特許第6906960号(P6906960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906960
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】計量ポンプの機能性をチェックする方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20210708BHJP
   G01F 25/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   G01N35/10 D
   G01F25/00 R
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-3760(P2017-3760)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2017-134061(P2017-134061A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2019年12月25日
(31)【優先権主張番号】16151198.5
(32)【優先日】2016年1月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510259921
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】グンター・コトゥラ
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−293090(JP,A)
【文献】 特開2006−098226(JP,A)
【文献】 米国特許第05879627(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01N 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(31)と、該シリンダ内で可動であるモータ駆動プランジャ(32)とを含む計量ポンプ(30)の機能性をチェックする方法であって、該プランジャ(32)は、開始位置(35)と目標位置(36)との間で変位可能であり:
a)プランジャ(32)を、予め設定された駆動力F0を用いて、開始位置(35)から目標位置(36)の方向に変位させる工程と;
b)プランジャ(32)が目標位置(36)に到達したかを監視する工程と;
c)プランジャ(32)を、予め設定された駆動力F2を用いて、開始位置(35)に戻す工程であって、駆動力F0は駆動力F2未満である、工程と;
を含み、ここで、
d)プランジャ(32)が目標位置(36)に到達したと判定された場合、計量ポンプ(30)に割り当てられる信号が生成され、前記信号は、計量ポンプ(30)の機能性を示し;
e)プランジャ(32)が目標位置に到達していないと判定された場合、工程a)からc)が、値nだけ増大させた駆動力F0+nを用いて繰り返され、該駆動力F0+nは駆動力F2未満であり、
駆動力F0は、駆動力F2の約半分に相当する、前記方法。
【請求項2】
工程a)からc)が、工程e)において、値xnだけ順次増大させた駆動力F0+xnを用いて繰り返され、前記駆動力は、駆動力F2未満であり、工程a)からc)は、
i)プランジャ(32)が目標位置(36)に到達し、かつこのために必要となる駆動力F0+xnが、駆動力F2未満の予め設定された最大駆動力F1を超えていないと判定されるまで繰り返され、その後、計量ポンプ(30)に割り当てられ計量ポンプ(30)の機能性を示す信号が生成され;
または
ii)予め設定された最大駆動力F1を用いても、プランジャ(32)が目標位置(36)に到達しないと判定されるまで繰り返され、その後、計量ポンプ(30)に割り当てられる取換え信号が生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プランジャ(32)が、予め設定された最大駆動力F1を用いても目標位置(36)に到達しない場合、計量ポンプ(30)は、動作不能にされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
予め設定された最大駆動力F1は、駆動力F2の80%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
計量ポンプ(30)を動作させる方法であって、計量ポンプ(30)の機能性が、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法によって、計量ポンプ(30)の起動前に試験され、計量ポンプ(30)に割り当てられ計量ポンプ(30)の機能性を示す信号が生成された場合、計量ポンプ(30)の起動後、プランジャ(32)は、開始位置(35)から目標位置(36)の方向に動き、駆動力F2を用いて再び戻る、前記方法。
【請求項6】
シリンダ(31)と、該シリンダ内で可動であるプランジャ(32)と、モータ(33)とを含む計量ポンプ(30)であって、駆動力をモータ(33)からプランジャ(32)に伝達可能であり、その結果、プランジャ(32)が開始位置(35)と目標位置(36)との間で変位可能になり、計量ポンプ(30)は、該計量ポンプ(30)の機能性をチェックする方法を制御するように構成された制御デバイスを有し、
前記方法は:
a)プランジャ(32)を、予め設定された駆動力F0を用いて、開始位置(35)から目標位置(36)の方向に変位させる工程と;
b)プランジャ(32)が目標位置(36)に到達したかを監視する工程と;
c)プランジャ(32)を、予め設定された駆動力F2を用いて、開始位置(35)に戻す工程であって、駆動力F0は駆動力F2未満である、工程と;
を含み、ここで、
d)プランジャ(32)が目標位置(36)に到達したと判定された場合、計量ポンプ(30)に割り当てられる信号が生成され、前記信号は、計量ポンプ(30)の機能性を示し;
e)プランジャ(32)が目標位置(36)に到達していないと判定されると、工程a)からc)が、値nだけ増大させた駆動力F0+nを用いて繰り返され、駆動力F0+nは駆動力F2未満であり、
駆動力F0は、駆動力F2の約半分に相当することを特徴とする、前記計量ポンプ。
【請求項7】
制御デバイスは、工程a)からc)が、工程e)において、値xnだけ順次増大させた駆動力F0+xnを用いて繰り返され、前記駆動力は、駆動力F2未満であり、工程a)からc)は、
i)プランジャ(32)が目標位置(36)に到達し、かつこのために必要となる駆動力F0+xnが、駆動力F2未満の予め設定された最大駆動力F1を超えていないと判定されるまで繰り返され、その後、計量ポンプ(30)に割り当てられ計量ポンプ(30)の機能性を示す信号が生成され;
または
ii)予め設定された最大駆動力F1を用いても、プランジャ(32)が目標位置(36)に到達しないと判定されるまで繰り返され、その後、計量ポンプ(30)に割り当てられる取換え信号が生成される
ように、さらに制御するようにさらに構成された、請求項に記載の計量ポンプ(30)。
【請求項8】
制御デバイスは、プランジャ(32)が、予め設定された最大駆動力F1を用いても目標位置(36)に到達しない場合、計量ポンプ(30)が動作不能にされるようにさらに制御するようにさらに構成される、請求項に記載の計量ポンプ(30)。
【請求項9】
制御デバイスは、駆動力F2、駆動力F0、駆動力F0を増大させるための値n、および/または最大駆動力F1が記憶される記憶ユニットを含む、請求項のいずれか1項に記載の計量ポンプ(30)。
【請求項10】
請求項のいずれか1項に記載の計量ポンプ(30)を含む少なくとも1つのピペット装置(3、9、20)を含む自動分析機(1)。
【請求項11】
出力媒体をさらに含み、該出力媒体は、計量ポンプ(30)の制御デバイスによって生成された、計量ポンプ(30)の機能性を示す信号および/または取換え信号を、視覚的かつ/または聴覚的に知覚可能な信号に変換し、該信号を示す、請求項10に記載の自動分析機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析機の分野に属し、例えばピペット装置(pipetting apparatus)用の計量ポンプ(metering pump)、およびその機能性をチェックする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分析学、法医学(forensics)、微生物学、および臨床診断にて定常的に使用されている現行の分析機では、多数のサンプルを用いて多数の反応を検出し分析を行うことが可能である。多数の実験を自動化して実施することを可能とするために、測定セル、反応コンテナ、および試薬液コンテナを空間移送するための様々な自動運転デバイス、例えば、把持部機能(gripper function)を備えた移送アーム、輸送ベルト、または回転可能な輸送ホイールなどが求められ、また、液体を移送するための装置、例えばピペット装置なども求められている。こうした機器は、中央制御ユニットを含み、この中央制御ユニットは、適切なソフトウェアによって、所望の分析について、主に独立に計画し、作業工程を経ることによって作業することが可能である。
【0003】
自動化して動作するかかる分析機で使用される分析法の多くは、光学法に基づく。光度測定(例えば、濁度測定(turbidimetric)、比濁測定(nephelometric)、蛍光測定(fluorometric)、もしくは発光測定(luminometric))または放射測定原理に基づいた測定システムが、特に普及している。これらの方法では、液体サンプル中の分析物の質的および量的検出を、分離工程を追加することなく行うことが可能である。臨床関連パラメータ、例えば分析物の濃度または活性度(activity)などの決定は、多くの場合、患者から得られた体液の部分標本(aliquot)を、1つまたはそれ以上の試験試薬と、反応容器中で同時に、または順次混合することによって生化学反応を開始させ、それによって試験調合剤の光学特性に、測定可能な変化を生じさせることによって行われる。
【0004】
測定結果は、その後測定システムによって記憶ユニットに送られ、評価される。その後、分析機は、例えば、モニタ、プリンタ、またはネットワーク接続などの出力媒体を介して、サンプル固有の測定値をユーザに供給する。
【0005】
サンプル液または試薬液は通常、自動化されたピペット装置によって移送される。かかるピペット装置は一般に、水平方向に変位可能または旋回可能な移送アームに垂直に配置され、高さ調節が可能なピペットニードルを含み、このピペットニードルはポンプユニットに連結され、したがってこのピペットニードルによって所望の体積の液体をコンテナから取り出し、異なる位置にある目標コンテナに排出することができる。通常、ピペットニードルは、移送アームを用いて液体コンテナ上方の位置に変位され、次いで液体コンテナ、およびその中に含まれる液体中に下げられる。所望の体積を取り出した後、ピペットニードルは上方に駆動され、次いで、水平方向に変位可能または旋回可能な移送アームを用いて、液体コンテナの上方、例えば測定セルの上方の所望の目標位置へと駆動される。そこで、ピペットニードルは再び下げられ、その液体量が排出される。
【0006】
ピペット操作される液体体積は、約5から500マイクロリットルの範囲である。ピペット操作のエラーによって、またはピペット操作が精確でないと、測定結果が不正確となり得るので、ピペット操作には非常に高い精度が求められる。ピペット操作の精度には、とりわけ、ピペット装置に連結される計量ポンプの精度が決定要因となる。液体系または気体系の媒体が充填され、その出口開口部が管系を介してピペットニードルに連結される、往復ポンプの形の計量ポンプの使用が知られている。ピペットニードルによって液体コンテナから液体を吸入するためにポンププランジャを動かすことによって負圧が生じ、または液体を再度放出するために正圧が生じる。通常、かかる計量ポンプは、制御ラインを介して制御デバイスに接続され、この制御デバイスは、固有の制御変数に基づいて、ピペット操作予定の体積に応じてプランジャの持上げを改変することが可能である。
【0007】
計量ポンプには、時間とともに摩損が生じるという問題があり、その結果、ピペット操作が不精確になるという望ましくない状況が生じ、最悪の場合には、計量ポンプ、したがって、ピペット装置が突然停止するという事態が生じる。計量ポンプの取換えには、ユーザの介入が必須となり、通常は熟練した保守技師の介入も必要となる。計量ポンプの予期せぬ停止により、分析機全体の処理速度が低減し、状況によっては分析機が完全に停止することになり、したがって可能な限り回避しなければならない。
【0008】
したがって、計量ポンプを最初に起動する前か、あるいは特定の運転時間後、計量ポンプが定常動作に十分機能的であるか、または計量ポンプを取り換えるべきかについて、チェックできることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、計量ポンプが定常動作に十分機能的であるか、または計量ポンプを取り換えるべきかを判定することを、ユーザによる介入なしで、すなわち自動的に行うことが可能となる、計量ポンプの機能性をチェックする方法を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、プランジャを開始位置から目標位置まで変位させるために必要となる駆動力が、特定の閾値を超えないかをチェックすることによって達成される。
【0011】
したがって、本発明は、シリンダと、シリンダ内で可動であるモータ駆動プランジャとを含み、このプランジャは、開始位置と目標位置との間で変位可能である、計量ポンプの機能性をチェックする方法に関する。この方法は:
a)プランジャを、予め設定された駆動力F0を用いて、開始位置から目標位置の方向に変位させる工程と;
b)プランジャが目標位置に到達したかを監視する工程と;
c)プランジャを、予め設定された駆動力F2を用いて、開始位置に戻す工程であって、駆動力F0は駆動力F2未満である、工程と;
を含み、ここで、
d)プランジャが目標位置に到達したと判定された場合、計量ポンプに割り当てられる信号が生成され、前記信号は、計量ポンプの機能性を示し;
e)プランジャが目標位置に到達していないと判定された場合、工程a)からc)が、値nだけ増大させた駆動力F0+nを用いて繰り返され、駆動力F0+nは駆動力F2未満である。
【0012】
「プランジャの開始位置」と、「プランジャの目標位置」とは、プランジャがシリンダ内を移動する最大直線行程に沿った2つの異なる位置を意味し、目標位置はシリンダの出口開口部付近に位置し、そこに対して、開始位置はシリンダの出口開口部から離れて位置していることを理解されたい。開始位置および目標位置はどちらも、例えば、シリンダの一端部または他方の端部にあるプランジャ止め具によって機械的に固定することができる。
【0013】
あるいは、開始位置および/または目標位置はまた、行程に沿って任意に設定してもよい。
【0014】
好ましくは、駆動力F0、駆動力F2、および駆動力F0を数回増大させることができる値nは、計量ポンプの起動前に設定される。
【0015】
便宜上、駆動力F2は、動作予定のポンプのプランジャが目標位置から開始位置に確実に戻るよう変位させるように選択される。
【0016】
この場合、駆動力F0は、駆動力F2よりも小さくなるように選択される。
【0017】
好ましくは、駆動力F0は、駆動力F2の約半分に相当する。
【0018】
駆動力F0を数回増大させることができる駆動力の値nは、駆動力F0の数分の一、例えば駆動力F0の10〜30%に相当する。
【0019】
例として、プランジャが目標位置に到達したかについての監視は、開始位置と目標位置との間で画成された行程が事実上克服されたか、規定数のステップをステッパモータなどによって実行することができたかなどについて、適切なセンサ、例えばステッパモータのエンコーダを用いて測定することによって実行することができる。
【0020】
本方法によって、プランジャが、駆動力F0を用いてすでに目標位置に到達したと判定された場合、計量ポンプに割り当てられる信号が生成され、前記信号は、計量ポンプの機能性を示す。その後、計量ポンプを、初めて起動させる、または動作させ続けることができ、機能性に制約が生じることが予想されることはない。
【0021】
しかし、プランジャが目標位置に到達していないと判定された場合、工程a)からc)が、値nだけ増大させた駆動力F0+nを用いて繰り返され、この駆動力F0+nは常に駆動力F2未満である。工程a)からc)は、プランジャが目標位置に到達し、かつこのために必要となる駆動力F0+xnが、駆動力F2未満の予め設定された最大駆動力F1を超えていないと判定されるまで、または予め設定された最大駆動力F1を用いても、プランジャが目標位置に到達しないと判定されるまで繰り返される。
【0022】
次いで、必要となる駆動力F0+xnが、予め設定された最大駆動力F1を超えていないと判定された場合、計量ポンプに割り当てられ計量ポンプの機能性を示す信号が生成される。その後、計量ポンプを、初めて起動させる、または動作させ続けることができ、機能性に制約が生じることが予想されることはない。
【0023】
一方、プランジャが、予め設定された最大駆動力F1を用いても目標位置に到達しないと判定された場合、計量ポンプに割り当てられる取換え信号が生成される。取換え信号はユーザに送られ、ユーザは、その後関連した計量ポンプの取換え、または保守を早めに行うことができる。
【0024】
本発明による、計量ポンプを動作させる方法の特に好ましい実施形態では、駆動力F2と、駆動力F0またはF0+xnとの比は、計量ポンプのパワーリザーブ(power reserve)の品質判定基準として決定される。プランジャが目標位置に到達するために必要となる駆動力F0またはF0+xnが駆動力F2の80%を超える場合、詰り(jamming)のリスクが高くなりすぎ、したがって計量ポンプを取り換えなければならないことが見出された。したがって、好ましくは、計量ポンプに割り当てられる取換え信号は、プランジャが目標位置に到達するために必要となる駆動力F0またはF0+xnが駆動力F2の80%を超える場合に生成される。言い換えれば、予め設定される最大駆動力F1は、好ましくは駆動力F2の80%である。
【0025】
あるいは、駆動力F2、およびプランジャが目標位置に到達するために必要となる駆動力F0またはF0+xnの商(Q1)を求めることも可能である。F2:F0またはF0+xnの商が1.25未満である場合、計量ポンプに割り当てられる取換え信号が生成される。
【0026】
さらなる実施形態では、プランジャが、予め設定された最大駆動力F1を用いても目標位置に到達しない場合、計量ポンプはさらに動作不能にされる。これによって、エラーを生じる可能性のある計量プロセス、または詰りの結果ポンプが制御不能になり停止し得るということが確実になくなる。
【0027】
本発明のさらなる主題は、計量ポンプを動作させる方法に関し、この方法では、計量ポンプの機能性が、上述の本発明の方法によって、計量ポンプの起動前に試験され、計量ポンプに割り当てられ計量ポンプの機能性を示す信号が生成された場合、計量ポンプの起動後、プランジャは、開始位置から目標位置の方向に動き、駆動力F2を用いて再び戻る。
【0028】
本発明のさらなる主題は、シリンダと、シリンダ内で可動であるプランジャと、モータとを含む計量ポンプに関し、この計量ポンプでは、駆動力をモータからプランジャに伝達可能であり、その結果、プランジャは開始位置と目標位置との間で変位可能になる。計量ポンプは、計量ポンプを動作させる方法を制御するように構成された制御デバイスをさらに有し、
前記方法は:
a)プランジャを、予め設定された駆動力F0を用いて、開始位置から目標位置の方向に変位させる工程と;
b)プランジャが目標位置に到達したかを監視する工程と;
c)プランジャを、予め設定された駆動力F2を用いて、開始位置に戻す工程であって、駆動力F0は駆動力F2未満である、工程と;
を含み、ここで、
d)プランジャが目標位置に到達したと判定された場合、計量ポンプに割り当てられる信号が生成され、前記信号は、計量ポンプの機能性を示し;
e)プランジャが目標位置に到達していないと判定された場合、工程a)からc)が、値nだけ増大させた駆動力F0+nを用いて繰り返され、駆動力F0+nは駆動力F2未満である。
【0029】
プランジャを駆動するためのモータは、電気モータでよい。好ましくは、このモータは、電気ステッパモータであり、特に好ましくは位置を報告するセンサ(エンコーダ)、および調節器を有する、ステッパモータである。ステッパモータは、駆動力F0、F0+n、およびF2を生成するように、異なる電流値で動作する。
【0030】
好ましい実施形態では、制御デバイスは、工程a)からc)が、工程e)において、値xnだけ順次増大させた駆動力F0+xnを用いて繰り返され、前記駆動力は、駆動力F2未満であり、工程a)からc)は、
i)プランジャが目標位置に到達し、かつこのために必要となる駆動力F0+xnが、駆動力F2未満の予め設定された最大駆動力F1を超えていないと判定されるまで繰り返され、その後、計量ポンプに割り当てられ計量ポンプの機能性を示す信号が生成され;または
ii)予め設定された最大駆動力F1を用いても、プランジャが目標位置に到達しないと判定されるまで繰り返され、その後、計量ポンプに割り当てられる取換え信号が生成される
ように、さらに制御するようにさらに構成される。
【0031】
さらに、制御デバイスは、予め設定された最大駆動力F1を用いても、プランジャが目標位置に到達しない場合、計量ポンプが動作不能にされるようにさらに制御するようにさらに構成することができる。
【0032】
好ましくは、本発明による計量ポンプの制御デバイスは、予め設定された駆動力F2、予め設定された駆動力F0、駆動力F0を増大させるための値n、および/または予め設定された最大駆動力F1が記憶される記憶ユニットを含む。「予め設定された」という文言は、計量ポンプの起動前に、適切な一連の試験によって特性が確認されたことを意味する。
【0033】
本発明のさらなる主題は、本発明による計量ポンプを含む少なくとも1つのピペット装置を含む自動分析機に関する。この分析機は、複数のかかるピペット装置を含むことができ、例えば血液、血漿、血清、尿、体液などのサンプル液を移送するための第1のピペット装置、および例えば緩衝液、抗体溶液、抗原溶液などの試薬液を移送するための第2のピペット装置を例えば含むことができる。
【0034】
ピペット装置は、水平方向に変位可能または旋回可能な、自動可動式の移送アームに固締することができる。ピペット装置は、中空ニードルを含み、それによって移送予定の液体体積を吸入し、異なる位置で再度放出することができる。この目的で、ピペットニードルは、管系を介して本発明による計量ポンプに連結されている。
【0035】
好ましくは、自動分析機は、計量ポンプの制御デバイスによって生成された、計量ポンプの機能性を示す信号、および/または取換え信号を視覚的かつ/または聴覚的に知覚可能な信号に変換し、その信号を示す出力媒体をさらに含む。例として、出力媒体は、計量ポンプの制御デバイスによって生成された取換え信号を視覚的かつ/または聴覚的に知覚可能な信号に変換し、その信号を示す画面、警告ランプ、またはスピーカでよい。例として、取換え信号は、自動分析機の画面上に、テキストメッセージの形で、または絵文字(pictogram)の形で示すことができ、または自動分析機のスピーカによって音響信号の形で出力してもよく、または自動分析機の警告ランプによる視覚信号の形で出力してもよい。
【0036】
以下、本発明について図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明による自動分析機を示す図である。
図2】本発明による計量ポンプを含むピペット装置を示す図である。
図3】計量ポンプの機能性をチェックする方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
すべての図において、同じ部材には、同じ参照符号が付されている。
【0039】
図1は、構成要素のいくつかをその中に含む自動分析機1の概略図である。ここでは、自動分析機1の基本機能を説明するために、最も重要な構成要素のみ、非常に簡略された形で示し、プロセスにおける各構成要素の個々の部材についてはここでは詳細には表していない。
【0040】
自動分析機1は、血液または他の体液の多種多様な分析を、完全に自動化して、この分析のためにユーザによる活動を必要とせずに実行するように実施されている。一方、ユーザに求められる介入は、機能ユニットの保守または修理、および補充作業、例えば、キュベット(cuvette)に補充する必要がある場合、または液体コンテナを取り換える必要がある場合などに限られる。
【0041】
患者のサンプルは、搬送台(詳細には図示せず)にある自動分析機1に、供給レール2を介して送られる。例として、各サンプルについて実行予定の分析に関する情報は、サンプル容器に取り付けられたバーコードによって転送することができ、前記バーコードは、自動分析機1で読み取られる。第1のピペット装置3を用い、ピペットニードルによってサンプルの部分標本をサンプル容器から取り出す。
【0042】
サンプルの部分標本も同様に、キュベット(詳細には図示せず)に送られ、これらのキュベットは、回転可能な培養デバイス5に沿って、受け位置4に配置され、培養デバイス5は温度が37℃となるように制御されている。キュベットは、キュベット収納コンテナ6から取り出される。様々な試薬液を有する試薬容器8が、約8〜10℃に冷却された試薬容器収納コンテナ7に収納されている。試薬液は、第2のピペット装置9のピペットニードルによって試薬容器8から取り出され、受け位置4にあるキュベット内で反応混合体が得られるように放出される。培養時間後、反応混合体を有するキュベットは、把持部(図示せず)を有する移送アームによって、培養デバイス5から光度測定ユニット10に輸送され、ここで最初の反応溶液の吸光度が測定される。
【0043】
全プロセスとも、例えばデータライン12によって接続されたコンピュータなどの中央制御ユニット11によって制御され、この制御ユニット11は、自動分析機1およびその構成要素内の複数のさらなる電子回路およびマイクロプロセッサ(詳細には図示せず)によって支援されている。
【0044】
図2は、本発明による計量ポンプ30を含むピペット装置20の概略図である。ピペット装置20は、水平方向に変位可能な移送アーム21に固締された、高さ調節可能なピペットニードル22を含み、移送アーム21を介して、ピペットニードル22は、ピペットニードル液を液体容器23から取り出す、または液体容器23に放出することができる。計量ポンプ30は、シリンダ31と、シリンダ31内で直線方向に変位可能なプランジャ32とを含む。シリンダ31の容積は、500マイクロリットルである。プランジャ32は、ステッパモータ33に連結され、ステッパモータ33は、位置を報告するためのセンサとして、エンコーダ34を含む。ステッパモータ33は、様々な電流強度で動作させることができ、したがってプランジャ32に強さの異なる駆動力を加えることができる。計量ポンプ30の機能性をチェックする目的で、図3を参照しながらより詳細に説明するが、プランジャ32は、規定された駆動力によって、−600ステップに予め設定された開始位置35と、−800ステップに予め設定された目標位置36との間で変位する。ピペット装置20の定常動作中、弁37が閉止している場合、プランジャ32が動いた結果、ピペットニードル22によって規定された液体体積が取り出され、または放出される。弁37が開いている場合、洗浄の目的で、ポンプ装置39によって、例えば脱イオン水または消毒溶液などの洗浄溶液38を、計量ポンプ30、およびピペットニードル22からポンプ注入することができる。
【0045】
図3は、図2のピペット装置20の計量ポンプ30の機能性をチェックする方法の流れ図を示し、ピペット装置20は、自動分析機1の一部である。工程50において、計量ポンプ30の機能性をチェックする方法を実行する開始信号が、自動分析機1の中央制御ユニット11によって出力される。その後、工程51において、駆動力F2として予め設定された値(ステッパモータ電流600mA)、駆動力F0として予め設定された値(ステッパモータ電流300mA)、駆動力F0を増大させる値n(90mA)、および最大駆動力F1(F2の80%、すなわちステッパモータ電流480mA)が、計量ポンプ30の制御デバイスから最初に読み取られ、前記値は、前記制御デバイスの構成ファイルに記憶されており、工程52において、プランジャ32は駆動力F2によって開始位置35に変位する。その後、工程53において、プランジャ32は、駆動力F0によって目標位置36の方向に変位する。工程54において、プランジャ32が、印加された駆動力(F0)によって目標位置36に到達したかを監視する。到達した場合、工程57において、計量ポンプ30に割り当てられ計量ポンプ30の機能性を示す信号が生成され、このプロセスは終了する。一方、工程54において、プランジャ32が、印加された駆動力(F0)によってまだ目標位置36に到達していないと判定されると、駆動力F0は、工程55において値n(90mA)だけ増大され、プランジャ32が目標位置36に到達するまで、工程52、53、および54が、段階的に増大された駆動力F0+xnを用いて繰り返される。次いで、工程56において、駆動力F0+xn(300mA+x*90mA)が最大駆動力F1(480mA)を超えていないか監視する。目標位置36まで到達したときの駆動力F0+xnが、F1を超えていないと判定された場合、工程57において、計量ポンプ30に割り当てられ計量ポンプ30の機能性を示す信号が生成され、このプロセスは終了する。一方、目標位置36まで到達したときの駆動力F0+xnが、F1を超えたと判定された場合、工程60において、計量ポンプ30に割り当てられる取換え信号が生成され、前記取換え信号は、計量デバイス30の機能性が不足していることを示すものであり、このプロセスは終了する。
【符号の説明】
【0046】
1 分析機
2 供給レール
3 ピペット装置
4 受け位置
5 培養デバイス
6 キュベット収納コンテナ
7 試薬容器収納コンテナ
8 試薬容器
9 ピペット装置
10 測定ユニット
11 中央制御ユニット
12 データライン
20 ピペット装置
21 移送アーム
22 ピペットニードル
23 液体容器
30 計量ポンプ
31 シリンダ
32 プランジャ
33 ステッパモータ
34 エンコーダ
35 開始位置
36 目標位置
37 弁
38 洗浄溶液
39 ポンプ装置
50〜60 方法工程
図1
図2
図3