(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るX線診断システ
ムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るX線診断システム1を含む医用画像診断システム10の一例を示すブロック図である。
【0011】
X線診断装置11は、たとえばX線アンギオ装置として構成され、撮像装置12と画像処理装置20とを有する。X線診断装置11の撮像装置12は、通常は検査室に設置され、被検体Pに関するX線投影データを生成するよう構成される。画像処理装置20は、たとえば検査室に隣接する操作室に設置され、X線投影データにもとづくX線画像を生成して表示を行なうよう構成される。なお、画像処理装置20は、撮像装置12が設置される検査室に設置されてもよい。本実施形態において、撮像装置12は、第1ユーザとしての操作者Oではなく、第2ユーザとしての検査室の技師Mの操作に応じて動作する。
【0012】
医用画像診断システム10は、X線診断装置のほか、リモートカテーテル30と、リモートコンソール40とを有する。リモートカテーテル30とリモートコンソール40とは、いわゆるリモートカテーテルシステムを構成する。本実施形態において、リモートコンソール40を操作して被検体P内のデバイス32を遠隔操作する操作者Oは、技師M以外のユーザである。
【0013】
X線診断システム1は、X線診断装置11と、リモートカテーテル30に対する操作指示を受け付ける指示受付回路と、操作者Oが視認可能な位置に設けられた表示装置とを有する。X線診断システム1のX線診断装置11が撮像する被検体Pの内部に挿入されたリモートカテーテル30のデバイス32は、被検体Pから離れた位置から操作される。指示受付回路は、たとえばリモートコンソール40の遠隔入力回路43として実現される。また、操作者Oが視認可能な位置に設けられた表示装置は、たとえばリモートコンソール40の表示入力回路41または42のディスプレイや画像処理装置20のディスプレイ71として実現される。
【0014】
X線診断装置11の撮像装置12は、X線検出器13、X線源14、Cアーム15、寝台16、寝台16の天板17、ディスプレイ18および検査室コンソール19を有する。
【0015】
X線検出器13は、寝台16の天板(たとえばカテーテルテーブルなど)17に支持された被検体Pを挟んでX線源14と対向配置されるようCアーム15の一端に設けられる。X線検出器13は、平面検出器(FPD:flat panel detector)により構成され、被検体Pを透過してX線検出器13に照射されたX線を検出し、この検出したX線にもとづいてX線の投影データを出力する。この投影データは検査室コンソール19を介して画像処理装置20に与えられる。なお、X線検出器13は、イメージインテンシファイア、TVカメラなどを含むものであってもよい。
【0016】
X線源14は、Cアーム15の他端に設けられ、X線管球やX線絞りを有する。X線絞りは、たとえば複数枚の鉛羽で構成されるX線照射野絞りである。X線絞りは、検査室コンソール19により制御されて、X線管球から照射されるX線の照射範囲を調整する。
【0017】
Cアーム15は、X線検出器13とX線源14とを一体として保持する。Cアーム15が検査室コンソール19に制御されて駆動されることにより、X線検出器13およびX線源14は一体として被検体Pの周りを移動する。X線検出器13とX線源14とCアーム15は、被検体PのX線撮像を行なう撮像系を構成する。
【0018】
撮像系によるX線撮像には、いわゆる透視と撮影とが含まれる。透視は、撮影に比べて弱いX線照射強度のX線照射により画像を取得するX線撮像である。このため、透視により取得された透視画像は、撮影により得られる撮影画像に比べて解像度が低い画像であるものの、撮影に比べて被検体Pが被ばくする線量が小さい。したがって、透視は、たとえばリアルタイムに動画的に被検体PのX線画像を確認したい場合に好適である。一方、撮影画像は透視画像に比べ、被検体Pが被ばくする線量は多くなるものの、より鮮明な画像となる。以下の説明では、透視と撮影を適宜X線撮像といい、X線撮像にもとづくX線透視画像とX線撮影画像を適宜X線画像という。
【0019】
また、X線診断装置11がX線アンギオ装置として用いられる場合、X線診断装置11は、X線検出器13とX線源14とCアーム15とにより構成されて被検体PのX線撮像を行なう撮像系を2系統有するバイプレーン式であってもよい。バイプレーン式の場合、X線診断装置11は、床置き式Cアームを有するF(Frontal)側と、天井走行式Ωアームを有するL(Lateral)側の2方向からX線ビームを個別に照射させて、バイプレーン画像(F側画像およびL側画像)を取得することができる。
【0020】
寝台16は、床面に設置され、被検体Pを載置するための天板17を有する。寝台16は、検査室コンソール19により制御されて、天板17を水平方向、上下方向に移動させたり回転(ローリング)させたりする。
【0021】
ディスプレイ18は、1または複数の表示領域により構成され、検査室コンソール19に制御されて、リアルタイムに更新される透視画像や位置合わせ用仮画像などの各種情報を表示する。ディスプレイ18は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。
【0022】
検査室コンソール19は、画像処理装置20により制御されて、X線検出器13を制御することにより被検体PのX線撮像を実行して投影データを生成し、画像処理装置20に与える。検査室コンソール19は、画像処理装置20により制御されて、たとえば、造影剤投与前後の投影データをそれぞれ生成し、画像処理装置20に与える。検査室コンソール19は、たとえば検査室の床面上を移動自在なサテライトコンソールであってもよい。
【0023】
また、X線診断装置11が回転DSA(Digital Subtraction Angiography)撮影可能に構成される場合は、検査室コンソール19は、画像処理装置20により制御されて、回転DSA撮影を実行して造影剤投与前後の投影データをそれぞれ生成し、画像処理装置20に与える。回転DSA撮影では、被検体Pの同一部位について造影剤の注入前の画像データ(マスク像データ)および造影剤の注入後の画像データ(コントラスト像データ)がそれぞれ生成される。回転DSA撮影可能な場合、X線診断装置11は、回転DSA撮影で得られたコントラスト像データおよびマスク像にもとづいて、3次元血管画像(3D血管像)を得ることも可能である。
【0024】
検査室コンソール19は、プロセッサおよび記憶回路を少なくとも有する。検査室コンソール19は、この記憶回路に記憶されたプログラムに従って画像処理装置20により制御されて、撮像系を制御することにより被検体Pの透視などのX線撮像を実行し、投影データを出力する。
【0025】
なお、
図1には検査室コンソール19と画像処理装置20とが有線接続される場合の例について示したが、検査室コンソール19と画像処理装置20とはネットワークを介してデータ送受信可能に接続されてもよい。
【0026】
また、X線診断装置11は、図示しないインジェクタを備えてもよい。この場合、インジェクタは、検査室コンソール19により制御されて、被検体Pの患部に挿入されたリモートカテーテル30のデバイス32を介して造影剤を注入する。造影剤の注入および停止のタイミングならびに造影剤の濃度および注入速度は検査室コンソール19により自動制御される。また、インジェクタは、検査室コンソール19の制御によらずともよく、たとえばインジェクタに備えられた入力部を介して技師Mによる指示を受け付け、またはリモートコンソール40を介して操作者Oによる指示を受け付け、この指示に応じた濃度、速度、タイミングで造影剤を注入してもよい。
【0027】
一方、遠隔操作システムの一例としてのリモートカテーテルシステムのリモートカテーテル30は、ロボットアーム31とデバイス32とを有し、リモートコンソール40により制御されて、被検体Pの所定の部位(たとえば患部など)にデバイス32を挿入する。また、リモートカテーテル30は、複数のデバイス32を遠隔操作可能に構成されてもよい。
【0028】
ここで、本実施形態に係るX線診断装置11により、技師Mが、デバイス32の操作者Oが所望するX線画像が得られるように撮像領域および撮像方向を調整する操作を支援する方法について、簡単に説明する。
【0029】
撮像装置12の動作には、たとえば撮像系の移動、寝台16や天板17の移動、撮像系によるX線撮像実行、図示しないインジェクタによる造影剤注入制御など、様々な動作がある。一方、デバイス32の操作者Oは、そもそも検査室からは遠隔の地にいるため、またはたとえリモートコンソール40が検査室にあったとしてもリモートコンソール40の防護板により視界が遮られるため、撮像装置12の周囲の現状を詳細に確認することが難しい。このため、操作者が撮像装置12を遠隔操作すると、遠隔操作による動作対象物と、これらの近傍に位置する障害物(部材や被検体Pを含む人物)と、の位置関係を正確に把握することが難しい。したがって、撮像装置12は、操作者Oではなく、検査室の技師Mの操作に応じて動作することが好ましい。
【0030】
このため、本実施形態において、撮像装置12は、操作者Oではなく、検査室の技師Mの操作に応じて動作する。しかし、X線画像を確認しながら実際に手技を行なうのは操作者Oであり、技師Mではない。このため、検査室の技師Mは、デバイス32の操作者Oが所望するX線画像が得られるように、撮像装置12の撮像系と寝台16との位置関係を調整することが求められる。
【0031】
そこで、本実施形態に係るX線診断装置11は、リモートコンソール40の遠隔入力回路43または操作室の画像処理装置20の入力回路72を介して、デバイス32の操作者Oから、手技の際に参照を所望するX線撮像の撮像領域および撮像方向(以下、所望領域および所望方向という)に関する情報を取得する。そして、X線診断装置11は、この所望領域および所望方向に応じて、デバイス32の操作者Oの手技に適した手技用仮画像を操作者Oに提示するとともに、技師Mによる撮像装置12の位置合わせに適した位置合わせ用仮画像を技師Mに提示する。
【0032】
リモートコンソール40は、表示入力回路41および42と、リモートカテーテル30のデバイス32を遠隔操作するための遠隔入力回路43と、制御装置44とを備える。
【0033】
表示入力回路41および42は、ディスプレイと、ディスプレイの近傍に設けられたタッチセンサとを有する。ディスプレイは、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。タッチセンサは、ユーザによるタッチセンサ上の指示位置の情報を制御装置44の処理回路に与える。たとえば投影型の静電容量方式のパネルにより構成される場合、タッチセンサは、縦横に配置した電極列を有する。この場合、タッチセンサは、接触物の接触位置付近の静電容量の変化に応じた電極列の出力変化にもとづいて接触位置を取得することができる。
【0034】
表示入力回路41のディスプレイは、制御装置44の処理回路に制御され、たとえばディスプレイ18と同様の画像が表示される。また、デバイス32の操作者Oが遠隔入力回路43を介して所望領域および所望方向を設定するための情報を制御装置44に与える場合は、表示入力回路41のディスプレイは、手技用仮画像を表示する。
【0035】
表示入力回路42のディスプレイは、制御装置44の処理回路に制御され、たとえば遠隔入力回路43の操作対象デバイスに関する情報を表示する。また、デバイス32の操作者Oが遠隔入力回路43を介して所望領域および所望方向を設定するための情報を制御装置44に与える場合は、表示入力回路42のディスプレイは、手技用仮画像を表示してもよい。
【0036】
遠隔入力回路43は、たとえばトラックボールやトラックボールマウス、キーボード、タッチパネル、テンキー、音声入力回路、視線入力回路などの一般的なポインティングデバイスや、X線ばく射タイミングを指示するためのハンドスイッチなどにより構成される。遠隔入力回路43は、操作者Oにより操作されて、制御装置44を介してデバイス32を遠隔操作するための信号を有線または無線によりリモートカテーテル30に出力する。また、遠隔入力回路43は、操作者Oにより操作されて、操作者Oがデバイス32を用いて手技を行なう際に参照を所望するX線撮像の撮像領域および撮像方向(所望領域および所望方向)を設定するための情報を制御装置44に与える。
【0037】
制御装置44は、プロセッサおよび記憶回路を少なくとも有する。制御装置44の処理回路は、この記憶回路に記憶されたプログラムに従って画像処理装置20と連携する。たとえば、制御装置44の処理回路は、デバイス32の送り移動量の情報を画像処理装置20に与える。また、制御装置44の処理回路は、操作者Oから遠隔入力回路43を介して入力された所望領域および所望方向を設定するための情報を画像処理装置20に与える。
【0038】
また、リモートコンソール40には、リモートコンソール40の操作者Oと技師Mとが通話するなどしてリアルタイムに連絡をとりあうためのスピーカおよびマイクロフォンが設けられてもよい。
【0039】
図2は、検査室コンソール19の一構成例を示すブロック図である。
【0040】
検査室コンソール19は、ディスプレイ51、入力回路52、記憶回路53、通信回路54、スピーカ55、マイクロフォン56および処理回路57を有する。
【0041】
ディスプレイ51は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、処理回路57の制御に従って、リアルタイムに更新される透視画像や位置合わせ用仮画像などの各種情報を表示する。入力回路52は、たとえばキーボード、タッチパネル、トラックボール、テンキー、音声入力回路、視線入力回路などの一般的な入力装置により構成され、技師Mの操作に応じた入力信号を処理回路57に出力する。
【0042】
記憶回路53は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介した通信によりダウンロードされるように構成してもよい。記憶回路53は、医用データの一例としての人体を模した人体図の医用3次元画像データ(以下、3Dモデルデータという)をあらかじめ記憶している。また、記憶回路53は、あらかじめ取得された被検体Pの医用3次元画像データ(以下、ボリュームデータという)を記憶してもよい。以下、3Dモデルデータおよびボリュームデータを3Dデータと総称する。
【0043】
なお、医用データは、操作者Oがデバイス32を用いて手技を行なう際に参照を所望するX線撮像の撮像領域および撮像方向を設定するために利用可能なデータであればよい。たとえば、医用データは、2次元の医用画像データでもよいし、たとえば解剖学的指標(アナトミカルランドマーク)を示す文字列などの解剖学的データの一覧などであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。操作者Oは、指定受付回路を介して、医用データ上において位置の指定を行う。X線診断システム1は、指定された位置に応じた第一の画像を表示入力回路41または42のディスプレイなどの第一の表示装置に表示させるとともに、指定された前記位置に応じた、第一の画像とは異なる第二の画像を、ディスプレイ18などの第二の表示装置に表示する。
【0044】
また、医用データは、各種分類ごとに用意されてもよい。分類としては、大人と子供など被検体Pの年齢に応じた分類、性別に応じた分類、体重に応じた分類などが考えられる。この場合、操作者Oは、複数の医用データから、被検体Pが属する分類をも考慮して1つの医用データを選択し、選択した医用データ上において位置の指定を行うとよい。
【0045】
本実施形態では、医用データが3Dデータである場合の例について説明する。
【0046】
通信回路54は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。通信回路54は、この各種プロトコルに従って検査室コンソール19と画像処理装置20およびリモートコンソール40の制御装置44とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続などを適用することができる。ここで電子ネットワークとは電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。たとえば、処理回路57は、ネットワークを介して画像サーバなどから被検体Pのボリュームデータを取得して記憶回路53に記憶させてもよい。
【0047】
スピーカ55およびマイクロフォン56は、たとえば操作室の画像処理装置20の操作者Oやリモートコンソール40の操作者Oと技師Mとが、通信回路54を介して音声情報の通信により通話するなどしてリアルタイムに連絡をとりあうために用いられる。
【0048】
処理回路57は、記憶回路53に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、画像処理装置20の処理回路77と連携して、デバイス32の操作者Oが所望するX線画像が得られるように撮像領域および撮像方向を調整する技師Mによる当該調整を支援するための処理を実行するプロセッサである。
【0049】
図2に示すように、処理回路57は、決定画像取得機能61、位置合わせ用仮画像生成機能62、透視画像取得機能63および通信機能64を実現する。これらの各機能61−64は、それぞれプログラムの形態で記憶回路53に記憶されている。なお、位置合わせ用仮画像生成機能62は、画像処理装置20の処理回路77により実現されてもよく、この場合、処理回路57は、位置合わせ用仮画像生成機能62を実現せずともよい。
【0050】
図3は、画像処理装置20の一構成例を示すブロック図である。
【0051】
画像処理装置20は、ディスプレイ71、入力回路72、記憶回路73、通信回路74、スピーカ75、マイクロフォン76および処理回路77を有する。
【0052】
ディスプレイ71は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、処理回路77の制御に従って、医用画像などの各種情報を表示する。また、デバイス32の操作者Oが入力回路72を介して所望領域および所望方向を設定するための情報を処理回路77に与える場合は、ディスプレイ71は、手技用仮画像を表示する。
【0053】
入力回路72は、たとえばキーボード、タッチパネル、トラックボール、テンキー、音声入力回路、視線入力回路などの一般的な入力装置により構成され、技師Mおよび操作者Oを含む操作室のユーザの操作に応じた入力信号を処理回路77に出力する。また、入力回路72は、操作者Oにより操作されて、操作者Oがデバイス32を用いて手技を行なう際に参照を所望するX線撮像の所望領域および所望方向を設定するための情報を処理回路77に与える。
【0054】
記憶回路73は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介した通信によりダウンロードされるように構成してもよい。また、記憶回路73は、あらかじめ医用データの一例としての人体を模した人体図の3Dモデルデータを記憶している。また、記憶回路73は、あらかじめ取得された被検体Pのボリュームデータを記憶してもよい。
【0055】
通信回路74は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。通信回路74は、この各種プロトコルに従って画像処理装置20と検査室コンソール19およびリモートコンソール40の制御装置44とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続などを適用することができる。たとえば、処理回路57は、ネットワークを介して画像サーバなどから被検体Pのボリュームデータを取得して記憶回路53に記憶させてもよい。
【0056】
スピーカ75およびマイクロフォン76は、たとえば操作室の画像処理装置20の操作者Oと技師Mとが、通信回路74を介して通話するなどしてリアルタイムに連絡をとりあうために用いられる。
【0057】
処理回路77は、記憶回路73に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、検査室コンソール19の処理回路57と連携して、デバイス32の操作者Oが所望するX線画像が得られるように撮像領域および撮像方向を調整する技師Mによる当該調整を支援するための処理を実行するプロセッサである。
【0058】
図3に示すように、処理回路77は、選択受付機能81、画像決定機能82、手技用仮画像生成機能83、位置合わせ用仮画像生成機能84および通信機能85を実現する。これらの各機能81−85は、それぞれプログラムの形態で記憶回路73に記憶されている。なお、位置合わせ用仮画像生成機能84は、検査室コンソール19の処理回路57により実現されてもよく、この場合、処理回路77は、位置合わせ用仮画像生成機能84を実現せずともよい。また、デバイス32の操作者Oが、リモートコンソール40の遠隔入力回路43を介して所望領域および所望方向を設定するための情報を制御装置44に与える場合には、画像処理装置20の処理回路77により実現される各機能81−85は、リモートコンソール40の制御装置44により実現されてもよい。
【0059】
次に、本実施形態に係るX線診断システムおよび医用画像診断システムの動作の一例について説明する。まず、X線診断システムおよび医用画像診断システム動作の概要について
図4を用いて説明する。
【0060】
図4は、デバイス32の操作者Oが所望するX線画像が得られるように撮像領域および撮像方向を調整する技師Mによる当該調整を支援する際の手順の概略例を示すフローチャートである。
図4においてSに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0061】
ステップS1において、X線診断装置11は、操作者Oから指定受付回路の一例としての入力回路72、表示入力回路41、42のタッチセンサ、または遠隔入力回路43を介して、医用データの一例としての複数の3Dモデルデータおよび被検体Pのボリュームデータのいずれか1つの3Dデータの選択を受け付け、選択された3Dデータを操作者Oが視認可能な位置に設けられたディスプレイに表示させる。
【0062】
次に、ステップS2において、操作者Oは、この選択された3Dデータを確認しながら入力回路72または遠隔入力回路43を操作し、3Dデータを回転させ、あるいは拡大、縮小させながら、手技の際に参照を所望するX線撮像の撮像領域および撮像方向に対応する部分の3Dデータを操作者Oが視認可能な位置に設けられたディスプレイに表示させる。X線診断装置11は、この選択された3Dデータに対する操作者Oの操作に応じて、選択された3Dデータの所望領域および所望方向(操作者Oが手技の際に参照を所望するX線撮像の撮像領域および撮像方向)における部分画像を仮画像として決定する。
【0063】
そして、ステップS3において、X線診断装置11は、仮画像にもとづいて手技用画像を生成し、操作者Oが視認可能な位置に設けられたディスプレイに表示させる。また、X線診断装置11は、仮画像にもとづいて位置合わせ用仮画像を生成し、技師Mが視認可能な位置に設けられたディスプレイに表示させる。なお、入力回路72または遠隔入力回路43は、3Dデータ上における大きさの指定のみを受け付けてもよい。この場合、手技用仮画像生成機能83は、指定された大きさに応じた手技用仮画像91を生成してディスプレイ71に表示させる。
【0064】
続いて、X線診断システムおよび医用画像診断システム動作の詳細について
図5−9を用いて説明する。
【0065】
図5は、
図4に示す手順をより詳細に説明するためのフローチャートである。
図5において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0066】
また、
図6は選択される3Dデータの一例を示す説明図である。
図7は、選択された3Dデータに対して所望領域および所望方向が設定される様子の一例を示す説明図である。
図8は、仮画像にもとづいて生成される手技用仮画像91の一例を示す説明図である。また、
図9は、仮画像にもとづいて生成される位置合わせ用仮画像92の一例を示す説明図である。なお、
図5には、デバイス32の操作者Oが、指定受付回路の一例としての画像処理装置20の入力回路72を介して、所望領域および所望方向を設定するための情報を処理回路77に与える場合の例について示した。
【0067】
まず、ステップS11において、画像処理装置20の選択受付機能81は、記憶回路73に記憶された医用データの一例としての複数の3Dモデルデータおよび被検体Pのボリュームデータにもとづく画像を、操作者Oが視認可能な位置に設けられたディスプレイ71に表示させる。なお、
図5に示す手順においてディスプレイ71に表示される画像は、表示入力回路41、42のディスプレイにも表示させてもよい。また、選択受付機能81は、操作者Oから入力回路72を介して複数の3Dモデルデータおよび被検体Pのボリュームデータのいずれか1つの3Dデータの選択を受け付け、選択された3Dデータをディスプレイ71に表示させる(
図6参照)。
【0068】
次に、ステップS12において、操作者Oは、この選択された3Dデータを確認しながら入力回路72を操作し、3Dデータを回転させ、あるいは拡大、縮小させながら、手技の際に参照を所望するX線撮像の撮像領域および撮像方向に対応する部分の3Dデータをディスプレイ71に表示させる。画像決定機能82は、この選択された3Dデータに対する入力回路72を介した操作者Oの操作により、選択された3Dデータの所望領域および所望方向(操作者Oが手技の際に参照を所望するX線撮像の撮像領域および撮像方向)における部分画像を、仮画像として決定する(
図7参照)。
【0069】
なお、所望する撮像領域として、操作者Oが領域を指示した場合は、画像決定機能82は、少なくともこの指示された領域を含むように所望領域を設定し、仮画像を決定してもよい。また、所望する撮像領域として、操作者Oが所定の位置を指示した場合は、画像決定機能82は、たとえばこの位置を中心とする所定範囲の領域を少なくとも含むように所望領域を設定し、仮画像を決定してもよい。
【0070】
次に、ステップS13において、手技用仮画像生成機能83は、仮画像にもとづいて手技用仮画像91を生成し、ディスプレイ71に表示させる。具体的には、手技用仮画像生成機能83は、手技用仮画像91として、仮画像の所望方向と同一方向から見た画像であって、手技の際に操作者Oに注目される管状構造物(たとえば血管など)に対応する画像を少なくとも含む画像を、仮画像にもとづいて生成する(
図8参照)。この場合、手技用仮画像91は、血管を強調する画像処理により作成されてもよい。手技用仮画像91は、操作者Oにとって、治療対象部位の位置がわかりやすい画像であることが好ましい。
【0071】
手技用仮画像91は、3Dデータ(たとえば選択された3Dデータ)に対してX線透視画像と同様の態様となるように画像処理することにより、あたかもX線で透視または撮影したかのような画像とするとよいが、3Dデータ(たとえば選択された3Dデータ)に対してボリュームレンダリング等のレンダリング処理をした画像を用いてもよい。また、手技用仮画像91は、白黒画像でもよいしカラー画像でもよいし白黒画像を基本として注目管状構造物のみが色付けされた画像であってもよい。
【0072】
次に、ステップS14において、手技用仮画像生成機能83は、手技用仮画像91が操作者Oの所望の画像であるか否かを、入力回路72を介した操作者Oの指示に応じて判定する。手技用仮画像91が操作者Oの所望通りであれば、この所望通りとされた手技用仮画像91の元画像である仮画像を位置合わせ用仮画像生成機能84または検査室コンソール19の決定画像取得機能61に与え、ステップS15に進む。
【0073】
一方、手技用仮画像91が操作者Oの所望と異なっている場合は、ステップS12に戻り、仮画像の設定から、すなわち所望領域および所望方向の設定からやり直し、ステップS12で仮画像を再決定し、ステップS13で手技用仮画像を再生成することを繰り返す。このように、操作者Oは、仮画像を決定するために手技用仮画像91を用いることができる。
【0074】
次に、ステップS15において、画像処理装置20の位置合わせ用仮画像生成機能84または検査室コンソール19の位置合わせ用仮画像生成機能62は、仮画像にもとづいて位置合わせ用仮画像92を生成し、技師Mが視認可能な位置に設けられたディスプレイ18に表示させる。なお、
図5に示す手順においてディスプレイ18に表示される画像は、ディスプレイ51にも表示させてもよい。
【0075】
具体的には、位置合わせ用仮画像生成機能84または62は、位置合わせ用仮画像92として、仮画像の所望方向と同一方向から見た画像であって、所望方向で所望領域を含むX線撮像を行なうように撮像系と寝台16との少なくとも一方の位置合わせを行なう際に、技師Mにより参照されるに適した画像を、仮画像にもとづいて生成する(
図9参照)。
【0076】
位置合わせ用仮画像92は、手技用仮画像91と同様に、3Dデータ(たとえば選択された3Dデータ)に対してX線透視画像と同様の態様となるように画像処理することにより、あたかもX線で透視または撮影したかのような画像とするとよいが、3Dデータ(たとえば選択された3Dデータ)に対してボリュームレンダリング等のレンダリング処理をした画像を用いてもよい。すなわち、位置合わせ用仮画像92は、手技用仮画像91とは異なる画像処理により作成されてもよい。
【0077】
また、位置合わせ用仮画像92は、手技用仮画像91に相当する部分を特定可能な画像としてもよい。この場合、たとえば、位置合わせ用仮画像92に対して、手技用仮画像91に相当する部分を示す記号や文字列、あるいは手技用仮画像91を示す範囲を示す枠線などの画像などを重畳表示させるとよい。
【0078】
また、位置合わせ用仮画像92は、その中心が手技用仮画像91の中心と一致するように作成されてもよい。
【0079】
また、位置合わせ用仮画像92は、透視画像において確認しやすい部位であるX線吸収係数の高い骨の画像を含むように生成されるとよい。この場合、位置合わせ用仮画像92は、骨を強調する画像処理により作成されてもよい。また、このとき、手技用仮画像91に含まれた血管などの管状構造物の画像を重畳させてもよい(
図9の92の2点鎖線参照)し、血管を含まないように作成されてもよい。また、仮画像の元画像である3Dデータが被検体Pの過去のボリュームデータであって、被検体Pの体内にステントなどのX線吸収係数の高い部材が留置されている場合は、位置合わせ用仮画像92は、この種の部材をさらに含むように生成されるとよい。また、位置合わせ用仮画像92は、撮像系と寝台16との位置関係の調整に利用しやすいように、手技用仮画像91よりも広い視野の画像となるように生成されるとよい。
【0080】
また、位置合わせ用仮画像生成機能84または62は、決定された仮画像の所望方向の情報にもとづいて、寝台16に対する撮像系のX線照射軸の角度を示す角度情報画像92aを生成してディスプレイ18に表示させてもよい(
図9参照)。仮画像が決定されて所望方向が決定した時点で、寝台16に対する撮像系のX線照射軸の角度を決定することができる。ただし、寝台16と被検体Pの位置関係はまちまちであるため、X線照射位置まで決定することは難しい。それでも、寝台16に対する撮像系のX線照射軸の角度と照射向きを示す角度情報画像92aを提示することで、所望方向で所望領域を含むX線撮像を行なうように撮像系と寝台16との少なくとも一方の位置合わせを行なう技師Mの当該位置合わせを支援することができる。角度情報画像92aは、
図9に示したような撮像系と寝台16を模した画像でもよいし、寝台16に対する撮像系のX線照射軸の角度と照射向きを示す文字情報でもよし、これらの組み合わせでもよい。
【0081】
技師Mは、位置合わせ用仮画像生成機能84または62がディスプレイ18に表示させた位置合わせ用仮画像92および角度情報画像92aにもとづいて、被検体PにX線を照射することなく、おおまかに撮像系と寝台16との位置関係を調整する。
【0082】
次に、ステップS16において、技師Mの入力回路52を介した指示に応じて、透視画像取得機能63は、撮像装置12による被検体PのX線撮像にもとづいて生成された透視画像をリアルタイムに取得する。
【0083】
次に、ステップS17において、位置合わせ用仮画像生成機能84または62は、技師Mが透視画像と位置合わせ用仮画像92とを比較可能なように、ディスプレイ18に対して位置合わせ用仮画像92とリアルタイムに取得される透視画像とを並列表示させる。技師Mは、位置合わせ用仮画像92とリアルタイムに取得される透視画像とを比較しながら、詳細に撮像系と寝台16との位置関係を調整する。
【0084】
次に、ステップS18において、操作者Oは、現在の透視画像が、手技を行うために十分な画像であり所望の画像といえるか否かを判定する。所望の画像といえる場合は、操作者Oは、入力回路72を介してその旨の情報を透視画像取得機能63に与えてX線照射を停止させ、一連の手順は終了となる。この結果、撮像装置12の撮像系と寝台16との位置関係は、技師Mの操作によって、操作者Oが所望するX線画像が取得可能な関係となる。
【0085】
他方、現在の透視画像が所望の画像といえない場合は、ステップS19において、技師Mは、操作者Oから、撮像装置12の撮像系と寝台16との位置関係の調整を再依頼されるとともに、位置関係を調整するための具体的な指示を取得する。この指示の伝達方法としては、たとえば画像処理装置20の通信機能85と検査室コンソール19の通信機能64を利用した通話、テレビ電話、メール送受信、チャットなどが挙げられる。そして、操作者Oから指示を受けると、ステップS16に戻り、撮像系と寝台16との位置関係を再調整する。
【0086】
以上の手順により、デバイス32の操作者Oが所望するX線画像が得られるように撮像領域および撮像方向を調整する技師Mによる当該調整を支援することができる。
【0087】
本実施形態に係るX線診断装置11は、操作者Oが決定した所望領域および所望方向にもとづいて、手技に適した手技用仮画像91を操作者Oに提示するとともに(
図8参照)、撮像系と寝台16の位置関係の調整に適した位置合わせ用仮画像92を技師Mに提示することができる(
図9参照)。このため、X線診断装置11によれば、検査室の技師Mは、容易かつ的確に、デバイス32の操作者Oが所望するX線画像が得られるように撮像装置12の撮像系と寝台16との位置関係を調整することができる。
【0088】
また、X線診断装置は、操作者Oが決定した所望方向にもとづいて、寝台16に対する撮像系のX線照射軸の角度を示す角度情報画像92aを生成してディスプレイ18に表示させることができる(
図9参照)。このため、技師Mは、より迅速に撮像系と寝台16との位置関係を調整することができる。
【0089】
また、
図5に示す手順によれば、被検体PにX線を照射することなく、おおまかに撮像系と寝台16との位置関係を調整した後に、透視画像を用いて詳細に位置関係を調整することができる。このため、位置関係における被検体PのX線被ばく線量を大幅に低減することができる。
【0090】
なお、本実施形態における通信回路54は、特許請求の範囲における通信回路の一例である。本実施形態における入力回路72、表示入力回路41、42のタッチセンサ、および遠隔入力回路43は、特許請求の範囲における指定受付部の一例である。また、本実施形態における表示入力回路41、42のタッチセンサ、および遠隔入力回路43は、特許請求の範囲における操作部の一例である。また、本実施形態におけるリモートコンソール40の表示入力回路41、42のディスプレイおよび画像処理装置20のディスプレイ71は、特許請求の範囲における第一の表示装置の一例である。また、本実施形態における検査室のディスプレイ18は、特許請求の範囲における第二の表示装置の一例である。
【0091】
また、本実施形態における画像処理装置20の処理回路57、77およびリモートコンソール40の制御装置44の処理回路に係る「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
【0092】
なお、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成してもよい。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで各種機能を実現する。また、
図2および
図3には単一の処理回路57および77がそれぞれ各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0093】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0094】
たとえば、本実施形態におけるX線診断装置11にかえて、CT透視(Computed Tomography Fluoroscopy)を利用可能なX線CT装置を用いてもよい。
【0095】
また、本発明の実施形態では、フローチャートの各ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。