(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の振り出し
竿は複数の竿体を備えている。また、振り出し竿の釣糸ガイドには、竿本体の外周面の所定位置に移動不能に固着される固定ガイドの他に、竿本体の外周面に遊動自在に装着される遊動ガイドが用いられる。該遊動ガイドは、移動ガイドとも称される。該遊動ガイドは、金属板からなるガイドフレームを備えている。該ガイドフレームの先部には、釣糸を案内するガイドリングが装着される。また、ガイドフレームの基部には環状部が形成されていて、該環状部の内側に合成樹脂製の装着筒が圧入されている。装着筒は竿本体の外周面に対して軸線方向に移動可能であって、遊動ガイドは、装着筒の内周面と竿本体の外周面との間の摩擦により、竿体の所定位置に位置固定される。
【0003】
このような構成の遊動ガイドは、装着筒が合成樹脂製であるので、竿本体の外周面にキズが付きにくい。一方、ガイドフレームが金属製であるので、大きな強度を容易に確保できるという利点がある。しかしながら、ガイドフレームには大きな外力が作用することがあり、装着筒からガイドフレームが脱落したり位置ずれしたりしやすいという構造的な問題がある。そのため、ガイドフレームにおけるガイドリングと環状部との間の支持脚部の長さを長くしてガイドリングを装着筒から大きく離間させる構成とすることが困難であり、支持脚部が短い小型の遊動ガイドとされていた。支持脚部が短い小型の遊動ガイドは、穂先側の竿体への使用には適しているものの、竿元側の竿体への使用には適していない。仮に、支持脚部が短い小型の遊動ガイドを竿元側の竿体に使用すると、リールからトップガイドまでの釣糸の流れがスムーズではなくなり、良好なガイドセッティングとはならない。
【0004】
尚、装着筒とガイドフレームを合成樹脂により一体的に形成した樹脂一体型の遊動ガイドも存在するが、この樹脂一体型の遊動ガイドの場合も同様に、強度の問題からガイドリングが装着筒から大きく離間した構造は採用しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、ガイドフレームの支持脚部の長さを長くすることができる振り出し竿用の遊動ガイド及びそれを備えた振り出し竿を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る振り出し竿用の遊動ガイドは、竿本体の外周面に対して遊動可能な装着筒を備えた振り出し竿用の遊動ガイドであって、装着筒の外周面に取付面を備え、該取付面にガイドフレームの取り付け脚部が糸巻き固定されており、取付面よりも後側であって装着筒の外周面の最後部に、後側に向けて縮径するテーパ外周面が形成されていることを特徴とする。尚、竿先側を前側とし、竿尻側を後側とする。
【0008】
該構成の遊動ガイドにあっては、装着筒の外周面の取付面にガイドフレームの取り付け脚部が糸巻き固定されているので、装着筒とガイドフレームを強固に連結させることができる。従って、ガイドフレームの支持脚部を長くしてもガイドフレームが装着筒から外れたり、装着筒に対してガイドフレームが位置ずれしたりしない。一方、ガイドフレームの大型化に伴って装着筒も大型となるので、装着筒の後端部において糸絡みが発生しやすくなるが、装着筒の外周面の最後部には後側に向けて縮径するテーパ外周面が形成されているので、装着筒の後端部における糸絡みの発生が防止される。
【0009】
特に、テーパ外周面の傾斜角度は45度未満であることが好ましく、装着筒の後端部における糸絡みの発生をより一層防止できる。
【0010】
また、装着筒の後端面は、装着筒の中心線に対して直交する垂直面であり、該垂直面の外周縁部から前側に向けて前記テーパ外周面が延設されていることが好ましい。装着筒の後端面が垂直面であることで、振り出し竿の収納時において遊動ガイドが装着された竿体がその竿元側の竿体に収納される際に、竿元側の竿体の前端部に遊動ガイドの装着筒の後端部が入り込まなくなる。そのため、竿元側の竿体の前端部の破損を防止できると共に、装着筒が竿元側の竿体の前端部から抜けなくなるということも防止できる。
【0011】
また、取付面の前側に段差部を介して大径部が形成され、該大径部は装着筒の外周面の前端部に位置していることが好ましい。このように取付面の前側に段差部を介して大径部が形成されていると、巻糸の表面に付着されるエポキシ樹脂等の接着剤が段差部によってそれ以上前側にはみ出しにくくなる。
【0012】
また、取付面の後側に段差部を介して大径部が形成され、該大径部の後側に前記テーパ外周面が形成されていることが好ましい。このように取付面の後側に段差部を介して大径部が形成されていると、巻糸の表面に付着されるエポキシ樹脂等の接着剤が段差部によってそれ以上後側にはみ出しにくくなる。即ち、接着剤がテーパ外周面まで到達することを防止できる。
【0013】
また、装着筒の内周面の全長のうち少なくとも後側半分を越える長さ領域は、後側に向けて拡径するテーパ内周面となっていることが好ましい。このように装着筒の内周面が後側に向けて拡径するテーパ内周面になっていると、後側に向けて拡径していく竿本体の外周面に装着筒の内周面が沿いやすくなり、装着筒ががたつきにくくなって、遊動ガイドを竿本体の外周面の所定位置にしっかりと位置固定できる。装着筒が合成樹脂製であって射出成形品である場合には、装着筒の内周面における金型の抜き勾配を後側に向けて拡径していくものとすることにより、装着筒の内周面を後側に向けて拡径するテーパ内周面とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る振り出し竿は、このような遊動ガイドが装着されたものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、装着筒の外周面の取付面にガイドフレームの取り付け脚部が糸巻き固定されているので、ガイドフレームの支持脚部の長さを長くしても取り付け強度が十分に確保できてガイドフレームの脱落や位置ずれが防止できる。そして、支持脚部が長くなっても、装着筒の外周面の最後部にテーパ外周面が形成されているので、装着筒の後端部において発生しやすい糸絡みを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る振り出し竿とそれに使用されている糸巻き型の遊動ガイドについて
図1〜
図6を参酌しつつ説明する。本実施形態における振り出し竿は、
図3にその竿構成を示しているように、合計三本の竿体から構成されている。具体的には、最も穂先に位置する竿体である穂先竿1と、該穂先竿1の直ぐ後側(元側であり竿尻側)に位置する竿体である二番竿2と、二番竿2の直ぐ後側に位置し、最も竿尻側の竿体である元竿4とを備えている。二番竿2は、穂先竿1と元竿4の間に位置する中間竿でもあり、本実施形態においては元竿4の直ぐ前側に位置する竿体であるので元上竿でもある。尚、竿体の呼び名の数字は穂先竿1を一番目として後側に順に大きくなっていく。穂先竿1の竿本体11(ブランク)は中空状でも中実状であってもよい。穂先竿1を除く他の竿体の竿本体12,14は何れも中空状である。尚、本実施形態における振り出し竿は小継ぎタイプであって、全ての竿体の長さは90cm以下、好ましくは70cm以下である。
【0018】
三本の竿体は、それぞれ所定長さのジョイント部5(継合部)を形成しつつ互いの端部同士が内周面と外周面の摩擦力によって継ぎ合わせられて
図1のような伸張状態とされる。即ち、各竿体の竿本体11,12,14は、前側から後側に向けて徐々に所定の拡径率(勾配)で拡径していている。そして、元竿4の前端部所定長さ領域の内側に二番竿2の後端部所定長さ領域が重なり合って継合し、二番竿2の前端部所定長さ領域の内側に穂先竿1の後端部所定長さ領域が重なり合って継合する。各竿体の重ね合わせ領域を
図3に符号11a,12a,14aで示している。
図2に振り出し竿の収納状態を示している。収納状態において、穂先竿1は二番竿2の内側に収納され、二番竿2は元竿4の内側に収納される。
【0019】
<穂先竿1>
穂先竿1は、
図4にも示しているように、その前端部にトップガイド20を備えている。該トップガイド20は、固定ガイドの一種であって、竿本体11の前端部に移動不能に固着されている。また、穂先竿1は、トップガイド20よりも後側に一又は複数の遊動ガイド21,22,23を備えている。本実施形態では、穂先竿1は、三つの遊動ガイド21,22,23を備えている。この穂先竿1の遊動ガイド21,22,23は、巻糸が使用されていない非糸巻き型の遊動ガイドである。非糸巻き型の遊動ガイドとは、ガイドフレームと装着筒が巻糸を使用しない固定方法によって固定された構成や、ガイドフレームと装着筒が合成樹脂から射出成形により一体的に形成された構成である。巻糸を使用しない固定方法としては、例えば、ガイドフレームの環状部の内側に装着筒を圧入、内嵌めしたり、ガイドフレームと装着筒とを接着固定したりする方法がある。
【0020】
遊動ガイド21,22,23は、詳細には、釣糸を直接案内するためのガイドリング24と、該ガイドリング24が装着される金属製のガイドフレーム25と、竿本体11の外周面を摺動する合成樹脂製の装着筒26とを備えている。ガイドフレーム25は、ガイドリング24が内側に装着されてガイドリング24を保持する環状のリング保持部25aと、装着筒26の外周面に嵌合する環状の環状部25cと、リング保持部25aと環状部25cとの間を連結する支持脚部25bとを備えている。リング保持部25aと支持脚部25bと環状部25cは一つの部材として一体的に形成されており、具体的には、板金から形成される。装着筒26は、射出成形品であって筒状であって、その内周面が竿本体11の外周面と摺動する。装着筒26はガイドフレーム25の環状部25cの内側に圧入等により嵌合されている。尚、圧入ではなくガイドフレーム25の環状部25cに装着筒26が接着固定されていてもよいし、圧入された上で更に接着されていてもよい。
【0021】
三つの遊動ガイド21,22,23は、
図1及び
図3のように、それぞれ竿本体11の所定位置に摩擦により位置固定される。即ち、装着筒26の内周面が竿本体11の外周面の所定位置において摩擦により停止してそれ以上後側には移動できない状態となって位置固定される。三つの遊動ガイド21,22,23は、後側のものほど、ガイドリング24が大きくなり、ガイドフレーム25の支持脚部25bの長さも長くなって、ガイドリング24が竿本体11から径方向外側に離間していく。また、トップガイド20から一つ目の遊動ガイド21までの距離よりも一つ目の遊動ガイド21から二つ目の遊動ガイド22までの距離の方が長く、一つ目の遊動ガイド21から二つ目の遊動ガイド22までの距離よりも二つ目の遊動ガイド22から三つ目の遊動ガイド23までの距離の方が長い。このようにガイド間距離は後側ほど長くなっている。尚、ガイド間距離はガイドリング24の位置を基準とする。本実施形態において、非糸巻き型の遊動ガイド21,22,23は、ガイドフレーム25と装着筒26とが別部材の構成であったが、ガイドフレーム25と装着筒26が例えば合成樹脂から成形によって一体的に形成された一つの部材である一体成形品として構成されていてもよい。
【0022】
<二番竿2>
二番竿2は、一つの固定ガイド30と一つの遊動ガイド31とを備えている。固定ガイド30は、二番竿2の前端部に備えられていて、遊動ガイド31は固定ガイド30の後側に位置している。固定ガイド30は、詳細な図示は省略するが、金属製のガイドフレームとガイドリングを備えている。ガイドフレームは、リング保持部と支持脚部と取り付け脚部とを備えている。取り付け脚部は支持脚部の基端部から後側に向けて延びる一本脚の構成であって、その取り付け脚部が竿本体12の前端部外周面に巻糸により糸巻き固定されている。
【0023】
遊動ガイド31は、糸巻き型の遊動ガイド31であるが、その詳細については後述する。遊動ガイド31は、固定ガイド30から所定距離後側に離れた位置に停止する。
図1のように、伸張状態において、穂先竿1の最も後側の遊動ガイドである三つ目の遊動ガイド23から二番竿2の固定ガイド30までの距離は、穂先竿1の二つ目の遊動ガイド22から三つ目の遊動ガイド23までの距離よりも長い。また、二番竿2における固定ガイド30から遊動ガイド31までの距離は、穂先竿1の三つ目の遊動ガイド23から二番竿2の固定ガイド30までの距離よりも長い。
図1のように、二番竿2の遊動ガイド31は、この振り出し竿において最も後側に位置する釣糸ガイドであり、この遊動ガイド31よりも後側には釣糸ガイドは存在しない。
【0024】
<元竿4>
元竿4は、図示しないリールを取り付けるためのリールシート40を備えている。本実施形態における振り出し竿は、スピニングリールを取り付けて使用するタイプの竿であり、従って、リールシート40はスピニングリールを取り付けるための仕様となっている。但し、両軸リールを取り付ける構成のリールシート40であってもよい。元竿4の前端部には固定ガイドが存在せず、元竿4は釣糸ガイドを備えていない。また、元竿4の後部にはリアグリップ41が備えられており、元竿4の後端部には図示しない尻栓が装着される。
【0025】
<糸巻き型の遊動ガイド31>
次に二番竿2に装着されている糸巻き型の遊動ガイド31の詳細について説明する。
図5に糸巻き型の遊動ガイド31を単体の状態で示している。該遊動ガイド31は、ガイドリング50とガイドフレーム51と装着筒52を備えている。ガイドフレーム51は、金属製であって、リング保持部51aと支持脚部51bと取り付け脚部51cとを備えている。該ガイドフレーム51は、二番竿2の固定ガイド30と同様の構成である。即ち、リング保持部51aは環状であってその内側にガイドリング50が接着固定されている。取り付け脚部51cは、支持脚部51bの基端部から後側に向けて延びる一本脚の構成であって、装着筒52の外周面に巻糸53により糸巻き固定されている。支持脚部51bは、一本脚の構成であってもよいし、基端部から先端部に向けてV字状に開いた左右一対の二本脚の構成であってもよい。支持脚部51bは、基端部から先端部に向けて徐々に前側に傾斜していることが糸絡みの発生を防止できるため好ましく、特に、基端部から先端部に向けて後側に突出するように湾曲しつつ傾斜していることが好ましい。ガイドリング50の中心線は装着筒52の中心線と平行であってもよいが、本実施形態では、ガイドリング50の中心線は装着筒52の中心線に対して平行ではなく前傾状態に傾斜している。このように支持脚部51bが前側に傾倒していることから、ガイドフレーム51のリング保持部51a及びガイドリング50は、装着筒52の前端部よりも前側に位置している。
【0026】
<装着筒52>
装着筒52は、合成樹脂製であって、射出成形により形成された射出成形品である。装着筒52のみを
図6に示している。装着筒52は、その内径に対して軸線方向(中心線の方向)の長さが長い筒状である。装着筒52の外周面には、前側から順に、第一の大径部60と、取付面61と、第二の大径部62と、第三の大径部63と、テーパ外周面64とを備えている。
【0027】
第一の大径部60は装着筒52の外周面の前端部に位置していて、フランジ状に形成されている。第一の大径部60は装着筒52の前端面65の外周縁部とつながっている。尚、装着筒52の前端面65は、装着筒52の中心線に対して直交する垂直面となっている。第一の大径部60は、取付面61よりも大径であって、第一の大径部60と取付面61との間には第一の段差部66が形成されている。第一の段差部66は、取付面61の前端部から径方向外側に向かっていて、装着筒52の中心線に対して直交する環状の垂直面であることが好ましい。第一の大径部60は幅狭であって、少なくとも取付面61よりも軸線方向の長さは短い。
【0028】
取付面61は、装着筒52の外周面の全長のうち大部分を占める周面であって、径一定である。取付面61にガイドフレーム51の取り付け脚部51cが取り付けられる。従って、取付面61の軸線方向の長さは、ガイドフレーム51の取り付け脚部51cの長さ以上であって、
図5のように、ガイドフレーム51の取り付け脚部51cの長さに対して所定長さの余裕分を有していることが好ましく、その余裕分には巻糸53が一回以上巻き付けられる。
【0029】
取付面61の後側にも径方向外側に向かう第二の段差部67と第三の段差部68が形成されている。即ち、取付面61の後側には、段差部が二段形成されている。取付面61と第二の大径部62との間に第二の段差部67が形成されていて、第二の大径部62と第三の大径部63との間に第三の段差部68が形成されている。第二の段差部67と第三の段差部68は、何れも装着筒52の中心線に対して直交する環状の垂直面であることが好ましい。取付面61に対して第二の段差部67を介して第二の大径部62が一段大径に形成されていて、更に、第二の大径部62に対して第三の段差部68を介して第三の大径部63が一段大径に形成されている。このように、取付面61から第二の大径部62、第三の大径部63と後側に向けて階段状に径が大きくなっていく。尚、第二の段差部67は第三の段差部68よりも大きい。第二の大径部62は第一の大径部60よりも小径であり、第三の大径部63は第一の大径部60と同一径である。また、第一の大径部60と第二の大径部62と第三の大径部63は、幅が互いに略同一とされているが、この幅は任意であって種々変更してよい。尚、第一の段差部66と第二の段差部67の径方向の寸法、即ち段差の大きさは、巻糸53の太さ以上であることが好ましい。
【0030】
テーパ外周面64は、装着筒52の外周面の最後部に形成されている。第三の大径部63の後端部から装着筒52の後端部までの間がテーパ外周面64であり、従って、テーパ外周面64の後端部は装着筒52の外周面の後端部となっており、テーパ外周面64は装着筒52の後端面69の外周縁部とつながっている。テーパ外周面64の幅即ち軸線方向の長さは、第三の大径部63のそれよりも長く、第二の大径部62の幅と第三の大径部63の幅を合わせた長さに略等しい。テーパ外周面64は第三の大径部63から装着筒52の後端面69の外周縁部まで延びていて、後側に向けて徐々に縮径する傾斜面となっている。テーパ外周面64の傾斜角度は任意であってよいが、好ましくは45度未満である。
【0031】
装着筒52の内周面は、後側に向けて拡径するテーパ内周面70となっている。テーパ内周面70は、装着筒52の全長に亘って形成されている。従って、装着筒52の前端部の内径は相対的に小さく、装着筒52の後端部の内径は相対的に大きい。テーパ内周面70の傾斜角度は射出成形の金型の抜き勾配となっており、実際には1度程度であるが、
図5及び
図6においては誇張して図示している。尚、
図5及び
図6に金型の抜き方向を三つの矢印Rで示している。また、装着筒52の外周面には、180度対向した位置に二箇所のパーティングラインPLが形成される。
【0032】
<遊動ガイド31の製作>
装着筒52の取付面61にガイドフレーム51の取り付け脚部51cを載せる。ガイドフレーム51の取り付け脚部51cが装着筒52の中心線に沿うようにする。ガイドフレーム51の取り付け脚部51cは、第一の段差部66に接触するか、あるいは、第一の段差部66から若干後側に離れて位置する。
図5では、ガイドフレーム51の取り付け脚部51cが第一の段差部66に接触した状態を示している。ガイドフレーム51の取り付け脚部51cの後端部は第二の段差部67から所定距離前側に離れて位置する。そして、巻糸53をガイドフレーム51の取り付け脚部51cの上から巻回して、ガイドフレーム51の取り付け脚部51cを装着筒52の取付面61に固定する。巻糸53は、取り付け脚部51cの後端部を後側に越えて、取り付け脚部51cと第二の段差部67との間に残った取付面61の余裕部分にも数回巻回するようにして、取付面61の後端部まで巻糸53を巻回するようにする。
【0033】
尚、
図5では、ガイドフレーム51の支持脚部51bの前側に巻糸53を巻回していないが、ガイドフレーム51の支持脚部51bの前側にも巻糸53を巻回するようにしてもよい。即ち、ガイドフレーム51の取り付け脚部51cを第一の段差部66から若干後側に離して位置させて、ガイドフレーム51の支持脚部51bの基端部と第一の段差部66との間に位置する取付面61に巻糸53を一回あるいは数回巻き付けるようにしてもよい。特に、ガイドフレーム51の取り付け脚部51cの長さが短い場合には、ガイドフレーム51の支持脚部51bの前側にも巻糸53を巻回することが好ましく、ガイドフレーム51を装着筒52により一層強固に固定できる。巻糸53を巻き付けた後、その表面にエポキシ樹脂等の接着剤71を付着させて表面を接着剤71でコーティングするようにする。接着剤71は巻糸53の巻回部分の全長に亘って塗布する。
【0034】
以上のように構成された糸巻き型の遊動ガイド31にあっては、装着筒52の外周面の取付面61にガイドフレーム51の取り付け脚部51cが糸巻き固定されているので、装着筒52とガイドフレーム51を強固に連結させることができる。従って、ガイドフレーム51の支持脚部51bを長くしてもガイドフレーム51が装着筒52から外れたり、装着筒52に対してガイドフレーム51が位置ずれしたりすることを防止できる。従って、支持脚部51bを長くしてガイドリング50の竿本体12からの離間距離を大きくすることができる。
【0035】
また、装着筒52の外周面の最後部には後側に向けて縮径するテーパ外周面64が形成されているので、装着筒52の後端部における糸絡みの発生が防止される。特に、テーパ外周面64の傾斜角度が45度未満であると、装着筒52の後端部における糸絡みの発生をより一層防止できる。
【0036】
また、テーパ外周面64が形成されていても装着筒52の後端面69には垂直面が維持されているので、二番竿2が元竿4に収納される際に、元竿4の前端部に装着筒52の後端面69が当接し、装着筒52の後端部が元竿4の前端部に入り込まなくなる。従って、元竿4の前端部の破損が防止され、また、装着筒52が元竿4の前端部から抜けなくなるということも防止できる。従って、装着筒52の後端面69の外周縁部の直径は、元竿4の前端部の内径よりも大きいものとする。
【0037】
また、取付面61の前側に第一の段差部66を介して第一の大径部60が形成されているので、第一の段差部66が壁となって接着剤71を堰き止める。従って、接着剤71の前側へのはみ出しが防止される。一方、取付面61の後側にも第二の段差部67と第三の段差部68が形成されているので、第二の段差部67が一段目の堰となり、第三の段差部68が二段目の堰となって接着剤71の後側への流れ出しを阻止する。特に、取付面61の後側に二段の段差部が形成されているので、一段の段差部に比して接着剤71の後方への流れ出しをより一層確実に防止できる。
【0038】
また、装着筒52の内周面の略全長が後側に向けて拡径するテーパ内周面70となっているので、後側に向けて拡径していく二番竿2の竿本体12の外周面の形状に装着筒52の内周面が沿いやすくなる。そのため、装着筒52が竿本体12に対してがたつきにくくなり、遊動ガイド31を竿本体12にしっかりと位置固定できる。特に、装着筒52の内周面の略全長に亘ってテーパ内周面70が形成されているので、装着筒52と竿本体12との間の摩擦力が十分に確保され、遊動ガイド31を所定位置に確実に位置固定できる。
【0039】
そして、このような糸巻き型の遊動ガイド31を二番竿2に備えている一方、穂先竿1には小型の非糸巻き型の遊動ガイド21,22,23を複数備えているので、理想的なガイドセッティングに近づけることができ、リールからトップガイド20までスムーズな釣糸の流れが確保されると共に良好な竿の調子も得られる。
【0040】
尚、糸巻き型の遊動ガイド31の装着筒52の構成は種々変更可能であって、上述したように取付面61の後側の二段の段差部67,68を備えるものには限定されず、取付面61の後側に段差部が一段のみ形成された構成であってもよい。また、取付面61の後側に段差部が形成されていない構成としてもよい。
【0041】
装着筒52は、キャビとコアのみから構成される金型によって製造される構成であってもよい。
図7のように金型の抜き方向を二つの矢印Rで示している。金型の抜き方向は前後方向である。この装着筒52は、前端部に段差部66を備えるものの後側には段差部が形成されていない。従って、装着筒52の外周面は、大径部60と取付面61とテーパ外周面64とからなる。取付面61は後側に向かって僅かに縮径していく形状であって、その傾斜角度は金型の抜き勾配による。テーパ外周面64の傾斜角度は取付面61の傾斜角度よりも大きいものであって10度以上であり、45度未満が好ましい。外周面のパーティングラインPLは、二点鎖線で示しているように段差部66となる。
【0042】
一方、装着筒52の内周面のパーティングラインPLは前後方向の中途部に形成されてよい。内周面のパーティングラインPLは実線で示している。この場合、後側に向かって徐々に拡径していくテーパ内周面70は装着筒52の内周面の略全長に亘って形成されず部分的なものとなる。その場合、テーパ内周面70は内周面の全長のうち少なくとも後側半分を越える長さを有していることが好ましく、それによって装着筒52を竿本体12に安定して位置固定できる。即ち、内周面のパーティングラインPLは、内周面の全長の中央部に対して前側とする。パーティングラインPLよりも前側の内周面は前側に向けて徐々に拡径していく逆テーパ内周面80である。尚、テーパ内周面70と逆テーパ内周面80の傾斜角度は何れも金型の抜き勾配であるため実際には1度程度であるが、
図7においては理解を容易にするために誇張して図示している。
【0043】
また、上記実施形態における振り出し竿は、穂先竿1と二番竿2と元竿4という三本の構成であったが、四本以上の構成であってもよい。例えば、四本の竿体を備える構成とする場合、
図8のように、穂先竿1と二番竿2と三番竿3と元竿4とから構成される。
図8の構成では、三番竿3が元竿4の直ぐ前側に位置しているので元上竿であり、二番竿2は、元上竿の直ぐ前側に位置しているので元々上竿である。穂先竿1と二番竿2と元竿4は、
図3に示した構成と同様である。従って、
図8の振り出し竿は、
図3の振り出し竿における二番竿2と元竿4との間に一本の竿体が追加された構成である。追加された三番竿3は、前端部に二番竿2と同様の固定ガイド30を備えている。三番竿3の竿本体13は二番竿2の竿本体12と同様の構成であり、後端部に元竿4と重ね合わせられる重ね合わせ領域13aを有している。三番竿3における釣糸ガイドはこの固定ガイド30のみであって、糸巻き型の遊動ガイドは備えていない。このように四本構成とすることで三本構成に比して振り出し竿の全長を長くすることができる。従って、三番竿3と元竿4の間に、更に、前端部に固定ガイド30を備えた竿体を順次追加することで、更に長い振り出し竿となる。
【0044】
尚、上記実施形態では、二番竿2に糸巻き型の遊動ガイド31を一つ備えた構成であったが、二番竿2に二つ以上の糸巻き型の遊動ガイド31を備えるようにしてもよい。また、穂先竿1の後部にも糸巻き型の遊動ガイド31を備えるようにしてもよい。
図8の構成では、三番竿3にも糸巻き型の遊動ガイド31を備えるようにしてもよい。
【0045】
また、糸巻き型の遊動ガイド31において、取り付け脚部51cが一本脚の構成である場合について説明したが、取り付け脚部51cが前後それぞれに延びる前後二本脚の構成であってもよい。