧整流平滑回路619nの全面を包含するように設けられる。
【0019】
また、導電層651から導電層65nは、
図3、
図4及び
図5に示すように、それぞれ絶縁層641から絶縁層64nを収納している。すなわち、導電層651から導電層65nは、
図3、
図4及び
図5に示すように、それぞれ絶縁層641から絶縁層64nを覆うように設けられる。更に言い換えると、導電層651から導電層65nは、
図3、
図4及び
図5に示すように、それぞれ絶縁層641から絶縁層64nの全面包含するように設けられる。つまり、導電層651、導電層652から導電層65nは、各絶縁層の外側に形成されている。
【0020】
なお、導電層651から導電層65nは、それぞれ二次コイルI11から二次コイルI1nを収納する中空の領域と、それぞれ高圧整流平滑回路6191から高圧整流平滑回路619nを収納する中空の領域を有していてもよい。
【0021】
また、導電層651から導電層65nは、それぞれ二次コイルI11から二次コイルI1nのみを収納してもよい。すなわち、導電層651から導電層65nは、それぞれ二次コイルI11から二次コイルI1nのみを覆うように設けてもよい。更に言い換えると、導電層651から導電層65nは、それぞれ二次コイルI11から二次コイルI1nのみの全面を包含するように設けてもよい。或いは、導電層651から導電層65nは、それぞれ高圧整流平滑回路6191から高圧整流平滑回路619nのみを収納してもよい。すなわち、導電層651から導電層65nは、それぞれ高圧整流平滑回路6191から高圧整流平滑回路619nのみを包んでいてもよい。
【0022】
ただし、導電層651から導電層65nが高圧整流平滑回路6191から高圧整流平滑回路619nそれぞれを包んでいる場合、導電層651から導電層65nは、それぞれ高圧整流平滑回路6191から高圧整流平滑回路619nの一点と電気的に接続される。
【0023】
具体的には、導電層651から導電層65nは、高圧整流平滑回路6191から高圧整流平滑回路619nの出力端子のうち、接地電圧に近い方の端子と電気的に接続される。
【0024】
導電層651から導電層65nは、導電性を有していればよい。このため、導電層651から導電層65nは、例えば、金属膜、カーボンが練り込まれた樹脂により作製された膜である。なお、金属膜は、例えば、蒸着により形成される。また、カーボンが練り込まれた樹脂により作製された膜は、例えば、各絶縁層にカーボンを含む樹脂を塗布することにより形成される。
【0025】
導電層651から導電層65nの周囲は、
図3、
図4及び
図5に示すように、樹脂PLで満たされている。
【0026】
図4は、
図1の二次コイルI1nと、それを包む絶縁層64n及び、導電層65nを拡大した図である。二次コイルI1nの外側に薄い皮膜状の絶縁層64nがあり、さらにその外側に薄い皮膜状の導電層65nがある。二次コイルI1nの巻線間には空隙があり、乾燥空気又は、不活性ガスがある。二次コイルI1nの巻線間に樹脂が存在しないため、巻線間分布容量を減らすことができる。
図4では、二次コイルI1nの巻線として自己融着電線を使用しボビンを不要にする。絶縁層64nと導電層65nを実現する別の方法として、
図5のように外側に導電塗装又は、金属蒸着などによる導電処理を施した薄い樹脂ケースに二次コイルI1nを納める方法もある。あるいは、樹脂にカーボン等を混合し、導電性を持たせた樹脂でケースを作り、二次コイルI1nを収納する方法もある。この場合は、二次コイルI1nの巻線被覆が絶縁層を形成する。樹脂ケースは、二次コイルI1nを巻くボビンとして使用することもできる。なお、二次コイルI11から二次コイルI1n−1も同様の構造を有する。
【0027】
図6は、フェライトで作製されたコア617の代わりに、例えば、ケイ素鋼、方向性電磁鋼、アモルファス磁性材料又は、ナノ結晶磁性材料などにより作製されたコアを使用した場合のコア形状を示すものである。この場合、コアはU−Uコア617aと、617bで構成される。これらは、帯状のコア材料を型に巻きとった後、2つに切断して製作するので、カット・コアとも呼ばれる。カット・コアを使用した場合、コア断面は一般的に方形になるため、コイルも方形に巻く場合がある。
【0028】
図7を参照しながら、実施形態に係るX線高電圧装置6の回路構成について説明する。
図7に示すように、X線高電圧装置6は、三相交流電源ACの電圧を入力とし、正の直流高電圧と負の直流高電圧をX線管7に供給する。X線管7は、中性点接地型で、アノードに正の直流高電圧を、カソードに負の直流高電圧を印加する。
【0029】
X線高電圧装置6は、AC/DCコンバータ回路60と、2つのインバータ回路61、62と、2つのコイル615、625と、2つの高電圧発生器71、72とを有する。AC/DCコンバータ回路60は、三相整流ダイオード・ブリッジ601と、平滑コンデンサ602とを有する。インバータ回路61は、レール・コンデンサ610と、スイッチング素子611から614とを有する。スイッチング素子611から614は図示しない制御回路によりオン、オフ制御され、直流電圧を交流電圧に変換する。インバータ回路62は、レール・コンデンサ620と、スイッチング素子621から624とを有する。スイッチング素子621から624は図示しない制御回路によりオン、オフ制御され、直流電圧を交流電圧に変換する。すなわち、スイッチング素子611から624のゲートは、図示しない制御回路によりオン、オフ制御され、直流電圧を交流電圧に変換する。スイッチング素子611から614及び、スイッチング素子621から624は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と、ダイオードの逆並列回路の例を示したが、IGBTの代わりに、バイポーラ・トランジスタ、パワーMOSFET、ジャンクションFETなどを使用してもよい。高電圧発生器71は、高圧トランス618と、高圧整流平滑回路6191から619nとを有する。同様に、高電圧発生器72は、高圧トランス628と、高圧整流平滑回路6291から629nとを有する。高圧トランス628は、外鉄型単相トランスで、コア627の中央脚に一つの一次コイル626と、n個の二次コイルI21からI2nを同軸上に巻いてある。一次コイル626は、高圧トランス628に設けられる入力側のコイルである。二次コイルI21からI2nは、高圧トランス628に設けられる出力側のコイルである。また、コア627はEER型フェライト・コアである。
図7では、高圧整流平滑回路6191から619n及び、高圧整流平滑回路6291から629nとして、2段のコッククロフト・ウォルトン回路の例を示しているが、全波整流回路あるいは、倍電圧整流回路を使用してもよい。コイル615は、インバータ回路61と高電圧発生器71の間に接続される。コイル615の替りに、高圧トランス618の漏れインダクタンスを使うこともできる。コイル625は、インバータ回路62と高電圧発生器72の間に接続される。コイル625の代わりに、高圧トランス628の漏れインダクタンスを使うことにしても構わない。
【0030】
高電圧発生器71内の高圧整流平滑回路6191から619nは、それぞれ正の直流電圧を出力し、これらの出力はカスケード接続されている。高圧整流平滑回路6191のマイナス出力端子は接地されており、高圧整流平滑回路619nのプラス出力端子に正の直流高電圧が得られる。同様に、高電圧発生器72内の高圧整流平滑回路6291から629nは、それぞれ負の直流電圧を出力し、これらの出力はカスケード接続されている。高圧整流平滑回路6291のプラス出力端子は接地されており、高圧整流平滑回路629nのマイナス出力端子に負の直流高電圧が得られる。
【0031】
図7では、正の高電圧を発生する高電圧発生器71と、負の高電圧を発生する高電圧発生器72を分けたが、これらをまとめて一つの高電圧発生器としてもよい。
【0032】
インバータ回路61とインバータ回路62の位相を90°ずらして運転すると、X線管7に印加される電圧のリプルを低減することができる。また、高圧トランス618及び、高圧トランス628の複数ある二次巻線の極性を交互に逆転させると、X線管7に印加される電圧のリプルをさらに低減することができる。
【0033】
図8は、陽極接地型X線管用のX線高電圧装置の高電圧発生器73とX線管7を示す回路図である。高圧整流平滑回路6891から689n及び、高圧整流平滑回路6291から629nは負の直流電圧を出力する。これらは全てカスケード接続され、高圧整流平滑回路6891のプラス出力端子が接地されており、高圧整流平滑回路629nのマイナス出力端子に負の直流高電圧が得られる。X線管7のアノードは接地され、そのカソードに負の直流高電圧が印加される。
【0034】
図7の回路の場合と同様に、高圧トランス688及び、高圧トランス628を駆動するインバータ回路の運転位相を90°ずらすと、X線管7に印加される電圧のリプルを低減することができる。また、高圧トランス688及び、高圧トランス628の複数ある二次巻線の極性を交互に逆転させると、X線管7に印加される電圧のリプルをさらに低減することができる。なお、高圧トランス688は、
図8に示すように、一次コイル686と、コア687と、二次コイルI81からI8nとを備える。
【0035】
X線高電圧装置6は、インバータを三つ以上又は一つ有していてもよい。X線高電圧装置6は、一つのインバータにより一つの高圧トランスの一次コイルに交流電流を供給してもよい。或いは、X線高電圧装置6は、一つのインバータにより複数の高圧トランスの一次コイルに交流電流を供給してもよい。
【0036】
次に、導電層651から導電層65nの効果を説明する。
【0037】
導電層65nは、二次コイルI1nの巻線間の全ての隙間を包んでいる。また、導電層65nは、導電性を有する。このため、導電層65n全体の電位は、一つの値となる。したがって、二次コイルI1nの巻線間の全ての隙間は、導電層65nの外側の環境に関らず、電圧の印加を受けることがない。このため、導電層65nは、二次コイルI1nの巻線間の各隙間で発生するコロナ放電によるX線高電圧装置6の破損を防止することができる。これらは、導電層651、導電層652等についても同様である。
【0038】
また、X線高電圧装置6内の高電圧発生器71、72は、導電層651、導電層652から導電層65nによりコロナ放電の発生を防止することができるため、二次コイルI11、二次コイルI12から二次コイルI1nの巻線間の隙間を樹脂で満たす必要が無い。このため、X線高電圧装置6内の高電圧発生器71、72の製造工程は、簡略化される。さらに、巻線間の隙間は、樹脂で満たされることがないため、巻線間の分布容量が増加することがない。
【0039】
ここで、この分布容量は、二次コイルI11、二次コイルI12から二次コイルI1nそれぞれに並列接続されたコンデンサと考えることができる。このため、X線高電圧装置6内の高電圧発生器は、無効電流の増加を抑制することができる。したがって、X線高電圧装置6は、インバータの過熱及び効率の低下を抑制することができる。
【0040】
また、X線高電圧装置6が有する高圧トランスは、共振周波数に近い交流電流が入力された場合、インピーダンスが大きくなってしまい通常のトランスとして使用することができなくなる。しかし、X線高電圧装置6内の高電圧発生器71、72は、上述した通り、二次コイルI11から二次コイルI1nの分布容量の増加を抑制することができる。このため、X線高電圧装置6は、インバータが出力する交流電流の周波数を上げることができるようになる。さらに、これにより、X線高電圧装置6の小型化が実現する。
【0041】
導電層65nは、高圧整流平滑回路619nを包んでいる。また、導電層65nは、導電性を有し、高圧整流平滑回路619nの一点と電気的に接続されている。このため、導電層65n全体の電位は、高圧整流平滑回路619nの当該一点の電位と等しくなる。したがって、導電層65nは、高圧整流平滑回路619nとX線高電圧装置6の他の構成要素との間で発生するコロナ放電によるX線高電圧装置6の破損を抑制することができる。これは、高圧整流平滑回路619nで発生する電圧の最大値と最小値の差は、コロナ放電が発生する電位差よりも小さいからである。
【0042】
また、導電層65nは、高圧整流平滑回路6191から高圧整流平滑回路619nを構成する電子部品の角やリード線において発生するコロナ放電も抑制することができる。このため、電子部品の角やリード線にコロナ放電を抑制するための加工が不要になる。なお、導電層65nと高圧整流平滑回路619nとの間で発生するコロナ放電は、導電層65nと高圧整流平滑回路619nとの間の距離を長くすることにより抑制することができる。これらは、導電層651、導電層652等についても同様である。
【0043】
また、導電層651から導電層65nの表面は、曲面又は平面であることが好ましい。すなわち、導電層651から導電層65nの表面上の任意の領域は、曲面又は平面であることが好ましい。これは、導電層651から導電層65nが尖った部分又は折れ曲がった部分を有する場合、これらの部分で電界集中が発生し、コロナ放電が起こるおそれがあるためである。したがって、導電層651から導電層65nが絶縁層641から絶縁層64nそれぞれの外側の表面上に形成されている場合、絶縁層641から絶縁層64nそれぞれの外側の表面は、曲面又は平面であることが好ましい。
【0044】
なお、X線高電圧装置6内の高電圧発生器71、72は、
図2に示した全ての二次コイル及び高圧整流平滑回路を導電層で包んでいなくてもよい。この場合でも、X線高電圧装置6内の高圧発生器71、72は、導電層で包まれた二次コイルの巻線間の隙間で発生するコロナ放電又は導電層で包まれた高圧整流平滑回路とX線高電圧装置6内の高圧発生器71、72の他の構成要素との間で発生するコロナ放電を抑制することができる。
【0045】
また、二次コイルI11及び高圧整流平滑回路6191は、個別に導電層で包まれているよりも、一つの導電層で包まれている方が好ましい。これは、二次コイルI11及び高圧整流平滑回路6191が個別に導電層で包まれている場合、二次コイルI11と高圧整流平滑回路6191とを接続する導線においてコロナ放電が発生することがあるからである。これらは、二次コイルI12及び高圧整流平滑回路6192から二次コイルI1n及び高圧整流平滑回路619n、二次コイルI21及び高圧整流平滑回路6291、二次コイルI22及び高圧整流平滑回路6292から二次コイルI2n及び高圧整流平滑回路629nについても同様である。
【0046】
図9は、本発明のX線高電圧装置6及び高電圧発生器71、72を使用した医用画像診断装置1の構成例を示す図である。医用画像診断装置1は、例えば、X線CT装置である。医用画像診断装置1は、
図9に示すように、架台2と、寝台20と、コンソール30とを有する。なお、医用画像診断装置1の構成は、下記の構成に限定されるものではない。
【0047】
架台2は、コリメータ調整回路3と、架台駆動回路4と、X線高電圧装置6と、X線管7と、ウェッジ8と、コリメータ9と、検出器10と、データ収集回路11と、回転フレーム12とを有する。
【0048】
コリメータ調整回路3は、コリメータ9の開口度及び位置を調整することにより、X線管7が発生させたX線の照射範囲を調整する。コリメータ調整回路3は、コリメータ9に接続され、開口度及び位置を調整する機構と、この機構を制御する回路とを含む。この機構は、例えば、モータと、このモータが発生させた動力をコリメータ9に伝達する機械要素とを含む。また、上述した回路は、例えば、モータに電力や制御信号を供給する回路と、この回路を制御するプロセッサとを含む。
【0049】
架台駆動回路4は、回転フレーム12を回転させることにより、被検体Pを中心とする円軌道上でX線高電圧装置6、X線管7及び検出器10を旋回させる。架台駆動回路4は、回転フレーム12に接続され、これを回転させる機構と、この機構を制御する回路とを含む。この機構は、例えば、モータと、このモータが発生させた動力を回転フレーム12に伝達する機械要素とを含む。また、上述した回路は、例えば、モータに電力や制御信号を供給する回路と、この回路を制御するプロセッサとを含む。
【0050】
X線高電圧装置6は、高電圧を発生させる。X線高電圧装置6は、一次コイル616、626、二次コイルI11からI1n、二次コイルI21からI2nを有する。また、X線高電圧装置6は、高圧整流平滑回路6191から619n、高圧整流平滑回路6291から629n及びこれらを覆う導電層を有する。なお、これらの構成は、上述した通りである。
【0051】
X線管7は、X線高電圧装置6から供給される高電圧により、X線を発生させる。X線管7は、陰極と、陽極と、筐体とを有する。陰極は、電子を放出する。陽極は、この電子を受けてX線を発生させる。筐体は、陰極及び陽極を収納している。筐体の内部は、真空である。
【0052】
ウェッジ8は、X線管7が発生させたX線の線量及び線質を調節するためのX線フィルタである。
【0053】
コリメータ9は、X線の照射範囲を調整するためのスリットである。コリメータ9は、X線管7が発生させたX線を遮蔽することができる材料で作製されている。このような材料は、例えば、鉛である。コリメータ9の開口度及び位置は、コリメータ調整回路3により調整される。
【0054】
検出器10は、X線を検出する。検出器10は、複数の検出素子を有する。検出器10は、X線管7が発生させたX線を検出素子により検出する。検出素子は、入射したX線を電気信号に変換し、この電気信号をデータ収集回路11へ出力する。検出器10が有する検出素子の大きさ、形状及び数は、特に限定されない。なお、検出器10は、直接変換型及び間接変換型のいずれでもよい。データ収集回路11は、検出素子が出力した電気信号に基づいて投影データを生成する。
【0055】
回転フレーム12は、円環状のフレームである。回転フレーム12は、X線高電圧装置6、X線管7、及び検出器10を支持する。X線管7と検出器10は、対向している。回転フレーム12は、架台駆動回路4により駆動され、被検体Pを中心として回転する。
【0056】
寝台20は、天板21と、寝台駆動回路22とを有する。天板21は、被検体Pが載せられる板状の部材である。寝台駆動回路22は、被検体Pが載せられた天板21を移動させることにより、被検体Pを架台2の撮影口内で移動させる。
【0057】
コンソール30は、入力回路31と、ディスプレイ32と、記憶回路33と、処理回路34とを有する。
【0058】
入力回路31は、指示や設定を入力するユーザにより使用される。入力回路31は、例えば、マウス、キーボード等から構成される。入力回路31は、ユーザが入力した指示や設定を処理回路34に転送する。入力回路31は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0059】
ディスプレイ32は、ユーザが参照するモニタである。ディスプレイ32は、例えば、液晶ディスプレイである。液晶ディスプレイは、偏光フィルタ、ガラス基板、透明電極、配向膜、液晶層、カラーフィルタ及びバックライトを積層したディスプレイである。ディスプレイ32は、例えば、CT画像、ユーザが指示や設定を入力する際に使用するGUI(Graphical User Interface)を表示する旨の指示を処理回路34から受ける。ディスプレイ32は、この指示に基づいてCT画像やGUIを表示する。
【0060】
記憶回路33は、後述する前処理機能342により生成された生データ(Raw Data)、後述する画像生成機能343により生成されたCT画像及びコリメータ調整回路3、架台駆動回路4及びデータ収集回路11が上述した機能を実現するためのプログラムを記憶する。記憶回路33は、寝台駆動回路22が上述した機能を実現するためのプログラムを記憶する。記憶回路33は、処理回路34が後述するスキャン制御機能341、前処理機能342、画像生成機能343、表示制御機能344、制御機能345及びその他の機能それぞれを実現するためのプログラムを記憶する。したがって、コリメータ調整回路3、架台駆動回路4、データ収集回路11、寝台駆動回路22及び処理回路34は、記憶回路33に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。
【0061】
また、記憶回路33は、記憶されている情報をコンピュータにより読み出すことができる記憶媒体を有する。記憶媒体は、例えば、ハードディスクである。
【0062】
処理回路34は、スキャン制御機能341、前処理機能342、画像生成機能343、表示制御機能344及び制御機能345を有する。処理回路34は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0063】
スキャン制御機能341は、スキャンを実行するために医用画像診断装置1を制御する機能である。処理回路34は、記憶回路33からスキャン制御機能341に相当するプログラムを読み出して実行することにより、例えば、医用画像診断装置1を次のように制御する。
【0064】
処理回路34は、寝台駆動回路22を制御することにより、被検体Pを架台2の撮影口内へ移動させる。ここで、撮影口とは、X線管7及び回転フレーム12が旋回する軌道の内側に設けられた空洞である。処理回路34は、架台2に被検体Pのスキャンを実行させる。具体的には、処理回路34は、X線高電圧装置6を制御することにより、X線管7へ高電圧を供給させる。処理回路34は、コリメータ調整回路3を制御することにより、コリメータ9の開口度及び位置を調整する。また、処理回路34は、架台駆動回路4を制御することにより、回転フレーム12を回転させる。そして、処理回路34は、データ収集回路11を制御することにより、データ収集回路11に投影データを収集させる。医用画像診断装置1が実行するスキャンは、例えば、コンベンショナルスキャン、ヘリカルスキャン、ステップアンドシュートである。
【0065】
前処理機能342は、データ収集回路11により生成された投影データを補正する機能である。処理回路34は、記憶回路33から前処理機能342に相当するプログラムを読み出して実行することにより、投影データを補正する。この補正は、例えば、対数変換、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正、散乱線補正である。前処理機能342により補正された投影データは、記憶回路33に格納される。なお、前処理機能342により補正された投影データは、生データとも呼ばれる。
【0066】
画像生成機能343は、記憶回路33に格納されている生データを再構成し、CT画像を生成する機能である。処理回路34は、記憶回路33から画像生成機能343に相当するプログラムを読み出して実行することにより、CT画像を生成する。再構成方法は、例えば、逆投影処理、逐次近似法である。画像生成機能343により生成されたCT画像は、記憶回路33に格納される。
【0067】
表示制御機能344は、記憶回路33に格納されているCT画像をディスプレイ32に表示する機能である。処理回路34は、記憶回路33から表示制御機能344に相当するプログラムを読み出して実行することにより、記憶回路33に格納されているCT画像をディスプレイ32に表示させる。
【0068】
制御機能345は、架台2、寝台20及びコンソール30の各構成要素を目的に応じて適切なタイミングで動作させる機能及びその他の機能を含む。処理回路34は、上述した処理を実行する際、適宜、記憶回路33から制御機能345に相当するプログラムを読み出して実行する。
【0069】
医用画像診断装置1は、X線CT装置以外の装置でもよい。医用画像診断装置1は、例えば、X線診断装置でもよい。X線診断装置は、例えば、Cアーム型X線診断装置、X線TV装置である。Cアーム型X線診断装置は、被検体のX線透視像の撮影に用いられる。X線TV装置は、例えば、消化管造影検査、尿路造影検査、脊髄腔造影検査、胆道造影検査に用いられる。
【0070】
上述したプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)である。また、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)は、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)である。
【0071】
上述した実施形態では、コリメータ調整回路3、架台駆動回路4、データ収集回路11、寝台駆動回路22及び処理回路34は、記憶回路33に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現したが、これに限定されない。記憶回路33にプログラムを保存する代わりに、これらの回路それぞれにプログラムを直接組み込んでもよい。この場合、これらの回路は、直接組み込まれたプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。
【0072】
図9に示した各回路は、適宜分散又は統合されてもよい。例えば、処理回路34は、スキャン制御機能341、前処理機能342、画像生成機能343、表示制御機能344及び制御機能345それぞれの機能を実行するスキャン制御回路、前処理回路、画像生成回路、表示制御回路及び制御回路に分散されてもよい。また、例えば、コリメータ調整回路3、架台駆動回路4、データ収集回路11、寝台駆動回路22及び処理回路34は、任意に統合されてもよい。
【0073】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、コロナ放電を抑制することができる医用画像診断装置及びX線高電圧装置を提供することができる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。